説明

ロック機構付きコネクタ

【課題】プッシュプル式ロック機構を有するコネクタの小型化を図り、また、耐久性を向上させる。
【解決手段】コネクタ本体11の先端側には、拡径可能で、相手コネクタの被係合部と係合する係合部20を有する嵌合部17を設け、コネクタ本体11の外周側には、軸方向に移動可能な可動スリーブ21を設ける。可動スリーブ21が初期位置にあるときに、可動スリーブ21に形成された拡径規制部22により嵌合部17の拡径を阻止し、可動スリーブ21が初期位置から軸方向に移動したときに、嵌合部17に対する拡径規制部22の位置をずらし、嵌合部17の拡径を許す。また、コネクタ本体11と可動スリーブ21との間にC字状の弾性変形部材24を設け、弾性変形部材24が径方向内向きに変形してから元の形状に戻る径方向外向きの力を軸方向の力に変換して可動スリーブ21に加え、軸方向に移動した可動スリーブ21を自動的に初期位置に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば器機間の電気的な接続を行う電気コネクタ等のコネクタであって、コネクタの抜け止めを行うロック機構を備えたロック機構付きコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
相手コネクタに接続した状態で相手コネクタからの抜け止めを行うロック機構を備えた電気コネクタ、光コネクタ等のコネクタは知られている。例えば、同軸コネクタや多芯コネクタのように、横断面形状が円形のコネクタのロック機構には、ねじ込み式、バヨネット式、プッシュプル式等、様々な方式がある。
【0003】
これらのロック機構のうち、プッシュプル式のロック機構は、コネクタ本体の外周側に、軸方向にスライド移動可能な筒状のスリーブを有している。作業者はスリーブを指で保持して軸方向に移動させることでロックを解除することができ、一方、作業者がスリーブから指を離すとスリーブが自動的に初期位置に戻ってロック状態となる。
【0004】
すなわち、プッシュプル方式のロック機構を有するコネクタを相手コネクタに接続する際には、作業者がコネクタのスリーブを指で保持し、コネクタを相手コネクタに向けて軸方向に押し込むように力を加える。これにより、スリーブがコネクタの軸方向先端側に移動してロックが解除され、両コネクタが互いに嵌合可能な状態となり、そのままコネクタが相手コネクタに接続される。そして、作業者がスリーブから指を離すとスリーブが初期位置に自動的に戻ってロック状態となる。一方、コネクタを相手コネクタから抜き去る際には、作業者がコネクタのスリーブを指で保持し、コネクタを相手コネクタから軸方向に引っ張るように力を加える。
【0005】
これにより、スリーブがコネクタの軸方向基端側に移動してロックが解除されるので、そのままコネクタが相手コネクタから切り離される。このように、プッシュプル式のロック機構は、スリーブを保持してコネクタを抜き差しする方向に力を加えるだけでロックを解除することができ、スリーブを離すことで自動的にロック状態にすることができる。したがって、プッシュプル式のロック機構を有するコネクタは、ロックおよびロック解除のためにスリーブを軸周りに回転させなければならないねじ込み式やバヨネット式のロック機構を有するコネクタと比較して、コネクタの接続、抜去の作業性が良い。
【0006】
ところで、プッシュプル式のロック機構を有するコネクタでは、作業者がスリーブから指を離すと、軸方向に移動したスリーブが自動的に初期位置に戻る。これは、コネクタの内部に、軸方向に移動したスリーブを初期位置に戻すための機構を設けることにより実現されている。例えば、コネクタの内部に軸方向に伸縮可能となるようにコイルばねを設け、作業者がスリーブを指で保持してスリーブを初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動させたときにコイルばねを収縮させ、作業者がスリーブから指を離したときに、コイルばねがその弾性力により伸長しようとする力をスリーブに加えるようにすれば、スリーブを初期位置に自動的に戻すことができる。
【0007】
また、下記の特許文献1には、当該文献の図1に示されているように、施錠スリーブ(14)の他端側に弾性部(30)を設け、弾性部(30)に形成されたカム(32)を、カプラの他端側外周部に形成された、角度を付けられた表面(36)(なだらかな傾斜面を持った凹部)に接触させ、施錠スリーブ(14)を初期位置から軸方向一端側または軸方向他端側に移動させたときに、弾性部(30)を径方向外向きに変形させ、これにより弾性部(30)の弾性力により、施錠スリーブ(14)を初期位置に戻す機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2003−516606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、プッシュプル式のロック機構を有するコネクタは、軸方向に移動したスリーブを初期位置に戻すための機構を有している。この機構について次のような問題がある。
【0010】
すなわち、スリーブを初期位置に戻すための機構を上述したようにコイルばねを用いて構成した場合、コネクタの内部に、コイルばね、ばね座、コイルばねを伸縮させるための空間等を設ける必要があり、このためコネクタの軸方向の寸法が大きくなり、コネクタが大型化してしまうという問題がある。
【0011】
また、スリーブを初期位置に戻すための機構として、上記特許文献1に記載された、施錠スリーブ(14)の他端側に弾性部(30)を設ける構成を採用した場合にも、コネクタの軸方向の寸法が大きくなり、コネクタが大型化してしまうという問題がある。すなわち、弾性部(30)の変形による適切な弾性力を得るためには、弾性部(30)を軸方向に、ある程度長く形成する必要がある。特許文献1の図1に描かれている弾性部(30)は軸方向の寸法が短いが、実際上、このような短い弾性部(30)を採用した場合には、弾性部(30)の径方向外向きの変形により生じる弾性力が大きくなりすぎ、この結果、スリーブを軸方向に移動させるのに大きな力が必要となり、ロック解錠の操作性が悪くなってしまう。本出願の発明者は、ロック解除の望ましい操作性を実現するために、実際に弾性部(30)として軸方向にどの程度の長さが必要であるかをシミュレートした。この結果、弾性部(30)の軸方向における実際上の長さとして、特許文献1の図1に描かれている弾性部(30)の長さの2倍程度の長さが必要であることがわかった。
【0012】
さらに、スリーブを初期位置に戻すための機構として、上記特許文献1に記載された、施錠スリーブ(14)の他端側に弾性部(30)を設ける構成を採用した場合には、コネクタの大型化の問題のほかに、コネクタの耐久性を確保することが容易でないという問題がある。
【0013】
すなわち、弾性部(30)はコレットチャック状に形成されている。弾性部(30)をコレットチャック状に形成することによって弾性部(30)の径方向外向きの弾性変形を可能にしているのであるが、これより必然的に弾性部(30)の剛性が低下し、耐久性が損なわれている。コネクタの一般的な取り扱いを考えると、弾性部(30)には、コネクタの抜去の際に生じるこじりや、コネクタの他端側に接続されたケーブルがコネクタの軸線と交わる方向に引っ張られることにより生じる外力等が加わる。コレットチャック状に形成された弾性部(30)に、このようなこじりや外力に対する耐久性を持たせることは困難である。
【0014】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の第1の課題は、プッシュプル式のロック機構を有しながらも特に軸方向の寸法を小さくし、小型化を図ることができるコネクタを提供することにある。
【0015】
また、本発明の第2の課題は、プッシュプル式のロック機構においてロックおよびロック解除を行う軸方向に移動可能な可動スリーブの剛性を高めることができ、こじり等により可動スリーブが変形したり破損することを防止できる耐久性に優れたコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第1のコネクタは、相手コネクタと着脱可能に接続するコネクタであって、筒状に形成された筒状体、前記筒状体の基端側内部に支持部材を介して支持された軸方向に伸長する端子、および前記筒状体の先端側に形成され、前記相手コネクタを受け入れて前記相手コネクタと嵌合する嵌合部を有し、前記嵌合部は弾性力をもって拡径可能であり、前記嵌合部の内周側には係合部が形成され、前記相手コネクタの前記嵌合部内への進入が開始されたときに前記嵌合部が拡径して前記相手コネクタの前記嵌合部内への進入を許し、前記相手コネクタの前記嵌合部内への進入が完了するときに前記嵌合部が元の形状に向かって戻ると共に前記係合部が前記相手コネクタに形成された被係合部と係合するコネクタ本体と、筒状に形成され、前記コネクタ本体の外周側に前記コネクタ本体に対して軸方向に移動可能に設けられ、先端側には前記嵌合部の拡径を規制する拡径規制部が形成され、軸方向において所定の初期位置にあるときには前記拡径規制部が前記嵌合部の外周部に接近または接触することにより前記嵌合部の拡径を阻止し、前記初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動したときには前記拡径規制部が前記嵌合部の外周部から離間することにより前記嵌合部の拡径を許す可動スリーブと、略リング状に形成され、弾性力をもって径方向に変形可能な弾性変形部材と、前記コネクタ本体の基端側外周部と前記可動スリーブの基端側内周部との間に形成され、前記弾性変形部材を径方向に変形可能な状態で収容する収容部と、前記可動スリーブを前記初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動させるときに生じる軸方向の力を、前記弾性変形部材を変形させる径方向の力に変換して前記弾性変形部材に伝達すると共に、前記弾性変形部材が変形した状態から復元しようとする径方向の力を、前記可動スリーブを前記軸方向先端側または前記軸方向基端側から前記初期位置に戻す軸方向の力に変換して前記可動スリーブに伝達する伝達機構とを備えていることを特徴とする。
【0017】
