レーザ加工装置、レーザ加工方法、及びティーチング方法
【課題】簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことを目的とする。
【解決手段】レーザ溶接装置10は、レーザ溶接ヘッド22、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の溶接開先を含む領域を撮像するカメラ28、カメラ28によって撮像された画像を表示すると共に、該カメラ中心線47を表示するモニタ、及び対象ワーク12にレーザマーカー46Aを照射するマーカー照射部30が備えられている。そして、レーザ溶接装置10は、操作ユニットによって、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うと共に、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うようにレーザ溶接ヘッド22の位置が操作され、制御装置が、操作されたレーザ溶接ヘッド22の位置で、対象ワーク12がレーザ溶接ヘッド22によって溶接されるように、レーザ溶接ヘッド22の位置を制御する。
【解決手段】レーザ溶接装置10は、レーザ溶接ヘッド22、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の溶接開先を含む領域を撮像するカメラ28、カメラ28によって撮像された画像を表示すると共に、該カメラ中心線47を表示するモニタ、及び対象ワーク12にレーザマーカー46Aを照射するマーカー照射部30が備えられている。そして、レーザ溶接装置10は、操作ユニットによって、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うと共に、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うようにレーザ溶接ヘッド22の位置が操作され、制御装置が、操作されたレーザ溶接ヘッド22の位置で、対象ワーク12がレーザ溶接ヘッド22によって溶接されるように、レーザ溶接ヘッド22の位置を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物と加工ヘッドとを相対的に移動させて、被加工物を加工するレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工ヘッドとして、例えばレーザ溶接を行うためのレーザ溶接ヘッド、又はアーク溶接を行うためのアーク溶接ヘッド等を備え、被加工物と加工ヘッドとを相対的に移動させて、被加工物を加工する加工装置が種々開発されている。このような加工装置は、被加工物を加工するにあたり、加工ヘッドの移動経路を例えばCADデータやCAMデータから取得したり、ティーチング操作を行う等によって予め設定する必要がある。
【0003】
特許文献1には、レーザヘッドトーチが設けられる手首部に連接されるアーム部と、手首部のティーチング操作を記憶する制御部とを備えた溶接ロボットであって、手首部又はレーザヘッドトーチの光軸との相対的な向きが保持されるように角度計測機器を設け、角度計測機器の測定値に基づいて手首部及びアーム部を作動させることによりレーザヘッドトーチが目標とする目標角度に調整する、調整方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−46699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の調整方法では、角度計測機器の指示値(角度θ)がレーザヘッドトーチの目標角度と一致するか、又は目標角度の許容範囲内となるように手首部等を作動させて調整するので、レーザヘッドトーチの目標角度が正確でなければ、角度計測機器の指示値とレーザヘッドトーチの目標角度とを一致させても正確に被加工物を加工できなかった。
このため、加工精度の向上のためには、レーザヘッドトーチの目標角度を正確に得るための作業が必要であり、ティーチング操作等の作業が煩雑となっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる、レーザ加工装置、レーザ加工方法、及びティーチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工装置、レーザ加工方法、及びティーチング方法は以下の手段を採用する。
【0008】
すなわち、本発明に係るレーザ加工装置は、被加工物に対して相対的に移動しながらレーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うと共に、前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する操作手段と、前記操作手段によって操作された前記相対位置で前記被加工物が前記加工ヘッドによって加工されるように、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を制御する制御手段と、を備える。
【0009】
本発明によれば、レーザ加工装置は、被加工物に対して相対的に移動しながら加工を行う加工ヘッド、加工ヘッドによる被加工物の加工部位(例えば溶接開先等)を含む領域を撮像する撮像手段、撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段、及び被加工物に光学的な標識を照射する照射手段が備えられている。
なお、上記相対的に移動しながら加工を行うとは、被加工物及び加工ヘッドの両方又は一方が移動しながら、加工ヘッドが被加工物に対して加工を行うことをいう。
【0010】
また、照射手段は、照射した光学的な標識の中心位置と表示手段に表示された画像の中心位置とが重なり合った場合に、加工ヘッドと被加工物との距離が被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置されている。
該距離は、例えば、加工ヘッドがレーザ溶接を行うためのレーザ溶接ヘッドである場合、レーザの焦点位置が被加工物の略表面となる距離である。すなわち、該距離は、被加工物に対する加工に適した距離のことである。
【0011】
そして、操作手段によって、標識の中心位置と画像の中心位置とが重なり合うと共に、加工部位と画像の中心位置とが重なり合うように加工ヘッドと被加工物との相対位置が操作される。
加工ヘッドが被加工物の上方に位置している場合を例にすると、標識の中心位置と画像の中心位置とを重なり合わせるとは、加工ヘッドと被加工物の高さ方向(Z軸方向)の距離を調整することをいう。一方、加工部位と画像の中心位置とを重なり合わせるとは、高さ方向に直交する平面方向(X軸方向及びY軸方向)に対する加工ヘッドの位置を調整することをいう。
このような操作を、複数又は所定の長さの加工部位に対して連続的に行うことが、ティーチング操作となる。
【0012】
そして、操作手段で操作された加工ヘッドと被加工物との相対位置で被加工物が加工ヘッドによって加工されるように、制御手段によって、加工ヘッドと被加工物との相対位置が制御される。
【0013】
以上のように、加工ヘッドが被加工物を加工する場合における加工ヘッドと被加工物との相対位置は、光学的な標識の中心位置、画像の中心位置、及び被加工物の加工部位を、操作者が表示手段で視認しながら操作手段を操作することによって決定され、ティーチングデータが作成される。
このため、操作者は、視覚によって直感的に加工ヘッドの移動経路を被加工物の加工部位に応じて決定できるので、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる。
【0014】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記操作手段が、前記加工ヘッドが前記被加工物を加工している場合であっても、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置の操作を可能とされてもよい。
【0015】
加工ヘッドによる被加工物への加工が熱を伴う加工である場合、被加工物が、加工されると共に変形する場合がある。このような場合、予め定められた移動経路に従って加工ヘッドを移動させながら加工を行っても、加工ヘッドは、本来加工すべき加工部位からずれた部位を加工してしまう可能性がある。
【0016】
そこで、本発明によれば、加工ヘッドが被加工物を加工している場合であっても、操作者による操作手段を用いた、加工ヘッドと被加工物との相対位置の操作が可能とされているので、加工ヘッドによる被加工物への加工が熱を伴う加工であっても、被加工物に対する加工精度を向上させることができる。
【0017】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記標識を2次元形状としてもよい。
【0018】
本発明によれば、照射手段から照射される光学的な標識を、線と線との組み合わせ、円形と多角形との組み合わせ、及び円形又は多角形と線との組み合わせ等の2次元形状とする。
例えば、光学的な標識を円とした場合、被加工物に対する加工ヘッドの傾きが無い場合、該標識は、被加工物の表面において真円を描く。しかし、傾きが生じている場合、該標識は、被加工物の表面において楕円状となる。そして、傾きの度合いが大きいと、楕円の長軸と短軸の比は大きくなる。
【0019】
このように、標識を2次元形状とすることによって、操作者は、被加工物に対する加工ヘッドの傾きの有無及び傾きの度合いを容易に視認することができる。
【0020】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記操作手段が、遠隔によって、前記被加工物と前記被加工物との相対位置の操作を可能とされてもよい。
【0021】
本発明によれば、例えば、加工ヘッドによる被加工物の加工によって高輝度の光が生じる場合であっても、操作手段が遠隔による操作が可能とされているので、操作者への高輝度の光を容易に遮ることができる。
【0022】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記撮像手段が、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工によって生じる光を抑制するモードを有し、該モードのオン又はオフが切り替えられてもよい。
【0023】
本発明によれば、撮像手段が加工ヘッドによる被加工物の加工によって生じる光を抑制するモードを有しているので、該モードをオンとすることで、例えば、加工ヘッドによる被加工物の加工によって高輝度の光が生じる場合であっても、操作者は、表示手段を介して被加工物の加工状態を確認できる。
【0024】
さらに、本発明に係るレーザ加工方法は、被加工物に対して相対的に移動しながら溶接レーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、を備えたレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法であって、前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うと共に、前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する第1工程と、前記第1工程によって操作された前記相対位置で前記被加工物が前記加工ヘッドによって加工されるように、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を制御する第2工程と、を含む。
【0025】
本発明によれば、操作者は、視覚によって直感的に加工ヘッドの移動経路を被加工物の加工部位に応じて決定できるので、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる。
【0026】
また、本発明に係るティーチング方法は、被加工物に対して相対的に移動しながらレーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、を備えたレーザ加工装置を用いたティーチング方法であって、前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する第1工程と、前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記相対位置を操作する第2工程と、前記第1工程と前記第2工程とを繰り返すことによって取得された相対位置の時間変化を、前記加工ヘッドのティーチングデータとして予め定められた記憶手段へ記憶させる第3工程と、を含む。
【0027】
