説明

ロック機能付きコネクタ

【課題】ロック部材の操作性を損なうことなく低背化を実現でき、しかも他部材を重ねながらレイアウト可能なロック機能付きコネクタを提供する。
【解決手段】インシュレータ20の端部に取付部を形成し、ロック部材50が、取付部に回転可能に支持した被支持部と、取付部から突出する操作部55と、を備える。操作部を上方から操作することによりロック部材によるロックを円滑に解除できる。また、インシュレータとロック部材が上下に重ならないので、他部材をインシュレータの上面に対して重ねながらレイアウトすることが可能となる。FFC80をインシュレータに押し込むという1回の動作でFFCとコネクタ10を接続でき、しかも接続後はロック部材の左右のロック爪がFFCの左右の被ロック部82の直前に位置するので、FFCがコネクタから不意に抜け出すのを確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロック機能を有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、長手方向の端部の側縁部に被ロック部を突設した薄板状の接続対象物(FPCやFFC等)を接続可能で、接続した接続対象物をロック(抜止)することが可能なコネクタの従来例である。
このコネクタは、薄板状の接続対象物が挿脱可能で回路基板上に載置したインシュレータと、インシュレータに並べて固定した、インシュレータに挿入した接続対象物と接触する複数のコンタクトと、接続対象物の被ロック部と係脱可能なロック爪を有し、このロック爪が被ロック部と接続対象物の挿脱方向に対向するロック位置と、被ロック部と挿脱方向に対向しなくなるアンロック位置との間を回転可能としてインシュレータに支持したロック部材と、インシュレータに支持した、ロック部材をロック位置側に回転付勢するコイルばねと、を備えている。さらにロック部材には、インシュレータに挿入した接続対象物によって押圧されることによりロック位置に位置しているロック部材をアンロック位置まで回転させ、さらにロック爪が被ロック部と接続対象物の厚み方向に対向しなくなったときに接続対象物と非接触になりロック部材がロック位置まで回転するのを許容する被押圧部が設けてある。
【0003】
ロック部材がコイルばねの回転付勢力によってロック位置に位置している状態で接続対象物をインシュレータに挿入すると、接続対象物によってロック部材の被押圧部が押圧されるので、ロック部材がアンロック位置まで回転する。そして、接続対象物の被ロック部とロック部材のロック爪が接続対象物の厚み方向に対向しなくなったときに、接続対象物とロック部材の被押圧部が非接触になりロック部材がコイルばねの回転付勢力によってロック位置に回転復帰するので、ロック爪が接続対象物の被ロック部と接続対象物の挿脱方向に対向する。
このように特許文献1のコネクタは、接続対象物をインシュレータに挿入するという1回の動作により接続対象物とコンタクトを確実に接続でき、しかも接続後は被ロック部とロック爪により接続対象物がインシュレータ及び各コンタクトから不意に抜け出すのを確実に防止できる。
また、ロック部材をコイルばねの付勢力に抗してアンロック位置まで回転させれば、接続対象物とコネクタのロック状態を意図的に解除できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−205914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のコネクタのロック部材は、インシュレータの上面の直上に位置する操作部(基板部)を有しており、作業者は操作部を掴みながらロック部材を回転操作する。
しかし操作部がインシュレータ上面の直上に位置しているため、コネクタ全体に低背化の要求がある場合に対応するのが難しいという問題がある。仮にロック部材の厚みを小さくしてコネクタ全体を低背構造にするとコイルばねの長さを短くする必要があるため操作力とストローク量を設計的に両立させるのが難しくなる。また、ロック部材の回転角が小さくなるため、ロック部材による接続対象物のロック及びロック解除に必要なロック部材の移動量を確保することが困難となり、操作性及び保持力に悪影響が出るおそれがある。即ち、特許文献1ではコネクタの低背化とロック部材の良好な操作性を両立させるのが難しい。
