レーザ溶接装置
【課題】駆動源の数を従来よりも少なくすることにより小型化及び低コスト化を図ると共に、ワークの寸法公差等が大きい場合でも円形状又は多角形状の溶接対象部を確実に溶接することができるレーザ溶接装置を提供する。
【解決手段】レーザ溶接装置14は、バスバー36とバスバー36に形成された孔部42、44、46に挿入された端子30、32の溶接対象部160にレーザ発振器60から第1レーザヘッド68に導かれたレーザ光12を照射する。第1レーザヘッド68は、ファイバ支持管88を介してレーザヘッド本体86に対して回転可能に設けられた支持部材110と、支持部材110を回転する回転モータ112と、支持部材110に軸支された支軸120、122に固着されたミラー92と、回転モータ112の駆動力を利用してミラー92を支軸122の周方向に揺動する角度変更機構96とを有する。
【解決手段】レーザ溶接装置14は、バスバー36とバスバー36に形成された孔部42、44、46に挿入された端子30、32の溶接対象部160にレーザ発振器60から第1レーザヘッド68に導かれたレーザ光12を照射する。第1レーザヘッド68は、ファイバ支持管88を介してレーザヘッド本体86に対して回転可能に設けられた支持部材110と、支持部材110を回転する回転モータ112と、支持部材110に軸支された支軸120、122に固着されたミラー92と、回転モータ112の駆動力を利用してミラー92を支軸122の周方向に揺動する角度変更機構96とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1ワークと前記第1ワークに形成された孔部に挿入された第2ワークとをレーザ溶接するレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、レーザ溶接は、熱源として集光したレーザ光を使用するため、アーク溶接等と比較して、溶け込み深さが深い、ビード幅が狭い、溶接速度が速い等の特徴を有している。このような特徴を有するレーザ溶接では、溶接欠陥の発生を抑えるために、ワーク間の隙間(例えば、突き合わせ部の隙間)を狭く設定すると共に、それらワークの溶接対象部に確実にレーザ光を照射することが望まれる。
【0003】
しかしながら、通常、ワークには寸法公差等があるため、ワーク間の隙間を狭くするには限界がある。そこで、ワーク間にある程度の隙間が存在していた場合でも、これらワークを確実にレーザ溶接することが可能なレーザ溶接装置が開発されている。
【0004】
特許文献1には、移動可能な加工テーブルに載置された2枚の被加工体(ワーク)の直線形状の突き合わせ部にレーザ光を照射する際に、ウェッジ板を利用して、前記突き合わせ部の延在方向と交差する方向に前記レーザ光を揺動させることにより、該レーザ光の軌跡を前記突き合わせ部に対してジグザグにしてビード幅を広くする技術的思想が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、レーザ光を集光する集光レンズをモータで一方向に揺動させると共に、該集光レンズ及び該モータを含むヘッド部を該レーザ光の光軸回りに別のモータで回転させることにより、屈曲する加工ラインに対して前記レーザ光の軌跡をジグザグにする技術的思想が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−136307号公報
【特許文献2】特開平2−142693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば、バッテリーモジュールの製造工程では、バスバーに形成された孔部に電池セルの端子を挿入し、前記バスバーと前記端子をレーザ溶接することがある。この場合、前記バスバー及び前記端子の溶接対象部の形状は円形状又は多角形状となる。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された発明では、直線形状の溶接対象部を前提としていることから、円形状等の溶接対象部に対してレーザ光の軌跡をジグザグにすることはできない。
【0009】
一方、特許文献2に記載された発明では、ヘッド部を回転させるモータと集光レンズを揺動させるモータとが必要となるので、レーザ溶接装置自体が大型化すると共にコストも高騰化することがある。
【0010】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、駆動源の数を従来よりも少なくすることにより小型化及び低コスト化を図ると共に、ワークの寸法公差等が大きい場合でも円形状又は多角形状の溶接対象部を確実に溶接することができるレーザ溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1で特定される発明は、第1ワークと前記第1ワークに形成された孔部に挿入された第2ワークとの溶接対象部にレーザ発振器から発振されてレーザヘッドに導かれたレーザ光を照射するレーザ溶接装置であって、前記レーザヘッドは、レーザヘッド本体と、前記レーザ発振器から発振されたレーザ光を反射する第1ミラーと、前記第1ミラーで反射された前記レーザ光を前記溶接対象部に反射する第2ミラーと、前記レーザヘッド本体に設けられて前記第1ミラーに入射する入射レーザ光の光軸回りに前記第1ミラーを回転駆動する回転駆動手段と、前記回転駆動手段の回転力を利用して前記入射レーザ光に対する前記第1ミラーの傾斜角度を変更する角度変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項1で特定される発明によれば、第1ミラーを入射レーザ光の光軸回りに回転可能としているので、第2ミラーで反射するレーザ光を第2ワークに対して周回させることができる。これにより、第1ワーク及び前記第2ワークの溶接対象部が円形状又は多角形状であっても、該溶接対象部に沿ってレーザ光を照射させることが可能となる。また、前記入射レーザ光に対する前記第1ミラーの傾斜角度が変更可能であるので、前記第2ミラーで反射されたレーザ光を周回方向と交差する方向に揺動させることができる。これにより、前記溶接対象部に対してレーザ光の軌跡をジグザグにすることができる。よって、ビード幅を広くすることができるので、前記第1ワーク及び前記第2ワーク間に隙間がある程度存在していた場合であっても、該第1ワーク及び該第2ワークを確実に溶接することができる。
【0013】
また、前記第1ミラーを回転駆動する回転駆動手段により該第1ミラーの傾斜角度を変更しているので、駆動源の数が従来よりも少なくなる。これにより、レーザ溶接装置自体の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0014】
なお、本発明において、前記孔部は、底の無い孔部と有底の穴部(凹部)の両方を含む。
【0015】
本願の請求項2で特定される発明は、請求項1記載のレーザ溶接装置において、前記回転駆動手段が、前記入射レーザ光の光軸と同軸に配置された状態で前記レーザヘッド本体に対して回転自在に設けられた筒状の支持部材と、前記支持部材を回転駆動する駆動源と、前記支持部材に設けられて前記第1ミラーを支持する支軸と、を有することを特徴とする。
【0016】
本願の請求項2で特定される発明によれば、入射レーザ光の光軸と同軸に配置された筒状の支持部材をレーザヘッド本体に対して回転自在に設けると共に該支持部材に設けられた支軸で第1ミラーを支持しているので、駆動源にて前記支持部材を回転させることにより、該第1ミラーを前記入射レーザ光の光軸回りに容易に回転させることができる。
【0017】
本願の請求項3で特定される発明は、請求項2記載のレーザ溶接装置において、前記角度変更手段が、前記レーザヘッド本体に設けられた第1歯車と、前記支持部材に設けられて前記第1歯車に噛合する第2歯車と、前記第2歯車の回転運動を前記支軸の周方向の揺動運動に変換する変換機構と、を有することを特徴とする。
【0018】
本願の請求項3で特定される発明によれば、レーザヘッド本体に設けられた第1歯車と支持部材に設けられた第2歯車とが噛合しているので、駆動源にて支持部材を回転させることにより、前記第2歯車が回転する。そして、前記第2歯車の回転運動は変換機構により支軸の周方向の揺動運動に変換されるので、前記駆動源の駆動力を利用して該支軸に支持されている第1ミラーにおける入射レーザ光に対する傾斜角度を容易に変更することができる。
【0019】
本願の請求項4で特定される発明は、請求項3記載のレーザ溶接装置において、前記変換機構が、支軸に設けられた円板と、前記第2歯車及び前記円板を連結するための連結部材と、を有し、前記第2歯車には、該第2歯車の回転軸線に対してオフセットした位置で前記連結部材を軸支する第1ピンが設けられ、前記円板には、該円板の中心線に対してオフセットした位置で前記連結部材を軸支する第2ピンが設けられ、前記第2歯車の回転軸線及び前記第1ピンの間隔が、前記円板の中心線及び前記第2ピンの間隔よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0020】
第2歯車に設けられた第1ピンで連結部材を軸支すると共に円板に設けられた第2ピンで前記連結部材を軸支しているので、該連結部材を介して前記第2歯車の回転力を円板に伝達させることができる。そして、このとき、前記第2歯車の回転軸線及び前記第1ピンの間隔を前記円板の中心線及び前記第2ピンの間隔よりも小さく設定しているので、第2歯車の回転力が伝達された円板はその周方向に揺動することとなる。これにより、支軸をその周方向に容易に揺動させることができる。
【0021】