本発明によれば、操作者は、視覚によって直感的に加工ヘッドの移動経路を被加工物の加工部位に応じて決定できるので、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ溶接装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るレーザマーカーを示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る操作ユニットの外観構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るレーザ溶接ヘッドのZ軸方向の移動の説明に要する図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るレーザ溶接ヘッドのX軸方向の移動の説明に要する図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るレーザ溶接ヘッドのY軸方向の移動の説明に要する図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態に係る補正後のティーチングポイントを示す概略図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るレーザマーカーを示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接ヘッドのZ軸方向の移動の説明に要する図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接ヘッドが+R回転軸方向にずれている場合のレーザマーカーの形状を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接ヘッドが−R回転軸方向にずれている場合のレーザマーカーの形状を示す図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接ヘッドが+U回転軸方向にずれている場合のレーザマーカーの形状を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接ヘッドが−U回転軸方向にずれている場合のレーザマーカーの形状を示す図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係るレーザマーカーの他の形状を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係るレーザ加工装置、レーザ加工方法、及びティーチング方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0031】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に、本第1実施形態に係るレーザ加工装置の構成図を示す。本第1実施形態では、レーザ加工装置を、一例として、被加工物(以下、「対象ワーク12」という。)に対する加工としてレーザによる溶接(以下、「レーザ溶接」という。)を行うレーザ溶接装置として説明する。
【0032】
本第1実施形態に係るレーザ溶接装置10は、対象ワーク12に対してレーザ溶接を行う溶接ロボット14、レーザ発振を行うレーザ発振器16、溶接ロボット14及びレーザ発振器16を制御する制御装置18、並びにレーザ溶接装置10の操作を行うための操作システム20を備えている。
【0033】
溶接ロボット14は、対象ワーク12に対して相対的に移動しながら溶接を行うレーザ溶接ヘッド22が先端に設けられ、かつ縦横高さ方向に回動自在なアーム部24を備えている。そして、溶接ロボット14は、制御装置18からの制御信号に基づいて、アーム部24を回動させ、レーザ発振器16で発振されたレーザをレーザ溶接ヘッド22から照射して対象ワーク12に対する溶接を行う。
【0034】
なお、上記相対的に移動しながら溶接を行うとは、対象ワーク12及びレーザ溶接ヘッド22の少なくとも一方が移動しながら、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して溶接を行うことをいうが、本第1実施形態では、一例として、対象ワーク12が固定され、レーザ溶接ヘッド22が移動しながら溶接を行う形態について説明する。
また、以下の説明において、対象ワーク12とレーザ溶接ヘッド22先端との距離(溶接高さ)を、高さ方向(Z軸方向)と定義し、高さ方向に直交する平面方向を縦方向(X軸方向)及び横方向(Y軸方向)と定義する。
【0035】
また、アーム部24の先端には、対象ワーク12の表面を観察するための観察ユニット26が設けられている。
観察ユニット26は、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の加工部位である溶接開先を含む領域を撮像するカメラ28、及び対象ワーク12に光学的な標識(以下、「レーザマーカー46A」という。)を照射するマーカー照射部30を備えている。なお、本第1実施形態に係るレーザマーカー46Aは、一例として、十字形となっている。
【0036】
操作システム20は、アーム部24を回動させるための操作指示を与える操作ユニット40、カメラ28によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示するモニタ42、モニタ42に表示される画像の中心位置を示すカメラ中心線47を発生させ、モニタ42へ出力するライン発生器44を備える。
【0037】
本第1実施形態に係るカメラ28は、溶接を行っていない場合において自然光の明るさで撮像を行う通常カメラモード、及びレーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の溶接によって生じる溶接輝度光を抑制する溶接カメラモードを有している。
溶接カメラモードをオンとすることで、例えば、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の溶接によって溶接輝度光が生じても、操作者は、モニタ42を介して対象ワーク12の溶接状態を確認できる。なお、通常カメラモードから溶接カメラモードへの切り替えは、溶接ロボット14が溶接を行うと共に自動的に切り替えられてもよい。
【0038】
このため、カメラ28には、溶接近傍と溶接溶融池とを同時に撮像するための色波長フィルターが備えられており、溶接カメラモードがオンとされた場合、カメラ28のレンズに該色波長フィルターが装着される。
【0039】
図2は、モニタ42の画面に表示されたレーザマーカー46Aを示す図である。
なお、モニタ42の画面の縦方向は、X軸方向に対応し、横方向はY軸方向に対応している。また、モニタ42に表示される領域は、拡大されており、例えば,縦(X軸)10mm、横(Y軸)15mmの領域が表示される。なお、図2には図示していないものの、モニタ42には、対象ワーク12も表示される。
【0040】
図2に示す例は、レーザマーカー46Aとカメラ中心線47で示される画像の中心位置とが重なっている場合である。このような場合は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との距離が、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12に対する溶接が可能な距離となっている場合である。
溶接が可能な距離とは、レーザ溶接ヘッド22から照射されるレーザの焦点位置が、対象ワーク12の略表面となる距離(Z軸で示される高さ)であり、すなわち、対象ワーク12に対する溶接に適した距離のことである。
【0041】
このため、マーカー照射部30は、照射したレーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47で示される画像の中心位置とが重なり合った場合に、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との距離が、対象ワーク12に対する溶接が可能な距離となるように予め配置されている。
【0042】
また、レーザ中心点48は、レーザ溶接ヘッド22によって対象ワーク12が溶接される位置を示しており、レーザ中心点48は、実際にレーザ溶接ヘッド22から照射されるレーザ(溶接時に比べて強度を弱くしたレーザ)による光である。なお、レーザ中心点48は、操作ユニット40によって点灯のオン又はオフが切り替え可能とされている。
【0043】
そして、操作者は、操作ユニット40を用いて、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うと共に、対象ワーク12の溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うようにレーザ溶接ヘッド22の位置を操作(ティーチング操作)する。
なお、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とを重なり合わせるとは、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12の高さ方向(Z軸方向)の距離を調整することをいう。一方、対象ワーク12の溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とを重なり合わせるとは、平面方向(X軸方向及びY軸方向)に対するレーザ溶接ヘッド22の位置を調整することをいう。
【0044】
図3は、操作ユニット40の外観図であり、図3(a)は正面図を示し、図3(b)は側面図を示す。
本第1実施形態に係る操作ユニット40は、一例として、2本の操縦桿50(所謂、ジョイスティック)、各種スイッチ52、及びタッチパネル54を備えている。
【0045】
操縦桿50は、一方がアーム部24をZ軸方向に移動させると共にレーザ溶接ヘッド22の傾きを変化させ、他方がアーム部24をX軸方向及びY軸方向へ移動させる。
操縦桿50が操作されることによって、アーム部24と共にアーム部24の先端のレーザ溶接ヘッド22及び観察ユニット26も移動する。このため、操作者は、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を用いて、上述したようなレーザ溶接ヘッド22の位置の操作を行える。
【0046】
各種スイッチ52は、アーム部24の操作の開始又は停止を切り替えるスイッチ、アーム部24の移動を一時停止させるためのスイッチ、及び非常停止させるためのスイッチ等である。
【0047】
タッチパネル54は、運転モードの切り替え、溶接カメラモードと通常カメラモードとの切り替え、操縦桿50の操作量に応じたアーム部24の移動速度の切り替え、並びにレーザ中心点48のオン又はオフの切り替え等種々の指示を受け付ける。
【0048】
そして、操作ユニット40は、操縦桿50の操作量(操縦桿50を傾かせた方向、及び操縦桿50を傾かせた角度)、並びに各種スイッチ52及びタッチパネル54で受け付けた各種指示等の操作信号を制御装置18へ送信する。
制御装置18は、操作信号を受信すると、操作信号に含まれる操縦桿50の操作量を、アーム部24の移動量(レーザ溶接ヘッド22のX,Y,Z軸位置、傾き角度)に変換し、該移動量に基づいてアーム部24を移動させる。また、操縦桿50の操作量に対するアーム部24の移動速度の倍率は、タッチパネル54に対する操作によって複数段階(例えば、高・中・低)に変更可能とされている。また、操縦桿50の操作量に対するアーム部24の移動量の倍率も、複数段階に変更可能としてもよい。
【0049】
さらに、本第1実施形態に係る操作ユニット40は、有線又は無線を用いた、溶接ロボット14の遠隔による操作が可能とされている。このため、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の溶接によって生じる溶接輝度光を遮るための手立てを容易に行うことができる。溶接輝度光を遮るための手立てとは、例えば、溶接ロボット14と操作ユニット40を別室に配置する、又は溶接ロボット14と操作ユニット40との間に遮光板を介在させる等である。
【0050】
次に、本第1実施形態に係る溶接ロボット14の操作者による操作について説明する。
操作者が溶接ロボット14を操作する場合とは、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との縦横高さ(X軸、Y軸、及びZ軸)の位置関係を溶接開先に適した位置関係とする場合である。このような場合の具体例は、レーザ溶接ヘッド22の対象ワーク12に対する移動経路を導出するためのティーチング操作を行う場合や、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12を溶接している場合等である。
【0051】
図4は、レーザ溶接ヘッド22のZ軸方向の移動の説明に要する図である。
図4(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図4(B)から図4(D)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0052】
図4(A)における溶接位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、溶接に適した高さとなっている場合であり、図4(C)に示されるようにレーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合う。
【0053】
一方、図4(A)における+Z位置で示される高さは、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との距離が近すぎるため、溶接に適した高さとなっておらず、図4(B)に示されるようにレーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0054】
