説明

レーザ加工装置及びレーザ加工方法

【課題】厚みを有する被加工物を波長が短いレーザを用いて切断することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を得ることを目的とする。
【解決手段】レーザ加工装置10は、第1照射部14によって集束されたYAG系レーザを被加工物12に照射し、第2照射部16によって集束され、YAG系レーザよりも波長が長いCOレーザをYAG系レーザが照射されている被加工物12の領域に照射する。すなわち、YAG系レーザが被加工物12を構成する金属を溶融させ、YAG系レーザよりもプラズマ吸収率の高いCOレーザが溶融金属の温度を上昇させる。この結果、溶融金属が高温となり、溶融金属をアシストガスで吹き飛ばせるほど溶融金属の粘性を下げることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、特許文献1に記載されているような、金属板のワークを切断する加工ヘッドに、レーザ発振器から光ファイバーを介してレーザビームが送られ、該レーザビームによってワークを切断するレーザ切断装置の開発が進んでいる。この光ファイバーを用いたレーザ(以下、「ファイバーレーザ」という。)は、固体レーザ(例えば、YAG系レーザ)が光ファイバーを用いて伝送されるものである。
そして、ファイバーレーザは、気体レーザ(例えば、COレーザ)に比較してレーザの生成に要する電気エネルギーが少なく、ロッドタイプの固体レーザに比較してレーザビームの品質(レーザビームの集光性と直進性)が高く、高出力化が可能であるため、普及が進んでいる。
【0003】
ここで、レーザ加工装置は、被加工物である金属の切断において、レーザビームのパワーだけでなく、レーザビームを被加工物に照射すると共に吹きつける酸素ガス(アシストガス)によって金属が酸化する酸化熱も利用して被加工物を高温にすることにより、切断を行う場合がある。被加工物が高温となることで、被加工物を構成する金属及び酸化熱を得る過程で生成される酸化金属は、溶融して溶融金属となる。そして、溶融金属が上記アシストガスの圧力によって被加工物から吹き流されて除去されることによって、被加工物は切断される。
ところで、溶融金属は、温度が高いほど粘性が下がり流動性が高くなるため、レーザ加工装置は、被加工物の切断温度を高くすることで溶融金属の粘性を下げ、アシストガスによる溶融金属の排除性を向上させる必要がある。
【0004】
このため、レーザビームによる切断では、被加工物内部の温度、すなわち切断温度を高温にしなければならない。例えば、切断対象となる被加工物がFe(鉄)の場合、切断温度は、1200℃〜1700℃前後としなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−296266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ファイバーレーザ等に用いられるYAG系レーザでは、従来から用いられているCOレーザに比較して切断時の温度が上昇しにくいことが指摘されている。
【0007】
この理由は、以下のように考えられている。
YAG系レーザとCOレーザとでは、YAG系レーザの波長が1.06〜1.08μm、COレーザの波長が10.6μmというように波長の大きさが異なることによって、材料に対するレーザの吸収率(以下、「材料吸収率」という。)及びプラズマに対するレーザの吸収率(以下、「プラズマ吸収率」という。)が異なる。例えば、従来から知られている図4の実験例に示すように、鉄に対する材料吸収率は、COレーザでは0.08であり、COレーザよりも波長の短いYAG系レーザでは0.39である。
【0008】
このように、YAG系レーザでは、COレーザに比較して材料吸収率が高いため、COレーザに比較して被加工物の溶融にレーザビームのパワーがより消費され、そのためレーザビームのパワーが被加工物の温度上昇に寄与しづらい。さらに、被加工物を切断する際には、被加工物である金属の一部が蒸発し、プラズマ化する。そして、切断される被加工物内部での温度上昇には、プラズマ温度が寄与するが、YAG系レーザのプラズマ吸収率は、COレーザに比較して100分の1程度である。そのため、YAG系レーザは、切断する被加工物内部でのプラズマ温度を上昇させにくい。
【0009】
また、ファイバーレーザを用いた場合は、レーザ発振器の個体差、ファイバーの経年的な劣化、ファイバーに対する力学的なストレス(応力)の蓄積及び偏在等によってクラッドとコアとの界面にストレスが生じ、屈折率が変化することによって、レーザビームの品質及び出力の低下が生じ、レーザ加工装置の切断性能が低下することがある。
【0010】
この結果、COレーザよりも波長が短いレーザビームを用いたレーザ加工装置は、厚みを有する被加工物を切断する場合、被加工物内部の温度を切断に必要な温度まで上昇させることができず、被加工物を切断することができない場合があるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、厚みを有する被加工物を波長が短いレーザを用いて切断することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るレーザ加工装置は、第1レーザビームビームを集束させて被加工物に照射する第1照射手段と、前記第1レーザビームよりも波長が長い第2レーザビームビームを集束させて前記被加工物に照射する第2照射手段と、を備え、前記第1照射手段で集束された前記第1レーザビームが照射されている前記被加工物の領域に、前記第2照射手段で集束された前記第2レーザビームを照射する。
