説明

ロッカ部構造及び構造体

【課題】屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用しても断面変形を防止又は抑制することができるロッカ部構造及び構造体を得る。
【解決手段】ロッカインナパネル40には、上壁部42及び側壁部44に丸孔48、50が貫通形成されており、連結棒52は、中間部52Aが丸孔48、50間を直線状に結ぶ位置に配置されると共に、両端部52B、52Cが丸孔48、50を貫通して当該丸孔48、50の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによってロッカインナパネル40側に固定されているので、ロッカインナパネル40の屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用しても、ロッカインナパネル40の断面変形が防止又は抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲形状のパネルを備えたロッカ部構造及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部の下端部には、サイドシル(ロッカ)が車両前後方向を長手方向として配置されている。このようなサイドシル断面内には、側面衝突時のサイドシルの断面変形を抑制するために、バルクヘッド状のブレースが設けられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−7021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような構造では、側面衝突時にサイドシルの屈曲角度を大きくする方向(所謂、断面を開かせる方向)に荷重が作用してブレースの上端とサイドシルの上壁内面とが離れてしまうと、サイドシルの断面変形を効果的に抑制できない場合がある。また、ブレースの上端フランジとサイドシルの上壁内面とを車両上下方向に重ねて溶接しても、側面衝突時にはこれらを剥離する方向に荷重が作用するので、サイドシルの断面変形が必ずしも効果的に抑制されない可能性がある。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用しても断面変形を防止又は抑制することができるロッカ部構造及び構造体を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明のロッカ部構造は、車体側部の下端部に車両前後方向を長手方向として配置されたロッカ本体における車幅方向内側の部位を構成し、車両正面視で車幅方向外側が開放された断面ハット形状に形成されて車幅方向内側へ膨出した膨出部を備え、前記膨出部を構成する三つの平板状の壁部のうちいずれか二つに貫通孔が貫通形成されたロッカインナパネルと、前記貫通孔間を直線状に結ぶ位置に配置される中間部を備えると共に、両端部が前記貫通孔を貫通して当該貫通孔の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによって前記ロッカインナパネル側に固定される連結部材と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明のロッカ部構造によれば、ロッカ本体が車体側部の下端部に車両前後方向を長手方向として配置されており、ロッカインナパネルがロッカ本体における車幅方向内側の部位を構成して車両正面視で車幅方向外側が開放された断面ハット形状に形成されているので、例えば、側面衝突時にはロッカ本体より車両上方側における車幅方向内側への衝突荷重によって、ロッカ本体がピラー側から引張力を受け、ロッカインナパネルの屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用する。
【0007】
ここで、ロッカインナパネルには、車幅方向内側へ膨出した膨出部を構成する三つの平板状の壁部のうちいずれか二つに貫通孔が貫通形成されており、連結部材は、中間部が貫通孔間を直線状に結ぶ位置に配置されると共に、両端部が貫通孔を貫通して当該貫通孔の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによってロッカインナパネル側に固定されているので、ロッカインナパネルの屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用しても、ロッカインナパネルの断面変形が防止又は抑制される。
【0008】