また、図4(A)における−Z位置で示される高さは、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との距離が遠すぎるため、溶接に適した高さとなっておらず、図4(D)に示されるようにレーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0055】
そこで、図4(B),(D)に示されるようにレーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合っていない場合、操作者は、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作する。そして、操作者は、図4(C)に示されるように、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とを重なり合わせることによって、レーザ溶接ヘッド22の位置を溶接に適した高さとなるように、レーザ溶接ヘッド22の位置を操作する。
【0056】
図5は、レーザ溶接ヘッド22のX軸方向の移動の説明に要する図である。なお、図5に示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、溶接に適した高さとなっている。
図5(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図5(B)から図5(D)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0057】
図5(A)における溶接位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置と溶接開先が一致する場合であり、図5(C)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合う。
【0058】
一方、図5(A)における+X位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置が溶接開先からずれている場合であり、図5(B)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0059】
また、図5(A)における−X位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置が溶接開先からずれている場合であり、図5(D)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0060】
そこで、図5(B),(D)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合っていない場合、操作者は、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作する。そして、操作者は、図5(C)に示されるように、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とを重なり合わせることによって、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置と溶接開先が一致するように、レーザ溶接ヘッド22の位置を操作する。
【0061】
図6は、レーザ溶接ヘッド22のY軸方向の移動の説明に要する図である。なお、図6に示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、溶接に適した高さとなっている。
図6(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図6(B)から図6(D)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0062】
図6(A)における溶接位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置と溶接開先が一致する場合であり、図6(C)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合う。
【0063】
一方、図6(A)における+Y位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置が溶接開先からずれている場合であり、図6(B)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0064】
また、図6(A)における−Y位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置が溶接開先からずれている場合であり、図6(D)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0065】
そこで、図6(B),(D)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合っていない場合、操作者は、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作する。そして、操作者は、図6(C)に示されるように、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とを重なり合わせることによって、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置と溶接開先が一致するように、レーザ溶接ヘッド22の位置を操作する。
【0066】
そして、図4から図6を用いて説明した操作者による操作は、溶接開先に対して連続的に行われるとティーチング操作となり、レーザ溶接ヘッド22の位置(座標位置)の時間変化が、レーザ溶接ヘッド22の移動経路として導出される。
【0067】
導出された移動経路は、溶接ロボット14の動作に関する制御サーボの制御情報と共に、ティーチングデータとして予め定められた記憶装置へ記憶される。なお、記憶装置は、制御装置18が備えてもよいし、制御装置18でティーチングデータを読み込むことが可能とされていれば、他の情報処理装置に備えられてもよい。
制御装置18は、記憶装置から読み出したティーチングデータに基づいて、アーム部24を制御することによって、複数の対象ワーク12に対して同様の溶接加工の繰り返しが可能となる。
【0068】
図7は、本第1実施形態に係るレーザ溶接装置10によるティーチング操作を用いた溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0069】
まず、ステップ100では、元となるティーチングデータを作成する。本ステップ100で作成するティーチングデータは、例えば、CADデータやCAMデータに基づいて作成してもよいし、手動で作成してもよい。
【0070】
次のステップ102では、ステップ100で作成したティーチングデータに基づいて、レーザ溶接ヘッド22を対象ワーク12に対して移動させる(以下、「自動送り」という。)。なお、本ステップ102では、溶接は行われていない。
【0071】
操作者は、自動送りを行いながら、レーザマーカー46A、カメラ中心線47、及び対象ワーク12の溶接開先をモニタ42で視認する。
そして、操作者は、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とがずれている場合に、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うように操作ユニット40を操作する。また、操作者は、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とがずれている場合に、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うように操作ユニット40を操作する。
【0072】
これにより、元のティーチングデータにより示されるテーチングポイントと溶接開先とのずれが、図8に示されるように、補正される。
操作ユニット40で操作されたレーザ溶接ヘッド22の座標位置は、制御装置18によって適宜記憶され、補正後のティーチングデータが作成される。
【0073】
次のステップ104では、補正後のティーチングデータを用いて、対象ワーク12に対する溶接を行う。
ここで、レーザ溶接は、熱を伴う加工であるので、対象ワーク12が、溶接されると共に変形する場合がある。このような場合、予め定められたティーチングデータに従ってレーザ溶接ヘッド22を移動させながら溶接を行っても、レーザ溶接ヘッド22は、本来溶接すべき溶接開先からずれた部位を溶接してしまう可能性がある。
【0074】
そこで、本第1実施形態では、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12を溶接している場合であっても、操作者による操作ユニット40を用いた、レーザ溶接ヘッド22の位置の操作が可能とされている。この場合、カメラ28は、操作ユニット40が操作されることによって、溶接カメラモードに切り替えられる。
そして、操作者は、溶接カメラモードとされたカメラ28で撮像された画像をモニタ42で視認しながら、レーザ溶接ヘッド22の位置を操作することによって、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12に対する溶接位置を補正することができる。
【0075】
なお、図7に示すフローチャートでは、元となるティーチングデータを補正するために、操作ユニット40を用いたレーザ溶接ヘッド22の操作を行う場合について説明したが、これに限らず、元となるティーチングデータそのものを作成するために、操作ユニット40を用いたレーザ溶接ヘッド22の操作を行ってよい。
【0076】
以上説明したように、本第1実施形態に係るレーザ溶接装置10は、レーザ溶接ヘッド22、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の溶接開先を含む領域を撮像するカメラ28、カメラ28によって撮像された画像を表示すると共に、該カメラ中心線47を表示するモニタ42、及び対象ワーク12にレーザマーカー46Aを照射するマーカー照射部30が備えられている。
レーザ溶接装置10は、操作ユニット40によって、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うと共に、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うようにレーザ溶接ヘッド22の位置が操作される。そして、制御装置18が、操作されたレーザ溶接ヘッド22の位置で、対象ワーク12がレーザ溶接ヘッド22によって溶接されるように、レーザ溶接ヘッド22の位置を制御する。
【0077】
このように、レーザ溶接装置10では、操作者が、レーザマーカー46A、カメラ中心線47、及び対象ワーク12の溶接開先をモニタ42で視認しながら操作ユニット40を操作することによって、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12を加工する場合におけるレーザ溶接ヘッド22の位置が決定可能とされている。
このため、本第1実施形態に係るレーザ溶接装置10を用いることによって、操作者は、視覚によって直感的にレーザ溶接ヘッド22の移動経路を対象ワーク12の溶接開先に応じて決定できるので、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる。
【0078】
特に、元となるティーチングデータを容易に補正することができるため、操作者は、元となるティーチングデータを用いて、小ロット品や多品種に対するティーチングデータを容易に作成することができる。
【0079】
また、溶接開先を視認しながらティーチングデータを作成するため、レーザ溶接装置10は、対象ワーク12に対する加工精度を向上させることができる。
【0080】
また、本第1実施形態に係るレーザ溶接装置10は、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12を溶接している場合であっても、操作者による操作ユニット40を用いた、レーザ溶接ヘッド22の位置の操作が可能とされているので、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12への加工が熱を伴う加工であっても、対象ワーク12に対する加工精度を向上させることができる。
【0081】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
本第2実施形態では、レーザマーカーを、円形を含むレーザマーカーとし、一例として、図9に示すように円形と十字形を組み合わせたレーザマーカー46Bとする。
なお、本第2実施形態に係るレーザ溶接装置10の構成は、図1に示す第1実施形態に係るレーザ溶接装置10の構成と同様であるので説明を省略する。
【0082】
本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bは、図9に示すように、Y軸に平行な直線がX軸移動用マーカーであり、X軸に平行な直線がY軸移動用マーカーである。このX軸及びY軸に平行な直線で形成されるレーザマーカー46Bによって得られる作用は、第1実施形態に係るレーザマーカー46Aと同様である。
