説明

レーザ加工装置

【課題】ガルバノミラーの駆動系の回動範囲の使用状況に応じた寿命を容易に認識することが可能となるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザマーキング装置1は、制御装置26と表示器7aを備え、制御装置26は、ガルバノミラー23a,23bの走査に使われる位置毎の積算使用回数を計数し、積算使用回数を記憶し、記憶した積算使用回数の最大値、および、予め設定される規定値に基づいてガルバノミラー23a,23bの寿命に関する情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置において、光源から加工対象物に対してレーザ光を照射して加工を行う際に、ガルバノ駆動装置を用いて走査して加工を行っている。このガルバノ駆動装置の動作異常を検出することが行われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−82304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガルバノミラーの駆動系には寿命があり、メンテナンスが必要であるが、寿命の残りが少ないか否かの判断が困難であった。
より詳しくは、例えば同じ文字を一箇所に印字する使い方と、同じ文字を複数箇所に印字する使い方を比較した場合を考える。同数の文字を印字する場合、同じ文字を一箇所に印字する使い方に比べて、同じ文字を複数箇所に印字する使い方の方が多く印字することができる。これは、ガルバノミラーの駆動系は、使用頻度が高い回動範囲が劣化するためである。
【0005】
この発明の目的は、ガルバノミラーの駆動系の回動範囲の使用状況に応じた寿命を容易に認識することが可能となるレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、軸を中心として回動可能なガルバノミラーを回動させて、光源から出力されたレーザ光を走査しつつ加工対象物に照射して加工するレーザ加工装置であって、前記ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数を計数する計数手段と、前記計数手段による積算使用回数を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した積算使用回数の最大値、および、予め設定される規定値に基づいて前記ガルバノミラーの寿命に関する情報を出力する出力手段と、を備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、計数手段により、ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数が計数され、計数手段による積算使用回数が記憶手段に記憶される。そして、出力手段により、記憶手段に記憶した積算使用回数の最大値、および、予め設定される規定値に基づいてガルバノミラーの寿命に関する情報が出力される。
【0008】
その結果、ガルバノミラーの駆動系の回動範囲の使用状況に応じた寿命を容易に認識することが可能となる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記計数手段による前記ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数は、前記ガルバノミラーの走査を行わせるための座標データ毎から求めた積算使用回数であることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、ソフトウェアのみの変更でガルバノミラーの駆動系の寿命を認識することが可能となる。
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記計数手段は、前記ガルバノミラーの回動角度を検出する角度検出手段による回動角度を取得し、前記計数手段による前記ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数は、前記角度検出手段により検出した回動角度毎の積算使用回数であることを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、実際のガルバノミラーの走査から積算使用回数を得ることができる。
請求項4に記載のように、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記計数手段による前記ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数は、区分された領域毎を通る回数であるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガルバノミラーの駆動系の回動範囲の使用状況に応じた寿命を容易に認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態におけるレーザマーキング装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】レーザマーキング装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】ガルバノミラーの駆動装置を示す模式図。
