説明

レーダ装置

【課題】任意の方向にビーム走査を行って目標の追尾を行うレーダ装置において、クラッタマップを用いてクラッタによる誤警報を抑圧する。
【解決手段】クラッタマップ部11は、捜索/追尾区分情報及び送受信方向情報に基づき、捜索時には、受信機の出力信号の距離・方向毎に、時間方向の平均値を算出してクラッタマップを生成し、追尾時には、捜索時に生成したクラッタマップにアンテナのサイドローブ形状に基づいて重み付け合成処理をした信号を検出部に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッタマップを用いてクラッタによる誤警報を抑圧するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、低仰角のメインローブクラッタ環境下では、クラッタの影響が大きく、目標の検出性能が劣化し、クラッタによる誤警報が多くなることが知られている。このため、クラッタ抑圧処理として、MTI(Moving Target Indicator、移動目標指示機)によりクラッタを抑圧した後、目標の検出が行われる。
【0003】
一方、中高仰角のサイドローブクラッタ環境下では、クラッタの影響が小さくなることと、MTIによるパルス数の増大及びドップラブラインドを避けるために、クラッタ抑圧処理を実施しないことが多い。
【0004】
しかし、中高仰角において、MTIを実施しない場合、サイドローブクラッタによる誤警報が発生する。
【0005】
これを防止するために、クラッタマップを生成し、受信信号との間で比較を行うことにより、クラッタによる誤警報を防止することが行われる。ここで、クラッタマップは、受信信号の距離・方向毎の時間方向の平均値を算出し、記憶するものである。
【0006】
図13は従来のレーダ装置の構成を示すブロック図である。図13に示す従来のレーダ装置において、アンテナ3は、サーキュレータ2を経由して送信機1から出力される送信波を指定方向の空間に送信し、送信波の反射波を受信する。
【0007】
受信機4は、サーキュレータ2を経由してアンテナ3から出力される受信信号をデジタル信号に変換する。クラッタマップ部5は、受信機4から出力される信号を用いてクラッタマップを生成して出力する。そして、目標検出部6は、受信機4とクラッタマップ部5から出力される信号を用いて目標を検出する。
【0008】
レーダ制御部7は送受信方向を制御し、クラッタマップ部5へ送受信方向情報を出力する。また、レーダ装置に設けられた各部の制御を行う。
【0009】
図14は図13に示す従来のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。図14に示すクラッタマップ部において、乗算器101Aは、受信機4からの入力信号にウエイトを乗算し、その結果を加算器102に出力する。また、乗算器101Bは、1回前の観測によりメモリ103に記憶された信号にウエイトを乗算し、その結果を加算器102に出力する。加算器102は乗算器101A及び101Bの出力信号を加算して、その結果得られた信号を検出部6とメモリ103に出力する。そして、メモリ103はレーダ制御部7からの送受信方向情報に基づいて加算器102の出力信号を記憶する。
【0010】
クラッタマップ部5では、レーダ制御部7からの送受信方向情報及び受信機4からの入力信号に含まれる距離情報に基づいて、入力信号とメモリ103に蓄えられた信号との間で平均化処理が実施され、結果が再びメモリ103に蓄えられる。平均化処理は、以下の(数式1)で表される。
【0011】
y(k)=wx(k)+wy(k−1) (数式1)
ここで、x(k)はk回目の観測により得られた入力信号、y(k)はk回目の観測により新たにメモリ103に蓄えられる信号、y(k−1)は(k−1)回目の観測によりメモリ103に蓄えられた信号、wは入力信号に対するウエイト、wはメモリ103に蓄えられた信号に対するウエイトである。
【0012】
平均化処理は、上記の(数式1)では省略されているが、入力信号の距離・方向毎に実施され、これを観測毎に実施することにより、距離・方向毎の時間方向の平均値が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3520016号公報
【特許文献2】特許第3520015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、任意の方向にビーム走査を行って目標の追尾を行うレーダ装置では、予め追尾方向の受信信号を収集することができないため、クラッタマップを用いることができず、クラッタによる誤警報が増加するという問題があった。
【0015】