本願の請求項5で特定される発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置において、前記第2ワークが、バッテリーモジュールを構成する複数の電池セルの端子であって、前記第1ワークが、隣接する前記電池セルの端子同士を電気的に接続するためのバスバーであることを特徴とする。
【0022】
本願の請求項5で特定される発明によれば、バッテリーモジュールを構成する電池セルの端子とバスバーを確実にレーザ溶接することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係るレーザ溶接装置によれば、第1ミラーを入射レーザ光の光軸回りに回転可能に設けると共に、前記入射レーザ光に対する前記第1ミラーの傾斜角度を変更可能であるので、第1ワーク及び第2ワーク間に隙間がある程度存在していた場合であっても、該第1ワーク及び該第2ワークを確実に溶接することができる。また、前記第1ミラーを回転駆動する回転駆動手段により該第1ミラーの傾斜角度を変更しているので、駆動源の数が従来よりも少なくなる。これにより、レーザ溶接装置自体の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ溶接装置が組み込まれたレーザ溶接システムと、該レーザ溶接装置によりレーザ溶接されるバッテリーモジュールの斜視図である。
【図2】図1に示すバッテリーモジュールの分解斜視図である。
【図3】図1に示すバッテリーモジュールの平面図である。
【図4】図1に示す第1レーザヘッドの断面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図6Aは変更機構の構成を説明するための説明図であり、図6Bは傘歯車と円板が互いに逆方向に回転している状態を示す説明図であり、図6Cは円板の回転方向が傘歯車の回転方向と同じ方向に切り替わった状態を示す説明図であり、図6Dは傘歯車と円板が同じ方向に回転している状態を示す説明図である。
【図7】バッテリーモジュールをレーザ溶接する手順を示すフローチャートである。
【図8】バッテリーモジュールを構成する正極端子と外部接続用バスバーをレーザ溶接している状態を示す模式図である。
【図9】レーザ光の軌跡とビード形状を模式的に示す平面図である。
【図10】変形例に係る第1レーザヘッドの断面図である。
【図11】変形例に係るバッテリーモジュールにおけるレーザ光の軌跡とビード形状を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るレーザ溶接装置について、このレーザ溶接装置が組み込まれたレーザ溶接システムとの関係で好適な実施の形態を例示し、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
本実施の形態に係るレーザ溶接システム10は、バッテリーモジュール18を構成する電池セル20の端子30、32をバスバー36の孔部42に挿入した状態で、該端子30、32と該バスバー36とをレーザ溶接するための装置である。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態に係るレーザ溶接システム10は、基本的には、レーザ光12を出力するレーザ溶接装置14と、前記レーザ溶接装置14を制御する制御部16とを備える。
【0028】
先ず、前記レーザ溶接装置14によってレーザ溶接されるバッテリーモジュール18の構造について説明する。
【0029】
図1〜図3に示すように、バッテリーモジュール18は、例えば、リチウムイオン2次電池として構成されており、複数(本実施の形態では12個)の電池セル20と、前記複数の電池セル20を収納するケース22と、前記複数の電池セル20を直列に接続するための接続部24と、を備える。
【0030】
各電池セル20は、直方体状の電池セル本体28と、前記電池セル本体28の一側面に該電池セル本体28の長手方向に互いに離間して設けられた第2ワークとしての正極端子30及び負極端子32とを有する。
【0031】
複数の電池セル20は、各電池セル本体28の厚み方向が同一方向となるように一列に並んでいる。このとき、複数の電池セル20の向きは、電池セル本体28の厚み方向に隣接する端子が互いに逆極性となるように設定されている。なお、ケース22内には、隣接する電池セル20の間に位置して該電池セル20を支持するための複数のセパレータ34が設けられている。
【0032】
正極端子30は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の金属材料で構成されており、円筒状に形成されている。なお、負極端子32は、正極端子30と同一構成であるため、その詳細な説明を省略する。
【0033】
接続部24は、電池セル本体28の厚み方向において互いに隣接する一対の正極端子30及び負極端子32を電気的に接続する第1ワークとしての複数のバスバー36と、電池セル本体28の厚み方向における一端側に位置する正極端子30a及び図示しない第1外部端子を電気的に接続するための外部接続用バスバー38と、電池セル本体28の厚み方向における他端側に位置する負極端子32a及び図示しない第2外部端子を電気的に接続するための外部接続用バスバー40とを有している。
【0034】
各バスバー36は、平面視で長方形状の平板状に形成されており、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の金属材料で構成されている。各バスバー36には、正極端子30及び負極端子32のそれぞれを挿入可能な一対の孔部42、42が互いに離間した状態で長手方向に並んで形成されている。各孔部42は、上述した正極端子30及び負極端子32の形状に対応し、円形状に開口している。
【0035】
外部接続用バスバー38には、正極端子30aを挿入可能な孔部44が形成され、外部接続用バスバー40には、負極端子32aを挿入可能な孔部46が形成されている。
【0036】
本実施の形態に係るバッテリーモジュール18は、複数の電池セル20をケース22内に収納し、複数のバスバー36、外部接続用バスバー38、及び外部接続用バスバー40を複数の電池セル20上に配設することにより組み立てられる。
【0037】
なお、このとき、各バスバー36の一方の孔部42には負極端子32が挿入され、各バスバー36の他方の孔部42には正極端子30が挿入される。また、外部接続用バスバー38の孔部44には正極端子30aが挿入され、外部接続用バスバー40の孔部46には負極端子32aが挿入される。
【0038】
そして、この状態で、正極端子30、負極端子32、バスバー36、及び外部接続用バスバー38、40にはそれぞれ寸法公差があるため、バスバー36及び正極端子30間、バスバー36及び負極端子32間、外部接続用バスバー38及び正極端子30a間、及び外部接続用バスバー40及び負極端子32a間のそれぞれには、隙間Sが存在している(図8参照)。
【0039】
次に、レーザ溶接装置14の構成について説明する。図1に示すように、レーザ溶接装置14は、レーザ光12を発振するレーザ発振器60と、前記レーザ発振器60から発振されたレーザ光12を伝送する光ファイバ62と、前記光ファイバ62から分岐する第1分岐ファイバ64及び第2分岐ファイバ66と、前記第1分岐ファイバ64に接続された第1レーザヘッド68と、第2分岐ファイバ66に接続された第2レーザヘッド70とを備える。
【0040】
レーザ発振器60は、いわゆるファイバレーザ発振器として構成されている。但し、レーザ発振器60として、YAGレーザ発振器、CO2レーザ発振器又は半導体レーザ発振器等を適宜選択してもよい。
【0041】
光ファイバ62の分岐点には、光ファイバ62に導かれたレーザ光12を第1分岐ファイバ64に伝送すると共に第2分岐ファイバ66への該レーザ光12の伝送を阻止する第1状態と、光ファイバ62に導かれたレーザ光12を第2分岐ファイバ66に伝送すると共に第1分岐ファイバ64への該レーザ光12の伝送を阻止する第2状態とに切替可能なレーザ切替部72が設けられている。
【0042】
また、レーザ溶接装置14は、一方向に延在して第1レーザヘッド68を移動可能に支持する第1レール74と、前記第1レール74を支持する第1脚部76と、前記第1レーザヘッド68を前記第1レール74の延在方向に移動する第1移動モータ78と、前記第1レール74と平行に設けられた第2レール80と、前記第2レール80を支持する第2脚部82と、第2レーザヘッド70を前記第2レール80の延在方向に移動する第2移動モータ84とを備える。
【0043】
図4及び図5に示すように、第1レーザヘッド68は、第1レール74に支持されるレーザヘッド本体86と、前記レーザヘッド本体86に設けられて第1分岐ファイバ64が挿入されるファイバ支持管88と、前記ファイバ支持管88に挿入された第1分岐ファイバ64を固定する固定具90と、前記第1分岐ファイバ64から出射されたレーザ光12を反射する板状のミラー(第1ミラー)92と、前記ミラー92に入射するレーザ光12(入射レーザ光12a)の光軸回り(前記ファイバ支持管88の軸線回り)に該ミラー92を回転可能に支持する回転駆動機構94と、前記入射レーザ光12aに対する前記ミラー92の傾斜角度を変更する角度変更機構96と、前記レーザヘッド本体86に設けられて前記ミラー92で反射されたレーザ光12をバッテリーモジュール18(図1参照)に照射する環状のミラー(第2ミラー)98とを有する。
【0044】
レーザヘッド本体86は、ファイバ支持管88が配置可能な孔部100が形成された円板状の基部102と、前記基部102の下面の縁部から下方に突出する部厚い側部104と、前記側部104の下面の縁部から下方に突出する突出部106とを含む。ファイバ支持管88の下端部には、後述する支持部材110を支持するためのフランジ108が設けられている。
【0045】
回転駆動機構94には、ファイバ支持管88に回転可能な状態でその軸線と同軸に設けられた円筒状の支持部材110と、前記基部102に設けられて該支持部材110を回転駆動するための回転モータ(駆動源)112と、前記回転モータ112の回転軸114に設けられたギア116と、前記ファイバ支持管88の外周面に転がり軸受111を介して設けられて前記ギア116に噛合するギア118と、前記ミラー92の両側面に固着されて前記支持部材110に回転自在に軸支される一対の支軸120、122とが設けられている。
【0046】
図4及び図5から諒解されるように、支持部材110とギア118は、転がり軸受111の外輪に固着されている。これにより、支持部材110は、ファイバ支持管88の軸線回りにギア118と一緒に回転することとなる。なお、本実施の形態に係る回転駆動機構94では、転がり軸受111に代えてすべり軸受等を用いることも可能である。
【0047】
ミラー92は、支持部材110の軸線上に位置しており、支持部材110には、前記ミラー92で反射したレーザ光12が導かれる側に切欠部124が形成されている。なお、前記支持部材110には、前記ミラー92で反射したレーザ光12を集光するための集光レンズ126が設けられる(図5参照)。但し、レーザ光の種類によっては、集光レンズ126を省略しても構わない。
【0048】
角度変更機構96は、支持部材110の外周面に固着された軸128に回転可能に設けられた傘歯車130と、側部104の下端面に設けられて前記傘歯車130に噛合する環状の傘歯車132と、前記傘歯車130と支軸122を接続する変換機構133とを含む。変換機構133は、支軸122の端部に固着された円板134と、前記傘歯車130及び前記円板134を連結する連結部材136とを有する。
【0049】
図6Aに示すように、傘歯車130における突出部106側の端面には、傘歯車130の回転軸線Axに対してオフセットして配置され、且つ前記連結部材136を回転自在に支持するためのピン(第1ピン)138が設けられている。
【0050】
円板134の中心線CLは支軸122の軸線上に位置しており、円板134における突出部106側の面には、円板134の中心線CLに対してオフセットして配置され、且つ前記連結部材136を回転自在に支持するためのピン(第2ピン)140が設けられている。なお、図6Aから諒解されるように、傘歯車130の回転軸線Ax及びピン138の間隔L1は、円板134の中心線CL及びピン140の間隔L2よりも小さく設定されている。この理由については後述する。
【0051】
ミラー98は、突出部106の内面に固着されており、ミラー92を支持部材110の外側から囲繞している(図4及び図5参照)。つまり、レーザヘッド本体86の軸線方向におけるミラー98の位置は、ミラー92の位置と略同一となっている。また、ミラー98は、断面三角形状に形成されており、その反射面が斜め下方に指向するように形成されている。ミラー98の反射面の傾斜角度(ファイバ支持管88の軸線方向に対する傾斜角度)は、正極端子30(負極端子32)の外径に応じて規定される。前記傾斜角度が変われば、バッテリーモジュール18に照射されるレーザ光12の軌跡12bの径が変化するからである(図9参照)。
【0052】
第2レーザヘッド70は、第1レーザヘッド68と同一構成であるため詳細な説明を省略する。
【0053】
制御部16は、レーザ発振器60を駆動制御するレーザ発振制御部142と、レーザ切替部72を制御して第1状態及び第2状態を切り替えるレーザ切替制御部144と、第1移動モータ78を駆動制御して第1レーザヘッド68を第1レール74の延在方向に移動する第1移動モータ制御部146と、第2移動モータ84を駆動制御して第2レーザヘッド70を第2レール80の延在方向に移動する第2移動モータ制御部148と、第1レーザヘッド68を構成する回転モータ112を駆動制御する第1回転モータ制御部150と、第2レーザヘッド70を構成する回転モータ112を駆動制御する第2回転モータ制御部152とを有する。
【0054】
次に、上述したレーザ溶接システム10を用いてバッテリーモジュール18をレーザ溶接する手順について図7を参照しながら説明する。
【0055】
先ず、上述したバッテリーモジュール18をその長手方向(電池セル本体28の厚み方向)が第1レール74の延在方向に略一致するように前記第1レール74及び前記第2レール80に対向配置する(ステップS1)。
【0056】
続いて、第1移動モータ制御部146は、第1移動モータ78を駆動して第1レーザヘッド68をバッテリーモジュール18の長手方向の一端側に位置する正極端子30aに対応する位置にセットすると共に、第2移動モータ制御部148は、第2移動モータ84を駆動制御して第2レーザヘッド70をバッテリーモジュール18の長手方向の一端側に位置する負極端子32に対応する位置にセットする(ステップS2)。
【0057】
その後、レーザ切替制御部144は、レーザ切替部72を第1状態に切り替える(ステップS3)。そして、レーザ発振制御部142は、レーザ発振器60を駆動してレーザ光12を発振する(ステップS4)。
【0058】
これにより、レーザ発振器60から発振されたレーザ光12が光ファイバ62を介して第1分岐ファイバ64に導かれる。そして、図8に示すように、第1分岐ファイバ64から出射したレーザ光12は、ミラー92にて突出部106が位置する側に反射され、集光レンズ126で集光された後、ミラー98に照射される。ミラー98に照射されたレーザ光12は、該ミラー98にてバッテリーモジュール18側に反射されて溶接対象部160に照射される。なお、ここで、前記溶接対象部160は、上述したように正極端子30及び負極端子32が円筒形状であるため円形状となる。
【0059】
また、第1回転モータ制御部150は、第1レーザヘッド68を構成する回転モータ112を駆動する(ステップS5)。回転モータ112が駆動すると、該回転モータ112のギア116が回転すると共に、ギア118及び支持部材110がファイバ支持管88の軸線回りに回転する。支持部材110が回転すると、該支持部材110に設けられている支軸120、122も一緒に回転するので、該支軸120、122に固着されているミラー92も同様に回転する。
【0060】
これにより、ミラー92で反射されたレーザ光12のミラー98に対する照射位置が前記ミラー92の回転に伴って移動するため、ミラー98に対するレーザ光12の軌跡が円形状になる。よって、該ミラー98で反射されるレーザ光12は、正極端子30(負極端子32)を周回することとなる。従って、円形状の溶接対象部160に沿ってレーザ光12を照射させることができる。
【0061】
また、支持部材110が回転すると、支持部材110に固着された軸128に設けられている傘歯車130が、側部104に設けられている環状の傘歯車132に噛合した状態で該軸128に対して回転する。そして、傘歯車130が回転すると、その回転力が連結部材136を介して円板134に伝達される。
【0062】
ここで、上述したように、傘歯車130の回転軸線Ax及びピン138の間隔L1を円板134の中心線CL及びピン140の間隔L2よりも小さく設定しているので、円板134は、傘歯車130から連結部材136を介して伝達された回転力により、周方向に揺動することとなる(図6A〜図6D)。その結果、ミラー92が支軸122の周方向に所定角度(揺動角度と称する。)θだけ揺動する(図8)。言い換えれば、入射レーザ光12aの光軸に対するミラー92の傾斜角度が変更される。
【0063】
これにより、該ミラー92で反射されたレーザ光12のミラー98に対する照射位置がファイバ支持管88の軸線方向に沿って揺動することとなる。よって、溶接対象部160に照射されるレーザ光12についても、ミラー92の回転方向(レーザ光12の周回方向)と交差する方向に揺動する。よって、図9に示すように、溶接対象部160に対してレーザ光12の軌跡12bがジグザグになる。
【0064】
その結果、ビード162幅を溶接対象部160の隙間Sよりも広くすることができるので、正極端子30aと外部接続用バスバー38(正極端子30とバスバー36、負極端子32とバスバー36、負極端子32aと外部接続用バスバー40)を確実に溶接することができる。
【0065】
そして、溶接完了(ステップS6)後、レーザ発振制御部142は、レーザ発振器60を制御してレーザ光12の発振を停止する(ステップS7)と共に、第1回転モータ制御部150は、第1レーザヘッド68を構成する回転モータ112の駆動を停止する(ステップS8)。
【0066】
その後、第1移動モータ制御部146は、第1移動モータ78を駆動して、バッテリーモジュール18の長手方向においてレーザ溶接済みの正極端子30(負極端子32)に隣接する負極端子32(正極端子30)に対応する位置に第1レーザヘッド68を移動する(ステップS9)。
【0067】
このとき、レーザ切替制御部144は、レーザ切替部72を第2状態に切り替える(ステップS10)と共に、レーザ発振制御部142は、レーザ発振器60を駆動してレーザ光12を発振する(ステップS11)。
【0068】
これにより、レーザ発振器60から発振されたレーザ光12が光ファイバ62を介して第2分岐ファイバ66に導かれる。そして、前記ステップS4で説明したように、第2分岐ファイバ66から出射したレーザ光12は、ミラー92及びミラー98で反射して、溶接対象部160に照射される。
【0069】
第2回転モータ制御部152は、第2レーザヘッド70を構成する回転モータ112を駆動する(ステップS12)。これにより、ミラー98で反射したレーザ光12は、溶接対象部160の延在方向と交差する方向に揺動しながら該溶接対象部160に沿って負極端子32(正極端子30)を周回するため、負極端子32(正極端子30)とバスバー36を確実に溶接することができる。