上記本発明の第1のコネクタにおいて、当該コネクタを相手コネクタに接続する際に、作業者が可動スリーブを指で保持し、当該コネクタの嵌合部の先端部を相手コネクタの先端部に接触させた状態で当該コネクタを相手コネクタに向けて押すように力を加えると、その力により、当該コネクタの可動スリーブが初期位置から軸方向先端側に移動する。この可動スリーブを軸方向先端側に移動させる軸方向の力は伝達機構により径方向の力に変換され、弾性変形部材に伝達される。これにより、弾性変形部材が径方向に変形する。そして、可動スリーブが初期位置から移動したことにより拡径規制部が嵌合部の外周部から離間し、嵌合部が拡径可能となる。これにより、嵌合部が拡径することによって相手コネクタの嵌合部内への進入が開始され、相手コネクタが嵌合部内の奥まで進入することにより相手コネクタの嵌合部内への進入が完了したとき、嵌合部が元の形状に向かって戻るように縮径し、係合部が相手コネクタの被係合部と係合する。
【0018】
続いて、作業者が可動スリーブから指を離すと、可動スリーブを軸方向先端側に移動させていた軸方向の力が消え、これに伴い、弾性変形部材に伝達されていた径方向の力も消えるので、弾性変形部材は自らの弾性力により元の形状に復元する。このとき、弾性変形部材が元の形状に戻ろうとする径方向の力が、伝達機構により、軸方向先端側に移動している可動スリーブを初期位置に戻そうとする軸方向の力に変換され、可動スリーブに伝達される。これにより、軸方向先端側に移動している可動スリーブが初期位置に自動的に戻る。
【0019】
一方、当該コネクタを相手コネクタから抜き去る際には、作業者が可動スリーブを指で保持し、相手コネクタから当該コネクタを離す方向に引っ張るように力を加えると、その力により、当該コネクタの可動スリーブが初期位置から軸方向基端側に移動する。この可動スリーブを軸方向基端側に移動させる軸方向の力は伝達機構により径方向の力に変換され、弾性変形部材に伝達される。これにより、弾性変形部材が径方向に変形する。そして、可動スリーブが初期位置から移動したことにより拡径規制部が嵌合部の外周部から離間し、嵌合部が拡径可能となるので、嵌合部が拡径することにより、係合部と相手コネクタの被係合部との係合が解かれ、相手コネクタが嵌合部から抜ける。
【0020】
続いて、作業者が可動スリーブから指を離すと、可動スリーブを軸方向基端側に移動させていた軸方向の力が消え、これに伴い、弾性変形部材に伝達されていた径方向の力も消えるので、弾性変形部材は自らの弾性力により元の形状に復元する。このとき、弾性変形部材が元の形状に戻ろうとする径方向の力が、伝達機構により、軸方向基端側に移動している可動スリーブを初期位置に戻そうとする軸方向の力に変換され、可動スリーブに伝達される。これにより、軸方向基端側に移動している可動スリーブが初期位置に自動的に戻る。
【0021】
このように、本発明の第1のコネクタによれば、変形した弾性変形部材が元の形状に戻ろうとする径方向の力を利用して、軸方向先端側または軸方向基端側に移動した可動スリーブを初期位置に自動的に戻すことができる。すなわち、可動スリーブを初期位置に自動的に戻すための構成を、可動スリーブとコネクタ本体との間に弾性変形部材を配置するといった簡単な構成で実現することができる。したがって、可動スリーブを初期位置に自動的に戻すために、コイルばねを用いる従来の構成、あるいは可動スリーブ自体を弾性変形させる従来の構成(特許文献1に記載の弾性部(30)等を設ける構成)と比較し、コネクタの軸方向の寸法を小さくすることができ、コネクタの小型化を図ることができる。
【0022】
また、本発明の第1のコネクタによれば、可動スリーブを初期位置に自動的に戻すための構成を、可動スリーブとコネクタ本体との間に弾性変形部材を配置するといった構成で実現することができるので、従来の構成のように可動スリーブ自体を弾性変形させる必要がない。したがって、可動スリーブの剛性を高めることができ、こじり等により可動スリーブが変形し、または破損することを防止することができ、コネクタの耐久性を高めることができる。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の第2のコネクタは、上述した本発明の第1のコネクタにおいて、前記弾性変形部材はC字状に形成されていることを特徴とする。
【0024】
上記本発明の第2のコネクタによれば、径方向に弾性変形する弾性変形部材を簡単な構造で、または単純な部品により実現することができる。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の第3のコネクタは、上述した本発明の第1または第2のコネクタにおいて、前記伝達機構は、前記弾性変形部材の外周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向外向きに傾斜する第1の傾斜面と、前記弾性変形部材の外周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向外向きに傾斜する第2の傾斜面と、前記可動スリーブの基端側内周部から径方向内向きに伸長し、その端部が、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向先端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第1の傾斜面に摺接し、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向基端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第2の傾斜面に摺接する摺接部とを備えていることを特徴とする。
【0026】
上記本発明の第3のコネクタにおいて、弾性変形部材の外周部は、第1の傾斜面および第2の傾斜面により軸方向中間部が括れた形状となっている。可動スリーブが初期位置にあるとき、可動スリーブの摺接部は、弾性変形部材の外周部において括れた軸方向中間部に位置する。この状態では、弾性変形部材は、例えば、径方向に全く変形していないか、あるいは僅かにしか変形していない状態である。
【0027】
作業者が可動スリーブを指で保持して加えた力により可動スリーブが初期位置から軸方向先端側に移動すると、これに伴い、可動スリーブの摺接部は弾性変形部材の第1の傾斜面に摺接しながら軸方向先端側に移動する。このとき、弾性変形部材の第1の傾斜面は軸方向中間部から軸方向先端側に向かって径方向外向きに傾斜しているので、可動スリーブの摺接部の移動に伴い、第1の傾斜面が摺接部に押される。これにより、弾性変形部材が径方向内向きに変形する。
【0028】
一方、作業者が可動スリーブから指を離すと、元の形状に戻ろうとする弾性変形部材から生じる径方向外向きの力が弾性変形部材の第1の傾斜面に接触している可動スリーブの摺接部に加わる。このとき、弾性変形部材の第1の傾斜面は軸方向中間部から軸方向先端側に向かって径方向外向きに傾斜しているので、当該摺接部が軸方向基端側に押される。これにより、軸方向先端側に移動している可動スリーブが初期位置に押し戻される。
【0029】
また、作業者が可動スリーブを指で保持して加えた力により可動スリーブが初期位置から軸方向基端側に移動したときも同様に、可動スリーブの摺接部に弾性変形部材の第2の傾斜面が押されて弾性変形部材が径方向内向き変形する。一方、作業者が可動スリーブから指を離したときには、弾性変形部材が元の形状に戻ろうとする径方向外向きの力が第2の傾斜面に摺接している可動スリーブの摺接部に加わり、これにより当該摺接部が押され、軸方向基端側に移動している可動スリーブが初期位置に押し戻される。
【0030】
このように、本発明の第3のコネクタによれば、変形した弾性変形部材が元の形状に戻ろうとする径方向の力を軸方向の力に変換して可動スリーブに伝達し、軸方向先端側または軸方向基端側に移動した可動スリーブを初期位置に自動的に戻す機構を簡単な構造により実現することができる。
【0031】
上記課題を解決するために、本発明の第4のコネクタは、上述した本発明の第1または第2のコネクタにおいて、前記伝達機構は、前記弾性変形部材の外周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向内向きに傾斜する第1の傾斜面と、前記弾性変形部材の外周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向内向きに傾斜する第2の傾斜面と、前記可動スリーブの基端側内周部から径方向内向きに伸長し、その端部が、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向先端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第2の傾斜面に摺接する第1の摺接部と、前記可動スリーブの基端側内周部から径方向内向きに伸長し、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向基端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第1の傾斜面に摺接する第2の摺接部とを備えていることを特徴とする。
【0032】
上記本発明の第4のコネクタにおいて、弾性変形部材の外周部は、第1の傾斜面および第2の傾斜面により軸方向中間部が出っ張った形状となっている。可動スリーブが初期位置にあるとき、弾性変形部材の外周部において出っ張った軸方向中間部が、可動スリーブの第1の摺接部と第2の摺接部との中間に位置する。この状態では、弾性変形部材は、例えば、径方向に全く変形していないか、あるいは僅かにしか変形していない状態である。
【0033】
作業者が可動スリーブを指で保持して加えた力により可動スリーブが初期位置から軸方向先端側に移動すると、これに伴い、可動スリーブの第1の摺接部は弾性変形部材の第2の傾斜面に摺接しながら軸方向先端側に移動する。このとき、弾性変形部材の第2の傾斜面は軸方向中間部から軸方向基端側に向かって径方向内向きに傾斜しているので、可動スリーブの第1の摺接部の移動に伴い、第2の傾斜面が第1の摺接部に押される。これにより、弾性変形部材が径方向内向きに変形する。
【0034】
一方、作業者が可動スリーブから指を離すと、元の形状に戻ろうとする弾性変形部材から生じる径方向外向きの力が弾性変形部材の第2の傾斜面に接触している可動スリーブの第1の摺接部に加わる。このとき、弾性変形部材の第2の傾斜面は軸方向中間部から軸方向基端側に向かって径方向内向きに傾斜しているので、当該第1の摺接部が軸方向基端側に押される。これにより、軸方向先端側に移動している可動スリーブが初期位置に押し戻される。
【0035】
また、作業者が可動スリーブを指で保持して加えた力により可動スリーブが初期位置から軸方向基端側に移動したときも同様に、可動スリーブの第2の摺接部に弾性変形部材の第1の傾斜面が押されて弾性変形部材が径方向内向き変形する。一方、作業者が可動スリーブから指を離したときには、元の形状に戻ろうとする弾性変形部材から生じる径方向外向きの力が第1の傾斜面に摺接している可動スリーブの第2の摺接部に加わり、これにより当該第2の摺接部が押され、軸方向基端側に移動している可動スリーブが初期位置に押し戻される。