すなわち、ロッカインナパネルの屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用すると、ロッカインナパネルは、連結部材の両端部側を貫通孔からすり抜けさせる方向に変位しようとするが、連結部材の両端部が貫通孔の周囲の面方向に沿って折り曲げられているので、連結部材の両端部側の貫通孔からのすり抜けが抑えられる。このとき、ロッカインナパネルによって連結部材にはその両端部側へ引っ張られる荷重が作用するが、連結部材は、その両端部がロッカインナパネル側に前記折り曲げによって固定されているので、ロッカインナパネル側からの引っ張り荷重に抗しながら連結部材による掛け渡しの線長(掛け渡し長さ)を維持しようとする。このため、ロッカインナパネルの断面変形が防止又は抑制される。
【0009】
請求項2に記載する本発明のロッカ部構造は、請求項1記載の構成において、前記連結部材の両端部は、鋭角方向に折り曲げられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載する本発明のロッカ部構造によれば、連結部材の両端部は、鋭角方向に折り曲げられているので、ロッカインナパネルの屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用し、ロッカインナパネルが連結部材の両端部側を貫通孔からすり抜けさせる方向に変位しようとした場合にも、連結部材の両端部は、直線状の中間部の延長位置へ変形しにくく(戻りにくく)、貫通孔からすり抜けにくくなる。これによって、連結部材は、ロッカインナパネル側からの引っ張り荷重に対して一層効果的に抗する。
【0011】
請求項3に記載する本発明の構造体は、単一の又は複数の折れ線を備えた屈曲形状に形成されて複数の平板部が連なり、前記平板部のうち仮想直線を直接結ぶことが可能な何れか二面を構成する部位に貫通孔が貫通形成されたパネル部材と、前記貫通孔間を直線状に結ぶ位置に配置される中間部を備えると共に、両端部が前記貫通孔を貫通して当該貫通孔の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによって前記パネル部材側に固定される連結部材と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載する本発明の構造体によれば、パネル部材には、仮想直線を直接結ぶことが可能な何れか二面を構成する平板状の各部位に貫通孔が貫通形成されており、連結部材は、中間部が貫通孔間を直線状に結ぶ位置に配置されると共に、両端部が貫通孔を貫通して当該貫通孔の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによってパネル部材側に固定されているので、パネル部材の屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用しても、パネル部材の断面変形が防止又は抑制される。
【0013】
すなわち、パネル部材の屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用すると、パネル部材は、連結部材の両端部側を貫通孔からすり抜けさせる方向に変位しようとするが、連結部材の両端部が貫通孔の周囲の面方向に沿って折り曲げられているので、連結部材の両端部側の貫通孔からのすり抜けが抑えられる。このとき、パネル部材によって連結部材にはその両端部側へ引っ張られる荷重が作用するが、連結部材は、その両端部がパネル部材側に前記折り曲げによって固定されているので、パネル部材側からの引っ張り荷重に抗しながら連結部材による掛け渡しの線長(掛け渡し長さ)を維持しようとする。このため、パネル部材の断面変形が防止又は抑制される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のロッカ部構造によれば、ロッカインナパネルの屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用してもロッカインナパネルの断面変形を防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項2に記載のロッカ部構造によれば、ロッカインナパネルの屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用しても、ロッカインナパネルの貫通孔から連結部材の両端部がすり抜けにくく、これによって、連結部材は、ロッカインナパネル側からの引っ張り荷重に対して一層効果的に抗することができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項3に記載の構造体によれば、パネル部材の屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用してもパネル部材の断面変形を防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態]