【0013】
本発明によれば、第1照射手段によって第1レーザビームが集束されて被加工物に照射され、第2照射手段によって前記第1レーザビームよりも波長が長い第2レーザビームが集束されて被加工物に照射される。そして、第1レーザビームが照射されている被加工物の領域に第2レーザビームが照射される。
【0014】
各種レーザは、波長が短いレーザほど材料吸収率が高く、プラズマ吸収率が低いという傾向があるため、波長が短いレーザ(例えば、YAG系レーザ)で被加工物を切断する場合に、被加工物の内部を、アシストガスで吹き飛ばせるほど低い粘性を溶融金属が有するほどの高温にすることができなかった。
そこで、本発明は、第1レーザビームが照射されている被加工物の領域に第1レーザビームよりも波長が長い第2レーザビームを照射する。すなわち、第1レーザビームが被加工物を構成する金属を溶融させ、第1レーザビームよりもプラズマ吸収率の高い第2レーザビームが溶融金属の温度を上昇させる。この結果、溶融金属が高温となり、溶融金属をアシストガスで吹き飛ばせるほど溶融金属の粘性を下げることが可能となるので、本発明は、厚みを有する被加工物を波長が短いレーザを用いて切断することができる。
【0015】
さらに、上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るレーザ加工装置は、被加工物を加工するための第1レーザビームを出射する第1出射手段と、前記第1レーザビームよりも波長が長く、前記被加工物を加工するための第2レーザビームを出射する第2出射手段と、前記第1出射手段から出射された前記第1レーザビームにより加工されている前記被加工物の領域に対して、前記第2出射手段から出射された前記第2レーザビームが照射されるように、該第1レーザビーム及び該第2レーザビームを集束させる集束手段と、を備える。
【0016】
本発明によれば、第1出射手段によって被加工物を加工するための第1レーザビームが出射され、第2出射手段によって第1レーザビームよりも波長が長く、被加工物を加工するための第2レーザビームが出射される。そして、集束手段によって、第1出射手段から出射された第1レーザビームにより加工されている被加工物の領域に対して、第2出射手段から出射された第2レーザビームが照射されるように、該第1レーザビーム及び該第2レーザビームが集束される。
本発明は、第1レーザビームが照射されている被加工物の領域に第1レーザビームよりも波長が長い第2レーザビームを照射する。すなわち、第1レーザビームが被加工物を構成する金属を溶融させ、第1レーザビームよりもプラズマ吸収率の高い第2レーザビームが溶融金属の温度を上昇させる。この結果、溶融金属が高温となり、溶融金属をアシストガスで吹き飛ばせるほど溶融金属の粘性を下げることが可能となる。そして、本発明は、第1レーザビーム及び第2レーザビームに対して共通の集束手段を有し、該集束手段によって上記領域に第1レーザビーム及び第2レーザビームを照射させることができるため、簡易な構成で、厚みを有する被加工物を波長が短いレーザを用いて切断することができる。
【0017】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記集束手段が、前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを前記被加工物に集束させる集束レンズであり、前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームが、集束レンズの中心軸線から等距離の位置に入射されてもよい。
本発明によれば、第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを集束レンズの中心軸線から等距離の位置に入射させることによって、被加工物の同じ領域に第1レーザビーム及び第2レーザビームを照射させることができるため、簡易に厚みを有する被加工物を波長が短いレーザを用いて切断することができる。
【0018】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記第1レーザビームをYAG系レーザとし、前記第2レーザビームをCOレーザとしてもよい。
本発明によれば、第1レーザビームをYAG系レーザとし、第2レーザビームをCOレーザとするので、簡易に厚みを有する被加工物を波長が短いレーザを用いて切断することができる。
【0019】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記第1レーザビームをファイバーレーザとしてもよい。
本発明によれば、ファイバーレーザは高品質で高出力のレーザであるため、厚みを有する被加工物を、より確実に切断することができる。
【0020】
また、本発明のレーザ加工装置は、前記第1レーザビームをディスクレーザとしてもよい。
