説明

レーザ加工装置

【課題】リアルタイムで加工済み線の位置情報を取得することができるレーザ加工装置を低コストで提供すること。
【解決手段】レーザ加工装置は、被加工基板60を保持する保持部1と、被加工基板60の薄膜62,63,64に対してレーザ光Lを照射するレーザ照射部11と、保持部1およびレーザ照射部11のうちの少なくとも一方を加工進行方向PDに沿って移動させる加工移動部35と、既に加工された加工済み線62,63の位置情報を取得するデータ取得部41と、を備えている。データ取得部41は、レーザ光Lによって薄膜62,63,64を所定の加工済み線62,63に沿って加工している間に、当該所定の加工済み線62,63と異なる加工済み線62,63の位置情報を取得可能となり、レーザ光Lによって薄膜62,63,64が所定の加工済み線に沿って加工される前に、前もって当該所定の加工済み線62,63の位置情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と、基板に配置された薄膜とを有する太陽電池に用いられる被加工基板を加工するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池に用いられる被加工基板60は、ガラス基板61と、このガラス基板61に設けられた透明電極膜62と、この透明電極膜62に設けられたSiなどを含む光電変換層63と、この光電変換層63に設けられた裏面金属電極膜64とを有している(図7参照)。そして、所望の電圧を得るために、これら透明電極膜62、光電変換層63および裏面金属電極膜64をセルに分割して、互いに直列接続する必要がある。このような直列接続を成膜とレーザパターニングを交互に行うことにより、3次元的な各層(膜)の接続構造とすることで形成する方法がある。この接続構造部分は、集積線65と呼ばれる(図8参照)。
【0003】
これらの集積線65は、発電(光電変換)には寄与しないため、集積線65を構成するのべ3本のスクライブライン(加工済み線)は、近接するほど太陽電池基板としての変換効率が高くなり好ましい。このため、透明電極膜62に形成されるTCOスクライブ(パターニング)ライン62に沿わせて、光電変換層63にSiスクライブ(パターニング)ライン63を形成するとともに、裏面金属電極膜64にメタルスクライブ(パターニング)ライン64を形成することが好ましい。従来は、それぞれのスクライブラインを、基板外形やアライメントマークを基準にして所定の距離だけ離れた位置に加工していた。
【0004】
しかしながら、被加工基板60の大型化に伴う温度変化による被加工基板60の伸縮や、レーザ加工装置の精度上の問題から、スクライブラインを互いに近接させるにも限界がある。また、被加工基板60の大型化により、基板外形やアライメントマークを基準にしてレーザパターニングを行うと、基準から加工線までの距離が遠くなり、機械的精度を上げる必要がある。また、成膜とレーザパターニングを繰り返し行うので、必ずしも同じ環境(とりわけ温度状況)でレーザパターニングが行われるわけではなく、同じ基板外形やアライメントマークを基準としていては大きなずれが生じてしまうこともあり、補正が必要となる。さらに、このような補正は、レーザパターニングの際に毎回必要となるので、非常に手間と時間がかかる。
【0005】
また、通常の加工プログラムは、直線補間法によるため、被加工基板60内に温度分布が生じて、基準となるべきTCOスクライブライン62が、後工程を行う際(Siスクライブライン63を形成するときやメタルスクライブライン64を形成するとき)に曲線状となってしまっている場合には、場所によってライン間距離が変化してしまう。
【0006】
この点、従来から、第1層上に積層される第2層に、第1層に形成された第1のスクライブラインに対応する第2のスクライブラインが第1のスクライブラインに沿う形で形成されるよう、相対移動機構を制御することも知られている(特許文献1参照)。この方法によれば、スクライブラインの各々を直接検知して各レーザパターニングを補正しながら行うため、精度良くレーザパターニングを行うことができる。
【0007】
このように、特許文献1には、非リアルタイム的に行う態様とリアルタイム的に行う態様が開示されているが、本発明は当該特許文献1に記載された発明を改良したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−048835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、リアルタイムで加工済み線の位置情報を取得することができるレーザ加工装置を提供することを目的とし、さらに、このようなレーザ加工装置を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるレーザ加工装置は、
基板と、該基板に配置された薄膜とを有する太陽電池に用いられる被加工基板を加工するレーザ加工装置であって、
前記被加工基板を保持する保持部と、
