説明

レーザ加工装置

【課題】ワークを貫通したレーザ光による不具合を解消すると共に、加工されたワークの品質維持やワークの載置・回収を含めた作業性能の向上を実現する。
【解決手段】レーザ光照射部10と、当接面20Aを有する内枠体20と、保持面30Aを有する外枠体30と、保持面30Aの内側に内枠体20を配置して、照射範囲が加工領域外周縁内で移動するように内枠体20に対して外枠体30を平面移動させる平面移動機構40とを備え、平面移動機構40は、内枠体20が保持面30Aの内側から外れる位置に外枠体30を移動可能であり、内枠体20が保持面30Aの内側から外れた位置で、保持面30Aに対してワーク又はワークホルダの載置・回収を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシートやその他の可撓性シート等のワークに対してレーザ光を照射して穿孔等の加工を施すレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミックグリーンシートやその他の可撓性シート等の薄膜部材をワークとしたレーザ加工では、ワークを支持テーブル上に保持して加工を行うと、レーザ光がワークを容易に貫通するので、貫通したレーザ光が支持テーブルの表面を損傷する不具合が生じる。また、貫通したレーザ光が支持テーブルの支持面で反射してワークの裏面を損傷することもある。したがって、このようなレーザ加工においては、装置のメンテナンスが頻繁に必要になり、また、ワークの加工品質が低下するという問題がある。
【0003】
これを解消するためには、支持テーブルを網目状にして、加工領域を編み目の中に設定することが考えられるが、これによると、編み目の上に加工領域を形成することができないので、加工パターンが制限を受けると共に、加工対象の歩留まりが低下する問題が生じる。
【0004】
これに対して、下記特許文献1には、保持面が額縁状のワーク保持装置にワークの外周縁を保持させ、保持面の内側に、外縁が保持面の内縁よりも小さいワーク受けを配置して、ワーク受けの開放された内側にレーザ光を照射し、更にワーク受けを保持面内で移動可能にしたものが提案されている。
【特許文献1】特開2001−232490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術では、ワーク受けをワーク保持装置の保持面の内側で平面的に自由に移動させることで、反射光が生じないレーザ光の照射領域をワークの加工領域全体に形成することができる。
【0006】
しかしながら、ワーク受けを内側に配置していることで、ワーク保持装置自体の位置変更が制限されてしまい、ワーク保持装置の上方にレーザ光照射部が配備されている状態で、保持面上へのワークの載置を行わなければならないことになり、ワークの載置或いは加工後のワークの回収作業を狭いスペース内で行わなければならない不都合が生じる。これによって、従来技術では、ワークの載置・回収時に載置・回収作業を円滑且つ速やかに行うことができない問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、ワークを貫通したレーザ光による不具合を解消すると共に、加工されたワークの品質維持やワークの載置・回収を含めた作業性能の向上等が、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明によるレーザ加工装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0009】
一つには、レーザ加工装置において、ワークの一面に向けて加工用のレーザ光を照射するレーザ光照射部と、加工時に前記レーザ光が照射される照射範囲の外側を囲むように前記ワークの他面に当接する当接面を有する内枠体と、前記ワーク又は該ワークが予め保持されたワークホルダの外縁部を保持すると共に前記ワークの加工領域外周縁の外側を囲う保持面を有する外枠体と、前記保持面の内側に前記内枠体を配置して、前記照射範囲が前記加工領域外周縁内で移動するように前記内枠体に対して前記外枠体を平面移動させる平面移動機構とを備え、前記平面移動機構は、前記内枠体が前記保持面の内側から外れる位置に前記外枠体を移動可能であり、前記内枠体が前記保持面の内側から外れた位置で、前記保持面に対して前記ワーク又はワークホルダの載置・回収を行うことを特徴とする。
【0010】
