説明

レーザ誘導装置

【課題】 レーザ発振部と受信部を備えた飛しょう体において、目標と背景を高精度で分離するとともに遮蔽物の陰に隠れた目標を検出し、背景への誤追尾を防止し、目標に対して精密に誘導することのできる誘導装置を得る。
【解決手段】 目標を含む走査範囲にレーザ光を照射する。反射光を検出し、反射光の受信強度と受信までの遅延時間を用いて走査範囲の強度画像と3次元画像を生成する。得られた3次元画像から走査範囲の各位置における高度値の標準偏差を計算し、平面領域と非平面領域とを判定する。非判定領域に対して強度画像と3次元画像を組み合わせた目標認識処理を行って目標と背景を分離することにより、目標の認識確率を向上させる。また、背景領域の中の平面領域を基準として目標までの距離に応じたゲート時間を設定し、ゲート時間の間に受光した反射光に基づき、遮蔽物の陰に隠れた目標を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛しょう体に搭載する誘導装置に関するものである。特に、目標の検出にレーザ光を利用する誘導装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飛しょう体に搭載する誘導装置としては、例えば誘導装置内あるいは外部装置のレーザ照射装置から目標にレーザ光を照射し、目標からの反射レーザ光を誘導装置内のレーザ検知器によって検出することによって目標の方向を求めるものがあり、特に検出においては所望のターゲットまでの距離に応じて特定の時間帯にゲート時間を設定し、設定されたゲート時間の範囲内において距離検出を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−276248号(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛しょう体を目標へと誘導する誘導装置においては、複雑背景下に存在する目標に対処するために、目標と目標以外の背景を高精度で分離し、飛しょう体を目標に対して精密に誘導することが望まれる。
目標と目標以外の背景を高精度で分離するためには、レーザ光を用いて目標を含む領域を3次元計測して得られる高度情報を使用した目標認識処理を行うとともに、所望のターゲットまでの距離に応じたゲート時間を設定し、目標の手前にある樹木等からの反射光を検出しないようにすることが有効である。
しかしながら、所望のターゲットまでの距離が不明な場合で距離に関する先見情報が無い場合には、樹木等の遮蔽物とその陰に隠れた目標を分離・検出するような狭いゲート時間を設定できない可能性があった。
【0005】
この発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、レーザ光を利用し、目標と背景を高精度で分離、追尾維持しつつ誘導することのできる誘導装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るレーザ誘導装置は、目標に向けてレーザ光を照射し、前記目標と前記目標の背景領域で反射された反射光に基づき目標を認識し、当該目標に向けて飛しょう体を誘導するレーザ誘導装置であって、前記背景領域の中の平面領域を基準として目標までの距離に応じたゲート時間を設定し、前記ゲート時間の間に受光した反射光に基づき前記目標を認識する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るレーザ誘導装置によれば、目標と樹木等の背景が近接しており、目標と背景が混在している場合であっても、目標を正しく認識して、飛しょう体を目標に向けて正しく誘導することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例である誘導装置の構成を示すブロック図である。
【図2】画像生成のための走査範囲及び走査方法を示す図である。
【図3】画像生成部、目標認識部及び追尾処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】実施例の動作を説明するフローチャートである。
【図5】平面判定処理のための高度標準偏差計算範囲及び平面判定処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、実施の形態1に係るレーザ誘導装置について説明する。
図1はこの発明の実施の形態1を示す図である。レーザ誘導装置10は飛しょう体1に搭載されている。レーザ誘導装置10は、飛しょう体が対処する目標2に向けて走査範囲3の範囲内でレーザ光を照射し、走査範囲3内の目標2と背景4で反射されたその反射光を受光する。また、レーザ誘導装置10は、図示していないが、飛しょう体1の位置や姿勢角等の情報を取り込む手段としてGPS(Global Positioning System)及びINS(Intertial Navigation System:慣性航法装置)を備える。
