説明

ロック機構

【課題】簡易な構成としつつ、片ロックを防止して開閉体を装置本体に確実にロック可能とすること。
【解決手段】ADF本体20(装置本体)及びADF本体20に開閉自在に設けられたADFカバー21(開閉体)の一端部に、シャフト53の両側に協動して回動可能に設けられた係合部材51・151と、該係合部材51・151と係合可能に形成された凸状の受け部52とが設けられ、該係合部材51・151が該受け部52に係止することによってADF本体20にADFカバー21をロックするロック機構50であって、前記係合部材51・151は、前記シャフト53に接続される腕部54と、該腕部54の先端より上方部に正面略コ字状に切り欠き形成された前記受け部52に係止可能なフック部56と、を設けてなり、一方の係合部材51のフック部56を、他方の係合部材151のフック部156より広く開口するように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック機構の技術に関し、より詳細には、装置本体に対し開閉自在に設けられた開閉体を装置本体に確実かつ容易にロックするための機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ装置やコピー機及びファクシミリ機能と複写機のコピー機能とを備えた複合機等に関して、画像形成装置の上方に自動原稿搬送装置(ADF)を配設したものが公知となっている。この種のADFは、原稿搬送経路に沿って幾つかの開閉体が配設されており、原稿ジャム等が発生した場合にそれらの開閉体を開放してメンテナンスを行うようにしている。例えば、特許文献1に記載されるADFは、ADFの装置本体に、原稿の搬送経路のガイド面を兼ねてプラテンに設けられたガイドカバーと、プラテンから排紙口まで原稿を搬送する案内カバーと、給紙口からプラテン付近まで原稿を案内するアウターカバー等の開閉体が配設され、それぞれ別軸に回動自在に取り付けられている(特許文献1参照)。
【0003】
そして、上記ADF等には、上述した開閉体を閉じた状態で装置本体にロックするためのロック機構が設けられている。このロック機構の構成としては、装置本体及び開閉体にフック状の係合部材と凸状の受け部等とを設け、この係合部材のフック部を受け部にて係止してこの開閉体を装置本体にロックするようにしたものが公知である。
【0004】
しかし、このような従来のロック機構では、開閉体の両側面に配置された一組の係合部材の内いずれか一方が受け部に完全に係止されず(片ロック)、開閉体が装置本体にロックされない場合があった。開閉体が片ロックの状態であれば、ADFにおける原稿の搬送や原稿情報の読み取りの際に原稿をうまく搬送できなかったり、読み取った画像情報に不具合が生じたりするため問題であった。
そこで、このような問題を解決するために、開閉体の全長に対して横設された金属製のシャフトの両端部に係止部材を嵌合して、係合部材の位置決めの精度を高めて、片ロックを防止するように構成していた。
【0005】
さらに、近年では、金属製のシャフトでは製造コストがかかるという理由から、樹脂製のシャフトに係合部材を嵌合させたり樹脂によってシャフトと係合部材とを一体的に形成したりしている。特許文献2においては、樹脂形成された係合部材の側部に金属製補助部材を取り付けて、係合部材自体の剛性を高めて係合部材の捩れ等を防止するように構成したものも提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−278175号公報
【特許文献2】特開2002−359480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
なるほど、従来のロック機構のように、係合部材の位置決め用の部材として樹脂製のシャフトを用いた場合の方が金属製のシャフトを用いた場合よりも製造コストが低減する。
しかしながら、樹脂製のシャフトでは、金属製のシャフトに比べて強度の面では劣るため、開閉体の全長に対して横設すると中途部において撓みや歪みが生じ易かった。そのため、シャフトの両端部に嵌合された係合部材の位置決めが不安定となってしまい、結果的に片ロックの問題が生じていた。このことは、上記特許文献2に記載されるように、係合部材に金属製補助部材を取り付けても、かかる係合部材を樹脂製のシャフトに嵌合等するため、上述の問題は依然として解決されなかった。
【0007】
