説明

レーダ装置及び受信データ処理方法

【課題】 ドップラフィルタ処理後のデータをスキャン間で正確に積分することが可能なレーダ装置及びこのレーダ装置で用いられる受信データ処理方法を提供する。
【解決手段】 レーダ装置は、無線部、パルス圧縮部、ドップラフィルタ処理部及び積分処理部を具備する。無線部は、外部からパルス信号を受信し、パルス信号を、パルス圧縮係数を生成するサンプリング周波数よりも大きいサンプリング周波数でオーバーサンプリングしてデジタル変換する。パルス圧縮部は、デジタル変換でのオーバーサンプリングによりサンプル数が増加したデジタルデータに対して、パルス圧縮係数を用いてパルス圧縮処理を施し、パルス信号毎のレンジセル信号を生成する。ドップラフィルタ処理部は、レンジセル信号に対してドップラフィルタ処理を施すことで、レンジセル毎の周波数バンク信号を生成する。積分処理部は、周波数バンク信号をスキャン間でレンジセル毎に積分する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、送信パルスが反射、散乱又は回折されたパルス信号を受信することで目標を捜索するレーダ装置と、このレーダ装置で用いられる受信データ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャン間で目標信号を積分しようとするレーダ装置は、一定のPRI(Pulse Repetition Interval)で送信された複数の送信パルスが反射、散乱又は回折されたパルス信号を受信する。レーダ装置は、受信したパルス信号に対してパルス圧縮を行い、パルス圧縮後の信号に対してドップラフィルタ処理を行う。レーダ装置は、ドップラフィルタ処理後の信号をスキャン間で積分し、その強度を測定する。レーダ装置は、測定した強度が所定のスレッショルド値を超えた場合、これを目標信号として検知する。
【0003】
しかしながら、この種のレーダ装置では、ドップラフィルタ処理後の信号をスキャン間で積分しようとする場合、スキャン間での目標の移動量の推定値に誤差が生じるため、正確に積分できない場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】E. Fisher, A. H. Heimovich, "Spatial diversity in radar - models and detection Performance", IEEE Trans. On Signal Processing, vol. 54, no. 3, pp. 823-838
【非特許文献2】E. Fisher, A. H. Heimovich, "Performance of MIMO Radar System: Advantages of Angular Diversity", IEEE Trans. On Signal Processing, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、上記のレーダ装置では、スキャン間で移動する目標のレンジ推定情報に生じる誤差成分のため、取得したデータを正確に積分できない場合がある。
【0006】
そこで、目的は、ドップラフィルタ処理後のデータをスキャン間で正確に積分することが可能なレーダ装置及びこのレーダ装置で用いられる受信データ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、レーダ装置は、無線部、パルス圧縮部、ドップラフィルタ処理部及び積分処理部を具備する。無線部は、外部からパルス信号を受信し、前記パルス信号を、パルス圧縮係数を生成するサンプリング周波数よりも大きいサンプリング周波数でオーバーサンプリングしながらデジタル変換する。パルス圧縮部は、前記デジタル変換でのオーバーサンプリングによりサンプル数が増加したデジタルデータに対して、前記パルス圧縮係数を用いてパルス圧縮処理を施し、パルス信号毎のレンジセル信号を生成する。ドップラフィルタ処理部は、前記レンジセル信号に対してドップラフィルタ処理を施すことで、前記オーバーサンプリングにより細分化されたレンジセル毎の周波数バンク信号を生成する。積分処理部は、前記周波数バンク信号をスキャン間でレンジセル毎に積分する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係るレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1のパルス圧縮部の機能構成を示す図である。
【図3】図1のパルス圧縮部によるパルス圧縮処理を示す図である。
【図4】図1のドップラフィルタ処理部によるドップラフィルタ処理を示す図である。
【図5】図1の積分処理部の機能構成の例を示す図である。
【図6】パルス圧縮係数を生成するサンプリング周波数と、デジタル変換時のサンプリング周波数とが同一である場合のパルス圧縮処理後のサンプリングイメージを示す図である。
【図7】デジタル変換時のサンプリング周波数をオーバーサンプリングさせた場合のパルス圧縮処理後のサンプリングイメージを示す図である。
【図8】図1のレーダ装置で受信されるパルス信号に基づく周波数バンク信号の例を示す図である。
【図9】図5の積分部による積分処理を示す図である。