なお、誘導装置10以外の飛しょう体1に搭載されている機器についてはここでは記載を省略する。
【0010】
誘導装置10は、レーザ光を発振するレーザ発振部103、レーザ光を走査範囲3に対して照射する送信系光学部101、走査範囲3からの反射レーザ光を受光する受信系光学部102、送信系光学部101及び受信系光学部102を駆動してレーザ光を走査する光学系駆動部108、反射レーザ光を受信系光学部102を通して検出する受信部104、受信部で検出した信号から走査範囲3の強度画像及び3次元画像を生成する画像生成部105、画像生成部で生成した強度画像及び3次元画像から目標を認識する目標認識部106、目標認識部で認識した目標を追尾し誘導信号を算出する追尾処理部107を備える。
【0011】
図2は目標の画像を生成するためのレーザ光の走査方法及び走査範囲を示す図である。飛しょう体1の送信系光学部101から走査範囲3に対してレーザ光を照射し、その反射光を受光し検出した信号に基づいて走査範囲3における画像を生成する。
走査範囲3の画像を生成するために、光学系駆動部108によって送信系光学部101及び受信系光学部102をアジマス及びエレベーション方向に駆動し、走査範囲3全体にレーザ光を照射してN×M画素分の反射レーザ光を受光する。
【0012】
図3は、画像処理部105と目標認識部106と追尾処理部107の構成の一例を示した図である。
画像処理部105は、ピーク検出部109、測距部110、強度画像生成部111、3次元画像生成部112から構成される。画像処理部105は、強度画像と3次元画像を目標認識部106に出力する。
目標認識部106は、3次元画像から平面部を判定処理する平面判定処理部113、ゲート時間算出部114、認識処理部115から構成され、認識処理部115の認識結果を追尾処理部107に出力する。
また、追尾処理部107は、距離演算部116と、画像再生部117と、追尾処理部118から構成され、飛しょう体1を目標に向けて誘導する誘導信号を出力する。
【0013】
次に、動作について説明する。図4は、本実施例の動作を説明するフローチャートである。
(1) レーザ発振部103から出力されたレーザ光は、送信系光学部101を経由し、目標2を含む所定の範囲に対し照射される。レーザ光の照射範囲は送信系光学部の構成によって決定される(ステップS001)。
(2) 単一あるいは複数の検出素子を備えた受信部104は、S001で照射したレーザ光の目標2あるいは背景4からの反射レーザ光を受信系光学部102を経由して受光する。受信部104は受光した受信信号を画像生成部105へ出力する(ステップS002)。
なお、検出においては、 あらかじめ設定したゲート時間あるいはS008において設定するゲート時間を用いて、ゲート時間の範囲内の信号のみを検出の対象とする。
(3) レーザ光を走査する走査範囲3のうち、まだレーザ光を照射していない範囲が残っていればS004へ進む。走査範囲3の全体に対してレーザ光を照射し、図2に示す走査範囲3をN×M画素に分割した各画素からの反射レーザ光の検出が完了していればS005へ進む(ステップS003)。
(4) 送信系光学部101及び受信系光学部102を光学系駆動部108により駆動することにより、レーザ光を照射及び受光する範囲を変化させ、走査を実施する(ステップS004)。
(5) 画像生成部105は、受信部104から入力された受信信号を用いて、走査範囲3の強度画像及び3次元画像を生成する(ステップS005)。
図3で示したブロック図において、ピーク検出部109は走査範囲3の各画素(図2参照)に対応する受信信号について、それぞれの受信信号強度のピーク値を検出する。受信信号強度のピーク値に基づいて、強度画像生成部111は走査範囲3の強度画像を生成する。
また、測距部110はレーザ光の送信から反射レーザ光のピーク検出までの経過時間を用いて飛しょう体から各画素までの距離を算出する。3次元画像生成部112はその距離の情報に基づいて走査範囲3の3次元画像を生成する。
【0014】
(6)次に、3次元画像生成部112で生成した3次元画像を用いて、平面判定処理部113は、走査範囲3のうち平面と判定される領域と非平面と判定される領域とを分離する。
図5は、平面判定処理部113が平面であるか否かの判定処理のための高度標準偏差計算範囲及び平面判定処理例を示した図である。
平面判定処理部113は、N×M画素からなる走査範囲3のうち任意の画素を中心としたn×m画素の高度標準偏差計算範囲5について、n×m個の各画素の高度の標準偏差を計算する。
中心となる画素の位置を走査範囲3の全範囲で移動させ、走査範囲3の各画素について、それを中心とした高度標準偏差118を計算する。
計算された高度標準偏差118が事前に設定した平面判定閾値を超えない画素は平面領域と判定する。また、高度標準偏差118が平面判定閾値を超える画素については非平面領域と判定する(ステップS006)。
【0015】
(7)ここで、ゲート時間が所望のターゲット(目標)までの距離に対応したものであればステップS009へ進む。