前記被加工基板の前記薄膜に対してレーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記保持部および前記レーザ照射部のうちの少なくとも一方を、加工進行方向に沿って移動させるとともに、該加工進行方向に直交する方向に移動可能とする加工移動部と、
既に加工された加工済み線の位置情報を取得するデータ取得部と、を備え、
前記データ取得部が、前記レーザ光によって前記薄膜を所定の加工済み線に沿って加工している間に、当該所定の加工済み線と異なる加工済み線の位置情報を取得することで、該レーザ光によって該薄膜が所定の加工済み線に沿って加工される前に、前もって当該所定の加工済み線の位置情報を取得する。
【0011】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記データ取得部は、前記レーザ照射部に対して前記加工進行方向に直交する方向に沿った一方側に位置する第一データ取得部と、前記レーザ照射部に対して前記加工進行方向に直交する方向に沿った他方側に位置する第二データ取得部とを有してもよい。
【0012】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記データ取得部は、前記レーザ照射部に対して前記加工進行方向に直交する方向に沿った一方側に配置されて、前記レーザ光によって前記薄膜が所定の加工済み線に沿って加工される前に、前もって当該所定の加工済み線の位置情報を取得可能となっており、
前記データ取得部と前記レーザ照射部の位置関係は、180°反転可能となってもよい。
【0013】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記加工移動部は、前記レーザ照射部を少なくとも加工進行方向に直交する方向に移動させるとともに、前記データ取得部を加工進行方向に直交する方向に移動させない調整移動部を有してもよい。
【0014】
本発明によるレーザ加工装置は、
前記データ取得部によって取得された加工済み線の位置情報に基づいて、当該加工済み線から所定距離だけ離れた加工予定位置を決定する判断部をさらに備えてもよい。
【0015】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記データ取得部は、前記被加工基板上の障害物に関する情報を取得可能となっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるレーザ加工装置によれば、データ取得部が、レーザ光によって薄膜を所定の加工済み線に沿って加工している間に、当該所定の加工済み線と異なる加工済み線の位置情報を取得可能となっている。このため、リアルタイムで加工済み線の位置情報を取得することができるだけでなく、時間をかけて加工済み線の位置情報を解析することができる。この結果、スペックの高くない装置も用いることができ、ひいては、リアルタイムで加工済み線の位置情報を取得するレーザ加工装置を低コストで提供することができる。
【0017】
また、本発明によるレーザ加工装置によれば、精度良く既存のスクライブライン(加工済み線)のすぐ近くに次のスクライブラインを加工することができるので、極めて近接した状態でスクライブラインを形成することができる。このため、集積線の占める領域を小さくすることができ、ひいては、発電効率の高い太陽電池基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態によるレーザ加工装置の構成を示した側方図。
【図2】本発明の実施の形態によるレーザ加工装置によって被加工基板を加工する態様を示した上方平面図。
【図3】本発明の実施の形態によるレーザ加工装置の加工移動部が反転する態様を示した上方平面図。
【図4】本発明の実施の形態における被加工基板の加工態様を示した側方断面図。
【図5】本発明の実施の形態の変形例によるレーザ加工装置を示した上方平面図。
【図6】本発明の実施の形態によるレーザ加工装置で調整移動部が設けられた態様を示した側方図。
【図7】被加工基板の層構成を示した側方断面図。
【図8】加工された被加工基板を示した上方平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態
以下、本発明に係るレーザ加工装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図6は本発明の実施の形態を示す図である。
【0020】
本実施の形態のレーザ加工装置は、ガラス基板(基板)61と、ガラス基板61に配置された薄膜62,63,64とを有する太陽電池に用いられる被加工基板60を加工するためのものである(図7参照)。このうち、薄膜は、ガラス基板61上に設けられた透明電極膜62と、この透明電極膜62上に設けられたSiなどを含む光電変換層63と、この光電変換層63上に設けられた裏面金属電極膜64とを有している。
【0021】
レーザ加工装置は、図1に示すように、被加工基板60を保持する保持部1と、被加工基板60の薄膜62,63,64に対してレーザ光Lを照射するレーザ照射ユニット(レーザ照射部)11と、レーザ照射ユニット11を加工進行方向PD(図2参照)に沿って移動させる加工移動部35と、既に加工されたスクライブライン(加工済み線)62,63の位置情報を取得するデータ取得部41と、を備えている。なお、データ取得部41としては、例えば、CCDカメラ、ラインセンサ、レーザスキャンなどを用いることができる。