【図10】図1のレーダ装置についてのシミュレーション諸元を示す図である。
【図11】図10のシミュレーション諸元を用いた探知確率推移のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】推定レンジ数と実際の目標の移動量に誤差が生じる場合の積分処理を示す図である。
【図13】図1の積分処理部の機能構成の例を示す図である。
【図14】図13の積分処理部を備えるレーダ装置の配置例を示す図である。
【図15】図1のレーダ装置の機能構成のその他の例を示す図である。
【図16】図15の補間処理部による補間処理の例を示す図である。
【図17】第2の実施形態に係るレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図18】図17の乗算処理部の機能構成の例を示すブロック図である。
【図19】図17の乗算処理部の機能構成の例を示すブロック図である。
【図20】図17のレーダ装置の機能構成のその他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図1に示すレーダ装置は、無線部10、空間処理部20、パルス圧縮部30、ドップラフィルタ処理部40及び積分処理部50を具備する。
【0011】
無線部10は、アンテナ素子11、受信モジュール12、周波数変換部13及びアナログ−デジタル変換部14を備える。アンテナ素子11は、一定のPRI(Pulse Repetition Interval)で送信された複数の送信パルスが反射、散乱又は回折されたパルス信号を受信する。アンテナ素子11は、受信したパルス信号を受信モジュール12へ出力する。
【0012】
受信モジュール12は、アンテナ素子11からのパルス信号の電力を増幅する。
【0013】
周波数変換部13は、受信モジュール12で増幅されたパルス信号をベースバンド帯に変換する。
【0014】
アナログ−デジタル変換部14は、周波数変換部13からのパルス信号をデジタル変換し、空間処理部20へ出力する。このとき、デジタル変換時のサンプリング周波数は、パルス圧縮部30で生成されるパルス圧縮係数のサンプリング周波数よりも大きい。すなわち、アナログ−デジタル変換部14は、パルス信号をオーバーサンプリングしてデジタル変換する。
【0015】
空間処理部20は、無線部10でデジタル化された信号に対して所定のビームウェイトを重畳することで、受信ビームを形成する。
【0016】
図2は、第1の実施形態に係るレーダ装置のパルス圧縮部30の機能構成を示す図である。パルス圧縮部30は、FFT(Fast Fourier Transform)部31、ミキサ32、パルス圧縮係数生成部33、FFT部34及びIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部35を備える。
【0017】
FFT部31は、空間処理部20からの信号に対してFFT処理を行う。FFT部31は、FFT処理後の信号をミキサ32へ出力する。パルス圧縮係数生成部33は、予め設定されたサンプリング周波数でパルス圧縮係数を生成し、生成したパルス圧縮係数をFFT部34へ出力する。FFT部34は、生成されたパルス圧縮係数に対してFFT処理を行い、FFT処理後の信号をミキサ32へ出力する。
【0018】
ミキサ32は、FFT部31,34からの信号を掛け合わせ、掛け合わせた後の信号をIFFT部35へ出力する。IFFT部35は、ミキサ32からの信号に対してIFFT処理を行い、IFFT処理後の信号をドップラフィルタ処理部40へ出力する。これにより、デジタル変換でのオーバーサンプリングによりサンプル数が増加したデジタルデータに対して、パルス圧縮部30でパルス圧縮処理が行われる。このパルス圧縮処理により、パルス信号毎のレンジセル信号が生成される。生成されたレンジセル信号はドップラフィルタ処理部40へ出力される。図3は、パルス圧縮部30によるパルス圧縮処理を模式的に示す図である。
【0019】
ドップラフィルタ処理部40は、パルス圧縮部30からのレンジセル信号に対し、レンジセル毎にFFT処理を行い、レンジセル毎の周波数バンク信号を生成する。このとき、レンジセルは、デジタル変換時のオーバーサンプリングにより、オーバーサンプリングをしない場合と比較して細分化される。図4は、ドップラフィルタ処理部40によるドップラフィルタ処理を模式的に示す図である。
【0020】
積分処理部50は、ドップラフィルタ処理部40からの周波数バンク信号を積分する。
【0021】
以下では、積分処理部50の構成例を示し、第1の実施形態に係るレーダ装置について詳細に説明する。
【0022】
(実施例1)
図5は、第1の実施形態に係る実施例1のレーダ装置の積分処理部50の機能構成を示すブロック図である。
【0023】
ここで、図5についての説明では、パルス圧縮係数生成部33がパルス圧縮係数を生成するサンプリング周波数を2MHzとし、アナログ−デジタル変換部14がパルス信号をデジタル変換するサンプリング周波数を10MHzとする。なお、一般的には、パルス圧縮係数を生成するサンプリング周波数と、パルス信号をデジタル変換するサンプリング周波数とは同一である。パルス圧縮係数を生成するサンプリング周波数と、パルス信号をデジタル変換するサンプリング周波数とが同一である場合、パルス圧縮処理後のサンプリングイメージは図6のようになる。一方、パルス信号をデジタル変換するサンプリング周波数をオーバーサンプリングさせる場合、パルス圧縮処理後のサンプリングイメージは図7のようになり、同一であるときと比較し、サンプル数が5倍となる。なお、図7において、各サンプルにおける目標信号利得はパルス圧縮のピーク値から約−3dBの範囲である。