【図4】レーザマーキング装置の表示器の正面図。
【図5】第1の実施形態のレーザマーキング装置の作用を説明するためのフローチャート。
【図6】座標データの説明図。
【図7】書き順の説明図。
【図8】計数値の説明図。
【図9】X軸での座標間を通る回数の説明図。
【図10】表示内容を説明するための正面図。
【図11】第2の実施形態における回路図。
【図12】角度と角度センサの出力電圧との関係を示す特性図。
【図13】区間に入った回数についての説明図。
【図14】第2の実施形態のレーザマーキング装置の作用を説明するためのフローチャート。
【図15】第3の実施形態のレーザマーキング装置の作用を説明するためのフローチャート。
【図16】別例を説明するためのタイムチャート。
【図17】別例における計数値の説明図。
【図18】別例におけるX座標点を通る回数の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明をレーザマーキング装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
【0014】
図1に示すように、レーザ加工装置としてのレーザマーキング装置1は、レーザ光Lを出射するコントローラ2を備えている。コントローラ2にはファイバケーブル3を介してヘッド4が接続されている。また、コントローラ2には電気ケーブル5を介してヘッド4が接続されるとともに、コントローラ2には電気ケーブル6を介してコンソール7が接続されている。そして、レーザマーキング装置1は、載置台8に載置された加工対象物Wのマーキング面Wa上に所望の文字、図形、記号等(以下、文字等という)をマーキングするようになっている。
【0015】
ヘッド4の下面には、レーザ光Lが出射される窓部9が形成されている。そして、ヘッド4は、窓部9が加工対象物Wのマーキング面Waと対向するように設置されている。
図2に示すように、コントローラ2はレーザ光源(レーザ発振器)20を備え、レーザ光源20からレーザ光Lが出射され、ファイバケーブル3に送られる。ファイバケーブル3を通してレーザ光がヘッド4に送られる。図1に示すようにヘッド4においてファイバケーブル3の一端がビームエキスパンダ収納部10に接続されている。ビームエキスパンダ収納部10にはビームエキスパンダ21(図2参照)が収納されており、ファイバケーブル3からのレーザ光がビームエキスパンダ21に送られる。
【0016】
図2に示すように、ヘッド4においてレーザ光Lの光路途中には、レーザ光源20側から順に、第1および第2のガルバノミラー23a,23bと、集光レンズ24が配設されている。そして、ビームエキスパンダ21からのレーザ光Lは第1および第2のガルバノミラー23a,23bに入射される。第1および第2のガルバノミラー23a,23bは、ボールベアリングを用いた機械式の駆動装置25により回動される。図3を用いて詳しく説明する。
【0017】
図3において、第1の軸としてのa1軸上において、ボールベアリング30,31、第1のガルバノモータ34の回動軸、第1のガルバノミラー23aの回動軸が配置され、第1のガルバノモータ34の両側のボールベアリング30,31により第1のガルバノミラー23aが回動可能に支持されている。同様に、第2の軸としてのa2軸上において、ボールベアリング32,33、第2のガルバノモータ35の回動軸、第2のガルバノミラー23bの回動軸が配置され、第2のガルバノモータ35の両側のボールベアリング32,33により第2のガルバノミラー23bが回動可能に支持されている。各ガルバノモータ34,35により、第1および第2のガルバノミラー23a,23bを互いに略直交するa1,a2軸を中心としてそれぞれ正・逆方向に回動させることができるようになっている。
【0018】
そして、第1および第2のガルバノミラー23a,23bは、ビームエキスパンダ21からのレーザ光Lを反射し、その出射方向を変更させるようになっている。具体的には、第1のガルバノミラー23aは、回動して加工対象物Wに向けて照射するレーザ光Lを、そのマーキング面Waの一方向(X方向、図1,3参照)に走査させるようになっている。また、第2のガルバノミラー23bは、回動して加工対象物Wに向けて照射するレーザ光Lを、そのマーキング面WaのX方向に対して直交する方向(Y方向、図1,3参照)に走査させるようになっている。従って、加工対象物Wに向けて照射するレーザ光Lは、第1および第2のガルバノミラー23a,23bにより、加工対象物Wのマーキング面Waに対して、X方向およびY方向に走査されるようになっている。
【0019】
このようにして、第1のガルバノミラー23aは第1の軸としてのa1軸を中心として回動可能であり、第2のガルバノミラー23bは第2の軸としてのa2軸を中心として回動可能であり、第1および第2のガルバノミラー23a,23bを回動させて、レーザ光源20から出力されたレーザ光Lを走査しつつ加工対象物Wに照射して加工が行われる。
【0020】
ここで、レーザマーキング装置における軸受け(ボールベアリング30,31,32,33)の寿命について言及する。
一般に軸受けの「寿命」は疲労寿命を指し、これは、軸受けの軌道輪と転動体との間の繰り返し負荷応力により、材料が疲労して剥離を起こす現象であり、同一の角度部分を通過する回数に比例する。
【0021】
