説明

レーザ加工方法及びレーザ加工装置

【課題】被加工物を高速かつ高精度に加工することができるレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】被加工物100を載置する加工ステージ1と、被加工物100にレーザ光を照射するレーザ光照射手段2と、レーザ光を被加工物100上の所定のラインに沿って走査させるレーザ光走査手段と、レーザ光の走査ラインに沿って、該ライン上の非加工部分を覆うように配設される複数のマスク6と、1つのラインの加工が終了して次の加工ラインに沿って前記レーザ光の走査ラインが変更されるとき、該走査ラインに整合するように前記マスクを移動させるマスク移動手段4,5とを備えるレーザ加工装置を用いて、被加工物を所定パターンにレーザ加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池素子等の被加工物を所定パターンにレーザ加工するレーザ加工方法及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池は、単一の領域に第1電極、光電変換層、および第2電極の3層が積層された太陽電池素子が、フレキシブルな絶縁性基板上に複数形成された構成をなしている。そして、ある太陽電池素子の第1電極と、隣接する太陽電池素子の第2電極とを電気的に直列接続することで、必要な電圧を出力できる。
【0003】
このように直列接続される太陽電池素子は、電極層および光電変換層の成膜と各層のパターニング、およびそれらの組み合わせ手順により形成される。このパターニングでは、前工程で加工された1次パターニングライン上に重ね合わせて、2次パターニングラインを加工する必要がある。このような加工には、位置決めの精度が高く、微細なパターニングラインの形成が可能なレーザ加工が適している。
【0004】
レーザ加工方法としては、被加工物を加工ステージ上に配置し、レーザ光を被加工物の加工パターンに沿って走査させ、所定パターンに加工する方法がある。
【0005】
レーザ光の走査方法としては、レーザ発振器からのレーザ光をレーザ光照射機のノズル先端まで導き、該レーザ光照射機をX−Y方向に移動させながらレーザ光を出射する方式や、特許文献1に記載されるように、ガルバノミラーを用いてレーザ光の出射角度を変化させ、加工面上におけるレーザ光の照射位置を高速で移動させながらパターニングするガルバノスキャナ方式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−335863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、レーザ光を走査する際において、レーザ光の進行方向を変えるときに、走査速度の加速、減速が必ず入る。このため、レーザ光の走査速度の加減速にあわせてレーザ発振器の出力制御が必要となるが、レーザ光の走査速度の加減速と、レーザ発振器の出力制御とがうまく同期しないと、レーザ加工の重ね合わせが要求仕様に対して多かったり、あるいは、少なかったりすることがあり、均一な加工品質を得ることが難しかった。特に被加工物を複雑な加工パターンにレーザ加工する場合、レーザ光の進行方向を変える部分が多く存在するので、加工品質の低下、製品へのダメージが特に懸念される。また、レーザ光の走査速度を加減速する頻度が増加するので、処理時間の増大につながる。更には、レーザ発振器内部のQスイッチと呼ばれるシャッターを繰り返し開閉することになるので、レーザ発振器への負担が大きくなり、設備安定稼動の観点からも望ましいとはいえない。
【0008】
ガルバノスキャナ方式であれば、加工速度を高くすることが可能であるが、その分加減速時におけるレーザ発振器の制御をより精密に行う必要があり、加工品質の低下、製品ダメージを招く恐れが大きかった。
【0009】
よって、本発明の目的は、被加工物を高速かつ高精度に加工することができるレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するにあたり、本発明のレーザ加工方法は、被加工物にレーザ光を照射して、被加工物を所定パターンにレーザ加工するレーザ加工方法において、レーザ光の走査ライン上に複数のマスクを配置して、前記走査ラインの前記マスクの間隙部分でレーザ光を透過させて前記被加工物にレーザ光を照射し、1つのラインの加工を行った後、前記走査ラインを変更すると共に、変更された走査ライン上に前記マスクを移動させて次のラインの加工を行うという工程を繰り返すことにより、被加工物を所定パターンにレーザ加工することを特徴とする。
