説明

レーザ定着装置

【課題】 レーザ定着装置において、トナー像に対するレーザ光の焦点ずれ防止をして、トナー像の定着不良を解消する。
【解決手段】 駆動ローラと従動ローラに懸架された無端状の搬送ベルトに用紙を載せて搬送する用紙搬送手段と、用紙搬送手段と対向して配置され、用紙に転写されたトナー像に合せてレーザ光を照射するレーザ照射手段とを有するレーザ定着装置であって、レーザ定着装置は、位置決めローラを備え、位置決めローラは、駆動ローラと対向する位置に設けられ、駆動ローラと位置決めローラの間で用紙を挟持して搬送することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機や各種プリンタなどに組み込まれる定着装置に関し、詳しくは、用紙上に転写された未定着のトナー像にレーザ光を照射し、トナー像を熱溶融させて用紙上に定着させるレーザ定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機や各種プリンタ等は、用紙上に転写されたトナー像を定着させるための定着装置を備えている。従来の定着装置は、未定着トナーを転写した用紙をヒータを内蔵した加熱ローラと駆動ローラで挟み込んで定着させるヒートローラ方式が主流であったが、加熱ローラを常時定着待機状態にするためのプレヒートが必要であり、エネルギー効率が低かった。このため、最近では、トナー領域にのみレーザ光を照射して定着させることによりエネルギー効率を高めたレーザ定着装置が提案されている。
【0003】
図5は、特許文献1に開示されているレーザー定着装置の模式図である。特許文献1の定着装置は、リーダー部71で読み取られたイメージデータがレーザー発光のデータに変換された後、ルート72を通って画像形成用のレーザー発光部76に送られる。レーザー発光部76から発光された画像形成レーザー光L1は、ポリゴンミラー78により走査され、ミラー79によって反射されて感光ドラム81上に照射される。そして、感光ドラム81上においてレーザー光はC〜D方向に走査され、感光ドラム81上には画像の潜像が形成される。上記潜像は不図示の現像装置でトナー像として現像されて顕画化され、トナー像は帯電器82,83によって転写材91に転写され、トナー像の転写を受けた転写材91は2本のローラ対84で駆動される搬送ベルト85上に搬送される。
【0004】
一方、上記データはルート72から分岐されてルート73を通り、画像メモリー74に送られる。画像メモリー74に分岐、記憶された画像データは、所定時間ΔT後にルート75を通り、定着用レーザー発光部77に送られ、該定着用レーザー発光部77において発光されたレーザー光L2はポリゴンミラー78により走査され、ミラー80で折り曲げられて定着ポイント87に達する。そして、転写材91は定着ポイント87に送られると、そのトナー部のみにレーザー光L2を照射され、トナー像の定着が行われる。
【0005】
特許文献1の定着装置によれば、従来のヒートローラ方式に比して無駄なエネルギーの消費がなく、定着のエネルギー効率を高めることができるとともに、常時定着待機状態を実現するためのプレヒートが不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−325493号公報(平成7年12月12日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のレーザー定着装置は、搬送時に様々な要因で転写材91が搬送ベルト85上から浮き上がり、定着用レーザー発光部77から定着ポイント87までの距離が変動して、レーザー光L2をトナー部に照射するタイミングがずれたり、トナー部に対してレーザー光L2の焦点がずれて、トナーの定着不良が生じる問題があった。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザ定着装置において、トナー像に対するレーザ光の焦点ずれ防止をして、トナー像の定着不良を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のレーザ定着装置は、駆動ローラと従動ローラに懸架された無端状の搬送ベルトに用紙を載せて搬送する用紙搬送手段と、
