説明

レーダ装置

【課題】誤ペアリングの発生を防止するとともに、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合であっても、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を得ることができるレーダ装置を得る。
【解決手段】ターゲット推定部20は、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合に、ターゲット確定部13において前回のサイクルで確定されたターゲット21、22までの距離ROおよびターゲット21、22との相対速度VOに基づいて、ターゲット21、22までの距離RNおよびターゲット21、22との相対速度VNを推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物体(以下、「ターゲット」と称する)に送信信号を電磁波として放射し、送信信号がターゲットで反射した反射信号を受信して、反射信号に基づいてターゲット情報を算出するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、連続的に周波数を変調した送信信号をターゲットに対して送信し、ターゲットで反射した反射信号を受信して、送信信号と反射信号とをミキシングして得られるビート信号のピーク周波数に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を算出する周波数変調型のレーダ装置が知られている。
【0003】
この種のレーダ装置において、ターゲットまでの距離Rおよびターゲットとの相対速度Vは、一般的なFM−CW(Frequency Modulation Continuous Wave)レーダの原理に基づいて、以下のように算出される。
【0004】
まず、送信信号に対して、繰り返し周波数fm、変調幅ΔFの三角波の周波数変調が施される。これにより、送信信号および反射信号の周波数は、それぞれ時間的に変化することとなる。ここで、送信信号および反射信号の周波数が時間的に線形に増加する上昇区間におけるビート信号のピーク周波数をfuとし、送信信号および反射信号の周波数が時間的に線形に減少する下降区間におけるビート信号のピーク周波数をfdとすると、これらのピーク周波数は、それぞれ次式(1)、(2)で表される。
【0005】
fu=fr−fp ・・・(1)
fd=fr+fp ・・・(2)
【0006】
式(1)、(2)において、frはターゲットまでの距離Rに比例する量であり、fpはターゲットとの相対速度V(接近方向が+)に比例する量であって、それぞれ次式(3)、(4)で表される。なお、式(3)、(4)において、Cは光速を示し、f0は送信信号の中心周波数を示す。
【0007】
fr=(4・fm・ΔF/C)・R ・・・(3)
fp=(2・f0/C)・V ・・・(4)
【0008】
よって、ターゲットまでの距離Rおよびターゲットとの相対速度Vは、式(1)〜(4)から、次式(5)、(6)で表されるピーク周波数fu、fdの加減処理を用いて、それぞれ次式(7)、(8)で表される。
【0009】
fu+fd=2fr ・・・(5)
fu−fd=−2fp ・・・(6)
R=M1・fr=M1・(fu+fd)/2 ・・・(7)
V=M2・fp=M2・(−fu+fd)/2 ・・・(8)
【0010】
ただし、次式(9)〜(12)が成立する。
【0011】
M1=C/(4・fm・ΔF) ・・・(9)
M2=C/(2・f0) ・・・(10)
fu=R/M1−V/M2 ・・・(11)
fd=R/M1+V/M2 ・・・(12)
【0012】
このように、上昇区間におけるビート信号のピーク周波数fuと下降区間におけるビート信号のピーク周波数fdとが分かれば、式(7)、(8)を用いて、ターゲットまでの距離Rおよびターゲットとの相対速度Vを算出することができる。
【0013】
ここで、上述したレーダ装置では、ターゲットが単一の場合には、ターゲットまでの距離Rおよびターゲットとの相対速度Vを正確に算出することができるものの、例えば路上の他車両を検出する状況等、複数のターゲットが存在する場合には、各ターゲットまでの距離および各ターゲットとの相対速度を正確に算出することが困難になる。
【0014】
以下、ターゲットa、bの2つのターゲットが存在する場合を例に挙げて、各ターゲットまでの距離および各ターゲットとの相対速度を算出する処理について説明する。なお、この説明において、ターゲットaについての値には添え字aを付し、ターゲットbについての値には添え字bを付すこととする。
【0015】
まず、上昇区間におけるビート信号のピーク周波数fua、fubと下降区間におけるビート信号のピーク周波数fda、fdbとに基づいて、ターゲットa、bまでの距離Ra、Rbおよびターゲットa、bとの相対速度Va、Vbを算出するためには、それぞれのターゲットa、bの上昇区間および下降区間におけるビート信号のピーク周波数のペアを検出し、このペアを式(7)、(8)に代入する必要がある。
【0016】
しかしながら、2つのターゲットが存在する場合には、ターゲットa、bの上昇区間および下降区間におけるビート信号のピーク周波数のペアとして、{fua,fda}のペアおよび{fub,fdb}のペアからなる正しい組み合わせと、{fua,fdb}のペアおよび{fub,fda}のペアからなる間違った組み合わせとの2通りが存在することとなる。
【0017】
このとき、{fua,fda}のペアおよび{fub,fdb}のペアからなる正しい組み合わせが選択された場合には、ターゲットaまでの距離Raおよびターゲットaとの相対速度Va、並びにターゲットbまでの距離Rbおよびターゲットbとの相対速度Vbが正確に算出される。
【0018】
これに対して、{fua,fdb}のペアおよび{fub,fda}のペアからなる間違った組み合わせが選択された場合には、実際のターゲットa、bまでの距離Ra、Rbおよびターゲットa、bとの相対速度Va、Vbとは異なる値が算出される。このように、複数のターゲットが存在する場合には、複数のピーク周波数が発生するので、誤ったペアが生成される(誤ペアリングを生じる)可能性が高くなる。
【0019】
そこで、誤ペアリングの発生を防止するために、同一のターゲットで反射した反射信号に基づいて算出されたターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度であれば、送信信号の繰り返し周波数fm、変調幅ΔFまたは中心周波数f0(以下、「変調信号」と称する)が変化した場合であっても、距離および相対速度の値が変わらないという性質を利用した、以下のようなレーダ装置が知られている。
【0020】
すなわち、このレーダ装置では、まず、同一のターゲットに対して、繰り返し周波数fm、変調幅ΔFまたは中心周波数f0を切り替える前の変調信号と切り替えた後の変調信号とが送信される。続いて、切り替え前の変調信号の上昇区間および下降区間におけるビート信号のピーク周波数のペア{fu1,fd1}と、切り替え後の変調信号の上昇区間および下降区間におけるビート信号のピーク周波数のペア{fu2,fd2}とに基づいて、それぞれターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度が算出される。
【0021】
次に、切り替え前の変調信号に基づいて算出された距離R1および相対速度V1と、切り替え後の変調信号に基づいて算出された距離R2および相対速度V2とが比較される。この結果、距離および相対速度について双方が同一の値であれば、正しいペアリングが実行されたと判断され、算出されたターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度が確定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2002−236170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
すなわち、特許文献1に記載されたレーダ装置では、上述したように、切り替え前および切り替え後の変調信号の上昇区間および下降区間におけるビート信号のピーク周波数のペア{fu1,fd1}、{fu2,fd2}に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度が確定される。
【0024】
そのため、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができない場合には、ピーク周波数のペアを生成することができないので、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を得ることができないという問題がある。
【0025】
なお、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができない場合とは、送受信機やA/D変換器で発生するノイズ、機器のばらつきや温度特性によるオフセット電圧、送受信アンテナ間の結合、レドーム等による至近距離からの反射信号、他のターゲットからの反射信号、マルチパス信号等が、所望のターゲットで反射した反射信号に重畳し、この受信信号から得られるビート信号を周波数解析しても、周波数が所定範囲の部分に反映され、ピーク周波数として抽出できない場合等が考えられる。
【0026】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、誤ペアリングの発生を防止するとともに、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合であっても、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を得ることができるレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