【0022】
データ取得部41は、レーザ照射ユニット11に対して加工進行方向PDに直交する方向に沿った一方側に配置されており、レーザ光Lによって光電変換層63または裏面金属電極膜64を所定のスクライブライン62,63に沿って加工している間に、当該所定のスクライブライン62,63と異なるスクライブライン62,63の位置情報を取得するように構成されている(図2参照)。この結果、データ取得部41は、レーザ光Lによって光電変換層63または裏面金属電極膜64が所定のスクライブライン62,63に沿って加工される前に、前もって当該所定のスクライブライン62,63の位置情報を取得することができる。
【0023】
なお、本実施の形態では、データ取得部41は、(加工している箇所に対応する)スクライブライン62,63に隣接するスクライブライン62,63の位置情報を取得する態様を例にとって説明するが、スクライブライン62,63の位置情報を前もって取得するのであれば、これに限られることはない。例えば、二つ隣のスクライブライン62,63や三つ隣のスクライブライン62,63の位置情報を取得してもよいし、別の被加工基板60(次に加工する被加工基板60など)に形成されたスクライブライン62,63の位置情報を取得してもよい。
【0024】
また、加工移動部35は、レーザ照射ユニット11を、データ取得部41からの情報に基づいて加工進行方向PDに直交する方向にも移動することができる。このため、加工移動部35は、レーザ照射ユニット11の位置を、スクライブライン62,63に沿わせて随時修正することができる。また、加工移動部35は180°反転可能となっており、データ取得部41とレーザ照射ユニット11の位置関係が180°反転可能となっている(図3(b)(c)参照)。
【0025】
ところで、本実施の形態では、レーザ照射ユニット11が加工進行方向PDに沿って移動される態様を用いて説明するが、レーザ光Lが被加工基板60に対して相対的に移動されれば、これに限られることはない。例えば、保持部1が加工進行方向PDに沿って移動されてもよいし、保持部1とレーザ照射ユニット11の両方が加工進行方向PDに沿って移動されてもよい。
【0026】
図1に示すように、上述したデータ取得部41には、データ取得部41によって取得された薄膜62,63,64のデータを処理する情報処理部42が接続され、当該情報処理部42には情報処理部42によって処理されたデータ(より具体的にはスクライブライン62,63の位置情報)に基づいて、当該スクライブライン62,63から所定距離だけ離れた加工予定位置を決定する判断部43が接続され、当該判断部43には加工移動部35が接続されている。なお、データ取得部41は、後述するTCOスクライブライン62やSiスクライブライン63の位置情報を取得する。ところで、データ取得部41としては、例えば、CCDカメラ、ラインセンサ、レーザスキャンなどを用いることができる。
【0027】
また、図示しないが、本実施の形態では、光電変換層63および裏面金属電極膜64を成膜する成膜装置が設けられている。なお、当該成膜装置は、透明電極膜62を成膜するように構成されていてもよい。
【0028】
上記では、レーザ照射部としてそれ自体が移動可能なレーザ照射ユニット11を用いて説明したが、これに限られることはなく、例えば、レーザ照射部は、レーザ光Lを発振するレーザ発振器(図示せず)と、レーザ発振器から発振されるレーザ光Lを案内するとともに当該レーザ光Lを端面から外部に照射する一つ以上の光ファイバ(図示せず)と、を有してもよい。この場合には、例えば、レーザ照射部の一部である光ファイバの端面が加工進行方向PDに沿って移動させることで、レーザ光Lの被加工基板60に対する相対的な位置を移動させることができる。
【0029】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0030】
まず、ガラス基板61と、当該ガラス基板61に配置された透明電極膜62とを有する被加工基板60が準備される(図4(a)参照)。その後、保持部1によって被加工基板60が保持される。このとき、本実施の形態では透明電極膜62がガラス基板61の下方に位置するようにして、保持部1によって被加工基板60が保持される。なお、これに限られることはなく、透明電極膜62がガラス基板61の上方に位置するようにして、保持部1によって被加工基板60が保持されてもよい。
【0031】
次に、レーザ照射ユニット11からレーザ光Lが照射され、透明電極膜62が加工されることとなる(図4(b)参照)。このとき、加工移動部35によって、レーザ照射ユニット11が加工進行方向PDに沿って移動され、この結果、透明電極膜62が加工進行方向PDに沿って加工され、透明電極膜62にTCOスクライブライン62が形成されることとなる。
【0032】
次に、成膜装置によって、ガラス基板61に設けられた透明電極膜62上にSiなどを含む光電変換層63が形成される(図4(c)参照)。その後、レーザ照射ユニット11からレーザ光Lが照射され、光電変換層63が加工されることとなる。