用紙搬送手段と対向して配置され、用紙に転写されたトナー像に合せてレーザ光を照射するレーザ照射手段とを有し、レーザ定着装置は、位置決めローラを備え、位置決めローラは、駆動ローラと対向する位置に設けられ、駆動ローラと位置決めローラの間で用紙を挟持して搬送することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のレーザ定着装置は、駆動ローラと位置決めローラを、レーザ照射手段より下流側に配置したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のレーザ定着装置は、位置決めローラに、弾性層と表面コート層を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のレーザ定着装置は、位置決めローラは、レーザ照射手段との相対位置を固定して設置し、用紙搬送手段は、位置決めローラから離接可能に設置したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のレーザ定着装置は、駆動ローラと従動ローラの間に転写ローラを設け、転写ローラで用紙にトナー像を転写することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の画像形成装置は、上記のいずれかのレーザ定着装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レーザ定着装置において、トナー像に対するレーザ光の焦点ずれが防止でき、トナー像の定着不良を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のレーザ定着装置を含む画像形成装置を示す模式図である。
【図2】実施例1のレーザ定着装置の概略構成を示す模式図である。
【図3】位置決めローラの内部構造を示す模式図である。
【図4】実施例2のレーザ定着装置の概略構成を示す模式図である。
【図5】従来のレーザ定着装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分又は相当部分を表すものとする。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の画像形成装置1の基本構成を示す模式図である。画像形成装置1は、トナー像を形成するための現像ユニット2と、形成したトナー像を用紙Pに転写する転写ユニット3と、転写したトナー像を加熱して用紙P上に定着させるレーザ定着装置4とから構成される。
【0019】
現像ユニット2は、トナー像を形成するための感光体11と、感光体11を所定の電位に帯電させるための帯電器12と、所定電位に帯電された感光体11上に画像情報に基づいて静電潜像を形成する露光装置13と、感光体11上の静電潜像に帯電させたトナーを供給してトナー像を形成する現像装置14と、転写後の感光体11上に残ったトナー像を除去するクリーングユニット15と、クリーニングした感光体11の電位を再び0Vへ戻す除電ユニット16から構成される。このような現像ユニット1が、カラー画像の各色のトナー像に対応して、例えば、4組備えられている。
【0020】
転写ユニット3は、現像ユニット1で顕像化された各色のトナー像を中間転写ベルト21上に重ね合わせて転写する1次転写部22と、中間転写ベルト21上に形成された4色のトナー像を転写ローラ23で用紙P上に転写する2次転写部24とから構成される。
【0021】
レーザ定着装置4は、用紙搬送手段30と、レーザ照射手段40と、位置決めローラ50とから構成される。用紙搬送手段30とレーザ照射手段40は対向して配置され、2次転写部24でトナー像が転写された用紙Pを、用紙搬送手段30の搬送ベルト31上に載せレーザ照射手段40に搬送するように構成されている。
【0022】
次に、図1を用いて、画像形成装置1における画像形成プロセスについて説明する。
【0023】
画像形成装置1は、まず、外部装置から画像データを取得し、感光体11を図示しない駆動ユニットで矢印方向に所定速度、例えば、80〜117mm/sで回転させるとともに、感光体11の表面を帯電器12により所定電位に帯電させる。
【0024】
帯電器12は、一例として、スコロトロン帯電器を使用できる。スコロトロン帯電器は、感光体11の表面から隔てた楔状電極と、楔状電極と感光体11の間に感光体11の表面電位を制御するグリッドとを備える。この楔状電極に、−3〜−8KVの高電圧を印加して、楔状電極先端に不平等電界を生じさせ、気中放電の電子なだれにより感光体11の表面を帯電させる。感光体11の表面電位は、楔状電極と感光体11の間に設置されたグリッドの印加電圧を変更して、所定の均一電位、例えば、−620Vに調整される。
【0025】
次に、露光装置13により、所定電位に帯電した感光体11の表面に、印刷する画像データに応じた静電潜像を形成する。露光装置13は、画像データに対応したレーザ光を感光体11の回転軸方向に走査しながら照射することにより、感光体11の表面に静電潜像を形成する。
【0026】
現像装置14では、キャリアと呼ばれる磁性粉体とトナーが混合された現像剤が磁気ブラシによって回転搬送され、感光体11の静電潜像が現像剤と摺接されることにより、静電潜像にトナーが付着して感光体11上にトナー像が形成される。
【0027】
感光体11上に形成されたトナー像は、1次転写部22において、中間転写ベルト21と接し、図示されない高圧電源から供給される印加電界によって中間転写ベルト21上に転写される。このような転写動作が各色の現像ユニット1に対して順次行われることで、中間転写ベルト21上に4色のトナー像が形成される。
