説明

ロアバックトリム

【課題】荷物の衝突や引っ掛かりなどによるフィンの変形および破損を防止することができる、ロアバックトリムを提供すること。
【解決手段】ロアバックトリム1のルーバー22は、車幅方向に延びる板状に形成され、上下方向に間隔を空けて互いに平行をなし、車室側に向けて上方に傾斜するように設けられた複数のフィン23,24,25と、フィン23,24,25の上面からその上面と交差する方向に突出し、車幅方向に延びる突出部29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のロアバックトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
バックドアを備える自動車の車体の後部は、たとえば、左右に間隔を空けて対向配置されるデッキサイドパネルと、左右のデッキサイドパネルの後端下部間に架設され、バックドアの下方に配置されるロアバックパネルとを一体的に備えている。左右のデッキサイドパネルに挟まれた空間が車室であり、ロアバックパネルおよびデッキサイドパネルの車室側の面は、それぞれロアバックトリムおよびデッキサイドトリムにより覆われている。
【0003】
この種の自動車において、ロアバックトリムやデッキサイドトリムのようなトリムパネルに開口を形成し、その開口を開閉自在なリッドに、トリムパネルの内外を連通させるルーバーを設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
ルーバーは、複数の細長い薄板状のフィンを備えている。フィンは、それぞれ水平方向に延び、互いに間隔を空けて平行に設けられている。これにより、各フィンの間にスリット状の通気口が形成されており、各通気口を介して、車室内の空気がトリムパネルの外側へ流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3259608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィンが薄板状であるので、車室に荷物を出し入れする時に、荷物がフィンに衝突したり、荷物がフィンに引っ掛かったりすると、フィンが変形または破損することがある。上記の提案に係る構成では、各フィンが車室側に向けて下方に傾斜しているので、車室から荷物を取り出す時に、荷物がフィンにとくに引っ掛かりやすい。
本発明の目的は、荷物の衝突や引っ掛かりなどによるフィンの変形および破損を防止することができる、ロアバックトリムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、ルーバーが形成されたロアバックトリムにおいて、前記ルーバーは、車幅方向に延びる板状に形成され、上下方向に間隔を空けて互いに平行をなし、車室側に向けて上方に傾斜するように設けられた複数のフィンと、前記フィンの一方面から当該一方面と交差する方向に突出し、車幅方向に延びる突出部とを備えていることを特徴としている。
【0007】
このロアバックトリムでは、ルーバーの各フィンは、車室側に向けて上方に傾斜するように設けられている。これにより、車室から荷物を取り出す時に、荷物をフィンの傾斜方向に沿って取り出すことができ、荷物がフィンに引っ掛かることを防止することができる。その結果、荷物の引っ掛かりによるフィンの変形および破損を防止することができる。
また、突出部は、フィンの一方面からその一方面と交差する方向に突出し、フィンの長手方向に沿って延びている。
【0008】
突出部がフィンの長手方向に沿って延びていることにより、フィンの剛性が増す。そのため、車室に荷物を出し入れする時に、フィンに荷物が衝突しても、フィンが変形または破損することを防止することができる。
各フィンが車室側に向けて上方に傾斜していると、ロアバックトリムを見下ろした時に、ロアバックトリムの外側に配置されているロアバックパネル(ロアバックインナーパネル)が各フィン間から見えるという懸念がある。ロアバックパネルが見えると、見栄えが良くない。突出部がフィンの一方面からその一方面と交差する方向に突出しているので、ロアバックトリムを見下ろした時の視線を突出部により遮ることができる。そのため、各フィンの間からロアバックパネルが見えることを防止できる。
【0009】
前記ロアバックトリムでは、前記突出部が前記フィンの上面から突出していることが好適である。