また一つには、レーザ加工装置において、ワークの一面に向けて加工用のレーザ光を照射するレーザ光照射部と、加工時に前記レーザ光が照射される照射範囲の外側を囲むように前記ワークの他面に当接する当接面を有する内枠体と、前記ワーク又は該ワークが予め保持されたワークホルダの外縁部を保持すると共に前記ワークの加工領域外周縁の外側を囲う保持面を有する外枠体と、前記保持面の内側に前記内枠体を配置して、前記照射範囲が前記加工領域外周縁内で移動すると共に、前記内枠体が前記保持面の内側から外れる位置に前記外枠体を移動するように、前記内枠体に対して前記外枠体を平面移動させる平面移動機構と、前記内枠体の当接面を加工時には前記ワークの他面に当接させ、非加工時には前記ワークの他面から離間させるように、前記内枠体を前記外枠体に対して上下動させる内枠体移動機構と、前記レーザ光照射部のレーザ光照射,前記平面移動機構の移動動作,前記内枠体移動機構の移動動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記平面移動機構を動作させて、前記保持面に対して前記ワーク又はワークホルダの載置又は回収を行う時に、前記内枠体が前記保持面の内側から外れるように前記外枠体を移動させ、前記内枠体移動機構を動作させて、加工時に前記当接面を前記ワークの他面に当接させ、非加工時又は前記照射範囲の移動時に前記当接面を前記ワークの他面から離間させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
前述した特徴を有する本発明は、ワークを貫通したレーザ光による不具合を解消すると共に、加工されたワークの品質維持やワークの載置・回収を含めた作業性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の全体構成を示す説明図(外観斜視図)である。本発明の実施形態に係るレーザ加工装置は、レーザ光照射部10、内枠体20、外枠体30、平面移動機構40を主要な構成要素として備えている。
【0013】
レーザ光照射部10は、ワークの一面(表面)に向けて加工用のレーザ光を照射するものであって、光源やガルバノミラー等の走査光学系等を収容した光学系収容部11とfθレンズ12を備えるものである。レーザ光照射部10は走査光学系の走査幅によって設定される照射範囲内で、加工パターンに応じて強度変調されたレーザ光を任意の位置に照射することができる。
【0014】
内枠体20は、レーザ光が照射される照射範囲の外側を囲むようにワークWの他面(裏面)に当接する当接面20Aを有するものである。レーザ光照射部10と内枠体20とは位置関係が固定されており、常に内枠体20の当接面20Aの内側にレーザ光の照射範囲が形成されるようになっている。したがって、ワークWを貫通したレーザ光は内枠体20内に抜けることになり、当接面20Aでレーザ光が反射されることはない。また、図示の例では、内枠体20には吸引パイプ21が接続されており、加工時に発生するガスや屑を吸引して除去するようになっている。
【0015】
外枠体30は、ワークW又はワークWが予め保持されたワークホルダ(図示せず)の外縁部を保持すると共にワークWの加工領域外周縁の外側を囲う保持面30Aを有する。すなわち、保持面30Aの内側には内枠体20が移動できる移動空間が形成されており、内枠体20に対して外枠体30を移動させることで、ワークWの加工領域内の任意の位置に内枠体20内に形成されるレーザ光の照射領域を移動させることができる。
【0016】
また、外枠体30は、内枠体20を保持面30Aの内外に出し入れするための開口部30Bを有している。図2は、本発明の実施形態における外枠体30を説明する説明図である。外枠体30の形態は、図1又は図2(a)に示すように、保持面30Aをコの字型に形成し、保持面30Aが形成されていない箇所に開口部30Bが形成されているもの、図2(b1),(b2)に示すように、保持面30Aをロの字型に形成し、外枠体30の側面に開口部30Bを形成したもの、図2(c)に示すように、ロの字型に形成される保持面30Aの一辺を部分的に切り欠いて、開口部30Bを形成したもの、等が採用できる。
【0017】
外枠体30の形態としては、図2(a)に示すように、矩形の一辺を開口部30Bとして開けて、コの字型に保持面30Aを形成した場合には、外枠体30内の如何なる位置に内枠体20が存在する場合であっても、直線的な外枠体30の動きのみで外枠体30の外に内枠体20を外すことができ、ワークW又はワークホルダを載置・回収する際の外枠体30の動作を簡素化し、移動時間を短縮することができる。また、図2(b1),(b2)に示すように、保持面30Aをロの字型に形成し、外枠体30の側面に開口部30Bを形成したものでは、ワークW又はワークホルダの4辺を保持面30A上で保持することができるので、安定した状態でワークW又はワークホルダを保持することができる。しかしながら、内枠体20を外枠体30の外に外す場合には、内枠体20が開口部30Bを通過するように内枠体20の高さを下げる行程が必要になるので、ワークW又はワークホルダを載置・回収する際の外枠体30の移動時間が内枠体20の高さを下げる行程の分だけ余計にかかることになる。
【0018】
また、図2(c)に示す例では、最初又は最終的な外枠体30内での内枠体20の位置を外枠体30内の中央部に設定することで、直線的な一行程で外枠体30の外に内枠体20を外すことができるが、その設定によって加工時の外枠体30の移動行程が制限されることになる。ワークW又はワークホルダの保持性は、図2(b1),(b2)に示した例ほどではないが、図2(a)に示した例よりは高くすることができる。
【0019】
外枠体30の保持面30Aには、ワークW又はワークホルダの外縁部を保持するための保持手段が備えられている。この保持手段は、例えば、図2の各例に示されるように、吸引経路30Sに繋がる吸引穴30pを保持面30Aに形成して吸引力によってワークW又はワークホルダを保持するもの(吸引式保持手段)、図示しないが、機械的にワークW又はワークホルダの外縁部をクランプするもの(機械式保持手段)、等を採用することができる。
【0020】
平面移動機構40は、保持面30Aの内側に内枠体20を配置して、レーザ光の照射範囲がワークWの加工領域外周縁内で移動すると共に、内枠体20が保持面30Aの内側から外れる位置に外枠体30を移動するように、内枠体20に対して外枠体30を平面移動させる機構であり、外枠体30をレーザ光の照射方向(Z軸方向)と交差するX−Y平面内で移動させる機構である。図示の例では、X軸移動テーブル40XとY軸移動テーブル40Yと図示省略したアクチュエータからなる。X軸移動テーブル40XとY軸移動テーブル40Yには、それぞれ平行レール41が設けられており、この平行レール41に沿って、X軸移動テーブル40X上を外枠体30が移動し、Y軸移動テーブル40Y上をX軸移動テーブル40Xが移動するようになっている。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置におけるワークWの載置・回収時の動作を説明する説明図である(同図(a)が平面図、同図(b)正面図)。平面移動機構40(40X,40Y)は、加工時にワークWの加工領域内でレーザ光の照射範囲を移動させる動作と、内枠体20が保持面30Aの内側から外れる位置に外枠体30を移動させる動作が可能である。
【0022】
そして、例えば、ワークWを保持面30A上に載置する場合には、Y軸移動テーブル40Yに沿ってX軸移動テーブル40Xを移動することで、保持面30Aの外側に内枠体20が位置するように外枠体30を移動する。その後、X軸移動テーブル40Xに沿って外枠体30を移動させることで、外枠体30をワーク載置用のA位置まで移動させる。そこで、吸着式等のローダ50を保持面30A上に配置させ、ローダ50を降下させてワークWを保持面30A上に載置する。
【0023】
一方、ワークWを保持面30Aから回収する場合には、Y軸移動テーブル40Yに沿ってX軸移動テーブル40Xを移動することで、保持面30Aの外側に内枠体20が位置するように外枠体30を移動する。その後、X軸移動テーブル40Xに沿って外枠体30を移動させることで、外枠体30をワーク回収用のB位置まで移動させる。そこで、吸着式等のアンローダ51を保持面30A上に配置させ、アンローダ51を降下させてワークWを保持面30A上から回収する。
【0024】
前述の説明は一例であって、ワークWの載置を図示のB位置で行い、ワークWの回収を図示のA位置で行っても良いし、Y軸移動テーブル40Y上のC位置で、ワークWの載置と回収の両方を行うようにしても良い。
【0025】
このような本発明の実施形態によると、ワークWの加工領域内を相対的に移動する内枠体20の当接面20A内をレーザ光の照射範囲に設定しているので、ワークWを貫通したレーザ光が反射してワークWを損傷させる不具合やワークWを貫通したレーザ光が当接面20Aを損傷させる不具合は起こらない。そして、ワークWの保持面30Aへの載置・回収は、レーザ光照射部10との干渉が起こらないように、内枠体20が保持面30Aの内側から外れた位置まで外枠体30を移動させて実行することができる。これによって、吸着式のローダ50或いはアンローダ51を効果的に利用するなどして、ワークWの品質維持を確保することができると共に、円滑且つ速やかに作業を進行させることができる。
【0026】
図4〜図6は、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置における加工時の動作を示す説明である(前述の説明と共通する箇所には同じ符号を付して一部重複説明を省略する)。図4に示すように、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置は、必要に応じて、内枠体20を外枠体30に対して上下動させる内枠体移動機構60を備えている。ここでは、内枠体移動機構60によって、加工時には、内枠体20の当接面20AをワークWの裏面(他面)に当接させ、非加工時には、当接面20AをワークWの裏面から離間させるようにしている。
【0027】