本発明によれば、ディスクレーザは高品質で高出力のレーザであるため、厚みを有する被加工物を、より確実に切断することができる。
【0021】
一方、上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るレーザ加工方法は、第1レーザビームを集束させて被加工物に照射する第1照射手段と、前記第1レーザビームよりも波長が長い第2レーザビームを集束させて前記被加工物に照射する第2照射手段と、を備えたレーザ加工装置のレーザ加工方法であって、前記第1照射手段で集束された前記第1レーザビームが照射されている前記被加工物の領域に、前記第2照射手段で集束された前記第2レーザビームを照射する。
【0022】
本発明によれば、第1レーザビームが照射されている被加工物の領域に第1レーザビームよりも波長が長い第2レーザビームを照射する。すなわち、第1レーザビームが被加工物を構成する金属を溶融させ、第1レーザビームよりもプラズマ吸収率の高い第2レーザビームが溶融金属の温度を上昇させる。この結果、溶融金属が高温となり、溶融金属をアシストガスで吹き飛ばせるほど溶融金属の粘性を下げることが可能となるので、本発明は、厚みを有する被加工物を波長が短いレーザを用いて切断することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、厚みを有する被加工物を波長が短いレーザを用いて切断することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るレーザ切断装置による被加工物の切断の状態を示す模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【図4】レーザの波長に応じた材料吸収率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に、本第1実施形態に係るレーザ加工装置10の構成を示す。なお、以下の説明において、レーザ加工装置10を、被加工物12を切断するレーザ切断装置として説明する。
【0027】
レーザ加工装置10は、第1レーザビームを集束させ被加工物12に照射する第1照射部14と、第1レーザビームよりも波長が長い第2レーザビームを被加工物12に照射する第2照射部16と、を備えている。
なお、本第1実施形態に係るレーザ加工装置10は、第1レーザビームの一例としてYAG系レーザを用い、第2レーザビームの一例としてYAG系レーザよりも波長が長いCOレーザを用いる。また、本第1実施形態に係る第1照射部14は、光ファイバーを媒質に用いたファイバーレーザを用いる。
【0028】
そして、本第1実施形態に係るレーザ加工装置10は、テーブル18に載置されている被加工物12に連続的にYAG系レーザ及びCOレーザを照射することで被加工物12を切断する。なお、被加工物12は、金属であり、本第1実施形態では被加工物12を一例として鉄(Fe)とする。また、被加工物12の厚みは、例えば10〜数十mm(例えば50mm)である。また、本第1実施形態に係るレーザ加工装置10は、被加工物12を切断する際に、アシストガスである酸素ガスを切断部分に吹きかけながら切断する。
【0029】
また、第1照射部14及び第2照射部16は、3軸方向(xyz軸)に移動できる不図示の3軸アームによって支持され、3軸アームが駆動することによって、被加工物12の切断の進行方向が変化する。
【0030】
ここで、YAG系レーザのみを用いた従来のレーザ加工装置では、被加工物12の厚みが厚い(例えば10〜数十mm(例えば50mm))場合、このような被加工物12を切断できない場合があった。
【0031】
この理由は、YAG系レーザは、COレーザに比較して材料吸収率が高く、プラズマ吸収率が低いためと考えられる。
より具体的に説明すると、YAG系レーザは、COレーザに比較して材料吸収率が高いため、被加工物12の溶融にレーザビームのパワーがより消費され、レーザビームのパワーが被加工物12の温度上昇に寄与しづらい。さらに、被加工物12が切断される際には、被加工物12である金属の一部が蒸発し、プラズマ化する。そして、切断される被加工物12内部での温度上昇には、プラズマ温度が寄与するが、YAG系レーザのプラズマ吸収率は、COレーザに比較して低く、YAG系レーザは、切断する被加工物12内部でのプラズマ温度を上昇させにくいためであると考えられる。
【0032】
この結果、被加工物12を構成する金属及び酸化金属が溶融し溶融金属となり、被加工物12内部で溶融池が発生しても、レーザビームは、溶融池の温度を十分に上昇させることができないため、溶融金属の粘性が下がらず、アシストガスは、溶融金属を被加工物12内部から流し出すことができない。このため、従来のレーザ加工装置では、内部に溶融池が発生する厚みを有する被加工物12を切断することができない場合があった。
【0033】
一方、本第1実施形態に係るレーザ加工装置10は、図2の縦断面図に示すように第1照射部14で集束されたYAG系レーザが照射されている被加工物12の領域Aに、第2照射部16で集束されたCOレーザを照射する。
これにより、材料吸収率の高いYAG系レーザが被加工物12を構成する金属を溶融させ、YAG系レーザよりもプラズマ吸収率の高いCOレーザが溶融金属の温度を上昇させる。すなわち、YAG系レーザと共にYAG系レーザよりもプラズマ吸収率が高いCOレーザを被加工物12の領域Aに照射することによって、COレーザをプラズマ誘起レーザとして用い、プラズマ温度を上昇させる。
