説明

レーダ装置

【課題】電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えることを可能にするレーダ装置を提供する。
【解決手段】送信アンテナ4の各アンテナ素子4a間の距離によって決まる、送信アンテナ4のメインローブとグレーティングローブとの方位差をα1とし、受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士の距離から決まる、それぞれの位相が同相になる方位幅をβ1とするとともに、a周期分の位相折り返し(a>1)までを利用して(a×β1)の方位範囲について前記ターゲットの方位の検出を行うとした場合に、α1=a×β1の式に示す関係を成り立たせるように送信アンテナ4の各アンテナ素子4a間の距離と受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士間の距離とをとって送信アンテナ4および受信アンテナ5a・5b・5cを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の受信アンテナで受信したターゲットからの反射波をもとにターゲットの方位を検出するレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、送信アンテナから放射された電波についてのターゲットからの反射波を複数の受信アンテナで受信し、この複数の受信アンテナで受信したターゲットからの反射波の位相のずれ(つまり、位相差)をもとにターゲットの方位を検出するレーダ装置が知られている。なお、このようなレーダ装置のうち、受信アンテナを2つ備えるレーダ装置を、位相モノパルス方式のレーダ装置と呼ぶ。
【0003】
しかし、このようなレーダ装置では、折り返し現象(アンビキュアティ)の発生をさけることができないという問題点を有している。以下では、折り返し現象について、位相モノパルス方式のレーダ装置の場合を例に挙げて説明を行う。位相モノパルス方式のレーダ装置では、ターゲットの方位θを2つの受信アンテナ(お互いの間隔をLとする)が受信した信号(波長:λ)の位相差Δφから、次の式により求める。
θ=(180/π)sin−1{(Δφ/360)・(λ/L)}
このとき、位相差Δφが−180°<Δφ≦+180°の範囲内にあれば、一意にターゲットの方位θを求めることができる。しかし、受信アンテナが広角な指向性ビームを有する場合や受信アンテナ間の距離Lが大きい場合には、位相差がこの範囲外の値を持つ場合がある。ところが、位相差Δφは−180°〜+180°の範囲内でしか検出できず、例えばΔφとΔφ+360°との区別をつけることはできない。
【0004】
従って、2つのターゲットの方位が、例えばそれぞれθ1とθ2とであり、θ1に対応する位相差Δφ1は上述の範囲内であって、θ2に対応する位相差Δφ2は上述の範囲外であるとすると、θ1について検出される方位は正しいが、θ2について検出される方位は本来の方位とは異なってしまうことになる。このように、位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を位相差が超えてしまう位相折り返しが生じることを折り返し現象と呼ぶ。
【0005】
以上のように、位相差が上述の範囲を超えて位相折り返しが生じた場合には、ターゲットの真の方位を求めることができなくなってしまうので、従来では、折り返し現象による誤検出の問題が生じない位相差の範囲内においてのみ、位相モノパルス方式のレーダ装置を利用するようにしていた。
【0006】
これに対して、この問題を解決する手段として、例えば、特許文献1には、互いに指向性ビーム方向が異なる複数の送信アンテナを順次切り替えて電波を放射するとともに、この送信アンテナから放射された電波(つまり、送信ビーム)についてのターゲットからの反射波を複数の受信アンテナで受信し、この複数の受信アンテナにおける受信波間の位相差または振幅差に基づいてターゲットの方位を検出するレーダ装置が開示されている。特許文献1に開示のレーダ装置では、複数の送信アンテナからの送信波に基づくターゲットの反射波を複数の受信アンテナにおいて受信することにより、1つの送信アンテナを利用した場合に比べてより多くの情報を得て、この情報をもとに折り返し現象による誤検出を判定してターゲットの方位をより正確に検出することを試みている。具体的には、複数の受信アンテナにおける受信波間の位相差に基づいてターゲットの方位を検出するとともに、検出したターゲットの方位とその方位に近い指向性ビーム方位を有する送信アンテナから電波を放射して検出したターゲットが示す方位とが略一致した場合にターゲットが真であると判定し、位相折り返しの原因となるような、位相が大きくずれた位置にあるターゲットについては、他の送信アンテナを利用した検出においてターゲットが検出されるか否かで判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO99−34234号
【特許文献2】特開2003−243959号公報
【特許文献3】特開2000−124727号公報
【特許文献4】特開平6−29736号公報
【特許文献5】特開2004−245602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示のレーダ装置は、互いに指向性ビーム方向が異なる複数の送信アンテナを順次切り替えて電波を放射することによって、送信ビーム方向を変化させる構成となっているが、送信ビームの切り替え方法として、実機での応用を考えたときには、アレイアンテナの各アンテナ素子における位相などを変化させて送信ビーム方向を変化させる電子スキャン方式を用いた方が小型でレーダ装置が構成できるため、より有望であると考えられる。
【0009】
しかしながら、電子スキャン方式を単純に特許文献1に開示のレーダ装置に適用した場合には、ビームを走査することにより検知角内にグレーティングローブが発生してしまい、このグレーティングローブの影響によってターゲットの方位の検出について所望の検出結果が得られないという問題点が生じる。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えることを可能にするレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のレーダ装置は、上記課題を解決するために、1つ以上の送信用のアレイアンテナから放射されたビームについてのターゲットからの反射波を複数の受信用のアンテナで受信し、この複数の受信用のアンテナのそれぞれで受信した前記ターゲットからの反射波である受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出するレーダ装置であって、前記アレイアンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行うことによって所望の方位範囲にビームを放射させる位相制御部と、前記受信波の位相差が、位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しをも利用することによって、前記複数の受信用のアンテナにおける前記受信波の位相差をもとに検出した前記ターゲットの方位と、このターゲットの方位を検出した際のビームの方位範囲とに基づいて、最終的なターゲットの方位を検出する第1方位検出部と、を備え、前記送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる、前記送信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差をα1とし、前記受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離から決まる、それぞれの位相が同相になる方位幅をβ1とするとともに、a周期分の位相折り返し(a>1)までを利用して(a×β1)の方位範囲について前記ターゲットの方位の検出を行うとした場合に、以下の式