また、コネクタの上部にロック部材(操作部)が位置しているため、コネクタの直上に他の部材を重ねてレイアウトするのが難しいという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、ロック部材の操作性を損なうことなく低背化を実現でき、しかも他部材を重ねながらレイアウト可能なロック機能付きコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のロック機能付きコネクタは、被ロック部を有する薄板状の接続対象物が挿入及び脱出可能なインシュレータと、上記接続対象物の一方の面に形成した回路パターンと接触可能な、上記インシュレータに支持したコンタクトと、上記被ロック部と係脱可能なロック爪が上記被ロック部と接続対象物の挿脱方向に対向するロック位置と、被ロック部と挿脱方向に対向しなくなるアンロック位置との間を回転可能として上記インシュレータに支持したロック部材と、該ロック部材を上記ロック位置に向けて回転付勢する付勢手段と、を備え、上記ロック爪は、上記インシュレータに挿入した上記接続対象物によって押圧されたときに上記ロック位置に位置しているロック部材を上記アンロック位置まで回転させ、かつ、上記被ロック部と接続対象物の厚み方向に対向しなくなったときに上記接続対象物と非接触になりロック部材が上記ロック位置まで回転するのを許容し、上記インシュレータの上記脱出方向側の端部に取付部を形成し、上記ロック部材が、上記取付部に回転可能に支持した被支持部と、該取付部から上記脱出方向側に突出する操作部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
上記インシュレータに金属製のシェル部材を固定し、該シェル部材に上記付勢手段を一体的に形成してもよい。
このように構成すれば、付勢手段をシェル部材とは別体とする場合に比べて、コネクタの全体構造が簡単になる。
【0009】
上記シェル部材に、上記接続対象物の他方の面に形成した接地パターンと接触可能な接地導通部を形成してもよい。
コンタクトに外部ノイズが入ったり、コンタクトのノイズが外部に漏れるのをより効果的に防止できるようになる。
【0010】
上記ロック部材の回転方向の一方側の面に、付勢手段を受容する受容溝を形成してもよい。
このように構成すれば、コネクタ全体をより低背化できるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ロック部材が付勢手段の回転付勢力によってロック位置に位置している状態で接続対象物(FPCやFFC)をインシュレータに挿入すると、接続対象物によってロック部材のロック爪が押圧されるので、ロック部材がアンロック位置まで回転する。そして、接続対象物の被ロック部とロック部材のロック爪が接続対象物の厚み方向に対向しなくなったときに、接続対象物とロック部材のロック爪が非接触になりロック部材が付勢手段の回転付勢力によってロック位置に回転復帰するので、ロック爪が接続対象物の被ロック部と接続対象物の挿脱方向に対向する。即ち、接続対象物をインシュレータに挿入するという1回の動作により接続対象物とコンタクトを確実に接続できる。しかもロック後は被ロック部とロック爪により、接続対象物がインシュレータ及び各コンタクトから不意に抜け出すのを確実に防止できる。
また、ロック部材を付勢手段の付勢力に抗してアンロック位置まで回転させれば、接続対象物とコネクタのロック状態を意図的に解除できる。
さらに、接続対象物挿入状態においてもロック部材に回転付勢力が及ぶので、振動や衝撃等の外乱によりロック部材がアンロック位置になることを防止できる。
【0012】
しかも、ロック部材の操作部がインシュレータ(取付部)の外側に位置するものの、操作部はインシュレータに対して接続対象物の厚み方向に重ならないので、コネクタ全体を低背化できる。その一方でインシュレータ(取付部)から突出した操作部を操作することによりロック部材を円滑に回転させることができる。さらにコネクタ全体を低背化した場合であっても、ロック部材を接続対象物の長手方向に長くすることにより、ロック部材の回転角を大きくしてロック部材による接続対象物のロック及びロック解除を確実に行うことが可能である。さらにロック部材をコネクタの上方から押圧できるので、作業性に優れる。このように、コネクタの低背化とロック部材の良好な操作性を両立できる。
【0013】