【0070】
そして、溶接完了(ステップS13)後、レーザ発振制御部142は、レーザ発振器60を制御してレーザ光12の発振を停止する(ステップS14)と共に、第2回転モータ制御部152は、第2レーザヘッド70を構成する回転モータ112の駆動を停止する(ステップS15)。
【0071】
その後、制御部16は、外部接続用バスバー38と正極端子30a、バスバー36と負極端子32、バスバー36と正極端子30、及び外部接続用バスバー40と負極端子32aの全て(24箇所)の溶接対象部160について溶接が完了したか否かを判定する(ステップS16)。
【0072】
制御部16が全ての溶接対象部160について溶接が完了していないと判定した場合(ステップS16:No)、第2移動モータ制御部148は、第2移動モータ84を駆動して、バッテリーモジュール18の長手方向においてレーザ溶接済みの負極端子32(正極端子30)に隣接する正極端子30(負極端子32)に対応する位置に第2レーザヘッド70を移動する(ステップS17)。その後、上述したステップS3以降の処理を行う。
【0073】
一方、制御部16が全ての溶接対象部160について溶接が完了したと判定した場合(ステップS16:Yes)、バッテリーモジュール18を次の工程に搬送する(ステップS18)。この段階でバッテリーモジュールをレーザ溶接する手順が終了する。
【0074】
以上のように説明したレーザ溶接の手順では、第1レーザヘッド68の移動中に、第2レーザヘッド70の溶接動作(ステップS10〜ステップS14)が行われ、第2レーザヘッド70の移動中に、第1レーザヘッド68の溶接動作(ステップS3〜ステップS8)が行われる。
【0075】
本実施の形態に係るレーザ溶接装置14によれば、回転モータ112の駆動力により、ミラー92を入射レーザ光12aの光軸回りに回転すると共に、該ミラー92の傾斜角度を変更している。つまり、ミラー92を入射レーザ光12aの光軸回りに回転させるための駆動源と、該ミラー92の傾斜角度を変更する(ミラー92を支軸122の周方向に揺動する)ための駆動源とを回転モータ112で兼用しているので、従来と比較して駆動源の数を少なくすることができる。これにより、レーザ溶接装置14自体の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0076】
ところで、1つのレーザヘッドのみを用いて上述したバッテリーモジュール18を溶接する場合、該レーザヘッドを2方向に移動させる必要がある。特に、バッテリーモジュール18の短手方向(電池セル本体28の長手方向)のレーザヘッドの移動には時間がかかる。
【0077】
一方、本実施の形態に係るレーザ溶接装置14では、バッテリーモジュール18の長手方向にのみ移動する第1レーザヘッド68及び第2レーザヘッド70を設けているので、各レーザヘッド68、70の移動時間を減らすことができる。これにより、バッテリーモジュール18の溶接工程のサイクルタイムを短縮することができる。
【0078】
また、本実施形態に係るレーザ溶接装置14では、レーザ切替部72を設けているので、1つのレーザ発振器60から発振されたレーザ光12を第1レーザヘッド68又は第2レーザヘッド70に選択的に導くことができる。これにより、第1レーザヘッド68に対応したレーザ発振器と第2レーザヘッド70に対応したレーザ発振器を別々に設けた場合と比較してレーザ溶接装置14を小型化することができる。
【0079】
さらに、上述したように、第1レーザヘッド68(第2レーザヘッド70)が溶接動作を行っているときに、第2レーザヘッド70(第1レーザヘッド68)の移動が行われるので、バッテリーモジュール18の溶接工程のサイクルタイムを一層短縮することができる。
【0080】
本実施の形態に係るレーザ溶接装置14の第1レーザヘッド68は、上述した構成に限定されず、例えば、図10に示す変形例に係る第1レーザヘッド164であってもよい。なお、本変形例では、上述した実施の形態と共通する構成には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0081】
第1レーザヘッド164は、図5に示す第1レーザヘッド68と比較して、支持部材110に切欠部124が形成されておらず、ミラー98に代えてミラー166が設けられている。ミラー166は、支持部材110の内面に固着されており、ミラー92で反射されたレーザ光12をバッテリーモジュール18側に反射する。ミラー166は、ミラー92と略同等の大きさを有しており、断面三角形状に形成されている。
【0082】
本変形例に係る第1レーザヘッド164では、ミラー166を支持部材110に設けているので、支持部材110を回転させた状態でミラー92とミラー166の相対位置が変わることはない。これにより、ミラー98をコンパクトな構成にすることができるので、第1レーザヘッド68(レーザ溶接装置14)を一層小型化及び低コスト化することができる。
【0083】
なお、第2レーザヘッド70についても、前記変形例に係る第1レーザヘッド164と同一構成にしてもよいことは勿論である。
【0084】
バッテリーモジュール18の構成は、任意に変更可能である。例えば、図11に示すように、正極端子30に代えて四角柱状の正極端子170を用いると共に、バスバー36に代えてバスバー172を用いてもよい。バスバーには、正極端子の形状に対応した形状の孔部174が形成されている。なお、詳細な図示は省略するが、負極端子32を該正極端子170と同一形状に構成し、外部接続用バスバー38、40の形状をそれら端子の形状に合わせて変更してもよい。
【0085】
この場合、上述した揺動角度θを大きくする(調整する)ことにより、四角形状の溶接対象部160にレーザ光12を確実に照射することができる。これにより、正極端子170とバスバー172の間に隙間Sが存在していた場合でも、該隙間Sをビード176で埋めることができるので、該正極端子170とバスバー172を確実に溶接することができる。
【0086】
本発明は上記した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【0087】
本発明に係るレーザ溶接装置は、バッテリーモジュール以外の種々の製品に対しても適用可能である。この場合、第1ワークに凹部を形成して、該凹部に第2ワークを挿入した状態で本発明に係るレーザ溶接装置を用いて該第1ワーク及び該第2ワークをレーザ溶接してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10…レーザ溶接システム 12…レーザ光
14…レーザ溶接装置 16…制御部
18…バッテリーモジュール 30、170…正極端子
32…負極端子 36、172…バスバー
38、40…外部接続用バスバー 42、44、46、174…孔部
60…レーザ発振器 68…第1レーザヘッド
70…第2レーザヘッド 86…レーザヘッド本体
92…ミラー(第1ミラー)
94…回転駆動機構(回転駆動手段)
96…角度変更機構(角度変更手段)
98…ミラー(第2ミラー) 110…支持部材
112…回転モータ(駆動源) 130、132…傘歯車
133…変換機構 138…ピン(第1ピン)
140…ピン(第2ピン) 160…溶接対象部
Ax…回転軸線 CL…中心線
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1ワークと前記第1ワークに形成された孔部に挿入された第2ワークとをレーザ溶接するレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、レーザ溶接は、熱源として集光したレーザ光を使用するため、アーク溶接等と比較して、溶け込み深さが深い、ビード幅が狭い、溶接速度が速い等の特徴を有している。このような特徴を有するレーザ溶接では、溶接欠陥の発生を抑えるために、ワーク間の隙間(例えば、突き合わせ部の隙間)を狭く設定すると共に、それらワークの溶接対象部に確実にレーザ光を照射することが望まれる。
【0003】
しかしながら、通常、ワークには寸法公差等があるため、ワーク間の隙間を狭くするには限界がある。そこで、ワーク間にある程度の隙間が存在していた場合でも、これらワークを確実にレーザ溶接することが可能なレーザ溶接装置が開発されている。
【0004】
特許文献1には、移動可能な加工テーブルに載置された2枚の被加工体(ワーク)の直線形状の突き合わせ部にレーザ光を照射する際に、ウェッジ板を利用して、前記突き合わせ部の延在方向と交差する方向に前記レーザ光を揺動させることにより、該レーザ光の軌跡を前記突き合わせ部に対してジグザグにしてビード幅を広くする技術的思想が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、レーザ光を集光する集光レンズをモータで一方向に揺動させると共に、該集光レンズ及び該モータを含むヘッド部を該レーザ光の光軸回りに別のモータで回転させることにより、屈曲する加工ラインに対して前記レーザ光の軌跡をジグザグにする技術的思想が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−136307号公報