α1=a×β1
を成り立たせるように前記送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と前記受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって前記送信用のアレイアンテナおよび前記受信用のアンテナを配置していることを特徴としている。
【0012】
送信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差をα1とし、それぞれの位相が同相になる方位幅をβ1とするとともに、a周期分の位相折り返し(a>1)までを利用して(a×β1)の方位範囲についてターゲットの方位の検出を行うとした場合に、α1=a×β1の関係式を成り立たせると、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲(a×β1)が送信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差におさまることになるので、ターゲットの方位の検出についてグレーティングローブの影響をより抑えることが可能になるとともに、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲を、グレーティングローブの影響をより抑えながら最大限に広角化することが可能になる。
【0013】
よって、以上の構成のように、α1=a×β1の関係式を成り立たせるように送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信用のアレイアンテナおよび受信用のアンテナを配置すれば、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えてターゲットの方位の検出を行うことが可能になる。
【0014】
なお、α1は、ビームの波長をλ、送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離をd、ビームの方向をθとしたときに、以下の定義式1に示すように、送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる値である。
【0015】
【数1】

【0016】
また、β1は、ビームの波長をλ、受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離をdとしたときに、以下の定義式2に示すように、受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離によって決まる値である。
【0017】
【数2】

【0018】
従って、α1=a×β1を成り立たせるように送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信用のアレイアンテナおよび受信用のアンテナを配置することは可能である。
【0019】
さらに、以上の構成によれば、位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しをも利用することによって、複数の受信用のアンテナにおける受信波の位相差をもとに検出したターゲットの方位と、このターゲットの方位を検出した際のビームの方位範囲とに基づいて、最終的なターゲットの方位を検出するので、位相折り返しが生じる範囲を超えた範囲までをターゲットの方位の検出を行う方位範囲としてターゲットの方位の検出を行うことが可能になる。
【0020】
また、請求項2のレーダ装置は、上記課題を解決するために、複数の送信用のアンテナから放射されたビームについてのターゲットからの反射波を1つ以上の受信用のアレイアンテナで受信し、この受信用のアレイアンテナのそれぞれで受信した前記ターゲットからの反射波である受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出するレーダ装置であって、前記アレイアンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行うことによって所望の方位範囲にビームを放射させる位相制御部と、前記受信波の位相差が、位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しをも利用することによって、前記受信用のアレイアンテナにおける前記受信波の位相差をもとに検出した前記ターゲットの方位と、このターゲットの方位を検出した際のビームの方位範囲とに基づいて、最終的なターゲットの方位を検出する第1方位検出部と、を備え、前記受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる、前記受信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差をα2とし、前記送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離から決まる、それぞれの位相が同相になる方位幅をβ2とするとともに、a周期分の位相折り返し(a>1)までを利用して(a×β2)の方位範囲について前記ターゲットの方位の検出を行うとした場合に、以下の式
α2=a×β2
を成り立たせるように前記受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と前記送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって前記送信用のアンテナおよび前記受信用のアレイアンテナを配置していることを特徴としている。
【0021】
受信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差をα2とし、それぞれの位相が同相になる方位幅をβ2とするとともに、a周期分の位相折り返し(a>1)までを利用して(a×β2)の方位範囲についてターゲットの方位の検出を行うとした場合に、α2=a×β2の関係式を成り立たせると、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲(a×β2)が受信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差におさまることになるので、ターゲットの方位の検出についてグレーティングローブの影響をより抑えることが可能になるとともに、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲を、グレーティングローブの影響をより抑えながら最大限に広角化することが可能になる。
【0022】
よって、以上の構成のように、α2=a×β2の関係式を成り立たせるように受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信用のアンテナおよび受信用のアレイアンテナを配置すれば、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えてターゲットの方位の検出を行うことが可能になる。
【0023】
なお、α2は、ビームの波長をλ、受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離をd、ビームの方向をθとしたときに、以下の定義式3に示すように、受信用のアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる値である。
【0024】
【数3】

【0025】
また、β2は、ビームの波長をλ、送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離をdとしたときに、以下の定義式4に示すように、送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離によって決まる値である。