【0036】
このように、本発明の第4のコネクタによっても、変形した弾性変形部材が元の形状に戻ろうとする径方向の力を軸方向の力に変換して可動スリーブに伝達し、軸方向先端側または軸方向基端側に移動した可動スリーブを初期位置に自動的に戻す機構を簡単な構造により実現することができる。
【0037】
上記課題を解決するために、本発明の第5のコネクタは、上述した本発明の第1または第2のコネクタにおいて、前記伝達機構は、前記弾性変形部材の内周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向内向きに傾斜する第1の傾斜面と、前記弾性変形部材の内周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向内向きに傾斜する第2の傾斜面と、前記コネクタ本体の前記筒状体の基端側外周部から径方向外向きに伸長し、その端部が、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向先端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第2の傾斜面に摺接し、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向基端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第1の傾斜面に摺接する摺接部とを備えていることを特徴とする。
【0038】
上記本発明の第5のコネクタにおいて、作業者が可動スリーブを指で保持して加えた力により可動スリーブが初期位置から軸方向先端側に移動したとき、可動スリーブの摺接部に弾性変形部材の第2の傾斜面が押されて弾性変形部材が径方向外向き変形する。一方、作業者が可動スリーブから指を離したときには、元の形状に戻ろうとする弾性変形部材から生じる径方向内向きの力が第2の傾斜面に摺接している可動スリーブの摺接部に加わり、これにより当該摺接部が押され、軸方向先端側に移動している可動スリーブが初期位置に押し戻される。これと同様に、作業者が可動スリーブを指で保持して加えた力により可動スリーブが初期位置から軸方向基端側に移動したとき、可動スリーブの摺接部に弾性変形部材の第1の傾斜面が押されて弾性変形部材が径方向外向き変形する。一方、作業者が可動スリーブから指を離したときには、元の形状に戻ろうとする弾性変形部材から生じる径方向内向きの力が第1の傾斜面に摺接している可動スリーブの摺接部に加わり、これにより当該摺接部が押され、軸方向基端側に移動している可動スリーブが初期位置に押し戻される。
【0039】
このように、本発明の第5のコネクタによっても、弾性変形部材が元の形状に戻ろうとする径方向の力を用いて可動スリーブを初期位置に戻す機構を簡単な構造により実現することができる。
【0040】
上記課題を解決するために、本発明の第6のコネクタは、上述した本発明の第1または第2のコネクタにおいて、前記伝達機構は、前記弾性変形部材の内周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向外向きに傾斜する第1の傾斜面と、前記弾性変形部材の内周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向外向きに傾斜する第2の傾斜面と、前記コネクタ本体の前記筒状体の基端側外周部から径方向内向きに伸長し、その端部が、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向先端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第1の傾斜面に摺接する第1の摺接部と、前記コネクタ本体の前記筒状体の基端側外周部から径方向内向きに伸長し、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向基端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第2の傾斜面に摺接する第2の摺接部とを備えていることを特徴とする。
【0041】
上記本発明の第6のコネクタにおいて、作業者が可動スリーブを指で保持して加えた力により可動スリーブが初期位置から軸方向先端側に移動したとき、可動スリーブの第1の摺接部に弾性変形部材の第1の傾斜面が押されて弾性変形部材が径方向外向き変形する。一方、作業者が可動スリーブから指を離したときには、元の形状に戻ろうとする弾性変形部材から生じる径方向内向きの力が第1の傾斜面に摺接している可動スリーブの第1の摺接部に加わり、これにより当該第1の摺接部が押され、軸方向先端側に移動している可動スリーブが初期位置に押し戻される。これと同様に、作業者が可動スリーブを指で保持して加えた力により可動スリーブが初期位置から軸方向基端側に移動したとき、可動スリーブの第2の摺接部に弾性変形部材の第2の傾斜面が押されて弾性変形部材が径方向外向き変形する。一方、作業者が可動スリーブから指を離したときには、元の形状に戻ろうとする弾性変形部材から生じる径方向内向きの力が第2の傾斜面に摺接している可動スリーブの第2の摺接部に加わり、これにより当該第2の摺接部が押され、軸方向基端側に移動している可動スリーブが初期位置に押し戻される。
【0042】
このように、本発明の第6のコネクタによっても、弾性変形部材が元の形状に戻ろうとする径方向の力を用いて可動スリーブを初期位置に戻す機構を簡単な構造により実現することができる。
【0043】
上記課題を解決するために、本発明の一対のコネクタは、互いに着脱可能に接続される第1のコネクタおよび第2のコネクタからなる一対のコネクタであって、前記第1のコネクタは、筒状に形成された第1の筒状体、前記第1の筒状体の内部に第1の支持部材を介して支持された軸方向に伸長する第1の端子、および前記第1の筒状体の先端側に形成され、前記第2のコネクタを受け入れて前記第2のコネクタと嵌合する嵌合部を備え、前記嵌合部は弾性力をもって拡径可能であり、前記嵌合部の内周側には係合部が形成され、前記第2のコネクタの前記嵌合部内への進入が開始されたときに前記嵌合部が拡径して前記第2のコネクタの前記嵌合部内への進入を許し、前記第2のコネクタの前記嵌合部内への進入が完了するときに前記嵌合部が元の形状に向かって戻ると共に前記係合部が前記第2のコネクタに形成された被係合部と係合し、前記第2のコネクタは、筒状に形成された第2の筒状体、前記第2の筒状体の基端側内部に第2の支持部材を介して支持された軸方向に伸長する第2の端子、および前記第2の筒状体の先端側外周部に形成された前記被係合部を有するコネクタ本体と、筒状に形成され、前記コネクタ本体の外周側に前記コネクタ本体に対して軸方向に移動可能に設けられ、前記第1のコネクタの前記嵌合部の拡径を規制する拡径規制部を有し、軸方向における所定の初期位置にあるときには前記拡径規制部が前記嵌合部の外周部に接近または接触することにより前記嵌合部の先端側の拡径を阻止し、前記初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動したときには前記拡径規制部が前記嵌合部の外周部から離間することにより前記嵌合部の拡径を許す可動スリーブと、略リング状に形成され、弾性力をもって径方向に変形可能な弾性変形部材と、前記コネクタ本体の基端側外周部と前記可動スリーブの基端側内周部との間に形成され、前記弾性変形部材を径方向に変形可能な状態で収容する収容部と、前記可動スリーブを前記初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動させるときに生じる軸方向の力を、前記弾性変形部材を変形させる径方向の力に変換して前記弾性変形部材に伝達すると共に、前記弾性変形部材が変形した状態から復元しようとする径方向の力を、前記可動スリーブを前記軸方向先端側または前記軸方向基端側から前記初期位置に戻す軸方向の力に変換して前記可動スリーブに伝達する伝達機構とを備えていることを特徴とする。
【0044】
上記本発明の一対のコネクタによれば、第2のコネクタにおける可動スリーブを初期位置に自動的に戻すための構成を、可動スリーブとコネクタ本体との間に弾性変形部材を配置するといった簡単な構成で実現することができる。したがって、第2のコネクタの小型化を図ることができると共に、耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、プッシュプル式のロック機構を有しながらも軸方向の寸法を小さくし、コネクタの小型化を図ることができる。また、可動スリーブの剛性を高めることができ、こじり等による可動スリーブの変形または破損を防止でき、コネクタの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態による電気コネクタを示す外観斜視図である。
【図2】図1中のII−II方向から見た本発明の第1の実施形態による電気コネクタを示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による電気コネクタにおける弾性変形部材を示す外観斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による電気コネクタの基端側における各所の寸法を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における相手コネクタを示す外観斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における相手コネクタを示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による電気コネクタが相手コネクタに接続される際の動作を示す説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態による電気コネクタが相手コネクタに抜き去られる際の動作を示す説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態による電気コネクタを示す断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態による電気コネクタを示す断面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態による電気コネクタを示す断面図である。