【0028】
用紙Pは、給紙トレイ25から給紙装置26によって2次転写ユニット部24に搬送され、中間転写ベルト21と転写ローラ23に挟持された用紙Pに図示されない高圧電源から電圧が供給されて、中間転写ベルト21のトナー像が用紙Pに転写される。トナー像が転写された用紙Pは、レーザ定着装置4に搬送され、未定着のトナー像にレーザ光が照射され用紙Pに定着される。
【0029】
図2は、本発明の特徴部となるレーザ定着装置4の構成を示す模式図である。レーザ定着装置4は、用紙搬送手段30と、用紙搬送手段30と対向して配置されるレーザ照射手段40と位置決めローラ50とから構成されている。
【0030】
用紙搬送手段30は、無端状の搬送ベルト31と、無端状の搬送ベルト31を懸架する駆動ローラ32と従動ローラ33からなる。トナー像が転写された用紙Pは、2次転写ユニット部24から帯電した状態で用紙搬送手段30に送出され、搬送ベルト31上に静電吸着する。搬送ベルト31は、駆動ローラ32と従動ローラ33によって回動しており、用紙Pをレーザ照射手段40のレーザ照射領域に搬送する。
【0031】
レーザ照射手段40は、例えば、赤外LD(レーザダイオード)が4個並べられたレーザ素子41を備え、レーザ光Lとして波長808nmの光出力50Wの赤外線光を出射する。レーザ素子41は、図示されないレーザ駆動回路に接続されており、トナー像の位置に合せてレーザ光Lを出射する。
【0032】
レーザ素子41から出射されたレーザ光Lは、合成ガラス製のコリメートレンズ42を通して平行光にされ、同じく合成ガラス製の集光レンズ43を通って所定の焦点距離fで集光する。用紙Pはレーザ照射部Aで焦点距離fの位置を通過するように搬送され、集光したレーザ光Lがトナー像に照射される。レーザ照射部Aは、用紙搬送手段30の駆動ローラ32の近辺に位置するように構成されている。
【0033】
レーザ照射部Aを通過した用紙Pは、駆動ローラ32の中心部を過ぎると、駆動ローラ32の曲率と図示しない分離爪によって搬送ベルト31から分離される。用紙Pは、2次転写時に帯電し、搬送ベルト31に載せられると静電吸着しているが、その吸着力は小さく、搬送ベルト31から分離された用紙Pが、そのままレーザ照射部Aまで浮き上がってしまう場合がある。
【0034】
ここで、本発明のレーザ定着装置4は、駆動ローラ32と対向する位置決めローラ50が設けられており、駆動ローラ32と位置決めローラ50の間で用紙Pを挟持して搬送するように構成されているため、レーザ照射部Aに搬送される用紙Pが搬送ベルト31から浮き上がるようなことがなく、トナー像の位置に精度良くレーザ光を照射することができ、トナー像の定着不良を防止することができる。
【0035】
また、本発明のレーザ定着装置4は、位置決めローラ50が、レーザ照射部Aの下流側に配置され、レーザ光が照射されたトナーを用紙Pに圧接することを特徴とする。この構成によれば、レーザ光が照射されて温度が高い状態のトナーを用紙Pに圧接するので、用紙上へのトナーの定着性を改善することができる。
【0036】
図3は、位置決めローラ50の内部構成を示す模式図である。位置決めローラ50は、Φ18のステンレス製の芯材51の表面に、厚さ0.2mmのシリコンゴムからなる弾性層52と、厚さ30μmのPFA(ポリテトラフルオロエチレン)からなる表面コート層53が設けられている。
【0037】
レーザ光の照射により非接触で加熱されたトナーの表面は微小な凹凸を有しているが、位置決めローラ50の表面に設けられた弾性層52と表面コート層53で、レーザ光の照射後のトナーを圧接することにより、トナーの表面を平滑化することができる。
【0038】
また、本発明のレーザ定着装置3は、レーザ照射手段40と位置決めローラ50が画像形成装置1に固定されている。
【0039】
レーザ照射手段40のレーザ素子41の寿命は1万時間以上であり、一般的な定着装置のハロゲンランプに対して寿命が長いため、定期的なメンテナンスの必要はない。このため、レーザ照射手段40を画像形成装置1側に固定することができ、画像形成装置1内でのレーザ照射部Aの位置ずれを防止できる。
【0040】
さらに、位置決めローラ50を画像形成装置1側に固定することにより、位置決めローラ50とレーザ照射部Aとの相対位置が固定され、位置決めローラ50を用紙搬送手段30を設置する際の基準位置として用いることができる。すなわち、用紙搬送手段30の駆動ローラ32を位置決めローラ50に当接させて設置することで、用紙Pの搬送位置をレーザ照射部Aの焦点位置と合わせやすくすることができる。
【0041】
また、用紙搬送手段30は、レーザ照射手段40及び位置決めローラ50に対して、図1に示すように矢印Mの方向に離接可能に設置されている。
【0042】