そこで、本発明においては、ロック機構に関し、前記従来の課題を解決するもので、簡易な構成としつつ、片ロックを防止して、開閉体を装置本体に確実にロック可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
すなわち、請求項1においては、装置本体及び該装置本体に開閉自在に設けられた開閉体の一端部に、シャフトの両側に協動して回動可能に設けられた係合部材と、該係合部材と係合可能に形成された凸状の受け部とが設けられ、該係合部材が該受け部に係止することによって装置本体に該開閉体をロックするロック機構であって、前記係合部材は、前記シャフトに接続される腕部と、該腕部の先端より上方部に正面視略コ字状に切り欠き形成された前記受け部に係止可能なフック部と、を設けてなり、一方の係合部材のフック部を、他方の係合部材のフック部より広く開口するように形成するものである。
【0010】
請求項2においては、請求項1において、前記係合部材もしくは受け部の近傍に、該係合部材が受け部に係止しているか否かを検出する開閉センサを設けてなり、該開閉センサが設けられた側に配設された係合部材のフック部よりも、これと反対側に配設された係合部材のフック部の方が広く開口するように形成するものである。
【0011】
請求項3においては、請求項1又は請求項2において、前記フック部は、前記係合部材が前記受け部に係止した状態で、該受け部との当接面を略同一平面上に位置するように形成するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1に示す構成としたので、一方の係合部材が、他方の係合部材よりも受け部に係止し易くなり、他方の係合部材を受け部に注意して係止させるだけで片ロックを容易に防止でき、開閉体を装置本体に確実にロックできる。
【0014】
請求項2に示す構成としたので、開閉センサが設けられた側に配設された係合部材を、これと反対側に配設された係合部材よりも後に受け部に係止させて、開閉センサが設けられた側の係合部材が係止しているか否かを検知するだけで開閉体のロック状態を確認できるため、片ロックを防止して開閉体のロック性能を向上させることができる。
【0015】
請求項3に示す構成としたので、係合部材及びシャフトを装置本体に対して傾いたり偏重したりすることなく略水平の状態で受け部に係止しておくことができ、開閉体のがたつきを防止して開閉体のロック性能をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係るロック機構を備えた複合機の斜視図、図2はADFの内部構成を示した正面図、図3は係合部材及びシャフトの配置構成を示した斜視図、図4は係合部材の正面図、図5は係合部材が受け部に係止する様子を示した状態図、図6はフック部の形状等を比較した係合部材の正面図、図7は同じく別実施例を示す係合部材の正面図、図8は同じく別実施例を示す係合部材の正面図である。
なお、以下に、本発明に係るロック機構50を備えた複合機1は、ファクシミリ機能と複写機のコピー機能を備えたものであるが、本実施例はこれに限定されるものではなく、ロック機構50は、単なるファクシミリ装置やコピー機等に適用することが可能である。
【0017】
まず、複合機1の全体構成について、以下に概説する。
なお、以下、便宜的に図1に示す矢印Aの方向を複合機1の前方(正面側)とする。
図1に示すように、複合機1の装置本体は、給紙装置5上に載置固定され、装置本体内部に画像読取装置3と画像記録装置4が上下に配置される。本実施例では画像記録装置4にレーザプリンタを採用しているが、その詳細については省略する。画像読取装置3の上方に自動原稿搬送装置(以下、「ADF」)2が付設され、ADF2の右側方に、外装カバー7が複合機1の装置本体に対して開閉自在に設けられている。外装カバー7の上面は原稿の排出トレイ10に用いられ、排出トレイ10の上方に給紙トレイ9が設けられている。
【0018】
このように構成される複合機1においては、給紙トレイ9に載置された原稿は、一枚ずつ分離されて給紙口13からADF2内部へ取り込まれ、その画像が画像読取装置3のCCDにより読み取られて、排紙口14を介して排出トレイ10へ堆積される。そして、この読み取られた画像情報は、画像記録装置3にて一旦記録された後、電気信号に変換されて、電話回線を通じて相手先に送信される(ファックス機能)。相手側ファックス装置からの信号を画像情報に変換し、装置内部に貯溜された記録用紙に画像を形成して出力することも可能である。また、画像読取装置3で読み取った画像を送信することなく、そのまま画像記録装置4で用紙に転写することも可能である(コピー機能)。