軸受けの寿命範囲内でフレーキングという損傷を生じなければ軌道面には剥離片が存在せず、軸受けは健全な状態を保っている。予め軸受けの寿命となる回動回数を決めておき、現在の軸の絶対角度毎の累計の回動回数(積算使用回数)の最大値と、軸受けの寿命となる回動回数とから寿命を判定することが可能となる。
【0022】
軸受けの寿命となる回動回数は、具体的には、予圧を含めた動等価荷重を用いて算出することができる。そして、加工対象物Wに印字したい文字等(例えば、文字列)について印字トリガ信号により文字等(例えば、文字列)の印字が開始されるが、その文字等の座標データから現在の軸の絶対角度毎の累計の回動回数(積算使用回数)を算出する。
【0023】
図1においてコンソール7には表示器7aと操作部7bが設けられている。操作部7bはテンキー等を具備しており、操作部7bにより加工対象物Wに加工を行うレーザパワーの設定等を行うことができるようになっている。表示器7aの詳細を図4に示す。
【0024】
図4において、表示器7aは、印字位置表示部40と使用率表示部41と寿命表示灯42とX軸用グラフ43とY軸用グラフ44を備えている。印字位置表示部40には印字する文字等の位置がXY座標に表示される。使用率表示部41には、ガルバノミラー23a,23bの軸受けの使用率、即ち、積算使用回数の最大値を、軸受けの寿命となる回動回数である規定値で除算した値が表示される。寿命表示灯42は、積算使用回数の最大値が、軸受けの寿命となる回動回数である規定値に達すると点灯する。X軸用グラフ43とY軸用グラフ44については後述する。
【0025】
図2において、コントローラ2は、レーザマーキング装置1を統括的に制御する制御装置26を備えている。制御装置26は不揮発性メモリを具備しており、不揮発性メモリには、印字される文字等のマーキング情報が記憶されている。このマーキング情報は、文字等を構成する各線分の始点および終点の座標値、レーザ光Lの照射により形成される線分の太さ等の情報を含む。
【0026】
制御装置26はコンソール7の操作部7bと接続され、制御装置26は操作部7bによるレーザパワーの設定値等を入力する。また、制御装置26は、レーザ光源20、ガルバノミラー用の駆動装置25が接続されている。ガルバノミラー用の駆動装置25は、第1のガルバノモータ34および第2のガルバノモータ35を含んでおり、当該ガルバノモータ34,35を駆動することにより第1および第2のガルバノミラー23a,23bが制御される。
【0027】
制御装置26は、レーザ光源20を駆動してレーザ光Lを出射させ、不揮発性メモリに記憶されたマーキング情報から座標データが作成され、この座標データに基づいて第1および第2のガルバノモータ34,35を駆動制御することでレーザ光Lを2次元的に走査し、加工対象物Wのマーキング面Waに所定の文字等をマーキングするようになっている。
【0028】
つまり、制御装置26は、加工対象物Wに加工する文字等の座標データを基に駆動装置(ガルバノ駆動装置)25に駆動信号、即ち、XY座標位置への移動指令信号を送る。これにより、駆動装置(ガルバノ駆動装置)25において、例えば、サーボ機構によりガルバノミラー23a,23bが目標の座標位置に対応する角度に回動され、レーザ光源20からのレーザ光Lが走査されて加工対象物Wに照射される。
【0029】
次に、このように構成したレーザマーキング装置1の作用を説明する。
図5に示すように、制御装置26は座標データを作成する(図5のステップS100)。
【0030】
図6に示すように、座標データには、マーキング情報と位置情報とを含んでいる。マーキング情報とは、マーキングの際の始点と終点の座標を示す情報が含まれる。また、位置情報とは、XYの直交座標系における印字範囲内でのマーキング情報の配置を示す情報である。XYの直交座標系における座標点は印字範囲を等間隔に区切った形で配置されている。
【0031】
例えば、図7に示すように、アルファベットの「A」をマーキングする場合においては、マーキング(印字)の順序としては、XYの直交座標系において、点P1を始点としてP2が終点となり、P2からP3にジャンプし、P3を始点としてP4が終点となる。
【0032】
図5において制御装置26は、座標データを作成すると、積算通過回数処理を行う(図5のステップS101)。
図7において「A」のマーキングの場合、ガルバノミラー23aの動きとしては図8に示すようになる。図8において、横軸にX軸座標を設定しているとともに縦軸に回数(計数値n)を設定している。この図8において、「A」の印字の際には、原点P0から始め、まず、始点P1におけるX軸の座標点(1)にジャンプする。そして、始点P1におけるX軸の座標点(1)から、終点P2におけるX軸の座標点(4)に行く。引き続き、P2から始点P3におけるX軸の座標点(2)にジャンプする。そして、始点P3におけるX軸の座標点(2)から、終点P4におけるX軸の座標点(3)に行く。Y軸座標での積算通過回数処理についても、X軸座標での積算通過回数処理と同様である。
【0033】
図5において制御装置26は、積算通過回数処理を行った後、ステップS102において、積算使用回数の計数を行う。