【0024】
また、第1の実施形態に係るレーダ装置についてのパラメータ諸元は、PRF(Pulse Repetition Frequency):1000[Hz]、パルス数:32、1レンジ分解能75[m]、アナログ−デジタル変換部14のサンプリング周波数:10[MHz]である。
【0025】
図5に示す積分処理部50は、信号処理部51、積分部52、予測部53及びメモリ54を備える。信号処理部51は、ドップラフィルタ処理部40からの周波数バンク信号の信号強度が、レンジr、方位θ、仰角φ及び相対速度vにより特定されるようにする。つまり、信号処理部51は、所定の捜索領域における全方向への1回のスキャンで得られる全ての周波数バンク信号の信号強度がレンジr、方位θ、仰角φ及び相対速度vにより特定されるように4次元データを作成する。あるスキャンiで取得された4次元データは、R(i)(r,θ,φ,v)と表される。
【0026】
各周波数ビンの周波数帯域幅Δfは、Δf=fPRF/Mで求められる。ここで、周波数ビンの値は目標の移動によるドップラ周波数に起因してのみ生じると仮定する。なお、Mは1CPI(Coherent Processing Interval)で送信されるパルス数であり、fPRF=1/fPRIである。このとき、m番目(mは1〜Mの自然数)の周波数ビンにおける目標の相対的な移動速度vは、v=m・Δf・c/fcで表される。ただし、cは光速、fcはキャリア周波数を示す。
【0027】
例えば、図8に示すように、周波数バンク信号が196バンク目(6回の折り返し含む)に生じる場合、信号処理部51は、目標の相対速度を306.2[m/s]と算出する。
【0028】
信号処理部51は、4次元データを積分部52及び予測部53へ出力する。
【0029】
予測部53は、信号処理部51から4次元データを受け取り、4次元データの全要素に目標が存在すると仮定する。そして、予測部53は、信号処理部51からの4次元データに基づいて、次のスキャン時の目標の存在位置を予測する。このときの予測部53での処理を以下に説明する。
【0030】
レーダ装置は、所定の捜索領域における全方位に順次照射される送信パルスの反射波を受信する。このため、同一方向からのパルス信号を受信するのは離散的(1スキャン間隔)になる。1スキャン当りの周期をTSCAN秒とすると、図4に示すレンジセル毎の周波数バンク信号は周期TSCAN毎に得られることになる。
【0031】
目標の運動モデルを等速直線運動と仮定した場合、周波数ビンmに存在する目標は、TSCAN秒後の次スキャン時には目標はv・TSCANだけ移動していると予測できる。例えば、スキャン周期TSCANが8.64[s]であるとすると、上記の相対速度306.2[m/s]、1レンジ分解能75[m]を用いて、1スキャン間の目標移動量は35.2512レンジと算出される。そのため、目標が移動するレンジ数は、35レンジと推測される。ただし、上述のオーバーサンプリングにより、サンプル数は5倍であるため、目標が移動するレンジ数は、175レンジと推測される。このため、i番目のスキャン時のレンジセルr、周波数ビンmに目標が存在する場合、TSCAN後のi+1番目のスキャン時にはレンジセルr+175、周波数ビンmに同じ目標が存在すると予測される。
【0032】
予測部53は、予測した存在位置に、現在のスキャンにより取得された4次元データの信号強度を割り当てた予測4次元データを作成し、予測4次元データをメモリ54に記憶させる。
【0033】
また、予測部53は、積分部52から後述する積分4次元データを受けた場合、この積分4次元データに基づいて、次のスキャン時(TSCAN後)の目標の存在位置を予測する。そして、予測部53は、予測した存在位置に積分4次元データの信号強度を割り当てた予測4次元データを作成し、予測4次元データをメモリ54に記憶させる。
【0034】
積分部52は、信号処理部51から4次元データを受け取ると、インコヒーレント積分を行う。すなわち、積分部52は、信号処理部51から4次元データを受け取ると、前のスキャンに基づいて作成された予測4次元データをメモリ54から読み出す。そして、積分部52は、信号処理部51からの4次元データと、メモリ54からの予測4次元データとを合成し、積分4次元データを作成する。図9は、積分部52による積分処理を模式的に示す図である。
【0035】
また、図1では記載されていないが、レーダ装置は、積分処理部50の後段に目標検出部をさらに具備していても構わない。目標検出部は、積分処理部50からの積分4次元データの信号強度が閾値を超えるか否かを判断する。なお、閾値の値は、積分部52でのインコヒーレント積分の回数に基づいて変動する。目標検出部は、積分4次元データの信号強度が閾値を超える場合、目標を検出したと判断する。
【0036】
次に、上記構成のレーダ装置による探知確率推移についてのシミュレーション結果を示す。図10は、第1の実施形態に係るレーダ装置についてのシミュレーション諸元を示す。図11は、図10のシミュレーション諸元を用いた探知確率推移のシミュレーション結果を示す図である。