なお、特許文献2では、追尾目標の周辺にクラッタが存在する場合、クラッタマップを生成するフローチャートが示されているが、このフローチャートによって得られるクラッタマップは、複数回の観測によって時間方向の平均化が行われたものではなく、クラッタと共に目標も同時に観測されているものであり、特許文献1及び本発明のクラッタマップの定義とは異なる。
【0016】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、任意の方向にビーム走査を行って目標の追尾を行うレーダ装置において、クラッタマップを用いてクラッタによる誤警報を抑圧するレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のレーダ装置は、送信機から供給された送信波を空間に向け放射し、目標からの反射波を受信して受信信号を出力するアンテナと、このアンテナから出力された受信信号をデジタル信号に変換する受信機と、この受信機の出力信号を用いてクラッタマップを生成するクラッタマップ部と、前記受信機の出力信号と前記クラッタマップ部からの出力信号とを用いて目標を検出する検出部と、前記検出部の出力信号を用いて目標の追尾処理を行う追尾制御部と、送受信方向を制御するレーダ制御部とを備え、前記追尾制御部は、目標の距離・方向を前記レーダ制御部に出力し、前記レーダ制御部は、捜索と追尾を時分割で行うように各部を制御し、追尾時には前記追尾制御部の出力信号に基づいて送受信方向を制御し、捜索時と追尾時の区分を示す捜索/追尾区分情報と、送受信方向情報とを前記クラッタマップ部に出力し、前記クラッタマップ部は、前記捜索/追尾区分情報及び前記送受信方向情報に基づき、捜索時には、前記受信機の出力信号の距離・方向毎に、時間方向の平均値を算出してクラッタマップを生成し、追尾時には、捜索時に生成したクラッタマップに前記アンテナのサイドローブ形状に基づいて重み付け合成処理をした信号を前記検出部に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のレーダ装置によれば、捜索時には、受信機の出力信号を用いてクラッタマップを生成し、追尾時には、捜索時に生成したクラッタマップにアンテナのサイドローブ形状に基づいて重み付け合成処理をした信号(便宜上、クラッタマップと呼ぶことがある)を目標の検出に用いるので、任意の方向にビーム走査を行って目標の追尾を行うレーダ装置において、クラッタマップを用いてクラッタによる誤警報を抑圧するレーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第7の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第7の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。
【図13】従来のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図13に示す従来のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のレーダ装置を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、図13に示した従来のレーダ装置と同一構成には同一符号を付して説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。図1において、送信機1は送信波を発生し、サーキュレータ2を経由してアンテナ3に送信波を供給する。アンテナ3は供給された送信波を空間に向け放射し、目標からの反射波を受信して受信信号を出力する。
【0022】
受信機4には、アンテナ3から出力された受信信号がサーキュレータ2を経由して入力され、受信機4は入力された受信信号をデジタル信号に変換して出力する。クラッタマップ部9は、受信機4から出力される信号を用いてクラッタマップを生成して出力する。
【0023】
検出部6は、受信機4とクラッタマップ部9から出力される信号を用いて目標を検出する。レーダ制御部7は送受信方向を制御し、クラッタマップ部9へ送受信方向情報と、低仰角走査と中高仰角走査の区分を示す仰角情報を出力する。また、レーダ装置に設けられた各部の制御を行う。
【0024】
図2は本発明の第1の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。
【0025】