【0026】
【数4】

【0027】
従って、α2=a×β2を成り立たせるように受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信用のアンテナおよび受信用のアレイアンテナを配置することは可能である。
【0028】
さらに、以上の構成によれば、位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しをも利用することによって、複数の受信用のアレイアンテナにおける受信波の位相差をもとに検出したターゲットの方位と、このターゲットの方位を検出した際のビームの方位範囲とに基づいて、最終的なターゲットの方位を検出するので、位相折り返しが生じる範囲を超えた範囲までをターゲットの方位の検出を行う方位範囲としてターゲットの方位の検出を行うことが可能になる。
【0029】
また、請求項3のレーダ装置は、上記課題を解決するために、1つ以上の送信用のアレイアンテナから放射されたビームについてのターゲットからの反射波を複数の受信用のアンテナで受信し、この複数の受信用のアンテナのそれぞれで受信した前記ターゲットからの反射波である受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出するレーダ装置であって、前記アレイアンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行うことによって所望の方位範囲にビームを放射させる位相制御部と、前記複数の受信用のアンテナにおける前記受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出する第2方位検出部と、を備え、前記送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる、前記送信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差をα1とし、前記受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離から決まる、それぞれの位相が同相になる方位幅をβ1とし、前記受信波の位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しを生じさせない範囲を1周期分とした場合の周期数をa(0<a≦1)とするとともに、(a×β1)の方位範囲について前記ターゲットの方位の検出を行うとした場合に、以下の式
α1=a×β1
を成り立たせるように前記送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と前記受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって前記送信用のアレイアンテナおよび前記受信用のアンテナを配置していることを特徴としている。
【0030】
これによれば、α1=a×β1の関係式を成り立たせると、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲(a×β1)が送信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差におさまることになるので、ターゲットの方位の検出についてグレーティングローブの影響をより抑えることが可能になるとともに、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲を、グレーティングローブの影響をより抑えながら最大限に広角化することが可能になる。よって、以上の構成のように、α1=a×β1の関係式を成り立たせるように送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信用のアレイアンテナおよび受信用のアンテナを配置すれば、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えてターゲットの方位の検出を行うことが可能になる。
【0031】
なお、α1は、前述の定義式1に示すように、送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる値であり、β1は、前述の定義式2に示すように、受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離によって決まる値であるので、α1=a×β1を成り立たせるように送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信用のアレイアンテナおよび受信用のアンテナを配置することは可能である。
【0032】
また、請求項4のレーダ装置は、上記課題を解決するために、複数の送信用のアンテナから放射されたビームについてのターゲットからの反射波を1つ以上の受信用のアレイアンテナで受信し、この受信用のアレイアンテナのそれぞれで受信した前記ターゲットからの反射波である受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出するレーダ装置であって、前記アレイアンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行うことによって所望の方位範囲にビームを放射させる位相制御部と、前記受信用のアレイアンテナにおける前記受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出する第2方位検出部と、を備え、前記受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる、前記受信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差をα2とし、前記送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離から決まる、それぞれの位相が同相になる方位幅をβ2とし、前記受信波の位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しを生じさせない範囲を1周期分とした場合の周期数をa(0<a≦1)とするとともに、(a×β2)の方位範囲について前記ターゲットの方位の検出を行うとした場合に、以下の式
α2=a×β2
を成り立たせるように前記受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と前記送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって前記送信用のアンテナおよび前記受信用のアレイアンテナを配置していることを特徴としている。
【0033】
これによれば、α2=a×β2の関係式を成り立たせると、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲(a×β2)が受信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差におさまることになるので、ターゲットの方位の検出についてグレーティングローブの影響をより抑えることが可能になるとともに、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲を、グレーティングローブの影響をより抑えながら最大限に広角化することが可能になる。よって、以上の構成のように、α2=a×β2の関係式を成り立たせるように受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信用のアンテナおよび受信用のアレイアンテナを配置すれば、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えてターゲットの方位の検出を行うことが可能になる。