一方、ターゲットまでの距離が不明でゲート時間を広範囲に設定している場合はステップS008へ進む(ステップS007)。
ゲート時間が所望のターゲット(目標)までの距離に対応したものであるか否かについては後で説明する。
【0016】
(8)ターゲットまでの距離が不明でゲート時間を広範囲に設定している場合はステップS008へ移る。
ゲート時間算出部114は、平面判定処理部113で判定した平面領域の高度情報を用いてゲート時間を設定し、ゲート時間設定値を受信部104に出力する(S008)。
このようにして、ターゲット距離に応じたゲート時間を設定した後ステップS001に戻り、ステップS001〜S007の工程を経て、ステップS009に移行する。
【0017】
(9) ここで、ゲート時間を所望のターゲット(目標)までの距離(ターゲット距離)に応じて設定することについて説明する。
平面領域と判定された各画素の高度に対し、想定される目標の大きさ(最大高さ)を加えたものが検出すべき最大高度となる。よって、平面領域までの距離に相当するレーザ光の往復時間をゲート時間の上限値とし、目標までの距離に相当するレーザ光の往復時間をゲート時間の下限値として設定することで目標を効率的に抽出することができる。このように、平面領域までの距離に相当するレーザ光の往復時間をゲート時間の上限値とし、目標までの距離に相当するレーザ光の往復時間をゲート時間の下限値として設定することを、ここでは、ゲート時間を所望のターゲットまでの距離に応じて設定するという。
【0018】
次に認識処理部115は、強度画像生成部111で生成した強度画像、および平面判定処理部113で非平面領域と判定された範囲の3次元画像を用いて、目標を認識し(ステップS009)、目標を選択する。
認識処理部115は、事前情報として目標の形状、画像データなどを格納し、強度画像及び3次元画像と照合することにより、強度画像及び3次元画像の中で目標に該当する部分のみを選択する。
(10) 距離演算部116は、認識処理部115で選択した目標の相対距離を算出する(ステップS010)。
(11) 認識処理部115で選択した目標と距離演算部116で算出した相対距離から、画像再生部117で相対距離に応じた強度画像を画像再生する(ステップS011)。
(12) 認識処理部115で選択した目標を追尾処理部118で相対距離を算出し、相対距離に応じた強度画像を画像再生・追尾し、飛しょう体を目標に向かって誘導するための誘導信号を算出する(ステップS012)。
【0019】
このように、本実施の形態のレーザ誘導装置によれば、所望のターゲットまでの距離に応じたゲート時間を設定することで、目標の手前にある樹木等からの反射光を検出しないようにすることが有効である。
【符号の説明】
【0020】
1 飛しょう体、2 目標、3 画像生成のための走査範囲、4 背景、5 高度標準偏差計算範囲、10 誘導装置、101 送信系光学部、102 受信系光学部、103 レーザ発振部、104 受信部、105 画像生成部、106 目標認識部、107 追尾処理部、108 光学系駆動部、109 ピーク検出部、11 測距部、111 強度画像生成部、112 3次元画像生成部、113 平面判定処理部、114 ゲート時間算出部、115 認識処理部、116 距離演算部、117 画像再生部、118 追尾処理部、119 高度標準偏差。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標に向けてレーザ光を照射し、前記目標と前記目標の背景領域で反射された反射光に基づき目標を認識し、当該目標に向けて飛しょう体を誘導するレーザ誘導装置であって、
前記背景領域の中の平面領域を基準として目標までの距離に応じたゲート時間を設定し、前記ゲート時間の間に受光した反射光に基づき前記目標を認識することを特徴とするレーザ誘導装置。
【請求項2】
前記平面領域までの距離に相当するレーザ光の往復時間を前記ゲート時間の上限値とし、前記平面領域に目標の高さを加算した目標高さまでの距離に相当するレーザ光の往復時間を前記ゲート時間の下限値として、前記ゲート時間を設定することを特徴とする請求項1記載のレーザ誘導装置。
【請求項3】
前記背景領域の所定の範囲内における高さの標準偏差と予め定めた値との比較に基づき、前記所定の範囲が平面領域であるか否かを判断することを特徴とする請求項2記載のレーザ誘導装置。
【請求項4】
前記所定の範囲は、レーザ光を走査して得られた画素の任意の画素を中心としたN×M画素からなることを特徴とする請求項3記載のレーザ誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−19568(P2013−19568A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151360(P2011−151360)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】