説明

レールの複合研削方法

【課題】 1本のリニア案内レールの研削加工時間を短縮させる。
【解決手段】 門型研削装置100のワークテーブル12上に載置したプレファブリックレール(ワーク)を、移動されるワークに対し両側位置となるように配置した一対の総形砥石車16a,16aと移動されるワーク頭頂部wの研削開始位置に配置した総形砥石車17aが形成する空間を前記ワークwが通過するように前記ワークテーブルを移動させて通過させ、このワーク通過の際に回転する前記一対の総形砥石車でワークの両側部を研削加工し、回転する前記1個の総形砥石車でワークの頭頂部を研削加工して研磨されたレールを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属工作機械、半導体製造装置、測定装置のX,Y−ステージ等で使用されるリニアガイドのリニア案内レール、鉄道軌道レールなどのレールの頭頂部の軌道面を1個の総形(輪郭)砥石車で、リニア案内レールの両側部を一対の総形砥石車を用いて長尺状のレールの移動時に同時研削加工する複合研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミダイキャスト成型、エンジニアリング樹脂や熱硬化性樹脂のプルトルージョン成形、セラミックや鉄の鋳造成型、引き抜き成型等で予めレール状に成形したプレファブリック(ワーク)のレールの頭頂部の軌道面の研削加工と、レールの両側部研削加工は、それぞれ別々の研削装置を用いて行われていた。なお、レール業界では、研削加工とは言わず、レール研磨加工、レールドレス加工、もしくはレール削正加工と呼ばれることが多い。
【0003】
特開昭63−180437号公報(特許文献1)は、1個の総形(輪郭)砥石車を回転させながらワーク(リニア案内レール)の側面を移動させてワークにボール転動溝を研削加工する方法を図示する。
【0004】
また、特開2002−372044号公報(特許文献2)は、一対の総形(輪郭)砥石車を回転させながらワーク(リニア案内レール)の側面を移動させて、ワークにボール転動溝および測定用溝を一緒にワークの両側面に研削加工する方法を図示する。
【0005】
さらに、特開2003−287026号公報(特許文献3)は、成形砥石をワーク(リ
ニア案内レール)の頭頂部に押し付け、次いで、成形砥石をワークの頭頂部上を滑走させ
てリニア案内レールの頭頂部にスライダー転走溝とスケール取り付け溝を成形する方法およびそれに使用する成形砥石の構造を開示する。
【0006】
一方、特開平10−195805号公報(特許文献4)は、図3に示すように、鉄道軌道レール3の頭頂部に円筒(ロール)砥石車に換えて研磨プーリー8を押し付け、この回転する研磨プーリー8を頭頂部に走行させて頭頂部の軌道面を研磨する方法を開示する。
【0007】
また、特開2007−30123号公報(特許文献5)にクロスレール式工作機械の一例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−180437号公報の第6図
【特許文献2】特開2002−372044号公報の図1、図10
【特許文献3】特開2003−287026号公報の図2、図6
【特許文献4】特開平10−195805号公報の図1、図8
【特許文献5】特開2007−30123号公報の図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明者等は、レール(ワーク)の頭頂部の軌道面を1個の総形(輪郭)砥石車または円筒砥石車で、レールの両側部を一対の総形(輪郭)砥石車を用いてワーク(レール)の移動時に同時研削加工できればレールの研磨加工時間を短縮できることに着目し、(1)
研削加工時、ワークを移動させ、砥石軸は移動させずに決められた位置で研削加工を行う。(2)特許文献3記載の成形砥石を総形砥石車形状に変更する。(3)レールの頭頂部の軌道面研削加工用の前記総形砥石車または円筒砥石車、および、案内レールの側面を研削加工する一対の前記総形砥石車を門型(クロスレール式)研削装置に配置させることにより前記3個の砥石車により同時成形を可能ならしめることに想到した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1は、門型研削装置のワークテーブル上に載置したワーク(レール)を
、移動されるワークに対し両側位置となるように配置した一対の総形砥石車と移動されるワーク頭頂部の研削開始位置に配置した砥石車が形成する空間を前記ワークが通過するように前記ワークテーブルを移動させて通過させ、このワーク通過の際に回転する前記一対の総形砥石車でワークの両側部を研削加工し、回転する前記1個の砥石車でワークの頭頂部を研削加工してドレス(研磨)加工されたレールを製造することを特徴とする、リニア案内レールの複合研削方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
ワーク(被加工物であるプレファブリックレール)の頭頂部と両側部を同時に研削加工できるので、ワーク1個当たりの研削加工時間が短くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1はリニア案内レールを複合研削加工している状態を門型研削装置の前側から見た簡略図である。
【図2】図2はワークを複合研削加工している状態を門型研削装置の右側面側から見た簡略図である。
【図3】図3は鉄道軌道レールの頭頂部を研削加工している状態を示すレールの前側から見た簡略図である。(公知)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すクロスレール式研削装置100において、ワークテーブル12はベッド11上に設けられた案内ガイドレール13上を図示されていないサーボモータにより回転駆動するボールネジ14の回転駆動力により前記ワークテーブル12底面に設けられた螺合体15を移動させることによりワークテーブル12はクロスレール式研削装置100の機械方向(MD)に前進または後退可能となっている。このワークテーブル12上面には、治具または磁気チャックを用いて長尺のプレファブリックレール(ワーク)wが載置される。ワークの長手方向は、機械方向(MD)を向いて載置される。
