説明

ロック装置

【課題】車体組付方向の寸法を小さくすることができるロック装置を提供する。
【解決手段】ラッチバネ73をベース側ラッチ規制部71bの外周、またはホルダ側ラッチ規制部22aの外周に巻回し、ロックバネ74とカムバネ75のどちらか一方を、ベース側ロック規制部72bの外周と、ホルダ側ロック規制部22bの外周のどちらか一方に巻回するとともに、ロックバネ74とカムバネ75の他方を、ベース側ロック規制部72bの外周と、ホルダ側ロック規制部22bの外周の他方に巻回する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動支持された座席の背もたれを車体に固定するロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の座席の背もたれを車体に固定する従来のロック装置として、特許文献1、特許文献2に開示されたものがある。特許文献1、特許文献2のロック装置101は、図14に示すように、ベースプレート110を有するハウジング160と、ベースプレート110に固定され、ラッチ130と遮断構成部品140をそれぞれ回動可能に支持する一対の筒状支持部材171,172とを備え、筒状支持部材171,172を貫通するボルト等により、座席の構造部品(図示せず)に固定する。また、ラッチ130と遮断構成部品140とが回動しつつ、ストライカ(図示せず)を内部に誘導し、回動が完了したところで、ラッチ130と遮断構成部品140とに逆回転方向にロックが掛かり、ストライカを内部に保持するものである。。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−517721号公報
【特許文献2】特表2007−518000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の構成では、遮断構成部品140と、クランプ用偏心部材150とが、同じ筒状支持部材172に配置されるとともに、遮断構成部品140とクランプ用偏心部材150をラッチ130と係合する方向にそれぞれ付勢するバネ174,175が、同じ筒状支持部材172の軸方向に配置されるため、装置全体の軸方向寸法が大きくなるという問題がある。また、特許文献1では、一対の筒状支持部材171,172の先端側を支持する連結板120を設けているが、バネ174,175の一方のバネ175を連結板120の外側に配置する。また、バネ173は、ラッチ130に係合してストライカを開放する方向にラッチ130を付勢しているが、連結板120の外側に配置されている。そのため、バネ173,175の脱落を防止するために保持リング180が必要であり、部品点数が増えるとともに、筒状支持部材172の軸方向寸法がさらに大きくなるという問題がある。
【0005】
特許文献2の構成では、インサート成形によりインサート部材に一体的に軟質材からなるハウジングを形成することで軽量化を図っている。しかし、座席によりハウジングの形状が異なるため、共用化が難しい。また、ハウジングを小型に形成しようとするとハウジングの外周フランジが邪魔になり、組付性が悪くなるという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、車体組付方向の寸法を小さくすることができるロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、一端がベースプレートに固定されつつ、他端がホルダプレートに固定されたラッチ側支持軸と、一端が該ベースプレートに固定されつつ、他端が該ホルダプレートに固定されたロック側支持軸と、該ベースプレートと該ホルダプレートとの間で、該ラッチ側支持軸に回動可能に配置されたラッチと、該ベースプレートと該ホルダプレートとの間で、該ロック側支持軸に回動可能に配置されたカム部材、およびロック部材と、該ラッチを開放位置方向に付勢するラッチバネと、該ロック部材を該ラッチとの係合方向に付勢するロックバネと、該カム部材を該ラッチとの係合方向に付勢するカムバネと、からなるロックユニットを備えたロック装置であって、前記ラッチ側支持軸に対する該ラッチの軸方向位置を定めるために該ラッチ側支持軸の一端側に設けられ該ラッチ側支持軸の該ラッチが挿通される部位よりも大径に設定された段部からなるベース側ラッチ規制部と、該ラッチ側支持軸の他端側に設けられ該ホルダプレートの該ラッチ側支持軸の他端を結合する部位に、該ベースプレート側に向かって突出し、且つ該ラッチ側支持軸の該ラッチが挿通される部位よりも大径に設定された段部からなるホルダ側ラッチ規制部とを有し、前記ロック側支持軸に対する前記カム部材、および前記ロック部材の軸方向位置を定めるために該ロック側