また、インシュレータとロック部材が接続対象物の厚み方向に重なっていないので、他部材(例えばシェル部材)をインシュレータに対して重ねながらレイアウト可能である。
さらに目視することによりロック部材の位置を把握できるので、接続対象物がコネクタに対して完全に挿入されているか否かを把握し易い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のコネクタを前斜め上方から見た斜視図である。
【図2】コネクタの後斜め下方から見た斜視図である。
【図3】コネクタの正面図である。
【図4】コネクタの前斜め下方から見た分解斜視図である。
【図5】コネクタの後斜め上方から見た分解斜視図である。
【図6】インシュレータの底面図である。
【図7】図1のVII−VII矢線に沿う断面図である。
【図8】図3のVIII−VIII矢線に沿う断面図である。
【図9】図3のIX−IX矢線に沿う断面図である。
【図10】図3のX−X矢線に沿う断面図である。
【図11】図3のXI−XI矢線に沿う断面図である。
【図12】FFCをFFC挿入溝の中間位置まで挿入したときの図8と同様の断面図である。
【図13】図12と同じ状態のときの図9と同様の断面図である。
【図14】FFCをFFC挿入溝に対して完全に挿入したときの図8と同様の断面図である。
【図15】図14と同じ状態のときの図9と同様の断面図である。
【図16】図14と同じ状態のときの図10と同様の断面図である。
【図17】図14と同じ状態のときの図11と同様の断面図である。
【図18】ロック部材をアンロック位置に移動させたときの図8と同様の断面図である。
【図19】図18と同じ状態のときの図9と同様の断面図である。
【図20】本発明の変形例のコネクタを前斜め上方から見た斜視図である。
【図21】ロック部材がロック位置に位置するときのFFCを省略して示すコネクタの断面図である。
【図22】ロック部材をアンロック位置に位置させたときの図21と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図19を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準としている。
本実施形態のコネクタ10は、大きな構成要素としてインシュレータ20、シグナルコンタクト40、ロック部材50、及び、シェル部材60を具備している。
インシュレータ20は絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料を射出成形したものである。インシュレータ20の前面にはFFC80とほぼ同幅で後方に向かって延びるFFC挿入溝21が凹設してある。インシュレータ20には前後方向に延びる計51本のコンタクト挿入溝22が形成してある。各コンタクト挿入溝22の後部はインシュレータ20の後壁を前後方向に貫通しており(図2、図11等を参照)、各コンタクト挿入溝22の前部はFFC挿入溝21の底面に凹設してある。インシュレータ20の底面の左右両側部には中央部に比べて一段上方に凹んだ底面凹部23が凹設してある。さらに左右の底面凹部23には取付溝(取付部)24がそれぞれ凹設してある。取付溝24は前面が開放した外側溝25と、外側溝25の内側に位置しかつFFC挿入溝21の左右両側部とそれぞれ連通する内側溝27とを具備している。外側溝25の天井面の前部は傾斜受面26となっている。取付溝24の後端部の左右両側の内側壁には凹部からなる軸受け凹部28が形成してあり、軸受け凹部28の直下には支持突部29が内向きに突設してある(図7参照)。インシュレータ20の前面の上半部には計11個の係止凹部30が左右方向に並べて凹設してあり、インシュレータ20の左右両側面には前端が閉塞し後端が開放する側部係止溝31が凹設してある。インシュレータ20の上面には前後方向に延びかつ前端が開放する計4本の導入溝32が凹設してあり、各導入溝32の後端部はインシュレータ20の後端部に形成された突部を貫通する係止孔33となっている。さらにインシュレータ20の前面の下半部には、左右両端に位置するコンタクト挿入溝22の外側に位置し、かつその下端部が左右の底面凹部23とそれぞれ連続する下部係止溝34が凹設してある。
【0016】
計51本のシグナルコンタクト40は、ばね弾性を備えた銅合金(例えばリン青銅、ベリリウム銅、チタン銅)やコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図示形状に成形加工したものであり、表面にニッケルメッキで下地を形成した後に、金メッキを施している。