【図12】本発明の第5の実施形態による電気コネクタを示す断面図である。
【図13】本発明の第6の実施形態による一対の電気コネクタを示す断面図である。
【図14】相手コネクタの変形例を示す断面図である。
【図15】相手コネクタの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0048】
(第1の実施形態)
図1および図2は本発明のコネクタの第1の実施形態である電気コネクタを示し、図3は当該電気コネクタに設けられる弾性変形部材を示している。図4は当該電気コネクタの基端側における各所の寸法を示している。
【0049】
図1において、本発明のコネクタの第1の実施形態である電気コネクタ1は、プッシュプル式のロック機構を有する同軸コネクタである。電気コネクタ1は、コネクタ本体11の外周側に軸方向に移動可能に可動スリーブ21を設けることにより大略構成されている。
【0050】
コネクタ本体11は、図2に示すように、コネクタ本体11の外殻を形成すると共に、電気コネクタ1の他端側に接続される同軸ケーブル(図示せず)の外部導体と電気的に接続される外部端子として機能する筒状体12を有している。筒状体12は、それぞれ金属材料により筒状に形成された筒状片13と筒状片14とを互いに接合することにより構成されている。すなわち、筒状体12は、電気コネクタ1の製造時において、筒状片13の基端側に形成された接合部13Aと、筒状片14の先端側に形成された接合部14Aとを圧入固定することにより形成される。
【0051】
筒状体12の基端側内部には、上記同軸ケーブルの中心導体と電気的に接続される中心端子15が設けられている。中心端子15は、樹脂等の絶縁材料により形成された支持部材16を介して筒状体12の中心軸と重なり合う位置に固定されており、中心端子15の先端部は後述の嵌合部17内に突出している。
【0052】
筒状体12の先端側には、相手コネクタ2(図5参照)を受け入れ、相手コネクタ2と嵌合する嵌合部17が形成されている。嵌合部17の内部には、相手コネクタ2の先端側が入り込む空間が形成されており、また、嵌合部17は電気コネクタ1の先端側において開口している。また、嵌合部17はコレットチャック状に形成されている。すなわち、嵌合部17の先端側には周方向の複数箇所に割溝18が形成され、嵌合部17の先端部はこれら割溝18によって複数のセグメント19に分割されている。これにより、嵌合部17は弾性力をもって図2中の矢示Dr方向に拡径することができる。さらに、嵌合部17の内周部には係合部20が形成されている。係合部20は、嵌合部17の先端部において径方向内向きに突出し、相手コネクタ2が嵌合部17に嵌合したときに、相手コネクタ2に形成された後述の被係合部36と係合する。
【0053】
可動スリーブ21は、例えば金属材料、樹脂材料等により筒状に形成され、コネクタ本体11の基端側から嵌合部17の先端部にかけてコネクタ本体11の外周側を包囲するようにコネクタ本体11に取り付けられている。また、可動スリーブ21は、コネクタ本体11に対して軸方向、すなわち図2中の矢示Db、Df方向にスライド移動可能に設けられている。
【0054】
さらに、可動スリーブ21の先端部内周には、可動スリーブ21が軸方向において所定の初期位置にあるときに嵌合部17の拡径を阻止し、可動スリーブ21が初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動したときに嵌合部17の拡径を許す拡径規制部22が形成されている。拡径規制部22は可動スリーブ21の先端部から径方向内向きに突出し、可動スリーブ21が初期位置にあるとき、拡径規制部22の内周端面が嵌合部17の先端部外周面に接近している。具体的には、可動スリーブ21が初期位置にあるとき、拡径規制部22の内周端面は嵌合部17の先端部外周面と僅かな隙間を介して対向しつつ、嵌合部17の先端部外周面を全周にわたって包囲している。これにより、嵌合部17が拡径しようとしても、嵌合部17の先端側外周面が拡径規制部22の内周端面に当たるので、拡径することができない。なお、可動スリーブ21が初期位置にあるときに、拡径規制部22の内周端面を嵌合部17の先端部外周面に摺動可能に接触させてもよい。
【0055】
一方、可動スリーブ21が初期位置から軸方向先端側に移動したときには、拡径規制部22が嵌合部17の先端部よりも矢示Df方向にずれることで嵌合部17の先端部から離間する。これにより、嵌合部17の先端側外周面と可動スリーブ21の先端側内周面との間に比較的大きな隙間が形成され、嵌合部17が拡径可能な状態となる。また、可動スリーブ21が初期位置から軸方向基端側に移動したときには、拡径規制部22が嵌合部17の先端部よりも矢示Db方向にずれることで嵌合部17の先端部から離間する。この場合には、嵌合部17の先端部が可動スリーブ21から突出し、嵌合部17が拡径可能な状態となる。
【0056】
さらに、可動スリーブ21の基端側外周部は、作業者が可動スリーブ21を移動させる際に作業者が指を当てて可動スリーブを保持する保持部23となり、保持部23には指の滑りを防ぐための凹凸が形成されている。
【0057】
また、電気コネクタ1は、作業者が軸方向に移動させた可動スリーブ21を初期位置に自動的に戻す機構として、弾性変形部材24と、弾性変形部材24を収容する収容部25と、弾性変形部材24の弾性力を利用して可動スリーブ21を初期位置に戻す力を作り出す伝達機構26とを備えている。
【0058】
弾性変形部材24は、図2に示すように、コネクタ本体11の基端側であってコネクタ本体11と可動スリーブ21との間に配置されている。弾性変形部材24は、図3に示すように、樹脂材料により略リング状に形成され、具体的には一部に離間部24Aを有する全体視C字状に形成されている。弾性変形部材24は、弾性力をもって径方向に変形可能である。すなわち、弾性変形部材24の外周側から径方向内向きに外力を加えることにより、弾性変形部材は、離間部24Aの大きさを変動させつつ、径方向内向きに縮径するように変形する。そして、このように変形した状態となった後、外力を加えることを止めると、弾性変形部材24は、その弾性力により、径方向外向きに拡径し、図3に示すような元の形状に戻る。
【0059】
収容部25は、図2に示すように、コネクタ本体11の基端側外周部と可動スリーブ21の基端側内周部との間に形成されている。具体的には、収容部25は、コネクタ本体11の筒状体12の基端側外周部において周方向に伸長する溝である。収容部25内には、弾性変形部材24が径方向内向きに変形可能に収容されている。収容部25の径方向の寸法(溝の深さ寸法)は、弾性変形部材24の径方向内向きにおける所定量の変形が可能となるように設定されている。なお、収容部25の径方向の寸法についてはさらに後述する。また、収容部25の軸方向の寸法は、弾性変形部材24の軸方向の移動を防止しながら、弾性変形部材24の径方向の変形をスムーズに行い得るように設定されている。具体的には、収容部25の軸方向の寸法は、弾性変形部材の軸方向の寸法よりもごく僅かに大きい寸法に設定されている。
【0060】
伝達機構26は、可動スリーブ21を初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動させるときに生じる軸方向の力を、弾性変形部材24を変形させる径方向の力に変換して弾性変形部材24に伝達すると共に、弾性変形部材24が変形した状態から復元しようとする径方向の力を、可動スリーブ21を軸方向先端側または軸方向基端側から初期位置に戻す軸方向の力に変換して可動スリーブ21に伝達する機構である。伝達機構26は、少なくとも、弾性変形部材24の外周部に形成された2つの傾斜面27、28と、可動スリーブ21に形成された摺接部29とから構成されている。
【0061】
図2に示すように、傾斜面27は、弾性変形部材24における軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向外向きに所定の角度をもって傾斜し、その傾斜が維持されるように弾性変形部材24の外周部の全周にわたって伸長している。傾斜面28は、弾性変形部材24における軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向外向きに所定の角度をもって傾斜し、その傾斜が維持されるように弾性変形部材24の外周部の全周にわたって伸長している。2つの傾斜面27、28が形成されていることにより、弾性変形部材24はその外周部の軸方向中間部が括れた形状となっている。
【0062】
摺接部29は、可動スリーブ21の基端側内周部から径方向内向きに伸長している。可動スリーブ21が初期位置にあるとき、摺接部29は図2中の押圧緩和位置Poにある。摺接部29が押圧緩和位置Poにあるとき、摺接部29の端部が、弾性変形部材24の軸方向中間部、すなわち傾斜面27と傾斜面28とが互いに接する部分に接触または接近している。このとき、弾性変形部材24は変形していない状態、または摺接部29の接触等により僅かに径方向内向きに変形した状態にある。
【0063】
また、可動スリーブ21が初期位置から軸方向先端側に移動すると、摺接部29は押圧緩和位置Poから押圧位置Pfに移動する。摺接部29が押圧緩和位置Poから押圧位置Pfに移動する間、摺接部29の端部は弾性変形部材24の傾斜面27に摺接する。このとき、摺接部29により弾性変形部材24の傾斜面27が押され、これにより弾性変形部材24が径方向内向きに大きく変形する。また、可動スリーブ21が初期位置から軸方向基端側に移動すると、摺接部29は押圧緩和位置Poから押圧位置Pbに移動する。摺接部29が押圧緩和位置Poから押圧位置Pbに移動する間、摺接部29の端部は弾性変形部材24の傾斜面28に摺接する。このとき、摺接部29により弾性変形部材24の傾斜面28が押され、これにより弾性変形部材24が径方向内向きに大きく変形する。
【0064】
摺接部29は、可動スリーブ21の基端側内周部に全周にわたって伸長するような突条として形成してもよいし、摺接部29を複数の凸状部片に分割し、各凸状部片を可動スリーブ21の基端側内周部に周方向に一定のまたはそれぞれ異なった間隔をもって配置してもよい。
【0065】
ここで、電気コネクタ1の基端側における各所の寸法関係について説明する。図4に示すように、収容部25が形成された部分における筒状体12の内径寸法をaとし、弾性変形部材24の軸方向先端部または軸方向基端部における厚さ寸法をbとし、可動スリーブ21において摺接部29が形成された部分の内径寸法cとすると、次の式(1)に示す関係が成立するように各所の寸法が設定されている。