支持軸の一端側に設けられ、該ロック側支持軸の該カム部材、および該ロック部材が挿通される部位よりも大径に設定された段部からなるベース側ロック規制部と、該ロック側支持軸の他端側に設けられ、該ホルダプレートの該ロック側支持軸の他端を結合する部位に、該ベースプレート側に向かって突出し、且つ該ロック側支持軸の該カム部材、および該ロック部材が挿通される部位よりも大径に設定された段部からなるホルダ側ロック規制部とを備え、前記ラッチバネが該ベース側ラッチ規制部の外周、または該ホルダ側ラッチ規制部の外周に巻回され、前記ロックバネと前記カムバネのどちらか一方が、前記ベース側ロック規制部の外周に巻回され、該ロックバネと該カムバネの他方が、該ホルダ側ロック規制部の外周に巻回されたことを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載のロック装置において、前記ホルダプレート側に設けられる前記ホルダ側ロック規制部、および前記ホルダ側ラッチ規制部は、プレス加工によって、該ホルダプレートの前記ロック側支持軸、および前記ラッチ側支持軸との結合部位周辺を該ベースプレート側へ突出させた大径部で構成され、該ホルダプレートを貫通した、該ロック側支持軸、および該ラッチ側支持軸の端部を、該大径部の裏面側凹部内で加締固定したことを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1、または請求項2記載のロック装置において、前記ラッチの一面に連係突起が突設され、該ラッチと前記ロック部材とが、同一平面上にそれぞれ配置され、前記カム部材は、その周面が該連係突起と係合可能に、且つ該ロック部材上に重ねられ、該ロック部材に作動側端部が係止される前記ロックバネを該カム部材が隣接する側のロック規制部の外周に巻回するとともに、該カム部材に作動側端部が係止される該カムバネを該ロック部材が隣接する側のロック規制部の外周に巻回したことを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のロック装置において、前記ベースプレートと前記ホルダプレートの少なくとも一方に、他方側に向かって突出するバネ掛部を備え、前記ラッチバネ、前記ロックバネ、前記カムバネの固定側端部が、該バネ掛部にそれぞれ係止されることを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のロック装置において、前記ベースプレートと前記ホルダプレートの少なくとも一方に、他方側に向かって突出するストッパ部を備え、前記ラッチ、前記ロック部材、前記カム部材の少なくとも1つは、該ストッパ部と回動端で係合し、回動範囲が規定されることを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項記載のロック装置において、一面が開口する略箱形状を有し、前記ロックユニットが着脱可能に内部に収容されるカバー部材を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6記載のロック装置において、前記カバー部材は、樹脂材で形成され、前記ラッチ部材には、外部に配置される軸状のストライカが係脱可能に形成された鉤状溝部を備え、前記ベースプレートと、ロック位置に位置する該ラッチ部材の該鉤状溝部に挿入された該ストライカとの間に、前記カバー部材から延設された緩衝部が配置されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明において、ベースプレートとホルダプレートの間で、ラッチ、ロック部材、およびカム部材の支持軸に対する軸方向位置を定めるロック規制部、またはラッチ規制部の外周に、ラッチバネとカムバネ、およびロックバネが配置されるので、バネを固定するための部材を設ける必要がないため、支持軸の軸方向の寸法を小さくすることができるとともに、バネの作動性を確保しつつ、ロック部材とカム部材を軸方向に支持することができる。
【0015】
ベースプレートとホルダプレートの間にロック装置の構成要素であるラッチ、ロック部材、カム部材、ラッチバネ、ロックバネ、カムバネを配置できるので、ロック装置をユニット化することができる。また、ベースプレートとホルダプレートは、強度確保に必要な最小形状とすることができるため、装置全体を小型化、軽量化することができる。
【0016】
請求項2の発明において、ホルダプレートの大径部の裏側に形成される凹部内を、ホルダプレートと支持軸の加締固定に利用することで、支持軸を長くすることなく、2つのバネを支持軸の軸方向に並べて配置することができるため、装置全体の支持軸の軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0017】