【0011】
本発明のレーザ加工方法によれば、レーザ光の走査ライン上に複数のマスクを配置して、該ラインのマスクの間隙部分でレーザ光を透過させて被加工物にレーザ光を照射するので、該ライン上のマスク間隙部分のみをレーザ加工できる。そして、1つのラインの加工を行った後、走査ラインを変更すると共に、変更された走査ライン上にマスクを移動させて次のラインの加工を行うという操作を繰り返すことにより、各走査ライン上のマスク間隙部分のみがレーザ加工され、被加工物が所定パターンにレーザ加工される。
このように、レーザ光を複雑に走査しなくても、被加工物を所望の加工パターンにレーザ加工できるので、レーザ光の進行方向の変更頻度を軽減でき、被加工物を高速かつ高精度にレーザ加工できる。更には、レーザ発振器内部のシャッターの開閉制御を大幅に削減でき、装置負荷を抑えることができる。
【0012】
本発明のレーザ加工方法は、加工パターンがY方向に沿った加工ラインと、X方向に沿った加工ラインとで構成されており、Y方向に沿った加工ラインの加工時には、レーザ光をY方向に走査すると共に、前記マスクを該走査ラインに沿って配列し、1つのラインの加工を行った後に、前記レーザ光の走査ラインをX方向に平行移動させると共に、前記マスクを該走査ラインに整合するようにX方向に移動させて次のラインの加工を行うという工程を繰り返し、X方向に沿った加工ラインの加工時には、レーザ光をX方向に走査すると共に、前記マスクを該走査ラインに沿って配列し、1つのラインの加工を行った後に、前記レーザ光の走査ラインをY方向に平行移動させると共に、前記マスクを該走査ラインに整合するようにY方向に移動させて次のラインの加工を行うという工程を繰り返すことが好ましい。この態様によれば、X方向の加工とY方向の加工とを、一つの加工ステージ上で行うことができるので、より複雑な加工パターンを精度よく形成できる。
【0013】
本発明のレーザ加工方法は、前記被加工物が、基板上に形成された太陽電池素子であることが好ましい。
【0014】
また、本発明のレーザ加工装置は、被加工物にレーザ光を照射して、被加工物を所定パターンにレーザ加工するレーザ加工装置において、前記被加工物を載置する加工ステージと、前記被加工物にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、前記レーザ光を、前記被加工物上の所定のラインに沿って走査させるレーザ光走査手段と、前記レーザ光の走査ラインに沿って、該ライン上の非加工部分を覆うように配設される複数のマスクと、1つのラインの加工が終了して次の加工ラインに沿って前記レーザ光の走査ラインが変更されるとき、該走査ラインに整合するように前記マスクを移動させるマスク移動手段とを備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明のレーザ加工装置によれば、加工ステージに載置された被加工物に対し、レーザ光の走査ラインに沿って非加工部分を覆うようにマスクを配置するので、該ライン上のマスクの間隙部分のみをレーザ加工できる。そして、1つのラインの加工が終了して次の加工ラインに沿ってレーザ光の走査ラインが変更されるとき、該走査ラインに整合するようにマスクを移動させるので、次の走査ライン上のマスクの間隙部分のみがレーザ加工される。このような操作を繰り返すことにより、被加工物を所定パターンにレーザ加工できるので、レーザ光を複雑に走査しなくても被加工物を所定パターンにレーザ加工できる。
【0016】
本発明のレーザ加工装置の前記マスク移動手段は、前記レーザ光の走査ラインとほぼ平行に配置されると共に該走査ラインに対して直交する方向に移動する可動ベースと、この可動ベースに対して前記マスクを前記走査ラインと直交する方向に移動可能に保持するマスク保持手段とを有していることが好ましい。
【0017】
本発明のレーザ加工装置の前記可動ベースは、Y方向に沿って配置され、X方向に沿って移動可能とされた第1可動ベースと、X方向に沿って配置され、Y方向に沿って移動可能とされた第2可動ベースとを有しており、各可動ベースに前記マスク保持手段を介して複数のマスクが保持されていることが好ましい。この態様によれば、X方向の加工と、Y方向の加工とを、一つの加工ステージ上で行うことができ、より複雑な加工パターンを精度よく形成できる。