このようなロアバックトリムでは、突出部がフィンの上面から突出しているので、車室から荷物を取り出す時に、荷物が突出部に引っ掛かることを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ルーバーの各フィンが車室側に向けて上方に傾斜するように設けられ、各フィンに突出部が一体的に形成されているため、荷物の衝突や引っ掛かりなどによるフィンの変形および破損を防止することができる。また、ロアバックトリムを見下ろした時の視線を突出部により遮ることができ、各フィンの間からロアバックパネルが見えることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るロアバックトリムの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す切断線II−IIにおけるロアバックトリムの断面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施形態(突出部がフィンの下面に形成された形態)に係るロアバックトリムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るロアバックトリムの斜視図である。図2は、図1に示す切断線II−IIにおけるロアバックトリムの断面図である。図1,2では、ロアバックトリム以外の部材が仮想線で示されている。
ロアバックトリム1は、自動車の車室2の最後部に取り付けられる。
【0013】
自動車の車体は、板金製であり、その後部は、車幅方向に間隔を空けて対向配置されるデッキサイドパネル(図示せず)と、デッキサイドパネルの各後端部の下部間に架設されるロアバックパネル3(図2参照)と、デッキサイドパネルの各下端部間に架設されるフロアパネル4(図1参照)と、デッキサイドパネルの各上端部間に架設されるルーフパネル(図示せず)とを一体的に備えている。フロアパネル4上の空間が車室2であり、ロアバックトリム1は、ロアバックパネル3の車室2側の面を覆うように取り付けられる。
【0014】
また、各デッキサイドパネルの車室2側の面は、それぞれデッキサイドトリム5(図1参照)により覆われている。
図1に示すように、フロアパネル4の後部には、凹部6が形成されている。この凹部6は、スペアタイヤや工具などを収容するための空間であり、凹部6上には、車室2の後部の床面をなすデッキボード(図示せず)が配置される。
【0015】
ロアバックパネル3の上端部とルーフパネルの後端部との間には、図2に示すように、バックドア開口7が形成されている。そして、車体には、バックドア開口7を開閉するためのバックドア8が取り付けられている。バックドア8の上端部は、ヒンジ(図示せず)を介して、ルーフパネルの後端部に連結されている。これにより、バックドア8は、ヒンジを中心に、下端部がロアバックパネル3の上端部に対向する閉姿勢と、下端部がロアバックパネル3の上端部に対して後上側に持ち上がった開姿勢とに回動可能である。バックドア8が開姿勢となる状態で、車室2の内外がバックドア開口7を介して連通する。そのため、バックドア開口7を介して、車室2に荷物などを出し入れすることができる。
【0016】
図2に示すように、ロアバックパネル3は、相対的に外側(後側)に配置されるロアバックアウターパネル9と、相対的に内側(前側)に配置されるロアバックインナーパネル10とを備えている。
ロアバックアウターパネル9は、閉姿勢のバックドア8の下端部に対して車室2側から対向する位置から下方に向けて延び、後方に屈曲し、さらに下方に屈曲して延びている。
【0017】
ロアバックインナーパネル10は、ロアバックアウターパネル9の上端部に対して車室2側(前側)から対向する上端部11と、上端部11の下端から車室2側に向かって斜め下方に傾斜する上面部12と、上面部12の前端から下方に延びる前面部13と、前面部13の下端から車室2側と反対側(後側)に向かって斜め下方に傾斜する下面部14とを一体的に備えている。下面部14の下端部は、ロアバックアウターパネル9の下端部に接合されている。
【0018】
前面部13の上下方向の中央部には、左右方向に延びる矩形状の開口15が形成されている。
ロアバックパネル3の上端部には、ゴム製のドアシール16が設けられている。ドアシール16は、ロアバックアウターパネル9およびロアバックインナーパネル10の各上端部を一括して挟み込むように上方から取り付けられている。これにより、バックドア8を閉じたときに、バックドア8の下端部がドアシール16に圧接され、ロアバックパネル3とバックドア8との間がシールされる。
【0019】
