説明

ロック装置を内部に備えた可倒式シートバック構造

【課題】 可倒式のシートバックの前方への倒伏時において、荷物を載置した際にゴミ等がストライカの開口部から侵入したり、或いは故意にストライカの開口部に異物を侵入させたりして、シートバックの内部に備えられたロック装置が正常に機能しなくなるのを防止できる可倒式のシートバック構造を提供する。
【解決手段】 可倒式のシートバック2を構成するシートバックフレーム7の背面に設けられた開口部7aを閉蓋または開蓋する開閉カバー9を設け、該開閉カバー9と、車体5側またはシートクッション3側に設けられ、シートバック2を回動可能に軸支するヒンジ部材8とを連結部材10によって連結し、シートバック2の起立動作に伴って開口部7aを開蓋し、シートバック2の倒伏動作に伴って開口部7aを閉蓋する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可倒式のシートバックの前方への倒伏状態で荷物を載置した際に、ゴミ等がストライカの開口部から侵入したり、或いは故意にストライカの開口部に異物を侵入させたりして、シートバック内に設けられたロック装置が正常に機能しなくなるのを防止できる可倒式のシートバック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献に記載された従来のシートバック構造は、シートバック背面側に、車体側に設けられたストライカが進入する開口部を有し、該開口部をスリットが形成された弾性被覆片で覆う構造となっている。該弾性被覆片のスリットは、十字状に形成され、ストライカが進入し易く、且つストライカがラッチより離脱した際に、元の状態に復元し易いようになっている。また、ストライカが進入する部分のスリットの幅が広く形成されており、弾性被覆片の一部がラッチに噛み込まれ、破損するのを防止している。
【0003】
上述の従来構造では、シートバックを水平に倒伏させて荷物を置いた際に、荷物に付着したゴミ等が弾性被覆片のスリットから侵入し、シートバックの内部に備えられたロック装置が正常に機能しなくなる虞がある。
また、故意に棒状物を弾性被覆片に形成されたスリットから差し込んで、ロック解除位置にあるラッチをロック位置に変位させた場合、シートバックを引き起こして車体側に固定しようとしても、ロックしない事態となる懸念があった。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献】
【特許文献】 特開2001−61608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みて創案されたものであり、可倒式のシートバックの内部に備えられたロック装置が、シートバック背面側に設けられたストライカが進入する開口部から侵入したゴミ等の異物によって、正常に機能しなくなる事態を防止し、もってロック装置の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による請求項1に記載の可倒式のシートバック構造は、車体側に設けられたストライカが進入する開口部を背面に備え、前記ストライカが係合するロック装置を内部に備えており、前記シートバックの起立動作に伴って前記開口部を開蓋し、倒伏動作に伴って前記開口部を閉蓋するようにしたことを特徴としている。
【0007】
本発明による請求項2に記載の可倒式のシートバック構造は、該シートバックの背面に設けられた前記開口部を閉蓋または開蓋する開閉カバーを設け、該開閉カバーと、車体側またはシートクッション側に設けられ、前記シートバックを回動可能に軸支するヒンジ部材とを連結部材によって連結し、前記シートバックの起立動作に伴って前記開口部を開蓋し、倒伏動作に伴って前記開口部を閉蓋するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1によれば、可倒式のシートバック背面のストライカが進入する開口部をシートバックの倒伏動作に伴って自動的に開閉するようにしたので、手動で開閉する場合に比して、操作性が非常に高い。
【0009】
本発明による請求項2によれば、可倒式のシートバックの倒伏動作に伴って自動的に前記開口部を開蓋または閉蓋する開閉カバーの連動開閉動作を簡素な機構によって実現できるので、新たな機能追加による部品点数や重量、コストの大幅な増加を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【図2】本発明に係るシートバックを車体側に固定した状態を示す側面図である。
【図3】本発明に係るシートバックの倒伏状態を示す側面図である。
【図4】図2の起立状態にあるシートバックの背面を示す図である。
【図5】図4におけるA−A線断面を示す図である。
【図6】図4におけるB−B線断面を示す図である。
【図7】図4におけるC−C線断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0012】
本発明に係る車両用シート1は、図1に示すように、乗員が着座する背凭れとなるシートバック2と、座面となるシートクッション3と、車体5の床部5bに固定され、シートバック2を回動可能に支持するヒンジ部材8とで構成されている。