【0033】
このときもやはり、加工移動部35によって、レーザ照射ユニット11が加工進行方向PDに沿って移動され、この結果、光電変換層63が加工進行方向PDに沿って加工され、光電変換層63にSiスクライブライン63が形成されることとなる(図4(d)参照)。
【0034】
このように光電変換層63が加工進行方向PDに沿って加工される際、本実施の形態では、以下の工程が行われる。
【0035】
まず、被加工基板60の周縁に最も近い位置に延在するTCOスクライブライン62の上方をデータ取得部41が加工移動部35によって移動される。このとき、当該TCOスクライブライン62の位置情報がデータ取得部41によって取得される。そして、このようにデータ取得部41によって取得されたTCOスクライブライン62の位置情報が情報処理部42によって処理され、その後、TCOスクライブライン62から所定距離だけ離れた加工予定位置が判断部43によって決定される。
【0036】
上述のようにTCOスクライブライン62の位置情報がデータ取得部41によって取得されると、次に、位置情報の取得されたTCOスクライブライン62の上方をレーザ照射ユニット11が移動される。このとき、レーザ照射ユニット11からレーザ光Lが照射され、光電変換層63が加工されることとなる。
【0037】
ここで、本実施の形態によれば、レーザ照射ユニット11が、判断部43によって決定された加工予定位置上を移動されることから、基準となるTCOスクライブライン62に近接した位置で、精度良く、Siスクライブライン63を形成することができる。
【0038】
より具体的には、既に形成されたTCOスクライブライン62を基準にして、常時、レーザ照射ユニット11の位置を補正することができる。このため、TCOスクライブライン62が曲線状に形成された場合であっても、TCOスクライブライン62の全域にわたって近接させて、Siスクライブライン63を形成することができるので、ひいては、集積線65の占める領域を小さくすることができる。また、このように、レーザ照射ユニット11の位置を常時補正することができるので、周辺の温度管理や加工装置の精度に関する仕様を軽減することができる。
【0039】
なお、上述のようにレーザ照射ユニット11からレーザ光Lが照射されて所定のTCOスクライブライン62に沿って光電変換層63が加工されている間に、当該所定のTCOスクライブライン62に隣接するTCOスクライブライン62に沿っての位置情報がデータ取得部41によって取得される(図2参照)。ところで、データ取得部41は、加工移動部35が補正のために加工進行方向PDに直交する方向に移動する場合でも観察対象であるTCOスクライブライン62を観察することができるだけの検知範囲を有している。
【0040】
以上のように、本実施の形態によれば、加工を行っている箇所に対応するTCOスクライブライン62とは異なる(本実施の形態では隣接する)TCOスクライブライン62に関する位置情報を予め取得することができるので、判断部43は、時間をかけてTCOスクライブライン62の位置情報を解析して、当該TCOスクライブライン62から所定距離だけ離れた加工予定位置を決定することができる。このため、判断部43として、(スペックが高くなく)処理に時間がかかるものも用いることができ、ひいては、レーザ加工装置の製造コストを低く抑えることができる。
【0041】
後は、上述した工程が繰り返され、最終的には、被加工基板60の反対側の周縁に最も近い位置に延在するTCOスクライブライン62の上方をレーザ照射ユニット11が移動されて、当該TCOスクライブライン62に対応する光電変換層63が加工されてSiスクライブライン63が形成される(図3(a)参照)。
【0042】
このようにSiスクライブライン63の形成が終了すると、次に、成膜装置によって、透明電極膜62に設けられた光電変換層63上に裏面金属電極膜64が形成される(図4(e)参照)。その後、レーザ照射ユニット11からレーザ光Lが照射され、光電変換層63および裏面金属電極膜64が加工されることとなる(図3(d)および図4(f)参照)。
【0043】
このとき、加工移動部35によって、レーザ照射ユニット11が加工進行方向PDに沿って移動され、この結果、光電変換層63および裏面金属電極膜64が加工進行方向PDに沿って加工され、光電変換層63および裏面金属電極膜64にメタルスクライブライン64が形成されることとなる。
【0044】
なお、このように光電変換層63および裏面金属電極膜64が加工進行方向PDに沿って加工される際、詳細については省略するが、本実施の形態では、Siスクライブライン63を形成する際と同様の工程が行われ、Siスクライブライン63を形成する際と同様の効果を得ることができる。
【0045】
ところで、上記のようにSiスクライブライン63の形成が終了したとき、または、メタルスクライブライン64の形成が終了したときには、加工移動部35が180°反転され、データ取得部41とレーザ照射ユニット11の位置関係が180°反転される(図3(b)(c)参照)。このため、本実施の形態によれば、加工移動部35を加工開始位置に戻すことなく、常に、前もってTCOスクライブライン62またはSiスクライブライン63に関する位置情報を予め取得することができる。