用紙搬送手段30は、搬送ベルト31、駆動ローラ32、従動ローラ33など、駆動による劣化が生じる消耗部材で構成されているが、レーザ照射手段40及び位置決めローラ50から離接可能に設置されることにより、これらの消耗部材を容易に交換することができる。
【0043】
また、レーザ定着装置4の内部で用紙Pのひっかかり等によるジャムが生じた場合でも、用紙搬送手段30を位置決めローラ50から離間させて、ジャムを取り除き易くすることができる。
【実施例2】
【0044】
図4は、実施例2のレーザ定着装置5の概略構成を示す模式図である。実施例2のレーザ定着装置5では、用紙搬送手段30の構成が実施例1と異なり、他の構成については実施例1と同じ構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0045】
図4に示すように、実施例2のレーザ定着装置5は、用紙搬送手段30において駆動ローラ32と従動ローラ33の間に、2次転写ユニット部24の転写ローラとして機能する転写ローラ34を設けた構成となっている。このような構成とすることにより、2次転写ユニット部24とレーザ定着装置5を近づけて配置することができ、画像形成装置1を小型化することができる。
【0046】
さらに、2次転写ユニット部24と位置決めローラ50の2点で用紙Pを搬送ベルト31上に押さえることができるので、用紙Pの浮き上がりがさらに生じ難くなり、レーザ光の焦点距離fを一定に保ち、トナー像に対して精度良くレーザ光を照射することができ、トナー像の定着不良を防止することができる。
【0047】
なお、図4に示すように、位置決めローラ50に、付着したトナーを除去するクリーニング装置55を設けてもよい。位置決めローラ50をクリーニングすることにより、定着後の用紙Pが汚されることを防止できる。
【0048】
本発明は上述した各実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
例えば、レーザ照射部40において、コリメートレンズ42および集光レンズ43として合成ガラスだけでなく石英ガラスやシリコン樹脂などを使用してもよい。さらに、レーザ光の反射によるロスを防止するために表面コート処理をしてもよい。また、コリメートレンズ42と集光レンズ43の間に、ポリゴンミラーやガルバノミラーといった走査装置を設置してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 画像形成装置
2 現像ユニット
3 転写ユニット
4、5 レーザ定着装置
30 用紙搬送手段
31 搬送ベルト
32 駆動ローラ
33 従動ローラ
40 レーザ照射手段
41 レーザ素子
42 コリメートレンズ
43 集光レンズ
50 位置決めローラ
51 心材
52 弾性層
53 表面コート層
55 クリーニング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ローラと従動ローラに懸架された無端状の搬送ベルトに用紙を載せて搬送する用紙搬送手段と、
前記用紙搬送手段と対向して配置され、前記用紙に転写されたトナー像に合せてレーザ光を照射するレーザ照射手段とを有するレーザ定着装置であって、
前記レーザ定着装置は、位置決めローラを備え、
前記位置決めローラは、前記駆動ローラと対向する位置に設けられ、前記駆動ローラと前記位置決めローラの間で前記用紙を挟持して搬送することを特徴とするレーザ定着装置。
【請求項2】
前記駆動ローラ及び前記位置決めローラは、前記レーザ照射手段より下流側に配置することを特徴とする請求項1に記載のレーザ定着装置。
【請求項3】
前記位置決めローラは、弾性層と表面コート層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザ定着装置。
【請求項4】
前記用紙搬送手段は、前記レーザ照射手段及び前記位置決めローラに対して離接可能に設置することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ定着装置。
【請求項5】
前記駆動ローラと前記従動ローラの間に転写ローラを設け、前記転写ローラで前記用紙にトナー像を転写することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザ定着装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ定着装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−80073(P2013−80073A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219736(P2011−219736)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】