【0066】
c<a+2b (1)
この寸法関係により、可動スリーブ21の軸方向の移動が、嵌合部17の拡径の阻止と許可との切換を拡径規制部22により適切に行うことができる範囲に制限される。これにより、可動スリーブ21がこの範囲を超えて軸方向に大きく移動して可動スリーブ21がコネクタ本体11から脱落してしまうことを防止することができる。
【0067】
すなわち、各寸法間に式(1)の関係が成立する場合には、図4に示すように、可動スリーブ21が初期位置から軸方向先端側に移動し、弾性変形部材24の傾斜面27が摺接部29に押され、弾性変形部材24が収容部25内において径方向内向きに大きく変形し、弾性変形部材24の内周面が、収容部25を形成する溝の底面に接した状態となったときに、摺接部29が弾性変形部材24の傾斜面27の軸方向先端部に当接する。これにより、可動スリーブ21が軸方向先端側へこれ以上移動することができなくなる。同様に、可動スリーブ21が初期位置から軸方向基端側に移動し、弾性変形部材24の傾斜面28が摺接部29に押され、弾性変形部材24の内周面が収容部25を形成する溝の底面に接した状態となったときに、摺接部29が弾性変形部材24の傾斜面28の軸方向基端部に当接し、可動スリーブ21が軸方向基端側へこれ以上移動することができなくなる。
【0068】
以上のような構成を有する電気コネクタ1の製造方法は次の通りである。図2において、まず、支持部材16を介して中心端子15が取り付けられた筒状片13を、可動スリーブ21の基端側から可動スリーブ21内に挿入し、筒状片13をその接合部13Aが摺接部29と対応する位置となるように配置する。次に、可動スリーブ21の基端側から可動スリーブ21内へ、弾性変形部材24を径方向内向きに変形させつつ挿入し、弾性変形部材24を、可動スリーブ21の内周側と筒状片13の接合部13Aの外周側との間に配置する。これにより、弾性変形部材24の軸方向中間部が摺接部29と対応する位置に配置される。次に、可動スリーブ21の基端側から可動スリーブ21内に筒状片14の接合部14Aの先端側を挿入し、接合部14Aの先端部を、筒状片13の接合部13Aと弾性変形部材24との間に形成された隙間に位置するように位置決めし、その状態で筒状片14を可動スリーブ21内に押し込み、筒状片14の接合部14Aと筒状片13の接合部13Aとを圧入固定させる。これにより、電気コネクタ1が完成する。
【0069】
このように、筒状体12を、収容部25の軸方向先端側の側壁となる部分が形成された筒状片13と、収容部25の軸方向基端側の側壁となる部分が形成された筒状片14とに分断し、製造時に両者を組み合わせる構成とすることにより、完成状態において弾性変形部材24が収容部25内に取外不能に収容される構造を有する電気コネクタ1を容易に製造することができる。
【0070】
図5および図6は電気コネクタ1と接続される相手コネクタを示している。図5および図6に示すように、相手コネクタ2は、その外殻を形成すると共に外部端子として機能する外筒体31を有している。外筒体31は金属材料により段付き筒状に形成されている。相手コネクタ2は、その他側が例えば器機の筐体または回路基板(図示せず)等に直接取り付けられる。そして、外筒体31は例えば当該器機または回路基板の接地ライン等に電気的に接続される。
【0071】
外筒体31の内部には、例えば上記器機または回路基板の信号ライン等と電気的に接続される相手端子32が設けられている。相手端子32は、樹脂等の絶縁材料により形成された支持部材33を介して外筒体31の中心軸と重なり合う位置に固定されており、相手端子32の先端部には、電気コネクタ1の中心端子15の先端部が入り込む接続穴34が形成されている。
【0072】
また、外筒体31の先端側は、電気コネクタ1の嵌合部17内に挿入されて嵌合される挿入部35となり、挿入部35の先端から基端側に向かって所定距離離れた位置には、被係合部36が形成されている。被係合部36は挿入部35の外周部の全周にわたって伸長する凹みであり、凹みの形状は、電気コネクタ1の嵌合部17の内周部に形成された係合部20の形状と一致している。
【0073】
電気コネクタ1の可動スリーブ21が初期位置から軸方向先端側に移動しているときに、相手コネクタ2の挿入部35を電気コネクタ1の嵌合部17内に進入させると、相手コネクタ2の挿入部35の外周面が、電気コネクタ1の係合部20の端面に摺接する。そして、相手コネクタ2の挿入部35が電気コネクタ1の嵌合部17内の奥に向かって進入する際には、嵌合部17が拡径した状態となる。さらに、相手コネクタ2の挿入部35が電気コネクタ1の嵌合部17の奥まで進入すると、電気コネクタ1の係合部20が相手コネクタ2の被係合部36内に入り込み、係合部20と被係合部36とが互いに係合する。
【0074】
図7は電気コネクタ1が相手コネクタ2に接続される際の動作を示している。図8は電気コネクタ1が相手コネクタ2から抜き去られる際の動作を示している。
【0075】
図7(1)において、電気コネクタ1を相手コネクタ2に接続する際に、作業者は、可動スリーブ21の保持部23を指で保持し、電気コネクタ1の嵌合部17の先端部を相手コネクタ2の挿入部35の先端部に接触させた状態で電気コネクタ1を相手コネクタ2に向けて押すように力を加える。この力により、電気コネクタ1の可動スリーブ21が初期位置から軸方向先端側に移動する。可動スリーブ21が初期位置から軸方向先端側に移動すると、可動スリーブ21に形成された拡径規制部22が嵌合部17の先端部から離間し、嵌合部17が拡径可能な状態になる。また、このような可動スリーブ21の移動に伴って摺接部29が押圧緩和位置Poから押圧位置Pf(図2参照)に移動し、摺接部29の端部が弾性変形部材24の傾斜面27に摺接し、傾斜面27を押す。これにより、弾性変形部材24が径方向内向きに変形する。
【0076】
続いて、図7(2)において、作業者が電気コネクタ1を相手コネクタ2に向けてさらに押すと、相手コネクタ2の挿入部35が電気コネクタ1の嵌合部17内に進入を開始する。相手コネクタ2の挿入部35が電気コネクタ1の嵌合部17内の奥に向かって進入するに連れて嵌合部17が拡径し、相手コネクタ2の挿入部35が電気コネクタ1の嵌合部17内の奥に達すると、図7(3)に示すように、電気コネクタ1の中心端子15が相手コネクタ2の相手端子32の接続穴34内に嵌合すると共に、電気コネクタ1の係合部20が相手コネクタ2の被係合部36に係合する。作業者は、係合部20が被係合部36に係合するときに発せられる音や振動により、電気コネクタ1が相手コネクタ2に確実に接続されたことを認識する。
【0077】
続いて、図7(4)において、作業者が可動スリーブ21の保持部23から指を離すと、可動スリーブ21を軸方向先端側に移動させていた軸方向の力が消え、これに伴い、弾性変形部材24を径方向内向きに変形させていた力も消えるので、弾性変形部材24は自らの弾性力により元の形状に復元しようとする。そして、弾性変形部材24が元の形状に復元しようとする径方向外向きの力が弾性変形部材24の傾斜面27に接触している可動スリーブ21の摺接部29に加わる。これにより、摺接部29が軸方向基端側に押される。よって、摺接部29が押圧位置Pfから押圧緩和位置Po(図2参照)に押し戻され、これに伴って軸方向先端側に移動している可動スリーブ21が初期位置に戻される。
【0078】
可動スリーブ21が初期位置に戻ると、拡径規制部22が嵌合部17の先端側外周部に接近し、嵌合部17の拡径が阻止される。これにより、電気コネクタ1の係合部20が相手コネクタ2の被係合部36に係合された状態で固定される。この結果、電気コネクタ1が相手コネクタ2に接続された状態でロックされる。
【0079】
一方、図8(1)において、電気コネクタ1を相手コネクタ2から抜き去る際には、作業者は、可動スリーブ21の保持部23を指で保持し、電気コネクタ1を相手コネクタ2から離す方向に引っ張るように力を加える。この力により、電気コネクタ1の可動スリーブ21が初期位置から軸方向基端側に移動する。可動スリーブ21が初期位置から軸方向基端側に移動すると、可動スリーブ21に形成された拡径規制部22が嵌合部17の先端部から離間し、嵌合部17が拡径可能な状態になり、ロックが解除される。また、このような可動スリーブ21の移動に伴って摺接部29が押圧緩和位置Poから押圧位置Pb(図2参照)に移動し、摺接部29の端部が弾性変形部材24の傾斜面28に摺接し、傾斜面28を押す。これにより、弾性変形部材24が径方向内向きに変形する。
【0080】
続いて、図8(2)において、作業者が電気コネクタ1を相手コネクタ2から離す方向にさらに引っ張ると、電気コネクタ1の係合部20が嵌合部17を拡径させつつ、相手コネクタ2の被係合部36から外れる。これにより、電気コネクタ1の中心端子15が相手コネクタ2の相手端子32の接続穴34から抜け、電気コネクタ1の嵌合部17から相手コネクタ2の挿入部35が退出し、電気コネクタ1が相手コネクタ2から抜き去られる。
【0081】
電気コネクタ1が相手コネクタ2から抜き去られると、可動スリーブ21を軸方向基端側に移動させていた軸方向の力が消え、これに伴い、弾性変形部材24を径方向内向きに変形させていた力も消えるので、弾性変形部材24は自らの弾性力により元の形状に復元しようとする。そして、弾性変形部材24が元の形状に復元しようとする径方向外向きの力が弾性変形部材24の傾斜面28に接触している可動スリーブ21の摺接部29に加わる。これにより、摺接部29が軸方向先端側に押され、摺接部29が押圧位置Pbから押圧緩和位置Po(図2参照)に押し戻され、これに伴って軸方向基端側に移動している可動スリーブ21が初期位置に戻される。
【0082】
以上説明した通り、本発明の第1の実施形態による電気コネクタ1によれば、可動スリーブ21を初期位置に自動的に戻す構成を、可動スリーブ21とコネクタ本体11との間に弾性変形部材24を配置するといった簡単な構成で実現することができる。したがって、可動スリーブを初期位置に自動的に戻す構造を、コイルばねを用いて実現する場合や、可動スリーブ自体を弾性変形させることにより実現する場合と比較して、電気コネクタ1の軸方向の寸法を小さくすることができ、電気コネクタ1の小型化を図ることができる。
【0083】
また、本発明の第1の実施形態による電気コネクタ1によれば、可動スリーブ21自体を弾性変形させる必要がないので、可動スリーブ21の剛性を高めることができ、こじり等により可動スリーブ21が変形し、または破損することを防止することができ、電気コネクタ1の耐久性を高めることができる。
【0084】
(第2の実施形態)