【0034】
なお、α2は、前述の定義式3に示すように、受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる値であり、β2は、前述の定義式4に示すように、送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離によって決まる値であるので、α2=a×β2を成り立たせるように受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信用のアンテナおよび受信用のアレイアンテナを配置することは可能である。
【0035】
また、請求項5のレーダ装置では、前記各アンテナ素子間の距離は、各アンテナ素子の中心間の距離であり、前記各アンテナ同士間の距離は、各アンテナ同士の中心間の距離であることを特徴としている。
【0036】
この請求項5のように、アレイアンテナの各アンテナ素子間の距離が、アレイアンテナの各アンテナ素子の中心間の距離であり、受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離が、受信用のアンテナの各アンテナ同心の中心間の距離である態様としてもよい。
【0037】
また、請求項6のレーダ装置では、前記アレイアンテナは、各アンテナ素子が平面上に配列した平面アンテナとして構成されていることを特徴としている。
【0038】
この請求項6のように、各アンテナ素子が平面上に配列した平面アンテナとしてアレイアンテナが構成されている態様であってもよい。
【0039】
また、請求項7のレーダ装置では、前記位相制御部は、フェイズシフタを利用することによって前記位相の制御を行うことを特徴としている。
【0040】
この請求項7のように、位相制御部が、フェイズシフタを利用することによってアレイアンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行う態様としてもよい。
【0041】
また、請求項8のレーダ装置では、前記位相制御部は、ロットマンレンズを利用することによって前記位相の制御を行うことを特徴としている。
【0042】
この請求項8のように、位相制御部が、ロットマンレンズを利用することによってアレイアンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行う態様としてもよい。
【0043】
また、請求項9のレーダ装置では、前記位相制御部は、バトラーマトリックスを利用することによって前記位相の制御を行うことを特徴としている。
【0044】
この請求項9のように、位相制御部が、バトラーマトリックスを利用することによってアレイアンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行う態様としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】レーダ装置100の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】送信アンテナ4のメインローブとグレーティングローブとの方位差および受信アンテナ5a・5b・5cの受信波のそれぞれの位相が同相になる方位幅を示す模式図である。
【図3】(a)は、送信アンテナ4の各アンテナ素子4a間の距離dを示す模式図であり、(b)は、受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士間の距離dを示す模式図である。
【図4】受信アンテナの指向性を示す図である。
【図5】グレーティングローブ付近の送信アンテナの指向性を示した図である。
【図6】送信アンテナの指向性を示す図である。
【図7】最適化後の送信アンテナおよび受信アンテナの指向性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用されたレーダ装置1の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示すレーダ装置100は、制御部1、送信部2、位相制御部3、送信アンテナ4、受信アンテナ5a・5b・5c、受信部6a・6b・6c、および信号処理部7を備えている。
【0047】
制御部1は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、I/O等(いずれも図示せず)よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各種の処理を実行するものである。例えば、制御部1は、電波の送信や受信波の信号処理などを制御する。
【0048】
送信部2は、制御部1の制御に従って高周波信号源により三角波状の高周波信号を発生させる。また、送信部2は、高周波信号源により発生させた高周波信号を分配器によって送信信号とローカル信号とに分配し、送信信号を位相制御部3に入力する。
【0049】
位相制御部3には、複数のアンテナ素子4a(図3(a)参照)が平面上に配列した平面アンテナとして構成されているアレイアンテナである送信アンテナ4が接続されている。よって、送信アンテナ4は、請求項の送信用のアレイアンテナとして機能する。また、位相制御部3は、送信部2から入力される送信信号を分配器によって複数の送信信号に分配するとともに、複数の送信信号のそれぞれの移相量を、制御部1の指示に従って制御する。さらに、位相制御部3は、この複数の高周波を増幅器によって増幅して送信アンテナ4の各アンテナ素子4aに供給する。
【0050】
なお、本実施形態では、送信部2から入力される送信信号を位相制御部3の分配器で複数の送信信号に分配する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、送信部2の分配器で送信信号を複数の送信信号に分配して位相制御部3に入力する構成としてもよい。
【0051】
送信アンテナ4は、位相制御部3から供給される送信信号を各アンテナ素子4aから電波(つまり、ビーム)として外部に向けて放射する。このとき、送信アンテナ4からビームが放射される方向は、各アンテナ素子4aに供給される送信信号の位相量によって決定される。つまり、位相制御部3は、送信アンテナ4のアンテナ素子4aごとに位相の制御を行うことによって所望の方位範囲にビームを放射させる。つまり、いわゆる電子スキャン方式をレーダ装置100では用いている。
【0052】
なお、位相制御部3は、特許文献2に開示されているようなフェイズシフタを利用することによって送信アンテナ4のアンテナ素子4aごとに位相の制御や励振強度の制御を行う構成であってもよいし、特許文献3に開示されているようなロットマンレンズを利用することによって送信アンテナ4のアンテナ素子4aごとに位相の制御や励振強度の制御を行う構成であってもよいし、特許文献4に開示されているようなバトラーマトリックスを利用することによって送信アンテナ4のアンテナ素子4aごとに位相の制御や励振強度の制御を行う構成であってもよい。
【0053】
また、本実施形態では、送信アンテナ4が、複数のアンテナ素子4aが平面上に配列した平面アンテナとして構成されている例を示したが、必ずしもこれに限らない。送信アンテナ4は、アレイアンテナであればよく、複数のアンテナ素子4aが平面上に配列していない構成であってもよい。
【0054】