本発明のロッカ部構造及び構造体が適用された第1の実施形態に係るロッカ部構造30について図1〜図4を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車幅方向内側を示している。
【0018】
図1には、本実施形態に係るロッカ部構造30及びその周辺部が車幅方向内側から見た斜視図で示され、図3には、ロッカ部構造30の要部の拡大縦断面図(図1の3−3線に沿った拡大縦断面図)が示されている。
【0019】
図1に示されるように、車体側部10において車両前後方向中間部には、センタピラー(Bピラー)16が立設されている。車体側部10のフロント側には、図示しないフロントサイドドアによって開閉されてセンタピラー16が後端縁となるフロント側ドア開口部12が形成されており、車体側部10のリヤ側には、図示しないリヤサイドドアによって開閉されてセンタピラー16が前端縁となるリヤ側ドア開口部14が形成されている。センタピラー16は、略車両上下方向を長手方向として配置された閉断面構造の車体骨格材であり、センタピラーインナパネル18とセンタピラーアウタリインフォース20を備えている。
【0020】
センタピラー16において車幅方向内側に配置されるセンタピラーインナパネル18は、略車両上下方向を長手方向として配置され、詳細後述するロッカ本体32の車両上方側では、水平断面形状を車幅方向外側が開放されたハット形状としている。センタピラーインナパネル18の前端部及び後端部には、接合用の前後一対のフランジ部18A、18Bが形成されている。
【0021】
センタピラーインナパネル18の車幅方向外側には、略車両上下方向を長手方向としてセンタピラーアウタリインフォース20が配置されている。センタピラーアウタリインフォース20の水平断面形状は、車幅方向内側が開放されたハット形状とされており、車両前後方向中間部に車幅方向外側へ膨出した膨出部20Cが形成され、センタピラーアウタリインフォース20の前端部及び後端部には、接合用の前後一対のフランジ部20A、20Bが形成されている。
【0022】
センタピラーアウタリインフォース20の前フランジ部20Aは、センタピラーインナパネル18の前フランジ部18Aと重ねた状態でスポット溶接されている。また、センタピラーアウタリインフォース20の後フランジ部20Bは、センタピラーインナパネル18の後フランジ部18Bと重ねた状態でスポット溶接されている。これらによって、センタピラーアウタリインフォース20とセンタピラーインナパネル18とで閉断面部22が構成されている。
【0023】
車体側部10の下端部には、車両前後方向を長手方向としてロッカ本体32(サイドシルともいう)が配置されている。図3に示されるように、ロッカ本体32は、閉断面構造の車体骨格材であり、車幅方向外側に配置されるロッカアウタリインフォース34を備えている。ロッカアウタリインフォース34は、車両前後方向を長手方向として配置され、車両正面視で車幅方向内側が開放された断面ハット形状に形成されている。また、ロッカアウタリインフォース34の上端部には、上フランジ部34Aが形成され、ロッカアウタリインフォース34の下端部には、下フランジ部34Bが形成されている。上フランジ部34A及び下フランジ部34Bは、その一般面が車両上下方向及び車両前後方向を含む面を面方向として配置されている。
【0024】
また、ロッカ本体32は、ロッカアウタリインフォース34の車幅方向内側に配置されるパネル部材としてのロッカインナパネル40を備えている。図1に示されるように、ロッカ本体32における車幅方向内側の部位を構成するロッカインナパネル40は、車両前後方向を長手方向として配置され、車両正面視で車幅方向外側が開放された断面ハット形状に形成されている。換言すれば、ロッカインナパネル40は、複数の折れ線(後述する外側第一稜線41A、内側第一稜線43、内側第二稜線45及び外側第二稜線41B)を備えた屈曲形状に形成されて複数の平板部(後述する上フランジ部40A、上壁部42、側壁部44、下壁部46及び下フランジ部40B)が連なって配設されている。
【0025】
ロッカインナパネル40の上端部には、平板部としての上フランジ部40Aが形成されており、この上フランジ部40Aは、車両正面視ではロッカインナパネル40の上端辺を構成している。また、ロッカインナパネル40の下端部には、平板部としての下フランジ部40Bが形成されており、下フランジ部40Bは、車両正面視ではロッカインナパネル40の下端辺を構成している。上フランジ部40A及び下フランジ部40Bは、その一般面が車両上下方向及び車両前後方向を含む面を面方向として配置されている。