この発明に係るレーダ装置は、4つの変調区間を有する送信信号を送信波として放射する送信部と、送信波がターゲットで反射した反射波を受信信号として受信する受信部と、送信信号と受信信号とをミキシングしてビート信号を生成するミキシング部と、ビート信号に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を算出するターゲット検出部と、を備え、ターゲット検出部は、周波数解析されたビート信号から、変調区間の各々におけるピーク周波数を抽出するピーク周波数抽出部と、ピーク周波数抽出部で抽出されたピーク周波数から、4つの変調区間のうち2つの変調区間のピーク周波数をペアリングして第1ペアを生成し、第1ペアの距離および相対速度をそれぞれ算出する第1ペア距離・相対速度算出部と、ピーク周波数抽出部で抽出されたピーク周波数から、上記2つの変調区間とは異なる2つの変調区間のピーク周波数をペアリングして第2ペアを生成し、第2ペアの距離および相対速度をそれぞれ算出する第2ペア距離・相対速度算出部と、第1ペアの距離および相対速度と第2ペアの距離および相対速度とがそれぞれ等しい場合に、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を確定するターゲット確定部と、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合に、ターゲット確定部において前回のサイクルで確定されたターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を推定するターゲット推定部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0028】
この発明に係るレーダ装置によれば、ターゲット検出部は、周波数解析されたビート信号から、4つの変調区間の各々におけるピーク周波数を抽出するピーク周波数抽出部と、ピーク周波数抽出部で抽出されたピーク周波数から、4つの変調区間のうち2つの変調区間のピーク周波数をペアリングして第1ペアを生成し、第1ペアの距離および相対速度をそれぞれ算出する第1ペア距離・相対速度算出部と、ピーク周波数抽出部で抽出されたピーク周波数から、上記2つの変調区間とは異なる2つの変調区間のピーク周波数をペアリングして第2ペアを生成し、第2ペアの距離および相対速度をそれぞれ算出する第2ペア距離・相対速度算出部と、第1ペアの距離および相対速度と第2ペアの距離および相対速度とがそれぞれ等しい場合に、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を確定するターゲット確定部と、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合に、ターゲット確定部において前回のサイクルで確定されたターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を推定するターゲット推定部とを有している。
そのため、誤ペアリングの発生を防止するとともに、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合であっても、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置における4つの変調区間を有する送信信号(制御電圧)の波形を例示する説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置におけるターゲット検出部の動作の前半部分を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置におけるターゲット検出部の動作の後半部分を示すフローチャートである。
【図5】(a)〜(d)は、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置における変調区間毎のビート周波数スペクトルを示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置におけるターゲット検出部の動作の後半部分を示すフローチャートである。
【図7】(a)〜(d)は、この発明の実施の形態2に係るレーダ装置における変調区間毎のビート周波数スペクトルを示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置におけるターゲット検出部の動作の後半部分を示すフローチャートである。
【図9】(a)〜(d)は、この発明の実施の形態3に係るレーダ装置における変調区間毎のビート周波数スペクトルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明に係るレーダ装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。なお、以下の実施の形態では、2つのターゲットが存在する場合を例に挙げて説明するが、これに限定されず、ターゲットの数は、3つ以上であってもよい。
【0031】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置を示すブロック構成図である。図1において、このレーダ装置は、ターゲット検出部1、制御電圧発生器2、電圧制御発振器3(VCO:Voltage Controlled Oscillator、以下「VCO3」と称する)、分配器4、送信アンテナ5(送信部)、受信アンテナ6(受信部)、ミキサ7(ミキシング部)、A/Dコンバータ8、および高速フーリエ変換器9(FFT:Fast Fourier Transform、以下「FFT9」と称する)を備えている。
【0032】
ターゲット検出部1は、2つのターゲット21、22までの距離およびターゲット21、22との相対速度を算出し、ターゲット情報として外部装置(図示せず)に出力する。ここで、ターゲット検出部1は、CPU(Central Processing Unit)とプログラムを格納したメモリとを有するマイクロプロセッサ(図示せず)で構成されている。
【0033】
制御電圧発生器2は、ターゲット検出部1の制御下で4つの変調区間を有する制御電圧(詳細については、後述する)を発生し、VCO3に出力する。VCO3は、制御電圧発生器2からの制御電圧に応じて、周波数が時間的に上昇変調および下降変調された送信信号を発生し、分配器4に出力する。分配器4は、VCO3からの送信信号を、送信アンテナ5およびミキサ7に分配して出力する。送信アンテナ5は、分配器4からの送信信号を、送信波W1として空間に放射する。
【0034】
受信アンテナ6は、送信波W1がターゲット21、22で反射した反射波W2を受信信号として受信し、ミキサ7に出力する。ミキサ7は、分配器4からの送信信号と受信アンテナ6からの受信信号とをミキシングし、ビート信号を生成して、A/Dコンバータ8に出力する。A/Dコンバータ8は、ミキサ7からのビート信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、FFT9に出力する。FFT9は、A/Dコンバータ8からのデジタル化されたビート信号に対して周波数解析を施し、周波数解析結果(ビート周波数スペクトル)をターゲット検出部1に出力する。
【0035】
続いて、ターゲット検出部1の詳細な構成について説明する。
ターゲット検出部1は、ピーク周波数抽出部10、第1ペア距離・相対速度算出部11、第2ペア距離・相対速度算出部12、ターゲット確定部13、今回ターゲット距離・相対速度推定部14、第1ペアピーク周波数推定部15、第2ペアピーク周波数推定部16、第1ペアピーク調査部17、第2ペアピーク調査部18、およびターゲット距離・相対速度算出部19を有している。ここで、今回ターゲット距離・相対速度推定部14、第1ペアピーク周波数推定部15、第2ペアピーク周波数推定部16、第1ペアピーク調査部17、第2ペアピーク調査部18、およびターゲット距離・相対速度算出部19は、ターゲット推定部20を構成している。
【0036】
ピーク周波数抽出部10は、FFT9からのビート信号の周波数解析結果に基づいて、ピーク周波数を抽出する。第1ペア距離・相対速度算出部11は、4つの変調区間のうち2つの変調区間のピーク周波数{fu1,fd1}をペアリングして第1ペアを生成し、第1ペアの距離R1および相対速度V1をそれぞれ算出して、ターゲット確定部13に出力する。第2ペア距離・相対速度算出部12は、上記2つの変調区間とは異なる2つの変調区間のピーク周波数{fu2,fd2}をペアリングして第2ペアを生成し、第2ペアの距離R2および相対速度V2をそれぞれ算出して、ターゲット確定部13に出力する。
【0037】
ターゲット確定部13は、第1ペア距離・相対速度算出部11で算出された第1ペアの距離R1および相対速度V1と、第2ペア距離・相対速度算出部12で算出された第2ペアの距離R2および相対速度V2とがそれぞれほぼ等しい場合に、ターゲット21、22までの距離Rおよびターゲット21、22との相対速度Vを確定し、ターゲット情報として外部装置に出力する。
【0038】
今回ターゲット距離・相対速度推定部14は、ターゲット確定部13において前回のサイクルで確定されたターゲット21、22までの距離ROおよびターゲット21、22との相対速度VOに基づいて、線形予測法を用いて、今回の距離REおよび相対速度VEをそれぞれ推定する。
【0039】
第1ペアピーク周波数推定部15は、今回ターゲット距離・相対速度推定部14で推定された距離REおよび相対速度VEに基づいて、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}を推定する。第2ペアピーク周波数推定部16は、今回ターゲット距離・相対速度推定部14で推定された距離REおよび相対速度VEに基づいて、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}を推定する。
【0040】
第1ペアピーク調査部17は、第1ペアピーク周波数推定部15で推定された第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}が、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かを調査する。第2ペアピーク調査部18は、第2ペアピーク周波数推定部16で推定された第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}が、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かを調査する。