乗算器201Aは、受信機4からの入力信号にウエイトを乗算し、その結果を加算器202に出力する。また、乗算器201Bは、1回前の観測によりメモリ203に記憶された信号にウエイトを乗算し、その結果を加算器202に出力する。加算器202は乗算器201A及び201Bの出力信号を加算して、その結果得られた信号をスイッチ206の端子206a−206bを介してメモリ203に出力し、また、スイッチ208の端子208a−208bを介して検出部6に出力する。
【0026】
メモリ203はレーダ制御部7からスイッチ207の端子207a−207bを介して入力される送受信方向情報に基づいて加算器202の出力信号を記憶する。図2では方向jのデータを記憶する場合を示す。
【0027】
ウエイト発生器204はレーダ制御部7から入力される送受信方向情報に基づき、アンテナ3のサイドローブ形状に基づいた方向情報と重み付け係数を発生し、方向情報をメモリ203に出力し、重み付け係数を乗算器201C,201D,201Eに出力する。
【0028】
乗算器201C,201D,201Eはそれぞれ、メモリ203に蓄えられた方向j−1,j,j+1のデータに対してウエイト発生器204で発生した重み付け係数を乗算し、その結果得られた信号を総和器205に出力する。総和器205は乗算器201C,201D,201Eからの出力信号の総和を計算し、その結果をスイッチ208の端子208a−208cを介して検出部6に出力する。
【0029】
スイッチ206は端子206a,bを備え、レーダ制御部7から入力される仰角情報に基づき、低仰角走査時には端子206a−206bが接続され、中高仰角走査時には切断される。また、スイッチ207は端子207a,b,cを備え、仰角情報に基づき、低仰角走査時には端子207a−207bが接続され、中高仰角走査時には端子207a−207cが接続される。また、スイッチ208は端子208a,b,cを備え、仰角情報に基づき、低仰角走査時には端子208a−208bが接続され、中高仰角走査時には端子208a−208cが接続される。
【0030】
ここで、第1の実施の形態のレーダ装置の動作を説明する。
【0031】
アンテナ3は、送信機1からサーキュレータ2を経由して入力された送信波を指定方向の空間に送信し、送信波の反射波を受信して受信信号をサーキュレータ2に出力する。
【0032】
次に、受信機4は、サーキュレータ2を経由して入力されたアンテナ3の受信信号をデジタル信号に変換して検出部6及びクラッタマップ部9に出力する。そして、検出部6は、受信機4とクラッタマップ部9から出力される信号を用いて目標を検出する。
【0033】
クラッタマップ部9は、レーダ制御部7から入力される仰角情報及び送受信方向情報に基づいて、低仰角走査時には図2に示す従来のクラッタマップ部と同様の処理を実施し、中高仰角走査時には重み付け合成処理を実施する。
【0034】
低仰角走査時は、レーダ制御部7から入力される仰角情報に基づき、スイッチ206の端子206a−206b、スイッチ207の端子207a−207b、スイッチ208の端子208a−208bが接続される。
【0035】
そして、乗算器201Aは、受信機4からの入力信号にウエイトを乗算し、その結果を加算器202に出力する。また、乗算器201Bは、1回前の観測によりメモリ203に記憶された信号にウエイトを乗算し、その結果を加算器202に出力する。
【0036】
次に、加算器202は乗算器201A及び201Bの出力信号を加算して、その結果得られた信号をスイッチ206の端子206a−206bを介してメモリ203に出力し、また、スイッチ208の端子208a−208bを介して検出部6に出力する。
【0037】
そして、メモリ203はレーダ制御部7からスイッチ207の端子207a−207bを介して入力される送受信方向情報に基づいて加算器202の出力信号を記憶する。図2では方向jのデータを記憶する場合を示す。
【0038】
一方、中高仰角走査時は、レーダ制御部7から入力される仰角情報に基づき、スイッチ206の接続は切断され、スイッチ207の端子207a−207c、スイッチ208の端子208a−208cが接続される。
【0039】
そして、ウエイト発生器204はレーダ制御部7から入力される送受信方向情報に基づき、アンテナ3のサイドローブ形状に基づいた方向情報と重み付け係数を発生し、方向情報をメモリ203に出力し、重み付け係数を乗算器201C,201D,201Eに出力する。
【0040】
次に、乗算器201C,201D,201Eはそれぞれ、低仰角走査時に処理されてメモリ203に蓄えられた方向j−1,j,j+1のデータに対して、ウエイト発生器204で発生した重み付け係数を乗算し、その結果得られた信号を総和器205に出力する。
【0041】
そして、総和器205は乗算器201C,201D,201Eからの出力信号の総和を計算し、その結果をスイッチ208の端子208a−208cを介して検出部6に出力する。
【0042】
中高仰角走査時の重み付け合成処理は、以下の(数式2)で表される。
【数1】

【0043】
ここで、y(m,k)は方向m、観測k回目のクラッタマップの出力信号、y(j,k−1)はメモリ203に蓄えられた方向j、観測(k−1)回目の信号、w(j)は方向jに対する重み付け係数である。
【0044】
このように実施の形態1のレーダ装置によれば、中高仰角走査時には、低仰角のクラッタマップを重み付け合成して出力するので、中高仰角に対応するメモリ容量は不要となり、クラッタマップ部9の小型化が可能となる。また、クラッタマップが対応する領域を限定する必要がないため、小型化したクラッタマップ部によりすべての距離・方向に対するクラッタマップを出力してクラッタによる誤警報を抑圧するレーダ装置を提供することができる。
【0045】
なお、レーダ制御部7からクラッタマップ部9へ出力される仰角情報は、任意の走査角を基準とすることができる。
【0046】
また、ウエイト発生器204から出力する重み付け係数は、仰角走査角に応じて変化させることができる。
【0047】
また、図2では、メモリ203から連続する3方向j−1,j,j+1のデータを出力し、重み付け合成する例を示したが、重み付け合成する方向は、任意に選択することができ、合成する方向の数も任意に選択できる。
【0048】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態のレーダ装置の構成は、図1に示す第1の実施の形態のレーダ装置の構成と同様である。また、第2の実施の形態のレーダ装置の動作は、クラッタマップ部9の中高仰角走査時の重み付け係数更新処理以外は、第1の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0049】
第2の実施の形態のレーダ装置は、中高仰角走査時に、クラッタマップ部9の出力信号と受信機4から入力される受信信号との誤差から、重み付け係数を更新できるように構成したものである。
【0050】
図3は第2の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。図3に示すクラッタマップ部の構成要素において、図2と同一の構成要素については、同一番号をつけることによりその説明は省略する。図3において図2に示すクラッタマップ部と異なる点は、ウエイト発生器204に受信機4からの受信信号と、総和器205の出力信号とが入力される点である。
【0051】
そして、第2の実施の形態のクラッタマップ部9の低仰角走査時の動作は、第1の実施の形態のクラッタマップ部と同様である。また、中高仰角走査時の重み付け合成処理も第1の実施の形態と同様である。
【0052】
ウエイト発生器204は、受信機4から入力される受信信号と、総和器205の出力信号とを用いて重み付け係数を算出し、この重み付け係数をメモリ203、乗算器201C,201D,201Eに出力する。
【0053】
重み付け係数は、受信機4から入力される受信信号xと、重み付け合成された総和器205の出力信号yとを用いて、適応信号処理により算出できる。
【0054】
重み付け係数の算出に、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いる場合、重み付け係数算出処理は、以下の(数式3),(数式4)で表される。
【0055】
ε(i)=x(i)−y(i) (数式3)
【数2】

【0056】
このように第2の実施の形態のレーダ装置では、実際の受信信号を用いてウエイト発生器204で発生する重み付け係数を調整するので、第1の実施の形態よりも処理は複雑になるが、クラッタ環境に適応することができる。
【0057】
(第3の実施の形態)
図4は本発明の第3の実施の形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。第3の実施の形態のレーダ装置は、第1の実施の形態のレーダ装置に対し、クラッタマップ部9をクラッタマップ部10に置き換え、追尾制御部8が追加された構成である。追尾制御部8は検出部6の出力信号を用いた追尾処理により目標とクラッタの区分を行い、区分したクラッタの距離・方向をレーダ制御部7に出力する。
【0058】
図5は第3の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。図5に示すクラッタマップ部の構成要素において、図3と同一の構成要素については、同一番号をつけることによりその説明は省略する。
【0059】
図5において、図3に示す第2の実施の形態のクラッタマップ部と異なる点は、指定範囲内外判定器209と論理和回路210とを追加した点である。
【0060】
指定範囲内外判定器209は、受信機4から入力される受信信号、レーダ制御部7から入力される指定距離・方向情報、送受信方向情報に基づいて指定距離・方向内か指定距離・方向外かを判定して判定結果情報を出力する。
【0061】
論理和回路210は、指定範囲内外判定器209から入力される判定結果情報とレーダ制御部7から入力される仰角情報とに基づいて、指定距離・方向内又は低仰角走査時のときにスイッチ206の端子206a−206bを接続し、スイッチ207の端子207a−207bを接続し、スイッチ208の端子208a−208bを接続するように制御信号をスイッチ206,207,208に出力する。
【0062】
第3の実施の形態のレーダ装置の動作は、追尾制御部8とクラッタマップ部10の指定距離・方向内以外の動作は、第2の実施の形態と同じであり、説明を省略する。
【0063】
第3の実施の形態の追尾制御部8で行う追尾処理は、任意の方向にビーム走査を行って目標の追尾を行うものではなく、捜索で得られた目標情報から追尾を行うTWS(Track While Scan)である。
【0064】
追尾制御部8は、複数回の追尾処理を行うことにより、目標の移動量に応じて、真目標とクラッタを区分することができる。追尾制御部8は、クラッタと目標を区分し、クラッタの距離・方向をレーダ制御部7に出力する。
【0065】
レーダ制御部7は、仰角情報及び送受信方向情報と共に、追尾制御部8から出力されたクラッタの距離・方向を指定距離・方向情報として、クラッタマップ部10に出力する。
【0066】
なお、レーダ制御部7では、追尾制御部8から出力されたクラッタの距離・方向が低仰角の場合、指定距離・方向情報をクラッタマップ部5に出力しないようにすることもできる。
【0067】
第3の実施の形態のクラッタマップ部10の低仰角走査時及び中高仰角走査時の指定距離・方向内の動作は、第1の実施の形態のクラッタマップ部の低仰角走査時と同様である。また、中高仰角走査時の指定距離・方向外では、第2の実施の形態の中高仰角走査時と同様に重み付け合成処理と重み付け係数算出処理とを行う。
【0068】
指定範囲内外判定器209は、受信機4から入力される受信信号、レーダ制御部7から入力される指定距離・方向情報、送受信方向情報に基づいて指定距離・方向内か指定距離・方向外かを判定して判定結果情報を出力する。
【0069】
そして、論理和回路210は、指定範囲内外判定器209から入力される判定結果情報とレーダ制御部7から入力される仰角情報とに基づいて、指定範囲内又は低仰角走査時のときは、スイッチ206の端子206a−206bを接続し、スイッチ207の端子207a−207bを接続し、スイッチ208の端子208a−208bを接続するように制御信号をスイッチ206,207,208に出力する。
【0070】
そして、第1の実施の形態の低仰角走査時と同様の動作によりクラッタマップの生成処理が実施される。
【0071】
次に、中高仰角走査時の指定距離・方向外のときは、論理和回路210は、スイッチ206の接続を切断し、スイッチ207の端子207a−207cを接続し、スイッチ208の端子208a−208cを接続するように制御信号をスイッチ206,207,208に出力する。
【0072】
そして、第2の実施の形態の中高仰角走査時と同様の動作により重み付け合成処理と重み付け係数算出処理が実施される。
【0073】
このように第3の実施の形態のレーダ装置では、第1及び第2の実施の形態に対して、メモリ容量が増大するが、その範囲は距離・方向に対して限定されたものであり、メモリ容量の増大を最小限に抑えることができる。
【0074】
また、検出部6では目標として検出されるが、追尾制御器8で実施される追尾処理の結果クラッタと判断された目標に対して、範囲を限定したクラッタマップを生成するため、クラッタマップを小型化したまま、クラッタによる誤警報を低減することができるため、TWSによる追尾を行う捜索レーダ装置の構成として最適である。
【0075】
(第4の実施の形態)
図6は本発明の第4の実施の形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。第4の実施の形態のレーダ装置は、図4に示す第3の実施の形態のレーダ装置に対し、クラッタマップ部10をクラッタマップ部11に置き換えた構成である。
【0076】
図7は第4の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。図7に示すクラッタマップ部は、図2に示す第1の実施の形態のクラッタマップ部と同様の構成であるが、スイッチ206,207,208に入力される情報が捜索/追尾区分情報である点が異なる。
【0077】
第4の実施の形態のレーダ装置において、追尾制御部8は、目標が検出されると追尾処理を行い、目標の予測位置をレーダ制御部7に出力する。レーダ制御部7は、捜索と追尾の処理を時分割に行うように、レーダ装置に設けられた各部の制御を行う。また、レーダ制御部7は、捜索時と追尾時の区分を示す捜索/追尾区分情報及び送受信方向情報をクラッタマップ部11に出力する。
【0078】
そして、クラッタマップ部11は、捜索/追尾区分情報及び送受信方向情報に基づいてクラッタマップを生成する。これ以外の各部の動作は第3の実施の形態のレーダ装置と同様である。
【0079】
クラッタマップ部11のメモリ203は、捜索の全領域に対するメモリ容量を有する。そして、捜索時は、レーダ制御部7から入力される捜索/追尾区分情報に基づき、スイッチ206の端子206a−206b、スイッチ207の端子207a−207b、スイッチ208の端子208a−208bが接続される。そして、第1の実施の形態のクラッタマップ部の低仰角走査時と同様の動作によりクラッタマップの生成処理が実施される。
【0080】
一方、追尾時は、レーダ制御部7から入力される仰角情報に基づき、スイッチ206の接続は切断され、スイッチ207の端子207a−207c、スイッチ208の端子208a−208cが接続される。そして、捜索時に生成したクラッタマップに対して、第1の実施の形態の中高仰角走査時と同様の動作により重み付け合成処理が実施される。
【0081】
追尾時は、第3の実施の形態とは異なり、任意の方向にビーム走査を行って目標の追尾を行うため、通常はクラッタマップの生成が不可能であるが、捜索時に得られたクラッタマップの重み付き合成処理を行うことにより、任意のビーム走査に対するクラッタマップを出力する。
【0082】
このように第4の実施の形態のレーダ装置は、捜索時に生成されたクラッタマップを基に、任意の方向のクラッタマップを出力するため、任意の方向にビーム走査を行って目標の追尾を行う捜索・追尾レーダ装置の構成として最適である。
【0083】
(第5の実施の形態)
図8は本発明の第5の実施の形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。第5の実施の形態のレーダ装置は、図6に示す第4の実施の形態のレーダ装置に対し、クラッタマップ部11をクラッタマップ部12に置き換えた構成である。クラッタマップ部12には、レーダ制御部7から仰角情報、捜索/追尾区分情報、送受信方向情報が入力される。
【0084】
図9は第5の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。図9において、図7に示す第4の実施の形態のクラッタマップ部と異なる点は、論理積回路211を追加した点である。
【0085】
論理積回路211は、レーダ制御部7から入力される仰角情報と捜索/追尾区分情報とに基づいて、捜索時の低仰角走査時にスイッチ206の端子206a−206bを接続し、スイッチ207の端子207a−207bを接続し、スイッチ208の端子208a−208bを接続するように制御信号をスイッチ206,207,208に出力する。
【0086】
第5の実施の形態のレーダ装置の動作は、クラッタマップ部12の捜索時の中高仰角走査時以外の動作は、第4の実施の形態と同じであり、説明を省略する。
【0087】
第5の実施の形態のレーダ装置は、第4の実施の形態のレーダ装置に対し、捜索時の中高仰角走査時のクラッタマップも、低仰角走査時のクラッタマップの重み付き合成により生成するものである。
【0088】
論理積回路211は、レーダ制御部7から入力される仰角情報と捜索/追尾区分情報とに基づいて、捜索時の低仰角走査時にはスイッチ206の端子206a−206bを接続し、スイッチ207の端子207a−207bを接続し、スイッチ208の端子208a−208bを接続するように制御信号をスイッチ206,207,208に出力する。
【0089】
そして、第1の実施の形態の低仰角走査時と同様の動作によりクラッタマップの生成処理が実施される。
【0090】
一方、捜索時の中高仰角走査時及び追尾時には、論理積回路211は、スイッチ206の接続を切断し、スイッチ207の端子207a−207cを接続し、スイッチ208の端子208a−208cを接続するように制御信号をスイッチ206,207,208に出力する。
【0091】
そして、捜索時の低仰角走査時に生成したクラッタマップに対して、第1の実施の形態の中高仰角走査時と同様の動作により重み付け合成処理が実施される。
【0092】
このように第5の実施の形態のレーダ装置は、捜索の中高仰角走査時に対応するメモリ容量を有しないため、第4の実施の形態よりもクラッタマップ部を小型化することができ、任意の方向のクラッタマップを出力するため、任意の方向にビーム走査を行って目標の追尾を行う捜索・追尾レーダ装置として最適である。
【0093】
なお、上記では、捜索と追尾を時分割に実施するレーダ装置を例としたが、専用のビーム走査により、低仰角走査時のクラッタマップを生成することができれば、追尾のみのレーダ装置にも適用できる。
【0094】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態のレーダ装置の構成は、図8に示す第5の実施の形態のレーダ装置の構成と同様である。また、第6の実施の形態のレーダ装置の動作は、クラッタマップ部12の捜索時の中高仰角走査時及び追尾時の重み付け係数更新処理以外は、第5の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0095】
第6の実施の形態のレーダ装置は、捜索時の中高仰角走査時及び追尾時に、第2の実施の形態と同様に、クラッタマップ部12の出力信号と受信機4から入力される受信信号との誤差から、重み付け係数を更新できるように構成したものである。
【0096】
図10は第6の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。図10に示すクラッタマップ部の構成要素において、図9と同一の構成要素については、同一番号をつけることによりその説明は省略する。図10において図9に示すクラッタマップ部と異なる点は、ウエイト発生器204に受信機4からの受信信号と、総和器205の出力信号とが入力される点である。
【0097】
第6の実施の形態のレーダ装置の動作は、クラッタマップ部12の捜索時の中高仰角走査時及び追尾時以外の動作は、第5の実施の形態と同じであり、説明を省略する。
【0098】
捜索時の中高仰角走査時及び追尾時には、論理積回路211は、スイッチ206の接続を切断し、スイッチ207の端子207a−207cを接続し、スイッチ208の端子208a−208cを接続するように制御信号をスイッチ206,207,208に出力する。
【0099】
そして、捜索時の低仰角走査時に生成したクラッタマップに対して、第2の実施の形態の中高仰角走査時と同様の動作により重み付け合成処理と重み付け係数算出処理が実施される。
【0100】
このように第6の実施の形態のレーダ装置は、実際の受信信号を用いて、ウエイト発生器204の重み付け係数を調整するので、クラッタ環境に適応することができ、任意の方向のクラッタマップを出力できるため、任意の方向にビーム走査を行って目標の追尾を行う捜索・追尾レーダ装置として最適である。
【0101】
(第7の実施の形態)
図11は本発明の第7の実施の形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。第7の実施の形態のレーダ装置は、図8に示す第5の実施の形態のレーダ装置に対し、クラッタマップ部12をクラッタマップ部13に置き換えた構成である。クラッタマップ部13には、レーダ制御部7から仰角情報、捜索/追尾区分情報、送受信方向情報、指定距離・方向情報が入力される。
【0102】
図12は第7の実施の形態のレーダ装置のクラッタマップ部の構成を示すブロック図である。図12に示すクラッタマップ部の構成要素において、図10と同一の構成要素については、同一番号をつけることによりその説明は省略する。
【0103】
図12において、図10に示す第6の実施の形態のクラッタマップ部と異なる点は、指定範囲内外判定器209と論理和回路212とを追加した点である。
【0104】
指定範囲内外判定器209は、受信機4から入力される受信信号、レーダ制御部7から入力される指定距離・方向情報、送受信方向情報に基づいて指定距離・方向内か指定距離・方向外かを判定して判定結果情報を出力する。
【0105】
論理和回路212は、指定範囲内外判定器209から入力される判定結果情報と論理積回路211から入力される演算結果情報とに基づいて、指定距離・方向内及び捜索時の低仰角走査時のときにスイッチ206の端子206a−206bを接続し、スイッチ207の端子207a−207bを接続し、スイッチ208の端子208a−208bを接続するように制御信号をスイッチ206,207,208に出力する。
【0106】
第7の実施の形態のレーダ装置の動作は、クラッタマップ部13の指定距離・方向内以外の動作は、第6の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0107】
第7の実施の形態のレーダ装置は、第6の実施の形態のレーダ装置に対し、第3の実施の形態と同様に、追尾制御部8からのクラッタの距離・方向を基に、部分的にクラッタマップを生成するものである。
【0108】
指定範囲内外判定器209は、受信機4から入力される受信信号、レーダ制御部7から入力される指定距離・方向情報、送受信方向情報に基づいて指定距離・方向内か指定距離・方向外かを判定して判定結果情報を出力する。
【0109】
また、論理積回路211は、レーダ制御部7から入力される仰角情報、捜索/追尾区分情報に基づいて論理積演算を行い、論理積回路211を出力する。
【0110】
そして、論理和回路212は、指定範囲内外判定器209から入力される判定結果情報と論理積回路211から入力される論理積回路211とに基づいて、指定距離・方向内及び捜索時の低仰角走査時のときは、スイッチ206の端子206a−206bを接続し、スイッチ207の端子207a−207bを接続し、スイッチ208の端子208a−208bを接続するように制御信号をスイッチ206,207,208に出力する。
【0111】
そして、第1の実施の形態の低仰角走査時と同様の動作によりクラッタマップの生成処理が実施される。
【0112】
次に、捜索時の中高仰角走査時の指定距離・方向外及び追尾時の指定距離・方向外のときは、論理和回路212は、スイッチ206の接続を切断し、スイッチ207の端子207a−207cを接続し、スイッチ208の端子208a−208cを接続するように制御信号をスイッチ206,207,208に出力する。
【0113】
そして、捜索時の低仰角走査時に生成したクラッタマップに対して、第2の実施の形態の中高仰角走査時と同様の動作により重み付け合成処理と重み付け係数算出処理が実施される。
【0114】
このように第7の実施の形態のレーダ装置は、検出部6では目標として検出されるが、追尾制御器8で実施される追尾処理の結果クラッタと判断された目標に対して、範囲を限定したクラッタマップを生成するため、クラッタマップを小型化したまま、クラッタによる誤警報を低減することができ、また、任意の方向のクラッタマップを出力できるため、任意の方向にビーム走査を行って目標の追尾を行う捜索・追尾レーダ装置として最適である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、レーダ装置やソナー装置などに適用可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 送信機
2 サーキュレータ
3 アンテナ
4 受信機
5,9〜13 クラッタマップ部
6 検出部
7 レーダ制御部
8 追尾制御部
101A,101B,201A〜201E 乗算器
102,202 加算器
103,203 メモリ
204 ウエイト発生器
205 総和器
206〜208 スイッチ
209 指定範囲内外判定器
210,212 論理和回路
211 論理積回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機から供給された送信波を空間に向け放射し、目標からの反射波を受信して受信信号を出力するアンテナと、
このアンテナから出力された受信信号をデジタル信号に変換する受信機と、
この受信機の出力信号を用いてクラッタマップを生成するクラッタマップ部と、
前記受信機の出力信号と前記クラッタマップ部からの出力信号とを用いて目標を検出する検出部と、
前記検出部の出力信号を用いて目標の追尾処理を行う追尾制御部と、
送受信方向を制御するレーダ制御部とを備え、
前記追尾制御部は、
目標の距離・方向を前記レーダ制御部に出力し、
前記レーダ制御部は、
捜索と追尾を時分割で行うように各部を制御し、追尾時には前記追尾制御部の出力信号に基づいて送受信方向を制御し、捜索時と追尾時の区分を示す捜索/追尾区分情報と、送受信方向情報とを前記クラッタマップ部に出力し、
前記クラッタマップ部は、
前記捜索/追尾区分情報及び前記送受信方向情報に基づき、捜索時には、前記受信機の出力信号の距離・方向毎に、時間方向の平均値を算出してクラッタマップを生成し、追尾時には、捜索時に生成したクラッタマップに前記アンテナのサイドローブ形状に基づいて重み付け合成処理をした信号を前記検出部に出力することを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−91585(P2010−91585A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13363(P2010−13363)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【分割の表示】特願2005−221153(P2005−221153)の分割
【原出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】