【0014】
前記ワークwは、頭頂部w、脚部w、側部wを有する。
【0015】
前記ベッド11の空所には、ワークwの両側面を研削する総形(輪郭)砥石16aを備える一対の研削機構16,16が設けられる。研削機構16は、総形砥石16aを軸承する砥石軸16b、砥石固定フランジ16c、砥石軸回転用ビルトインモータ16m、ビルトインモータ用固定板16d、ビルトインモータ用固定板昇降用ガイドレール16e、ボールネジ16f、サーボモータ16g、ツールテーブル16t、ツールテーブル案内ガイド16r、ボールネジ16h、サーボモータ16iを備える。サーボモータ16g駆動によりボールネジ16fが回転駆動し、ビルトインモータ用固定板16d裏面に設けた螺合体(図示されていない)が昇降することによりビルトインモータ用固定板16dが固定板昇降用ガイドレール16eを上下移動する。そのビルトインモータ用固定板16dに備え付けられている総形砥石16aも上下移動するので、総形砥石16aのワークwに対する高さ位置を調整できる。
【0016】
サーボモータ16i駆動によりボールネジ16hが回転駆動し、ツールテーブル16t底面に設けた螺合体(図示されていない)が機械方向(MD)に移動することにより総形砥石16aも機械方向(MD)移動するので、総形砥石16aのワーク側面部wに対する距離を調整できる。
【0017】
クロスレール式研削装置100は、ベッド11の前後に立設された一対のコラム(図示されていない)上に横方向(CD)に設けたクロスレール18r,18r上を滑走するスライダー板17tの前面に総形砥石車17aを軸承する砥石軸17bを回転駆動させるビルトインモータ17mをバンド17dで固定した上下移動板17e、前記スライダー板17tの前面に設けた上下移動板案内レール17c,17c、サーボモータ17f駆動によりボールネジ17hが回転駆動することにより前記上下移動板17e裏面に設けた螺合体(図示されていない)が上下方向に移動することにより砥石車17aも上下移動可能となる頭頂部研削機構17を備える。なお、前記スライダー板17tは、サーボモータ18m駆動によりボールネジ18bが回転駆動することにより前記クロスレール18r,18r上を横方向(CD)に滑走する構造となっている。
【0018】
図2においては、総形砥石車17aの砥石軸17b垂直切断CD面と総形砥石16a垂直切断CD面がワークの頭頂部の一点で直交する同一垂直面となるように総形砥石車16aのワーク研削開始位置および総形砥石車17aのワーク研削開始位置を決めた。しかし、ワークの最終加工形状によっては、ワーク研削中に総形砥石16aと総形砥石車17aが衝突するケースもある。そのときは、総形砥石車17aの砥石軸17b垂直切断CD面と総形砥石16a垂直切断CD面間の距離が2〜30mmとなるよう、いずれか一方の砥石車のワーク研削開始位置をずらして研削加工が行われるようにする。
【0019】
また、図1ではワークwの例としてリニア案内レールを示したので、総形砥石車17aを示したが、ワークwが鉄道軌道レールであるときは、円筒状砥石車17aであってもよい。砥石素材としては、ダイヤモンド砥石、cBN砥石、SiC砥石が、結合材としてはビトリアイドボンド砥石、メタルボンド砥石、レジンボンド砥石などが利用できる。
【0020】
図1に示す門型複合研削装置100を用いてワーク(プレファブリックレール)をドレス加工するには、ワークテーブル12上に載置したワークwをワークテーブル12のMD方向への移動によりワークをMD方向に移動させ、この移動ワークwに対し両側位置となるように配置した一対の総形砥石車16a,16aと移動されるワーク頭頂部wの研削開始位置に配置した砥石車17aが形成する空間を前記ワークwが通過するように前記ワークテーブル12を移動させて通過させ、このワークw通過の際に回転速度1,500〜3,000min−1で回転する前記一対の総形砥石車16a,16aでワークの両側部を研削加工し、回転速度1,200〜3,000min−1で回転する前記1個の砥石車17aでワーク頭頂部wを研削加工してドレス(研磨)加工されたレールを製造する。ワークテーブル12の移動速度は1〜25mm/分が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
ワーク(被加工物であるプレファブリックレール)wの頭頂部wと両側部wを3個の砥石車16a,16a,17aで同時に研削(研磨)加工できるので、ワーク1個当たりの研削加工時間が短くなる。
【符号の説明】
【0022】
100 門型複合研削装置
w ワーク
ワーク頭頂部
ワーク側部
12 ワークテーブル
16a 総形砥石車
17a 砥石車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
門型研削装置のワークテーブル上に載置したワークを、移動されるワークに対し両側位置となるように配置した一対の総形砥石車と移動されるワーク頭頂部の研削開始位置に配置した砥石車が形成する空間を前記ワークが通過するように前記ワークテーブルを移動させて通過させ、このワーク通過の際に回転する前記一対の総形砥石車でワークの両側部を研削加工し、回転する前記1個の砥石車でワークの頭頂部を研削加工してドレス加工されたレールを製造することを特徴とする、リニア案内レールの複合研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−86210(P2013−86210A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229521(P2011−229521)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(391011102)株式会社岡本工作機械製作所 (161)
【Fターム(参考)】