【0046】
すなわち、処理対象となっている被加工基板60のSiスクライブライン63やメタルスクライブライン64の形成が終了すると、別の新しい被加工基板60の光電変換層63や裏面金属電極膜64がレーザ光Lによって加工されることになるが、このとき、本実施の形態ではデータ取得部41とレーザ照射ユニット11の位置関係が180°反転されるので、加工移動部35を加工開始位置に戻すことなく、常に、前もってTCOスクライブライン62またはSiスクライブライン63に関する位置情報を予め取得することができるのである。
【0047】
ところで、上記では、データ取得部41が、レーザ照射ユニット11に対して加工進行方向PDに直交する方向に沿った一方側に配置されている態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、図5(a)−(d)に示すように、データ取得部41が、レーザ照射ユニット11に対して加工進行方向PDに直交する方向に沿った一方側(図5の右側)に位置する第一データ取得部41aと、レーザ照射ユニット11に対して加工進行方向PDに直交する方向に沿った他方側(図5の左側)に位置する第二データ取得部41bを有する態様を用いてもよい。このような態様によれば、加工移動部35を180°反転させることなく、常に、前もってスクライブライン62,63に関する位置情報を予め取得することができる。
【0048】
また、図5(a)−(d)に示すような態様によれば、加工進行方向PDの後方側に位置するデータ取得部(第一データ取得部41aまたは第二データ取得部41b)によって、スクライブライン62,63,64の加工状態や、基準となったスクライブライン62,63に対する加工されたスクライブライン63,64の近接度合いを常時確認することができる。そして、スクライブライン62,63,64の加工が不十分な場合には、該当箇所のみ再度レーザ光Lで加工することもできる。このため、被加工基板60の加工をより精度よく行うことができる。
【0049】
なお、上記では、被加工基板60の周縁に最も近い位置に延在するスクライブライン62,63の位置情報も取得する態様を用いて説明したが、これに限られることはない。すなわち、被加工基板60の周縁に最も近い位置に延在するスクライブライン62,63については、従来のように被加工基板60の周縁に位置するアライメントマークを基準としてもよい。このような態様が可能なのは、アライメントマークに近い箇所においては、スクライブライン62,63に正確に沿わさなくとも不具合が生じにくいためである。
【0050】
なお、本実施の形態のデータ取得部41(第一データ取得部41aおよび第二データ取得部41bも含む)は、被加工基板60上のゴミなどの障害物に関する情報も取得することができるようになっている。そして、データ取得部41からの情報によってゴミなどの障害物が存在すると判断部43で判断されると、加工移動部35は、データ取得部41によって取得された情報に基づいて当該障害物を回避するよう対応するレーザ照射ユニット11を移動させる。このため、ゴミなどの障害によってレーザ光Lが遮断されて薄膜62,63,64が加工されないことを未然に防止することができる。
【0051】
また、上記では、加工移動部35を180°反転させたり、二つのデータ取得部41a,41bを用いたりする態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、加工移動部35を加工開始位置に戻す態様であってもよい。
【0052】
また、上記では、加工移動部35自体が加工進行方向PDに直交する方向に移動することで、レーザ照射ユニット11がスクライブライン62,63に沿って移動される態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、図6に示すように、加工移動部35は、レーザ照射ユニット11のみを加工進行方向PDに直交する方向に移動させる調整移動部37を有してもよい。この調整移動部37は、データ取得部41を加工進行方向PDに直交する方向に移動させることなく、レーザ照射ユニット11のみを加工進行方向PDに直交する方向に移動させ、レーザ光Lの照射位置をスクライブライン62,63に沿って移動させる。
【0053】
図6のような構成にすることで、大きさの大きな加工移動部35を加工進行方向PDに直交する方向に随時移動させる必要がなくなるため、好ましい。
【0054】
また、図6のような構成にすることで、加工移動部35を加工進行方向PDに直交する方向に移動させる必要がなくなり、データ取得部41を加工進行方向PDに直交する方向で固定することができる。このため、データ取得部41として、検知範囲の小さなものも用いることができるようになり、本実施の形態のようなレーザ加工装置をさらに低コストで提供することができるようになる。
【0055】