【0041】
ターゲット距離・相対速度算出部19は、第1ペアピーク調査部17および第2ペアピーク調査部18において、第1ペアの2つのピーク周波数がピーク周波数として抽出され、第2ペアの一方のピーク周波数がピーク周波数として抽出され、第2ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されていないという調査結果が得られた場合に、第1ペアの2つのピーク周波数に基づいて、距離RNおよび相対速度VNを算出する。
【0042】
このとき、ターゲット確定部13は、ターゲット距離・相対速度算出部19で算出された距離RNおよび相対速度VNを、ターゲット21、22までの距離Rおよびターゲット21、22との相対速度Vと確定する。
【0043】
なお、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第1ペアピーク調査部17および第2ペアピーク調査部18において、第2ペアの2つのピーク周波数がピーク周波数として抽出され、第1ペアの一方のピーク周波数がピーク周波数として抽出され、第1ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されていないという調査結果が得られた場合に、第2ペアの2つのピーク周波数に基づいて、距離RNおよび相対速度VNを算出する。
【0044】
以下、図1、2を参照しながら、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の動作について説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置における4つの変調区間を有する送信信号(制御電圧)の波形を例示する説明図である。
【0045】
まず、ターゲット検出部1から制御電圧発生器2に対して変調開始命令が出力されると、制御電圧発生器2から、図2に示されるような、あらかじめ設定された4つの変調区間(例えば、三角状の第1上昇区間、第1下降区間、第2上昇区間および第2下降区間)を有する制御電圧が発生される。制御電圧発生器2で発生された制御電圧は、VCO3に入力され、VCO3からは、制御電圧に応じて変調区間毎に周波数変調された、4つの変調区間を有する送信信号が出力される。
【0046】
ここで、第1上昇区間および第1下降区間と第2上昇区間および第2下降区間とでは、繰り返し周波数fm、変調幅ΔFおよび中心周波数f0が互いに異なる送信信号がVCO3から出力される。すなわち、第1上昇区間および第1下降区間では、繰り返し周波数fm1、変調幅△F1および中心周波数f0_1の送信信号が出力され、第2上昇区間および第2下降区間では、繰り返し周波数fm2、変調幅△F2および中心周波数f0_2の送信信号が出力される。
【0047】
VCO3からの送信信号は、分配器4において、送信アンテナ5およびミキサ7に分配して出力される。送信アンテナ5に出力された送信信号は、送信波W1として空間に放射される。続いて、送信波W1がターゲット21、22で反射した反射波W2は、受信アンテナ6により受信信号として受信され、ミキサ7に出力される。ミキサ7に入力された受信信号は、分配器4からの送信信号とミキシングされてビート信号が生成され、A/Dコンバータ8に出力される。
【0048】
ミキサ7からのビート信号は、A/Dコンバータ8において、第1上昇区間、第1下降区間、第2上昇区間および第2下降区間のそれぞれについて、アナログ信号からデジタル信号に変換され、FFT9に出力される。A/Dコンバータ8からのデジタル化されたビート信号は、FFT9において、高速フーリエ変換を用いた周波数解析が施される。FFT9により算出された周波数解析結果(ビート周波数スペクトル)は、第1上昇区間、第1下降区間、第2上昇区間および第2下降区間のそれぞれについて、ターゲット検出部1に出力される。
【0049】
ターゲット検出部1内では、まず、ピーク周波数抽出部10において、FFT9からのビート信号の周波数解析結果に基づいて、ピーク周波数が抽出される。続いて、第1ペア距離・相対速度算出部11において、ピーク周波数抽出部10で抽出された第1上昇区間および第1下降区間のピーク周波数{fu1,fd1}が第1ペアとしてペアリングされ、第1ペアの距離R1および相対速度V1がそれぞれ算出される。また、第2ペア距離・相対速度算出部12において、ピーク周波数抽出部10で抽出された第2上昇区間および第2下降区間のピーク周波数{fu2,fd2}が第2ペアとしてペアリングされ、第2ペアの距離R2および相対速度V2がそれぞれ算出される。
【0050】
次に、ターゲット確定部13において、第1ペア距離・相対速度算出部11で算出された第1ペアの距離R1および相対速度V1と、第2ペア距離・相対速度算出部12で算出された第2ペアの距離R2および相対速度V2とがそれぞれほぼ等しい場合には、ターゲット21、22までの距離Rおよびターゲット21、22との相対速度Vが確定され、ターゲット情報として外部装置に出力される。
【0051】
このとき、今回ターゲット距離・相対速度推定部14では、ターゲット確定部13において前回のサイクルで確定されたターゲット21、22までの距離ROおよびターゲット21、22との相対速度VOに基づいて、線形予測法を用いて、今回の距離REおよび相対速度VEがそれぞれ推定される。
【0052】
続いて、第1ペアピーク周波数推定部15において、今回ターゲット距離・相対速度推定部14で推定された距離REおよび相対速度VEに基づいて、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}が推定される。また、第2ペアピーク周波数推定部16において、今回ターゲット距離・相対速度推定部14で推定された距離REおよび相対速度VEに基づいて、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}が推定される。
【0053】
次に、第1ペアピーク調査部17において、第1ペアピーク周波数推定部15で推定された第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}が、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かが調査される。また、第2ペアピーク調査部18において、第2ペアピーク周波数推定部16で推定された第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}が、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かが調査される。
【0054】
続いて、ターゲット距離・相対速度算出部19では、第1ペアピーク調査部17および第2ペアピーク調査部18において、第1ペアの2つのピーク周波数がピーク周波数として抽出され、第2ペアの一方のピーク周波数がピーク周波数として抽出され、第2ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されていないという調査結果が得られた場合に、第1ペアのピーク周波数に基づいて、距離RNおよび相対速度VNが算出される。
【0055】
このとき、ターゲット確定部13において、ターゲット距離・相対速度算出部19で算出された距離RNおよび相対速度VNが、ターゲット21、22までの距離Rおよびターゲット21、22との相対速度Vと確定される。
【0056】
なお、ターゲット距離・相対速度算出部19では、第1ペアピーク調査部17および第2ペアピーク調査部18において、第2ペアの2つのピーク周波数がピーク周波数として抽出され、第1ペアの一方のピーク周波数がピーク周波数として抽出され、第1ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されていないという調査結果が得られた場合に、第2ペアのピーク周波数に基づいて、距離RNおよび相対速度VNが算出される。
【0057】
以下、図3、4のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置におけるターゲット検出部1の動作について詳細に説明する。なお、この説明において、ターゲット21についての値には添え字aを付し、ターゲット22についての値には添え字bを付すこととする。
【0058】
まず、ピーク周波数抽出部10は、FFT9からのビート信号の周波数解析結果(ビート周波数スペクトル)に基づいて、ピーク周波数を抽出する(ステップS101)。具体的には、ピーク周波数抽出部10は、ビート周波数スペクトルの振幅に対して検出閾値を設定し、振幅が検出閾値以上であり、かつ振幅が前後のビート周波数スペクトルよりも大きなビート周波数スペクトルのビート周波数を、ピーク周波数として抽出する。
【0059】
ここで、図5を参照しながら、ピーク周波数抽出部10でのピーク周波数の抽出処理についてさらに説明する。図5(a)は、第1上昇区間のビート周波数スペクトルを示し、図5(b)は、第1下降区間のビート周波数スペクトルを示し、図5(c)は、第2上昇区間のビート周波数スペクトルを示し、図5(d)は、第2下降区間のビート周波数スペクトルを示し、図5(a)〜(d)の横軸および縦軸は、それぞれビート周波数および振幅を示す。
【0060】
図5において、ピーク周波数抽出部10は、第1上昇区間においてピーク周波数「fu1_a,fu1_b」を抽出し、第1下降区間において「fd1_a,fd1_b」を抽出し、第2上昇区間において「fu2_b」を抽出し、第2下降区間において「fd2_a,fd2_b」を抽出する。なお、図5は、第2上昇区間において、ターゲット21についてのピーク周波数を抽出できなかった場合を例示している。
【0061】
図3に戻って、第1ペア距離・相対速度算出部11は、ステップS101で抽出された第1上昇区間および第1下降区間のピーク周波数{fu1,fd1}をペアリングして第1ペアを生成し、第1ペアの距離R1および相対速度V1をそれぞれ算出する(ステップS102)。このとき、第1ペア距離・相対速度算出部11は、一般的なFM−CWレーダの原理に基づいて、すなわち上記式(7)、(8)を用いて、ピーク周波数{fu1,fd1}から第1ペアの距離R1および相対速度V1をそれぞれ算出する。