続いて、送信アンテナ4から放射されたビーム(つまり、送信ビーム)は、お互いが空間的に所定の距離ずつ離れて配置された3つの受信アンテナ5a・5b・5cによって受信される。また、受信アンテナ5a・5b・5cは、それぞれ1つのアンテナ素子を備えたアンテナである。よって、受信アンテナ5a・5b・5cは、請求項の受信用のアンテナとしても機能する。なお、受信アンテナ5a・5b・5cを、複数のアンテナ素子が平面上に配列した平面アンテナとして構成されているアレイアンテナとする構成であってもよい。よって、受信アンテナ5a・5b・5cは、請求項の受信用のアレイアンテナとして機能する。また、受信アンテナ5a・5b・5cを、複数のアンテナ素子が平面上に配列していないアレイアンテナとする構成であってもよい。なお、ここで言うところの所定の距離については後に詳述する。そして、この受信アンテナ5a・5b・5cには、受信部6a・6b・6cがそれぞれ接続されており、受信アンテナ5aで受信した受信波を受信部6aに、受信アンテナ5bで受信した受信波を受信部6bに、受信アンテナ5cで受信した受信波を受信部6cに入力する。
【0055】
受信部6a・6b・6cは、増幅器によって受信アンテナ5a・5b・5cから入力された受信波(つまり、受信信号)を増幅する。また、受信部6a・6b・6cは、検波器によって、増幅器で増幅した受信信号と送信部3で得られたローカル信号とを混合して同期検波して、ベースバンド信号に変換する。さらに、受信部6a・6b・6cは、A/D変換器によって、検波器において得られたベースバンド信号をデジタル信号に変換し、信号処理部7に供給される。
【0056】
信号処理部7は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、I/O等(いずれも図示せず)よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されるとともに、受信部6a・6b・6cのA/D変換器を介して取り込んだデータについて、高速フーリエ変換(FFT)処理を実行するための演算処理装置(例えば、DSP)を備え、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各種の処理を実行するものである。信号処理部7は、例えば特許文献5に開示されている複数の受信アンテナの受信信号に基づいてターゲットとの距離、相対速度、およびターゲットが存在する方位を求める処理と同様の処理を行って、受信部6a・6b・6cのA/D変換器を介して得られたビート信号のサンプリングデータに基づいて、ターゲットとの距離、相対速度、およびターゲットが存在する方位を検出する。概略を述べると、受信アンテナ5a・5b・5cのそれぞれで受信したターゲットからの反射波である受信波の位相差をもとにターゲットの方位を検出する。
【0057】
また、信号処理部7は、特許文献1に開示されている、折り返し現象による誤検出を判定してターゲットの方位をより正確に検出する処理と同様の処理(以下、真偽判定処理と呼ぶ)によって、検出したターゲットの真偽を判定し、最終的なターゲットの方位を検出する。真偽判定処理の概略を述べると、受信アンテナ5a・5b・5cにおける受信波の位相差をもとに検出したターゲットの方位と、このターゲットの方位を検出した際に送信アンテナ4から放射したビームの方位範囲とに基づいて、検出したターゲットの方位がこのターゲットの方位を検出した際に送信アンテナ4から放射したビームの方位範囲に含まれる場合、つまり、検出したターゲットの方位とこのターゲットの方位を検出した際に送信アンテナ4から放射したビームの方位範囲とが略一致した場合にターゲットが真であると判定する。また、検出したターゲットの方位がこのターゲットの方位を検出した際に送信アンテナ4から放射したビームの方位範囲に含まれなかった場合、つまり、検出したターゲットの方位とこのターゲットの方位を検出した際に送信アンテナ4から放射したビームの方位範囲とが略一致しなかった場合にターゲットが偽であると判定する。そして、ターゲットが偽であると判定した場合は、お互いに範囲をずらしながら走査した各ビームの方位範囲のうち、未だターゲットの真偽の判定を行っていない方位範囲について同様の判定を繰り返し、ターゲットが真であると判定されるものを見つけ出すことによって、ターゲットの正確な方位を決定し、最終的なターゲットの方位を検出する。このように、位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しをも利用することによって、検出したターゲットの真偽を、送信アンテナ4から放射した複数のビームの方位範囲についてのそれぞれの受信結果から判定する。これによって、折り返しにより発生したターゲットの誤認識を効果的に排除することができる。よって、信号処理部7は、請求項の第1方位検出部として機能する。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、2つ以上の受信アンテナでの受信波の位相差をもとにターゲットの方位を検出するアダプティブアレイアンテナ方式のレーダ装置において、送信アンテナ4から放射するビームの方位範囲を複数種類に切り替えて使用する。そして、位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しをも利用することによって、複数種類の方位範囲に放射されたビームについて位相差をもとに検出した前記ターゲットの方位と、このターゲットの方位を検出した際のビームの方位範囲とに基づいて、最終的なターゲットの方位を正確に検出する。また、位相折り返しをも利用することによって最終的なターゲットの方位を検出するので、位相折り返しが生じる範囲を超えた範囲までをターゲットの方位の検出を行う方位範囲としてターゲットの方位の検出を行うことが可能になる。
【0059】
なお、アレイアンテナでは、アンテナ素子間隔やアンテナ素子数が大きくなるほど、メインビームの幅は細くなり高利得が得られる傾向にあるが、アンテナ素子間隔がある条件を超えると、グレーティングローブと呼ばれる、メインビームと同等レベルの強度をもつ不要放射が別に生じるため、その条件以上のアンテナ素子間隔では逆に利得が低下するという特徴がある。
【0060】
本発明のレーダ装置100では、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えることを可能にするため、送信アンテナ4と受信アンテナ5a・5b・5cとを一定の関係を満たすように配置している。以下では、グレーティングローブの影響をより抑えることを可能にする送信アンテナ4の各アンテナ素子4aの距離と受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士の距離とをとった配置についての説明を行う。
【0061】
まず、送信アンテナ4のメインローブとグレーティングローブとの方位差をα1とし、受信アンテナ5a・5b・5cの受信波のそれぞれの位相が同相になる方位幅(つまり、位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲)をβ1とするとともに、a周期分の位相折り返し(a>1)までを利用して(a×β1)の方位範囲についてターゲットの方位の検出を行うとした場合に、α1=a×β1の関係式を成り立たせると、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲(a×β1)が送信アンテナ4のメインローブとグレーティングローブとの方位差におさまることになるので、ターゲットの方位の検出についてグレーティングローブの影響をより抑えることが可能になるとともに、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲を、グレーティングローブの影響をより抑えながら最大限に広角化することが可能になる。
【0062】
図2の模式図を用いて具体例に示すと、図2の例では、図中のBで示すメインローブにはかかるが図中のCで示すグレーティングローブにはかからない方位範囲に、前述の方位幅β1は最大で3周期分おさまる。よって、3×β1の方位範囲がグレーティングローブの影響を受けずにターゲットの方位を検出することができる最大の範囲となる。従って、図2の例では、α1=3×β1の関係式を満たしている限り、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲を最大限まで広角化しながら、グレーティングローブの影響をより抑えてターゲットの方位の検出を行うことができる。なお、図2中のAは、送信アンテナ4の指向性を模式的に示した図であって、図2中のDで示す枠は、方位幅β1を模式的に示した図である。