【0037】
図11において、黒丸印、四角印及び丸印は、デジタル変換時のサンプリング周波数がパルス圧縮部30で生成されるパルス圧縮係数のサンプリング周波数よりもそれぞれ7倍、5倍及び3倍大きい場合の探知確率推移を示す。また、菱形印はデジタル変換時のサンプリング周波数と、パルス圧縮部30で生成されるパルス圧縮係数のサンプリング周波数とが同一の場合の探知確率推移を示し、ばつ印は積分処理部で予測処理を行わずに4次元データを積分する場合の探知確率推移を示す。図11に示すように、オーバーサンプリングの値が大きい程、少ないスキャン数で目標を探知することができることがわかる。これは、オーバーサンプリングすることにより、予測部53で予測される目標の移動推定量に誤差が生じた場合にも、オーバーサンプリングされた目標信号は数レンジにわたって高い値を有するため、先に述べた推定誤差を許容することが可能となり、結果として高い積分利得を得ることができるためである。
【0038】
以上のように、第1の実施形態に係る実施例1では、アナログ−デジタル変換部14により、パルス圧縮部30で生成されるパルス圧縮係数のサンプリング周波数よりも大きいサンプリング周波数で、デジタル変換を行うようにしている。このとき、レンジ分解能はオーバーサンプリングしない場合と同様であるが、分解能内における目標サンプル数は、オーバーサンプリング数分増加する。通常、オーバーサンプリングされた複数のサンプル点は、ピーク損失を補償するため、最も利得の高いサンプル点が抽出される操作を受けることが多い。しかし、本提案方式では、これら複数のサンプル点を全て受信データとして扱う。
【0039】
目標運動モデルを等速直線運動と仮定した場合、相対速度に基づいて予測部53で予測されるレンジ推定量は、通常は一定量、かつ、整数値である。一方、実際の目標は、等速直線運動をした場合でも、レーダ装置側もしくは目標側の何らかの非定常な要因によりスキャン毎に一定の移動レンジ数になるとは限らない。また、目標移動量には端数が含まれる。これら原因により、スキャン間で移動するレンジ数は、複数スキャンに亘って±1レンジ程度の変動を生じる可能性が高い。そのため、レーダ側で推定するレンジ数と実際の目標の移動量には誤差が生じる可能性が高い。図12は、推定レンジ数と実際の目標の移動量に誤差が生じる場合の積分処理部50による積分処理を示す図である。推定レンジ数と移動量とに誤差があるため、データが正しいレンジで積分されず、目標の検出性能を劣化させる要因となる。
【0040】
これに対し、実施例1に係るレーダ装置では、サンプル数を増やしているため、図7に示すように、目標信号成分が複数のレンジセルに展開される。このため、推定レンジ数と移動量とに誤差が発生した場合においても、図9に示すように、いずれかのレンジセルでは目標信号成分の積分が達成されることとなる。これにより、推定レンジ数と移動量との誤差が積分処理に与える影響を緩和することが可能となる。
【0041】
(実施例2)
図13は、第1の実施形態に係る実施例2のレーダ装置の積分処理部50の機能構成を示すブロック図である。実施例2では、図14に示すように複数のレーダ装置が存在している。各レーダ装置は、送信装置TX1〜TXRからそれぞれ送信された送信パルスが目標で反射等されたパルス信号を受信する。なお、送信装置TX1〜TXRからそれぞれ送信される送信パルスは、互いに無相関となるように変調されている。また、複数のレーダ装置において、座標の原点及び直交軸は共有されている。図13に示す積分処理部50は、信号処理部55及び積分部56を備える。
【0042】
信号処理部55は、座標の原点及び直交軸を記録している。また、信号処理部55は、自装置の位置座標を把握している。信号処理部55は、ドップラフィルタ処理部40からの周波数バンク信号の信号強度が、目標の位置のx座標、y座標、z座標、目標の速度のx座標、y座標、z座標の値により特定されるようにする。つまり、信号処理部55は、周波数バンク信号の信号強度が目標の位置のx座標、y座標、z座標、目標の速度のx座標、y座標、z座標の値で特定される6次元セルデータF(x,y,z,v,v,v)を作成する。信号処理部55は、6次元セルデータを積分部56へ出力する。
【0043】
積分部56は、信号処理部55からの6次元セルデータに対してMISO(Multi Input Single Output)積分を行う。MISO積分とは、複数の送信パルスに基づくパルス信号についての6次元セルデータを積分する処理である。このとき、パルス信号は、送信パルスが同一の目標で反射、散乱又は回折されたものである。以下では、6次元セルデータのMISO積分について説明する。
【0044】
送信装置TX1〜TXRは、それぞれ異なる時刻に送信ビームを目標へ向ける。そのため、送信装置TX1〜TXRからの送信パルスに対するパルス信号は、異なる時刻にレーダ装置で受信される。また、送信装置TX1〜TXRが目標に対して送信ビームを向ける時刻が異なるため、その間に目標が移動してしまうこともある。そのため、同一の目標からのパルス信号に基づいて得られる6次元セルデータは、送信源毎に異なる。
【0045】
