説明

レーザ加工装置

【課題】重い機構部分を廃してレーザ加工を安定的に行うことができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【解決手段】レーザ発振器11、2つの反射鏡24,25、および集光レンズ34を有し、加工ヘッド13の位置に関わらず光路長がほぼ一定となるように構成され、加工ヘッド13の直線運動位置に応じて演算した2つの反射鏡24,25の角度をサーボモータ27,28により制御することにより、重い機構部分を廃してレーザ加工を安定的に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ加工装置は、金属、非金属材料において切断、溶接・溶着、スクライビングといった広範囲に渡る加工に応用されてきており、幅広い業界に導入されつつある。
【0003】
そのような中で、レーザ加工装置において光路長(発振器から集光レンズまでの距離)は、レーザビームの径や質を変化させ、加工点によるレーザ加工特性の差を生じさせるという問題を持っている。
【0004】
それを解決するために、各種の光路長一定化技術がレーザ加工機に適用されている。以下の技術は、その一例であり、完全に光路長を一定にするものではないが、低コストにて光路長の変化量を微小にする方法として知られている。
【0005】
図3は従来のレーザ加工装置を示しており、レーザ発振器61、反射ミラー84,74,75、反射ミラー74,75を保持するミラーブロック66,67、加工ヘッド63、および加工ヘッド63内に装着された集光レンズ86を有する。
【0006】
レーザ発振器61から出射されたレーザ光83は反射ミラー84,74,75を介して、加工ヘッド63内の集光レンズ86に導かれる。集光レンズ86によりレーザ光83がその焦点に絞られて高密度エネルギーとなることにより、金属の切断や溶接・熱処理に広く用いられている。
【0007】
レーザ加工装置は、レーザ発振器61から加工ヘッド63までの光路の長さがほぼ一定となるように設計されることが多い。それは、光路の長さによりレーザ光の性質が異なるため、光路の長さが変わった場合、ある位置では良い加工ができても異なる位置では同じ条件でも良い加工ができない場合が多く、安定したレーザ加工を実現することができないからである。
【0008】
図3のレーザ加工機において、加工ヘッド63の上部に設置された反射ミラー75を保持するミラーブロック67、および反射ミラー74を保持するミラーブロック66は、ベアリング90,89により回転自在に設置されている。
【0009】
またミラーブロック67,66の間は光路カバー80,81により覆われており、光路カバー80,81はその角度を等しく維持しながら相対的に直動スライドする構造となっている。
【0010】
加工ヘッド63がY軸65の方向に移動すると、光路カバー80,81によりミラーブロック67,66は互いにその向きが相対する方向に向かい合いながら回転する。これによりレーザ光は光路の長さをほとんど変えることなく常に集光レンズ86の中央に導かれる。これにより、同様のレーザ光の性質により加工できるため安定したレーザ加工を実現できる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−216981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来のレーザ加工装置では、保護カバー80,81の存在により反射ミラー75,74の角度を機械的に相対させる構造であるため、光路カバー80,81の機械的振動が反射ミラー75,74に伝わることによりレーザ加工性能を悪化させたり、光路カバー80,81の剛性が弱い場合は反射ミラー75,74が加工ヘッド63の加減速時に正しく相対しなかったり、またそれを防止するために光路カバー80,81の剛性を上げると重量が増加して加工ヘッドの運動性能を低下させたりして、レーザ加工に悪影響を与えることがあった。
【0013】
前記、背景技術にあるようにレーザ加工装置は、より幅広い産業分野への導入、多岐に渡る業種、材料への適用が渇望されており、長期間に渡る安定したレーザ出力の維持を市場から要望されていた。
【0014】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、安定したレーザ加工が可能なレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のレーザ加工装置は、上記課題を解決するために、反射ミラーが相対する手段として機械的手段でなく、サーボモータによる制御的手段により実現するものである。
【発明の効果】
【0016】
これにより、反射ミラーの振動がなく、加工ヘッドの加減速時にも反射ミラーが正しく相対し、また光路カバー重量を軽量にして加工ヘッドの運動性能を確保可能なレーザ加工装置を実現することができる。そしてこの構成により、より安定したレーザ加工が可能なレーザ加工装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1におけるレーザ加工装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態2におけるレーザ加工装置の構成図