G部拡大図に示すように、当接面20Aには保持面30Aと同様に吸引穴20pを設け、この吸引穴20pに連通する吸引経路20Sを内枠体20の側部に形成することができる。これによると、当接面20A内に設定されるレーザ光の照射範囲内でワークWの平面状態を保持することができ、加工精度を高めることができる。また、ワークWに対して当接面20Aが移動する際には、当接面20AをワークWから離間させて、当接面20AがワークWに接触しないようにしている。これによって、外枠体30の移動時に内枠体30とワークWが接触して不具合が起きることを未然に回避している。
【0028】
本発明の実施形態としては、内枠体移動機構60を具備しないものも含んでいる。その場合には、内枠体20の当接面20Aは外枠体30の保持面30Aに対して同一面に固定されており、ワークWの移動時にも当接面20AがワークWの裏面に接触している。
【0029】
また、図5に示すように、本発明の実施形態では、必要に応じて、内枠体移動機構60は当接面20Aを保持面30Aよりワーク側に移動調整可能にしている。すなわち、加工時に、当接面20AをワークWの裏面(他面)に押圧するように、当接面20Aを保持面30Aよりワーク側に突出させることが可能であり、その突出量tを任意に変更調整可能にしている。
【0030】
これによると、突出量tを加工位置に応じて適宜に調整することで、加工位置に関係なく当接面20A内のワークWの状態を均一にすることができる。これは特にワークWの加工領域面積が大きい場合に有効であり、ワークWに生じる撓みや,歪み,ソリを突出量tによって解消することができ、ワークW全面に亘って同じような状態でワークWを加工することができる。
【0031】
図6は、加工領域内でレーザ光の照射範囲を移動させる動作の一例を示した説明図である。外枠体30の保持面30A内に内枠体20の当接面20Aを配置させた状態で内枠体20に対して外枠体30を移動させることで、当接面20A内に設定されたレーザ光の照射範囲LをワークWの加工領域外周縁Wa内の任意の位置に移動させることができる。移動の形態としては、図示のように、加工領域外周縁Waの隅部から照射範囲Lを縦に一範囲毎移動させ、端部に達したら横に移動させるように、順次移動させることができる。
【0032】
そして、一つの照射範囲で外枠体30を停止させてレーザ光を照射している状態では、当接面20AをワークWの裏側に当接させ、一つの照射範囲での加工が終了して照射範囲を移動させる時には、当接面20AをワークWの裏面から離間させるようにしてもよい。これによると、照射範囲変更時の外枠体30の移動で当接面20AがワークWと擦れるのを防ぐことができ、ワークの加工品質を更に高めることができる。
【0033】
図7は、前述した本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の動作を説明するためのブロック図である。本発明の実施形態に係るレーザ加工装置は、例えば、前述した動作を制御するための制御手段100を備える。制御手段100は、前述したレーザ光照射部10,平面移動機構40,内枠体移動機構60の動作をそれぞれ制御するものであり、レーザ光照射のオンオフ或いは照射位置等を制御するレーザ光照射制御機能100A,平面移動機構40の移動動作を制御する機能100B,内枠体移動機構60の移動動作を制御する機能100Cを具備している。
【0034】
制御手段100の特徴的な制御動作を示すと、平面移動機構40を動作させて、保持面30Aに対してワークW又はワークホルダの載置又は回収を行う時に、内枠体20が保持面30Aの内側から外れるように外枠体30を移動させ、内枠体移動機構60を動作させて、加工時に当接面20AをワークWの裏面(他面)に当接させ、非加工時又はレーザ光の照射範囲の移動時に当接面20AをワークWの裏面(他面)から離間させる動作制御を行う。
【0035】
また、制御手段100は、必要に応じて、内枠移動機構60を動作させ、加工時に、当接面30AをワークWの裏面(他面)に押圧するように、当接面20Aを保持面30Aよりワーク側に移動調節する。
【0036】
このような動作制御を含む制御手段100の動作フロー例を図8に示す。レーザ加工装置の動作を開始(スタート)すると、先ず、ワーク載置処理S1が実行される。ワーク載置処理S1では、平面移動機構40を動作させ、内枠体20が保持面30Aの内側から外れるように外枠体30を移動させて、ワーク載置位置(図3;A位置)まで外枠体30を移動させる。そして、ワークWを吸着したローダ50を保持面30A上に移動させて吸着を解除し、ワークWを保持面30A上に載置させる。ワークWが保持面30A上に載置されると、外枠体30の保持手段(吸着式保持手段又は機械式保持手段)を作動させて、保持面30A上にワークWをしっかり保持する。
【0037】