【0062】
図5の例では、第1ペア距離・相対速度算出部11は、第1ペアの2つのピーク周波数{fu1_a,fd1_a}から距離R1_aaおよび相対速度V1_aaを算出し、第1ペアの2つのピーク周波数{fu1_a,fd1_b}から距離R1_abおよび相対速度V1_abを算出し、第1ペアの2つのピーク周波数{fu1_b,fd1_a}から距離R1_baおよび相対速度V1_baを算出し、第1ペアの2つのピーク周波数{fu1_b,fd1_b}から距離R1_bbおよび相対速度V1_bbを算出する。
【0063】
続いて、第2ペア距離・相対速度算出部12は、ステップS101で抽出された第2上昇区間および第2下降区間のピーク周波数{fu2,fd2}をペアリングして第2ペアを生成し、第2ペアの距離R2および相対速度V2をそれぞれ算出する(ステップS103)。このとき、第2ペア距離・相対速度算出部12は、一般的なFM−CWレーダの原理に基づいて、すなわち上記式(7)、(8)を用いて、ピーク周波数{fu2,fd2}から第2ペアの距離R2および相対速度V2をそれぞれ算出する。
【0064】
図5の例では、第2ペア距離・相対速度算出部12は、第2ペアの2つのピーク周波数{fu2_b,fd2_a}から距離R2_baおよび相対速度V2_baを算出し、第2ペアの2つのピーク周波数{fu2_b,fd2_b}から距離R2_bbおよび相対速度V2_bbを算出する。
【0065】
次に、ターゲット確定部13は、第1ペア距離・相対速度算出部11で算出された第1ペアの距離R1および相対速度V1と、第2ペア距離・相対速度算出部12で算出された第2ペアの距離R2および相対速度V2とが、それぞれほぼ等しい組み合わせを、ターゲット21、22までの距離Rおよびターゲット21、22との相対速度Vとして確定する(ステップS104)。
【0066】
なお、ターゲット確定部13は、ターゲット21、22までの距離Rを、第1ペアの距離R1と第2ペアの距離R2との平均とし、ターゲット21、22との相対速度Vを、第1ペアの相対速度V1と第2ペアの相対速度V2との平均としてもよいし、第1ペアおよび第2ペアの何れかの距離および相対速度としてもよい。
【0067】
図5の例では、第1ペア距離・相対速度算出部11が、第1ペアの距離R1_aaおよび相対速度V1_aa、距離R1_abおよび相対速度V1_ab、距離R1_baおよび相対速度V1_ba、並びに距離R1_bbおよび相対速度V1_bbを算出し、第2ペア距離・相対速度算出部12が、第2ペアの距離R2_baおよび相対速度V2_ba、並びに距離R2_bbおよび相対速度V2_bbを算出している。
【0068】
このとき、ターゲット確定部13は、ターゲット22についての第1ペアの距離R1_bbおよび相対速度V1_bbと、ターゲット22についての第2ペアの距離R2_bbおよび相対速度V2_bbとが、それぞれほぼ等しいので、これらをターゲット22までの距離R_bおよびターゲット22との相対速度V_bとして確定する。
【0069】
しかしながら、ターゲット確定部13は、ターゲット21についての第1ペアの距離R1_aaおよび相対速度V1_aaと距離および相対速度のほぼ等しい第2ペアが存在しないので、ターゲット21までの距離R_aおよびターゲット21との相対速度V_aを確定することができない。これは、第2上昇区間において、ターゲット21についてのピーク周波数「fu2_a」を抽出できなかったので、第2ペアの距離R2_aaおよび相対速度V2_aaが算出できないからである。
【0070】
したがって、第1ペアの距離R1_aaおよび相対速度V1_aa、第1ペアの距離R1_abおよび相対速度V1_ab、第1ペアの距離R1_baおよび相対速度V1_ba、並びに第2ペアの距離R2_baおよび相対速度V2_baは、距離および相対速度のほぼ等しいペアが存在しないので、従来は誤ペアリングとして除外される。
【0071】
続いて、今回ターゲット距離・相対速度推定部14は、ターゲット確定部13において前回のサイクルで確定されたターゲットの個数Nをカウントして記憶する(ステップS105)。図5の例では、前回確定したターゲットの個数Nは、「2」とする。
【0072】
次に、今回ターゲット距離・相対速度推定部14は、ターゲット確定部13において前回確定されたターゲット21、22までの距離ROおよびターゲット21、22との相対速度VOに基づいて、一般的な線形予測法である次式(13)、(14)を用いて、今回の距離REおよび相対速度VEをそれぞれ推定する(ステップS106)。なお、式(13)、(14)において、Δtは前回から今回までの処理時間を示し、相対速度VOは接近方向が+を示す。
【0073】
RE=RO−VO・Δt ・・・(13)
VE=VO ・・・(14)
【0074】
図5の例では、今回ターゲット距離・相対速度推定部14は、前回確定されたターゲット21についての距離RO_aaおよび相対速度VO_aaと、ターゲット22についての距離RO_bbおよび相対速度VO_bbとに基づいて、ターゲット21についての今回の距離RE_aaおよび相対速度VE_aaと、ターゲット22についての今回の距離RE_bbおよび相対速度VE_bbとを推定する。
【0075】
続いて、第1ペアピーク周波数推定部15は、今回ターゲット距離・相対速度推定部14で推定された距離REおよび相対速度VEに基づいて、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}を推定する(ステップS107)。すなわち、第1ペアピーク周波数推定部15は、推定された距離REおよび相対速度VEに基づいて、上記式(11)、(12)を用いて、第1上昇区間および第1下降区間のピーク周波数{fue1,fde1}を推定する。
【0076】
図5の例では、第1ペアピーク周波数推定部15は、今回ターゲット距離・相対速度推定部14で推定されたターゲット21についての距離RE_aaおよび相対速度VE_aaに基づいて、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_a,fde1_a}を推定する。また、第1ペアピーク周波数推定部15は、今回ターゲット距離・相対速度推定部14で推定されたターゲット22についての距離RE_bbおよび相対速度VE_bbに基づいて、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_b,fde1_b}を推定する。
【0077】
次に、第2ペアピーク周波数推定部16は、今回ターゲット距離・相対速度推定部14で推定された距離REおよび相対速度VEに基づいて、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}を推定する(ステップS108)。すなわち、第2ペアピーク周波数推定部16は、推定された距離REおよび相対速度VEに基づいて、上記式(11)、(12)を用いて、第2上昇区間および第2下降区間のピーク周波数{fue2,fde2}を推定する。
【0078】
図5の例では、第2ペアピーク周波数推定部16は、今回ターゲット距離・相対速度推定部14で推定されたターゲット22についての距離RE_aaおよび相対速度VE_aaに基づいて、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_a,fde2_a}を推定する。また、第2ペアピーク周波数推定部16は、今回ターゲット距離・相対速度推定部14で推定されたターゲット22についての距離RE_bbおよび相対速度VE_bbに基づいて、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_b,fde2_b}を推定する。
【0079】
続いて、第1ペアピーク調査部17は、第1ペアピーク周波数推定部15で推定された第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}が、それぞれピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かを調査する(ステップS109)。具体的には、第1ペアピーク調査部17は、第1ペアピーク周波数推定部15で推定されたピーク周波数{fue1,fde1}と、ピーク周波数抽出部10で抽出されたピーク周波数との差が所定範囲内(例えば0)である場合に、ピーク周波数として抽出されていると判定する。
【0080】
図5の例では、第1ペアピーク周波数推定部15で推定されたターゲット21についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_a,fde1_a}は、ピーク周波数抽出部10によって両方がピーク周波数{fu1_a,fd1_a}として抽出されている。また、第1ペアピーク周波数推定部15で推定されたターゲット22についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_b,fde1_b}は、ピーク周波数抽出部10によって両方がピーク周波数{fu1_b,fd1_b}として抽出されている。
【0081】
次に、第2ペアピーク調査部18は、第2ペアピーク周波数推定部16で推定された第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}が、それぞれピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かを調査する(ステップS110)。具体的には、第2ペアピーク調査部18は、第2ペアピーク周波数推定部16で推定されたピーク周波数{fue2,fde2}と、ピーク周波数抽出部10で抽出されたピーク周波数との差が所定範囲内(例えば0)である場合に、ピーク周波数として抽出されていると判定する。
【0082】