【0019】
次に、ADF2について、以下に説明する。
図2に示すように、本実施例におけるADF2は、装置本体の上方に設けられた開閉体(ADFカバー21)が開放可能とされており、原稿搬送経路23・24にて原稿詰りが生じた場合等に、装置本体の上方からメンテナンスが容易に行えるように構成されている。このADF2は、原稿搬送経路23・24のガイド面を形成するADF本体20、開閉体として装置本体(ADF本体20)に対して回動可能に設けられたADFカバー21等の枠体と、原稿搬送経路23に沿って配置されるローラ30・31・・・等と、ADFカバー21をADF本体20に係止させるロック機構50等とから構成されている。
【0020】
ADFカバー21は、ADF本体20の後端部の回動支点軸25で軸支され、ローラ30・31・・・等は、ADF本体20の両側方のフレームに取り付けられたの回転軸に軸支されている。原稿搬送経路23は、主搬送経路として給紙口13から排紙口14にかけて正面視略「C」字状に形成されている。原稿搬送経路24は、原稿の表裏面を反転するものであり、原稿搬送経路23における読取部3aの上流側と下流側とを分岐させて該下流側の分岐部15から該上流側の合流部16へ向けて形成されている。
【0021】
前記各ローラは4系統に分類され、ローラ30・31は、給紙トレイ9上に堆積された原稿を一枚ずつ分離して、原稿の供給口である給紙口13から原稿搬送経路24へ繰り込む繰込搬送手段として、ローラ33・34はレジスト動作を行い、原稿の斜行を矯正するレジスト手段として、ローラ35・36・37・38は原稿を読取部3に搬送する読取搬送手段として、ローラ39・40は読み取られた原稿を排紙口14から排出する排出搬送手段として用いられる。
【0022】
このようなローラ30等の配置位置の一例について説明すると、原稿搬送経路24に沿って、ADF2への給紙口13付近にピックアップローラ30とセパレートローラ31とが配置され、下流側にレジストローラ33・34が配置されて、該レジストローラ33・34と画像読取装置3の読取部3aとの間に第1フィードローラ35・36が配置され、該読取部3aと分岐部15との間に第2フィードローラ37・38が配置されて、該分岐部15と排紙口13との間に正逆回転可能な排出ローラ39・40が配置されている(図参照)。なお、ADF2内部のローラ30等の配置や構成等はこれに限定されない。
【0023】
次に、本実施例に係るロック機構50について、以下に詳述する。
図2乃至図4に示すように、ロック機構50は、ADF本体20に対して開閉自在に設けられたADFカバー21の一端部に設けられた係合部材51・151と、この係合部材51と係合可能に形成された凸状の受け部52等とから構成されている。そして、この係合部材51・151が受け部52に係止することによって、ADF本体20にADFカバー21がロックして係止されるように構成されている。
【0024】
係合部材51は、腕部54と、当接部55と、フック部56等とから構成されている。なお、この係合部材51は、後述するように一方の形状(係合部材51)が他方の形状(係合部材151)と比べて一部異なるように形成されるものの略同一の形状に構成され、以下、特に断りのない場合には係合部材51の構成について説明する。
【0025】
ADFカバー21の一端部であってADF本体20の前後方向に沿って、樹脂製のシャフト53が内側壁から突出したリブ21a・21aに支持されて横設され、係合部材51は、該シャフト53の両端のリブ21a・21aから突出した突出端部に連設されている。そして、シャフト53が回動されることによって、両端の係合部材51・151が協動して回動可能となるように形成されている。なお、シャフト53と係合部材51・151は、加工形成が容易であることから一体的に樹脂により形成されるのが好ましい。
【0026】