図4、図5、図11等に示すようにシグナルコンタクト40の後端部には略L字状に屈曲したテール部41が形成してある。またシグナルコンタクト40の前部は前斜め上方に向かって延びる弾性変形部42となっており、弾性変形部42の前端近傍部には接触突部43が屈曲させることにより形成してある。
各シグナルコンタクト40はインシュレータ20の各コンタクト挿入溝22に対して後方から圧入してある。図11等に示すように各シグナルコンタクト40をコンタクト挿入溝22に圧入すると、弾性変形部42がFFC挿入溝21内に位置し、テール部41と弾性変形部42の間に位置する中間部の下面が対応するコンタクト挿入溝22の底面に接触し、さらに該中間部の側面に突設した係止突起が対応するコンタクト挿入溝22の側面に食い込むことにより該中間部がコンタクト挿入溝22に対して固定状態となる。一方、テール部41はインシュレータ20の後方に突出し、その下面がインシュレータ20の下面より下方に位置する。
【0017】
左右一対のロック部材50は、耐熱性の合成樹脂材料を金属製の成形型を利用して射出成形したものである。ロック部材50は後端部に略平板状の基板部51を備えており、基板部51の後端から上方に突出する左右一対の突部の外側面には外向き略水平(左右方向)に突出する円柱形状の回転軸(被支持部)52が設けてある。さらに基板部51の前端内側部には前面が傾斜面となっているロック爪53が上向きに突設してある。基板部51の前端外側部からはアーム部54が前斜め上方に向かって延びている。アーム部54の前端部はアーム部54の後部に比べて(左右幅が)広幅の操作部55となっており、アーム部54の下面には受容溝56が形成してある。さらに操作部55にはストッパ57が下向きに突設してある。
左右のロック部材50はインシュレータ20の左右の取付溝24に対して取り付けてある。ロック部材50を取付溝24に取り付けるには、まずロック部材50を取付溝24に対して下方から近づけて、左右の回転軸52を内側に僅かに弾性変形させながら支持突部29を上方に乗り越えさせ、自由状態に弾性復帰した左右の回転軸52を左右の軸受け凹部28にそれぞれ係止する。ロック部材50の操作部55はインシュレータ20の前面から前方に突出しており、ロック爪53は内側溝27内に位置している。
【0018】
シェル部材60は金属板のプレス成形品であり、平板状の天井部61と、天井部61の左右両側部から下方に延びる側部66と、左右の側部66の下端から内向き略水平に延びる底板部70と、を具備している。天井部61の前縁部には、側面視L字形をなす計6本の接地導通部62と、接地導通部62の間に位置しかつ側面視L字形をなす計5本の前側係止片63とが突設してあり、前側係止片63の後端は接地導通部62の後端より前方で終端している。天井部61の後縁部には、側面視L字形をなす計4本の後側係止片64が形成してある。側部66には、先端側が側部66より内側に位置する弾性係止片67が切り起こしにより形成してある。さらに側部66の下端部には断面形状がL字形をなすテール部68が突設してある。底板部70の前縁部には前斜め上方に向かって延びる板バネ部(付勢手段)71が突設してあり、底板部70の後縁部には断面形状がL字形をなすテール部72が突設してある。さらに底板部70の内側縁の前端部には側面視倒立L字形をなす下側係止片73が上向きに突設してある。
シェル部材60をインシュレータ20に対して取り付けるには、まず図4、図5に示すようにインシュレータ20の直前に位置させたシェル部材60を後方に移動させて、各後側係止片64を導入溝32に対して前端側から係合させると共に左右の側部66をインシュレータ20の両側面に被せて、さらに左右の底板部70を下方から左右の底面凹部23に被せる。シェル部材60をさらに後方にスライドさせると、各後側係止片64が対応する係止孔33に対して前方から嵌合し、左右の弾性係止片67が外側に僅かに弾性変形した状態で係止凹部31の底面(側面)に接触し、左右の下側係止片73が左右の下部係止溝34に対して前方から係合する。さらに左右の底板部70全体が底面凹部23に係合することにより取付溝24の下端開口部を塞ぐ。このようにしてシェル部材60をインシュレータ20に対して装着することによりコネクタ10が完成する。