図5の例では、第2ペアピーク周波数推定部16で推定されたターゲット21についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_a,fde2_a}は、ピーク周波数抽出部10によって一方のみがピーク周波数{fd2_a}として抽出されている。また、第2ペアピーク周波数推定部16で推定されたターゲット22についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_b,fde2_b}は、ピーク周波数抽出部10によって両方がピーク周波数{fu2_b,fd2_b}として抽出されている。
【0083】
続いて、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}の両方が、それぞれピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出され、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}の一方のみが、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かを判定する(ステップS111)。
【0084】
ステップS111において、Yesと判定された場合、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}の両方が、ピーク周波数抽出部10でそれぞれピーク周波数として抽出され、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}の一方のみが、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているので、ピーク周波数抽出部10で抽出された第1ペアの2つのピーク周波数{fu1,fd1}に基づいて、上記式(7)、(8)を用いて、ターゲット21、22までの距離RNおよびターゲット21、22との相対速度VNを算出する(ステップS112)。
【0085】
図5の例では、ターゲット21についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_a,fde1_a}の両方がそれぞれピーク周波数{fu1_a,fd1_a}として抽出され、ターゲット21についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_a,fde2_a}の一方のみがピーク周波数{fd2_a}として抽出されているので、ターゲット距離・相対速度算出部19は、抽出された第1ペアのピーク周波数{fu1_a,fd1_a}に基づいて、ターゲット21までの距離RN_aおよびターゲット21との相対速度VN_aを算出する。
【0086】
一方、ステップS111において、Noと判定された場合、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}の両方が、それぞれピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出され、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}の一方のみが、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かを判定する(ステップS113)。
【0087】
ステップS113において、Yesと判定された場合、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}の両方が、ピーク周波数抽出部10でそれぞれピーク周波数として抽出され、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}の一方のみが、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているので、ピーク周波数抽出部10で抽出された第2ペアの2つのピーク周波数{fu2,fd2}に基づいて、上記式(7)、(8)を用いて、ターゲット21、22までの距離RNおよびターゲット21、22との相対速度VNを算出する(ステップS114)。
【0088】
また、図5の例では、ターゲット22についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_b,fde1_b}の両方がそれぞれピーク周波数{fu1_b,fd1_b}として抽出され、ターゲット22についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_b,fde2_b}の両方がそれぞれピーク周波数{fu2_b,fd2_b}として抽出されているので、ステップS113において、Noと判定され、ステップS116(後述する)に移行する。
【0089】
次に、ターゲット確定部13は、ターゲット距離・相対速度算出部19で算出されたターゲット21、22までの距離RNおよびターゲット21、22との相対速度VNを、ターゲット21、22までの距離Rおよびターゲット21、22との相対速度Vと確定する(ステップS115)。図5の例では、ターゲット確定部13は、ターゲット距離・相対速度算出部19で算出されたターゲット21までの距離RN_aおよびターゲット21との相対速度VN_aを、ターゲット21までの距離R_aおよびターゲット21との相対速度V_aとして確定する。
【0090】
続いて、今回ターゲット距離・相対速度推定部14は、ステップS105でカウントした、前回のサイクルで確定されたターゲットの個数N分(図5の例では、「2」個分)の処理が終了したか否かを判定する(ステップS116)。
【0091】
ステップS116において、処理が終了した(すなわち、Yes)と判定された場合には、図4の処理を終了する。
一方、ステップS116において、処理が終了していない(すなわち、No)と判定された場合には、ステップS106に戻って、ステップS106〜ステップS116の処理が繰り返し実行される。
【0092】
以上のように、実施の形態1によれば、ターゲット推定部は、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合に、ターゲット確定部において前回のサイクルで確定されたターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を推定する。
また、ターゲット距離・相対速度算出部は、第1ペアピーク周波数推定部で推定された第1ペアの2つのピーク周波数が、ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、第2ペアピーク周波数推定部で推定された第2ペアの一方のピーク周波数が、ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、第2ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されていない場合に、第1ペアの2つのピーク周波数に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を算出する。
また、ターゲット距離・相対速度算出部は、第2ペアピーク周波数推定部で推定された第2ペアの2つのピーク周波数が、ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、第1ペアピーク周波数推定部で推定された第1ペアの一方のピーク周波数が、ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、第1ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されていない場合に、第2ペアの2つのピーク周波数に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を算出する。
そのため、誤ペアリングの発生を防止するとともに、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合であっても、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を得ることができる。
【0093】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、第1ペアピーク周波数推定部15で推定された第1ペアの2つのピーク周波数および第2ペアピーク周波数推定部16で推定された第2ペアの2つのピーク周波数のうち、何れか1つのピーク周波数がピーク周波数として抽出されていない場合(図5の場合)について説明した。この実施の形態2では、第1ペアの2つのピーク周波数または第2ペアの2つのピーク周波数が、ピーク周波数として抽出されていない場合(図7の場合)について説明する。なお、この発明の実施の形態2に係るレーダ装置を示すブロック構成図は、上記実施の形態1の図1と同様なので、説明を省略する。
【0094】
以下、図3、6のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態2に係るレーダ装置におけるターゲット検出部1の動作について詳細に説明する。なお、この説明において、ターゲット21についての値には添え字aを付し、ターゲット22についての値には添え字bを付すこととする。また、上記実施の形態1と同様の処理については、説明を省略する。
【0095】
まず、ピーク周波数抽出部10は、FFT9からのビート信号の周波数解析結果(ビート周波数スペクトル)に基づいて、ピーク周波数を抽出する(ステップS101)。具体的には、ピーク周波数抽出部10は、ビート周波数スペクトルの振幅に対して検出閾値を設定し、振幅が検出閾値以上であり、かつ振幅が前後のビート周波数スペクトルよりも大きなビート周波数スペクトルのビート周波数を、ピーク周波数として抽出する。
【0096】
ここで、図7を参照しながら、ピーク周波数抽出部10でのピーク周波数の抽出処理についてさらに説明する。図7(a)は、第1上昇区間のビート周波数スペクトルを示し、図7(b)は、第1下降区間のビート周波数スペクトルを示し、図7(c)は、第2上昇区間のビート周波数スペクトルを示し、図7(d)は、第2下降区間のビート周波数スペクトルを示し、図7(a)〜(d)の横軸および縦軸は、それぞれビート周波数および振幅を示す。
【0097】