次に、レーザ光照射処理S2を実行する。レーザ光照射処理S2では、平面移動機構40を動作させ、ワークWを保持した外枠体30を移動させて、ワークWの加工領域の特定箇所(最初は隅部)を内枠体20の当接面20A内に位置させる。この際、前もって内枠体移動機構60を動作させて、内枠体20の当接面20Aを保持面30Aの高さから下方に下げておく。加工領域の隅部が当接面20Aの内側に形成されるレーザ光の照射範囲と一致すると外枠体30を停止させて、同時に内枠体20を上昇させて当接面20AをワークWの裏面に当接させる。この状態がセットされると、レーザ光照射部10を動作させて、当接面20A内の照射範囲内にレーザ光を照射して所望の加工を実行する。
【0038】
そして、加工を実行しながら、一照射範囲の加工が終了したかの判断処理S3を行い、終了していない場合(「NO」の場合)はレーザ光照射処理S2を継続させ、終了した場合(「YES」の場合)には照射範囲移動処理S4を実行する。
【0039】
照射範囲移動処理S4では、先ず、内枠体移動機構60を動作させ、ワークWの裏面に当接している当接面20AをワークWから離間させる。そして、平面移動機構40を作動させて外枠体30を移動させる。
【0040】
そして、全加工領域内の加工が終了したか否かの判断処理S5を行い、終了していない場合(「NO」の場合)には、前述したレーザ光照射処理S2に移行し、当接面20A内の照射範囲を加工領域内の次の加工位置に移動させ、その後、内枠体移動機構60を動作させて再び当接面20AをワークWの裏面に当接させて、レーザ光を照射することで所望の加工を実行する。
【0041】
以上を繰り返し、全加工領域内の加工が終了したか否かの判断処理S5で全加工領域内の加工が終了したと判断した場合(「YES」の場合)には、ワーク回収処理S6を実行する。ワーク回収処理S6では、平面移動機構40を動作させ、内枠体20が保持面30Aの内側から外れるように外枠体30を移動させて、ワーク回収位置(図3;B位置)まで加工済みのワークWが保持された外枠体30を移動させる。そして、外枠体30におけるワークWの保持を解除し、アンローダ51を保持面30A上に移動させて吸着動作を行うことで、アンローダ51にワークWを吸着させてワークWの回収を行う。
【0042】
ワークWの回収が完了すると、次のワーク処理が有るか否か判断処理S7を行い、次のワーク処理が有る場合(「YES」の場合)は、前述したワーク載置処理S1に移行して、その後の処理を繰り返し、判断処理S7で次のワーク処理が無いと判断された場合(「NO」の場合)には、全体の処理を終了する。
【0043】
この動作フローの例において、レーザ光照射処理S2においては、内枠体移動機構60の動作によって、当接面20AをワークWの裏面に押圧するように、保持面30Aよりワーク側に当接面20Aを突出させてもよく、その際の突出量tを加工領域内の加工位置に応じて適宜変更するようにしても良い。
【0044】
このような実施形態に係るレーザ加工装置によると、例えば、セラミックグリーンシートのような薄膜のワークに対して、高品質の加工を施すことができると共に、ワークの載置から回収に至るまでの一連の処理を自動化して、円滑に加工処理を実行することができる。
【0045】
すなわち、ワークWに照射されるレーザ光は、常に内枠体20の当接面20A内に設定される照射範囲内に照射されるので、ワークWを貫通したレーザ光が反射されてワークWを損傷することはなく、照射されたレーザ光が当接面20Aに照射されて当接面20Aを損傷させることもない。
【0046】
また、加工時には、ワークWに当接面20Aを当接させてレーザ光の照射範囲のすぐ外側で薄膜のワークを支持することができるので、ワークWの加工領域が広くなったとしても、照射範囲内のワーク表面の平坦性を維持することができ、加工精度を向上させることができる。
【0047】
また、ワークWに対して当接面20Aを移動させる場合には、常にワーク面と当接面20Aとを離間させることができるので、ワークWの移動時に当接面20Aとワーク面が擦れて不具合を起こすことを未然に回避することができる。
【0048】
更には、ワークWを保持面30A上に載置させる場合、或いは保持面30AからワークWを回収する場合には、保持面30Aを有する外枠体30をレーザ光照射部10から離れた位置に移動させて載置・回収の動作を行うことができる。これによって、ワークWの高品質を維持したまま載置・回収を実行することができると共に、円滑且つ速やかな動作を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の全体構成を示す説明図(外観斜視図)である。
【図2】本発明の実施形態における外枠体を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置におけるワークWの載置・回収時の動作を説明する説明図である(同図(a)が平面図、同図(b)正面図)。