コネクタ10が完成すると、左右のロック部材50は、アーム部54の上面が傾斜受面26に接触し操作部55の上面がインシュレータ20(シェル部材60)の上面と略平行になるロック位置(図1、図2、図8等の位置)と、アーム部54の上面が傾斜受面26から下方に離れてストッパ57が回路基板CB(図1、図3、図18、図19の仮想線参照。詳細は後述)の上面に接触するアンロック位置(図18、図19の位置)との間を回転軸52回りに回転可能となる。さらに僅かに下方に弾性変形した左右の板バネ部71の先端近傍部がロック部材50の受容溝56の天井面に接触し、板バネ部71がロック部材50を回転付勢するので、操作部55に対して下向きの外力を与えないときロック部材50はロック位置に保持される。
【0019】
以上構成のコネクタ10を回路基板CBの上面(回路形成面)に実装するには、コネクタ10の上方に位置する吸引手段(図示略)によってインシュレータ20の上面を吸着し、吸引手段を移動させることにより各シグナルコンタクト40のテール部41を回路基板CB上の回路パターン(図示略)に塗布した半田ペーストに載せ、シェル部材60のテール部68、72を回路基板CB上の接地パターン(図示略)に塗布した半田ペーストに載せる。そして吸引力を消失させた吸引手段をコネクタ10の上方に退避させた後に、リフロー炉において各半田ペーストを加熱溶融し、各テール部41を上記回路パターンに半田付けし、テール部68、72を上記接地パターンに半田付けする。
【0020】
次にFFC(Flexible Flat Cable)80のコネクタ10への接続及び接続解除要領と、接続及び接続解除時のコネクタ10の動作について説明する。
FFC80は複数の薄膜材を互いに接着して構成した積層構造であり、FFC80の下面にはFFC80の延長方向に沿って直線的に延びる計51本の回路パターン(図示略)が左右方向に並べて形成してあり、回路パターンの両端部を除く部分の下面を絶縁カバー層によって覆っている。またFFC80の上面には回路パターンと平行に延びる計6本の接地パターン(図示略)が左右方向に並べて形成してあり、接地パターンの両端部を除く部分の上面を絶縁カバー層によって覆っている。図示するようにFFC80の後端部はその他の部分に比べて幅広でかつその他の部分に比べて硬質の硬質端部81となっており、硬質端部81の左右両端部が被ロック部82を構成している。
図1に示すようにFFC80を硬質端部81側からコネクタ10に接近させてFFC挿入溝21に挿入すると(図12、図13参照)、硬質端部81の左右の被ロック部82の間に位置する部分がFFC挿入溝21の天井面と各シグナルコンタクト40の接触突部43の隙間に進入する。さらに、左右の被ロック部82がロック部材50のロック爪53の前面(傾斜面)を押圧するので、板バネ部71の回転付勢力に抗してロック部材50が図12、図13に示す位置(ロック位置とアンロック位置の中間位置)まで回転し、図13に示すように左右の被ロック部82が左右のロック爪53の上面に乗り上げる。
図14〜図17に示すようにFFC80をさらに後方に移動させることにより硬質端部81の後端面がFFC挿入溝21の後端面に当接すると(図16参照)、ロック部材50の左右の被ロック部82が左右のロック爪53を乗り越える(ロック爪53の後方に移動する)ので、板バネ部71の回転付勢力によってロック部材50がロック位置に回転復帰し、図15に示すように左右のロック爪53の後面(垂直面)が左右の被ロック部82の直前に位置する。従って、仮にFFC80に前向きの意図しない外力が掛かってもFFC80がコネクタ10(FFC挿入溝21)から前方に抜け出すことはない。
さらに、FFC80の下面に形成した上記回路パターンが各シグナルコンタクト40の弾性変形部42を下向きに弾性変形させながら接触突部43に接触し(図17参照)、FFC80の上面に形成した上記接地パターンが各接地導通部62を上向きに弾性変形させながら接地導通部62に接触する。そのため、FFC80の回路パターンと回路基板CBの回路パターンが各シグナルコンタクト40を介して互いに電気的に導通する。さらにFFC80の上記接地パターンと回路基板CBの上記接地パターンがシェル部材60を介して接地導通するので、シグナルコンタクト40に外部ノイズが入ったり、シグナルコンタクト40のノイズが外部に漏れるのを防止できる。
【0021】