図7において、ピーク周波数抽出部10は、第1上昇区間においてピーク周波数「fu1_a,fu1_b」を抽出し、第1下降区間において「fd1_a,fd1_b」を抽出し、第2上昇区間において「fu2_b」を抽出し、第2下降区間において「fd2_b」を抽出する。なお、図7は、第2上昇区間において、ターゲット21についてのピーク周波数を抽出できず、第2下降区間において、ターゲット21についてのピーク周波数を抽出できなかった場合を例示している。
【0098】
図3に戻って、ステップS102から図6のステップS108までの処理は、上記実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0099】
続いて、第1ペアピーク調査部17は、第1ペアピーク周波数推定部15で推定された第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}が、それぞれピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かを調査する(ステップS109)。具体的には、第1ペアピーク調査部17は、第1ペアピーク周波数推定部15で推定されたピーク周波数{fue1,fde1}と、ピーク周波数抽出部10で抽出されたピーク周波数との差が所定範囲内(例えば0)である場合に、ピーク周波数として抽出されていると判定する。
【0100】
図7の例では、第1ペアピーク周波数推定部15で推定されたターゲット21についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_a,fde1_a}は、ピーク周波数抽出部10によって両方がピーク周波数{fu1_a,fd1_a}として抽出されている。また、第1ペアピーク周波数推定部15で推定されたターゲット22についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_b,fde1_b}は、ピーク周波数抽出部10によって両方がピーク周波数{fu1_b,fd1_b}として抽出されている。
【0101】
次に、第2ペアピーク調査部18は、第2ペアピーク周波数推定部16で推定された第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}が、それぞれピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かを調査する(ステップS110)。具体的には、第2ペアピーク調査部18は、第2ペアピーク周波数推定部16で推定されたピーク周波数{fue2,fde2}と、ピーク周波数抽出部10で抽出されたピーク周波数との差が所定範囲内(例えば0)である場合に、ピーク周波数として抽出されていると判定する。
【0102】
図7の例では、第2ペアピーク周波数推定部16で推定されたターゲット21についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_a,fde2_a}は、ともにピーク周波数として抽出されていない。また、第2ペアピーク周波数推定部16で推定されたターゲット22についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_b,fde2_b}は、ピーク周波数抽出部10によって両方がピーク周波数{fu2_b,fd2_b}として抽出されている。
【0103】
続いて、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}の両方が、それぞれピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出され、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}の両方が、ピーク周波数として抽出されていないか否かを判定する(ステップS211)。
【0104】
ステップS211において、Yesと判定された場合、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}の両方が、ピーク周波数抽出部10でそれぞれピーク周波数として抽出され、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}の両方が、ピーク周波数として抽出されていないので、ピーク周波数抽出部10で抽出された第1ペアの2つのピーク周波数{fu1,fd1}に基づいて、上記式(7)、(8)を用いて、ターゲット21、22までの距離RNおよびターゲット21、22との相対速度VNを算出する(ステップS112)。
【0105】
図7の例では、ターゲット21についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_a,fde1_a}の両方がそれぞれピーク周波数{fu1_a,fd1_a}として抽出され、ターゲット21についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_a,fde2_a}の両方がピーク周波数として抽出されていないので、ターゲット距離・相対速度算出部19は、抽出された第1ペアのピーク周波数{fu1_a,fd1_a}に基づいて、ターゲット21までの距離RN_aおよびターゲット21との相対速度VN_aを算出する。
【0106】
一方、ステップS211において、Noと判定された場合、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}の両方が、それぞれピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出され、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}の両方が、ピーク周波数として抽出されていないか否かを判定する(ステップS213)。
【0107】
ステップS213において、Yesと判定された場合、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}の両方が、ピーク周波数抽出部10でそれぞれピーク周波数として抽出され、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}の両方が、ピーク周波数として抽出されていないので、ピーク周波数抽出部10で抽出された第2ペアの2つのピーク周波数{fu2,fd2}に基づいて、上記式(7)、(8)を用いて、ターゲット21、22までの距離RNおよびターゲット21、22との相対速度VNを算出する(ステップS114)。
【0108】
また、図7の例では、ターゲット22についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_b,fde1_b}の両方がそれぞれピーク周波数{fu1_b,fd1_b}として抽出され、ターゲット22についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_b,fde2_b}の両方がそれぞれピーク周波数{fu2_b,fd2_b}として抽出されているので、ステップS213において、Noと判定され、ステップS116に移行する。
【0109】
次に、ターゲット確定部13は、ターゲット距離・相対速度算出部19で算出されたターゲット21、22までの距離RNおよびターゲット21、22との相対速度VNを、ターゲット21、22までの距離Rおよびターゲット21、22との相対速度Vと確定する(ステップS115)。図7の例では、ターゲット確定部13は、ターゲット距離・相対速度算出部19で算出されたターゲット21までの距離RN_aおよびターゲット21との相対速度VN_aを、ターゲット21までの距離R_aおよびターゲット21との相対速度V_aとして確定する。
【0110】
続いて、今回ターゲット距離・相対速度推定部14は、ステップS105でカウントした、前回のサイクルで確定されたターゲットの個数N分(図7の例では、「2」個分)の処理が終了したか否かを判定する(ステップS116)。
【0111】
ステップS116において、処理が終了した(すなわち、Yes)と判定された場合には、図6の処理を終了する。
一方、ステップS116において、処理が終了していない(すなわち、No)と判定された場合には、ステップS106に戻って、ステップS106〜ステップS116の処理が繰り返し実行される。
【0112】
以上のように、実施の形態2によれば、ターゲット推定部は、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合に、ターゲット確定部において前回のサイクルで確定されたターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を推定する。
また、ターゲット距離・相対速度算出部は、第1ペアピーク周波数推定部で推定された第1ペアの2つのピーク周波数が、ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、第2ペアピーク周波数推定部で推定された第2ペアの2つのピーク周波数が、ともにピーク周波数として抽出されていない場合に、第1ペアの2つのピーク周波数に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を算出する。
また、ターゲット距離・相対速度算出部は、第2ペアピーク周波数推定部で推定された第2ペアの2つのピーク周波数が、ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、第1ペアピーク周波数推定部で推定された第1ペアの2つのピーク周波数が、ともにピーク周波数として抽出されていない場合に、第2ペアの2つのピーク周波数に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を算出する。
そのため、誤ペアリングの発生を防止するとともに、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合であっても、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を得ることができる。
【0113】
実施の形態3.