具体的には、図7,8の状況における各座標間を通過する回数である積算使用回数を求めると、図8のごとくX座標点(0)とX座標点(1)との間を通過する回数は1回である(図9参照)。また、図8において、X座標点(1)とX座標点(2)との間を通過する回数は1回である(図9参照)。さらに、図8において、X座標点(2)とX座標点(3)との間を通過する回数は3回である(図9参照)。さらに、図8において、X座標点(3)とX座標点(4)との間を通過する回数は2回である(図9参照)。
【0034】
よって、図9に示すように、ガルバノミラー23aの走査に使われる位置毎の積算使用回数は、座標データから求めた各座標間を通過する回数であり、この積算使用回数のうちの最大値は、X座標点(2)とX座標点(3)との間を通過する回数である「3」となる。これが積算使用回数の最大値となっている。
【0035】
Y軸の座標(Y座標)での積算使用回数の計数についてもX軸の座標(X座標)での積算使用回数の計数と同様に行う。
図5において制御装置26は、積算使用回数の計数を行った後、ステップS103において印字トリガ信号が入力されたか、即ち、印字開始か否か判定する。そして、制御装置26は、印字開始であると(印字トリガ信号が入力されると)、ステップS102で求めた積算使用回数を、メモリにおけるこれまでの積算使用回数に加算する(図5のステップS104)。
【0036】
引き続き、制御装置26は、X座標およびY座標での「積算使用回数の最大値」を「軸受けの寿命となる回動回数である規定値」で除算して使用率を算出し、使用率(%)を、図4の表示器7aの使用率表示部41に表示させる(図5のステップS105)。
【0037】
また、制御装置26は図4のX軸用グラフ43とY軸用グラフ44に表示動作を行わせる。具体的には、例えば、図10に示すように、X軸用グラフ43の横軸はX軸座標をとり、左の縦軸に使用率をとり、右の縦軸に今回印字しようとする文字列の積算使用回数をとっている。図10での表示部位43aにおいてX軸の所定間隔ごとの使用率が表示され、「これまでの積算使用回数」を「X軸の軸受けの寿命となる回動回数」で除算した値をグラフ化したものを表示する。また、表示部位43bは、図9で説明したように現在表示中の文字列による通過する回数をグラフ化したものを表示する。さらに、表示部位43cにおいて、「トリガ数」を表示する。このトリガ数とは、「X軸の軸受けの寿命となる回動回数」−「これまでの積算使用回数」を、現在表示中の文字等(例えば、文字列)における積算使用回数の最大値で除算したものであり、同じ文字等(例えば、文字列)を、後何回、印字することが可能かを表している。
【0038】
さらに、制御装置26は、図5のステップS106において積算使用回数の最大値が規定値を超えたか否か判定する。そして、制御装置26は、積算使用回数の最大値が規定値を超えると、図4の寿命表示灯42を点灯する(図5のステップS107)。一方、制御装置26は、積算使用回数の最大値が規定値に達していないと、ステップS107の処理は行わない(迂回する)。
【0039】
つまり、第1のガルバノミラー23aの走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値および第2のガルバノミラー23bの走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値に基づいて寿命が残り少ないガルバノミラーの寿命に関する情報を表示する。特に、本実施形態では 図5のステップS106,S107において、ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値が規定値に達したか否か判定して判定結果を表示している。なお、判定結果に基づいて警報してもよい。
【0040】
このようにして、図2の計数手段としての制御装置26は、ガルバノミラー23a,23bの走査に使われる位置毎の積算使用回数を計数する。特に、本実施形態においては、座標データから求めた各座標間を通過する回数を、ガルバノミラー23a,23bの走査に使われる位置毎の積算使用回数として計数し、積算使用回数を記憶し、記憶した積算使用回数の最大値に基づいてガルバノミラー23a,23bの寿命に関する情報を表示させる。
【0041】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)レーザマーキング装置1の構成として、計数手段、記憶手段および出力手段としての制御装置26を備える。制御装置26は、ガルバノミラー23a,23bの走査に使われる位置毎の積算使用回数を計数し、積算使用回数を記憶し、記憶した積算使用回数の最大値、および、予め設定される規定値に基づいてガルバノミラー23a,23bの寿命に関する情報を表示器7aに出力する。これにより、ガルバノミラー23a,23bの駆動系の回動範囲の使用状況に応じた寿命を容易に認識することが可能となる。
【0042】
より詳しくは、ガルバノミラーの駆動系には寿命があり、メンテナンスが必要であるが、従来においては、寿命の残りが少ないか否かの判断が困難である。ガルバノミラーの駆動系は、使用頻度が高い回動範囲が劣化するため、例えば、同じ文字を一箇所に印字する使い方と同じ文字を複数箇所に印字する使い方とでは、同数の文字を印字する場合、同じ文字を複数箇所に印字する使い方の方が多く印字することができる。駆動系の寿命を回動範囲の使用状況に応じて寿命を求めることができなかった。
【0043】