【0026】
ロッカ本体32は、基本的には(センタピラー16の下部に対応する部分を除いて)、図3に示されるロッカインナパネル40の上フランジ部40Aとロッカアウタリインフォース34の上フランジ部34Aとがスポット溶接されると共に、ロッカインナパネル40の下フランジ部40Bとロッカアウタリインフォース34の下フランジ部34Bとがスポット溶接されることにより、閉断面構造に構成されている。すなわち、ロッカインナパネル40とロッカアウタリインフォース34とによって閉断面部38が形成された構造になっている。
【0027】
また、図3に示されるように、センタピラー16の下部に対応する部分では、センタピラーインナパネル18は、その下部において、ロッカインナパネル40の上フランジ部40Aとロッカアウタリインフォース34の上フランジ部34Aとの間に挟持された状態にて三枚重ねでスポット溶接されると共に、ロッカインナパネル40の下フランジ部40Bとロッカアウタリインフォース34の下フランジ部34Bとの間に挟持された状態にて三枚重ねでスポット溶接されている。また、センタピラーアウタリインフォース20の下端部20Dは、ロッカアウタリインフォース34の高さ方向中間部に形成された車幅方向外側への膨出部34Cにスポット溶接によって結合されている。
【0028】
車両正面視で車幅方向外側が開放された断面ハット形状に形成されたロッカインナパネル40は、上フランジ部40Aと下フランジ部40Bとの間(すなわち高さ方向中間部)が車幅方向内側へ膨出した膨出部40Cとされている。膨出部40Cは、三つの平板状の壁部、すなわち、上壁部42、側壁部44及び下壁部46で構成されている。膨出部40Cにおいて、上フランジ部40Aの下端から延設された平板部としての上壁部42は、車幅方向内側へ向けてやや車両下方側に傾斜しており、下フランジ部40Bの上端から延設された平板部としての下壁部46は、車幅方向内側へ向けてやや車両上方側に傾斜している。また、上壁部42と下壁部46とを繋ぐ平板部としての側壁部44は、一般面が車両上下方向及び車両前後方向を含む面を面方向として配置されている。なお、本実施形態では、側壁部44は、その下部が上部側に対して車幅方向内側へ小さく一段突出した段差形状に形成されているが、このような段差のない形状としてもよい。
【0029】
図1及び図3に示されるように、上フランジ部40Aの下端と上壁部42の車幅方向外側端部とは、車両前後方向に延在する折れ線としての外側第一稜線41Aを形成し、下フランジ部40Bの上端と下壁部46の車幅方向外側端部とは、車両前後方向に延在する折れ線としての外側第二稜線41Bを形成している。また、上壁部42の車幅方向内側端部と側壁部44の上端部とは、車両前後方向に延在する折れ線としての内側第一稜線43を形成し、側壁部44の下端部と下壁部46の車幅方向内側端部とは、車両前後方向に延在する折れ線としての内側第二稜線45を形成している。
【0030】
ロッカインナパネル40における膨出部40Cの側壁部44(側面)には、フロアパン24の車幅方向外側の端末部24Aが車両上方側に折り曲げられた状態でスポット溶接されている。フロアパン24は、ロッカ本体32の車幅方向内側に配設されて車体フロアを構成している。また、フロアパン24の上面側には、車幅方向を長手方向として複数のフロアクロスメンバ26が配設されている。図1に示されるように、フロアクロスメンバ26は、ロッカインナパネル40における膨出部40Cの上壁部42(上面)、膨出部40Cの側壁部44(側面)、及びフロアパン24の上面にそれぞれスポット溶接されている。なお、図1及び図3に示されるフロアクロスメンバ26は、その両端部がセンタピラー16の下部近傍に配設されている。
【0031】
図1に示されるように、ロッカインナパネル40において、本実施形態で屈曲角度が大きくなる方向への変形(所謂、断面の開き変形)を抑制したい二つの平板部(二面)である上壁部42及び側壁部44には、貫通孔としての丸孔48、50が貫通形成されている(上壁部42に貫通形成された丸孔を符号48で示し、側壁部44に貫通形成された丸孔を符号50で示す。)。図3に示されるように、上壁部42及び側壁部44は、仮想直線を直接結ぶことが可能な二面を構成する平板状の部位であり、丸孔48、50は、同軸上に形成されて貫通方向が一致している。また、図1に示されるように、本実施形態における丸孔48、50の形成部位は、フロアクロスメンバ26の車幅方向端部近傍とされている(図1に図示された丸孔48、50の形成部位は、フロアクロスメンバ26の車幅方向端部近傍でかつセンタピラー16の下部近傍である。)。