上記実施の形態1では、第1ペアピーク周波数推定部15で推定された第1ペアの2つのピーク周波数および第2ペアピーク周波数推定部16で推定された第2ペアの2つのピーク周波数のうち、1つのピーク周波数がピーク周波数として抽出されていない場合(図5の場合)について説明した。また、上記実施の形態2では、第1ペアの2つのピーク周波数または第2ペアの2つのピーク周波数が、ピーク周波数として抽出されていない場合(図7の場合)について説明した。
【0114】
この実施の形態3では、第1ペアの2つのピーク周波数のうち一方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されておらず、第2ペアの2つのピーク周波数のうち一方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されていない場合(図9の場合)について説明する。なお、この発明の実施の形態3に係るレーダ装置を示すブロック構成図は、上記実施の形態1の図1と同様なので、説明を省略する。
【0115】
以下、図3、8のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態3に係るレーダ装置におけるターゲット検出部1の動作について詳細に説明する。なお、この説明において、ターゲット21についての値には添え字aを付し、ターゲット22についての値には添え字bを付すこととする。また、上記実施の形態1と同様の処理については、説明を省略する。
【0116】
まず、ピーク周波数抽出部10は、FFT9からのビート信号の周波数解析結果(ビート周波数スペクトル)に基づいて、ピーク周波数を抽出する(ステップS101)。具体的には、ピーク周波数抽出部10は、ビート周波数スペクトルの振幅に対して検出閾値を設定し、振幅が検出閾値以上であり、かつ振幅が前後のビート周波数スペクトルよりも大きなビート周波数スペクトルのビート周波数を、ピーク周波数として抽出する。
【0117】
ここで、図9を参照しながら、ピーク周波数抽出部10でのピーク周波数の抽出処理についてさらに説明する。図9(a)は、第1上昇区間のビート周波数スペクトルを示し、図9(b)は、第1下降区間のビート周波数スペクトルを示し、図9(c)は、第2上昇区間のビート周波数スペクトルを示し、図9(d)は、第2下降区間のビート周波数スペクトルを示し、図9(a)〜(d)の横軸および縦軸は、それぞれビート周波数および振幅を示す。
【0118】
図9において、ピーク周波数抽出部10は、第1上昇区間においてピーク周波数「fu1_a,fu1_b」を抽出し、第1下降区間において「fd1_b」を抽出し、第2上昇区間において「fu2_b」を抽出し、第2下降区間において「fd2_a,fd2_b」を抽出する。なお、図9は、第1下降区間において、ターゲット21についてのピーク周波数を抽出できず、第2上昇区間において、ターゲット21についてのピーク周波数を抽出できなかった場合を例示している。
【0119】
図3に戻って、ステップS102から図8のステップS108までの処理は、上記実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0120】
続いて、第1ペアピーク調査部17は、第1ペアピーク周波数推定部15で推定された第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}が、それぞれピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かを調査する(ステップS109)。具体的には、第1ペアピーク調査部17は、第1ペアピーク周波数推定部15で推定されたピーク周波数{fue1,fde1}と、ピーク周波数抽出部10で抽出されたピーク周波数との差が所定範囲内(例えば0)である場合に、ピーク周波数として抽出されていると判定する。
【0121】
図9の例では、第1ペアピーク周波数推定部15で推定されたターゲット21についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_a,fde1_a}は、ピーク周波数抽出部10によって一方のみがピーク周波数{fu1_a}として抽出されている。また、第1ペアピーク周波数推定部15で推定されたターゲット22についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_b,fde1_b}は、ピーク周波数抽出部10によって両方がピーク周波数{fu1_b,fd1_b}として抽出されている。
【0122】
次に、第2ペアピーク調査部18は、第2ペアピーク周波数推定部16で推定された第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}が、それぞれピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かを調査する(ステップS110)。具体的には、第2ペアピーク調査部18は、第2ペアピーク周波数推定部16で推定されたピーク周波数{fue2,fde2}と、ピーク周波数抽出部10で抽出されたピーク周波数との差が所定範囲内(例えば0)である場合に、ピーク周波数として抽出されていると判定する。
【0123】
図9の例では、第2ペアピーク周波数推定部16で推定されたターゲット21についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_a,fde2_a}は、ピーク周波数抽出部10によって一方のみがピーク周波数{fd2_a}として抽出されている。また、第2ペアピーク周波数推定部16で推定されたターゲット22についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_b,fde2_b}は、ピーク周波数抽出部10によって両方がピーク周波数{fu2_b,fd2_b}として抽出されている。
【0124】
続いて、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}の一方のみが、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出され、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}の一方のみが、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているか否かを判定する(ステップS311)。
【0125】
ステップS311において、Yesと判定された場合、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第1ペアの2つのピーク周波数{fue1,fde1}の一方のみが、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出され、第2ペアの2つのピーク周波数{fue2,fde2}の一方のみが、ピーク周波数抽出部10でピーク周波数として抽出されているので、ピーク周波数抽出部10で抽出された第1ペアの2つのピーク周波数{fu1,fd1}および第2ペアの2つのピーク周波数{fu2,fd2}に基づいて、上記式(9)〜(12)を用いて、ターゲット21、22までの距離RNおよびターゲット21、22との相対速度VNを算出する(ステップS312)。
【0126】
このとき、ターゲット距離・相対速度算出部19は、第1上昇区間および第1下降区間では、繰り返し周波数fm1、変調幅△F1および中心周波数f0_1を用い、第2上昇区間および第2下降区間では、繰り返し周波数fm2、変調幅△F2および中心周波数f0_2を用いる。
【0127】
図9の例では、ターゲット21についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_a,fde1_a}の一方のみがピーク周波数{fu1_a}として抽出され、ターゲット21についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_a,fde2_a}の一方のみがピーク周波数{fd2_a}として抽出されているので、ターゲット距離・相対速度算出部19は、抽出された第1ペアのピーク周波数{fu1_a}と抽出された第2ペアのピーク周波数{fd2_a}に基づいて、ターゲット21までの距離RN_aおよびターゲット21との相対速度VN_aを算出する。
【0128】
具体的には、ターゲット距離・相対速度算出部19は、上記式(9)〜(12)から次式(15)〜(20)を導き、式(17)、(20)の連立方程式を解くことにより、ターゲット21までの距離RN_aおよびターゲット21との相対速度VN_aを算出する。
【0129】
M11=C/(4・fm1・ΔF1) ・・・(15)
M21=C/(2・f0_1) ・・・(16)
fu1_a=RN_a/M11−VN_a/M21 ・・・(17)
M12=C/(4・fm2・ΔF2) ・・・(18)
M22=C/(2・f0_2) ・・・(19)
fd2_a=RN_a/M12+VN_a/M22 ・・・(20)
【0130】
また、図9の例では、ターゲット22についての第1ペアの2つのピーク周波数{fue1_b,fde1_b}の両方がそれぞれピーク周波数{fu1_b,fd1_b}として抽出され、ターゲット22についての第2ペアの2つのピーク周波数{fue2_b,fde2_b}の両方がそれぞれピーク周波数{fu2_b,fd2_b}として抽出されているので、ステップS311において、Noと判定され、ステップS116に移行する。
【0131】
次に、ターゲット確定部13は、ターゲット距離・相対速度算出部19で算出されたターゲット21、22までの距離RNおよびターゲット21、22との相対速度VNを、ターゲット21、22までの距離Rおよびターゲット21、22との相対速度Vと確定する(ステップS115)。図9の例では、ターゲット確定部13は、ターゲット距離・相対速度算出部19で算出されたターゲット21までの距離RN_aおよびターゲット21との相対速度VN_aを、ターゲット21までの距離R_aおよびターゲット21との相対速度V_aとして確定する。
【0132】
続いて、今回ターゲット距離・相対速度推定部14は、ステップS105でカウントした、前回のサイクルで確定されたターゲットの個数N分(図9の例では、「2」個分)の処理が終了したか否かを判定する(ステップS116)。
【0133】
ステップS116において、処理が終了した(すなわち、Yes)と判定された場合には、図8の処理を終了する。
一方、ステップS116において、処理が終了していない(すなわち、No)と判定された場合には、ステップS106に戻って、ステップS106〜ステップS116の処理が繰り返し実行される。
【0134】
以上のように、実施の形態3によれば、ターゲット推定部は、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合に、ターゲット確定部において前回のサイクルで確定されたターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度に基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を推定する。