図9は本発明のコネクタの第2の実施形態である電気コネクタを示している。図9において、図1ないし図8に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。図9に示すように、本発明のコネクタの第2の実施形態である電気コネクタ41は、作業者が軸方向に移動させた可動スリーブ21を初期位置に自動的に戻す機構として、弾性変形部材42と、弾性変形部材42を収容する収容部43と、弾性変形部材42の弾性力を利用して可動スリーブ21を初期位置に戻す力を作り出す伝達機構44を備えている。
【0085】
弾性変形部材42は、樹脂材料により全体視C字状に形成され、弾性力をもって径方向に変形可能である。これらの点は、第1の実施形態における弾性変形部材24と同様である。
【0086】
収容部43は、コネクタ本体11の基端側外周部と可動スリーブ21の基端側内周部との間に形成されている。収容部43は、コネクタ本体11の筒状体12の基端側外周部において周方向に伸長する溝43Aと、可動スリーブ21の基端側内周部において周方向に伸長し、溝43Aと対向する位置に配置された溝43Bとから構成されている。収容部25内には、弾性変形部材42が径方向内向きに変形可能であるものの、軸方向に移動不能となるように収容されている。
【0087】
伝達機構44は、可動スリーブ21を初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動させるときに生じる軸方向の力を、弾性変形部材42を変形させる径方向の力に変換して弾性変形部材42に伝達すると共に、弾性変形部材42が変形した状態から復元しようとする径方向の力を、可動スリーブ21を軸方向先端側または軸方向基端側から初期位置に戻す軸方向の力に変換して可動スリーブ21に伝達する機構である。伝達機構44は、少なくとも、弾性変形部材42の外周部に形成された2つの傾斜面45、46と、可動スリーブ21に形成された2つの摺接部47、48とから構成されている。
【0088】
傾斜面45は、弾性変形部材42における軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向内向きに所定の角度をもって傾斜し、その傾斜が維持されるように弾性変形部材42の外周部の全周にわたって伸長している。傾斜面46は、弾性変形部材42における軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向内向きに所定の角度をもって傾斜し、その傾斜が維持されるように弾性変形部材42の外周部の全周にわたって伸長している。2つの傾斜面45、46が形成されていることにより、弾性変形部材42はその外周部の軸方向中間部が径方向外向きに出っ張った形状となっている。以下、弾性変形部材42の軸方向中間部において径方向外向きに出っ張った部分を出っ張り部42Aという。
【0089】
摺接部47、48は、可動スリーブ21の基端側内周部において、弾性変形部材42の傾斜面45、46にそれぞれ対応する位置に形成されている。具体的には、可動スリーブ21の基端側内周部に形成された溝43Bにおいて軸方向先端側に位置する周縁部が摺接部47に相当し、溝43Bにおいて軸方向基端側に位置する周縁部が摺接部48に相当する。
【0090】
可動スリーブ21が初期位置にあるとき、弾性変形部材42の出っ張り部42Aが摺接部47と摺接部48との間の中間に位置し、摺接部47の端部が傾斜面45に接触または接近し、摺接部48の端部が傾斜面46に接触または接近している。このとき、弾性変形部材42は変形していない状態、出っ張り部42Aの端部が溝43Bの底面に接触して僅かに径方向内向き変形した状態、または摺接部47、48が傾斜面45、46にそれぞれ接触して僅かに径方向内向き変形した状態にある。
【0091】
一方、作業者が可動スリーブ21の保持部23を指で保持し、可動スリーブ21を軸方向先端側に押すように力を加えると、この力により、可動スリーブ21が初期位置から軸方向先端側に移動する。これに伴い、摺接部48が傾斜面46に摺接しながら軸方向先端側に移動する。これにより、摺接部48により傾斜面46が押され、弾性変形部材42が径方向内向きに大きく変形する。そして、作業者が可動スリーブ21の保持部23から指を離すと、弾性変形部材42が元の形状に戻ろうとする径方向外向きの力が傾斜面46に接触している摺接部48に加わる。これにより、摺接部48が軸方向基端側に押され、軸方向先端側に移動している可動スリーブ21が初期位置に押し戻される。
【0092】
また、作業者が可動スリーブ21の保持部23を指で保持し、可動スリーブ21を軸方向基端側に押すように力を加えると、この力により、可動スリーブ21が初期位置から軸方向基端側に移動する。これに伴い、摺接部47が傾斜面45に摺接しながら軸方向基端側に移動する。これにより、摺接部47により傾斜面45が押され、弾性変形部材42が径方向内向きに大きく変形する。そして、作業者が可動スリーブ21の保持部23から指を離すと、弾性変形部材42が元の形状に戻ろうとする径方向外向きの力が傾斜面45に接触している摺接部47に加わる。これにより、摺接部47が軸方向先端側に押され、軸方向基端側に移動している可動スリーブ21が初期位置に押し戻される。
【0093】
以上のような構成を有する本発明の第2の実施形態による電気コネクタ41によっても、第1の実施形態による電気コネクタ1と同様の作用効果を得ることができる。
【0094】
(第3の実施形態)
図10は本発明のコネクタの第3の実施形態である電気コネクタを示している。図10において、図1ないし図8に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。図10に示すように、本発明のコネクタの第3の実施形態である電気コネクタ51は、作業者が軸方向に移動させた可動スリーブ21を初期位置に自動的に戻す機構の一部である弾性変形部材として、金属材料をプレス加工することにより形成された弾性変形部材52を用いている。弾性変形部材52は、全体視C字状に形成され、弾性力をもって径方向に変形可能であり、弾性変形部材52の外周部には、軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向外向きに傾斜する傾斜面53と、軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向外向きに傾斜する傾斜面54とが形成されている。その他の構成は、第1の実施形態による電気コネクタ1と同様であり、また、径方向内向きに変形した弾性変形部材52が元の形状に復元する径方向外向きの力を利用して可動スリーブ21を軸方向に自動的に移動させて初期位置に戻す動作も第1の実施形態による電気コネクタ1と同様である。
【0095】
以上のような構成を有する本発明の第3の実施形態による電気コネクタ51によっても、第1の実施形態による電気コネクタ1と同様の作用効果を得ることができる。
【0096】
(第4の実施形態)
図11は本発明のコネクタの第4の実施形態である電気コネクタを示している。図11において、図1ないし図8に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。図11に示すように、本発明のコネクタの第4の実施形態である電気コネクタ61において、弾性変形部材62は、樹脂材料により全体視C字状に形成され、弾性力をもって径方向外向き変形可能である。また、弾性変形部材62を収容する収容部63は可動スリーブ21の基端側内周部において周方向に伸長する溝である。
【0097】
また、弾性変形部材62の弾性力を利用して可動スリーブ21を初期位置に戻す力を作り出す伝達機構64は少なくとも傾斜面65、66および摺接部67により構成されている。すなわち、弾性変形部材62の内周部には傾斜面65、66が形成されている。傾斜面65は、弾性変形部材62の軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向内向きに傾斜し、傾斜面66は、弾性変形部材62の軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向内向きに傾斜している。さらに、コネクタ本体11の筒状体12の基端側外周部には、径方向外向きに伸長した摺接部67が形成されている。摺接部67は、筒状体12の基端側外周部に全周にわたって伸長するような突条として形成してもよいし、摺接部67を複数の凸状部片に分割し、各凸状部片を筒状体12の基端側外周部に周方向に一定のまたはそれぞれ異なった間隔をもって配置してもよい。
【0098】
可動スリーブ21が初期位置にあるとき、摺接部67の端部が、弾性変形部材62の軸方向中間部、すなわち傾斜面65と傾斜面66とが互いに接する部分に接触または接近している。このとき、弾性変形部材62は変形していない状態、または摺接部67の接触により僅かに径方向外向きに変形した状態にある。
【0099】
一方、作業者が可動スリーブ21の保持部23を指で保持し、可動スリーブ21を軸方向先端側に押すように力を加えると、この力により、可動スリーブ21が初期位置から軸方向先端側に移動し、これに伴って弾性変形部材62が軸方向先端側に移動する。これにより、摺接部67が傾斜面66に摺接し、これにより摺接部67により傾斜面66が押され、弾性変形部材62が径方向外向きに大きく変形する。そして、作業者が可動スリーブ21の保持部23から指を離すと、弾性変形部材62が元の形状に戻ろうとする径方向内向きの力が傾斜面66に接触している摺接部67に加わる。これにより、摺接部67が軸方向基端側に押され、軸方向先端側に移動している可動スリーブ21が初期位置に押し戻される。
【0100】
また、作業者が可動スリーブ21の保持部23を指で保持し、可動スリーブ21を軸方向基端側に押すように力を加えると、この力により、可動スリーブ21が初期位置から軸方向基端側に移動し、これに伴って弾性変形部材62が軸方向基端側に移動する。これにより、摺接部67が傾斜面65に摺接し、これにより摺接部67により傾斜面65が押され、弾性変形部材62が径方向外向きに大きく変形する。そして、作業者が可動スリーブ21の保持部23から指を離すと、弾性変形部材62が元の形状に戻ろうとする径方向内向きの力が傾斜面65に接触している摺接部67に加わる。これにより、摺接部67が軸方向先端側に押され、軸方向基端側に移動している可動スリーブ21が初期位置に押し戻される。
【0101】
以上のような構成を有する本発明の第4の実施形態による電気コネクタ61によっても、第1の実施形態による電気コネクタ1と同様の作用効果を得ることができる。