ロアバックトリム1は、樹脂製であり、図1,2に示すように、ロアバックインナーパネル10の上面部12および前面部13を車室2側から覆うように設けられている。より具体的には、ロアバックトリム1は、ロアバックインナーパネル10の上面部12と対向し、その上面部12を被覆する上面被覆部17と、ロアバックインナーパネル10の前面部13と対向し、その前面部13を被覆する前面被覆部18とを一体的に備えている。
【0020】
図1に示すように、上面被覆部17は、車幅方向に延びている。上面被覆部17の車幅方向の両端部は、それぞれデッキサイドトリム5に接続されている。
上面被覆部17の車幅方向の中央部19は、上方に向けて膨出している。中央部19の車室2側と反対側には、バックドア8を閉姿勢で保持するためのストライカ(図示せず)が設けられている。
【0021】
前面被覆部18は、上面被覆部17と車幅方向に同じ幅を有する板状に形成され、上下方向に延び、その上端部が緩やかに湾曲して上面被覆部17の前端部に接続されている。前面被覆部18の両端部は、それぞれデッキサイドトリム5に接続されている。
上面被覆部17の下面には、複数の取付具20が突設されている。また、前面被覆部18には、複数の取付具21が突設されている。取付具21は、たとえば、後述するフィン23の車幅方向の両端部の下方であって、フィン24,25の車幅方向の両側に、それぞれ配置されている。取付具20,21の先端部は、弾性変形可能な断面菱形に形成されている。
【0022】
ロアバックインナーパネル10には、各取付具20,21に対応して貫通孔(図示せず)が形成されている。その貫通孔に各取付具20,21の先端部が挿入されることにより、ロアバックトリム1は、ロアバックインナーパネル10に取り付けられ、ロアバックインナーパネル10と間隔を空けた状態で、ロアバックインナーパネル10に支持される。
そして、前面被覆部18には、ロアバックインナーパネル10の前面部13に形成された開口15と対向する位置に、ルーバー22が設けられている。
【0023】
ルーバー22は、前面被覆部18において、車幅方向に延びる略矩形状の開口として区画され、車幅方向に延びる薄板状の複数のフィン23,24,25を備えている。フィン23,24,25は、前面被覆部18に一体的に形成されている。そして、フィン23,24,25は、それぞれ車室2側に向かうに従って上方に傾斜し、上下方向に間隔を空けて互いに平行をなしている。各フィン23,24,25の傾斜方向の長さは、互いに等しく、フィン23,24,25は、上下方向に重なるように、前後方向に同じ位置に形成されている。また、下方のフィン24,25が各取付具21の間で挟まれるように配置されていることから、最上のフィン23は、各取付具21の上方まで延びるように、その下方のフィン24,25よりも車幅方向に長く形成されている。
【0024】
各フィン23,24,25の上下には、スリット状の通気口26が前面被覆部18を貫通して形成されている。各通気口26は、フィン23,24,25と同じ幅を有している。
また、前面被覆部18には、上延設部27が最上の通気口26の上端縁から延設されている。上延設部27は、車室2側と反対側に向けて下方に傾斜し、フィン23,24,25と平行をなしている。
【0025】
さらに、下延設部28が最下の通気口26の下端縁から延設されている。下延設部28は、最下の通気口26の下端縁から車室2側と反対側に向けて下方に傾斜し、途中部で屈曲して、先端部が上方に傾斜する、断面略L字状に形成されている。下延設部28の先端部は、最下のフィン24の下端部に対して、フィン24の傾斜方向に間隔を空けて対向している。
【0026】
そして、各フィン23,24,25の車室2側と反対側の面、つまり各フィン23,24,25の上面の傾斜方向の中央部には、その上面と直交する方向に突出する突出部29が形成されている。突出部29は、車幅方向に延びる薄板状をなし、フィン23,24,25の車幅方向の全幅にわたって、フィン23,24,25と一体的に形成されている。最上のフィン23に形成された突出部29の先端部は、上延設部27の先端部に対して、上延設部27の傾斜方向に間隔を空けて対向している。また、フィン24,25に形成された突出部29の先端部は、それぞれフィン23,24の下端部に対して、フィン23,24の傾斜方向に間隔を空けて対向している。
【0027】
このようなルーバー22がロアバックトリム1に形成されているので、車室2内の空気を、各通気口26およびロアバックインナーパネル10に形成された開口15を介して、ロアバックアウターパネル9およびロアバックインナーパネル10の間に流出させることができる。