積分部56は、送信ビームを向ける間に移動してしまった目標の移動量を予測するために、目標の運動モデルを規定する。例えば、目標の運動モデルを等速直線運動と仮定した場合、ある時刻における6次元セルデータF(x,y,z,v,v,v)は、時刻Δt秒後においてはF(x+vΔt,y+vΔt,z+vΔt,v,v,v)となる。
【0046】
積分部56は、想定した運動モデルに基づいて、移動前の6次元セルデータと移動後の6次元セルデータとを結び付ける。そして、積分部56は、結び付けた6次元セルデータを積分する。このように、運動モデルに基づいて移動後の6次元セルデータを予測することで、送信装置TX1〜TXRからの送信パルスが同一の目標に反射されるパルス信号の受信時刻はそれぞれ異なるが、これらのパルス信号に基づく6次元セルデータを積分することが可能となる。
【0047】
積分処理部50で積分されたデータは、処理サーバ60へ出力される。
【0048】
処理サーバ60は、接続される複数のレーダ装置でそれぞれ取得されたMISO積分の結果に対してSIMO(Single Input Multi Output)積分を行う。そして、処理サーバ60は、SIMO積分の結果のレベルが、MISO積分の積分結果の積分数に従って設定されるスレッショルド値を超える場合、目標を検知したと判断する。
【0049】
以上のように、第1の実施形態に係る実施例2では、アナログ−デジタル変換部14により、パルス圧縮部30で生成されるパルス圧縮係数のサンプリング周波数よりも大きいサンプリング周波数でデジタル変換を行うようにしている。サンプル数が増加されるため、目標信号成分が複数のセルに展開されることとなる。このため、予測した移動後の6次元セルデータと、実際の6次元セルデータとの間で誤差が発生した場合であっても、いずれかの6次元セルデータでは目標信号成分の積分が達成されることとなる。これにより、予測した移動後の6次元セルデータと、実際の6次元セルデータとの誤差が積分処理に与える影響を緩和することが可能となる。
【0050】
したがって、第1の実施形態に係るレーダ装置によれば、ドップラフィルタ処理後の信号をスキャン間で正確に積分することができる。
【0051】
なお、第1の実施形態に係るレーダ装置は、図1の構成に限定される訳ではない。例えば、レーダ装置は、図15に示す機能構成を有しても構わない。図15に示すレーダ装置は、無線部70、空間処理部20、パルス圧縮部30、ドップラフィルタ処理部40及び積分処理部50を具備する。
【0052】
無線部70は、アンテナ素子11、受信モジュール12、周波数変換部13、アナログ−デジタル変換部15及び補間処理部16を備える。
【0053】
アナログ−デジタル変換部15は、周波数変換部13からのパルス信号をデジタル変換し、補間処理部16へ出力する。このとき、デジタル変換時のサンプリング周波数は、パルス圧縮部30で生成されるパルス圧縮係数のサンプリング周波数よりも大きく、かつ、パルス圧縮係数のサンプリング周波数との間でナイキスト定理を満たすものである。例えば、パルス圧縮係数のサンプリング周波数が2MHzである場合、デジタル変換時のサンプリング周波数は4MHz以上に設定される。
【0054】
補間処理部16は、アナログ−デジタル変換部15でデジタル変換されたデータを補間し、擬似的なサンプル点を生成する。例えば、補間処理部16は、図16に示すように、隣接するデータ間の値を予め設定された数の点でプロットすることで、擬似的なサンプル点を生成する。補間処理部16は、補間処理によりサンプル数を増加させたデータを空間処理部20へ出力する。
【0055】
このように、アナログ−デジタル変換部15でオーバーサンプリングし、補間処理部16で擬似的なサンプル点を生成することにより、分解能内における目標サンプル数は、オーバーサンプリング数分及びサンプル点数分増加することとなる。サンプル数を増やしているため、目標信号成分が複数のレンジセルに展開される。このため、推定レンジ数と移動量とに誤差が発生した場合においても、いずれかのレンジセルでは目標信号成分の積分が達成されることとなる。これにより、推定レンジ数と移動量との誤差が積分処理に与える影響を緩和することが可能となる。
【0056】
(第2の実施形態)
図17は、第2の実施形態に係るレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図17に示すレーダ装置は、無線部10、空間処理部20、パルス圧縮部30、ドップラフィルタ処理部40及び乗算処理部80を具備する。
【0057】
無線部10は、アンテナ素子11、受信モジュール12、周波数変換部13及びアナログ−デジタル変換部14を備える。アナログ−デジタル変換部14は、周波数変換部13からのパルス信号をデジタル変換し、空間処理部20へ出力する。このとき、デジタル変換時のサンプリング周波数は、パルス圧縮部30で生成されるパルス圧縮係数のサンプリング周波数よりも大きい。すなわち、アナログ−デジタル変換部14は、パルス信号をオーバーサンプリングしてデジタル変換する。
【0058】
乗算処理部80は、ドップラフィルタ処理部40からの周波数バンク信号に基づいて後述する尤度情報を算出し、算出した尤度情報を掛け合わせる。
【0059】
以下では、積分処理部80の構成例を示し、第2の実施形態に係るレーダ装置について詳細に説明する。
【0060】
(実施例1)