請求項3の発明において、ラッチを回動する際のガタ付きを防止するために、ロックバネよりも強く設定されるカムバネを、軸方向空間を広く確保できるロック部材側の大径部に配置することで、軸方向空間を効率的に利用でき、装置全体の支持軸の軸方向の寸法をさらに小さくすることができる。
【0018】
また、支持軸の軸方向において、ラッチとロック部材が同一平面状に配置され、ラッチの一面に突設した突起に係合するように、カム部材がロック部材に重ねられて配置されたことにより、各部材にバランス良く荷重が掛かるため、ロック強度を向上することができる。
【0019】
請求項4の発明において、バネ掛部が内側に突設されたことにより、ベースプレートやホルダプレートの側面から外側に突出するものがない。そのため、座席構成部品の取付面は平面であれば良く、逃がし等を設ける必要がない。
【0020】
請求項5の発明において、ストッパ部が内側に突設されたことにより、ベースプレートやホルダプレートの側面から外側に突出するものがない。そのため、座席構成部品の取付面は平面であれば良く、逃がし等を設ける必要がない。
【0021】
請求項6の発明において、ロックユニットと別体に、且つ着脱可能にカバー部材を設けたことによって、ロックユニットを変更することなくカバー部材の変更のみで様々な座席への適用が可能になるため、製造コストを低減することができる。また、ロックユニットを組立てた後でカバー部材を組付けることができるので、組立作業性を向上することができる。
【0022】
請求項7の発明において、ベースプレートと、ストライカとの間に、樹脂材からなるカバー部材から延設された緩衝部が配置されたことによって、別途ダンパーを設けることなく、異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態を示し、ロック装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、ロック装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、ロック装置の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、カバーにベースプレートを組付けた状態を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るロック装置がロック動作する様子(解除状態)を示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るロック装置がロック動作する様子(解除状態→ロック状態(1))を示す平面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るロック装置がロック動作する様子(解除状態→ロック状態(2))を示す平面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るロック装置がロック動作する様子(ロック状態)を示す平面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るロック装置が解除動作する様子(ロック状態)を示す平面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るロック装置が解除動作する様子(ロック状態→解除状態(1))を示す平面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るロック装置が解除動作する様子(ロック状態→解除状態(2))を示す平面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るロック装置が解除動作する様子(解除状態)を示す平面図である。
【図14】従来のロック装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のロック装置1は、揺動可能に配置された座席の背もたれ(図示せず)に配設されるロックユニット2と、車体側に配設されるストライカ3とで構成され、ロックユニット2がストライカ3と係合することで座席の背もたれを車体(図示せず)に固定するものである。
【0025】
ロックユニット2は、図1,図2に示すように、ベースプレート10、ホルダプレート20、ラッチ側支持軸71、ロック側支持軸72、ラッチ部材30、ロック部材40、カム部材50、ラッチバネ73、ロックバネ74、カムバネ75で構成されている。また、ロックユニット2には、カバー部材60が装着されている。
【0026】