腕部54は、ADFカバー21の回動支点軸25に対して直交方向に延設され、一端がシャフト53に取り付けられ(本実施例ではシャフト53と一体的に構成され)ている。当接部55は、腕部54の他端側であって、正面視において斜方に面取りした斜面となるように形成されている。後述するように、腕部54に斜面を設けることで、受け部52に摺接してガイドされ、ADF本体20とADFカバー21とを容易にロックすることができる。フック部56は、腕部54において前記当接部55より長手方向の中央部寄りに正面視略コ字状に切り欠き形成されて開口部56aが開口されている。受け部52は、ADF本体20のフレームの装置内側面に略垂直(水平方向)に凸状に突出されており、係合部材51のフック部56が係止するように形成されている。
【0027】
また、図4に示すように、腕部54の一側面には、係合部材51をロック位置に戻すように付勢するための捩じりばね57が固定ピン58に嵌合されており、捩じりばね57は、一端57aが腕部54の同一面上に突出された係合突起59に当接し、他端57bがADFカバー2もしくはADF本体20の内側壁に係止している。係合部材51は、この捩じりばね57の付勢力よって受け部52に係止する基準位置(ロック位置)Aに位置決めされている。具体的には、捩じりばね57が一端57a及び他端57bとの距離が遠くなる方向に付勢され、係合部材51もしくはシャフト53の一部がADFカバー21の内面壁等と当接して、係合部材51の腕部54が装置本体に対して略垂直となるように構成されている。
【0028】
さらに、腕部54の一端には、係合部材51をオペレータが回動操作するための握手となる縁部60がシャフト53と直交する方向に延出されている。本実施例においては、この縁部60は、ADFカバー21の側壁に設けられた操作用の開口部61から装置本体の上側面に突出するように形成されている。このよう縁部60をADFカバー21の上面に突設することで、ADFカバー21の開閉操作が容易となる。そして、この縁部60が把持されて上方に引き上げられると、係合部材51は、シャフト53を回動中心として捩じりばね57の付勢力に抗してロック解除位置まで回動することができる。そして、縁部60の把持を解消すると、係合部材51は捩じりばね57によって基準位置Aに復帰する。
【0029】
ここで、係合部材51及び受け部52の係止機構を以下に説明する。
図5(a)に示すように、ADFカバー21が開放された状態からADF21を閉じる方向に回動させていくと(図2参照)、やがてADFカバー21の端部に設けられた係合部材51が、ADF本体20のフレームに突設された凸状の受け部52に上方から当接する(図5(b))。受け部52には、まず係合部材51の当接部55が当接し、やがて係合部材51は、当接部55の斜面形状に沿って捩じりばね57の付勢力に抗して回動しながら、下方に押圧される。そして、受け部52がフック部56の開口部56aに到達すると(図5(c)))、係合部材51が捩じりばね57の付勢力によって基準位置Aに復帰して、係合部材51(フック部56)が受け部52に係止される(図5(d))。かかる状態においては、ADFカバー21はADF本体20にロックされて、ADFカバー21の開閉操作が規制される。
【0030】
一方、ADFカバー21がロックされた状態からADFカバー21を開放するには、上述したように、ADFカバー21の上面に突出した係合部材51の縁部60を上方に回動させる。そして、係合部材51が回動して係合部材51(フック部56)と受け部52との係止が解消され(図5(c)参照)、ADFカバー21を自由に回動させることができるようになる。ADFカバー21を開放した状態で、縁部60の把持を解消すれば係合部材51は基準位置Aに復帰する。ADFカバー21を閉じる際には、ADFカバー21の上面を静かに下方に押圧するだけで、ADFカバー21とADF本体20とをロックすることできる。
【0031】
このように、ロック機構50における係合部材51は、ADFカバー21閉じる際には、まず捩じりばね57の付勢力によって基準位置Aに位置決めされ、当接部55が受け部52に当接して基準位置Aから係止可能な位置にまで回動される。そして、受け部52が当接部55からフック部56に到達すると、捩じりばね57の付勢力によって再び基準位置Aに自動的に復帰して受け部52に係止される。また、ADFカバー21を開放する際には、オペレータが縁部60を把持して係合部材51を上方に回動させるだけで係合部材51と受け部52との係止を解消できる。
【0032】