【0032】
ロッカインナパネル40の上部には、丸孔48、50を貫通する連結部材としての連結棒52が取り付けられている。図3に示される連結棒52は、剛性の高い金属材料(例えば鋼材等)の棒材で構成されており、丸孔48、50間を直線状に結ぶ位置に配置される中間部52Aを備えると共に、両端部52B、52Cが丸孔48、50を貫通して当該丸孔48、50の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによってロッカインナパネル40側に固定されている。すなわち、連結棒52は、溶接の不要な構造にて上壁部42及び側壁部44に固定されており、上壁部42及び側壁部44と共に車両正面視で三角形状の閉断面部を形成している。
【0033】
図2には、連結棒52の取付け手順を示す縦断面図が示されている。図2(A)に示されるように、まず、連結棒52が丸孔48、50に挿通されて中間部52Aが丸孔48、50間を直線状に結ぶ位置に配置されると共に両端部52B、52C側がロッカインナパネル40のハット形断面外側に配置される。次に、図2(B)に示されるように、連結棒52の両端部52B、52Cが丸孔48、58の周囲の面方向に沿って折り曲げられる。本実施形態では、連結棒52の両端部52B、52Cは、互いに接近するように(先端が内側第一稜線43側を向くように)鋭角方向に折り曲げられている。なお、図2(B)にて二点鎖線で示される両端部52B、52Cは、折り曲げ前の位置である。
【0034】
以上説明した図3に示されるロッカインナパネル40の上壁部42と側壁部44とに連結棒52の両端部52B、52Cが固定されたロッカ部構造30は、以下に説明するように、側面衝突時にロッカインナパネル40の屈曲角度が大きくなる方向への変形(所謂、断面の開き変形)を防止又は抑制する構造となっている。
【0035】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0036】
図4に示されるように、例えば、バリア100(バリアのバンパ部)が車体側部10の下部に衝突(すなわち側面衝突)して衝突荷重Fがセンタピラー16の下部に入力されると、センタピラー16の下部は、車幅方向内側(車室内側、矢印A方向側)へ倒れるように変形しようとする。
【0037】
本実施形態に係るロッカ部構造30では、ロッカ本体32が車体側部10の下端部に車両前後方向を長手方向として配置されており、ロッカインナパネル40がロッカ本体32における車幅方向内側の部位を構成して車両正面視で車幅方向外側が開放された断面ハット形状に形成されているので、前記側面衝突時にはロッカインナパネル40の上壁部42がロッカアウタリインフォース34と共にセンタピラー16側から引張力(矢印B方向参照)を受け、ロッカインナパネル40の屈曲角度を大きくする方向(矢印C方向)に荷重が作用する。
【0038】
ここで、ロッカインナパネル40には、上壁部42及び側壁部44に丸孔48、50が貫通形成されており、連結棒52は、中間部52Aが丸孔48、50間を直線状に結ぶ位置に配置されると共に、両端部52B、52Cが丸孔48、50を貫通して当該丸孔48、50の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによってロッカインナパネル40側に固定されているので、ロッカインナパネル40の屈曲角度を大きくする方向(矢印C方向)に荷重が作用しても、ロッカインナパネル40の断面変形が防止又は抑制される。
【0039】
すなわち、ロッカインナパネル40の屈曲角度を大きくする方向(矢印C方向)に荷重が作用すると、ロッカインナパネル40は、連結棒52の両端部52B、52C側を丸孔48、50からすり抜けさせる方向に変位しようとするが、連結棒52の両端部52B、52Cが丸孔48、50の周囲の面方向に沿って折り曲げられているので、連結棒52の両端部52B、52C側の丸孔48、50からのすり抜けが抑えられる。このとき、ロッカインナパネル40によって連結棒52にはその両端部52B、52C側へ引っ張られる荷重が作用するが、連結棒52は、その両端部52B、52Cがロッカインナパネル40側に前記折り曲げによって固定されているので、ロッカインナパネル40側からの引っ張り荷重に抗しながら連結棒52による掛け渡しの線長L(掛け渡し長さ、図3参照)を維持しようとする。このため、ロッカインナパネル40の断面変形が防止又は抑制される。
【0040】