【0034】
このように、レーザ加工装置10は、COレーザをプラズマ誘起レーザとして用いることで、溶融金属からプラズマを誘発し、誘発されたプラズマからの電子によりさらにプラズマの発生量を増加させることができる。なお、本第1実施形態で用いられるCOレーザの出力は、例えば数W〜数十Wである。
【0035】
この結果、溶融金属の温度上昇が促進され、溶融金属の粘性が上がり、アシストガスは、その圧力で溶融金属を被加工物12外に吹き流すことができるので、レーザ加工装置10は、厚みのある被加工物12を切断することが可能となる。
【0036】
なお、COレーザは、図2の縦断面図に示すように被加工物12に対して斜めに入射されることによって、領域Aに照射される。このため、図2の上面図に示すように、YAG系レーザの径の幅がカーフ幅(切断幅)となるように、COレーザの径はYAG系レーザの径と同等又は短いことが好ましい。
【0037】
また、被加工物12の切断では、領域Aの位置が被加工物12の深さ方向に変化しながら切断が進行する。このため、COレーザの照射位置が領域Aの深さ方向への変化に対応して変化するように、COレーザを深さ方向に走査することが望ましい。
具体的には、例えば、第2照射部16自体を揺動させることでCOレーザを深さ方向に走査させてもよいし、第2照射部16がポリゴンミラーレンズを備え、該ポリゴンミラーレンズを回転させることで走査COレーザを深さ方向に走査させてもよい。
【0038】
以上説明したように、本第1実施形態に係るレーザ加工装置10は、第1照射部14によって集束されたYAG系レーザを被加工物12に照射し、第2照射部16によって集束され、YAG系レーザよりも波長が長いCOレーザをYAG系レーザが照射されている被加工物12の領域Aに照射するので、厚みを有する被加工物12を、波長が短いレーザを用いて切断することができる。
【0039】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図3に、本第2実施形態に係るレーザ加工装置50の構成を示す。なお、図3における図1と同一の構成部分については図1と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
レーザ加工装置50は、筐筒52の上部に、第1レーザビームとしてYAG系レーザを出射する第1レーザ出射部54及び第2レーザビームとしてCOレーザを出射する第2レーザ出射部56を備える。また、筐筒52は、第1コリメート光学系58、第2コリメート光学系60、及び集光光学系62を有している。さらに、筐筒52は、3軸方向(xyz軸)に移動できる不図示の3軸アームによって支持され、3軸アームが駆動することによって、被加工物12の切断の進行方向が変化する。
【0041】
なお、第1レーザ出射部54からは、不図示のレーザ発振器から生成されたYAG系レーザが、第1レーザ出射部54まで光ファイバー64によって伝送されたファイバーレーザとして出射される。
【0042】
第1コリメート光学系58は、コリメートレンズ66を備えており、第1レーザ出射部54から出射された所定の拡がり(開口数NA=sinθ)を有するYAG系レーザを平行光にする。
【0043】
第2コリメート光学系60は、コリメートレンズ68を備えており、第2レーザ出射部56から出射された所定の拡がり(開口数NA=sinθ)を有するCOレーザを平行光にする。
【0044】
集光光学系62は、集束レンズ70を備えており、第1コリメート光学系58によって平行光とされたYAG系レーザ、及び第2コリメート光学系60によって平行光とされたCOレーザを集束させ、YAG系レーザ及びCOレーザを被加工物12の領域Aに照射させる。
具体的には、YAG系レーザ及びCOレーザは、集束レンズ70の中心軸線72から等距離の位置(本第2実施形態では、中心軸線72を中心とした左右対称の位置)に入射される。これによって、集束レンズ70で集束されたYAG系レーザ及びCOレーザは、同じ位置に焦点を結ぶ。すなわち、集束レンズ70によって、同時にYAG系レーザ及びCOレーザを被加工物12の領域Aに照射させることができる。このように、レーザ加工装置50は、YAG系レーザ及びCOレーザに対して共通の集束レンズ70を有し、集束レンズ70によって上記領域AにYAG系レーザ及びCOレーザを照射させることができるため、簡易な構成で、厚みを有する被加工物30を波長が短いレーザを用いて切断することができる。
【0045】
なお、第1コリメート光学系58、第2コリメート光学系60、及び集光光学系62は、例えば、石英ガラスで形成されている。また、第1コリメート光学系58、第2コリメート光学系60、及び集光光学系62は、各々一つのレンズで構成されてもよいし、複数のレンズで構成されてもよい。
【0046】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
例えば、上記各実施形態では、レーザ加工装置10,50を、被加工物12を切断するレーザ切断装置として用いる場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、レーザ加工装置10,50を複数の被加工物を溶接するレーザ溶接装置として用いる形態としてもよい。