【0018】
本発明のレーザ加工装置の前記マスクの前記走査ラインと交差する縁部は、被加工物の表面に対する前記レーザ光の照射角度の最小となる角度よりも、浅い角度の斜面をなしていることが好ましい。
【0019】
本発明のレーザ加工装置は、前記被加工物が、基板上に形成された太陽電池素子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レーザの進行方向の変更頻度を軽減でき、被加工物を高速かつ高精度にレーザ加工できる。更には、レーザ発振器内部のシャッターの開閉制御を大幅に削減でき、装置負荷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のレーザ加工装置の第1の実施形態の概略構成図である。
【図2】同レーザ加工装置を用いて、被加工物に第1の加工ライン(L1)をレーザ加工した状態図である。
【図3】同レーザ加工装置を用いて、被加工物に第2の加工ライン(L2)をレーザ加工する直前の状態図である。
【図4】同レーザ加工装置を用いて、被加工物に第2の加工ライン(L2)をレーザ加工した状態図である。
【図5】同レーザ加工装置を用いて、被加工物に第3の加工ライン(L3)をレーザ加工した状態図である。
【図6】同レーザ加工装置を用いて、被加工物にY方向の加工ラインを形成した状態図である。
【図7】本発明のレーザ加工装置の第2の実施形態の概略構成図である。
【図8】本発明のレーザ加工装置の第3の実施形態の概略構成図である。
【図9】マスクの形状と、レーザ照射角度との関係を示す説明図である。
【図10】同レーザ加工装置での加工範囲を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を用いて、本発明のレーザ加工装置の第1の実施形態を説明する。
図1に示すように、このレーザ加工装置は、加工ステージ1上に被加工物100が載置される。
【0023】
加工ステージ1の上方には、図示しないレーザ発振器から出力されたレーザ光を照射するレーザ照射機2が配置されている。この実施形態におけるレーザ照射機2は、被加工物100の一方の端部から、他方の端部に向かってY方向に直線に走査し、該ラインの走査を終えたら、X方向に所定距離だけ平行移動し、次にラインの走査を行うように構成されている。
【0024】
加工ステージ1の対向する両側辺部には、X方向スライドレール4,4が配置され、該X方向スライドレール4,4によって、第1マスク支持フレーム3の両端が保持されている。
【0025】
第1マスク支持フレーム3には、マスク保持具5を介して、マスク6が複数個保持されている。この実施形態の場合、マスク6は、幅広のマスク6aと、幅狭のマスク6bの2種類のものが、それぞれ交互に取り付けられている。
【0026】
マスク6は、エアシリンダやカム等のマスク保持具5により、それぞれ独立してあるいは連動して、第1マスク支持フレーム3に対して、X方向に出没可能とされている。マスク6は、レーザ光の熱に耐え得る材質で構成されていることが好ましい。例えば、セラミック材料等が挙げられる。また、マスク6には、エアブロー、水冷等の冷却機構が設けられていてもよい。
【0027】
次に、このレーザ加工装置を用いた場合を例に挙げて、本発明のレーザ加工方法について、図2〜6を用いて説明する。
【0028】
本発明において被加工物として用いることのできるものとしては、特に限定は無い。レーザ加工によって、パターン形成が必要なものであればよい。例えば、基板上に形成された太陽電池素子等が好ましく挙げられる。
【0029】
まず、加工ステージ1上の所定位置に、被加工物100の加工面が上面になるようにして載置する。被加工物100の載置位置の位置決め方法としては、特に限定はない。従来公知の方法を採用できる。また、被加工物100は、帯状をなして搬送されるフィルム状基板等であってもよい。
【0030】
次に、図2に示すように、Y方向に沿った加工ライン(第1の加工ライン(L1))の非加工部分が覆われるように、被加工物100上にマスク6aを突出させて配列する。そして、レーザ光を第1の加工ライン(L1)に沿ってY方向に走査する。図2では、第1の加工ライン(L1)の一部がマスク6aで覆われているので、マスク6aとマスク6aとの間のみがレーザ加工される。