一方、円形のマーカーは、R,U回転軸用マーカーである。R軸とはY軸を中心軸とした回転軸であり、U軸とはX軸を中心軸とした回転軸である。
【0083】
対象ワーク12に対するレーザ溶接ヘッドの傾きが無い場合、該レーザマーカー46Bは、対象ワーク12の表面において真円を描く。しかし、傾きが生じている場合、該レーザマーカー46Bは、対象ワーク12の表面において楕円状となる。そして、傾きの度合いが大きいと、楕円の長軸と短軸の比は大きくなる。
このように、レーザマーカー46Bに円形を含むことによって、操作者は、対象ワーク12に対するレーザ溶接ヘッド22の傾きの有無及び傾きの度合いを容易に視認することができる。
【0084】
図10は、本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bを用いたレーザ溶接ヘッド22のZ軸方向の移動の説明に要する図である。
図10(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図10(B)から図10(D)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0085】
図10(A)における溶接位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、溶接に適した高さとなっている場合であり、図10(C)に示されるようにレーザマーカー46Bの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合う。
【0086】
一方、図10(A)における+Z位置又は−Z位置で示される高さは、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との距離が適切でないため、図10(B),(D)に示されるようにレーザマーカー46Bの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0087】
しかし、この場合も、図10(A)に示されるレーザ溶接ヘッド22は、対象ワーク12に対して傾いていないため、レーザマーカー46Bの円形は、真円を描くこととなる。
【0088】
図11は、本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bを用いたレーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して+R軸方向に傾いている場合を示す図である。
図11(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図11(B)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0089】
図11(A)に示されるように、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して+R軸方向に傾いていると、図11(B)に示されるようにレーザマーカー46Bは−X軸方向に長い楕円形となる。
【0090】
そこで、レーザマーカー46Bが図11(B)に示されるような楕円形状となっている場合、操作者は、レーザマーカー46Bが対象ワーク12の表面で真円となるように、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作し、レーザ溶接ヘッド22を−R軸方向へ回動させる。
【0091】
図12は、本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bを用いたレーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して−R軸方向に傾いている場合を示す図である。
図12(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図12(B)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0092】
図12(A)に示されるように、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して−R軸方向に傾いていると、図12(B)に示されるようにレーザマーカー46Bは+X軸方向に長い楕円形となる。
【0093】
そこで、レーザマーカー46Bが図12(B)に示されるような楕円形状となっている場合、操作者は、レーザマーカー46Bが対象ワーク12の表面で真円となるように、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作し、レーザ溶接ヘッド22を+R軸方向へ回動させる。
【0094】
図13は、本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bを用いたレーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して+U軸方向に傾いている場合を示す図である。
図13(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図13(B)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0095】
図13(A)に示されるように、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して+U軸方向に傾いていると、図13(B)に示されるようにレーザマーカー46Bは−Y軸方向に長い楕円形となる。
【0096】
そこで、レーザマーカー46Bが図13(B)に示されるような楕円形状となっている場合、操作者は、レーザマーカー46Bが対象ワーク12の表面で真円となるように、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作し、レーザ溶接ヘッド22を−U軸方向へ回動させる。
【0097】
図14は、本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bを用いたレーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して−U軸方向に傾いている場合を示す図である。
図14(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図14(B)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0098】
図14(A)に示されるように、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して−U軸方向に傾いていると、図14(B)に示されるようにレーザマーカー46Bは+Y軸方向に長い楕円形となる。
【0099】
そこで、レーザマーカー46Bが図14(B)に示されるような楕円形状となっている場合、操作者は、レーザマーカー46Bが対象ワーク12の表面で真円となるように、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作し、レーザ溶接ヘッド22を+U軸方向へ回動させる。
【0100】
なお、レーザマーカー46Bの形状は、上記の他に、図15(A)に示すような四角形と十字形との組み合わせ、図15(B)に示すような円形と点との組み合わせ、円形と多角形との組み合わせ、円形又は多角形と線との組み合わせ、多角形と多角形の中心を示す点との組み合わせ、及び円形と円形の中心を示す点との組み合わせ等、他の2次元形状としてもよい。
【0101】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0102】
例えば、上記各実施形態では、本発明をレーザ溶接装置10に適用する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明を、加工ヘッドと被加工物とを相対的に移動させながら加工を行う装置であれば、他の装置に適用する形態としてもよい。
他の装置としては、例えば、被加工物に対しアークによる溶接を行う溶接装置、レーザとアークを併用して溶接を行う溶接装置、被加工物をレーザ等によって切断する切断装置、又は窓枠(サッシ)とガラスとを接合するための樹脂を窓枠とガラスとの接合部分に吐出させるための装置等が挙げられる。
【0103】
さらに、本発明は、先端部分から樹脂塗布を行う装置に適用してもよい。
【0104】
また、本発明は、金型等の複雑形状を持つワークに対して、粉末溶射装置等の先端部の目的形状部に沿った動きを生成する場合に適用しもよい。
【0105】
また、上記各実施形態では、対象ワーク12を固定し、レーザ溶接ヘッド22の位置を操作する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、レーザ溶接ヘッド22を固定し、対象ワーク12の位置を操作する形態、又は対象ワーク12の位置とレーザ溶接ヘッド22の位置両方を操作する形態としてもよい。
【0106】
また、上記各実施形態では、操作ユニット40は、操縦桿50を備え、操縦桿50の操作量に応じてアーム部24を回動させる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、操作ユニット40は、操縦桿50の替わりに例えばボタン(例えば所謂十字キー)を備え、ボタンの操作量に応じてアーム部24を回動させる形態としてもよい。この形態の場合、ボタンを押圧した時間長さをアーム部24に対する操作量とする。
【0107】
また、上記各実施形態では、操作システム20は、操作ユニット40とモニタ42とが別構成とされているが、一体構成としてもよい。
【符号の説明】
【0108】
10 レーザ溶接装置
18 制御装置
22 レーザ溶接ヘッド
28 カメラ
30 マーカー照射部
40 操作ユニット
42 モニタ
46A レーザマーカー
46B レーザマーカー
47 カメラ中心線
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物と加工ヘッドとを相対的に移動させて、被加工物を加工するレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工ヘッドとして、例えばレーザ溶接を行うためのレーザ溶接ヘッド、又はアーク溶接を行うためのアーク溶接ヘッド等を備え、被加工物と加工ヘッドとを相対的に移動させて、被加工物を加工する加工装置が種々開発されている。このような加工装置は、被加工物を加工するにあたり、加工ヘッドの移動経路を例えばCADデータやCAMデータから取得したり、ティーチング操作を行う等によって予め設定する必要がある。
【0003】
特許文献1には、レーザヘッドトーチが設けられる手首部に連接されるアーム部と、手首部のティーチング操作を記憶する制御部とを備えた溶接ロボットであって、手首部又はレーザヘッドトーチの光軸との相対的な向きが保持されるように角度計測機器を設け、角度計測機器の測定値に基づいて手首部及びアーム部を作動させることによりレーザヘッドトーチが目標とする目標角度に調整する、調整方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−46699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の調整方法では、角度計測機器の指示値(角度θ)がレーザヘッドトーチの目標角度と一致するか、又は目標角度の許容範囲内となるように手首部等を作動させて調整するので、レーザヘッドトーチの目標角度が正確でなければ、角度計測機器の指示値とレーザヘッドトーチの目標角度とを一致させても正確に被加工物を加工できなかった。
このため、加工精度の向上のためには、レーザヘッドトーチの目標角度を正確に得るための作業が必要であり、ティーチング操作等の作業が煩雑となっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる、レーザ加工装置、レーザ加工方法、及びティーチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工装置、レーザ加工方法、及びティーチング方法は以下の手段を採用する。
【0008】
すなわち、本発明に係るレーザ加工装置は、被加工物に対して相対的に移動しながらレーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うと共に、前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する操作手段と、前記操作手段によって操作された前記相対位置で前記被加工物が前記加工ヘッドによって加工されるように、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を制御する制御手段と、を備える。
【0009】