以上のような構成とすることで、本実施例に係るロック機構50は、ADFカバー21をADF本体20にロックする際に、ADFカバー21を開放した状態から閉じた状態に回動させるだけで、係合部材51が受け部52に自動的に係止し、ADF本体20にADFカバー21をロックすることができる。また、例えば、ADF2において原稿搬送経路23・24にて原稿詰りが生じた場合等であっても、装置本体の上方からADFカバー21を開放・閉鎖して、かかるメンテナンスが容易となる。
【0033】
なお、本実施例においては、一方の係合部材51に捩じりばね57等からなる係合部材51の位置決め機構を構成しているが、これに限定するものではなく、両係合部材51・151に構成してもよい。
また、縁部60は、一方の係合部材51に設けるだけでなく、両係合部材51・151に設けてもよく、係合部材51に設けるだけでなく、シャフト53に設けるようにしてもよい。
さらに、上述した実施例では、係合部材51をADFカバー21側に、受け部52をADF本体20側に設けたが、係合部材51及び受け部52の配置はこれとは逆に、係合部材51をADF本体20側に、受け部52をADFカバー21側に設けてもよい。
加えて、係合部材51におけるフック部56の開口方向や、捩じりばね57の付勢方向等もこれに限定するものではない。
【0034】
次に、係合部材51・151について、以下に詳述する。
図6乃至図8に示すように、本実施例に係るロック機構50は、シャフト53の両端に配設される係合部材51・151の内、一方の係合部材51及び他方の係合部材151のフック部56・156の形状もしくは大きさがそれぞれ異なるように形成されている。具体的には、係合部材51は、フック部56の開口部56aが係合部材151のフック部156の開口部156aよりも広くなるように開口されている。一方の係合部材51の開口部56aを広く形成し、一方の係合部材51の方が受け部52に容易に係合するように構成して、ロック機構50における片ロックを防止するものである。
【0035】
まず、係合部材51・151の実施例を、以下に順に説明する。ただし、かかる実施例はこれに限定されるものではない。
図6に示す係合部材51・151は、係合部材51のフック部56を、当接部55と連続する側(開口部56aの下辺部56d)の縁部56bが正面視略R状となるように形成したものである(図6(a))。一方で、係合部材151のフック部156は、縁部156bが略直角となるように形成されている(図6(b))。係合部材51のフック部56及び係合部材151のフック部156の形状や大きさは、この縁部56b・156bの形状を除いて略同一に形成されている。そして、フック部56・156の広さを、上辺部56c・156cから縁部56b・156bまでの長さL1・L2でそれぞれ表すと、係合部材51におけるフック部56の長さL1の方が、係合部材151におけるフック部156の長さL2よりも大きくなるように形成される(L1>L2)。
なお、本実施例における係合部材51の縁部60の形状は、正面視R状とするだけでなく、斜方に面取りするように形成してもよい。
【0036】
また、図7に示す係合部材51・151は、一方の係合部材51のフック部56を、他方の係合部材151のフック部156よりも大きく切り欠いて形成したものである。具体的には、係合部材51におけるフック部56の上辺部56cと、係合部材151におけるフック部156の上辺部156cとが略同一平面上に位置するとともに、フック部56の下辺部56dの水平位置が、フック部156の下辺部156dの水平位置よりも下方に位置するように形成される(図7(a)(b))。そして、フック部56・156の広さを上辺部56c・156cから下辺部56d・156d(縁部56b・156b)までの長さL1・L2で表すとすると、係合部材51におけるフック部56の長さL1の方が、係合部材151におけるフック部156の長さL2よりも大きくなるように形成される(L1>L2)。
【0037】
さらに、図8に示す係合部材51・151は、一方の係合部材51のフック部56を、下辺部56dが平面視略テーパ状に縁部56bに向けて下方に傾斜させて形成したものであり、他方の係合部材151のフック部156よりも大きく切り欠いて形成されている(図8(a)(b))。そして、フック部56・156の広さを上辺部56c・156cから縁部56b・156bまでの長さL1・L2で表すと、係合部材51におけるフック部56の長さL1の方が、係合部材151におけるフック部156の長さL2よりも大きくなるように形成される(L1>L2)。
【0038】