【0063】
また、前述のα1は、ビームの波長をλ、送信アンテナ4の各アンテナ素子4a間の距離をd、ビームの方向をθとしたときに、以下の定義式1に示すように、送信アンテナ4の各アンテナ素子4a間の距離によって決まる値であり、前述のβ1は、ビームの波長をλ、受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士間の距離をdとしたときに、以下の定義式2に示すように、受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士間の距離によって決まる値である。
【0064】
【数5】

【0065】
【数6】

【0066】
よって、α1=a×β1の関係を成り立たせるように送信アンテナ4の各アンテナ素子4a間の距離と受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士間の距離とをとって送信アンテナ4および受信アンテナ5a・5b・5cを配置しさえすれば、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えてターゲットの方位の検出を行うことが可能になる。従って、本発明では、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えてターゲットの方位の検出を行うことが可能になるように、α1=a×β1の関係を成り立たせるように送信アンテナ4の各アンテナ素子4a間の距離と受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士間の距離とをとって送信アンテナ4および受信アンテナ5a・5b・5cを配置している。
【0067】
なお、送信アンテナ4の各アンテナ素子4a間の距離dについては、列方向に隣接するアンテナ素子4a間の距離である。また、送信アンテナ4の各アンテナ素子4a間の距離dについては、図3(a)に示すように、送信アンテナ4の各アンテナ素子4aの中心間の距離(間隔)としてもよい。また、受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士間の距離dについては、図3(b)に示すように、受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士の中心間の距離(間隔)としてもよい。
【0068】
続いて、α1=a×β1の関係式におけるaの値の最適値の導出方法についての説明を行う。なお、aの値の最適値は、ビームの周波数、ターゲットの検出を行う範囲として設定される検知エリア、送信アンテナのアンテナ素子数(つまり、列数)、受信アンテナのアンテナ素子数(つまり、列数)、受信アンテナの数によって変わるので、ここでは、ビームの周波数を76.5GHz、検知エリアを±20°、送信アンテナの列数を10、受信アンテナの列数を1、受信アンテナの数を3とした場合を例に挙げて説明を行う。
【0069】
まず、β1の設定については、検知エリアを±20°と設定したことに対し、β1=20°と設定し、ここでは、dを仮に11.5mmとする。なお、定義式1により、±10°の範囲を超える方位については図4に示すように±10°以内に位相折り返しが生じる受信系となる。図4は、本例における受信アンテナの指向性を示す図である。なお、図4の縦軸は相対振幅(dB)を示し、横軸は方位(deg)を示している。
【0070】
続いて、α1の設定については、検知エリアの方位に送信アンテナ4のビーム(メインビーム)をビーム走査する。そして、グレーティングローブが検知エリアに入ってこないように、メインローブとグレーティングローブとの間隔を設定する。位相折り返しが生じる範囲までをも利用して反射波の受信を行う場合には、図4に示した受信アンテナの指向性から、α1は2×β1以上必要となるため、α1は40°以上となる。
【0071】
さらに、実際の使用を考えた場合に、送信アンテナの列数は有限であり、図5に示すようにグレーティングローブもビーム幅を持つため、位相折り返しが生じる方位に関して、グレーティングローブの影響を抑えるようにマージンをとったα1の設定を行う必要がある。なお、図5は、α1を40°とした場合のグレーティングローブ付近の送信アンテナの指向性を示した図であり、図5の縦軸は相対振幅(dB)を示し、横軸は方位(deg)を示している。
【0072】
また、以上を考慮して、図6に示すようにグレーティングローブの影響を抑えるようにマージンをとったα1を設定すると、α1の最適解は43°となる。なお、図6は、本例における送信アンテナの指向性を示す図であり、図6の縦軸は相対振幅(dB)を示し、横軸は方位(deg)を示している。また、図6中のEはメインローブを示しており、図6中のFはグレーティングローブを示している。
【0073】
実際に、上述したようにしてα1とβ1との関係を最適化した後の送信アンテナの指向性と受信アンテナの指向性とを重ねてみると、図7に示すように、検知エリアに対して、送信アンテナのグレーティングローブの影響が抑えられており、実際に最適化されていることが解る。なお、図7は、最適化後の送信アンテナおよび受信アンテナの指向性を示す図であり、図7の縦軸は相対振幅(dB)を示し、横軸は方位(deg)を示している。また、図7中では、送信アンテナの指向性を実線で示し、受信アンテナの指向性を破線で示している。
【0074】
そして、最適化される条件下でのaの値は、β1をα1で除算することによって得られるので、43°を20°で除算して得られる解2.15が、最適化される条件下でのaの値の最適値となる。従って、本例の条件下においては、α1=2.15×β1の関係式を常に成り立たせるように送信アンテナの各アンテナ素子間の距離と受信アンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信アンテナおよび受信アンテナを配置しさえすれば、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えてターゲットの方位の検出を行うことが可能になる。
【0075】
なお、前述の実施形態では、a周期分の位相折り返し(a>1)までを利用して(a×β1)の方位範囲についてターゲットの方位の検出を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、位相折り返しが生じない範囲でのみターゲットの方位の検出を行う構成としてもよい。この場合には、位相折り返しを生じさせない範囲を1周期分とした場合の周期数をa(0<a≦1)とし、α1=a×β1を成り立たせるように送信アンテナ4の各アンテナ素子間の距離と受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士間の距離とをとって送信アンテナ4および受信アンテナ5a・5b・5cを配置すればよい。以上の構成によっても、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えてターゲットの方位の検出を行うことが可能になる。また、位相折り返しが生じない範囲でのみターゲットの方位の検出を行う構成とした場合には、信号処理部7で真偽判定処理を行わない構成とすることが可能である。よって、信号処理部7は、請求項の第2方位検出部として機能する。
【0076】
また、前述の実施形態では、レーダ装置100に送信アンテナ4を備える構成、つまり、レーダ装置100に送信アンテナを1つ備える構成を示したが、必ずしもこれに限らず、レーダ装置100に送信アンテナを複数備える構成であってもよい。
【0077】
