説明

ロック構造

【課題】係合枠及び係合突起からなる構造において、ロック解除を簡単に行うことができるロック構造を提供する。
【解決手段】本体5の周壁12から係合突起18が突設された本体側係合部15と、蓋体7に設けられて係合突起18に係合してロック状態とする係合枠21を有する蓋体側係合部17とを備える。係合突起18の両側部に周壁12から突設されて設けられ、係合枠21の両側部をガイドする側部ガイド壁25と、側部ガイド壁25の前部側25aの端部に連結された前部ガイド壁27と、前部ガイド壁27に設けられて係合突起18と係合枠21との係合状態を解除する工具31を係合枠21の前部21aにガイドする工具案内溝29とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーボックス、端子保護カバー、電気接続箱等において、本体に対して蓋体が閉じた状態を保持するためのロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来より用いられているスタータ端子保護カバー100を示す。この端子保護カバー100は、本体110と、本体110に可撓性のヒンジ部120及び121を介して連結された第1蓋体130及び第2蓋体140とを備えている。
【0003】
本体110は、底壁180から周壁150が一体に立ち上がった上部開口を備えた箱形状に形成されており、端子収容室160及び電極挿入室170が長さ方向に連設されている。端子収容室160の内部には、スタータ端子200の端末部210が収容される。スタータ端子200の端末部210には、電極接続板部211が連設されており、この電極接続板部211が電極挿入室170に収容されている。電極接続板部211には、外部端子を挿入するための端子挿入孔213が形成されており、電極挿入室170に外部端子(図示省略)を挿入することにより外部端子とスタータ端子200とが電気的に接続されるようになっている。
【0004】
第1蓋体130は電極挿入室170を覆うものであり、ヒンジ部120を折り曲げることにより電極挿入室170に被せられる。第2蓋体140は端子収容室160を覆うものであり、ヒンジ部121を折り曲げることにより端子収容室160に被せられる。
【0005】
このような端子保護カバー100においては、それぞれの蓋体130,140を本体110に対して閉じ状態とするためのロック構造が設けられる。すなわち、第1蓋体130には、係合枠240が両側部に形成され、電極挿入室170の周壁150の両側部には、第1蓋体130の係合枠240が係合する係合突起250が突設されている。又、第2蓋体140に対しても、一対の係合枠260がヒンジ部121との反対側の端部に形成され、端子収容室160の周壁150の片側には、第2蓋体130の係合枠260が係合する一対の係合突起270が突設されている。蓋体130,140を閉じることにより、蓋体130,140側の係合枠240及び260に本体110側の係合突起250,270が係合し、この係合によって蓋体130、140の閉じ状態がロックされる。
【0006】
特許文献1及び2には、このような係合枠及び係合突起によって本体に対して蓋体の閉じ状態をロックするロック構造が電気接続箱に適用された構造が記載されている。
【0007】
又、特許文献3には、本体としてのハーネスプロテクタに対し、蓋体としての取付パネルを閉じ状態とするために、ハーネスプロテクタにブロック状の係合突起を設け、取付パネルに係合突起が嵌合する係止孔を設けた構造が記載されている。特許文献3においては、ハーネスプロテクタに工具の挿入を案内するガイドリブを形成しており、ガイドリブに沿って工具をハーネスプロテクタと取付パネルとの間に差し込んで取付パネルの全体をハーネスプロテクタから持ち上げてロックを解除するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−218335号公報
【特許文献2】特開平10−−316156号公報
【特許文献3】特開2005−176413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図4に示すロック構造及び特許文献1及び2に示されるロック構造では、ロックを解除する際には、作業者が手でそれぞれの係合枠を操作して係合突起との係合状態から外す必要がある。この場合、係合枠を把持しにくく、係合枠へ操作力を作用させることが難しく、ロック解除しにくい問題がある。特許文献3のロック構造においては、工具を用いるため、手による面倒な操作が低減できるが、取付パネルの全体を持ち上げる必要があるため、大きな力が必要であり、同様にロック解除しにくい問題を有している。
【0010】
そこで、本発明は、係合枠及び係合突起からなる構造において、ロック解除を簡単に行うことができるロック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、本体の周壁から係合突起が突設された本体側係合部と、蓋体に設けられて前記係合突起に係合してロック状態とする係合枠を有する蓋体側係合部とを備え、前記本体に蓋体をロックするロック構造であって、前記係合突起の両側部に前記周壁から突設されて設けられ、前記係合枠の両側部をガイドする側部ガイド壁と、これらの側部ガイド壁の前部側の端部に連結された前部ガイド壁と、この前部ガイド壁に設けられて前記係合突起と前記係合枠との係合状態を解除する工具を前記係合枠の前部にガイドする工具案内溝とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のロック構造であって、前記側部ガイド壁の前記周壁からの突設高さは、前記係合突起の前記周壁からの突設高さよりも高く設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載のロック構造であって、前記本体側係合部が前記本体の両側の周壁に非対称位置に設けられ、前記蓋体側係合部が前記蓋体に非対称位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、本体の周壁に設けた側部ガイド壁の前部側に前部ガイド壁を連結し、この前部ガイド壁に工具を係合枠の前部に案内する工具案内溝を設けているため、工具を係合枠の前部に円滑に導くことができる。そして、案内された工具が係合枠の前部に係合するため、工具を操作することにより係合枠を係合突起から外してこれらのロックを解除することができる。このような構造では、手によるロック解除操作が不要となるため、ロック解除を簡単に行うことができる。