【図3】従来のレーザ加工装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1におけるレーザ加工装置について、図1を用いて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態1におけるレーザ加工装置を示しており、このレーザ加工装置は、レーザ発振器11、反射ミラー34,24,25、反射ミラー24,25を保持するミラーブロック16,17、加工ヘッド13、および加工ヘッド13内の装着された集光レンズ36を有する。
【0020】
レーザ発振器11から出射されたレーザ光は反射ミラー34,24,25を介して、加工ヘッド13内の集光レンズ36に導かれる。集光レンズ36によりレーザ光がその焦点に絞られて高密度エネルギーとすることにより、金属の切断や溶接・熱処理を行うことができる。
【0021】
図1のレーザ加工装置において、加工ヘッド13の上部に設置された反射ミラー25を保持するミラーブロック17、および反射ミラー24を保持するミラーブロック16は、ベアリング40,39により回転自在に設置されている。またミラーブロック17,16の間は光路カバー50,51により覆われており、光路カバー50,51は相対的にスライドする構造となっている。
【0022】
加工ヘッド13がY軸15の方向に移動すると、その位置信号が数値制御装置12に伝達される。数値制御装置12は加工ヘッド13の位置に応じて最適なミラーブロック17,16の相対する角度を演算し、その位置信号をサーボモータ28,27に伝達して回転させ、ギヤ30,32および29,31によりミラーブロック17,16を、互いにその向きが相対する方向に向かい合いながら回転させる。これによりレーザ光は光路の長さをほとんど変えることなく常に集光レンズ36の中央に導かれる。
【0023】
これにより、同様のレーザ光の性質により加工できるため安定したレーザ加工を実現できる。かつ、制御的手段によりミラーブロック17,16の角度を演算して位置決めするため、光路カバーの構造を大幅に軽量化できるため、機械的振動が反射ミラー25,24に伝わることによりレーザ加工を悪化させることもなく、加工ヘッド13の加減速時にも正しく相対させることができ、また光路カバー50,51の重量を低減可能なため加工ヘッドの運動性能を低下させたりすることもなく、より高品質なレーザ加工を可能にすることができる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図2を用いて説明する。
【0024】
実施の形態1におけるレーザ加工装置に対して、実施の形態2におけるレーザ加工装置では加工ヘッド13内の集光レンズ36の上部にレーザ光位置検出センサ49が追加されている。なお、実施の形態1におけるレーザ加工装置と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0025】
加工ヘッド13のY軸方向位置に関係なくレーザ光が集光レンズ36の中心に常に導かれるように予め反射ミラー25,24の位置および角度調整が熟練作業者の手により実施される。しかしながら、より正確にレーザ光を集光レンズ36の中心に導こうとするほどその調整作業は時間を要し、レーザ加工装置の稼動時間を短くしてしまう。
【0026】
実施の形態2におけるレーザ加工装置では、集光レンズ36の近傍に設置したレーザ光位置検出センサ49によりレーザ光と集光レンズ中心の位置ズレを検出して、そのズレ量およびズレ方向を数値制御装置12に伝達する。数値制御装置12はそのズレ量,ズレ方向によりミラーブロック16の角度補正量を演算してサーボモータ27にそれを伝達し、ミラーブロック16を回転させ、レーザ光を集光レンズ13の中心に近づける。
【0027】
これにより、短い調整時間で、また熟練度の低い作業者でも反射ミラー25,24の角度調整が可能となり、レーザ加工装置の稼動時間を長くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のレーザ加工装置は、制御的手段によりミラーブロックの回転方向位置を決めることで、より安定したレーザ加工を実現するとともに、それらの保守時の調整時間を短縮してレーザ加工装置の稼働時間を長くすることを可能とするものである。
【符号の説明】
【0029】
11 レーザ発振器
12 数値制御装置
13 加工ヘッド
15 Y軸
16,17 ミラーブロック
21,22 ミラーブロック
24,25 反射鏡
27,28 サーボモータ
29〜32 ギヤ
33 反射鏡
34 集光レンズ
39,40 ベアリング
49 レーザ光位置検出センサ
50,51 光路カバー
61 レーザ発振器
62 数値制御装置
63 加工ヘッド
65 Y軸
66,67,71,72 ミラーブロック
74,75 反射鏡
77,78 サーボモータ
79〜82 ギヤ
83 反射鏡
84 集光レンズ
89,90 ベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器、複数の反射鏡、および集光レンズを有し、加工ヘッドの位置に関わらず光路長がほぼ一定となるように構成されたレーザ加工装置において、加工ヘッドの移動にあわせて角度を変える相対向するミラーの角度位置決めをサーボ制御により行うレーザ加工装置。
【請求項2】
レーザ発振器、複数の反射鏡、および集光レンズを有し、加工ヘッドの位置に関わらず光路長がほぼ一定となるように構成されたレーザ加工装置において、集光レンズ近傍に設けたセンサによりレーザ光の位置を検出して、集光レンズ中心とレーザ光中心を一致させる方向にミラー角度を制御するレーザ加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate