説明

ロアアーム取り付け構造

【課題】サスペンション用フレームのアーム支持部にロアアームのアームに設けられたラバーブシュをボルトで取り付けるロアアーム取り付け構造を、サスペンション用フレームが軽合金のダイキャスト製の場合でも、貫通孔の周縁部や他方の壁部材などのアーム支持部が外力によって損傷を受ける虞が少なく低コストにする。
【解決手段】アーム支持部3Rの外側面とボルトB1の頭部または同ボルトB1に締め付けられるナットとの間に挟着された第1有孔受圧部材33、及び、アーム支持部3Rの内側面とラバーブシュ31の内筒31cとの間に挟着された第2有孔受圧部材34を備え、第1有孔受圧部材33と第2有孔受圧部材34との少なくとも一方が、アーム支持部3Rの貫通孔h1とボルトB1との間に係入されたカラー部材を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション用フレームのアーム支持部にロアアームのアームに設けられたラバーブシュをボルトで取り付けるロアアーム取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のロアアーム取り付け構造に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記されたロアアーム取り付け構造では、アーム支持部の互いに対向する一対の壁部材の内側にラバーブシュの内筒を配置し、一方の壁部材に形成された貫通孔に外側から挿通したボルトを内筒と他方の壁部材に形成された貫通孔とに挿通させ、他方の壁部材の外側に配置したナットと螺合させることで、アーム支持部の一対の壁部材とラバーブシュの内筒とをボルトで共締めしている。
【0003】
この構造では、少なくともサスペンション用フレームが鋼板などの板金製である場合は、一対の壁部材どうしの間の内寸と内筒の長さとの間に公差が存在しても、ボルトをナットに対して締め付ければ、アーム支持部が健全な状態のまま撓むことで、特に問題なく公差を解消することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−127892号公報(0035段落、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記されたロアアーム取り付け構造を、サスペンション用フレームがアルミニウムなど軽合金のダイキャストで形成されている事例に適用する場合には、一対の壁部材どうしの間の内寸と内筒の長さとの間に存在する公差を、ボルトの締め付けによって解消しようとすれば、アーム支持部に発生する局部的応力によって、特に貫通孔の周縁部などに亀裂が発生する虞があった。
【0006】
そこで、上記の問題を解決する方法として、図9に例示するように、アーム支持部3の一方の壁部材21に形成された貫通孔h1の内周面に環状のカラー38を装着し、他方の壁部材22に対するボルトB1の締め付けによってカラー38をボルトB1の頭部とラバーブシュ31の内筒31cとの間に挟着する構成が想定可能である。
【0007】
しかし、この想定された構成では、ラバーブシュ31から一方の壁部材21に加えられる応力は、カラー38の外周面を支持する貫通孔h1の内周面のみによって受け止められるため、大きな外力が貫通孔h1の周縁部の局部に集中し、ダイキャスト製の周縁部が損傷を受ける虞がある。また、この構成では、ロアアームからラバーブシュ31の軸心方向に沿って加えられる応力は、他方の壁部材に形成された第2の貫通孔に螺合されたボルトB1の脚部に集中するため、この他方の壁部材22も外力による損傷を受ける虞がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術及び想定された仮想構成によるロアアーム取り付け構造が与える課題に鑑み、車両の軽量化のためなどでサスペンション用フレームが軽合金のダイキャスト製とされている場合でも、貫通孔の周縁部や他方の壁部材などのアーム支持部が外力によって損傷を受ける虞の少ないロアアーム取り付け構造を可及的に低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるロアアーム取り付け構造の特徴構成は、
サスペンション用フレームのアーム支持部にロアアームのアームに設けられたラバーブシュをボルトで取り付けるロアアーム取り付け構造であって、
前記アーム支持部の外側面と前記ボルトの頭部との間に挟着された第1有孔受圧部材、及び、前記アーム支持部の内側面と前記ラバーブシュの内筒との間に挟着された第2有孔受圧部材を備え、
前記第1有孔受圧部材と前記第2有孔受圧部材との少なくとも一方は、前記アーム支持部の貫通孔と前記ボルトとの間に係入されたカラー部材を構成している点にある。
【0010】
上記の特徴構成によるロアアーム取り付け構造では、第2有孔受圧部材がラバーブシュの内筒に押付けられるようにボルトを締め付けると、アーム支持部の内側面とラバーブシュの内筒との間の間隙が第2有孔受圧部材によって埋められた状態で、アーム支持部の貫通孔の周縁部がボルトの軸心方向に沿って第1有孔受圧部材と第2有孔受圧部材との間に挟着され、同時に、第1有孔受圧部材と第2有孔受圧部材との少なくとも一方からなるカラー部材がアーム支持部の貫通孔とボルトとの間に係入された状態となる。
【0011】
すなわち、アーム支持部の内側面とラバーブシュの内筒の間の間隙が第2有孔受圧部材によって埋められた状態となるので、ボルトの締め付けによってアーム支持部が損傷を来たすような変形を受けることなく、ラバーブシュの軸心方向に関する軸力(ラバーブシュの内筒を軸心に沿って締め付ける圧縮力)が確保される。また、ラバーブシュから加えられる応力が、カラー部材の外周面だけでなく、貫通孔の周縁部を軸心方向から挟み込む第1有孔受圧部材と第2有孔受圧部材とをも介してアーム支持部に伝えられるため、同応力が貫通孔の周縁部における広い領域に分散され、ダイキャスト製の周縁部でも損傷を受け難い。
【0012】
その結果、サスペンション用フレームが軽合金などのダイキャスト製である場合でも、外力によってアーム支持部の貫通孔付近などが損傷を受け難くなる。また、一対のアーム支持部の間の間隙とラバーブシュの内筒の長さとの間の公差を機械加工によってなくす必要がなくなるため、サスペンション用フレームを鉄(板金)製としたロアアーム取り付け構造にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両の前部構造を示す側面図である。
【図2】サスペンションメンバを示す平面図である。
【図3】ロアアーム取り付け構造を示す断面図である。
【図4】図3の要部を示す分解斜視図である。
【図5】別実施形態によるロアアーム取り付け構造を示す断面図である。
【図6】図5の実施形態で用いる有孔受圧部材を示す斜視図である。
【図7】更に別の実施形態によるロアアーム取り付け構造を示す断面図である。
【図8】図7の実施形態で用いる有孔受圧部材を示す斜視図である。
【図9】ロアアーム取り付け構造の比較例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1はステアリングによって操向される左右の前輪50を備えた車両に用いられる前輪用のサスペンション構造を示す。このサスペンション構造は、車幅方向に配設されたサスペンションメンバ1、及び、サスペンションメンバ1の左右両端付近に上下揺動自在に取り付けられた左右のロアアーム30を有する。
【0015】
サスペンションメンバ1は、車両の前部で車両前後方向に延設された左右一対のサイドメンバ20を橋渡しするように配置されている。
左右の各ロアアーム30の遊端30c付近には、左右の前輪50を支持するステアリングナックル(不図示)及びショックアブソーバ(不図示)が取り付けられ、前輪50は前方又は上方に配置された横置きエンジン(不図示)によって駆動される。ロアアーム30の基端側は二股状に分岐されて、前側連結部30aと後側連結部30bとを有する。
【0016】
(アーム支持部の概略構成)
このサスペンションメンバ1は、溶融アルミニウム合金を金型内へ射出、凝固させて得られた一体型のダイキャスト製であり、図2に示すように、ロアアーム30を上下揺動自在に支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部3R,3L,4R,4L、及び、これら4つのアーム支持部3R,3L,4R,4Lの間で前後左右方向に一体的に延出された板状本体2を有する。
【0017】
図1に例示するように、サスペンションメンバ1の前側のアーム支持部3R,3Lは、ロアアーム30の前側連結部30aを支持するために、下方と側方が開放された略直方体状の函状を呈している。前側連結部30aはアーム支持部3R,3Lに収納された後、アーム支持部3R,3Lに形成された前後の貫通孔h1,h2に挿通されたボルトB1によって上下揺動自在に取り付けられる。
【0018】
サスペンションメンバ1の後側のアーム支持部4R,4Lは、ロアアーム30の後側連結部30bを支持するために、前方と側方が開放された側面視で概してコの字状の断面形状を備えている。後側連結部30bは、アーム支持部4R,4Lに収納された後、アーム支持部4R,4Lに形成された上下の貫通孔に挿通されたボルトB2によって、サイドメンバ20から下方に突出した連結部20aと共に結合される。
【0019】
(サイドメンバの構成)
図1に例示するように、サスペンションメンバ1の左右両端部付近には、車両のサイドメンバ20を連結するための前部ステー部5R,5Lと後部ステー部6R,6Lとが一体的に形成されている。前部ステー部5R,5Lは、前側の左右一対のアーム支持部3R,3Lの後端付近から斜め上方外側に延設されている。後部ステー部6R,6Lは、後側の左右一対のアーム支持部4R,4Lの後端付近から更に後向きに延設されている。左右のサイドメンバ20は、前部ステー部5R,5L及び後部ステー部6R,6Lの各先端に形成された貫通孔を介してボルトB3,B4で連結される。
【0020】
(ブラケット部の構成)
板状本体2の上面の車両幅方向に関してアーム支持部3R,3L,4R,4Lの内側の位置には、スタビライザ40を取り付けるための一対の第1ブラケット部7R,7Lが、その更に内側には、ラックアンドピニオン式などのステアリング部材(不図示)を取り付けるための一対の第2ブラケット部8R,8Lが上向きに膨出形成されている。
スタビライザ40は、第1ブラケット部7R,7Lの取り付け座に一対のボルトB5で連結されたホルダ40Hによって、車両の幅方向に延びた軸心廻りで回転自在に支持される。また、スタビライザ40の両端部はロアアーム30又はステアリングナックル(不図示)に接続される。
さらに、板状本体2の上面の車両幅方向に関してほぼ中央の位置には、前端がエンジンの取り付け補助部60に連結されたトルクロッド65の後端65Aを取り付けるための第3ブラケット部9がやはり上向きに膨出形成されている。
【0021】
(上下フランジの構成)
4つのアーム支持部3R,3L,4R,4Lの設置箇所を除く板状本体2の外周部位の全てには、補強用の上下フランジ2Fが一体的に備えられている。上下フランジ2Fは、板状本体2の外周部位から上方に延出された上方フランジ部と、板状本体2の外周部位から下方に延出された下方フランジ部とを備えることで、上下双方向に延出されている。
【0022】
具体的には、上下フランジ2Fが設置されている領域は、右前側のアーム支持部3Rと左前側のアーム支持部3Lとの間で左右方向に延設された前側外周部位E1と、右後側のアーム支持部4Rと左後側のアーム支持部4Lとの間で左右方向に延設された後側外周部位E2と、右前側のアーム支持部3Rと右後側のアーム支持部4Rとの間で前後方向に延設された右側外周部位E3と、左前側のアーム支持部3Lと左後側のアーム支持部4Lとの間で前後方向に延設された左側外周部位E4となる。
【0023】
(アーム支持部の詳細な構成)
ここで、アーム支持部3R,3L,4R,4Lにロアアーム30の基端側にある前後の各連結部30a,30bを、各連結部30a,30bに設けられたラバーブシュ31を用いてボルトB1,B2で取り付けるロアアーム取り付け構造について説明する。図3は、右前側のアーム支持部3Rを概して車両の前後方向に延びる鉛直な平面で切った断面を示す。
【0024】
図3に示すように、前側連結部30aに設けられたラバーブシュ31は、前側連結部30aに固定された鉄製の外筒31aと、外筒31aの内面に固定されたゴム製のスリーブ31bと、スリーブ31bの内面に固定された鉄製の内筒31cとを有する。ロアアーム30の取り付け時には内筒31cにボルトB1が挿通される。
【0025】
アーム支持部3Rを構成する前方寄りの縦壁部21にはボルトB1を概して前後方向で挿通可能な第1貫通孔h1が概して前後向きに形成されており、アーム支持部3Rを構成する後方寄りの縦壁部22には雌ネジを備えた第2貫通孔h2が形成されており、ここにボルトB1の脚部に形成された雄ネジを螺合可能となっている。
【0026】
アーム支持部3Rにおけるロアアーム取り付け構造では3個の鉄製のカラーが用いられる。これら3個のカラーとは、縦壁部21の外側面とボルトB1の頭部との間に配置される第1カラー33(第1有孔受圧部材の一例)、前方寄りの縦壁部21の内側面とラバーブシュ31の内筒31cの前端との間に配置される第2カラー34(第2有孔受圧部材の一例)、及び、ラバーブシュ31の内筒31cの後端と後方寄りの縦壁部22との間に配置される第3カラー35である。
【0027】
第1カラー33は、第1貫通孔h1の内部に挿通可能なスリーブ部33A(カラー部材)と、スリーブ部33Aの前端に形成された大径のフランジ部33Bと、共通の貫通孔33Hを備え、スリーブ部33Aとフランジ部33Bの周方向における一端には径方向に延びたスリット33Sが形成されている。同様に、第2カラー34もまた、第1貫通孔h1の内部に挿通可能なスリーブ部34A(カラー部材)と、スリーブ部34Aの前端に形成された大径のフランジ部34Bと、共通の貫通孔34Hを備え、スリーブ部34Aとフランジ部34Bの周方向における一端には径方向に延びたスリット34Sが形成されている。
第3カラー35は貫通孔35Hを備え、外径が一定な単純な円盤状を呈し、その周方向における一端にも径方向に延びたスリット35Sが形成されている。
【0028】
アーム支持部3Rを取り付ける際には、先ず、第1カラー33のスリーブ部33Aをスリット33Sが狭まるように縮径させた状態で前方寄りの縦壁部21の外側から第1貫通孔h1に係入し、同様に、第2カラー34のスリーブ部34Aをスリット34Sが狭まるように縮径させた状態で前方寄りの縦壁部21の内側から第1貫通孔h1に係入し、第3カラー35をスリット35Sが狭まるように縮径させた状態で後方寄りの縦壁部22に形成された環状凹部に係入する。
【0029】
第1貫通孔h1に係入が完了された第1カラー33と第2カラー34、及び、前記環状凹部に係入された第3カラー35の各貫通孔33H,34H,35Hは、所定の縮径作用によって、ボルトB1の外径を僅かに上回る内径を備えている。
ここで、第2カラー34と第3カラー35との間にラバーブシュ31の内筒31cを配置し、第1カラー33の前方からボルトB1を挿通し、ボルトB1の後端の雄ネジ部を第2貫通孔h2の雌ネジに螺合させる。
【0030】
尚、第2カラー34と第3カラー35との間にラバーブシュ31の内筒31cを配置する際に、第2カラー34の後端面と第3カラー35の前端面との間の間隙が、内筒31cの両端を僅かな抵抗を示しながら受け入れるように、フランジ部34Bが適切な厚さを持つ第2カラー34を選択、或いは、事前に第2カラー34のフランジ部34Bの厚さを機械加工などで調整しておくと良い。
【0031】
引き続き、ボルトB1を締め付けていくと、最終的に、第3カラー35はラバーブシュ31の内筒31cの後端と後方寄りの縦壁部22の内側面との間に挟着され、第2カラー34のフランジ部34Bはラバーブシュ31の内筒31cの前端と前方寄りの縦壁部21の内側面との間に挟着され、第1カラー33のフランジ部33Bは前方寄りの縦壁部21の外側面とボルトB1の頭部との間に挟着され、且つ、第1カラー33のスリーブ部33Aの後端と第2カラー34のスリーブ部34Aの前端との間には1mm前後のクリアランスが形成された状態で取り付けが完了する。
【0032】
その結果、ボルトB1の頭部が、第1カラー33のフランジ部33Bを介して、前方寄りの縦壁部21の外側面に適切に押付けられ、同時に、ラバーブシュ31の内筒31cの前端と前方寄りの縦壁部21の内側面との間の間隙が第2カラー34のフランジ部34Bによって埋められることで、ラバーブシュ31の軸心方向に関する軸力が確保される。
また、第1カラー33のスリーブ部33Aと第2カラー34のスリーブ部34Aとは、第1貫通孔h1に直列状に係入されることで、いずれも軸心方向の全長に亘って第1貫通孔h1の内周面に当接され、ボルトB1の頭部に隣接する脚部は、それら第1カラー33と第2カラー34の内周面の軸心方向に関する全長で径方向に支持される。しかも、ラバーブシュ31から加えられる応力は、スリーブ部33Aとスリーブ部34Aの外周面だけでなく、第1貫通孔h1の周縁部を軸心方向から挟み込むフランジ部33B(第1有孔受圧部材の一例)及びフランジ部34B(第2有孔受圧部材の一例)をも介して縦壁部21に伝えられる。したがって、ラバーブシュ31から加えられる応力が第1貫通孔h1の周縁部における広い領域に分散され、ダイキャスト製の周縁部でも損傷を受け難い。
【0033】
〔別実施形態〕
〈1〉第1カラー33や第2カラー34は、周方向で少数の部材に分割した形態で実施することも可能であるが、スリーブ部33A,34Aを第1貫通孔h1に係入する際に、同スリーブ部の外径が適当な抵抗を示す圧入を余儀なくされる寸法となる形態とすれば更に好適である。第3カラー35についても同様である。
【0034】
〈2〉図5及び図6に示す別実施形態のように、第1カラー33と第2カラー34の各フランジ部33B,34Bどうしが、弾性を備えた屈曲された板状の連結部36によって一体的に連結されたU字状の取り付け補助部材70を用いてもよい。この形態の場合、板状の連結部36を開き気味に変形させながら、各スリーブ部33A,34Aを前方寄りの縦壁部21の外側及び内側から第1貫通孔h1にほぼ同時に係入させることができる。この実施形態でも、各スリーブ部33A,34Aと各フランジ部33B,34Bとの周方向における一端には径方向に延びたスリット33S,34Sが形成されている。
【0035】
〈3〉図7及び図8に例示する別実施形態のように、図5及び図6に示す取り付け補助部材70から一方のスリーブ部33A,34Aが略された取り付け補助部材71を用いてもよい。すなわち、図7及び図8に例示する取り付け補助部材71では、ラバーブシュ31の内筒31cの前端と前方寄りの縦壁部21の内側面との間に挟着されるフランジ部34Bにのみ、第1貫通孔h1に係入されるスリーブ部34Aが一体的に設けられている。尚、第1貫通孔h1に係入されるスリーブ部34Aの軸心方向の長さは、図5及び図6に示す2つのスリーブ部33A,34Aの長さの和に近くなるように設定されている。
【0036】
ここでも、フランジ部33Bの後端面とスリーブ部34Aの前端面との間に1mm程度の間隙が維持されるようにスリーブ部34Aの長さを設定することで、ボルトB1の頭部が、連結部36から延設されたフランジ部33Bを介して、前方寄りの縦壁部21の外側面に押付けられ、同時に、ラバーブシュ31の内筒31cの前端と前方寄りの縦壁部21の内側面との間の間隙がフランジ部34Bによって埋められることで、ラバーブシュ31の軸心方向に関する軸力が確保される。また、第1貫通孔h1とボルトB1の外周面との間に、図6における2つのスリーブ部33A,34Aを足し合わせた長さのスリーブ部34Aが係入され、且つ、縦壁部21が2つのフランジ部33B,34Bの間に挟着されるため、ラバーブシュ31から加えられる応力が広い領域に分散された形で縦壁部21に伝えられる。
尚、この別実施形態では、縦壁部21の内側から第1貫通孔h1に係入されるスリーブ部34Aとフランジ部34Bとにのみ縮径用のスリット34Sが形成されている。
【0037】
〈4〉図7に例示する取り付け補助部材71の取り付け姿勢を前後で逆転させた形態で実施してもよい。すなわち、この別実施形態では、フランジ部34Bと一体的に形成されたスリーブ部34Aは、スリット34Sが狭まるように縮径させた状態で、前方寄りの縦壁部21の外側から第1貫通孔h1に係入される。他方、スリーブ部を略されたフランジ部33Bは、ラバーブシュ31の内筒31cの前端と前方寄りの縦壁部21の内側面との間に挟着される。
【0038】
ここでも、ボルトB1の頭部が、連結部36から延設されたフランジ部34Bを介して、前方寄りの縦壁部21の外側面に押付けられ、同時に、ラバーブシュ31の内筒31cの前端と前方寄りの縦壁部21の内側面との間の間隙がフランジ部33Bによって埋められることで、ラバーブシュ31の軸心方向に関する軸力が確保される。また、ラバーブシュ31から加えられる応力は、スリーブ部34Aの外周面だけでなく、第1貫通孔h1の周縁部を軸心方向から挟み込むフランジ部33B(第1有孔受圧部材の一例)及びフランジ部34B(第2有孔受圧部材の一例)をも介して縦壁部21に伝えられる。したがって、ラバーブシュ31から加えられる応力が第1貫通孔h1の周縁部における広い領域に分散され、ダイキャスト製の周縁部でも損傷を受け難い。
【0039】
〈5〉図5、図6、図7、図8に記された第1カラー33と第2カラー34が連結部36を備えない分割式とされた形態で実施してもよい。
【0040】
〈6〉第2貫通孔h2に雌ネジを設けず、後方寄りの縦壁部22の外側面に当て付けたナットに、第2貫通孔h2から後方に突出させたボルトB1の雄ネジ部を螺合させる形態を採ってもよい。
【0041】
〈7〉ロアアーム30の前側連結部30aを右前側のアーム支持部3Rに取り付ける場合を例として本発明の実施形態を説明したが、本発明によるロアアーム取り付け構造は、左右の前方のアーム支持部3R,3Lばかりでなく、ロアアーム30の後側連結部30bを左右の後側のアーム支持部4R,4Lに対して上下の貫通孔に挿通されたボルトB2によって取り付ける場合にも適用可能である。
【0042】
〈8〉本発明によるロアアーム取り付け構造は、サスペンションメンバに一体的に設けられたアーム支持部に対してロアアームのラバーブシュを取り付ける場合に限定されない。本発明によるロアアーム取り付け構造は、例えば、サスペンションメンバの左右端部などに別体として設けられているサブフレームに設けられたアーム支持部にロアアームのアームのラバーブシュを取り付ける場合にも適用可能である。
【0043】
〈9〉第1カラー33、第2カラー34、第3カラー35のいずれか又は全てからスリットを省略した形態で実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
サスペンション用フレームのアーム支持部にロアアームのアームに設けられたラバーブシュをボルトで取り付けるロアアーム取り付け構造を、車両の軽量化のためなどでサスペンション用フレームが軽合金のダイキャスト製とされている場合でも、貫通孔の周縁部や他方の壁部材などのアーム支持部が外力によって損傷を受ける虞の少ないロアアーム取り付け構造を低コストで提供する技術として利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 サスペンションメンバ
2 板状部材
3L 左前側アーム支持部(アーム支持部)
3R 右前側アーム支持部(アーム支持部)
4L 左後側アーム支持部(アーム支持部)
4R 右後側アーム支持部(アーム支持部)
21 縦壁部(前方寄り)
22 縦壁部(後方寄り)
30 ロアアーム
30a 前側連結部
30b 後側連結部
31 ラバーブシュ
31a 外筒
31b スリーブ(ゴム製)
31c 内筒
33 第1カラー(第1有孔受圧部材)
33A スリーブ部(カラー部材)
33B フランジ部
33H 貫通孔
34 第2カラー(第2有孔受圧部材)
34A スリーブ部(カラー部材)
34B フランジ部
34H 貫通孔
35 第3カラー
35H 貫通孔
36 連結部
B1 ボルト
B2 ボルト
h1 第1貫通孔
h2 第2貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンション用フレームのアーム支持部にロアアームのアームに設けられたラバーブシュをボルトで取り付けるロアアーム取り付け構造であって、
前記アーム支持部の外側面と前記ボルトの頭部または同ボルトに締め付けられるナットとの間に挟着された第1有孔受圧部材、及び、前記アーム支持部の内側面と前記ラバーブシュの内筒との間に挟着された第2有孔受圧部材を備え、
前記第1有孔受圧部材と前記第2有孔受圧部材との少なくとも一方は、前記アーム支持部の貫通孔と前記ボルトとの間に係入されたカラー部材を構成しているロアアーム取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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