ルーバー22の各フィン23,24,25は、車室2側に向けて上方に傾斜するように設けられている。これにより、車室2から荷物を取り出す時に、荷物をフィン23,24,25の傾斜方向に沿って取り出すことができ、荷物がフィン23,24,25に引っ掛かることを防止することができる。その結果、荷物の引っ掛かりによるフィン23,24,25の変形および破損を防止することができる。
【0028】
また、突出部29がフィン23,24,25の長手方向に沿って延びていることにより、フィン23,24,25の剛性が増す。そのため、車室2に荷物を出し入れする時に、フィン23,24,25に荷物が衝突しても、フィン23,24,25が変形または破損することを防止することができる。
各フィン23,24,25が車室2側に向けて上方に傾斜していると、ロアバックトリム1を見下ろした時に、ロアバックトリム1の外側に配置されているロアバックインナーパネル10が通気口26から見えるという懸念がある。ロアバックインナーパネル10が見えると、見栄えが良くない。突出部29がフィン23,24,25の上面からその上面と直交する方向に突出しているので、ロアバックトリム1を見下ろした時の視線を突出部29により遮ることができる。そのため、通気口26からロアバックインナーパネル10が見えることを防止できる。
【0029】
また、突出部29がフィン23,24,25の上面から突出しているので、車室2から荷物を取り出す時に、荷物が突出部29に引っ掛かることを防止することができる。
図3は、本発明の他の実施形態に係るロアバックトリムの断面図である。図3において、図2に示す各部に相当する部分には、それらの各部に付した参照符号と同一の参照符号を付している。そして、以下では、図3に示すロアバックトリムについて、図2に示すロアバックトリムとの相違点のみを説明する。
【0030】
図2に示すロアバックトリム1では、突出部29が各フィン23,24,25の上面から突出している。これに対し、図3に示すロアバックトリム1では、突出部29が各フィン23,24,25の車室2側の面、つまり下面から突出している。
フィン23,24に形成された突出部29の先端部は、それぞれフィン24,25の上端部に対して、突出部29の突出方向に間隔を空けて対向している。最下のフィン25に形成された突出部29の先端部は、最下の通気口26の上端縁に対して、突出部29の突出方向に間隔を空けて対向している。
【0031】
また、図3に示すロアバックトリム1では、上延設部27の下面の下端部寄りの位置に、下面と直交する方向に突出する突出部30が形成されている。突出部30は、車幅方向に延びる薄板状をなし、上延設部27の車幅方向の全幅にわたって、上延設部27と一体的に形成されている。突出部30の先端部は、最上のフィン23の上端部に対して、突出部30の突出方向に間隔を空けて対向している。
【0032】
図3に示すロアバックトリム1においても、図1に示すロアバックトリム1と同様の作用効果を奏することができる。
なお、突出部29は、フィン23,24,25の上面または下面と直交する方向に限らず、フィン23,24,25の上面または下面と交差する方向に突出していれば、上述の作用効果を奏することができる。
【0033】
また、3枚のフィン23,24,25を備える構成を取り上げたが、フィンの枚数は、2枚であってもよいし、4枚以上であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ロアバックトリム
22 ルーバー
23 フィン
24 フィン
25 フィン
29 突出部
30 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーバーが形成されたロアバックトリムにおいて、
前記ルーバーは、
車幅方向に延びる板状に形成され、上下方向に間隔を空けて互いに平行をなし、車室側に向けて上方に傾斜するように設けられた複数のフィンと、
前記フィンの一方面から当該一方面と交差する方向に突出し、車幅方向に延びる突出部とを備えていることを特徴とする、ロアバックトリム。
【請求項2】
前記突出部が前記フィンの上面から突出していることを特徴とする、請求項1に記載のロアバックトリム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−131640(P2011−131640A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290874(P2009−290874)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】