【0015】
又、工具が係合枠の前部に係合した状態で力を加えることによりロック解除がなされるため、係合枠の全体に対して力を作用させる必要がない。このため、小さな力でロック解除することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、側部ガイド壁の突設高さが係合突起の突設高さよりも高くなっているため、係合突起が外部々材と接触したり、干渉することを防止できる。このため、係合突起を保護することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、請求項1及び2記載の発明の効果に加えて、本体側係合部及びこれに対応した蓋体側係合部が非対称位置に設けられることにより、本体と蓋体とが位置ずれすることを防止することができ、安定したロック状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態のロック構造を端子保護カバーに適用した場合を示す斜視図である。
【図2】ロック構造のロック状態を示す側面図である。
【図3】ロック構造の縦断面図である。
【図4】従来の端子保護カバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図示する実施形態により具体的に説明する。図1は、本発明の一実施形態のロック構造3をスタータ端子等の端子保護カバー1に適用した斜視図、図2は、ロック構造3のロック状態の側面図、図3は、ロック構造3の縦断面図である。
【0020】
端子保護カバー1は、本体5と、本体5の一側の端部に可撓性のヒンジ部6を介して連結された蓋体7とを有している。本体5及び蓋体7は、図4に示す端子保護カバー100と同様な構造となっており、以下、図示を省略するが、図4の部材と対応した部材には図4と同一の符号を付して説明する。
【0021】
本体5は、底壁11と、底壁11から一体に立ち上がる周壁12とを有した上部開口の箱形状に形成されている。本体5には図4と同様に、スタータ端子等の端子200が収容される端子収容室160及び電極挿入室170が連設状態で形成されている。蓋体7は、本体5における電極挿入室170を覆うものであり、ヒンジ部6を折り曲げることにより本体5における電極挿入室170に被せられる。蓋体7は、本体5の周壁12の端面に当接して本体5を覆う周壁19を有している。
【0022】
この実施形態のロック構造3は、本体側係合部15と、蓋体側係合部17とによって形成されている。本体側係合部15は、本体5の左右の周壁12から突設された係合突起18を有している。図1及び図3に示すように、係合突起18は、略三角形状の突起形状に形成されるものである。
【0023】
蓋体側係合部17は、蓋体7の左右の周壁19に一体に設けられた2つの係合枠21を有している。それぞれの係合枠21は、左右の周壁19よりも高くなるように周壁19から立ち上がっており、立上がり側の端部(先端部)が閉鎖されたコ字枠形状となっている。これにより、係合枠21には本体側係合部15の係合突起18が係合する係合溝22が形成されている。係合溝22内に係合突起18が入り込むことにより、係合枠21と係合突起18とが係合し、この係合により蓋体7が本体5に被せられたロック状態となる。
【0024】
図1及び図2に示すように、本体側係合部15には、上述した係合突起18に加えて側部ガイド壁25、前部ガイド壁27が設けられている。
【0025】
側部ガイド壁25は、左右の周壁12における係合突起18に対応して設けられるものであり、係合突起18の両側部に対し、一対となるように設けられている。一対の側部ガイド壁25のそれぞれは、一定間隔を有した状態で左右の周壁12から突設している。一対の側部ガイド壁25は、蓋体7を閉じる際に、蓋体側係合部17の係合枠21をガイドするように作用するものであり、蓋体7のロック状態では、蓋体7の係合枠21は係合突起18と一対の側部ガイド壁25との間に入り込むようになっている。
【0026】
前部ガイド壁27は、一対の側部ガイド壁25のそれぞれに連設するように一対が設けられており、一対の側部ガイド壁25と同様に左右の周壁12から突設している。それぞれの前部ガイド壁27は、それぞれの側部ガイド壁25の前部側25aの端部に連結されている。この場合、それぞれの前部ガイド壁27は、それぞれの側部ガイド壁25の前部側25aの端部に連結されて横方向に延びる連結部27aと、連結部27aの端部から前部側に屈曲されたガイド部27bとを有したクランク形状となっている。
【0027】
一対の前部ガイド壁27におけるガイド部27bは一定間隔で離れており、一対の前部ガイド部27のガイド部27bの間が工具31が差し込まれる工具案内溝29となっている。工具案内溝29は、ガイド部27bから一対の側部ガイド壁25に達する長さとなっており、これにより、工具案内溝29は、側部ガイド壁25の間に入り込んでいる蓋体7の係合枠21の前部21aに達するように工具31をガイドする。