これに対し本実施形態においては、積算使用回数の最大値および規定値に基づいてガルバノミラー23a,23bの寿命に関する情報を得て出力して表示することにより、ガルバノミラー23a,23bの駆動系の回動範囲の使用状況に応じた寿命を容易に認識することが可能となるようになる。
【0044】
(2)特に、ガルバノミラー23a,23bの走査に使われる位置毎の積算使用回数は、ガルバノミラー23a,23bの走査を行わせるための座標データ毎から求めた積算使用回数である。これにより、制御装置26におけるハードウェアはそのままで、ソフトウェアのみの変更でガルバノミラー23a,23bの駆動系の寿命を認識することが可能となる。また、印字を開始する前、即ち、ガルバノミラー23a,23bの走査前に積算使用回数を得ることができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0045】
第1の実施形態においては座標データに基づいてガルバノミラー23a,23bの走査に使われる位置毎の積算使用回数を計数した。これに対し、本実施形態においては、ガルバノミラー23a,23bの角度データ(角度センサによるガルバノミラー23a,23bの検出する回動角度)に基づいてガルバノミラー23a,23bの走査に使われる位置毎の積算使用回数を計数している。
【0046】
図11に示すように、駆動装置25はガルバノ駆動回路120を備えている。ガルバノ駆動回路120は、駆動信号が入力されてガルバノモータ34(35)を駆動する。一方、角度センサ110によりガルバノモータ34(35)の回動軸の角度、即ち、ガルバノミラー23a(23b)の回動角度を検出してガルバノ駆動回路120にフィードバックしている。角度センサ110は、ガルバノミラー23a(23b)の回動角度を検出する角度検出手段となる。
【0047】
一方、制御装置26はマイコン100とA/D変換器111を備えている。そして、角度センサ110の角度検出信号が、A/D変換器111によりアナログ信号からデジタル信号に変換されて計数手段としてのマイコン100に取り込まれる。
【0048】
つまり、図12に示すように、角度センサ110の出力電圧と角度θとは比例関係にあるので、この関係を用いてマイコン100は角度についてのデジタル値を得る。
そして、マイコン100は取り込んだガルバノモータ34(35)の角度(デジタル値)から、図13に示すように、角度θについてのデジタル値の区間に入った回数をカウントして積算使用回数nを算出する。
【0049】
次に、このように構成したレーザマーキング装置1の作用を説明する。
図14に示すように、制御装置26は座標データを作成する(図14のステップS200)。
【0050】
制御装置26は、座標データを作成した後、印字トリガ信号が入力されたか、即ち、印字開始か否か判定する(図14のステップS201)。そして、制御装置26は、印字開始であると(印字トリガ信号が入力されると)、ステップS202において駆動装置(ガルバノ駆動装置)25に駆動信号を出力する。これにより、駆動装置(ガルバノ駆動装置)25はガルバノミラー23a,23bを回動駆動する(図14のステップS203)。
【0051】
一方、駆動装置25は図14のステップS204において回動角度積算処理を行う。つまり、図13に示すように角度θについてのデジタル値の区間に入るか否かの判定処理を行う。
【0052】
さらに、制御装置26は、ステップS205において積算使用回数の計数を行う(図5のステップS102と同様の処理)。つまり、図13に示すように、角度θについてのデジタル値の区間に入った回数をカウントして積算使用回数nを算出する。
【0053】
そして、制御装置26は、求めた積算使用回数を、メモリにおけるこれまでの積算使用回数に加算する(図14のステップS206)。引き続き、制御装置26は、X座標およびY座標での「積算使用回数の最大値」を「軸受けの寿命となる回動回数である規定値」で除算して使用率を算出し、図4の表示器7aの使用率表示部41に表示させる(図14のステップS207)。さらに、制御装置26は、図14のステップS208において積算使用回数の最大値が規定値を超えたか否か判定して、積算使用回数の最大値が規定値を超えると、図4の寿命表示灯42を点灯させる(図14のステップS209)。一方、制御装置26は、積算使用回数の最大値が規定値に達していないと、ステップS209の処理は行わない(迂回する)。
【0054】
このようにして、計数手段としての制御装置26(マイコン100)は、ガルバノミラー23a,23bの回動角度を検出する角度検出手段としての角度センサ110による回動角度を取得する。また、制御装置26(マイコン100)におけるガルバノミラー23a,23bの走査に使われる位置毎の積算使用回数は、角度センサ110により検出した回動角度毎の積算使用回数である。
【0055】
この場合、実際のガルバノミラー23a,23bの走査から積算使用回数を得ることができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0056】
本実施形態では、図5の処理に代わり、図15の処理を実行する。
図5では制御装置26は座標データを作成すると直ちに(駆動装置25に駆動信号を出力する前において)、積算通過回数処理を行った。これに対し図15の本実施形態においては、制御装置26は駆動装置25に対し駆動信号を出力した後に積算通過回数処理を行っている。
【0057】