ベースプレート10は、図2,図5に示すように、略長円形状を有する板状の金属材からなり、両端の各半円部の中心部分にベース側ラッチ取付孔11aとベース側ロック取付孔11bがそれぞれ設けられている。また、ベースプレート10には、保持溝部12、ストッパ部13、ラッチバネ掛部14a(バネ掛部)、カムバネ掛部14b(バネ掛部)が設けられている。保持溝部12は、両取付孔11a,11bの間に配置され、長円形状の長手方向に交差する方向に向かって開口する矩形状溝で構成されており、保持溝部12の開口部には、溝壁12aに沿って外側へ突出する誘導角部12bが設けられている。ストッパ部13は、ベースプレート10の板面方向に延設された切片をホルダプレート20側へ略直角に折曲げて形成されている。ラッチバネ掛部14aは、ストッパ部13を構成する腕部の屈曲部に設けられる貫通孔で構成されている。ストッパ部15は、ベース側ロック取付孔11bの近傍に、ベースプレート10の板面方向に延設された切片をホルダプレート20側へ略直角に折曲げて形成されている。カムバネ掛部14bは、ストッパ部15を構成する腕部の屈曲部分の側面側に設けられる切欠で構成されている。
【0027】
ホルダプレート20は、略長円形状を有する板状の金属材からなり、両端の各半円部の中心部分にホルダ側ラッチ取付孔21aとホルダ側ロック取付孔21bがそれぞれ設けられている。また、ホルダプレート20には、図2、図4に示すようにホルダ側ラッチ規制部22a、ホルダ側ロック規制部22b、保持凹部23、ロックバネ掛部24(バネ掛部)、固定係止部25が設けられている。ホルダ側ラッチ規制部22aは、ホルダ側ラッチ取付孔21aの周囲、つまりホルダプレート20とラッチ側支持軸71とを結合する部位に配置され、ベースプレート10に向かって突出し、且つラッチ側支持軸71のラッチ部材30が挿通される部位よりも大径に設定された段部として、プレス加工によって形成されている。ホルダ側ロック規制部22bは、同様にホルダ側ロック取付孔21bの周囲、つまりホルダプレート20とロック側支持軸72とを結合する部位に配置され、ベースプレート10に向かって突出し、且つロック側支持軸72のカム部材50、およびロック部材40が挿通される部位よりも大径に設定された段部として、プレス加工によって形成されている。そして、ホルダ側ラッチ規制部22aとホルダ側ロック規制部22bをプレス加工した際に、ホルダプレート20の外面側(裏面側)にプレス凹部26(凹部)が形成される。保持凹部23は、両取付孔21a,21bの間に配置され、ベースプレート10の溝壁12aの一側面(ロック部材40側)と軸方向で略重なる位置に配置されている。ロックバネ掛部24は、ホルダ側ロック取付孔21bの近傍に、ホルダプレート20の板面方向に延設された切片をベースプレート10側へ略直角に折曲げて形成されている。固定係止部25は、ホルダプレート20の長手方向の両端部に、ホルダプレート20の板面方向に延設された切片がベースプレート10側へ略直角に折曲げられ、この切片に形成される矩形状の孔で形成されている。
【0028】
ラッチ側支持軸71は、略円筒形状を有し、一端がベースプレート10に設けられたベース側ラッチ取付孔11aに挿入されてプロジェクション溶接により固定され、他端がホルダプレート20に設けられたホルダ側ラッチ取付孔21aに挿入されて加締固定されている。また、ベースプレート10とホルダプレート20に固定された状態で、ベースプレート10側の端部、つまりベースプレート10とラッチ側支持軸71の端部とが結合する部位に隣接して、ラッチ側支持軸71のラッチ部材30が挿通されるラッチ側回動支持部71aよりも大径に設定された段部からなるベース側ラッチ規制部71bが形成されている。
【0029】
ロック側支持軸72は、ラッチ側支持軸71と同様に、略円筒形状を有し、一端がベースプレート10に設けられたベース側ロック取付孔11bに挿入されてプロジェクション溶接により固定され、他端がホルダプレート20に設けられたホルダ側ロック取付孔21bに挿入されて加締固定されている。また、ベースプレート10とホルダプレート20に固定された状態で、ベースプレート側の端部、つまりベースプレート10とロック側支持軸72の端部とが結合する部位に隣接して、ロック側支持軸72のロック部材40が挿通されるロック側回動支持部72aよりも大径に設定された段部からなるベース側ロック規制部72bが形成されている。
【0030】