【0048】
また、上記各実施形態では、アシストガスとして酸素ガスを用いる場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、アシストガスとして窒素ガスやアルゴンガス等、他のガスを用いる形態としてもよい。
【0049】
また、上記各実施形態では、レーザ加工装置10,50の第1レーザビームとしてYAG系レーザを用いた場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、第2レーザビームよりも波長の短いレーザであれば他のレーザを用いる形態としてもよい。また、上記各実施形態では、レーザ加工装置10,50の第2レーザビームとしてCOレーザを用いた場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、第1レーザビームよりも波長の長いレーザであれば他のレーザを用いる形態としてもよい。
【0050】
また、上記各実施形態では、レーザ加工装置10,50の第1レーザビームとしてファイバーレーザを用いた場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ディスクレーザ(波長1.05〜1.09μm)を用いる形態としてもよい。
【0051】
また、上記各実施形態では、3軸アームによって被加工物12の切断の進行方向を変化させる場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、縦(x)及び横(y)に移動する2軸アームに支持される形態としてもよい。さらに、3軸アームを用いずに、被加工物12を載置したテーブル18を3軸方向に移動可能とし、テーブル18を移動させることによって、被加工物12の切断の進行方向を変化させる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 レーザ加工装置
12 被加工物
14 第1照射部
16 第2照射部
54 第1ビーム出射部
56 第2ビーム出射部
70 集光レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レーザビームを集束させて被加工物に照射する第1照射手段と、
前記第1レーザビームよりも波長が長い第2レーザビームを集束させて前記被加工物に照射する第2照射手段と、
を備え、
前記第1照射手段で集束された前記第1レーザビームが照射されている前記被加工物の領域に、前記第2照射手段で集束された前記第2レーザビームを照射するレーザ加工装置。
【請求項2】
被加工物を加工するための第1レーザビームを出射する第1出射手段と、
前記第1レーザビームよりも波長が長く、前記被加工物を加工するための第2レーザビームを出射する第2出射手段と、
前記第1出射手段から出射された前記第1レーザビームにより加工されている前記被加工物の領域に対して、前記第2出射手段から出射された前記第2レーザビームが照射されるように、該第1レーザビーム及び該第2レーザビームを集束させる集束手段と、
を備えたレーザ加工装置。
【請求項3】
前記集束手段は、前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを前記被加工物に集束させる集束レンズであり、
前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームは、集束レンズの中心軸線から等距離の位置に入射される請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1レーザビームは、YAG系レーザであり、
前記第2レーザビームは、COレーザである請求項1から請求項3の何れか1項記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第1レーザビームは、ファイバーレーザである請求項1から請求項4の何れか1項記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記第1レーザビームは、ディスクレーザである請求項1から請求項4の何れか1項記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
第1レーザビームを集束させて被加工物に照射する第1照射手段と、
前記第1レーザビームよりも波長が長い第2レーザビームを集束させて前記被加工物に照射する第2照射手段と、を備えたレーザ加工装置のレーザ加工方法であって、
前記第1照射手段で集束された前記第1レーザビームが照射されている前記被加工物の領域に、前記第2照射手段で集束された前記第2レーザビームを照射するレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−86228(P2012−86228A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232674(P2010−232674)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】