また、ターゲット距離・相対速度算出部は、第1ペアピーク周波数推定部で推定された第1ペアの一方のピーク周波数が、ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、第1ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されておらず、第2ペアピーク周波数推定部で推定された第2ペアの一方のピーク周波数が、ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、第2ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されていない場合に、第1ペアの抽出されたピーク周波数と第2ペアの抽出されたピーク周波数とに基づいて、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を算出する。
そのため、誤ペアリングの発生を防止するとともに、ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合であっても、ターゲットまでの距離およびターゲットとの相対速度を得ることができる。
【0135】
なお、上記実施の形態1〜3では、ターゲット21、22までの距離Rおよびターゲット21、22との相対速度Vを算出する方式として、一般的なFM−CWレーダの原理を用いた方式を示したが、これに限定されず、送信信号をパルス状に区切って変調したFM−パルスドップラーレーダ方式や、その他のレーダ方式を用いてもよい。
【0136】
また、上記実施の形態1〜3では、4つの変調区間として、三角状の第1上昇区間、第1下降区間、第2上昇区間および第2下降区間(第1上昇区間および第1下降区間では、繰り返し周波数fm1、変調幅△F1および中心周波数f0_1、第2上昇区間および第2下降区間では、繰り返し周波数fm2、変調幅△F2および中心周波数f0_2)を用いた場合を示したが、これに限定されない。変調区間は、区間毎に上昇または下降、繰り返し周波数fm、変調幅△Fまたは中心周波数f0が異なってもよいし、4つ以上の複数変調区間を有していてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 ターゲット検出部、2 制御電圧発生器、3 VCO、4 分配器、5 送信アンテナ(送信部)、6 受信アンテナ(受信部)、7 ミキサ(ミキシング部)、8 A/Dコンバータ、9 FFT、10 ピーク周波数抽出部、11 第1ペア距離・相対速度算出部、12 第2ペア距離・相対速度算出部、13 ターゲット確定部、14 今回ターゲット距離・相対速度推定部、15 第1ペアピーク周波数推定部、16 第2ペアピーク周波数推定部、17 第1ペアピーク調査部、18 第2ペアピーク調査部、19 ターゲット距離・相対速度算出部、20 ターゲット推定部、21、22 ターゲット、W1 送信波、W2 反射波。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの変調区間を有する送信信号を送信波として放射する送信部と、
前記送信波がターゲットで反射した反射波を受信信号として受信する受信部と、
前記送信信号と前記受信信号とをミキシングしてビート信号を生成するミキシング部と、
前記ビート信号に基づいて、前記ターゲットまでの距離および前記ターゲットとの相対速度を算出するターゲット検出部と、を備え、
前記ターゲット検出部は、
周波数解析された前記ビート信号から、前記変調区間の各々におけるピーク周波数を抽出するピーク周波数抽出部と、
前記ピーク周波数抽出部で抽出されたピーク周波数から、前記4つの変調区間のうち2つの変調区間のピーク周波数をペアリングして第1ペアを生成し、前記第1ペアの距離および相対速度をそれぞれ算出する第1ペア距離・相対速度算出部と、
前記ピーク周波数抽出部で抽出されたピーク周波数から、上記2つの変調区間とは異なる2つの変調区間のピーク周波数をペアリングして第2ペアを生成し、前記第2ペアの距離および相対速度をそれぞれ算出する第2ペア距離・相対速度算出部と、
前記第1ペアの距離および相対速度と前記第2ペアの距離および相対速度とがそれぞれ等しい場合に、前記ターゲットまでの距離および前記ターゲットとの相対速度を確定するターゲット確定部と、
前記ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合に、前記ターゲット確定部において前回のサイクルで確定された前記ターゲットまでの距離および前記ターゲットとの相対速度に基づいて、前記ターゲットまでの距離および前記ターゲットとの相対速度を推定するターゲット推定部と、を有する
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記ターゲット推定部は、
前記ターゲット確定部において前回のサイクルで確定された前記ターゲットまでの距離および前記ターゲットとの相対速度に基づいて、線形予測法を用いて、今回の距離および相対速度をそれぞれ推定する今回ターゲット距離・相対速度推定部と、
前記今回ターゲット距離・相対速度推定部で推定された前記今回の距離および相対速度に基づいて、第1ペアの2つのピーク周波数を推定する第1ペアピーク周波数推定部と、
前記今回ターゲット距離・相対速度推定部で推定された前記今回の距離および相対速度に基づいて、第2ペアの2つのピーク周波数を推定する第2ペアピーク周波数推定部と、
前記第1ペアピーク周波数推定部で推定された前記第1ペアの2つのピーク周波数が、前記ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出されているか否かを調査する第1ペアピーク調査部と、
前記第2ペアピーク周波数推定部で推定された前記第2ペアの2つのピーク周波数が、前記ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出されているか否かを調査する第2ペアピーク調査部と、
前記第1ペアピーク調査部および前記第2ペアピーク調査部の調査結果により、前記ビート信号のピーク周波数のうち、少なくとも1つのピーク周波数を抽出することができず、ピーク周波数のペアを生成することができない場合に、前記ターゲットまでの距離および前記ターゲットとの相対速度を算出するターゲット距離・相対速度算出部と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記ターゲット距離・相対速度算出部は、
前記第1ペアピーク周波数推定部で推定された前記第1ペアの2つのピーク周波数が、前記ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、
前記第2ペアピーク周波数推定部で推定された前記第2ペアの一方のピーク周波数が、前記ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、前記第2ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されていない場合に、
前記第1ペアの2つのピーク周波数に基づいて、前記ターゲットまでの距離および前記ターゲットとの相対速度を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記ターゲット距離・相対速度算出部は、
前記第2ペアピーク周波数推定部で推定された前記第2ペアの2つのピーク周波数が、前記ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、
前記第1ペアピーク周波数推定部で推定された前記第1ペアの一方のピーク周波数が、前記ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、前記第1ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されていない場合に、
前記第2ペアの2つのピーク周波数に基づいて、前記ターゲットまでの距離および前記ターゲットとの相対速度を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記ターゲット距離・相対速度算出部は、
前記第1ペアピーク周波数推定部で推定された前記第1ペアの2つのピーク周波数が、前記ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、
前記第2ペアピーク周波数推定部で推定された前記第2ペアの2つのピーク周波数が、ともにピーク周波数として抽出されていない場合に、
前記第1ペアの2つのピーク周波数に基づいて、前記ターゲットまでの距離および前記ターゲットとの相対速度を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記ターゲット距離・相対速度算出部は、
前記第2ペアピーク周波数推定部で推定された前記第2ペアの2つのピーク周波数が、前記ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、
前記第1ペアピーク周波数推定部で推定された前記第1ペアの2つのピーク周波数が、ともにピーク周波数として抽出されていない場合に、
前記第2ペアの2つのピーク周波数に基づいて、前記ターゲットまでの距離および前記ターゲットとの相対速度を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記ターゲット距離・相対速度算出部は、
前記第1ペアピーク周波数推定部で推定された前記第1ペアの一方のピーク周波数が、前記ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、前記第1ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されておらず、
前記第2ペアピーク周波数推定部で推定された前記第2ペアの一方のピーク周波数が、前記ピーク周波数抽出部でピーク周波数として抽出され、前記第2ペアの他方のピーク周波数がピーク周波数として抽出されていない場合に、
前記第1ペアの抽出されたピーク周波数と前記第2ペアの抽出されたピーク周波数とに基づいて、前記ターゲットまでの距離および前記ターゲットとの相対速度を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記第1ペアピーク調査部および前記第2ペアピーク調査部は、前記第1ペアピーク周波数推定部または前記第2ペアピーク周波数推定部で推定されたピーク周波数と、前記ピーク周波数抽出部で抽出されたピーク周波数との差が所定範囲内である場合に、ピーク周波数として抽出されていると判定することを特徴とする請求項1から請求項7までの何れか1項に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記所定範囲は、0近傍であることを特徴とする請求項8に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−83265(P2012−83265A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230678(P2010−230678)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】