また、シートバック2は、車体5の壁部5aに設けられたストライカ4に係合してシートバック2を車体側に固定するロック装置6を内部に備えている。
【0013】
図2は、本発明に係る車両用シート1を構成するシートバック2を車体側に固定した状態におけるシートバック2の側面を示している。該シートバック2は、シートバックフレーム7と、図示しないパッドと、表皮カバー12で構成され、シートバックフレーム7側部の下端部が車体5の床部5bに設けられたヒンジ部材8に軸8aを中心として回動可能に軸支されている。また、シートバックフレーム7側部の上端部には、車体5の壁部5aに設けられたストライカ4に係合するロック装置6が設けられている。
該ロック装置6は、ストライカ4に係合する、軸6fを中心として回動自在なロックプレート6aと、該ロックプレート6aをロック位置に保持する、軸6gを中心として回動可能なカムプレート6bと、ロックプレート6aとカムプレート6bを連係させるスプリング6cと、ロックプレート6aをロック位置に保持するカムプレート6bを解放位置に変位させることによってロックプレート6aをロック解除位置に変位させる操作部材6dと、該操作部材6dとカムプレート6bとを連結し、操作部材6dの動作をカムプレート6bに伝達する連結ロッド6eとで構成されている。
シートフレーム7の背面には、ストライカ4が進入する開口部7aを覆うように開閉カバー9が備えられている。該開閉カバー9は、本体ケース9aとスライダ9bで構成され、該スライダ9bは本体ケース9aに対して摺動可能に支持され、その端部は、ヒンジ部材8に設けられたベース部材11に連結ロッド10によって連結されている。
【0014】
図3は、図2の起立状態にあるシートバック2のロック装置6をロック解除してシートバック2を前方へ倒伏した状態を示している。
図2に示すシートバック2の肩部に設けられた操作部材6dを押圧操作すると、連結ロッド6eが押し下げられ、カムプレート6bが反時計方向に回動するとともに、スプリング6cによってロックプレート6aが反時計方向に回動し、ロックプレート6aとストライカ4との係合が解除される。
そして、シートバック2を前方の倒伏位置に向かって傾動させるのに伴い、シートバックフレーム7の背面に設けられた開閉カバー9のスライダ9bが連結ロッド10によって引き下げられ、該スライダ9bがストライカ4の進入開口部7aを閉蓋する。
【0015】
図4は、起立状態にあるシートバック2の背面を示している。該シートバック2を構成するシートバックフレーム7の背面には、ストライカ4がロック装置6に進入し得る開口部7aが設けられている。
また、シートバックフレーム7には開口部7bが設けられており、該開口部7bを、スライダ9bとヒンジ部材8に設けられたベース部材11とを連結する連結ロッド10が通っている。
さらに、開口部7aを覆うように設けられた開閉カバー9を構成する本体ケース9aには、図6、図7に示すように開口部9cが設けられ、開閉カバー9を構成するスライダ9bには、図7に示すように開口部9dが設けられている。
これにより、開口部7aをスライダ9bの非開口部分が覆うことで閉蓋し、開口部7aにスライダ9bの開口部9dが重なり合うことで開蓋することができる。
【0016】
なお、本願発明は、このままの実施例に限定されるものでなく、本願発明の技術的思想の範囲で、様々な変形例が実現できるものと解される。
例えば、実施例では、連結部材として連結ロッドを用いているが、これに限定されず、連結ワイヤを用いても良い。
【符号の説明】
【0017】
1 車両用シート
2 シートバック
3 シートクッション
4 ストライカ
5 車体
5a 壁部
5b 床部
6 ロック装置
6a ロックプレート
6b カムプレート
6c スプリング
6d 操作部材
6e 連結ロッド
6f,6g 軸
7 シートフレーム
7a,7b 開口部
8 ヒンジ部材
8a 軸
9 開閉カバー
9a 本体ケース
9b スライダ
9c,9d 開口部
10 連結ロッド
11 ベース部材
12 表皮カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に設けられたストライカが進入する開口部を背面に備え、前記ストライカが係合するロック装置を内部に備えた可倒式のシートバックにおいて、該シートバックの起立動作に伴って前記開口部を開蓋し、倒伏動作に伴って前記開口部を閉蓋するようにしたことを特徴とする可倒式のシートバック構造。
【請求項2】
前記シートバックの背面に設けられた前記開口部を閉蓋または開蓋する開閉カバーを設け、該開閉カバーと、車体側またはシートクッション側に設けられ、前記シートバックを回動可能に軸支するヒンジ部材とを連結部材によって連結し、前記シートバックの起立動作に伴って前記開口部を開蓋し、倒伏動作に伴って前記開口部を閉蓋するようにしたことを特徴とする請求項1記載の可倒式のシートバック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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