【特許文献2】特開平2−142693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば、バッテリーモジュールの製造工程では、バスバーに形成された孔部に電池セルの端子を挿入し、前記バスバーと前記端子をレーザ溶接することがある。この場合、前記バスバー及び前記端子の溶接対象部の形状は円形状又は多角形状となる。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された発明では、直線形状の溶接対象部を前提としていることから、円形状等の溶接対象部に対してレーザ光の軌跡をジグザグにすることはできない。
【0009】
一方、特許文献2に記載された発明では、ヘッド部を回転させるモータと集光レンズを揺動させるモータとが必要となるので、レーザ溶接装置自体が大型化すると共にコストも高騰化することがある。
【0010】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、駆動源の数を従来よりも少なくすることにより小型化及び低コスト化を図ると共に、ワークの寸法公差等が大きい場合でも円形状又は多角形状の溶接対象部を確実に溶接することができるレーザ溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1で特定される発明は、第1ワークと前記第1ワークに形成された孔部に挿入された第2ワークとの溶接対象部にレーザ発振器から発振されてレーザヘッドに導かれたレーザ光を照射するレーザ溶接装置であって、前記レーザヘッドは、レーザヘッド本体と、前記レーザ発振器から発振されたレーザ光を反射する第1ミラーと、前記第1ミラーで反射された前記レーザ光を前記溶接対象部に反射する第2ミラーと、前記レーザヘッド本体に設けられて前記第1ミラーに入射する入射レーザ光の光軸回りに前記第1ミラーを回転駆動する回転駆動手段と、前記回転駆動手段の回転力を利用して前記入射レーザ光に対する前記第1ミラーの傾斜角度を変更する角度変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項1で特定される発明によれば、第1ミラーを入射レーザ光の光軸回りに回転可能としているので、第2ミラーで反射するレーザ光を第2ワークに対して周回させることができる。これにより、第1ワーク及び前記第2ワークの溶接対象部が円形状又は多角形状であっても、該溶接対象部に沿ってレーザ光を照射させることが可能となる。また、前記入射レーザ光に対する前記第1ミラーの傾斜角度が変更可能であるので、前記第2ミラーで反射されたレーザ光を周回方向と交差する方向に揺動させることができる。これにより、前記溶接対象部に対してレーザ光の軌跡をジグザグにすることができる。よって、ビード幅を広くすることができるので、前記第1ワーク及び前記第2ワーク間に隙間がある程度存在していた場合であっても、該第1ワーク及び該第2ワークを確実に溶接することができる。
【0013】
また、前記第1ミラーを回転駆動する回転駆動手段により該第1ミラーの傾斜角度を変更しているので、駆動源の数が従来よりも少なくなる。これにより、レーザ溶接装置自体の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0014】
なお、本発明において、前記孔部は、底の無い孔部と有底の穴部(凹部)の両方を含む。
【0015】
本願の請求項2で特定される発明は、請求項1記載のレーザ溶接装置において、前記回転駆動手段が、前記入射レーザ光の光軸と同軸に配置された状態で前記レーザヘッド本体に対して回転自在に設けられた筒状の支持部材と、前記支持部材を回転駆動する駆動源と、前記支持部材に設けられて前記第1ミラーを支持する支軸と、を有することを特徴とする。
【0016】
本願の請求項2で特定される発明によれば、入射レーザ光の光軸と同軸に配置された筒状の支持部材をレーザヘッド本体に対して回転自在に設けると共に該支持部材に設けられた支軸で第1ミラーを支持しているので、駆動源にて前記支持部材を回転させることにより、該第1ミラーを前記入射レーザ光の光軸回りに容易に回転させることができる。
【0017】
本願の請求項3で特定される発明は、請求項2記載のレーザ溶接装置において、前記角度変更手段が、前記レーザヘッド本体に設けられた第1歯車と、前記支持部材に設けられて前記第1歯車に噛合する第2歯車と、前記第2歯車の回転運動を前記支軸の周方向の揺動運動に変換する変換機構と、を有することを特徴とする。
【0018】
本願の請求項3で特定される発明によれば、レーザヘッド本体に設けられた第1歯車と支持部材に設けられた第2歯車とが噛合しているので、駆動源にて支持部材を回転させることにより、前記第2歯車が回転する。そして、前記第2歯車の回転運動は変換機構により支軸の周方向の揺動運動に変換されるので、前記駆動源の駆動力を利用して該支軸に支持されている第1ミラーにおける入射レーザ光に対する傾斜角度を容易に変更することができる。
【0019】
本願の請求項4で特定される発明は、請求項3記載のレーザ溶接装置において、前記変換機構が、支軸に設けられた円板と、前記第2歯車及び前記円板を連結するための連結部材と、を有し、前記第2歯車には、該第2歯車の回転軸線に対してオフセットした位置で前記連結部材を軸支する第1ピンが設けられ、前記円板には、該円板の中心線に対してオフセットした位置で前記連結部材を軸支する第2ピンが設けられ、前記第2歯車の回転軸線及び前記第1ピンの間隔が、前記円板の中心線及び前記第2ピンの間隔よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0020】
第2歯車に設けられた第1ピンで連結部材を軸支すると共に円板に設けられた第2ピンで前記連結部材を軸支しているので、該連結部材を介して前記第2歯車の回転力を円板に伝達させることができる。そして、このとき、前記第2歯車の回転軸線及び前記第1ピンの間隔を前記円板の中心線及び前記第2ピンの間隔よりも小さく設定しているので、第2歯車の回転力が伝達された円板はその周方向に揺動することとなる。これにより、支軸をその周方向に容易に揺動させることができる。
【0021】
本願の請求項5で特定される発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置において、前記第2ワークが、バッテリーモジュールを構成する複数の電池セルの端子であって、前記第1ワークが、隣接する前記電池セルの端子同士を電気的に接続するためのバスバーであることを特徴とする。
【0022】
本願の請求項5で特定される発明によれば、バッテリーモジュールを構成する電池セルの端子とバスバーを確実にレーザ溶接することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係るレーザ溶接装置によれば、第1ミラーを入射レーザ光の光軸回りに回転可能に設けると共に、前記入射レーザ光に対する前記第1ミラーの傾斜角度を変更可能であるので、第1ワーク及び第2ワーク間に隙間がある程度存在していた場合であっても、該第1ワーク及び該第2ワークを確実に溶接することができる。また、前記第1ミラーを回転駆動する回転駆動手段により該第1ミラーの傾斜角度を変更しているので、駆動源の数が従来よりも少なくなる。これにより、レーザ溶接装置自体の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ溶接装置が組み込まれたレーザ溶接システムと、該レーザ溶接装置によりレーザ溶接されるバッテリーモジュールの斜視図である。
【図2】図1に示すバッテリーモジュールの分解斜視図である。
【図3】図1に示すバッテリーモジュールの平面図である。
【図4】図1に示す第1レーザヘッドの断面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図6Aは変更機構の構成を説明するための説明図であり、図6Bは傘歯車と円板が互いに逆方向に回転している状態を示す説明図であり、図6Cは円板の回転方向が傘歯車の回転方向と同じ方向に切り替わった状態を示す説明図であり、図6Dは傘歯車と円板が同じ方向に回転している状態を示す説明図である。
【図7】バッテリーモジュールをレーザ溶接する手順を示すフローチャートである。
【図8】バッテリーモジュールを構成する正極端子と外部接続用バスバーをレーザ溶接している状態を示す模式図である。
【図9】レーザ光の軌跡とビード形状を模式的に示す平面図である。
【図10】変形例に係る第1レーザヘッドの断面図である。
【図11】変形例に係るバッテリーモジュールにおけるレーザ光の軌跡とビード形状を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るレーザ溶接装置について、このレーザ溶接装置が組み込まれたレーザ溶接システムとの関係で好適な実施の形態を例示し、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
本実施の形態に係るレーザ溶接システム10は、バッテリーモジュール18を構成する電池セル20の端子30、32をバスバー36の孔部42に挿入した状態で、該端子30、32と該バスバー36とをレーザ溶接するための装置である。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態に係るレーザ溶接システム10は、基本的には、レーザ光12を出力するレーザ溶接装置14と、前記レーザ溶接装置14を制御する制御部16とを備える。
【0028】
先ず、前記レーザ溶接装置14によってレーザ溶接されるバッテリーモジュール18の構造について説明する。
【0029】
図1〜図3に示すように、バッテリーモジュール18は、例えば、リチウムイオン2次電池として構成されており、複数(本実施の形態では12個)の電池セル20と、前記複数の電池セル20を収納するケース22と、前記複数の電池セル20を直列に接続するための接続部24と、を備える。