なお、前述の実施形態では、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えることを可能にするため、送信アンテナ4の各アンテナ素子4aの距離と受信アンテナ5a・5b・5cの各アンテナ同士の距離とを一定の関係を満たすようにして、送信アンテナ4および受信アンテナ5a・5b・5cを配置する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、複数の送信アンテナと1つ以上のアレイアンテナとしての受信アンテナとを備え、位相制御部3と同様の位相制御部によって受信アンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行って所望の方位範囲にビームを放射させる構成とした場合には、受信アンテナから放射されるビームによって走査を行う際にもグレーティングローブが発生し、ターゲットの方位の検出について所望の検出結果が得られなくなることがあるので、このグレーティングローブの影響を抑えるために、前述の実施形態の説明中で述べたのと同様の思想に従って、受信アンテナの各アンテナ素子の距離と送信アンテナの各アンテナ同士の距離とを一定の関係を満たすようにして、送信アンテナおよび受信アンテナを配置する構成としてもよい。
【0078】
詳しくは、受信アンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差をα2とし、それぞれの位相が同相になる方位幅(つまり、位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲)をβ2とするとともに、a周期分の位相折り返し(a>1)までを利用して(a×β2)の方位範囲についてターゲットの方位の検出を行うとした場合に、α2=a×β2の関係式を成り立たせるように、受信アンテナの各アンテナ素子間の距離と送信アンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信アンテナおよび受信アンテナを配置すればよい。α2=a×β2の関係式を成り立たせるように、受信アンテナの各アンテナ素子間の距離と送信アンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信アンテナおよび受信アンテナを配置すれば、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲(a×β2)が受信アンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差におさまることになるので、ターゲットの方位の検出についてグレーティングローブの影響をより抑えることが可能になるとともに、ターゲットの方位の検出を行う方位範囲を、グレーティングローブの影響をより抑えながら最大限に広角化することが可能になる。
【0079】
なお、前述のα2は、ビームの波長をλ、受信アンテナの各アンテナ素子間の距離をd、ビームの方向をθとしたときに、以下の定義式3に示すように、受信アンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる値であり、前述のβ2は、ビームの波長をλ、送信アンテナの各アンテナ同士間の距離をdとしたときに、以下の定義式4に示すように、送信アンテナの各アンテナ同士間の距離によって決まる値である。
【0080】
【数7】

【0081】
【数8】

【0082】
よって、定義式3および定義式4をもとに、α2=a×β2を成り立たせるように受信アンテナの各アンテナ素子間の距離と送信アンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信アンテナおよび受信アンテナを配置することは可能である。また、受信アンテナとして1つのアレイアンテナを備える構成とした場合には、各受信アンテナ素子での受信波の位相差をもとにターゲットの方位を検出する構成としてもよい。
【0083】
なお、受信アンテナの各アンテナ素子間の距離dについては、列方向に隣接するアンテナ素子間の距離である。また、受信アンテナの各アンテナ素子の中心間の距離(間隔)としてもよいし、送信アンテナの各アンテナ同士間の距離dについては、送信アンテナの各アンテナ同士の中心間の距離(間隔)としてもよい。
【0084】
また、送信アンテナは、それぞれ1つのアンテナ素子を備えたアンテナであってもよいし、それぞれ複数のアンテナ素子を備えたアレイアンテナであってもよい。よって、ここで言うところの送信アンテナは、請求項の送信用のアンテナとして機能する。
【0085】
なお、前述の実施形態では、a周期分の位相折り返し(a>1)までを利用して(a×β2)の方位範囲についてターゲットの方位の検出を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、位相折り返しが生じない範囲でのみターゲットの方位の検出を行う構成としてもよい。この場合には、位相折り返しを生じさせない範囲を1周期分とした場合の周期数をa(0<a≦1)とし、α2=a×β2を成り立たせるように受信アンテナの各アンテナ素子間の距離と送信アンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって送信アンテナおよび受信アンテナを配置すればよい。以上の構成によっても、電子スキャン方式を用いながらグレーティングローブの影響をより抑えてターゲットの方位の検出を行うことが可能になる。
【0086】
また、前述の実施形態では、レーダ装置に受信アンテナ5a・5b・5cを備える構成、つまり、レーダ装置100に受信アンテナを3つ備える構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、レーダ装置100に受信アンテナを2つ備えた位相モノパルス方式とする構成としてもよいし、レーダ装置100に受信アンテナを3つよりも多く備える構成としてもよい。
【0087】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1 制御部、2 送信部、3 位相制御部、4 送信アンテナ(送信用のアレイアンテナ)、5a・5b・5c 受信アンテナ(受信用のアンテナ、受信用のアレイアンテナ)、6a・6b・6c 受信部、7 信号処理部(第1方位検出部、第2方位検出部)、100 レーダ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の送信用のアレイアンテナから放射されたビームについてのターゲットからの反射波を複数の受信用のアンテナで受信し、この複数の受信用のアンテナのそれぞれで受信した前記ターゲットからの反射波である受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出するレーダ装置であって、
前記アレイアンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行うことによって所望の方位範囲にビームを放射させる位相制御部と、
前記受信波の位相差が、位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しをも利用することによって、前記複数の受信用のアンテナにおける前記受信波の位相差をもとに検出した前記ターゲットの方位と、このターゲットの方位を検出した際のビームの方位範囲とに基づいて、最終的なターゲットの方位を検出する第1方位検出部と、を備え、
前記送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる、前記送信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差をα1とし、前記受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離から決まる、それぞれの位相が同相になる方位幅をβ1とするとともに、