図15において、制御装置26は座標データを作成する(ステップS300)。そして、制御装置26は、印字トリガ信号を入力したか、即ち、印字開始か否か判定する(図15のステップS301)。そして、制御装置26は、印字開始であると(印字トリガ信号が入力されると)、ステップS302で駆動装置(ガルバノ駆動装置)25に駆動信号を出力する。
【0058】
引き続き、駆動装置25は図15のステップS303において積算通過回数処理を行う(図5のステップS101と同様の処理)。さらに、制御装置26は、ステップS304において積算使用回数の計数を行う(図5のステップS102と同様の処理)。
【0059】
そして、制御装置26は、求めた積算使用回数を、メモリにおけるこれまでの積算使用回数に加算する(図15のステップS305)。引き続き、制御装置26は、X座標およびY座標での「積算使用回数の最大値」を「軸受けの寿命となる回動回数である規定値」で除算して使用率を算出し、図4の表示器7aの使用率表示部41に表示させる(図15のステップS306)。さらに、制御装置26は、図15のステップS307において積算使用回数の最大値が規定値を超えたか否か判定して、積算使用回数の最大値が規定値を超えると、図4の寿命表示灯42を点灯させる(図15のステップS308)。一方、制御装置26は、積算使用回数の最大値が規定値に達していないと、ステップS308の処理は行わない(迂回する)。
【0060】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・図16に示すように、ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値とその値に至るに要した期間T1から、走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値が規定値に達する時期t12を予測して表示するようにしてもよい(制御装置26により駆動装置25の寿命予測を行うようにしてもよい)。詳しくは、図16において、横軸に時間をとり、縦軸に走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値をとっている。t10のタイミングでレーザマーキング装置1の使用を開始している。レーザマーキング装置1の使用により、走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値は大きくなっていく。そして、現在の時点(t11のタイミング)において、使用開始から現在までの期間T1と、現在の走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値n1と、軸受けの寿命となる回動回数である規定値n10から、次のように寿命予測時期t12を算出する。
【0061】
t12=t11+(T1・(n10−n1))/n1
・・・(1)
つまり、このままのペースでレーザマーキング装置1の使用を継続していった場合、駆動装置25の寿命となる時期(規定値に達する時期)を推定する。
【0062】
具体的に説明する。例えば、設置後、一ヶ月分のデータをとり、走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値をn1として、上記(1)式においてT1=一ヶ月として寿命予測時期t12を算出する。そして、制御装置26は、このようにして算出した寿命予測時期を、表示器7aに表示させる。これにより、駆動装置25がその使用により寿命に達する時期を知ることができる。
【0063】
このように、使用を開始してから規定の期間が経過したときに、その時点におけるガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値と規定の時期から、走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値が規定値に達する時期を予測し、表示するようにしてもよい。
【0064】
あるいは、操作スイッチが操作されると、その時点におけるガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値とその値に至るに要した期間から、走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値が規定値に達する時期を予測し、表示するようにしてもよい。
【0065】
また、ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値から当該最大値が規定値に達するまでの残りのガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数を算出して表示するようにしてもよい。
【0066】
また、規定値に達する時期になったら警告するようにしてもよい。
また、ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数の最大値が規定値に達する前の予め定めた値に達したか否か判定し、判定結果に基づいて警報するようにしてもよい。
【0067】
・図8,9の説明においては座標の間を通る回数を計数して積算使用回数を得ていたが、これに代わり、図17,18に示すようにX座標点を通る回数を計数して積算使用回数を得るようにしてもよい。詳しくは、スタート点はプラス1、通過点はプラス1、折り返し点はプラス2として計数し、図17,18の場合には、X座標点(0)を通る回数は1、X座標点(1)を通る回数は1、X座標点(2)を通る回数は3、X座標点(3)を通る回数は3、X座標点(4)を通る回数は2となる。