ラッチ部材30は、肉厚な板状の金属材からなり、表面が樹脂材で覆われている。また、ラッチ部材30には、ラッチ挿通孔31、ラッチ側円弧面32、連係突起33、鉤状溝部34、ラッチ側バネ掛部35が設けられている。ラッチ挿通孔31には、ラッチ側回動支持部71aが挿通され、ラッチ部材30がラッチ側回動支持部71aにガタ付き無く回動支持されるように、ラッチ挿通孔31の孔径が設定されている。ラッチ側円弧面32は、ラッチ部材30の板厚面に形成され、ラッチ挿通孔31を回転中心とする円弧状の曲面で構成されている。連係突起33は、ラッチ部材30のホルダプレート20側の面に突設され、円柱状の突起で構成されている。鉤状溝部34は、側壁の一方が鉤状に形成されるとともに、一端が開口するスリット状に形成され、車体に配置される軸状のストライカ3が係脱可能に溝幅が設定されている。ラッチ側バネ掛部35は、ラッチ部材30の回転面に沿って延設された鉤状突起で構成されている。また、鉤状突起の背面側には、解除位置に位置した状態で、ストッパ部13に当接するストッパ受部36が設定されている。
【0031】
ロック部材40は、板状の金属材からなり、ロック挿通孔41、ロック面42、ロック側バネ掛部43、操作腕44及びロック解除保持面45が設けられている。ロック挿通孔41には、ロック側回動支持部72aが挿通され、ロック部材40がロック側回動支持部72aにガタ付き無く回動支持されるように、ロック挿通孔41の孔径が設定されている。ロック面42は、ロック部材40の板厚面に形成され、ロック挿通孔41を回転中心とする円弧状の曲面で構成されている。ロック側バネ掛部43は、ロック部材40の回転面に沿って延設された腕部46に、ロック部材40を板厚方向に貫通する孔で構成されている。操作腕44は、ロック部材40の回転面に沿って延設された腕部で構成されている。ロック解除保持面45は、ラッチ部材30が解除位置に位置した状態で、ラッチ側円弧面32と摺動可能に構成されている。
【0032】
カム部材50は、板状の金属材からなり、カム挿通孔51、カム面52、カム側バネ掛部53、ロック・カム連係部54が設けられている。カム挿通孔51には、ロック側回動支持部72aが挿通され、カム部材50がロック側回動支持部72aにガタ付き無く回動支持されるように、カム挿通孔51の孔径が設定されている。カム面52は、カム部材50の板厚面に形成され、図3に示すように、カム挿通孔51を回転中心して時計回りに徐々に半径が大きくなる曲面で構成されている。ロック・カム連係部54は、カム部材50の回転面上に位置するように腕部をロック部材40側に略直角に折曲げ形成されている。カム側バネ掛部53は、ロック・カム連係部54を構成する腕部の先端を回転面方向に折曲げ、形成されている。
【0033】
ラッチバネ73は、ベース側ラッチ規制部71bの外周に巻回されつつ、一端(固定側端部)がベースプレート10のラッチバネ掛部14aに引っ掛けられ、他端(可動側端部)がラッチ部材30のラッチ側バネ掛部35に引っ掛けられることで、ラッチ部材30をロック位置から解除位置方向(図3中時計方向)に向けて付勢している。
【0034】
ロックバネ74は、ホルダ側ロック規制部22bの外周に巻回されつつ、一端(固定側端部)がホルダプレート20のロックバネ掛部24に引っ掛けられ、他端(可動側端部)がロック部材40のロック側バネ掛部43に引っ掛けられることで、ロック部材40をラッチ部材30と係合するロック位置方向(図3中反時計方向)に向けて付勢している。
【0035】
カムバネ75は、ベース側ロック規制部72bの外周に巻回されつつ、一端(固定側端部)がベースプレート10のカムバネ掛部14bに引っ掛けられ、他端(可動側端部)がカム部材50のカム側バネ掛部53に引っ掛けられることで、カム部材50をラッチ部材30の連係突起33と係合するロック位置方向(図3中反時計方向)に向けて付勢している。
【0036】
なお、ラッチバネ73、ロックバネ74、カムバネ75の各バネ定数は、
(カムバネ)>(ラッチバネ)>(ロックバネ)
となるように設定されている。
【0037】
カバー部材60は、一面が開口する略箱形状を有する樹脂材からなり、内部にロックユニット2が着脱可能に収容される。カバー部材60には、図5に示すように、リブ61、ベース係合部62、ホルダ係合部63、緩衝部64が設けられている。リブ61は、筋状の突起からなり、カバー部材60の底内面に複数設けられており、カバー部材60内にロックユニット2を配設した状態で、ベースプレート10の周縁に当接し、ロックユニット2がカバー部材60内でズレることを防止している。ベース係合部62は、カバー部材60の周縁に突設され、カバー部材60内にロックユニット2を配設した状態で、ベースプレート10の保持溝部12と係合し、ロックユニット2をカバー部材60内に固定する。ホルダ係合部63は、カバー部材60の側壁内面に突設され、カバー部材60内にロックユニット2を配設した状態で、ホルダプレート20の固定係止部25と係合し、ロックユニット2をカバー部材60内に固定する。緩衝部64は、保持溝部12に沿って形成したカバー部材60の溝部周縁から延設され、カバー部材60内にロックユニット2を配設した状態で、ベースプレート10の保持溝部12底面と、ロック位置に位置するラッチ部材30の鉤状溝部34に挿入されたストライカ3との間に緩衝部64が狭持されるように配置されている。