【0030】
各電池セル20は、直方体状の電池セル本体28と、前記電池セル本体28の一側面に該電池セル本体28の長手方向に互いに離間して設けられた第2ワークとしての正極端子30及び負極端子32とを有する。
【0031】
複数の電池セル20は、各電池セル本体28の厚み方向が同一方向となるように一列に並んでいる。このとき、複数の電池セル20の向きは、電池セル本体28の厚み方向に隣接する端子が互いに逆極性となるように設定されている。なお、ケース22内には、隣接する電池セル20の間に位置して該電池セル20を支持するための複数のセパレータ34が設けられている。
【0032】
正極端子30は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の金属材料で構成されており、円筒状に形成されている。なお、負極端子32は、正極端子30と同一構成であるため、その詳細な説明を省略する。
【0033】
接続部24は、電池セル本体28の厚み方向において互いに隣接する一対の正極端子30及び負極端子32を電気的に接続する第1ワークとしての複数のバスバー36と、電池セル本体28の厚み方向における一端側に位置する正極端子30a及び図示しない第1外部端子を電気的に接続するための外部接続用バスバー38と、電池セル本体28の厚み方向における他端側に位置する負極端子32a及び図示しない第2外部端子を電気的に接続するための外部接続用バスバー40とを有している。
【0034】
各バスバー36は、平面視で長方形状の平板状に形成されており、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の金属材料で構成されている。各バスバー36には、正極端子30及び負極端子32のそれぞれを挿入可能な一対の孔部42、42が互いに離間した状態で長手方向に並んで形成されている。各孔部42は、上述した正極端子30及び負極端子32の形状に対応し、円形状に開口している。
【0035】
外部接続用バスバー38には、正極端子30aを挿入可能な孔部44が形成され、外部接続用バスバー40には、負極端子32aを挿入可能な孔部46が形成されている。
【0036】
本実施の形態に係るバッテリーモジュール18は、複数の電池セル20をケース22内に収納し、複数のバスバー36、外部接続用バスバー38、及び外部接続用バスバー40を複数の電池セル20上に配設することにより組み立てられる。
【0037】
なお、このとき、各バスバー36の一方の孔部42には負極端子32が挿入され、各バスバー36の他方の孔部42には正極端子30が挿入される。また、外部接続用バスバー38の孔部44には正極端子30aが挿入され、外部接続用バスバー40の孔部46には負極端子32aが挿入される。
【0038】
そして、この状態で、正極端子30、負極端子32、バスバー36、及び外部接続用バスバー38、40にはそれぞれ寸法公差があるため、バスバー36及び正極端子30間、バスバー36及び負極端子32間、外部接続用バスバー38及び正極端子30a間、及び外部接続用バスバー40及び負極端子32a間のそれぞれには、隙間Sが存在している(図8参照)。
【0039】
次に、レーザ溶接装置14の構成について説明する。図1に示すように、レーザ溶接装置14は、レーザ光12を発振するレーザ発振器60と、前記レーザ発振器60から発振されたレーザ光12を伝送する光ファイバ62と、前記光ファイバ62から分岐する第1分岐ファイバ64及び第2分岐ファイバ66と、前記第1分岐ファイバ64に接続された第1レーザヘッド68と、第2分岐ファイバ66に接続された第2レーザヘッド70とを備える。
【0040】
レーザ発振器60は、いわゆるファイバレーザ発振器として構成されている。但し、レーザ発振器60として、YAGレーザ発振器、CO2レーザ発振器又は半導体レーザ発振器等を適宜選択してもよい。
【0041】
光ファイバ62の分岐点には、光ファイバ62に導かれたレーザ光12を第1分岐ファイバ64に伝送すると共に第2分岐ファイバ66への該レーザ光12の伝送を阻止する第1状態と、光ファイバ62に導かれたレーザ光12を第2分岐ファイバ66に伝送すると共に第1分岐ファイバ64への該レーザ光12の伝送を阻止する第2状態とに切替可能なレーザ切替部72が設けられている。
【0042】
また、レーザ溶接装置14は、一方向に延在して第1レーザヘッド68を移動可能に支持する第1レール74と、前記第1レール74を支持する第1脚部76と、前記第1レーザヘッド68を前記第1レール74の延在方向に移動する第1移動モータ78と、前記第1レール74と平行に設けられた第2レール80と、前記第2レール80を支持する第2脚部82と、第2レーザヘッド70を前記第2レール80の延在方向に移動する第2移動モータ84とを備える。
【0043】
図4及び図5に示すように、第1レーザヘッド68は、第1レール74に支持されるレーザヘッド本体86と、前記レーザヘッド本体86に設けられて第1分岐ファイバ64が挿入されるファイバ支持管88と、前記ファイバ支持管88に挿入された第1分岐ファイバ64を固定する固定具90と、前記第1分岐ファイバ64から出射されたレーザ光12を反射する板状のミラー(第1ミラー)92と、前記ミラー92に入射するレーザ光12(入射レーザ光12a)の光軸回り(前記ファイバ支持管88の軸線回り)に該ミラー92を回転可能に支持する回転駆動機構94と、前記入射レーザ光12aに対する前記ミラー92の傾斜角度を変更する角度変更機構96と、前記レーザヘッド本体86に設けられて前記ミラー92で反射されたレーザ光12をバッテリーモジュール18(図1参照)に照射する環状のミラー(第2ミラー)98とを有する。
【0044】
レーザヘッド本体86は、ファイバ支持管88が配置可能な孔部100が形成された円板状の基部102と、前記基部102の下面の縁部から下方に突出する部厚い側部104と、前記側部104の下面の縁部から下方に突出する突出部106とを含む。ファイバ支持管88の下端部には、後述する支持部材110を支持するためのフランジ108が設けられている。
【0045】
回転駆動機構94には、ファイバ支持管88に回転可能な状態でその軸線と同軸に設けられた円筒状の支持部材110と、前記基部102に設けられて該支持部材110を回転駆動するための回転モータ(駆動源)112と、前記回転モータ112の回転軸114に設けられたギア116と、前記ファイバ支持管88の外周面に転がり軸受111を介して設けられて前記ギア116に噛合するギア118と、前記ミラー92の両側面に固着されて前記支持部材110に回転自在に軸支される一対の支軸120、122とが設けられている。
【0046】
図4及び図5から諒解されるように、支持部材110とギア118は、転がり軸受111の外輪に固着されている。これにより、支持部材110は、ファイバ支持管88の軸線回りにギア118と一緒に回転することとなる。なお、本実施の形態に係る回転駆動機構94では、転がり軸受111に代えてすべり軸受等を用いることも可能である。
【0047】
ミラー92は、支持部材110の軸線上に位置しており、支持部材110には、前記ミラー92で反射したレーザ光12が導かれる側に切欠部124が形成されている。なお、前記支持部材110には、前記ミラー92で反射したレーザ光12を集光するための集光レンズ126が設けられる(図5参照)。但し、レーザ光の種類によっては、集光レンズ126を省略しても構わない。
【0048】
角度変更機構96は、支持部材110の外周面に固着された軸128に回転可能に設けられた傘歯車130と、側部104の下端面に設けられて前記傘歯車130に噛合する環状の傘歯車132と、前記傘歯車130と支軸122を接続する変換機構133とを含む。変換機構133は、支軸122の端部に固着された円板134と、前記傘歯車130及び前記円板134を連結する連結部材136とを有する。
【0049】
図6Aに示すように、傘歯車130における突出部106側の端面には、傘歯車130の回転軸線Axに対してオフセットして配置され、且つ前記連結部材136を回転自在に支持するためのピン(第1ピン)138が設けられている。
【0050】
円板134の中心線CLは支軸122の軸線上に位置しており、円板134における突出部106側の面には、円板134の中心線CLに対してオフセットして配置され、且つ前記連結部材136を回転自在に支持するためのピン(第2ピン)140が設けられている。なお、図6Aから諒解されるように、傘歯車130の回転軸線Ax及びピン138の間隔L1は、円板134の中心線CL及びピン140の間隔L2よりも小さく設定されている。この理由については後述する。
【0051】
ミラー98は、突出部106の内面に固着されており、ミラー92を支持部材110の外側から囲繞している(図4及び図5参照)。つまり、レーザヘッド本体86の軸線方向におけるミラー98の位置は、ミラー92の位置と略同一となっている。また、ミラー98は、断面三角形状に形成されており、その反射面が斜め下方に指向するように形成されている。ミラー98の反射面の傾斜角度(ファイバ支持管88の軸線方向に対する傾斜角度)は、正極端子30(負極端子32)の外径に応じて規定される。前記傾斜角度が変われば、バッテリーモジュール18に照射されるレーザ光12の軌跡12bの径が変化するからである(図9参照)。
【0052】
第2レーザヘッド70は、第1レーザヘッド68と同一構成であるため詳細な説明を省略する。
【0053】