FFC80と各シグナルコンタクト40及び各接地導通部62の接続状態を解除するには、作業者が手でロック部材50の操作部55を下方に押圧する。すると図18、図19に示すようにロック部材50が板バネ部71の回転付勢力に抗してストッパ57が回路基板CBの上面に接触するアンロック位置まで回転するので、ロック部材50のロック爪53がFFC80の下方に移動する(図19参照)。従って、作業者が手でFFC80を前方に移動させれば、FFC80をコネクタ10(FFC挿入溝21)から容易に引き抜くことができる。コネクタ10からFFC80を引き抜いた後にロック部材50から手を離せば、ロック部材50は板バネ部71の回転付勢力によってロック位置に回転復帰するので、コネクタ10は図8〜図11の状態に自動的に復帰する。
【0022】
以上説明したように本実施形態によれば、FFC80をインシュレータ20に押し込むという1回の動作でFFC80とコネクタ10を接続でき、しかも接続後はロック部材50の左右のロック爪53がFFC80の左右の被ロック部82の直前に位置する(ロックする)ので、FFC80がコネクタ10から不意に抜け出すのを確実に防止できる。
さらに作業者は目視によりロック部材50の位置を把握できるので、FFC80がコネクタ10(FFC挿入溝21)に対して不完全挿入(FFC80の端部がFFC挿入溝21の終端より手前までしか挿入されていない挿入状態)された場合には、このことを確実に認識できる。
また、FFC80をインシュレータ20に押し込むことにより被ロック部82がロック爪53を後方に乗り越えると、ロック部材50が板バネ部71の回転付勢力によってロック位置に自動的に回転復帰するので、作業者はこの際に強いクリック感を感じる。そのため、作業者はFFC80の完全な挿入を(目視だけでなく)感覚的にも容易に認識できるので、シグナルコンタクト40及び接地導通部62がFFC80と完全に接続したか否かを確実に把握できる。
【0023】
しかも、ロック部材50の操作部55はインシュレータ20の外側(前方)に位置するものの、インシュレータ20に対して上下方向(FFC80の厚み方向)に重ならないので、コネクタ10全体を低背化できる。その一方でインシュレータ20から前方に突出した操作部55を上方から操作することによりロック部材50によるロックを円滑に解除できる。さらにコネクタ10全体を低背化した場合であっても、ロック部材50を前後方向に伸ばして回転軸52から操作部55までの距離を長くすることにより、ロック部材50の回転角を大きくしロック部材50によるFFC80のロック及びロック解除を確実に行うことが可能である。従って、コネクタ10の低背化とロック部材50の良好な操作性を両立できる。
またインシュレータ20とロック部材50(操作部55)が上下方向に重ならないので、他部材(例えばシェル部材60やコネクタ10以外の部品)をインシュレータ20の上面に対して重ねながらレイアウトすることが可能になる。
さらにロック部材50に形成した受容溝56内に板バネ部71を位置させているため、受容溝56を具備しないロック部材50の下面に板バネ部71を当接させる構造に比べて、ロック部材50と板バネ部71の上下方向の合計寸法を小さくできるので、コネクタ10をより低背化可能である。
【0024】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば図20〜22に示す変形例での実施が可能である。
このコネクタ10’の基本構成はコネクタ10と同じであるが、インシュレータ20の前面の左右両端近傍には一対のロック判別用突起35が前向きに突設してあり、左右の操作部55の上面には上面及び後面が開放した逃げ用溝58が凹設してある。図20、図21に示すようにロック部材50がロック位置に位置するとき、逃げ用溝58の内部に対応するロック判別用突起35が位置するので、側方からロック判別用突起35を視認することは出来ない。一方、図22に示すようにロック部材50がロック位置以外に位置するときは、操作部55の上面がロック判別用突起35の下方まで移動するので、側方からロック判別用突起35を視認可能となる。このように作業者は、側方からコネクタ10を見ることによりロック部材50がロック位置以外の位置にあること、すなわちFFC80がコネクタ10(FFC挿入溝21)に対して不完全挿入されていることをより確実に認識可能となる。
【0025】
また、FFC80の接地パターンをFFC80の幅全体に渡って形成された1つのパターンにしてもよい。