【0038】
次に、本実施形態のロック装置1の組立手順を説明する。まず、ベースプレート10のベース側ラッチ取付孔11aとベース側ロック取付孔11bに、ラッチ側支持軸71とロック側支持軸72をそれぞれ挿入して配設し、プロジェクション溶接によって固定する。次に、ラッチ側支持軸71にラッチバネ73、ラッチ部材30の順で配設する。また、ロック側支持軸72にカムバネ75、ロック部材40、カム部材50、ロックバネ74の順で配設する。次に、ホルダプレート20を配設し、ホルダ側ラッチ取付孔21aとホルダ側ロック取付孔21bに、ラッチ側支持軸71とロック側支持軸72を貫通させる。なお、ホルダプレート20の外面側(裏面側)には、ホルダ側ラッチ規制部22aとホルダ側ロック規制部22bをプレス加工した際に、プレス凹部26が形成される。そして、このプレス凹部26を利用して、貫通したラッチ側支持軸71とロック側支持軸72のホルダプレート20側端部を、プレス凹部26内にて加締固定する。
【0039】
以上によって、ロックユニット2は完成する。完成したロックユニット2にカバー部材60を組付け、ラッチ側支持軸71とロック側支持軸72のそれぞれに貫通する孔にボルト(図示せず)を挿入し、シート(図示せず)の背もたれ(図示せず)に固定する。
【0040】
次に、本実施形態のロック装置1の動作を説明する。まず、ロック解除状態では、図6に示すように、ラッチ部材30は、ラッチバネ73の付勢力によって、ラッチ側支持軸71を回転中心に時計方向へ付勢されつつ、ストッパ受部36がベースプレート10のストッパ部13に当接することで、解除位置に保持されている。ロック部材40は、ロックバネ74の付勢力によって、ロック側支持軸72を回転中心に反時計方向へ付勢されつつ、ロック解除保持面45がラッチ部材30のラッチ側円弧面32に当接することで、解除位置に保持されている。カム部材50は、カムバネ75の付勢力によって、ロック側支持軸72を回転中心に反時計方向へ付勢されつつ、ロック・カム連係部54がロック部材40の操作腕44に当接することで、解除位置に保持されている。
【0041】
このようなロック解除状態で、ストライカ3を保持溝部12に押込むと、図7に示すように、ストライカ3に押されてラッチ部材30が反時計方向へ回動し、ストライカ3を鉤状溝部34内に引込みながら、ラッチ側円弧面32がロック解除保持面45上を摺動する。ストライカ3をさらに押込むことで、ラッチ部材30が反時計方向へ回動し、ラッチ側円弧面32がロック解除保持面45から外れると、図8に示すように、ロック部材40とカム部材50が、ロックバネ74とカムバネ75の付勢力によって夫々反時計方向へ回動し、ロック部材40のロック面42がラッチ部材30の回動軌跡上に移動するとともに、ラッチ部材30の連係突起33がカム部材50のカム面52に当接する。
【0042】
そして、ラッチ部材30の連係突起33がカム部材50のカム面52に当接すると、ラッチバネ73、ロックバネ74、カムバネ75のバネ定数の関係から、ロック部材40とカム部材50が反時計方向へ回転しながら、カム面52と連係突起33を介して、ラッチ部材30を反時計方向へ回転させ、図9に示すように、ラッチ側円弧面32にロック部材40の操作腕44が当接しつつ、ストライカ3が、保持溝部12の底部分に設けられた緩衝部64と鉤状溝部34との間に保持され、ロック状態となる。
【0043】
ここで、ロック状態でストライカ3を保持溝部12から引抜こうとした場合、ラッチ部材30には時計方向に回動しようとする力が掛かり、連係突起33とカム面52を介して、カム部材50には図中時計方向への回転力が作用するが、ロック部材40には、ロック面42を介して軸中心方向の力のみが作用し、ロック部材40が図中時計方向へ回転させる力(分力)は、ほとんど作用しないので、ストライカ3が引抜かれることはなく、ロック状態が保持される。
【0044】
次に、図10に示すロック状態からバネ力に抗してロック状態にある操作腕44を時計方向へ回転させると、図11に示すように、ロック・カム連係部54を介して操作力がカム部材50に伝わり、ロック部材40とともにカム部材50が時計方向へ回動する。さらに操作腕44を時計方向へ回転させて連係突起33がカム面52から外れると、図12に示すように、ラッチ部材30がラッチバネ73の付勢力によって時計方向へ回動し、ラッチ部材30がロック面42に当接する。そして、さらに操作腕44を時計方向へ回転させてロック面42がラッチ部材30の回動軌跡上から外れると、図13に示すように、ラッチ部材30がラッチバネ73の付勢力によって時計方向へ回動してラッチ部が解除位置へ移動する。ここで、ロック部材40の腕部46がストッパ部15に当接することで、ロック解除方向へのロック部材40の回動範囲を規定している。