また、上述のように、調整移動部37を設けることによってデータ取得部41の位置を加工進行方向PDに直交する方向で固定することができるので、判断部43でのデータ処理が容易になる。
【0056】
すなわち、加工移動部35が加工進行方向PDに直交する方向に移動する場合には、加工移動部35が加工進行方向PDに直交する方向に移動することによってデータ取得部41も加工進行方向PDに直交する方向へ移動してしまう。このため、判断部43は、データ取得部41の移動距離も考慮してスクライブライン62,63の位置を解析して決定しなければならない。これに対して、調整移動部37を設けることによって、データ取得部41の位置を加工進行方向PDに直交する方向で固定することができ、データ取得部41の移動距離を考慮する必要がなくなる。この結果、判断部43としてスペックの低いものも利用することができ、レーザ加工装置をより低コストで提供することができるようになる。
【0057】
なお、調整移動部37としては、アクチュエータ、圧電素子、リニアモータ、リニアコイル、シリンダなどを用いることができ、大きさが小さく、動作応答性、動作速度が速いものからなることが好ましい。
【0058】
ところで、上記では、薄膜が、ガラス基板61に設けられた透明電極膜62と、この透明電極膜62上に設けられたSiなどを含む光電変換層63と、この光電変換層63上に設けられた裏面金属電極膜64とを有している態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、薄膜は2層からなってもよいし、4層以上からなってもよい
【符号の説明】
【0059】
1 保持部
11 レーザ照射ユニット(レーザ照射部)
35 加工移動部
37 調整移動部
41 データ取得部
41a 第一データ取得部
41b 第二データ取得部
42 情報処理部
43 判断部
60 被加工基板
61 ガラス基板(基板)
62 透明電極膜(薄膜)
62 TCOスクライブライン(加工済み線)
63 光電変換層(薄膜)
63 Siスクライブライン(加工済み線)
64 裏面金属電極膜(薄膜)
64 メタルスクライブライン(加工済み線)
L レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板に配置された薄膜とを有する太陽電池に用いられる被加工基板を加工するレーザ加工装置において、
前記被加工基板を保持する保持部と、
前記被加工基板の前記薄膜に対してレーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記保持部および前記レーザ照射部のうちの少なくとも一方を、加工進行方向に沿って移動させるとともに、該加工進行方向に直交する方向に移動可能とする加工移動部と、
既に加工された加工済み線の位置情報を取得するデータ取得部と、を備え、
前記データ取得部は、前記レーザ光によって前記薄膜を所定の加工済み線に沿って加工している間に、当該所定の加工済み線と異なる加工済み線の位置情報を取得することで、該レーザ光によって該薄膜が所定の加工済み線に沿って加工される前に、前もって当該所定の加工済み線の位置情報を取得することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記データ取得部は、前記レーザ照射部に対して前記加工進行方向に直交する方向に沿った一方側に位置する第一データ取得部と、前記レーザ照射部に対して前記加工進行方向に直交する方向に沿った他方側に位置する第二データ取得部とを有することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記データ取得部は、前記レーザ照射部に対して前記加工進行方向に直交する方向に沿った一方側に配置されて、前記レーザ光によって前記薄膜が所定の加工済み線に沿って加工される前に、前もって当該所定の加工済み線の位置情報を取得可能となっており、
前記データ取得部と前記レーザ照射部の位置関係は、180°反転可能となっていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記加工移動部は、前記レーザ照射部を少なくとも加工進行方向に直交する方向に移動させるとともに、前記データ取得部を加工進行方向に直交する方向に移動させない調整移動部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記データ取得部によって取得された加工済み線の位置情報に基づいて、当該加工済み線から所定距離だけ離れた加工予定位置を決定する判断部をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記データ取得部は、前記被加工基板上の障害物に関する情報を取得可能となっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−125902(P2011−125902A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286670(P2009−286670)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】