また接続対象物はFFC以外のケーブル、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)であってもよい。
さらに、接続対象物の下面に貫通孔または凹部を形成し、ロック爪53をこの貫通孔または凹部に係合させるようにしてもよい(この場合は、接続対象物の貫通孔または凹部の直前に位置する部分が被ロック部となる)。
さらに付勢手段として板バネ部71とは別の形態の付勢手段を用いてもよい。例えば、インシュレータ20に板バネ71に相当するバネ部材を一体的に形成してもよい。またはインシュレータ20に下端を支持し上端でロック部材50を支持する圧縮コイルばねを利用してもよい。或いは付勢手段として引張バネを利用してもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 10’ コネクタ
20 インシュレータ
21 FFC挿入溝
22 コンタクト挿入溝
23 底面凹部
24 取付溝(取付部)
25 外側溝
26 傾斜受面
27 内側溝
28 軸受け凹部
29 支持突部
30 係止凹部
31 側部係止溝
32 導入溝
33 係止孔
34 下部係止溝
35 ロック判別用突起
40 シグナルコンタクト
41 テール部
42 弾性変形部
43 接触突部
50 ロック部材
51 基板部
52 回転軸(被支持部)
53 ロック爪
54 アーム部
55 操作部
56 受容溝
57 ストッパ
58 逃げ用溝
60 シェル部材
61 天井部
62 接地導通部
63 前側係止片
64 後側係止片
66 側部
67 弾性係止片
68 テール部
70 底板部
71 板バネ部(付勢手段)
72 テール部
73 下側係止片
80 FFC(接続対象物)
81 硬質端部
82 被ロック部
CB 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被ロック部を有する薄板状の接続対象物が挿入及び脱出可能なインシュレータと、
上記接続対象物の一方の面に形成した回路パターンと接触可能な、上記インシュレータに支持したコンタクトと、
上記被ロック部と係脱可能なロック爪が上記被ロック部と接続対象物の挿脱方向に対向するロック位置と、被ロック部と挿脱方向に対向しなくなるアンロック位置との間を回転可能として上記インシュレータに支持したロック部材と、
該ロック部材を上記ロック位置に向けて回転付勢する付勢手段と、
を備え、
上記ロック爪は、上記インシュレータに挿入した上記接続対象物によって押圧されたときに上記ロック位置に位置しているロック部材を上記アンロック位置まで回転させ、かつ、上記被ロック部と接続対象物の厚み方向に対向しなくなったときに上記接続対象物と非接触になりロック部材が上記ロック位置まで回転するのを許容し、
上記インシュレータの上記脱出方向側の端部に取付部を形成し、
上記ロック部材が、上記取付部に回転可能に支持した被支持部と、該取付部から上記脱出方向側に突出する操作部と、を備えることを特徴とするロック機能付きコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のロック機能付きコネクタにおいて、
上記インシュレータに金属製のシェル部材を固定し、
該シェル部材に上記付勢手段を一体的に形成したロック機能付きコネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のロック機能付きコネクタにおいて、
上記シェル部材に、上記接続対象物の他方の面に形成した接地パターンと接触可能な接地導通部を形成したロック機能付きコネクタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のロック機能付きコネクタにおいて、
上記ロック部材の回転方向の一方側の面に、付勢手段を受容する受容溝を形成したロック機能付きコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−199192(P2012−199192A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63946(P2011−63946)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000128407)京セラコネクタプロダクツ株式会社 (77)
【Fターム(参考)】