本発明によれば、レーザ加工装置は、被加工物に対して相対的に移動しながら加工を行う加工ヘッド、加工ヘッドによる被加工物の加工部位(例えば溶接開先等)を含む領域を撮像する撮像手段、撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段、及び被加工物に光学的な標識を照射する照射手段が備えられている。
なお、上記相対的に移動しながら加工を行うとは、被加工物及び加工ヘッドの両方又は一方が移動しながら、加工ヘッドが被加工物に対して加工を行うことをいう。
【0010】
また、照射手段は、照射した光学的な標識の中心位置と表示手段に表示された画像の中心位置とが重なり合った場合に、加工ヘッドと被加工物との距離が被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置されている。
該距離は、例えば、加工ヘッドがレーザ溶接を行うためのレーザ溶接ヘッドである場合、レーザの焦点位置が被加工物の略表面となる距離である。すなわち、該距離は、被加工物に対する加工に適した距離のことである。
【0011】
そして、操作手段によって、標識の中心位置と画像の中心位置とが重なり合うと共に、加工部位と画像の中心位置とが重なり合うように加工ヘッドと被加工物との相対位置が操作される。
加工ヘッドが被加工物の上方に位置している場合を例にすると、標識の中心位置と画像の中心位置とを重なり合わせるとは、加工ヘッドと被加工物の高さ方向(Z軸方向)の距離を調整することをいう。一方、加工部位と画像の中心位置とを重なり合わせるとは、高さ方向に直交する平面方向(X軸方向及びY軸方向)に対する加工ヘッドの位置を調整することをいう。
このような操作を、複数又は所定の長さの加工部位に対して連続的に行うことが、ティーチング操作となる。
【0012】
そして、操作手段で操作された加工ヘッドと被加工物との相対位置で被加工物が加工ヘッドによって加工されるように、制御手段によって、加工ヘッドと被加工物との相対位置が制御される。
【0013】
以上のように、加工ヘッドが被加工物を加工する場合における加工ヘッドと被加工物との相対位置は、光学的な標識の中心位置、画像の中心位置、及び被加工物の加工部位を、操作者が表示手段で視認しながら操作手段を操作することによって決定され、ティーチングデータが作成される。
このため、操作者は、視覚によって直感的に加工ヘッドの移動経路を被加工物の加工部位に応じて決定できるので、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる。
【0014】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記操作手段が、前記加工ヘッドが前記被加工物を加工している場合であっても、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置の操作を可能とされてもよい。
【0015】
加工ヘッドによる被加工物への加工が熱を伴う加工である場合、被加工物が、加工されると共に変形する場合がある。このような場合、予め定められた移動経路に従って加工ヘッドを移動させながら加工を行っても、加工ヘッドは、本来加工すべき加工部位からずれた部位を加工してしまう可能性がある。
【0016】
そこで、本発明によれば、加工ヘッドが被加工物を加工している場合であっても、操作者による操作手段を用いた、加工ヘッドと被加工物との相対位置の操作が可能とされているので、加工ヘッドによる被加工物への加工が熱を伴う加工であっても、被加工物に対する加工精度を向上させることができる。
【0017】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記標識を2次元形状としてもよい。
【0018】
本発明によれば、照射手段から照射される光学的な標識を、線と線との組み合わせ、円形と多角形との組み合わせ、及び円形又は多角形と線との組み合わせ等の2次元形状とする。
例えば、光学的な標識を円とした場合、被加工物に対する加工ヘッドの傾きが無い場合、該標識は、被加工物の表面において真円を描く。しかし、傾きが生じている場合、該標識は、被加工物の表面において楕円状となる。そして、傾きの度合いが大きいと、楕円の長軸と短軸の比は大きくなる。
【0019】
このように、標識を2次元形状とすることによって、操作者は、被加工物に対する加工ヘッドの傾きの有無及び傾きの度合いを容易に視認することができる。
【0020】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記操作手段が、遠隔によって、前記被加工物と前記被加工物との相対位置の操作を可能とされてもよい。
【0021】
本発明によれば、例えば、加工ヘッドによる被加工物の加工によって高輝度の光が生じる場合であっても、操作手段が遠隔による操作が可能とされているので、操作者への高輝度の光を容易に遮ることができる。
【0022】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記撮像手段が、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工によって生じる光を抑制するモードを有し、該モードのオン又はオフが切り替えられてもよい。
【0023】
本発明によれば、撮像手段が加工ヘッドによる被加工物の加工によって生じる光を抑制するモードを有しているので、該モードをオンとすることで、例えば、加工ヘッドによる被加工物の加工によって高輝度の光が生じる場合であっても、操作者は、表示手段を介して被加工物の加工状態を確認できる。
【0024】
さらに、本発明に係るレーザ加工方法は、被加工物に対して相対的に移動しながら溶接レーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、を備えたレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法であって、前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うと共に、前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する第1工程と、前記第1工程によって操作された前記相対位置で前記被加工物が前記加工ヘッドによって加工されるように、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を制御する第2工程と、を含む。
【0025】
本発明によれば、操作者は、視覚によって直感的に加工ヘッドの移動経路を被加工物の加工部位に応じて決定できるので、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる。
【0026】
また、本発明に係るティーチング方法は、被加工物に対して相対的に移動しながらレーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、を備えたレーザ加工装置を用いたティーチング方法であって、前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する第1工程と、前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記相対位置を操作する第2工程と、前記第1工程と前記第2工程とを繰り返すことによって取得された相対位置の時間変化を、前記加工ヘッドのティーチングデータとして予め定められた記憶手段へ記憶させる第3工程と、を含む。
【0027】
本発明によれば、操作者は、視覚によって直感的に加工ヘッドの移動経路を被加工物の加工部位に応じて決定できるので、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ溶接装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るレーザマーカーを示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る操作ユニットの外観構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るレーザ溶接ヘッドのZ軸方向の移動の説明に要する図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るレーザ溶接ヘッドのX軸方向の移動の説明に要する図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るレーザ溶接ヘッドのY軸方向の移動の説明に要する図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態に係る補正後のティーチングポイントを示す概略図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るレーザマーカーを示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接ヘッドのZ軸方向の移動の説明に要する図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接ヘッドが+R回転軸方向にずれている場合のレーザマーカーの形状を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接ヘッドが−R回転軸方向にずれている場合のレーザマーカーの形状を示す図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接ヘッドが+U回転軸方向にずれている場合のレーザマーカーの形状を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接ヘッドが−U回転軸方向にずれている場合のレーザマーカーの形状を示す図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係るレーザマーカーの他の形状を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係るレーザ加工装置、レーザ加工方法、及びティーチング方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0031】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に、本第1実施形態に係るレーザ加工装置の構成図を示す。本第1実施形態では、レーザ加工装置を、一例として、被加工物(以下、「対象ワーク12」という。)に対する加工としてレーザによる溶接(以下、「レーザ溶接」という。)を行うレーザ溶接装置として説明する。
【0032】
本第1実施形態に係るレーザ溶接装置10は、対象ワーク12に対してレーザ溶接を行う溶接ロボット14、レーザ発振を行うレーザ発振器16、溶接ロボット14及びレーザ発振器16を制御する制御装置18、並びにレーザ溶接装置10の操作を行うための操作システム20を備えている。
【0033】
溶接ロボット14は、対象ワーク12に対して相対的に移動しながら溶接を行うレーザ溶接ヘッド22が先端に設けられ、かつ縦横高さ方向に回動自在なアーム部24を備えている。そして、溶接ロボット14は、制御装置18からの制御信号に基づいて、アーム部24を回動させ、レーザ発振器16で発振されたレーザをレーザ溶接ヘッド22から照射して対象ワーク12に対する溶接を行う。
【0034】
なお、上記相対的に移動しながら溶接を行うとは、対象ワーク12及びレーザ溶接ヘッド22の少なくとも一方が移動しながら、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して溶接を行うことをいうが、本第1実施形態では、一例として、対象ワーク12が固定され、レーザ溶接ヘッド22が移動しながら溶接を行う形態について説明する。
また、以下の説明において、対象ワーク12とレーザ溶接ヘッド22先端との距離(溶接高さ)を、高さ方向(Z軸方向)と定義し、高さ方向に直交する平面方向を縦方向(X軸方向)及び横方向(Y軸方向)と定義する。
【0035】
また、アーム部24の先端には、対象ワーク12の表面を観察するための観察ユニット26が設けられている。
観察ユニット26は、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の加工部位である溶接開先を含む領域を撮像するカメラ28、及び対象ワーク12に光学的な標識(以下、「レーザマーカー46A」という。)を照射するマーカー照射部30を備えている。なお、本第1実施形態に係るレーザマーカー46Aは、一例として、十字形となっている。
【0036】
操作システム20は、アーム部24を回動させるための操作指示を与える操作ユニット40、カメラ28によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示するモニタ42、モニタ42に表示される画像の中心位置を示すカメラ中心線47を発生させ、モニタ42へ出力するライン発生器44を備える。
【0037】
本第1実施形態に係るカメラ28は、溶接を行っていない場合において自然光の明るさで撮像を行う通常カメラモード、及びレーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の溶接によって生じる溶接輝度光を抑制する溶接カメラモードを有している。