【0028】
次に、この実施形態におけるロック構造3の動作を説明する。
【0029】
図1の状態でヒンジ部6を折り曲げて蓋体7を本体5側に回動操作すると、蓋体側係合部17におけるそれぞれの係合枠21が本体側係合部15におけるそれぞれの一対の側部ガイド壁25の間に入り込んで側部ガイド壁25にガイドされる。蓋体7を本体5に対して閉じた状態とすると、係合枠21と本体側係合部15における係合突起18とが係合し、この係合により本体5に対して蓋体7が閉じたロック状態となる。
【0030】
蓋体7のロック状態に対し、図2に示すように、工具31を工具案内溝29に差し込んでスライドさせると、工具31の先端部が係合枠21の前部21aと本体5の周壁12との間に入り込む。この入り込み状態で係合枠21を本体から浮き上がらせるように工具31を操作することにより、係合枠21が係合突起18からの係合状態から外れてロック解除がなされる。
【0031】
このような実施形態によれば、前部ガイド壁27に工具案内溝29を形成しているため、工具29を係合枠21の前部21aに円滑に導くことができ、この工具31を操作することにより係合枠21を係合突起18から外してロックを解除することができる。これにより、手によるロック解除操作が不要となり、ロック解除を簡単に行うことができる。又、この実施形態では、工具31が係合枠21の前部21aに係合した状態で力を加えることによりロック解除がなされるため、係合枠21の全体に対して力を作用させる必要がなく、小さな力でロック解除することができる。
【0032】
図3に示すように、この実施形態のロック構造3においては、係合突起18が本体5の周壁12から突設する突設高さH2に対し、側部ガイド壁25が周壁12から突設する突設高さH1が高くなるように設定される(H1>H2)。このような構造とすることにより、係合突起18が外部々材と接触したり、干渉することを防止でき、係合突起18を保護することが可能となっている。
【0033】
又、この実施形態のロック構造3においては、図1に示すように、蓋体7の左右の周壁19における蓋体側係合部17(係合枠21)は、周壁19の長さ方向に沿って位置ずれするように設けられている。すなわち、ヒンジ部6の曲げ線の延伸方向で一方の側に位置している周壁19の部位(厚さ方向がヒンジ部6の曲げ線の延伸方向と一致している部位)に設けられている蓋体側係合部17は、ヒンジ部6の近くに位置している。また、ヒンジ部6の曲げ線の延伸方向で他方の側に位置している周壁19の部位に設けられている蓋体側係合部17は、ヒンジ部6から離れた周壁19の部位に位置している。
【0034】
これにより、左右の周壁19においては、蓋体側係合部17が非対称位置(蓋体7の中心を通りヒンジ部6の曲げ線の延伸方向に直交している平面に対して被対称な位置)に設けられている。又、本体5の左右の周壁12における本体側係合部15においても同様に周壁12の長さ方向に沿って位置ずれして設けられることにより、左右の周壁12においては、本体側係合部15が非対称位置に設けられている。このように本体側係合部15及びこれに対応した蓋体側係合部17が非対称位置に設けられた構造では、本体5と蓋体7とが位置ずれすることを防止することができ、安定したロック状態とすることができる。
【0035】
なお、以上の実施形態のロック構造3は、図4に示す端子保護カバー100の本体110に設けられる第2蓋体140に対しても同様に適用することができるものである。
【0036】
上記実施形態においては、スタータ端子等の端子保護カバー1に対してロック構造3を適用しているが、本発明においては、本体5に対して蓋体7が閉じた状態を保持するためのロック構造であればよく、リレーボックス、他の端子保護カバー、電気接続箱、その他の機器に対しても同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
3 ロック構造
5 本体
7 蓋体
12 周壁
15 本体側係合部
17 蓋体側係合部
18 係合突起
19 周壁
21 係合枠
25 側部ガイド壁
25a 前部側
27 前部ガイド壁
29 工具案内溝
31 工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の周壁から係合突起が突設された本体側係合部と、蓋体に設けられて前記係合突起に係合してロック状態とする係合枠を有する蓋体側係合部とを備え、前記本体に前記蓋体をロックするロック構造であって、
前記係合突起の両側部に前記周壁から突設されて設けられ、前記係合枠の両側部をガイドする側部ガイド壁と、これらの側部ガイド壁の前部側の端部に連結された前部ガイド壁と、この前部ガイド壁に設けられて前記係合突起と前記係合枠との係合状態を解除する工具を前記係合枠の前部にガイドする工具案内溝とを有することを特徴とするロック構造。
【請求項2】
請求項1記載のロック構造であって、
前記側部ガイド壁の前記周壁からの突設高さは、前記係合突起の前記周壁からの突設高さよりも高く設定されていることを特徴とするロック構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロック構造であって、
前記本体側係合部が前記本体の両側の周壁に非対称位置に設けられ、前記蓋体側係合部が前記蓋体に非対称位置に設けられていることを特徴とするロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−244647(P2011−244647A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116289(P2010−116289)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】