制御部16は、レーザ発振器60を駆動制御するレーザ発振制御部142と、レーザ切替部72を制御して第1状態及び第2状態を切り替えるレーザ切替制御部144と、第1移動モータ78を駆動制御して第1レーザヘッド68を第1レール74の延在方向に移動する第1移動モータ制御部146と、第2移動モータ84を駆動制御して第2レーザヘッド70を第2レール80の延在方向に移動する第2移動モータ制御部148と、第1レーザヘッド68を構成する回転モータ112を駆動制御する第1回転モータ制御部150と、第2レーザヘッド70を構成する回転モータ112を駆動制御する第2回転モータ制御部152とを有する。
【0054】
次に、上述したレーザ溶接システム10を用いてバッテリーモジュール18をレーザ溶接する手順について図7を参照しながら説明する。
【0055】
先ず、上述したバッテリーモジュール18をその長手方向(電池セル本体28の厚み方向)が第1レール74の延在方向に略一致するように前記第1レール74及び前記第2レール80に対向配置する(ステップS1)。
【0056】
続いて、第1移動モータ制御部146は、第1移動モータ78を駆動して第1レーザヘッド68をバッテリーモジュール18の長手方向の一端側に位置する正極端子30aに対応する位置にセットすると共に、第2移動モータ制御部148は、第2移動モータ84を駆動制御して第2レーザヘッド70をバッテリーモジュール18の長手方向の一端側に位置する負極端子32に対応する位置にセットする(ステップS2)。
【0057】
その後、レーザ切替制御部144は、レーザ切替部72を第1状態に切り替える(ステップS3)。そして、レーザ発振制御部142は、レーザ発振器60を駆動してレーザ光12を発振する(ステップS4)。
【0058】
これにより、レーザ発振器60から発振されたレーザ光12が光ファイバ62を介して第1分岐ファイバ64に導かれる。そして、図8に示すように、第1分岐ファイバ64から出射したレーザ光12は、ミラー92にて突出部106が位置する側に反射され、集光レンズ126で集光された後、ミラー98に照射される。ミラー98に照射されたレーザ光12は、該ミラー98にてバッテリーモジュール18側に反射されて溶接対象部160に照射される。なお、ここで、前記溶接対象部160は、上述したように正極端子30及び負極端子32が円筒形状であるため円形状となる。
【0059】
また、第1回転モータ制御部150は、第1レーザヘッド68を構成する回転モータ112を駆動する(ステップS5)。回転モータ112が駆動すると、該回転モータ112のギア116が回転すると共に、ギア118及び支持部材110がファイバ支持管88の軸線回りに回転する。支持部材110が回転すると、該支持部材110に設けられている支軸120、122も一緒に回転するので、該支軸120、122に固着されているミラー92も同様に回転する。
【0060】
これにより、ミラー92で反射されたレーザ光12のミラー98に対する照射位置が前記ミラー92の回転に伴って移動するため、ミラー98に対するレーザ光12の軌跡が円形状になる。よって、該ミラー98で反射されるレーザ光12は、正極端子30(負極端子32)を周回することとなる。従って、円形状の溶接対象部160に沿ってレーザ光12を照射させることができる。
【0061】
また、支持部材110が回転すると、支持部材110に固着された軸128に設けられている傘歯車130が、側部104に設けられている環状の傘歯車132に噛合した状態で該軸128に対して回転する。そして、傘歯車130が回転すると、その回転力が連結部材136を介して円板134に伝達される。
【0062】
ここで、上述したように、傘歯車130の回転軸線Ax及びピン138の間隔L1を円板134の中心線CL及びピン140の間隔L2よりも小さく設定しているので、円板134は、傘歯車130から連結部材136を介して伝達された回転力により、周方向に揺動することとなる(図6A〜図6D)。その結果、ミラー92が支軸122の周方向に所定角度(揺動角度と称する。)θだけ揺動する(図8)。言い換えれば、入射レーザ光12aの光軸に対するミラー92の傾斜角度が変更される。
【0063】
これにより、該ミラー92で反射されたレーザ光12のミラー98に対する照射位置がファイバ支持管88の軸線方向に沿って揺動することとなる。よって、溶接対象部160に照射されるレーザ光12についても、ミラー92の回転方向(レーザ光12の周回方向)と交差する方向に揺動する。よって、図9に示すように、溶接対象部160に対してレーザ光12の軌跡12bがジグザグになる。
【0064】
その結果、ビード162幅を溶接対象部160の隙間Sよりも広くすることができるので、正極端子30aと外部接続用バスバー38(正極端子30とバスバー36、負極端子32とバスバー36、負極端子32aと外部接続用バスバー40)を確実に溶接することができる。
【0065】
そして、溶接完了(ステップS6)後、レーザ発振制御部142は、レーザ発振器60を制御してレーザ光12の発振を停止する(ステップS7)と共に、第1回転モータ制御部150は、第1レーザヘッド68を構成する回転モータ112の駆動を停止する(ステップS8)。
【0066】
その後、第1移動モータ制御部146は、第1移動モータ78を駆動して、バッテリーモジュール18の長手方向においてレーザ溶接済みの正極端子30(負極端子32)に隣接する負極端子32(正極端子30)に対応する位置に第1レーザヘッド68を移動する(ステップS9)。
【0067】
このとき、レーザ切替制御部144は、レーザ切替部72を第2状態に切り替える(ステップS10)と共に、レーザ発振制御部142は、レーザ発振器60を駆動してレーザ光12を発振する(ステップS11)。
【0068】
これにより、レーザ発振器60から発振されたレーザ光12が光ファイバ62を介して第2分岐ファイバ66に導かれる。そして、前記ステップS4で説明したように、第2分岐ファイバ66から出射したレーザ光12は、ミラー92及びミラー98で反射して、溶接対象部160に照射される。
【0069】
第2回転モータ制御部152は、第2レーザヘッド70を構成する回転モータ112を駆動する(ステップS12)。これにより、ミラー98で反射したレーザ光12は、溶接対象部160の延在方向と交差する方向に揺動しながら該溶接対象部160に沿って負極端子32(正極端子30)を周回するため、負極端子32(正極端子30)とバスバー36を確実に溶接することができる。
【0070】
そして、溶接完了(ステップS13)後、レーザ発振制御部142は、レーザ発振器60を制御してレーザ光12の発振を停止する(ステップS14)と共に、第2回転モータ制御部152は、第2レーザヘッド70を構成する回転モータ112の駆動を停止する(ステップS15)。
【0071】
その後、制御部16は、外部接続用バスバー38と正極端子30a、バスバー36と負極端子32、バスバー36と正極端子30、及び外部接続用バスバー40と負極端子32aの全て(24箇所)の溶接対象部160について溶接が完了したか否かを判定する(ステップS16)。
【0072】
制御部16が全ての溶接対象部160について溶接が完了していないと判定した場合(ステップS16:No)、第2移動モータ制御部148は、第2移動モータ84を駆動して、バッテリーモジュール18の長手方向においてレーザ溶接済みの負極端子32(正極端子30)に隣接する正極端子30(負極端子32)に対応する位置に第2レーザヘッド70を移動する(ステップS17)。その後、上述したステップS3以降の処理を行う。
【0073】
一方、制御部16が全ての溶接対象部160について溶接が完了したと判定した場合(ステップS16:Yes)、バッテリーモジュール18を次の工程に搬送する(ステップS18)。この段階でバッテリーモジュールをレーザ溶接する手順が終了する。
【0074】
以上のように説明したレーザ溶接の手順では、第1レーザヘッド68の移動中に、第2レーザヘッド70の溶接動作(ステップS10〜ステップS14)が行われ、第2レーザヘッド70の移動中に、第1レーザヘッド68の溶接動作(ステップS3〜ステップS8)が行われる。
【0075】
本実施の形態に係るレーザ溶接装置14によれば、回転モータ112の駆動力により、ミラー92を入射レーザ光12aの光軸回りに回転すると共に、該ミラー92の傾斜角度を変更している。つまり、ミラー92を入射レーザ光12aの光軸回りに回転させるための駆動源と、該ミラー92の傾斜角度を変更する(ミラー92を支軸122の周方向に揺動する)ための駆動源とを回転モータ112で兼用しているので、従来と比較して駆動源の数を少なくすることができる。これにより、レーザ溶接装置14自体の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0076】
ところで、1つのレーザヘッドのみを用いて上述したバッテリーモジュール18を溶接する場合、該レーザヘッドを2方向に移動させる必要がある。特に、バッテリーモジュール18の短手方向(電池セル本体28の長手方向)のレーザヘッドの移動には時間がかかる。
【0077】
一方、本実施の形態に係るレーザ溶接装置14では、バッテリーモジュール18の長手方向にのみ移動する第1レーザヘッド68及び第2レーザヘッド70を設けているので、各レーザヘッド68、70の移動時間を減らすことができる。これにより、バッテリーモジュール18の溶接工程のサイクルタイムを短縮することができる。
【0078】
また、本実施形態に係るレーザ溶接装置14では、レーザ切替部72を設けているので、1つのレーザ発振器60から発振されたレーザ光12を第1レーザヘッド68又は第2レーザヘッド70に選択的に導くことができる。これにより、第1レーザヘッド68に対応したレーザ発振器と第2レーザヘッド70に対応したレーザ発振器を別々に設けた場合と比較してレーザ溶接装置14を小型化することができる。
【0079】