このように、係合部材51・151は、一方の係合部材51のフック部56の長さL1が、他方の係合部材151のフック部156の長さL2より大きく、すなわち一方の係合部材51のフック部56が他方の係合部材151のフック部156より広く開口するように構成されている。
【0039】
以上のように、縁部56bを平面視略R状としたり他方の縁部156bより下方に位置させたり等して一方の係合部材51のフック部56を他方より広く開口させることで、フック部56が受け部52と係止し易くなるとともに、他方のフック部156が受け部52に係止するよりも早く係止させることができるのである。そのため、シャフト53の両端に配設された係合部材51・151の内、一方の係合部材51を容易に受け部52に係止させることができ、オペレータ等は、他方の係合部材151を確認しながら注意して受け部52に係止させるだけで、ロック機構50における片ロックを容易に防止することができる。特に、樹脂製のシャフト53を用いた場合であって、シャフト53に撓みや歪みが生じても、係合部材51・151を確実かつ容易に受け部52に係止することができる。また、片ロックを防止できるため、製造コストを低減するためにシャフト53を樹脂等によって形成したことによる弊害を除去できる。
【0040】
また、図2に戻って、前記ADF本体20及びADFカバー21のいずれか一方であって、係合部材51・151もしくは受け部52の近傍に、係合部材51・151が受け部52に係止しているか否かを検出する開閉センサ70が設けられる。本実施例においては、開閉センサ70は、ADFカバー21に係合部材51・151及びADF本体20に受け部52が設けられていることから、ADF本体20側であって受け部52の近傍に配置されている。
【0041】
この開閉センサ70は、図示せぬ制御部と接続されており、開閉センサ70にて検出された情報に基づいて、複制御部によって複合機1の原稿読取操作を不能等するように制御する。開閉センサ70としては、接触センサ(リミットスイッチ、オンオフセンサ、タッチセンサ等)や光センサなどの各種センサを用いることができる。本実施例においては、ピン型のアクチュエータを備えた機械式接触センサが用いられている(図2参照)。この開閉センサ70は、ADF本体20側の受け部52の直下方であって係合部材51(151)の先端部が当接可能な位置に配置されている。開閉センサ70は、ピン70aが上下に回動可能に取り付けられており、ピン70aは、係合部材51・151が受け部52に係止する際に、係合部材51・151の先端にて下方に押圧され、通電される。
【0042】
開閉センサ70によって、係合部材51(151)が受け部52に係止した状態であることが検知されると、かかる情報に基づいて制御部は、例えば、原稿読取操作を不能にしたり、操作パネルに表示したり等して複合機1を制御する。このように開閉センサ70を設けることによって、係合部材51(151)が受け部52に係止していない状態であることをオペレータが確認でき、ADFカバー21が開放した状態ではADF2への原稿の搬送を禁止して、原稿詰りを起こさないようにしている。
【0043】
ここで、本実施例においては、開閉センサ70は、ADF本体20のいずれか一方のフレームに配置された受け部52の近傍に一つ配置される。そして、開閉センサ70が設けられた側及びこれと反対側(開閉センサ70が設けられない側)において、開閉センサ70が設けられた側の係合部材151のフック部156よりも、開閉センサ70が設けられない側の係合部材51のフック部56方が広く開口するように構成されている。
【0044】
ここで、上述のように、係合部材51・151によってフック部56・156の大きさや形を異ならせて、一方のフック部を広く開口するように構成する実施例は、すでに説明した通りである(図6乃至図8参照)。
【0045】
このように構成することで、フック部56が大きく開口された方の係合部材51は、受け部52に容易に係止するとともに、他方の係合部材151が受け部52に係止するより先に受け部52に係止する。一方で、他方の係合部材151が係止する受け部52には、前記開閉センサ70が設けられており、係合部材151が受け部52に係止しているか否かは開閉センサ70によって検知される。すなわち、開閉センサ70によって係合部材151が受け部52に係止していることが検知された場合には、両係合部材51・151が受け部52に係止していることになる。また、ADFカバー21を閉じた状態で、開閉センサ70によって係合部材151が受け部52に係止していないことが検知された場合には、係合部材151と受け部52とが係止していないことになる。