図18は、第2の実施形態に係る実施例1のレーダ装置の乗算処理部80の機能構成を示すブロック図である。図18に示す乗算処理部80は、信号処理部51、尤度算出部81、乗算部82、予測部83及びメモリ54を備える。
【0061】
尤度算出部81は、信号処理部51からの4次元データと、予め記憶しているレーダ装置の雑音の確率密度分布とを比較し、4次元データがレーダ装置の雑音信号である確率を尤度情報として算出する。尤度算出部81は、4次元データを尤度情報に変換した4次元尤度データを作成する。4次元尤度データは、4次元データの各成分に格納される信号が雑音信号であるという確率(尤もらしさ)を表す。尤度算出部81は、作成した4次元尤度データを乗算部82及び予測部83へ出力する。
【0062】
予測部83は、尤度算出部81からの4次元尤度データに基づいて、次のスキャン時の目標の存在位置を予測する。つまり、予測部83は、i番目のスキャン時のレンジセルr、周波数ビンmに目標が存在する場合、TSCAN後のi+1番目のスキャン時のレンジセルr+Δn、周波数ビンmに同じ目標が存在すると予測する。予測部83は、予測した存在位置に、現在のスキャンにより取得された4次元尤度データを割り当てた予測4次元尤度データを作成し、予測4次元尤度データをメモリ54に記憶させる。
【0063】
また、予測部83は、乗算部82から後述する結合4次元尤度データを受けた場合、この結合4次元尤度データに基づいて、次のスキャン時(TSCAN後)の目標の存在位置を予測する。そして、予測部83は、予測した存在位置に結合4次元尤度データの尤度情報を割り当てた予測4次元尤度データを作成し、予測4次元尤度データをメモリ54に記憶させる。
【0064】
乗算部82は、尤度算出部81から4次元尤度データを受け取ると、前のスキャンに基づいて作成された予測4次元尤度データの尤度情報をメモリ54から読み出す。そして、乗算部82は、尤度算出部81からの4次元尤度データの尤度情報と、メモリ54からの予測4次元尤度データの尤度情報とを掛け合わせる。
【0065】
また、図1では記載されていないが、レーダ装置は、乗算処理部80の後段に目標検出部をさらに具備していても構わない。目標検出部は、乗算部82からの結合4次元尤度データの尤度情報が予め設定された誤警報確率を下回るか否かを判断する。目標検出部は、結合4次元尤度データの尤度情報が誤警報確率を下回る場合、目標を検出したとする。
【0066】
以上のように、第2の実施形態に係る実施例1では、4次元データの信号強度に基づいて尤度情報を算出し、尤度情報を用いて目標を検出するようにしている。第1の実施形態に係るレーダ装置では、スキャン毎に電力(又は振幅値)を加算するため、その合成値は線形に増加していく。そのため、ダイナミックレンジを広くとる必要がある。第2の実施形態では、尤度情報を用い、目標を確率統計的に検出することにより、ダイナミックレンジの増大を防ぐことが可能となる。
【0067】
また、第2の実施形態の実施例1に係るレーダ装置では、アナログ−デジタル変換部14により、パルス圧縮部30で生成されるパルス圧縮係数のサンプリング周波数よりも大きいサンプリング周波数で、デジタル変換を行うようにしている。サンプル数が増加されるため、目標信号成分が複数のレンジセルに展開されることとなる。このため、推定レンジ数と移動量とに誤差が発生した場合においても、いずれかのレンジセルでは尤度情報の乗算が有効に実施されることとなる。これにより、推定レンジ数と移動量との誤差が乗算処理に与える影響を緩和することが可能となる。
【0068】
(実施例2)
図19は、第2の実施形態に係る実施例2のレーダ装置の乗算処理部80の機能構成を示すブロック図である。実施例2では、第1の実施形態の図14に示すように複数のレーダ装置が存在している。各レーダ装置は、送信装置TX1〜TXRからそれぞれ送信された送信パルスが目標で反射等されたパルス信号を受信する。なお、送信装置TX1〜TXRからそれぞれ送信される送信パルスは、互いに無相関となるように変調されている。また、複数のレーダ装置において、座標の原点及び直交軸は共有されている。図19に示す乗算処理部80は、信号処理部55及び尤度情報算出部84を備える。
【0069】
尤度情報算出部84は、信号処理部55からの6次元セルデータに基づいて尤度情報を算出する。ここで、尤度情報とは、6次元セルデータの強度に基づいて、6次元セルデータが雑音である確率を示すものである。
【0070】
送信装置TX1〜TXRは、送信ビームをそれぞれ異なる時刻に目標へ向けるため、送信装置TX1〜TXRからの送信信号に対するパルス信号は、異なる時刻にそれぞれのレーダ装置で受信される。そこで、尤度情報算出部84は、送信ビームを向ける間に移動してしまった目標の移動量を推定するために、目標の運動モデルを規定する。尤度情報算出部84は、規定した運動モデルに基づいて、目標の移動に伴う6次元セルデータの変化量を予測する。尤度情報算出部84は、6次元セルデータの変化量に基づいて、移動前の6次元セルデータと移動後の6次元セルデータとを互いに結び付ける。そして、尤度情報算出部84は、結び付けた6次元セルデータから算出された尤度情報を掛け合わせる。このように、運動モデルに基づいて移動後の尤度情報を予測することで、送信装置TX1〜TXRからの送信パルスが同一の目標に反射されるパルス信号の受信時刻はそれぞれ異なるが、これらのパルス信号に基づく尤度情報を掛け合わせることが可能となる。尤度情報算出部84は、掛け合わせた尤度情報を処理サーバ60へ出力する。