また、連結棒52の両端部52B、52Cは、鋭角方向に折り曲げられているので、ロッカインナパネル40の屈曲角度を大きくする方向(矢印C方向)に荷重が作用し、ロッカインナパネル40が連結棒52の両端部52B、52C側を丸孔48、50からすり抜けさせる方向に変位しようとした場合にも、連結棒52の両端部52B、52Cは、直線状の中間部52Aの延長位置へ変形しにくく(すなわち、図2(B)の二点鎖線52B、52Cで示す位置に戻りにくく)、丸孔48、50からすり抜けにくくなる。これによって、図4に示される連結棒52は、ロッカインナパネル40側からの引っ張り荷重に対して一層効果的に抗する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係るロッカ部構造30によれば、簡易な構成でありながら、ロッカインナパネル40の屈曲角度を大きくする方向(矢印C方向)に荷重が作用してもロッカインナパネル40の断面変形を防止又は抑制することができる。その結果として、側面衝突時におけるセンタピラー16の倒れ込み変形量を抑えることができる。
【0042】
上記の作用及び効果について補足すると、ロッカインナパネル(40)の屈曲角度が大きくなる方向への変形(所謂、断面の開き変形)を防止又は抑制するために、例えば、ロッカ本体(32)に内側第一稜線(43)を跨ぐ補強用のビードを形成したような対比構造では、ロッカインナパネル(40)の屈曲角度を大きくする方向(矢印C方向参照)に荷重が作用した場合にロッカインナパネル(40)の断面変形を防止又は抑制することはできるが、前記ビードが内側第一稜線(43)を跨ぐ構成であるために前突時には該ビードが変形の起点となってしまい、前突性能を低下させてしまう。これに対して、本実施形態に係るロッカ部構造30では、内側第一稜線43は維持されるため、前突性能を低下させずに済むという利点がある。
【0043】
また、ロッカインナパネル(40)の屈曲角度が大きくなる方向への変形を防止又は抑制するために、例えば、ロッカインナパネル(40)の断面内にバルクヘッドを配設するような他の対比構造では、バルクヘッドを形成するための型やバルクヘッドの溶接作業が必要になってコストアップを招くほか、側面衝突時にロッカインナパネル(40)の屈曲角度を大きくする方向に荷重が作用してバルクヘッドの上端とロッカインナパネル(40)の上壁部(42)内面とが離れてしまうと、ロッカインナパネル(40)の断面変形を効果的に抑制できない場合がある。これに対して、本実施形態に係るロッカ部構造30では、バルクヘッドを形成するための型やバルクヘッドの溶接作業が不要になってコストを抑えられるうえ、連結棒52という小部品を用いて効果的に断面変形を抑えることができ、軽量化にも資する。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本発明のロッカ部構造及び構造体が適用された第2の実施形態に係るロッカ部構造60について、図5を用いて説明する。図5には、本発明の第2の実施形態に係るロッカ部構造60及びその周辺部が車幅方向内側から見た斜視図(第1の実施形態における図1に相当する図)で示されている。この図に示されるように、ロッカ部構造60は、連結棒52(図1参照)に代えて、連結部材としての連結板62を備える点で、第1の実施形態に係るロッカ部構造30とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図5に示されるように、ロッカインナパネル40において、本実施形態で屈曲角度が大きくなる方向への変形(所謂、断面の開き変形)を抑制したい二つの平板部(二面)である上壁部42及び側壁部44には、車両前後方向に延びた貫通孔としての長孔64、66が貫通形成されている(上壁部42に貫通形成された長孔を符号64で示し、側壁部44に貫通形成された長孔を符号66で示す。)。これらの長孔64、66は、同軸上に形成されて貫通方向が一致している。また、本実施形態における長孔64、66の形成部位は、フロアクロスメンバ26の車幅方向端部近傍とされている(図5に図示された長孔64、66の形成部位は、フロアクロスメンバ26の車幅方向端部近傍でかつセンタピラー16の下部近傍である。)。
【0046】
ロッカインナパネル40の上部には、長孔64、66を貫通する連結板62が取り付けられている。連結板62は、剛性の高い金属製の板材(例えば鋼板等)で構成されており、長孔64、66間を直線状に結ぶ位置に配置される中間部62Aを備えると共に、両端部62B、62Cが長孔64、66を貫通して当該長孔64、66の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによってロッカインナパネル40側に固定されている。連結板62の両端部62B、62Cは、互いに接近するように(先端が内側第一稜線43側を向くように)鋭角方向に折り曲げられている。連結板62は、上壁部42及び側壁部44と共に車両正面視で三角形状の閉断面部を形成している。上記構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0047】