溶接カメラモードをオンとすることで、例えば、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の溶接によって溶接輝度光が生じても、操作者は、モニタ42を介して対象ワーク12の溶接状態を確認できる。なお、通常カメラモードから溶接カメラモードへの切り替えは、溶接ロボット14が溶接を行うと共に自動的に切り替えられてもよい。
【0038】
このため、カメラ28には、溶接近傍と溶接溶融池とを同時に撮像するための色波長フィルターが備えられており、溶接カメラモードがオンとされた場合、カメラ28のレンズに該色波長フィルターが装着される。
【0039】
図2は、モニタ42の画面に表示されたレーザマーカー46Aを示す図である。
なお、モニタ42の画面の縦方向は、X軸方向に対応し、横方向はY軸方向に対応している。また、モニタ42に表示される領域は、拡大されており、例えば,縦(X軸)10mm、横(Y軸)15mmの領域が表示される。なお、図2には図示していないものの、モニタ42には、対象ワーク12も表示される。
【0040】
図2に示す例は、レーザマーカー46Aとカメラ中心線47で示される画像の中心位置とが重なっている場合である。このような場合は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との距離が、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12に対する溶接が可能な距離となっている場合である。
溶接が可能な距離とは、レーザ溶接ヘッド22から照射されるレーザの焦点位置が、対象ワーク12の略表面となる距離(Z軸で示される高さ)であり、すなわち、対象ワーク12に対する溶接に適した距離のことである。
【0041】
このため、マーカー照射部30は、照射したレーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47で示される画像の中心位置とが重なり合った場合に、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との距離が、対象ワーク12に対する溶接が可能な距離となるように予め配置されている。
【0042】
また、レーザ中心点48は、レーザ溶接ヘッド22によって対象ワーク12が溶接される位置を示しており、レーザ中心点48は、実際にレーザ溶接ヘッド22から照射されるレーザ(溶接時に比べて強度を弱くしたレーザ)による光である。なお、レーザ中心点48は、操作ユニット40によって点灯のオン又はオフが切り替え可能とされている。
【0043】
そして、操作者は、操作ユニット40を用いて、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うと共に、対象ワーク12の溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うようにレーザ溶接ヘッド22の位置を操作(ティーチング操作)する。
なお、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とを重なり合わせるとは、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12の高さ方向(Z軸方向)の距離を調整することをいう。一方、対象ワーク12の溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とを重なり合わせるとは、平面方向(X軸方向及びY軸方向)に対するレーザ溶接ヘッド22の位置を調整することをいう。
【0044】
図3は、操作ユニット40の外観図であり、図3(a)は正面図を示し、図3(b)は側面図を示す。
本第1実施形態に係る操作ユニット40は、一例として、2本の操縦桿50(所謂、ジョイスティック)、各種スイッチ52、及びタッチパネル54を備えている。
【0045】
操縦桿50は、一方がアーム部24をZ軸方向に移動させると共にレーザ溶接ヘッド22の傾きを変化させ、他方がアーム部24をX軸方向及びY軸方向へ移動させる。
操縦桿50が操作されることによって、アーム部24と共にアーム部24の先端のレーザ溶接ヘッド22及び観察ユニット26も移動する。このため、操作者は、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を用いて、上述したようなレーザ溶接ヘッド22の位置の操作を行える。
【0046】
各種スイッチ52は、アーム部24の操作の開始又は停止を切り替えるスイッチ、アーム部24の移動を一時停止させるためのスイッチ、及び非常停止させるためのスイッチ等である。
【0047】
タッチパネル54は、運転モードの切り替え、溶接カメラモードと通常カメラモードとの切り替え、操縦桿50の操作量に応じたアーム部24の移動速度の切り替え、並びにレーザ中心点48のオン又はオフの切り替え等種々の指示を受け付ける。
【0048】
そして、操作ユニット40は、操縦桿50の操作量(操縦桿50を傾かせた方向、及び操縦桿50を傾かせた角度)、並びに各種スイッチ52及びタッチパネル54で受け付けた各種指示等の操作信号を制御装置18へ送信する。
制御装置18は、操作信号を受信すると、操作信号に含まれる操縦桿50の操作量を、アーム部24の移動量(レーザ溶接ヘッド22のX,Y,Z軸位置、傾き角度)に変換し、該移動量に基づいてアーム部24を移動させる。また、操縦桿50の操作量に対するアーム部24の移動速度の倍率は、タッチパネル54に対する操作によって複数段階(例えば、高・中・低)に変更可能とされている。また、操縦桿50の操作量に対するアーム部24の移動量の倍率も、複数段階に変更可能としてもよい。
【0049】
さらに、本第1実施形態に係る操作ユニット40は、有線又は無線を用いた、溶接ロボット14の遠隔による操作が可能とされている。このため、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の溶接によって生じる溶接輝度光を遮るための手立てを容易に行うことができる。溶接輝度光を遮るための手立てとは、例えば、溶接ロボット14と操作ユニット40を別室に配置する、又は溶接ロボット14と操作ユニット40との間に遮光板を介在させる等である。
【0050】
次に、本第1実施形態に係る溶接ロボット14の操作者による操作について説明する。
操作者が溶接ロボット14を操作する場合とは、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との縦横高さ(X軸、Y軸、及びZ軸)の位置関係を溶接開先に適した位置関係とする場合である。このような場合の具体例は、レーザ溶接ヘッド22の対象ワーク12に対する移動経路を導出するためのティーチング操作を行う場合や、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12を溶接している場合等である。
【0051】
図4は、レーザ溶接ヘッド22のZ軸方向の移動の説明に要する図である。
図4(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図4(B)から図4(D)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0052】
図4(A)における溶接位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、溶接に適した高さとなっている場合であり、図4(C)に示されるようにレーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合う。
【0053】
一方、図4(A)における+Z位置で示される高さは、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との距離が近すぎるため、溶接に適した高さとなっておらず、図4(B)に示されるようにレーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0054】
また、図4(A)における−Z位置で示される高さは、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との距離が遠すぎるため、溶接に適した高さとなっておらず、図4(D)に示されるようにレーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0055】
そこで、図4(B),(D)に示されるようにレーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合っていない場合、操作者は、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作する。そして、操作者は、図4(C)に示されるように、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とを重なり合わせることによって、レーザ溶接ヘッド22の位置を溶接に適した高さとなるように、レーザ溶接ヘッド22の位置を操作する。
【0056】
図5は、レーザ溶接ヘッド22のX軸方向の移動の説明に要する図である。なお、図5に示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、溶接に適した高さとなっている。
図5(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図5(B)から図5(D)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0057】
図5(A)における溶接位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置と溶接開先が一致する場合であり、図5(C)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合う。
【0058】
一方、図5(A)における+X位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置が溶接開先からずれている場合であり、図5(B)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0059】
また、図5(A)における−X位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置が溶接開先からずれている場合であり、図5(D)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0060】
そこで、図5(B),(D)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合っていない場合、操作者は、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作する。そして、操作者は、図5(C)に示されるように、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とを重なり合わせることによって、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置と溶接開先が一致するように、レーザ溶接ヘッド22の位置を操作する。
【0061】
図6は、レーザ溶接ヘッド22のY軸方向の移動の説明に要する図である。なお、図6に示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、溶接に適した高さとなっている。
図6(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図6(B)から図6(D)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0062】
図6(A)における溶接位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置と溶接開先が一致する場合であり、図6(C)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合う。
【0063】
一方、図6(A)における+Y位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置が溶接開先からずれている場合であり、図6(B)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0064】
また、図6(A)における−Y位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置が溶接開先からずれている場合であり、図6(D)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0065】
そこで、図6(B),(D)に示されるように溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合っていない場合、操作者は、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作する。そして、操作者は、図6(C)に示されるように、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とを重なり合わせることによって、レーザ溶接ヘッド22からのレーザの照射位置と溶接開先が一致するように、レーザ溶接ヘッド22の位置を操作する。
【0066】
そして、図4から図6を用いて説明した操作者による操作は、溶接開先に対して連続的に行われるとティーチング操作となり、レーザ溶接ヘッド22の位置(座標位置)の時間変化が、レーザ溶接ヘッド22の移動経路として導出される。
【0067】
導出された移動経路は、溶接ロボット14の動作に関する制御サーボの制御情報と共に、ティーチングデータとして予め定められた記憶装置へ記憶される。なお、記憶装置は、制御装置18が備えてもよいし、制御装置18でティーチングデータを読み込むことが可能とされていれば、他の情報処理装置に備えられてもよい。
制御装置18は、記憶装置から読み出したティーチングデータに基づいて、アーム部24を制御することによって、複数の対象ワーク12に対して同様の溶接加工の繰り返しが可能となる。
【0068】
図7は、本第1実施形態に係るレーザ溶接装置10によるティーチング操作を用いた溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0069】
まず、ステップ100では、元となるティーチングデータを作成する。本ステップ100で作成するティーチングデータは、例えば、CADデータやCAMデータに基づいて作成してもよいし、手動で作成してもよい。
【0070】
次のステップ102では、ステップ100で作成したティーチングデータに基づいて、レーザ溶接ヘッド22を対象ワーク12に対して移動させる(以下、「自動送り」という。)。なお、本ステップ102では、溶接は行われていない。
【0071】
操作者は、自動送りを行いながら、レーザマーカー46A、カメラ中心線47、及び対象ワーク12の溶接開先をモニタ42で視認する。
そして、操作者は、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とがずれている場合に、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うように操作ユニット40を操作する。また、操作者は、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とがずれている場合に、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うように操作ユニット40を操作する。
【0072】
これにより、元のティーチングデータにより示されるテーチングポイントと溶接開先とのずれが、図8に示されるように、補正される。
操作ユニット40で操作されたレーザ溶接ヘッド22の座標位置は、制御装置18によって適宜記憶され、補正後のティーチングデータが作成される。
【0073】
次のステップ104では、補正後のティーチングデータを用いて、対象ワーク12に対する溶接を行う。
ここで、レーザ溶接は、熱を伴う加工であるので、対象ワーク12が、溶接されると共に変形する場合がある。このような場合、予め定められたティーチングデータに従ってレーザ溶接ヘッド22を移動させながら溶接を行っても、レーザ溶接ヘッド22は、本来溶接すべき溶接開先からずれた部位を溶接してしまう可能性がある。
【0074】
そこで、本第1実施形態では、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12を溶接している場合であっても、操作者による操作ユニット40を用いた、レーザ溶接ヘッド22の位置の操作が可能とされている。この場合、カメラ28は、操作ユニット40が操作されることによって、溶接カメラモードに切り替えられる。
そして、操作者は、溶接カメラモードとされたカメラ28で撮像された画像をモニタ42で視認しながら、レーザ溶接ヘッド22の位置を操作することによって、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12に対する溶接位置を補正することができる。
【0075】
なお、図7に示すフローチャートでは、元となるティーチングデータを補正するために、操作ユニット40を用いたレーザ溶接ヘッド22の操作を行う場合について説明したが、これに限らず、元となるティーチングデータそのものを作成するために、操作ユニット40を用いたレーザ溶接ヘッド22の操作を行ってよい。
【0076】
以上説明したように、本第1実施形態に係るレーザ溶接装置10は、レーザ溶接ヘッド22、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12の溶接開先を含む領域を撮像するカメラ28、カメラ28によって撮像された画像を表示すると共に、該カメラ中心線47を表示するモニタ42、及び対象ワーク12にレーザマーカー46Aを照射するマーカー照射部30が備えられている。
レーザ溶接装置10は、操作ユニット40によって、レーザマーカー46Aの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うと共に、溶接開先とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合うようにレーザ溶接ヘッド22の位置が操作される。そして、制御装置18が、操作されたレーザ溶接ヘッド22の位置で、対象ワーク12がレーザ溶接ヘッド22によって溶接されるように、レーザ溶接ヘッド22の位置を制御する。
【0077】
このように、レーザ溶接装置10では、操作者が、レーザマーカー46A、カメラ中心線47、及び対象ワーク12の溶接開先をモニタ42で視認しながら操作ユニット40を操作することによって、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12を加工する場合におけるレーザ溶接ヘッド22の位置が決定可能とされている。
このため、本第1実施形態に係るレーザ溶接装置10を用いることによって、操作者は、視覚によって直感的にレーザ溶接ヘッド22の移動経路を対象ワーク12の溶接開先に応じて決定できるので、簡易な操作によって、ティーチング操作を行うことができる。
【0078】
特に、元となるティーチングデータを容易に補正することができるため、操作者は、元となるティーチングデータを用いて、小ロット品や多品種に対するティーチングデータを容易に作成することができる。
【0079】
また、溶接開先を視認しながらティーチングデータを作成するため、レーザ溶接装置10は、対象ワーク12に対する加工精度を向上させることができる。
【0080】
また、本第1実施形態に係るレーザ溶接装置10は、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12を溶接している場合であっても、操作者による操作ユニット40を用いた、レーザ溶接ヘッド22の位置の操作が可能とされているので、レーザ溶接ヘッド22による対象ワーク12への加工が熱を伴う加工であっても、対象ワーク12に対する加工精度を向上させることができる。
【0081】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
本第2実施形態では、レーザマーカーを、円形を含むレーザマーカーとし、一例として、図9に示すように円形と十字形を組み合わせたレーザマーカー46Bとする。
なお、本第2実施形態に係るレーザ溶接装置10の構成は、図1に示す第1実施形態に係るレーザ溶接装置10の構成と同様であるので説明を省略する。
【0082】
本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bは、図9に示すように、Y軸に平行な直線がX軸移動用マーカーであり、X軸に平行な直線がY軸移動用マーカーである。このX軸及びY軸に平行な直線で形成されるレーザマーカー46Bによって得られる作用は、第1実施形態に係るレーザマーカー46Aと同様である。
一方、円形のマーカーは、R,U回転軸用マーカーである。R軸とはY軸を中心軸とした回転軸であり、U軸とはX軸を中心軸とした回転軸である。
【0083】
対象ワーク12に対するレーザ溶接ヘッドの傾きが無い場合、該レーザマーカー46Bは、対象ワーク12の表面において真円を描く。しかし、傾きが生じている場合、該レーザマーカー46Bは、対象ワーク12の表面において楕円状となる。そして、傾きの度合いが大きいと、楕円の長軸と短軸の比は大きくなる。
このように、レーザマーカー46Bに円形を含むことによって、操作者は、対象ワーク12に対するレーザ溶接ヘッド22の傾きの有無及び傾きの度合いを容易に視認することができる。
【0084】
図10は、本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bを用いたレーザ溶接ヘッド22のZ軸方向の移動の説明に要する図である。
図10(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図10(B)から図10(D)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0085】
図10(A)における溶接位置で示されるレーザ溶接ヘッド22の位置は、溶接に適した高さとなっている場合であり、図10(C)に示されるようにレーザマーカー46Bの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合う。
【0086】
一方、図10(A)における+Z位置又は−Z位置で示される高さは、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との距離が適切でないため、図10(B),(D)に示されるようにレーザマーカー46Bの中心位置とカメラ中心線47の中心位置とが重なり合わない。
【0087】
しかし、この場合も、図10(A)に示されるレーザ溶接ヘッド22は、対象ワーク12に対して傾いていないため、レーザマーカー46Bの円形は、真円を描くこととなる。
【0088】
図11は、本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bを用いたレーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して+R軸方向に傾いている場合を示す図である。
図11(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図11(B)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0089】
図11(A)に示されるように、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して+R軸方向に傾いていると、図11(B)に示されるようにレーザマーカー46Bは−X軸方向に長い楕円形となる。
【0090】
そこで、レーザマーカー46Bが図11(B)に示されるような楕円形状となっている場合、操作者は、レーザマーカー46Bが対象ワーク12の表面で真円となるように、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作し、レーザ溶接ヘッド22を−R軸方向へ回動させる。
【0091】
図12は、本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bを用いたレーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して−R軸方向に傾いている場合を示す図である。
図12(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図12(B)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0092】
図12(A)に示されるように、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して−R軸方向に傾いていると、図12(B)に示されるようにレーザマーカー46Bは+X軸方向に長い楕円形となる。
【0093】
そこで、レーザマーカー46Bが図12(B)に示されるような楕円形状となっている場合、操作者は、レーザマーカー46Bが対象ワーク12の表面で真円となるように、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作し、レーザ溶接ヘッド22を+R軸方向へ回動させる。
【0094】
図13は、本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bを用いたレーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して+U軸方向に傾いている場合を示す図である。
図13(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図13(B)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0095】