【0031】
このようにして、第1の加工ライン(L1)のレーザ加工が終了したら、レーザ照射機2を図3に示す次の加工ライン(第2の加工ライン(L2))までX方向に平行移動させる。また、これと同時に、スライドレール4、マスク保持具5を操作して、第1マスク支持フレーム3と、マスク6aと、マスク6bとをそれぞれX方向に平行移動させ、かつ、マスク6aを引き込め、マスク6bを突き出させて、第2の加工ライン(L2)の被加工部分をマスク6bで覆う。そして、図4に示すように、レーザ光を第2の加工ライン(L2)に沿って走査し、マスク6bとマスク6bとの間をレーザ加工する。
【0032】
第2の加工ライン(L2)のレーザ加工が終了したら、レーザ照射機2を、図5に示す次の加工ライン(第3の加工ライン(L3))までX方向に平行移動させると共に、スライドレール4、マスク保持具5を操作し、第1マスク支持フレーム3と、マスク6aと、マスク6bとをそれぞれX方向に平行移動させ、かつ、マスク6aを突き出し、マスク6bを引き込めて、第3の加工ライン(L3)の被加工部分をマスク6aで覆う。そして、レーザ光を第3の加工ライン(L3)に沿って走査し、マスク6aとマスク6aとの間をレーザ加工する。このような操作を繰り返することで、図6に示すように、Y方向に沿った加工ラインからなるパターンを被加工物100上に形成できる。
【0033】
このように、本発明によれば、レーザ光を複雑に走査しなくても、被加工物100を複雑な形状にレーザ加工できるので、被加工物を高速かつ高精度に加工することができる。
【0034】
図7を用いて、本発明のレーザ加工装置の第2の実施形態を説明する。
【0035】
この実施形態のレーザ加工装置は、加工ステージ1の図7の上下両辺部にX方向に沿ってX方向スライドレール4,4が配置され、該X方向スライドレール4,4によって、第1マスク支持フレーム3の両端が保持されている。第1マスク支持フレーム3には、マスク保持具5を介して、マスク6が複数個保持されている。マスク6は、幅広のマスク6aと、幅狭のマスク6bの2種類のものが、それぞれ交互に取り付けられている。マスク6は、エアシリンダやカム等のマスク保持具5により、それぞれ独立してあるいは連動して、第1マスク支持フレーム3に対して、X方向に出没可能とされている。
【0036】
また、加工ステージ1の図7中の両側辺部のY方向に沿って、Y方向スライドレール14,14が配置され、該Y方向スライドレール14,14によって、第2マスク支持フレーム13の両端が保持されている。第2マスク支持フレーム13には、マスク保持具15を介して、マスク16が複数個保持されている。マスク16は、マスク保持具15により、それぞれ独立してあるいは連動して、第2マスク支持フレーム13に対して、Y方向に出没可能とされている。
【0037】
この実施形態では、レーザ照射機2は、Y方向に沿った加工ラインの加工時には、被加工物100の一方の端部から、他方の端部に向かってY方向に直線的に走査し、該ラインの走査を終えたら、X方向に所定距離だけ平行移動し、次のラインの走査を行い、X方向に沿った加工ラインの加工時には、被加工物100の一方の端部から、他方の端部に向かってX方向に直線的に走査し、該ラインの走査を終えたら、Y方向に所定距離だけ平行移動し、次にラインの走査を行うように制御されている。
【0038】
次に、このレーザ加工装置を用いた場合を例に挙げて、本発明のレーザ加工方法について説明する。
【0039】
まず、加工ステージ1上に、被加工物100の加工面が上面になるようにして、所定位置に載置する。そして、前述した図2〜6に示す操作を行い、Y方向に沿った加工ラインからなる加工パターンを被加工物100上に形成する。
【0040】
Y方向に沿った加工ラインからなる加工パターンを形成した後、次に、第2マスク支持フレーム13をY方向に移動させて、被加工物100のX方向に沿った加工ラインの非加工部分が覆われるようにマスク16を配列する。そして、レーザ光をその加工ラインに沿って走査する。非加工部分はマスク16で覆われているので、マスク16とマスク16との間のみがレーザ加工される。
【0041】
そして、上記加工ラインのレーザ加工が終了したら、同様の操作を行って、次の加工ラインをレーザ加工する。このような操作を繰り返すことで、X方向に沿った加工ラインからなるパターンを被加工物100上に形成できる。なお、図7は、X方向の加工ラインの加工状態を示す状態図である。