【図4】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置における加工時の動作を示す説明である。
【図5】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置における加工時の動作を示す説明である。
【図6】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置における加工時の動作を示す説明である。
【図7】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の動作を説明するためのブロック図である。
【図8】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置における制御手段の動作フロー例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
10 レーザ光照射部
20 内枠体
20A 当接面
30 外枠体
30A 保持面
40 平面移動機構
50 ローダ
51 アンローダ
60 内枠移動機構
100 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの一面に向けて加工用のレーザ光を照射するレーザ光照射部と、
加工時に前記レーザ光が照射される照射範囲の外側を囲むように前記ワークの他面に当接する当接面を有する内枠体と、
前記ワーク又は該ワークが予め保持されたワークホルダの外縁部を保持すると共に前記ワークの加工領域外周縁の外側を囲う保持面を有する外枠体と、
前記保持面の内側に前記内枠体を配置して、前記照射範囲が前記加工領域外周縁内で移動するように前記内枠体に対して前記外枠体を平面移動させる平面移動機構とを備え、
前記平面移動機構は、前記内枠体が前記保持面の内側から外れる位置に前記外枠体を移動可能であり、
前記内枠体が前記保持面の内側から外れた位置で、前記保持面に対して前記ワーク又はワークホルダの載置・回収を行うことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記外枠体は、前記内枠体を前記保持面の内外に出し入れするための開口部を有することを特徴とする請求項1に記載されたレーザ加工装置。
【請求項3】
前記内枠体の当接面を加工時には前記ワークの他面に当接させ、非加工時には前記ワークの他面から離間させるように、前記内枠体を前記外枠体に対して上下動させる内枠体移動機構を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載されたレーザ加工装置。
【請求項4】
前記内枠体移動機構は、前記当接面を前記保持面よりワーク側に移動調整可能にしたことを特徴とする請求項3に記載されたレーザ加工装置。
【請求項5】
ワークの一面に向けて加工用のレーザ光を照射するレーザ光照射部と、
加工時に前記レーザ光が照射される照射範囲の外側を囲むように前記ワークの他面に当接する当接面を有する内枠体と、
前記ワーク又は該ワークが予め保持されたワークホルダの外縁部を保持すると共に前記ワークの加工領域外周縁の外側を囲う保持面を有する外枠体と、
前記保持面の内側に前記内枠体を配置して、前記照射範囲が前記加工領域外周縁内で移動すると共に、前記内枠体が前記保持面の内側から外れる位置に前記外枠体を移動するように、前記内枠体に対して前記外枠体を平面移動させる平面移動機構と、
前記内枠体の当接面を加工時には前記ワークの他面に当接させ、非加工時には前記ワークの他面から離間させるように、前記内枠体を前記外枠体に対して上下動させる内枠体移動機構と、
前記レーザ光照射部のレーザ光照射,前記平面移動機構の移動動作,前記内枠体移動機構の移動動作を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記平面移動機構を動作させて、前記保持面に対して前記ワーク又はワークホルダの載置又は回収を行う時に、前記内枠体が前記保持面の内側から外れるように前記外枠体を移動させ、
前記内枠体移動機構を動作させて、加工時に前記当接面を前記ワークの他面に当接させ、非加工時又は前記照射範囲の移動時に前記当接面を前記ワークの他面から離間させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記内枠移動機構を動作させ、加工時に、前記当接面を前記ワークの他面に押圧するように、前記当接面を前記保持面よりワーク側に移動調節することを特徴とする請求項5に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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