さらに、上述したように、第1レーザヘッド68(第2レーザヘッド70)が溶接動作を行っているときに、第2レーザヘッド70(第1レーザヘッド68)の移動が行われるので、バッテリーモジュール18の溶接工程のサイクルタイムを一層短縮することができる。
【0080】
本実施の形態に係るレーザ溶接装置14の第1レーザヘッド68は、上述した構成に限定されず、例えば、図10に示す変形例に係る第1レーザヘッド164であってもよい。なお、本変形例では、上述した実施の形態と共通する構成には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0081】
第1レーザヘッド164は、図5に示す第1レーザヘッド68と比較して、支持部材110に切欠部124が形成されておらず、ミラー98に代えてミラー166が設けられている。ミラー166は、支持部材110の内面に固着されており、ミラー92で反射されたレーザ光12をバッテリーモジュール18側に反射する。ミラー166は、ミラー92と略同等の大きさを有しており、断面三角形状に形成されている。
【0082】
本変形例に係る第1レーザヘッド164では、ミラー166を支持部材110に設けているので、支持部材110を回転させた状態でミラー92とミラー166の相対位置が変わることはない。これにより、ミラー98をコンパクトな構成にすることができるので、第1レーザヘッド68(レーザ溶接装置14)を一層小型化及び低コスト化することができる。
【0083】
なお、第2レーザヘッド70についても、前記変形例に係る第1レーザヘッド164と同一構成にしてもよいことは勿論である。
【0084】
バッテリーモジュール18の構成は、任意に変更可能である。例えば、図11に示すように、正極端子30に代えて四角柱状の正極端子170を用いると共に、バスバー36に代えてバスバー172を用いてもよい。バスバーには、正極端子の形状に対応した形状の孔部174が形成されている。なお、詳細な図示は省略するが、負極端子32を該正極端子170と同一形状に構成し、外部接続用バスバー38、40の形状をそれら端子の形状に合わせて変更してもよい。
【0085】
この場合、上述した揺動角度θを大きくする(調整する)ことにより、四角形状の溶接対象部160にレーザ光12を確実に照射することができる。これにより、正極端子170とバスバー172の間に隙間Sが存在していた場合でも、該隙間Sをビード176で埋めることができるので、該正極端子170とバスバー172を確実に溶接することができる。
【0086】
本発明は上記した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【0087】
本発明に係るレーザ溶接装置は、バッテリーモジュール以外の種々の製品に対しても適用可能である。この場合、第1ワークに凹部を形成して、該凹部に第2ワークを挿入した状態で本発明に係るレーザ溶接装置を用いて該第1ワーク及び該第2ワークをレーザ溶接してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10…レーザ溶接システム 12…レーザ光
14…レーザ溶接装置 16…制御部
18…バッテリーモジュール 30、170…正極端子
32…負極端子 36、172…バスバー
38、40…外部接続用バスバー 42、44、46、174…孔部
60…レーザ発振器 68…第1レーザヘッド
70…第2レーザヘッド 86…レーザヘッド本体
92…ミラー(第1ミラー)
94…回転駆動機構(回転駆動手段)
96…角度変更機構(角度変更手段)
98…ミラー(第2ミラー) 110…支持部材
112…回転モータ(駆動源) 130、132…傘歯車
133…変換機構 138…ピン(第1ピン)
140…ピン(第2ピン) 160…溶接対象部
Ax…回転軸線 CL…中心線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ワークと前記第1ワークに形成された孔部に挿入された第2ワークとの溶接対象部にレーザ発振器から発振されてレーザヘッドに導かれたレーザ光を照射するレーザ溶接装置であって、
前記レーザヘッドは、レーザヘッド本体と、
前記レーザ発振器から発振されたレーザ光を反射する第1ミラーと、
前記第1ミラーで反射された前記レーザ光を前記溶接対象部に反射する第2ミラーと、
前記レーザヘッド本体に設けられて前記第1ミラーに入射する入射レーザ光の光軸回りに前記第1ミラーを回転駆動する回転駆動手段と、
前記回転駆動手段の回転力を利用して前記入射レーザ光に対する前記第1ミラーの傾斜角度を変更する角度変更手段と、を備えることを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
請求項1記載のレーザ溶接装置において、
前記回転駆動手段は、前記入射レーザ光の光軸と同軸に配置された状態で前記レーザヘッド本体に対して回転自在に設けられた筒状の支持部材と、
前記支持部材を回転駆動する駆動源と、
前記支持部材に設けられて前記第1ミラーを支持する支軸と、を有することを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項3】
請求項2記載のレーザ溶接装置において、
前記角度変更手段は、前記レーザヘッド本体に設けられた第1歯車と、
前記支持部材に設けられて前記第1歯車に噛合する第2歯車と、
前記第2歯車の回転運動を前記支軸の周方向の揺動運動に変換する変換機構と、を有することを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項4】
請求項3記載のレーザ溶接装置において、
前記変換機構は、支軸に設けられた円板と、
前記第2歯車及び前記円板を連結するための連結部材と、を有し、
前記第2歯車には、該第2歯車の回転軸線に対してオフセットした位置で前記連結部材を軸支する第1ピンが設けられ、
前記円板には、該円板の中心線に対してオフセットした位置で前記連結部材を軸支する第2ピンが設けられ、
前記第2歯車の回転軸線及び前記第1ピンの間隔が、前記円板の中心線及び前記第2ピンの間隔よりも小さく設定されていることを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置において、
前記第2ワークは、バッテリーモジュールを構成する複数の電池セルの端子であって、
前記第1ワークは、隣接する前記電池セルの端子同士を電気的に接続するためのバスバーであることを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項1】
第1ワークと前記第1ワークに形成された孔部に挿入された第2ワークとの溶接対象部にレーザ発振器から発振されてレーザヘッドに導かれたレーザ光を照射するレーザ溶接装置であって、
前記レーザヘッドは、レーザヘッド本体と、
前記レーザ発振器から発振されたレーザ光を反射する第1ミラーと、
前記第1ミラーで反射された前記レーザ光を前記溶接対象部に反射する第2ミラーと、
前記レーザヘッド本体に設けられて前記第1ミラーに入射する入射レーザ光の光軸回りに前記第1ミラーを回転駆動する回転駆動手段と、
前記回転駆動手段の回転力を利用して前記入射レーザ光に対する前記第1ミラーの傾斜角度を変更する角度変更手段と、を備えることを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
請求項1記載のレーザ溶接装置において、
前記回転駆動手段は、前記入射レーザ光の光軸と同軸に配置された状態で前記レーザヘッド本体に対して回転自在に設けられた筒状の支持部材と、
前記支持部材を回転駆動する駆動源と、
前記支持部材に設けられて前記第1ミラーを支持する支軸と、を有することを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項3】
請求項2記載のレーザ溶接装置において、
前記角度変更手段は、前記レーザヘッド本体に設けられた第1歯車と、
前記支持部材に設けられて前記第1歯車に噛合する第2歯車と、
前記第2歯車の回転運動を前記支軸の周方向の揺動運動に変換する変換機構と、を有することを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項4】
請求項3記載のレーザ溶接装置において、
前記変換機構は、支軸に設けられた円板と、
前記第2歯車及び前記円板を連結するための連結部材と、を有し、
前記第2歯車には、該第2歯車の回転軸線に対してオフセットした位置で前記連結部材を軸支する第1ピンが設けられ、
前記円板には、該円板の中心線に対してオフセットした位置で前記連結部材を軸支する第2ピンが設けられ、
前記第2歯車の回転軸線及び前記第1ピンの間隔が、前記円板の中心線及び前記第2ピンの間隔よりも小さく設定されていることを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ溶接装置において、
前記第2ワークは、バッテリーモジュールを構成する複数の電池セルの端子であって、
前記第1ワークは、隣接する前記電池セルの端子同士を電気的に接続するためのバスバーであることを特徴とするレーザ溶接装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−130935(P2012−130935A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284572(P2010−284572)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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