【0046】
以上のように、開閉センサ70が設けられた側に配設された係合部材151のフック部156よりも、これと反対側に配設された係合部材51のフック部56の方が広く開口するように形成することで、開閉センサ70が設けられた側に配設された係合部材151を、係止部材51よりも後に受け部52に係止させ、開閉センサ70が設けられた側の係合部材151が係止しているか否かを検知するだけでADFカバー21のロック状態を確認でき、片ロックを確実に防止して、ADFカバー21をADF本体20に確実にロックさせることができる。
【0047】
以上のように構成されるロック機構50において、係合部材51・151のフック部56・156は、係合部材51・151が受け部52に係止した状態で、受け部52との当接面となる下辺部56d・156dが略同一平面上に位置するように形成されるのが好ましい。
【0048】
すなわち、係合部材51・151が配設される開閉体としてのADFカバー21は、ADF本体20にロックされた状態では図示せぬ弾性体によって上方に付勢されている。このようにADFカバー21を付勢することで、開閉操作が容易なものとなっている。そのため、フック部56・156が受け部52に係止した状態は、係合部材51・151が上方向に付勢された状態となり、フック部56・156の下辺部56d・156dに受け部52が当接する。そこで、フック部56・156において、該下辺部56d・156dが略同一平面上に位置するように形成することで、両係合部材51・151及びシャフト53を装置本体に対して略水平で受け部52に係止しておくことができ、ADFカバー21が幅方向に傾いたり偏重したりすることなく、ADFカバー21のがたつきを防止して、ADF本体20に確実にロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るロック機構を備えた複合機の斜視図。
【図2】ADFの内部構成を示した正面図。
【図3】係合部材及びシャフトの配置構成を示した斜視図。
【図4】係合部材の正面図。
【図5】係合部材が受け部に係止する様子を示した状態図。
【図6】フック部の形状等を比較した係合部材の正面図。
【図7】同じく別実施例を示す係合部材の正面図。
【図8】同じく別実施例を示す係合部材の正面図。
【符号の説明】
【0050】
20 ADF本体(装置本体)
21 ADFカバー(開閉体)
50 ロック機構
51、151 係合部材
52 受け部
54 腕部
55 当接部
56、156 フック部
56a、156a 開口部
56b、156b 縁部
56c、156c 上辺部
56d、156d 下辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体及び該装置本体に開閉自在に設けられた開閉体の一端部に、シャフトの両側に協動して回動可能に設けられた係合部材と、該係合部材と係合可能に形成された凸状の受け部とが設けられ、該係合部材が該受け部に係止することによって装置本体に該開閉体をロックするロック機構であって、前記係合部材は、前記シャフトに接続される腕部と、該腕部の先端より上方部に正面視略コ字状に切り欠き形成された前記受け部に係止可能なフック部と、を設けてなり、一方の係合部材のフック部を、他方の係合部材のフック部より広く開口するように形成する、ことを特徴とするロック機構。
【請求項2】
前記係合部材もしくは受け部の近傍に、該係合部材が受け部に係止しているか否かを検出する開閉センサを設けてなり、該開閉センサが設けられた側に配設された係合部材のフック部よりも、これと反対側に配設された係合部材のフック部の方を広く開口するように形成する、ことを特徴とする請求項1に記載のロック機構。
【請求項3】
前記フック部は、前記係合部材が前記受け部に係止した状態で、該受け部との当接面を略同一平面上に位置するように形成する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−30219(P2006−30219A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204049(P2004−204049)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】