【0071】
処理サーバ60は、接続される複数のレーダ装置でそれぞれ取得された尤度情報を掛け合わせる。処理サーバ60は、算出された結合確率が誤警報確率として予め設定されたスレッショルド値以下となる場合、目標が存在すると判断する。
【0072】
以上のように、第2の実施形態に係る実施例2では、アナログ−デジタル変換部14により、パルス圧縮部30で生成されるパルス圧縮係数のサンプリング周波数よりも大きいサンプリング周波数で、デジタル変換を行うようにしている。サンプル数が増加されるため、目標信号成分が複数のセルに展開されることとなる。このため、予測した移動後の6次元セルデータと、実際の6次元セルデータとの間で誤差が発生した場合であっても、いずれかの6次元セルデータでは尤度情報の乗算が有効に実施されることとなる。これにより、予測した移動後の6次元セルデータと、実際の6次元セルデータとの誤差が乗算処理に与える影響を緩和することが可能となる。
【0073】
したがって、第2の実施形態に係るレーダ装置によれば、ドップラフィルタ処理後の信号に基づいて算出した尤度情報をスキャン間で有効に乗算することができる。
【0074】
なお、第2の実施形態に係るレーダ装置は、図17の構成に限定される訳ではない。例えば、レーダ装置は、図20に示す機能構成をとっても構わない。図20に示すレーダ装置は、無線部70、空間処理部20、パルス圧縮部30、ドップラフィルタ処理部40及び乗算処理部80を具備する。無線部70は、アンテナ素子11、受信モジュール12、周波数変換部13、アナログ−デジタル変換部15及び補間処理部16を備える。
【0075】
アナログ−デジタル変換部15でオーバーサンプリングし、補間処理部16で擬似的なサンプル点を生成することにより、分解能内における目標サンプル数は、オーバーサンプリング数分及びサンプル点数分増加する。このため、推定レンジ数と移動量とに誤差が発生した場合においても、いずれかのレンジセルでは尤度情報の乗算が有効に実施されることとなる。これにより、推定レンジ数と移動量との誤差が乗算処理に与える影響を緩和することが可能となる。
【0076】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
10,70…無線部
11…アンテナ素子
12…受信モジュール
13…周波数変換部
14,15…アナログ−デジタル変換部
16…補間処理部
20…空間処理部
30…パルス圧縮部
31,34…FFT部
32…ミキサ
33…パルス圧縮係数生成部
35…IFFT部
40…ドップラフィルタ処理部
50…積分処理部
51,55…信号処理部
52,56…積分部
53…予測部
54…メモリ
60…処理サーバ
80…乗算処理部
81…尤度算出部
82…乗算部
83…予測部
84…尤度情報算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からパルス信号を受信し、前記パルス信号を、パルス圧縮係数を生成するサンプリング周波数よりも大きいサンプリング周波数でオーバーサンプリングしながらデジタル変換する無線部と、
前記デジタル変換でのオーバーサンプリングによりサンプル数が増加したデジタルデータに対して、前記パルス圧縮係数を用いてパルス圧縮処理を施し、パルス信号毎のレンジセル信号を生成するパルス圧縮部と、
前記レンジセル信号に対してドップラフィルタ処理を施すことで、前記オーバーサンプリングにより細分化されたレンジセル毎の周波数バンク信号を生成するドップラフィルタ処理部と、
前記周波数バンク信号をレンジセル毎に積分する積分処理部と
を具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記無線部は、前記デジタル変換後のデジタルデータのうち、隣接するデジタルデータ間で擬似的なサンプル点を生成する補間処理をさらに行い、
前記パルス圧縮部は、前記補間処理でサンプル数がさらに増加したデジタルデータに対して前記パルス圧縮処理を行い、
前記ドップラフィルタ処理部は、前記補間処理によりさらに細分化されたレンジセル毎の周波数バンク信号を生成することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記積分処理部は、
全方位に対する1スキャンにより取得されるレンジセル毎の周波数バンク信号を、レンジと、ビームポジションに基づく方位角及び仰角と、周波数ビンに基づく相対速度とにより特定される4次元データへ変換する信号処理部と、
前記4次元データに基づき、次のスキャンにおける目標の存在位置を予測した予測4次元データを作成する予測部と、
前記信号処理部からの前記4次元データと、前記予測部で前のスキャンに基づいて作成された予測4次元データとを積分する積分部と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記パルス信号は、互いに無相関となるように変調された複数の送信パルスが反射、散乱又は回折されて到来したものであり、
前記積分処理部は、
前記レンジセル毎の周波数バンク信号を、予め設定される原点及び直交軸を利用したデカルト座標系により特定される6次元セルデータへ変換する信号処理部と、