【0045】
以上、上記本実施形態では、ベースプレート10とホルダプレート20の間で、ラッチ部材30、ロック部材40及びカム部材50の支持軸71,72に対する軸方向位置を定める各規制部22a,22b,71a,71bの外周に、ラッチバネ73とカムバネ75、およびロックバネ74が配置されるので、バネを固定するための部材を新たに設ける必要がないため、支持軸71,72の軸方向の寸法を小さくすることができるとともに、バネの作動性を確保しつつ、ロック部材40とカム部材50を軸方向に支持することができる。
【0046】
ベースプレート10とホルダプレート20の間にロック装置1の構成要素であるラッチ部材30、ロック部材40、カム部材50、ラッチバネ73、ロックバネ74、カムバネ75を配置できるので、ロック装置1をユニット化(ロックユニット2)することができる。また、ベースプレート10とホルダプレート20は、強度確保に必要な最小形状とすることができるため、装置全体を小型化、軽量化することができる。
【0047】
ホルダプレート20のロック規制部22a,22bの裏側に形成されるプレス凹部26内を、ホルダプレート20と支持軸71,72の加締固定に利用することで、ロック側支持軸72を長くすることなく、2つのバネを支持軸71,72の軸方向に並べて配置することができるため、装置全体の支持軸71,72の軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0048】
また、ラッチ部材30を回動する際のガタ付きを防止するために、ロックバネ74よりも強く設定されるカムバネ75を、軸方向空間を広く確保できるロック部材40側の大径部に配置することで、軸方向空間を効率的に利用でき、装置全体の支持軸71,72の軸方向の寸法をさらに小さくすることができる。
【0049】
支持軸71,72の軸方向において、ラッチ部材30とロック部材40が同一平面状に配置され、ラッチ部材30の一面に突設した突起に係合するように、カム部材50がロック部材40に重ねられて配置されたことにより、各部材にバランス良く荷重が掛かるため、ロック強度を向上することができる。
【0050】
バネ掛部14a,14b,24がロックユニット2の内側に突設されたことにより、ベースプレート10やホルダプレート20の側面から外側に突出するものがない。そのため、座席構成部品の取付面は平面であれば良く、逃がし等を設ける必要がない。
【0051】
ストッパ部13がロックユニット2の内側に突設されたことにより、ベースプレート10やホルダプレート20の側面から外側に突出するものがない。そのため、座席構成部品の取付面は平面であれば良く、逃がし等を設ける必要がない。
【0052】
ロックユニット2と別体に、且つ着脱可能にカバー部材60を設けたことによって、ロックユニット2を変更することなくカバー部材60の変更のみで様々な座席への適用が可能になるため、製造コストを低減することができる。また、ロックユニット2を組立てた後でカバー部材60を組付けることができるので、組立作業性を向上することができる。
【0053】
ベースプレート10と、ストライカ3との間に、樹脂材からなるカバー部材60から延設された緩衝部64が配置されたことによって、別途ダンパーを設けることなく、異音の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…ロック装置
2…ロックユニット
3…ストライカ
10…ベースプレート
13…ストッパ部
14a,14b,24…バネ掛部
20…ホルダプレート
22b…ホルダ側ロック規制部
30…ラッチ部材
33…連係突起
34…鉤状溝部
40…ロック部材
42…ロック面
50…カム部材
52…カム面(周面)
60…カバー部材
64…緩衝部
71…ラッチ側支持軸
72…ロック側支持軸
73…ラッチバネ
74…ロックバネ
75…カムバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がベースプレートに固定されつつ、他端がホルダプレートに固定されたラッチ側支持軸と、
一端が該ベースプレートに固定されつつ、他端が該ホルダプレートに固定されたロック側支持軸と、
該ベースプレートと該ホルダプレートとの間で、該ラッチ側支持軸に回動可能に配置されたラッチと、
該ベースプレートと該ホルダプレートとの間で、該ロック側支持軸に回動可能に配置されたカム部材、およびロック部材と、