【0102】
(第5の実施形態)
図12は本発明のコネクタの第5の実施形態である電気コネクタを示している。図12において、図1ないし図8に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。図12に示すように、本発明のコネクタの第5の実施形態である電気コネクタ71において、弾性変形部材72は、樹脂材料により全体視C字状に形成され、弾性力をもって径方向外向き変形可能である。また、弾性変形部材72を収容する収容部73は、コネクタ本体11の筒状体12の基端側外周部において周方向に伸長する溝73Aと、可動スリーブ21の基端側内周部において周方向に伸長し、溝73Aと対向する位置に配置された溝73Bとから構成されている。
【0103】
また、弾性変形部材72の弾性力を利用して可動スリーブ21を初期位置に戻す力を作り出す伝達機構74は少なくとも傾斜面75、76および摺接部77、78により構成されている。すなわち、弾性変形部材72の内周部には傾斜面75、76が形成されている。傾斜面75は、弾性変形部材72の軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向外向きに傾斜し、傾斜面76は、弾性変形部材72の軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向外向きに傾斜している。傾斜面75、76が形成されていることにより、弾性変形部材72は、その内周部の軸方向中間部が径方向内向きに出っ張った形状となっている。以下、弾性変形部材72の軸方向中間部において径方向内向きに出っ張った部分を出っ張り部72Aという。また、コネクタ本体11の筒状体12の基端側内周部に形成された溝73Aにおいて軸方向先端側に位置する周縁部が摺接部77に相当し、溝73Aにおいて軸方向基端側に位置する周縁部が摺接部78に相当する。
【0104】
可動スリーブ21が初期位置にあるとき、弾性変形部材72の出っ張り部72Aが摺接部77と摺接部78との間の中間に位置し、摺接部77の端部が傾斜面75に接触または接近し、摺接部78の端部が傾斜面76に接触または接近している。このとき、弾性変形部材72は変形していない状態、出っ張り部72Aの端部が溝73Aの底面に接触して僅かに径方向内向き変形した状態、または摺接部77、78が傾斜面75、76にそれぞれ接触して僅かに径方向内向き変形した状態にある。
【0105】
一方、作業者が可動スリーブ21の保持部23を指で保持し、可動スリーブ21を軸方向先端側に押すように力を加えると、この力により、可動スリーブ21が初期位置から軸方向先端側に移動する。これに伴い、摺接部77が傾斜面75に摺接しながら軸方向先端側に移動する。これにより、傾斜面75が摺接部77により押され、弾性変形部材72が径方向外向きに大きく変形する。そして、作業者が可動スリーブ21の保持部23から指を離すと、弾性変形部材72が元の形状に戻ろうとする径方向内向きの力が傾斜面75に接触している摺接部77に加わる。これにより、摺接部77が軸方向基端側に押され、軸方向先端側に移動している可動スリーブ21が初期位置に押し戻される。
【0106】
また、作業者が可動スリーブ21の保持部23を指で保持し、可動スリーブ21を軸方向基端側に押すように力を加えると、この力により、可動スリーブ21が初期位置から軸方向基端側に移動する。これに伴い、摺接部78が傾斜面76に摺接しながら軸方向基端側に移動する。これにより、傾斜面76が摺接部78により押され、弾性変形部材72が径方向外向きに大きく変形する。そして、作業者が可動スリーブ21の保持部23から指を離すと、弾性変形部材72が元の形状に戻ろうとする径方向内向きの力が傾斜面76に接触している摺接部78に加わる。これにより、摺接部78が軸方向先端側に押され、軸方向基端側に移動している可動スリーブ21が初期位置に押し戻される。
【0107】
以上のような構成を有する本発明の第5の実施形態による電気コネクタ61によっても、第1の実施形態による電気コネクタ1と同様の作用効果を得ることができる。
【0108】
(第6の実施形態)
図13は本発明の一対のコネクタの実施形態である一対の電気コネクタを示している。図13において、本発明の一対のコネクタの実施形態である一対の電気コネクタは、第1の電気コネクタ81と第2の電気コネクタ82であり、両者は互いに接続される。
【0109】
第1の電気コネクタ81は、筒状に形成された筒状体83、筒状体83の内部に支持部材84を介して支持された軸方向に伸長する中心端子85、および筒状体83の先端側に形成され、第2の電気コネクタ82を受け入れて第2の電気コネクタ82と嵌合する嵌合部86を備えている。嵌合部86は弾性力をもって拡径可能であり、嵌合部86の内周部には係合部87が形成され、第2の電気コネクタ82の嵌合部86内への進入が開始されたときに嵌合部86が拡径して第2の電気コネクタ82の嵌合部86内への進入を許し、第2の電気コネクタ82の嵌合部86内への進入が完了するときに嵌合部86が元の形状に向かって戻ると共に係合部87が第2の電気コネクタ82に形成された被係合部95と係合する。また、第1の筒状体83の外周側には筒状の補強ガイド88が設けられている。
【0110】
第2の電気コネクタ82は、コネクタ本体89の外周側に、コネクタ本体89に対して軸方向に移動可能に可動スリーブ90を設けることにより大略構成されている。
【0111】
コネクタ本体89は、筒状に形成された筒状体91、および筒状体91の基端側内部に支持部材92を介して支持された軸方向に伸長する中心端子93を有している。また、筒状体91の先端側は、第1の電気コネクタ81の嵌合部86内に挿入されて嵌合される挿入部94となり、また、筒状体91において挿入部94の基端側外周部には被係合部95が形成されている。
【0112】
可動スリーブ90は、筒状に形成され、その先端部と軸方向中間部との2箇所に、第1の電気コネクタ81の嵌合部86の拡径を規制する拡径規制部96、97が形成されている。第1の電気コネクタ81に第2の電気コネクタ82を接続しようとして、第1の電気コネクタ81の嵌合部86の先端に、第2の電気コネクタ82の挿入部94の先端を接触させた状態において、可動スリーブ90が軸方向における所定の初期位置にあるときには、拡径規制部96が嵌合部86の外周部に接近または接触する。これにより、嵌合部86の先端側の拡径が阻止される。一方、この状態から、可動スリーブ90を軸方向先端側に移動させると、拡径規制部96が嵌合部86の外周部から離間する。これにより、嵌合部86が拡径可能になる。また、第1の電気コネクタ81の嵌合部86の奥まで第2の電気コネクタ82の挿入部94が挿入され、第1の電気コネクタ81と第2の電気コネクタ82とが接続された状態、即ち係合部87と被係合部95とが係合した状態において、可動スリーブ90が軸方向における所定の初期位置にあるときには、拡径規制部97が嵌合部86の外周部に接近または接触する。これにより、嵌合部86の先端側の拡径が阻止される。一方、この状態から、可動スリーブ90を軸方向基端側に移動させたときには、拡径規制部97が嵌合部86の外周部から離間する。これにより嵌合部86が拡径可能になる。
【0113】
また、第2の電気コネクタ82は、軸方向先端側または軸方向基端側に移動した可動スリーブ90を初期位置に自動的に戻す機構として、弾性変形部材98と、弾性変形部材98を収容する収容部99と、弾性変形部材98の弾性力を利用して可動スリーブ90を初期位置に戻す力を作り出す伝達機構100とを備えている。弾性変形部材98および収容部99は、第1の実施形態における弾性変形部材24および収容部25とそれぞれ同様に構成されている。また、伝達機構100は、少なくとも、弾性変形部材98の外周部に形成された2つの傾斜面101、102と、可動スリーブ90の基端側内周部に形成された摺接部103とから構成され、これらの構成は、本実施形態における伝達機構26を構成する傾斜面27、28および摺接部29と同様である。
【0114】
このような構成を有する本発明の第6の実施形態による一対の電気コネクタによっても、上述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0115】
なお、上述した各実施形態では、本発明を適用した電気コネクタ1、41、51、61、71、81、82として、単一の中心端子15、85、93を有する同軸コネクタを例にあげたが、本発明はこれに限らない。本発明の電気コネクタは、外部端子の内周側に複数の電気端子を有する多芯コネクタにも適用することができる。
【0116】
また、上述した各実施形態では、本発明を適用した電気コネクタ1、41、51、61、71、81、82として、横断面形状が円形の電気コネクタを例にあげたが、本発明はこれに限らず、横断面形状が多角形、例えば四角形の電気コネクタにも適用することができる。
【0117】
また、図14に示す相手コネクタ111のように、外筒体31の外周側に補強ガイド112を設けてもよい。補強ガイド112は筒状に形成され、電気コネクタ1を相手コネクタ111に接続したときに、電気コネクタ1の可動スリーブ21の先端側における外周側を全周に亘って包囲する。補強ガイド112により、こじり等により、電気コネクタ1または相手コネクタ111に加わる外力から電気コネクタ1および相手コネクタ111を保護することができ、電気コネクタ1および相手コネクタ111の耐久性を高めることができる。
【0118】
また、図15に示す相手コネクタ121のように、外筒体122の先端側方向において被係合部123に隣接する部分に、外筒体122の外周部が全周にわたって径方向外向きに盛り上がる盛り上がり部124を形成してもよい。この場合、外筒体122の先端部の外径は、図5または図6に示す外筒体31の挿入部35の外径よりも小さい。このような構成でも、電気コネクタ1の嵌合部17内に相手コネクタ121が進入したときに、盛り上がり部124により係合部20を径方向外向きに押し、嵌合部17を拡径させることができ、電気コネクタ1の嵌合部17内の奥まで相手コネクタ121の進入したときには、嵌合部17を元の形状に戻るように縮径させ、係合部20を相手コネクタ121の被係合部123に係合させることができる。
【0119】
また、上述した各実施形態では、本発明を電気コネクタに適用した場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、光信号端子を有する光コネクタにも適用することができる。
【0120】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うコネクタもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0121】
