説明

レール蓋で閉じられたコモンレールを備えた燃料供給装置

【課題】少なくとも片側端面がレール蓋で閉鎖されるコモンレールに少なくとも1つの蓄圧室を有し、そのレール蓋に燃料供給および燃料継続案内に関する全機能ユニットが組み入れられた内燃機関のシリンダに対する燃料噴射器に燃料供給するためのコモンレール式燃料供給装置において、機能ユニットへの接近を容易にしつつ、レール蓋上の機能ユニット、特に3ポート2位置切換弁および圧力配管における圧力振幅の減衰の利点を従来通りに保つ。
【解決手段】レール蓋(3)をシール要素(4)と制御ユニット(5)の形で2つのモジュールからなる2分割構造にし、シール要素(4)をコモンレールに気密結合で配置し、制御ユニット(5)を、シール要素(4)と供給すべき燃料噴射器(1)との間の圧力配管(2)の内部に任意に位置決め可能なように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも片側端面がレール蓋によって閉鎖されるコモンレールに少なくとも1つの蓄圧室を有し、そのレール蓋に燃料供給および燃料継続案内に関する全機能ユニットが組み入れられている内燃機関のシリンダに対する燃料噴射器に燃料供給するためのコモンレール式燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1の前文に記載の特徴を有するこの種燃料供給装置は、例えば特許文献1で公知である。
【0003】
その際、大形ディーゼルエンジンへのコモンレール方式の採用は、エンジン軸線に沿った全シリンダに対するコモンレールの必要長又は一定した蓄圧圧力のために問題があることが既に述べられている。その理由から既に、コモンレールは接続配管により互いに接続された少なくとも2つの別個のレールで実現され、該各レールが各々少なくとも2つの燃料噴射器に接続され、高圧ポンプで供給される。燃料供給および燃料継続案内に関する全機能ユニットが組み入れられたレール蓋を両側端面に設けることで、既存のエンジン形式へのコモンレール噴射装置の追加装備がかなり単純になる。
【0004】
上述の如く燃料量制限弁のような全機能ユニットがレール蓋に存在し、この結果モジュール式組立が簡単になり、かつサポートおよび管継手に起因する外力をモジュールで形成したレール蓋で受けるので、レールおよびコモンレール全体がその外力を受けることはなく、これによって、運転安全性が高まる。
【0005】
燃料は各レールから流量制限弁を介して複数の機能ユニットを含む上記のレール蓋に送られる。即ち、例えば直接切り換えられるか電磁式2ポート2位置切換弁を介して間接的に操作される3ポート2位置切換弁を介して、燃料噴射が制御される。燃料は3ポート2位置切換弁から公知のように圧力配管の継手に送られ、該継手を経て、例えば通常のニードル弁から成る各々の燃料噴射器に送られる。
【0006】
既述のように、この種のレール蓋は、少なくとも1つの3ポート2位置切換弁(事情によりこの3ポート2位置切換弁を制御するための2ポート2位置切換弁を含む)、燃料量制限弁、全管継手、コモンレール全体の内燃機関へのサポートおよび管状レール体の固定装置とシール装置を有している。
【0007】
ばね荷重形燃料噴射器と、レール蓋に配置された3ポート2位置切換弁との組合せにより、既存のエンジン形式へのコモンレール噴射装置の追加装備がかなり簡単になり、通常のコモンレール式噴射装置の機能ユニット、特に3ポート2位置切換弁で、特に燃料噴射終了時に生ずる圧力振動は、レール蓋のレールへの直接取付けによって防止できる。
【0008】
しかし、特に複雑に構成したレール蓋では、幾つかの部品に摩耗が生ずる虞がある。
【0009】
そのような事態が生じた際、通常の場合、レール蓋全体をレール全体と共に除去又は交換せねばならない。
【0010】
レール蓋の交換時、レールとレール蓋との間の高圧シール面が分離され、そのため、供用時に新たなシール試験が必要となるか、漏れが生ずる恐れがある。全体として、高圧複合体における従来のレール蓋の機能ユニットの組立/分解は非常に手間がかかる。
【特許文献1】独国特許出願公開第10157135号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、請求項1の前文に記載のコモンレール式燃料供給装置を、レール蓋の機能ユニット、特に3ポート2位置切換弁および圧力配管における圧力振幅の減衰の利点を従来通りに保ちつつ、上述したレール蓋の欠点を解消すべく改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、本発明に基づき請求項1に記載の特徴事項により解決される。
【0013】
本発明によれば、レール蓋をシール要素と制御ユニットの形をした2つのモジュールから2分割構造に、シール要素をレールに気密結合で配置し、制御ユニットをシール要素と供給すべき燃料噴射器との間の圧力配管に関して任意に位置決め可能なように形成したこと、即ち全機能ユニットを含む制御ユニットとレール蓋のシール要素との構造的分離と、両モジュールの空間的分離とにより、即ちレールと燃料噴射器との間での制御ユニットの位置決めにより、上述した特に燃料噴射終了時における圧力振幅の減衰のような積極的効果を従来通りに保つことで、上述の欠点が解消される。
【0014】
特に、制御ユニットとシール要素との空間的分離により、制御ユニットへの接近性を著しく改善し、もって、高圧複合体の組立/分解を非常に容易にできる。
【0015】
最終的には、本発明の枠内での制御ユニットの種々の取付け位置により、即ち圧力配管の直径が約7mmである場合にシール要素と制御ユニットとの空間的離隔寸法を0〜2000mmにすることで、制御ユニットはレールのシール要素に直接結合されるか、レールと燃料噴射器との間で圧力配管内に、或いは燃料噴射器に直接に又は燃料噴射器内に組み込まれ、有用な構造空間の最良の利用が達成される。
【0016】
制御ユニット又は該ユニットの機能ユニットを交換する際、どんな場合でも、シール要素をレールのシール面から分離する必要がなく、漏れが生ずる虞は少なくなる。
【0017】
上述したシール要素とレール蓋との特別な空間的分離処置により、2000mmの極端な空間的離隔寸法の場合でも、特に3ポート2位置切換弁および圧力配管における圧力振幅の減衰の利点は、制御ユニットが所定直径の圧力配管において相変わらずシール要素の十分近くに存在するために、従来通りに保たれる。
【0018】
更に、燃料供給装置の最良の液圧的調和が、圧力配管への液圧容積の前置接続又は後置接続により可能となり、この結果、燃料噴射経過の変形、多量噴射等ができる。
【発明の効果】
【0019】
これは、内燃機関にやさしい燃焼、該燃焼の過程の改善、燃料消費量の減少および有害物発生の減少等の種々の効果を生じる。
【0020】
更に、コモンレール、圧力配管、シール要素および制御ユニット並びに燃料噴射器を別個に最良に製造できる。その製造方式が向上し、その完成構造は、事情によっては圧力配管の分解なしに制御ユニットの分解を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下図示の実施例を参照し、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
レールは公知の如く組込み物付き又は組込み物なしの管状部品で形成され、図1〜4においてレール蓋3で端面を密封され、ほぼ内燃機関(図示せず)のシリンダヘッドの高さに配置されている。
【0023】
該各レールは、各々少なくとも1つの圧力配管2により、通常は電子制御式の少なくとも1つの燃料噴射器1に接続されている。
【0024】
有利な形態では、燃料供給すべき2つのシリンダ毎に1つのレールを設ける。シリンダ数が奇数なら、任意に位置決めできる1つのレールで1つのシリンダだけに燃料を供給する。エンジンの形式と用途に応じ、互いに接続された個々のレールは2〜6台の高圧ポンプによって充填される。
【0025】
上述のように、燃料は各レールから流量制限器を経て複数の機能ユニットを含むレール蓋3に送られる。即ち、直接切り換えられるか電磁式2ポート2位置切換弁で間接的に操作される3ポート2位置切換弁を経て、燃料噴射が制御される。個々の機能ユニットの動作原理は、当該技術分野の技術者が熟知しているので、ここでは説明しない。
【0026】
図1と2において、本発明に基づくレール蓋3は、別個の2つの部品、即ちシール要素4と、上述の全機能ユニットを備えた制御ユニット5とからなっている。
【0027】
各シール要素4はレール(図示せず)の端面を密封し、そのため複数のボルト7でレールの管状部品に固く結合されている。また、シール要素4に制御ユニット5が当てられ、本実施例では、制御ユニット5は同様にボルト8でシール要素4に固定されている。
【0028】
既述のように、制御ユニット5は、少なくとも1つの3ポート2位置切換弁(事情によってはこの3ポート2位置切換弁を制御する2ポート2位置切換弁を含む)、燃料量制限弁および全管継手を含み、他方で、シール要素4は、内燃機関へのレール全体のサポート6およびレールの管状レール体の固定装置とシール装置を有している。