[第3実施形態]
次に、本発明のロッカ部構造及び構造体が適用された第3の実施形態に係るロッカ部構造70について、図6を用いて説明する。図6には、本発明の第3の実施形態に係るロッカ部構造70の要部を示す断面図(第1の実施形態における図3に相当する図)で示されている。この図に示されるように、ロッカ部構造70は、側壁部44に代えて下壁部46に貫通孔としての丸孔72が貫通形成されており、連結部材としての連結棒74が上壁部42と下壁部46とを掛け渡している点で、第1の実施形態に係るロッカ部構造30(図3参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
図6に示されるように、下壁部46には丸孔72が貫通形成されている。上壁部42及び下壁部46は、仮想直線を直接結ぶことが可能な二面を構成する平板状の部位であり、本実施形態では、丸孔48、72は、同軸上に形成されて貫通方向が一致するように設定されている。また、丸孔72の形成部位は、フロアクロスメンバ26の車幅方向端部近傍とされている(図6に図示された丸孔72の形成部位は、フロアクロスメンバ26の車幅方向端部近傍でかつセンタピラー16の下部近傍である。)。
【0049】
ロッカインナパネル40には、丸孔48、72を貫通する連結棒74が取り付けられている。連結棒74は、剛性の高い金属材料(例えば鋼材等)の棒材で構成されており、丸孔48、72間を直線状に結ぶ位置に配置される中間部74Aを備えると共に、両端部74B、74Cが丸孔48、72を貫通して当該丸孔48、72の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによってロッカインナパネル40側に固定されている。連結棒74の両端部74B、74Cは、鋭角方向に折り曲げられている。上記構成によっても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【0050】
[実施形態の補足説明]
なお、第1の実施形態では、図3等に示されるように、連結棒52が丸孔48、50を貫通して上壁部42と側壁部44とを掛け渡しており、第3の実施形態では、図6に示されるように、連結棒74が丸孔48、72を貫通して上壁部42と下壁部46とを掛け渡しているが、例えば、ロッカインナパネル(40)の下部側の断面変形を防ぐために、側壁部(44)と下壁部(46)とを掛け渡す連結部材を配設、すなわち、側壁部(44)に形成された貫通孔(丸孔50)と下壁部(46)に形成された貫通孔(丸孔72)との間を直線状に結ぶ位置に配置される中間部を備えると共に、両端部が前記貫通孔(丸孔50、72)を貫通して当該貫通孔(丸孔50、72)の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによってロッカインナパネル(40)側に固定される連結部材を配設してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、連結部材としての連結棒52、74の両端部52B、52C、74B、74Cや連結板62の両端部62B、62Cは、鋭角方向に折り曲げられており、基本的にはこのような構成が好ましいが、連結部材の両端部は、直角方向や鈍角方向に折り曲げられてもよい。
【0052】
さらに、上記実施形態では、構造体がロッカ部構造30、60、70に適用された場合について説明したが、構造体は、例えば、サイドメンバ部構造等の他の車両用構造に適用してもよく、また、図7(A)〜図7(G)に断面図にて示される構造体80、81、82、83、84、85、86のような他の構造体としてもよい。なお、図7(A)〜図7(G)においては、便宜上、パネル部材を同一符号90で示し、折れ線としての折れ線部を同一符号92で示し、平板部を同一符号94で示し、貫通孔を同一符号96で示し、連結部材を同一符号98で示す。また、図7(A)〜図7(C)は、パネル部材90が単一の折れ線部92を備えた屈曲形状に形成されて二つの平板部94が連なる例、図7(D)及び図7(E)は、パネル部材90が二つの折れ線部92を備えた屈曲形状に形成されて三つの平板部94が連なる例、図7(F)及び図7(G)は、パネル部材90が三つの折れ線部92を備えた屈曲形状に形成されて四つの平板部94が連なる例である。ちなみに、図7(A)〜図7(G)では、連結部材98の両端部は、いずれも鋭角方向に折り曲げられているが、荷重の作用する方向等を考慮して折り曲げ方向を変えてもよい。