1、41、51、61、71、81 電気コネクタ
2、82、111、121 相手コネクタ
11、89 コネクタ本体
12、83、91 筒状体
15、85、93 中心端子
16、84、92 支持部材
17、86 嵌合部
20、87 係合部
21、90 可動スリーブ
22、96、97 拡径規制部
24、42、52、62、72、98 弾性変形部材
25、43、63、73、99 収容部
26、44、64、74、100 伝達機構
27、28、45、46、53、54、65、66、75、76、101、102 傾斜面
29、47、48、67、77、78、103 摺接部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタと着脱可能に接続するコネクタであって、
筒状に形成された筒状体、前記筒状体の基端側内部に支持部材を介して支持された軸方向に伸長する端子、および前記筒状体の先端側に形成され、前記相手コネクタを受け入れて前記相手コネクタと嵌合する嵌合部を有し、前記嵌合部は弾性力をもって拡径可能であり、前記嵌合部の内周側には係合部が形成され、前記相手コネクタの前記嵌合部内への進入が開始されたときに前記嵌合部が拡径して前記相手コネクタの前記嵌合部内への進入を許し、前記相手コネクタの前記嵌合部内への進入が完了するときに前記嵌合部が元の形状に向かって戻ると共に前記係合部が前記相手コネクタに形成された被係合部と係合するコネクタ本体と、
筒状に形成され、前記コネクタ本体の外周側に前記コネクタ本体に対して軸方向に移動可能に設けられ、先端側には前記嵌合部の拡径を規制する拡径規制部が形成され、軸方向において所定の初期位置にあるときには前記拡径規制部が前記嵌合部の外周部に接近または接触することにより前記嵌合部の拡径を阻止し、前記初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動したときには前記拡径規制部が前記嵌合部の外周部から離間することにより前記嵌合部の拡径を許す可動スリーブと、
略リング状に形成され、弾性力をもって径方向に変形可能な弾性変形部材と、
前記コネクタ本体の基端側外周部と前記可動スリーブの基端側内周部との間に形成され、前記弾性変形部材を径方向に変形可能な状態で収容する収容部と、
前記可動スリーブを前記初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動させるときに生じる軸方向の力を、前記弾性変形部材を変形させる径方向の力に変換して前記弾性変形部材に伝達すると共に、前記弾性変形部材が変形した状態から復元しようとする径方向の力を、前記可動スリーブを前記軸方向先端側または前記軸方向基端側から前記初期位置に戻す軸方向の力に変換して前記可動スリーブに伝達する伝達機構とを備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記弾性変形部材はC字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記伝達機構は、
前記弾性変形部材の外周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向外向きに傾斜する第1の傾斜面と、
前記弾性変形部材の外周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向外向きに傾斜する第2の傾斜面と、
前記可動スリーブの基端側内周部から径方向内向きに伸長し、その端部が、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向先端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第1の傾斜面に摺接し、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向基端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第2の傾斜面に摺接する摺接部とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記伝達機構は、
前記弾性変形部材の外周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向内向きに傾斜する第1の傾斜面と、
前記弾性変形部材の外周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向内向きに傾斜する第2の傾斜面と、
前記可動スリーブの基端側内周部から径方向内向きに伸長し、その端部が、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向先端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第2の傾斜面に摺接する第1の摺接部と、
前記可動スリーブの基端側内周部から径方向内向きに伸長し、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向基端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第1の傾斜面に摺接する第2の摺接部とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記伝達機構は、
前記弾性変形部材の内周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向内向きに傾斜する第1の傾斜面と、
前記弾性変形部材の内周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向内向きに傾斜する第2の傾斜面と、
前記コネクタ本体の前記筒状体の基端側外周部から径方向外向きに伸長し、その端部が、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向先端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第2の傾斜面に摺接し、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向基端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第1の傾斜面に摺接する摺接部とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記伝達機構は、
前記弾性変形部材の内周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向先端側に向けて径方向外向きに傾斜する第1の傾斜面と、
前記弾性変形部材の内周部に形成され、前記弾性変形部材における軸方向中間部から軸方向基端側に向けて径方向外向きに傾斜する第2の傾斜面と、
前記コネクタ本体の前記筒状体の基端側外周部から径方向内向きに伸長し、その端部が、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向先端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第1の傾斜面に摺接する第1の摺接部と、
前記コネクタ本体の前記筒状体の基端側外周部から径方向内向きに伸長し、前記可動スリーブが前記初期位置から軸方向基端側に移動するときに前記弾性変形部材の前記第2の傾斜面に摺接する第2の摺接部とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項7】
互いに着脱可能に接続される第1のコネクタおよび第2のコネクタからなる一対のコネクタであって、
前記第1のコネクタは、筒状に形成された第1の筒状体、前記第1の筒状体の内部に第1の支持部材を介して支持された軸方向に伸長する第1の端子、および前記第1の筒状体の先端側に形成され、前記第2のコネクタを受け入れて前記第2のコネクタと嵌合する嵌合部を備え、前記嵌合部は弾性力をもって拡径可能であり、前記嵌合部の内周側には係合部が形成され、前記第2のコネクタの前記嵌合部内への進入が開始されたときに前記嵌合部が拡径して前記第2のコネクタの前記嵌合部内への進入を許し、前記第2のコネクタの前記嵌合部内への進入が完了するときに前記嵌合部が元の形状に向かって戻ると共に前記係合部が前記第2のコネクタに形成された被係合部と係合し、
前記第2のコネクタは、
筒状に形成された第2の筒状体、前記第2の筒状体の基端側内部に第2の支持部材を介して支持された軸方向に伸長する第2の端子、および前記第2の筒状体の先端側外周部に形成された前記被係合部を有するコネクタ本体と、
筒状に形成され、前記コネクタ本体の外周側に前記コネクタ本体に対して軸方向に移動可能に設けられ、前記第1のコネクタの前記嵌合部の拡径を規制する拡径規制部を有し、軸方向における所定の初期位置にあるときには前記拡径規制部が前記嵌合部の外周部に接近または接触することにより前記嵌合部の先端側の拡径を阻止し、前記初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動したときには前記拡径規制部が前記嵌合部の外周部から離間することにより前記嵌合部の拡径を許す可動スリーブと、
略リング状に形成され、弾性力をもって径方向に変形可能な弾性変形部材と、
前記コネクタ本体の基端側外周部と前記可動スリーブの基端側内周部との間に形成され、前記弾性変形部材を径方向に変形可能な状態で収容する収容部と、
前記可動スリーブを前記初期位置から軸方向先端側または軸方向基端側に移動させるときに生じる軸方向の力を、前記弾性変形部材を変形させる径方向の力に変換して前記弾性変形部材に伝達すると共に、前記弾性変形部材が変形した状態から復元しようとする径方向の力を、前記可動スリーブを前記軸方向先端側または前記軸方向基端側から前記初期位置に戻す軸方向の力に変換して前記可動スリーブに伝達する伝達機構とを備えていることを特徴とする一対のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−204260(P2012−204260A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69657(P2011−69657)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】