図13(A)に示されるように、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して+U軸方向に傾いていると、図13(B)に示されるようにレーザマーカー46Bは−Y軸方向に長い楕円形となる。
【0096】
そこで、レーザマーカー46Bが図13(B)に示されるような楕円形状となっている場合、操作者は、レーザマーカー46Bが対象ワーク12の表面で真円となるように、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作し、レーザ溶接ヘッド22を−U軸方向へ回動させる。
【0097】
図14は、本第2実施形態に係るレーザマーカー46Bを用いたレーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して−U軸方向に傾いている場合を示す図である。
図14(A)は、レーザ溶接ヘッド22と対象ワーク12との位置関係を示した側面図を示し、図14(B)は、モニタ42に表示される画面を示す。
【0098】
図14(A)に示されるように、レーザ溶接ヘッド22が対象ワーク12に対して−U軸方向に傾いていると、図14(B)に示されるようにレーザマーカー46Bは+Y軸方向に長い楕円形となる。
【0099】
そこで、レーザマーカー46Bが図14(B)に示されるような楕円形状となっている場合、操作者は、レーザマーカー46Bが対象ワーク12の表面で真円となるように、モニタ42を視認しながら操作ユニット40を操作し、レーザ溶接ヘッド22を+U軸方向へ回動させる。
【0100】
なお、レーザマーカー46Bの形状は、上記の他に、図15(A)に示すような四角形と十字形との組み合わせ、図15(B)に示すような円形と点との組み合わせ、円形と多角形との組み合わせ、円形又は多角形と線との組み合わせ、多角形と多角形の中心を示す点との組み合わせ、及び円形と円形の中心を示す点との組み合わせ等、他の2次元形状としてもよい。
【0101】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0102】
例えば、上記各実施形態では、本発明をレーザ溶接装置10に適用する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明を、加工ヘッドと被加工物とを相対的に移動させながら加工を行う装置であれば、他の装置に適用する形態としてもよい。
他の装置としては、例えば、被加工物に対しアークによる溶接を行う溶接装置、レーザとアークを併用して溶接を行う溶接装置、被加工物をレーザ等によって切断する切断装置、又は窓枠(サッシ)とガラスとを接合するための樹脂を窓枠とガラスとの接合部分に吐出させるための装置等が挙げられる。
【0103】
さらに、本発明は、先端部分から樹脂塗布を行う装置に適用してもよい。
【0104】
また、本発明は、金型等の複雑形状を持つワークに対して、粉末溶射装置等の先端部の目的形状部に沿った動きを生成する場合に適用しもよい。
【0105】
また、上記各実施形態では、対象ワーク12を固定し、レーザ溶接ヘッド22の位置を操作する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、レーザ溶接ヘッド22を固定し、対象ワーク12の位置を操作する形態、又は対象ワーク12の位置とレーザ溶接ヘッド22の位置両方を操作する形態としてもよい。
【0106】
また、上記各実施形態では、操作ユニット40は、操縦桿50を備え、操縦桿50の操作量に応じてアーム部24を回動させる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、操作ユニット40は、操縦桿50の替わりに例えばボタン(例えば所謂十字キー)を備え、ボタンの操作量に応じてアーム部24を回動させる形態としてもよい。この形態の場合、ボタンを押圧した時間長さをアーム部24に対する操作量とする。
【0107】
また、上記各実施形態では、操作システム20は、操作ユニット40とモニタ42とが別構成とされているが、一体構成としてもよい。
【符号の説明】
【0108】
10 レーザ溶接装置
18 制御装置
22 レーザ溶接ヘッド
28 カメラ
30 マーカー照射部
40 操作ユニット
42 モニタ
46A レーザマーカー
46B レーザマーカー
47 カメラ中心線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に対して相対的に移動しながらレーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、
前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、
前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、
前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うと共に、前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する操作手段と、
前記操作手段によって操作された前記相対位置で前記被加工物が前記加工ヘッドによって加工されるように、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を制御する制御手段と、
を備えたレーザ加工装置。
【請求項2】
前記操作手段は、前記加工ヘッドが前記被加工物を加工している場合であっても、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置の操作が可能とされている請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記標識は、2次元形状である請求項1又は請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記操作手段は、遠隔によって、前記被加工物と前記被加工物との相対位置の操作が可能とされている請求項1から請求項3の何れか1項記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工によって生じる光を抑制するモードを有し、該モードのオン又はオフが切り替えられる請求項1から請求項4の何れか1項記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
被加工物に対して相対的に移動しながらレーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、を備えたレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法であって、
前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うと共に、前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する第1工程と、
前記第1工程によって操作された前記相対位置で前記被加工物が前記加工ヘッドによって加工されるように、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を制御する第2工程と、
を含むレーザ加工方法。
【請求項7】
被加工物に対して相対的に移動しながらレーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、を備えたレーザ加工装置を用いたティーチング方法であって、
前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する第1工程と、
前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記相対位置を操作する第2工程と、
前記第1工程と前記第2工程とを繰り返すことによって取得された相対位置の時間変化を、前記加工ヘッドのティーチングデータとして予め定められた記憶手段へ記憶させる第3工程と、
を含むティーチング方法。
【請求項1】
被加工物に対して相対的に移動しながらレーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、
前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、
前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、
前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うと共に、前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する操作手段と、
前記操作手段によって操作された前記相対位置で前記被加工物が前記加工ヘッドによって加工されるように、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を制御する制御手段と、
を備えたレーザ加工装置。
【請求項2】
前記操作手段は、前記加工ヘッドが前記被加工物を加工している場合であっても、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置の操作が可能とされている請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記標識は、2次元形状である請求項1又は請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記操作手段は、遠隔によって、前記被加工物と前記被加工物との相対位置の操作が可能とされている請求項1から請求項3の何れか1項記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工によって生じる光を抑制するモードを有し、該モードのオン又はオフが切り替えられる請求項1から請求項4の何れか1項記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
被加工物に対して相対的に移動しながらレーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、を備えたレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法であって、
前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うと共に、前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する第1工程と、
前記第1工程によって操作された前記相対位置で前記被加工物が前記加工ヘッドによって加工されるように、前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を制御する第2工程と、
を含むレーザ加工方法。
【請求項7】
被加工物に対して相対的に移動しながらレーザを用いて溶接加工を行う加工ヘッドと、前記加工ヘッドによる前記被加工物の加工部位を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像を表示すると共に、該画像の中心位置を表示する表示手段と、前記被加工物に光学的な標識を照射し、かつ該標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合った場合に、前記加工ヘッドと前記被加工物との距離が前記被加工物に対する加工が可能な距離になるように配置された照射手段と、を備えたレーザ加工装置を用いたティーチング方法であって、
前記標識の中心位置と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記加工ヘッドと前記被加工物との相対位置を操作する第1工程と、
前記加工部位と前記画像の中心位置とが重なり合うように前記相対位置を操作する第2工程と、
前記第1工程と前記第2工程とを繰り返すことによって取得された相対位置の時間変化を、前記加工ヘッドのティーチングデータとして予め定められた記憶手段へ記憶させる第3工程と、
を含むティーチング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−157867(P2012−157867A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17289(P2011−17289)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000236104)MHIソリューションテクノロジーズ株式会社 (33)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000236104)MHIソリューションテクノロジーズ株式会社 (33)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
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