【0042】
この実施形態によれば、同一の加工ステージ上で、被加工物100に、Y方向に沿った加工ラインと、X方向に沿った加工ラインとを形成できるので、より複雑なパターンを精度よく形成できる。
【0043】
図8を用いて、本発明のレーザ加工装置の第3の実施形態を説明する。
【0044】
この実施形態のレーザ加工装置は、ガルバノスキャナ方式のレーザ照射機を用いた点が、上記第1の実施形態と相違する。
【0045】
すなわち、加工ステージ1の中央上部に、ガルバノミラー21が取り付けられており、このガルバノミラー21の入射側には、加工面上でレーザ光が焦点を結ぶように調整するための焦点調整レンズ22を介して光軸を合わせたレーザ発振器23が取り付けられている。ガルバノミラー21は、反射ミラーをサーボモータ等の回転駆動機構により回転可能にしたものであり、2枚の反射ミラーの角度の組合せにより、レーザ発振器23から入射したレーザ光を被加工物100の加工面上の所望の位置に照射しながら高速で移動する。
【0046】
このレーザ加工装置を用いてレーザ加工する場合においても、上記した第1の実施形態のレーザ加工装置と同様にして行うことができる。
【0047】
すなわち、加工ステージ1上の所定位置に、被加工物100の加工面が上面になるようにして載置する。
【0048】
次に、第1マスク支持フレーム3と、マスク26とをそれぞれX方向に平行移動させて、被加工物100のY方向に沿った加工ラインの非加工部分が覆われるように、マスク26を配列する。そして、ガルバノミラー21の角度を調整して、レーザ光を第1の加工ラインに沿って走査する。図8では、加工ラインの一部がマスク26で覆われているので、マスク26とマスク26との間のみがレーザ加工される。
【0049】
そして、ある加工ラインのレーザ加工が終了したら、同様の操作を行って、次の加工ラインをレーザ加工する。このような操作を繰り返すことで、Y方向に沿った加工ラインからなるパターンを被加工物100上に形成できる。
【0050】
ここで、ガルバノミラー21を用いた場合、図9に示すように、レーザ光は、加工面に対してある角度θ(以下、照射角度θという)を持って照射される。このため、同図に示すように、マスク26のレーザ光の走査ラインと交差する縁部27は、レーザ光の最小照射角度θよりも、浅い角度θの斜面をなしていることが好ましい。
【0051】
また、ガルバノミラー21を用いた場合における走査範囲でのレーザ光の照射角度が最小となる場所は、図10のような加工範囲の隅X(Xmax,Ymax)である。この時の照射角度をθ2minとすると、θ2min<θとなるように、縁部27を設計することが好ましい。
【0052】
また、この実施形態のレーザ加工装置では、レーザ光は、加工面に対して角度を持って照射されるので、非加工部分がレーザ加工されないようにして、加工精度を向上させるため、以下の(A)又は(B)の操作を行うことが好ましい。
【0053】
(A)マスク26を降下させて、マスク26の下面と、同加工ラインにおける被加工物100の非加工部分との距離をゼロ(すなわと、マスク26の下面を、被加工物100の非加工部分に接触させる)にして、レーザ光を加工ライン上を走査させる。
(B)マスク26の下面と、被加工物100の加工面とを接触させない場合には、図9に示すように、マスク26の下面と、被加工物100の加工面との間に、隙間Δhが生じるので、マスク26を、非加工部分の上方から、(X,Y)方向にΔSだけずらして設置する。
【0054】
ここで、隙間Δhと、レーザ光の照射角度θと、マスク26の補正値ΔSは、下記(1)の関係にある。
Δh/ΔS=tanθ ・・・(1)
【0055】
したがって、被加工物100の加工面上のある点での補正値ΔSは、下記(2)式から算出できる。
ΔS=Δh/tanθ ・・・(2)
【0056】
レーザ光の照射角度θは、被加工物100の加工面上の座標位置(X,Y)がわかれば計算できるので、それぞれの座標位置での照射角度θのデータを準備しておき、各位置における補正値ΔSを決定して、マスク26の設置位置を調整する。
【符号の説明】
【0057】
1:加工ステージ
2:レーザ照射機
3:第1マスク支持フレーム
4:X方向スライドレール
5、15:マスク保持具
6、6a、6b、16、26:マスク
13:第2マスク支持フレーム