該ラッチを開放位置方向に付勢するラッチバネと、
該ロック部材を該ラッチとの係合方向に付勢するロックバネと、
該カム部材を該ラッチとの係合方向に付勢するカムバネと、からなるロックユニットを備えたロック装置であって、
前記ラッチ側支持軸に対する該ラッチの軸方向位置を定めるために該ラッチ側支持軸の一端側に設けられ該ラッチ側支持軸の該ラッチが挿通される部位よりも大径に設定された段部からなるベース側ラッチ規制部と、
該ラッチ側支持軸の他端側に設けられ該ホルダプレートの該ラッチ側支持軸の他端を結合する部位に、該ベースプレート側に向かって突出し、且つ該ラッチ側支持軸の該ラッチが挿通される部位よりも大径に設定された段部からなるホルダ側ラッチ規制部とを有し、前記ロック側支持軸に対する前記カム部材、および前記ロック部材の軸方向位置を定めるために該ロック側支持軸の一端側に設けられ、該ロック側支持軸の該カム部材、および該ロック部材が挿通される部位よりも大径に設定された段部からなるベース側ロック規制部と、
該ロック側支持軸の他端側に設けられ、該ホルダプレートの該ロック側支持軸の他端を結合する部位に、該ベースプレート側に向かって突出し、且つ該ロック側支持軸の該カム部材、および該ロック部材が挿通される部位よりも大径に設定された段部からなるホルダ側ロック規制部とを備え、
前記ラッチバネが該ベース側ラッチ規制部の外周、または該ホルダ側ラッチ規制部の外周に巻回され、
前記ロックバネと前記カムバネのどちらか一方が、前記ベース側ロック規制部の外周に巻回され、該ロックバネと該カムバネの他方が、該ホルダ側ロック規制部の外周に巻回されたことを特徴とするロック装置。
【請求項2】
請求項1記載のロック装置において、
前記ホルダプレート側に設けられる前記ホルダ側ロック規制部、および前記ホルダ側ラッチ規制部は、プレス加工によって、該ホルダプレートの前記ロック側支持軸、および前記ラッチ側支持軸との結合部位周辺を該ベースプレート側へ突出させた大径部で構成され、
該ホルダプレートを貫通した、該ロック側支持軸、および該ラッチ側支持軸の端部を、該大径部の裏面側凹部内で加締固定したことを特徴とするロック装置。
【請求項3】
請求項1、または請求項2記載のロック装置において、
前記ラッチの一面に連係突起が突設され、
該ラッチと前記ロック部材とが、同一平面上にそれぞれ配置され、
前記カム部材は、その周面が該連係突起と係合可能に、且つ該ロック部材上に重ねられ、
該ロック部材に作動側端部が係止される前記ロックバネを該カム部材が隣接する側のロック規制部の外周に巻回するとともに、該カム部材に作動側端部が係止される該カムバネを該ロック部材が隣接する側のロック規制部の外周に巻回したことを特徴とするロック装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のロック装置において、
前記ベースプレートと前記ホルダプレートの少なくとも一方に、他方側に向かって突出するバネ掛部を備え、
前記ラッチバネ、前記ロックバネ、前記カムバネの固定側端部が、該バネ掛部にそれぞれ係止されることを特徴とするロック装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のロック装置において、
前記ベースプレートと前記ホルダプレートの少なくとも一方に、他方側に向かって突出するストッパ部を備え、
前記ラッチ、前記ロック部材、前記カム部材の少なくとも1つは、該ストッパ部と回動端で係合し、回動範囲が規定されることを特徴とするロック装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項記載のロック装置において、
一面が開口する略箱形状を有し、前記ロックユニットが着脱可能に内部に収容されるカバー部材を備えたことを特徴とするロック装置。
【請求項7】
請求項6記載のロック装置において、
前記カバー部材は、樹脂材で形成され、
前記ラッチ部材には、外部に配置される軸状のストライカが係脱可能に形成された鉤状溝部を備え、
前記ベースプレートと、ロック位置に位置する該ラッチ部材の該溝部に挿入された該ストライカとの間に、前記カバー部材から延設された緩衝部が配置されたことを特徴とするロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−11061(P2013−11061A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142595(P2011−142595)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000237307)富士機工株式会社 (392)
【Fターム(参考)】