【0053】
なお、請求項3の「仮想直線を直接結ぶことが可能」とは、上記実施形態等に示されるように、他部位を貫通することなくダイレクトに仮想直線を結ぶことが可能なことを意味している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るロッカ部構造及びその周辺部を車幅方向内側から見た状態で示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るロッカ部構造のロッカインナパネルに連結棒を取り付ける手順を示す縦断面図である。図2(A)は、連結棒を丸孔に挿通させた状態を示す。図2(B)は、連結棒の両端部を折り曲げた状態を示す。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るロッカ部構造の要部を示す拡大縦断面図である(図1の3−3線に沿った断面で示す。)。
【図4】本発明の第1の実施形態における車体側部の下部にバリアが衝突した状態を示す拡大縦断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るロッカ部構造及びその周辺部を車幅方向内側から見た状態で示す斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るロッカ部構造の要部を示す縦断面図である。
【図7】本発明の構造体のバリエーションを折れ線部の延在方向視で示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 車体側部
30 ロッカ部構造(構造体)
32 ロッカ本体
40 ロッカインナパネル(パネル部材)
40A 上フランジ部(平板部)
40B 下フランジ部(平板部)
40C 膨出部
41A 外側第一稜線(折れ線)
41B 外側第二稜線(折れ線)
42 上壁部(壁部、平板部)
43 内側第一稜線(折れ線)
44 側壁部(壁部、平板部)
45 内側第二稜線(折れ線)
46 下壁部(壁部、平板部)
48 丸孔(貫通孔)
50 丸孔(貫通孔)
52 連結棒(連結部材)
52A 中間部
52B、52C 両端部
60 ロッカ部構造(構造体)
62 連結板(連結部材)
62A 中間部
62B、62C 両端部
64 長孔(貫通孔)
66 長孔(貫通孔)
70 ロッカ部構造(構造体)
72 丸孔(貫通孔)
74 連結棒(連結部材)
74A 中間部
74B、74C 両端部
80、81、82、83、84、85、86 構造体
90 パネル部材
92 折れ線部(折れ線)
94 平板部
96 貫通孔
98 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部の下端部に車両前後方向を長手方向として配置されたロッカ本体における車幅方向内側の部位を構成し、車両正面視で車幅方向外側が開放された断面ハット形状に形成されて車幅方向内側へ膨出した膨出部を備え、前記膨出部を構成する三つの平板状の壁部のうちいずれか二つに貫通孔が貫通形成されたロッカインナパネルと、
前記貫通孔間を直線状に結ぶ位置に配置される中間部を備えると共に、両端部が前記貫通孔を貫通して当該貫通孔の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによって前記ロッカインナパネル側に固定される連結部材と、
を有することを特徴とするロッカ部構造。
【請求項2】
前記連結部材の両端部は、鋭角方向に折り曲げられていることを特徴とする請求項1記載のロッカ部構造。
【請求項3】
単一の又は複数の折れ線を備えた屈曲形状に形成されて複数の平板部が連なり、前記平板部のうち仮想直線を直接結ぶことが可能な何れか二面を構成する部位に貫通孔が貫通形成されたパネル部材と、
前記貫通孔間を直線状に結ぶ位置に配置される中間部を備えると共に、両端部が前記貫通孔を貫通して当該貫通孔の周囲の面方向に沿って折り曲げられることによって前記パネル部材側に固定される連結部材と、
を有することを特徴とする構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−214802(P2009−214802A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62561(P2008−62561)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】