【0029】
制御ユニット5は、図3および図4に示す如く、シール要素4と燃料噴射器1との間の圧力配管2(図4)、又は燃料噴射器1(図3)のいずれかに配置できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に基づく燃料供給装置は、あらゆる形式の大形ディーゼルエンジン、特に重油燃料式内燃機関に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】レールのシール要素に配置された本発明に基づくレール蓋の正面図。
【図2】2つのモジュール部品間の接合面を示した、図1の本発明に基づくレール蓋の側面図。
【図3】レールの本発明に基づくレール蓋の燃料噴射器への配置構造。
【図4】シール要素と燃料噴射器との間の圧力配管へのレールの本発明に基づくレール蓋の配置構造。
【符号の説明】
【0032】
1 燃料噴射器、2 圧力配管、3 レール蓋、4 シール要素、5 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力配管を介して内燃機関のシリンダに燃料を噴射するコモンレール式燃料供給装置であって、少なくとも片側端面がシール要素によって閉鎖されるコモンレール内に少なくとも1つの蓄圧室を含んでいるものにおいて、
シール要素がレール蓋(3)として形成され、該レール蓋(3)がシール要素(4)と制御ユニット(5)のモジュールから2分割構造に、シール要素(4)がコモンレールに固く気密結合され、制御ユニット(5)がシール要素(4)と供給すべき燃料噴射器(1)との間の圧力配管(2)に関して任意に位置決めされ、制御ユニット(5)に燃料供給および燃料継続案内に関する全機能ユニットが組み入れられるように形成されたことを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
コモンレールが、搬送配管により互いに接続された複数の別個のレールから構成され、該各レールに各々少なくとも1つの燃料噴射器が、シール要素(4)と制御ユニット(5)とから成るレール蓋(3)を介して接続されたことを特徴とする請求項1記載の燃料供給装置。
【請求項3】
各レールが各々2つの燃料噴射器(1)に供給するための貯蔵容積を有し、該容積の両側端面がシール要素(4)と制御ユニット(5)とから成る2分割構造のレール蓋(3)によって閉鎖されたことを特徴とする請求項2記載の燃料供給装置。
【請求項4】
レール蓋(3)の制御ユニット(5)が、シール要素(4)と燃料噴射器(1)との間の圧力配管(2)上で、燃料噴射器(1)の直前でシリンダヘッドに配置されたことを特徴とする請求項1から3の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項5】
レール蓋(3)の制御ユニット(5)がシール要素(4)に直接配置され、圧力配管(2)が制御ユニット(5)から出て燃料噴射器(1)で終えることを特徴とする請求項1から3の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項6】
制御ユニット(5)が、シール要素(4)と燃料噴射器(1)との間の圧力配管(2)に配置されたことを特徴とする請求項1から3の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項7】
レール蓋(3)の制御ユニット(5)が燃料噴射器(1)に組み入れられたことを特徴とする請求項1から3の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項8】
シール要素(4)と制御ユニット(5)との空間的離隔寸法が、圧力配管(2)の直径が約7mmである場合、0〜2000mmであることを特徴とする請求項1記載の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−153014(P2006−153014A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339784(P2005−339784)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ、ベーウントヴエー、デイーゼル、アクチエンゲゼルシヤフト (59)
【氏名又は名称原語表記】MAN B&W DIESEL AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】