a周期分の位相折り返し(a>1)までを利用して(a×β1)の方位範囲について前記ターゲットの方位の検出を行うとした場合に、以下の式
α1=a×β1
を成り立たせるように前記送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と前記受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって前記送信用のアレイアンテナおよび前記受信用のアンテナを配置していることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
複数の送信用のアンテナから放射されたビームについてのターゲットからの反射波を1つ以上の受信用のアレイアンテナで受信し、この受信用のアレイアンテナで受信した前記ターゲットからの反射波である受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出するレーダ装置であって、
前記アレイアンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行うことによって所望の方位範囲にビームを放射させる位相制御部と、
前記受信波の位相差が、位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しをも利用することによって、前記受信用のアレイアンテナにおける前記受信波の位相差をもとに検出した前記ターゲットの方位と、このターゲットの方位を検出した際のビームの方位範囲とに基づいて、最終的なターゲットの方位を検出する第1方位検出部と、を備え、
前記受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる、前記受信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差をα2とし、前記送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離から決まる、それぞれの位相が同相になる方位幅をβ2とするとともに、
a周期分の位相折り返し(a>1)までを利用して(a×β2)の方位範囲について前記ターゲットの方位の検出を行うとした場合に、以下の式
α2=a×β2
を成り立たせるように前記受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と前記送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって前記送信用のアンテナおよび前記受信用のアレイアンテナを配置していることを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
1つ以上の送信用のアレイアンテナから放射されたビームについてのターゲットからの反射波を複数の受信用のアンテナで受信し、この複数の受信用のアンテナのそれぞれで受信した前記ターゲットからの反射波である受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出するレーダ装置であって、
前記アレイアンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行うことによって所望の方位範囲にビームを放射させる位相制御部と、
前記複数の受信用のアンテナにおける前記受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出する第2方位検出部と、を備え、
前記送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる、前記送信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差をα1とし、前記受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離から決まる、それぞれの位相が同相になる方位幅をβ1とし、前記受信波の位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しを生じさせない範囲を1周期分とした場合の周期数をa(0<a≦1)とするとともに、
(a×β1)の方位範囲について前記ターゲットの方位の検出を行うとした場合に、以下の式
α1=a×β1
を成り立たせるように前記送信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と前記受信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって前記送信用のアレイアンテナおよび前記受信用のアンテナを配置していることを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
複数の送信用のアンテナから放射されたビームについてのターゲットからの反射波を1つ以上の受信用のアレイアンテナで受信し、この受信用のアレイアンテナのそれぞれで受信した前記ターゲットからの反射波である受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出するレーダ装置であって、
前記アレイアンテナのアンテナ素子ごとに位相の制御を行うことによって所望の方位範囲にビームを放射させる位相制御部と、
前記受信用のアレイアンテナにおける前記受信波の位相差をもとに前記ターゲットの方位を検出する第2方位検出部と、を備え、
前記受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離によって決まる、前記受信用のアレイアンテナのメインローブとグレーティングローブとの方位差をα2とし、前記送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離から決まる、それぞれの位相が同相になる方位幅をβ2とし、前記受信波の位相差をもとにしてターゲットの方位を一意に求めることができる範囲を超えたときに生じる位相折り返しを生じさせない範囲を1周期分とした場合の周期数をa(0<a≦1)とするとともに、
(a×β2)の方位範囲について前記ターゲットの方位の検出を行うとした場合に、以下の式
α2=a×β2
を成り立たせるように前記受信用のアレイアンテナの各アンテナ素子間の距離と前記送信用のアンテナの各アンテナ同士間の距離とをとって前記送信用のアンテナおよび前記受信用のアレイアンテナを配置していることを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
前記各アンテナ素子間の距離は、各アンテナ素子の中心間の距離であり、
前記各アンテナ同士間の距離は、各アンテナ同士の中心間の距離であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記アレイアンテナは、各アンテナ素子が平面上に配列した平面アンテナとして構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記位相制御部は、フェイズシフタを利用することによって前記位相の制御を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記位相制御部は、ロットマンレンズを利用することによって前記位相の制御を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記位相制御部は、バトラーマトリックスを利用することによって前記位相の制御を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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