【0068】
このように、計数手段としての制御装置26によるガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数は、図8,9で説明したように区分された領域毎を通る回数であった。詳しくは、XYの直交座標系における座標点は印字範囲を等間隔に区切った形で配置されており、始点・終点である座標点(P1,P2,P3,P4)を区分された領域を通過する回数を計数した。これに代わり、図17,18で説明したように区分された領域の境界を通る回数であってもよい。両者の比較において、図17,18で説明したように区分された領域の境界を通る回数を計数する場合には、スタート点はプラス1、通過点はプラス1、折り返し点はプラス2とする処理が必要であるのに対し、図8,9で説明したように区分された領域毎を通る回数を計数する場合にはその処理が不要となる。
【0069】
なお、図8,9においては印字の際のドットとドットの間隔(ドットピッチ)を座標点の間隔とし、ドット間を、区分された領域として説明したが、複数のドットピッチを1つの単位とし、これを区分された領域として、この区分された領域毎を通る回数を計数してもよいことはいうまでもない。
【0070】
・出力手段としての制御装置26はガルバノミラーの寿命に関する情報を表示器7aに出力する場合について説明したが、これに限ることなく、例えば、ガルバノミラーの寿命に関する情報を、レーザマーキング装置の外部機器、例えば、レーザマーキングを含めたシステム全体を統括するコンピュータに出力するようにしてよい。
【0071】
・ガルバノミラー23a,23bの走査に使われる位置毎の積算使用回数を計数して積算使用回数を記憶し、このデータから軸受けの回動範囲ごとの使用状況が分かるのでこのデータを用いて、印字の際に、積算使用回数が多くなっている場所は使わないように印字位置を変更する等の処理を行うようにしてもよい。
【0072】
・表示手段に積算使用回数の最大値と規定値をそのまま表示してもよい。
・規定値はメモリに予め記憶されていてもよいし、ハード構成(例えば、コンパレータの閾値)としてもよい。
【0073】
・軸受けを含めたガルバノミラーを交換したときに座標の積算使用回数をリセットすることができるようにリセット操作スイッチ等を設けておいてもよい。また、軸受けを含めたガルバノミラーを外したときに積算使用回数が自動的にリセットされるようにしてもよい。
【0074】
・ガルバノ駆動装置はX,Yの2軸に限定されず、X,Y,Z(集光レンズ24の光軸方向)の3軸ガルバノミラーを採用することもできる。
・レーザマーキング装置に具体化したが、これに限定されるものではなく、他のレーザ加工装置、例えばレーザ溶接機、レーザ穴あけ機、レーザ切断機等に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…レーザマーキング装置、7a…表示器、20…レーザ光源、23a…第1のガルバノミラー、23b…第2のガルバノミラー、26…制御装置、34…第1のガルバノモータ、35…第2のガルバノモータ、110…角度センサ、L…レーザ光、W…加工対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を中心として回動可能なガルバノミラーを回動させて、光源から出力されたレーザ光を走査しつつ加工対象物に照射して加工するレーザ加工装置であって、
前記ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数を計数する計数手段と、
前記計数手段による積算使用回数を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した積算使用回数の最大値、および、予め設定される規定値に基づいて前記ガルバノミラーの寿命に関する情報を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記計数手段による前記ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数は、前記ガルバノミラーの走査を行わせるための座標データ毎から求めた積算使用回数であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記計数手段は、前記ガルバノミラーの回動角度を検出する角度検出手段による回動角度を取得し、前記計数手段による前記ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数は、前記角度検出手段により検出した回動角度毎の積算使用回数であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記計数手段による前記ガルバノミラーの走査に使われる位置毎の積算使用回数は、区分された領域毎を通る回数であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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