異なる送信パルスに基づく6次元セルデータを、受信時刻の差に基づく変化を予測して積分する積分部と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
外部からパルス信号を受信し、前記パルス信号を、パルス圧縮係数を生成するサンプリング周波数よりも大きいサンプリング周波数でオーバーサンプリングしながらデジタル変換する無線部と、
前記デジタル変換でのオーバーサンプリングによりサンプル数が増加したデジタルデータに対して、前記パルス圧縮係数を用いてパルス圧縮処理を施し、パルス信号毎のレンジセル信号を生成するパルス圧縮部と、
前記レンジセル信号に対してドップラフィルタ処理を施すことで、前記オーバーサンプリングにより細分化されたレンジセル毎の周波数バンク信号を生成するドップラフィルタ処理部と、
前記周波数バンク信号に基づいて尤度情報を算出し、前記尤度情報をレンジセル毎に乗算する乗算処理部と
を具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
前記無線部は、前記デジタル変換後のデジタルデータのうち、隣接するデジタルデータ間で擬似的なサンプル点を生成する補間処理をさらに行い、
前記パルス圧縮部は、前記補間処理でサンプル数がさらに増加したデジタルデータに対して前記パルス圧縮処理を行い、
前記ドップラフィルタ処理部は、前記補間処理によりさらに細分化されたレンジセル毎の周波数バンク信号を生成することを特徴とする請求項5記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記乗算処理部は、
全方位に対する1スキャンにより取得されるレンジセル毎の周波数バンク信号を、レンジと、ビームポジションに基づく方位角及び仰角と、周波数ビンに基づく相対速度とにより特定される4次元データへ変換する信号処理部と、
前記4次元データについての尤度情報である4次元尤度データを算出する尤度算出部と、
前記4次元尤度データに基づき、次のスキャンにおける目標の存在位置を予測した予測4次元尤度データを作成する予測部と、
前記信号処理部からの前記4次元尤度データと、前記予測部で前のスキャンに基づいて作成された予測4次元尤度データとを乗算する乗算部と
を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記パルス信号は、互いに無相関となるように変調された複数の送信パルスが反射、散乱又は回折されて到来したものであり、
前記乗算処理部は、
前記レンジセル毎の周波数バンク信号を、予め設定される原点及び直交軸を利用したデカルト座標系により特定される6次元セルデータへ変換する信号処理部と、
前記6次元セルデータについての尤度情報を算出し、異なる送信パルスに基づく6次元セルデータの尤度情報を、受信時刻の差に基づく変化を予測して乗算する尤度情報算出部と
を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載のレーダ装置。
【請求項9】
外部からパルス信号を受信し、
前記パルス信号を、パルス圧縮係数を生成するサンプリング周波数よりも大きいサンプリング周波数でオーバーサンプリングしながらデジタル変換し、
前記デジタル変換でのオーバーサンプリングによりサンプル数が増加したデジタルデータに対して、前記パルス圧縮係数を用いてパルス圧縮処理を施し、パルス信号毎のレンジセル信号を生成し、
前記レンジセル信号に対してドップラフィルタ処理を施すことで、前記オーバーサンプリングにより細分化されたレンジセル毎の周波数バンク信号を生成し、
前記周波数バンク信号をレンジセル毎に積分することを特徴とする受信データ処理方法。
【請求項10】
外部からパルス信号を受信し、
前記パルス信号を、パルス圧縮係数を生成するサンプリング周波数よりも大きいサンプリング周波数でオーバーサンプリングしながらデジタル変換し、
前記デジタル変換でのオーバーサンプリングによりサンプル数が増加したデジタルデータに対して、前記パルス圧縮係数を用いてパルス圧縮処理を施し、パルス信号毎のレンジセル信号を生成し、
前記レンジセル信号に対してドップラフィルタ処理を施すことで、前記オーバーサンプリングにより細分化されたレンジセル毎の周波数バンク信号を生成し、
前記周波数バンク信号に基づいて尤度情報を算出し、前記尤度情報をレンジセル毎に乗算することを特徴とする受信データ処理方法。
【請求項11】
前記デジタル変換後のデジタルデータのうち、隣接するデジタルデータ間で擬似的なサンプル点を生成する補間処理をさらに行い、
前記補間処理でサンプル数がさらに増加したデジタルデータに対して前記パルス圧縮処理を行い、
前記補間処理によりさらに細分化されたレンジセル毎の周波数バンク信号を生成することを特徴とする請求項9又は11に記載の受信データ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−220267(P2012−220267A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84208(P2011−84208)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】