14:Y方向スライドレール
21:ガルバノミラー
22:焦点調整レンズ
23:レーザ発振器
100:被加工物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物にレーザ光を照射して、被加工物を所定パターンにレーザ加工するレーザ加工方法において、
レーザ光の走査ライン上に複数のマスクを配置して、前記走査ラインの前記マスクの間隙部分でレーザ光を透過させて前記被加工物にレーザ光を照射し、1つのラインの加工を行った後、前記走査ラインを変更すると共に、変更された走査ライン上に前記マスクを移動させて次のラインの加工を行うという工程を繰り返すことにより、被加工物を所定パターンにレーザ加工することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
加工パターンがY方向に沿った加工ラインと、X方向に沿った加工ラインとで構成されており、
Y方向に沿った加工ラインの加工時には、レーザ光をY方向に走査すると共に、前記マスクを該走査ラインに沿って配列し、1つのラインの加工を行った後に、前記レーザ光の走査ラインをX方向に平行移動させると共に、前記マスクを該走査ラインに整合するようにX方向に移動させて次のラインの加工を行うという工程を繰り返し、
X方向に沿った加工ラインの加工時には、レーザ光をX方向に走査すると共に、前記マスクを該走査ラインに沿って配列し、1つのラインの加工を行った後に、前記レーザ光の走査ラインをY方向に平行移動させると共に、前記マスクを該走査ラインに整合するようにY方向に移動させて次のラインの加工を行うという工程を繰り返す請求項1記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記被加工物が、基板上に形成された太陽電池素子である請求項1又は2記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
被加工物にレーザ光を照射して、被加工物を所定パターンにレーザ加工するレーザ加工装置において、
前記被加工物を載置する加工ステージと、
前記被加工物にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記レーザ光を、前記被加工物上の所定のラインに沿って走査させるレーザ光走査手段と、
前記レーザ光の走査ラインに沿って、該ライン上の非加工部分を覆うように配設される複数のマスクと、
1つのラインの加工が終了して次の加工ラインに沿って前記レーザ光の走査ラインが変更されるとき、該走査ラインに整合するように前記マスクを移動させるマスク移動手段とを備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
前記マスク移動手段は、前記レーザ光の走査ラインとほぼ平行に配置されると共に該走査ラインに対して直交する方向に移動する可動ベースと、この可動ベースに対して前記マスクを前記走査ラインと直交する方向に移動可能に保持するマスク保持手段とを有している請求項4記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記可動ベースは、Y方向に沿って配置され、X方向に沿って移動可能とされた第1可動ベースと、X方向に沿って配置され、Y方向に沿って移動可能とされた第2可動ベースとを有しており、各可動ベースに前記マスク保持手段を介して複数のマスクが保持されている請求項5記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記マスクの前記走査ラインと交差する縁部は、被加工物の表面に対する前記レーザ光の照射角度の最小となる角度よりも、浅い角度の斜面をなしている請求項4〜6のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記被加工物が、基板上に形成された太陽電池素子である請求項4〜7のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−30238(P2012−30238A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170180(P2010−170180)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】