説明

ロボットの関節機構

【課題】1つの駆動源により複数の関節をそれぞれ駆動させることができる関節機構を提供することを課題とする。
【解決手段】ロータ4を回転して出力軸部材5をステータ2に対し傾動すると、出力軸部材5の傾動に伴って第1節B、第2節C及び第3節Dが互いの相対姿勢を保持したままステータ2に対し傾動する。ロータ4を回転して出力軸部材5をそれ自身の軸回りに回転すると、出力軸部材5の回転に伴って第1の傘歯歯車6が回転することにより、第2の傘歯歯車8が第2関節の軸S1の回りに回転して第2節Cが第1節Bに対し傾動する。また、このとき、第1の傘歯歯車6の回転に伴って第3の傘歯歯車9も回転することにより、第4の傘歯歯車10及び第5の傘歯歯車11を介して第6の傘歯歯車12が第3関節の軸S2の回りに回転して第3節Dが第2節Cに対し傾動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボットの関節機構に係り、特に複数の関節を有してロボットハンドの指等を構成する関節機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人の手に類似した動きをする各種のロボットハンドが開発されており、このようなロボットハンドの1本の指は、複数の関節を有する関節機構を用いて構成することができる。この関節機構は、一般に、関節を駆動させて指を曲げ伸ばしするためのモータ及びアクチュエータ等を駆動源として有する。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているロボットハンドの関節機構では、複数の関節を有すると共に、各関節に隣接してこの関節を駆動させるための専用のモータが設けられており、各モータを作動させることによりこのモータに対応する関節が駆動されて指が曲げ伸ばしされる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−156778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の関節機構では、1つのモータにより1つの関節が駆動されるため、複数の関節に対してそれぞれ対応する複数のモータを設ける必要があり、複雑な構成になるという問題があった。
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、1つの駆動源により複数の関節をそれぞれ駆動させることができる関節機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るロボットの関節機構は、ステータ及びこのステータに接触配置され且つ第1関節として用いられる略球体状のロータを有すると共に、ステータを振動させることによりロータを複数の軸回りに回転させる多自由度アクチュエータと、多自由度アクチュエータのロータの表面に突出形成された出力軸部材の軸方向に形成された第1節と、第1節の先端に第2関節を介して傾動可能に連結された第2節と、出力軸部材のその軸回りの回転運動により第2関節を駆動させて第1節に対し第2節を傾動させる変換手段と、出力軸部材のその軸回りの回転運動に伴って第2関節が出力軸部材と共に回転しないように第2関節を保持する保持手段とを備え、多自由度アクチュエータのロータを回転させて、出力軸部材をステータに対して傾動させることにより第2関節を駆動することなく第1節及び第2節を互いの相対姿勢を保持したままステータに対して傾動させ、出力軸部材をその軸回りに回転させることにより変換手段を介して第2関節を駆動させて第1節に対し第2節を傾動させるものである。
【0007】
変換手段は、出力軸部材の先端に固定された第1の傘歯歯車と、第2関節の軸上で第2節に固定され且つ第1の傘歯歯車に噛合する第2の傘歯歯車とを有するように構成することができる。
また、保持手段は、ステータに対して第1節を傾動可能に且つその軸回りに回転しないように保持する第1保持部材と、第1節に対して第2節を傾動可能に且つその軸回りに回転しないように保持する第2保持部材とを有するように構成することができる。
【0008】
n≧3として第2節の先端に第3〜第n関節を介して第3〜第n節が順次連結され、第2関節の駆動を第3〜第n関節に順次伝達する連動手段を備えることもできる。
また、多自由度アクチュエータは、互いに積層された複数の圧電素子板からなる複合振動子を有し、複合振動子によりステータを振動させてステータとロータの接触部分に楕円または円運動を発生させることによりロータを複数の軸回りに回転させることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、1つの駆動源により複数の関節をそれぞれ駆動させることができる関節機構を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に、この発明の実施の形態に係るロボットの関節機構の一部が破断した斜視図を示す。この関節機構は、例えば、ロボットハンドの1本の指を構成するものであり、その駆動源として、1つの多自由度アクチュエータAを有する。この多自由度アクチュエータAでは、基部ブロック1とステータ2との間に複合振動子3が配置されると共に、ステータ2に設けられた凹部内に、この関節機構の第1関節として用いられる球体状のロータ4が回転自在に収容されている。ステータ2を振動させることによりロータ4を複数の軸回りに回転することができるように構成されている。
【0011】
ロータ4には、ロータ4の表面からロータ4の径方向外方に向かって直線状に延びる出力軸部材5が固定されており、この出力軸部材5は、ロータ4の回転に伴ってロータ4と共に移動されるように構成されている。出力軸部材5の延長方向の先端には、出力軸部材5をその回転軸とする第1の傘歯歯車6が固定されている。ここで、出力軸部材5の外周部には、環状の2つのプレート7が出力軸部材5の軸方向に互いに間隔をあけて取り付けられており、それぞれのプレート7と出力軸部材5とは互いに回転自在に配置されている。これら2つのプレート7の外周部には、ほぼ筒状の第1節Bが固定されており、この第1節Bの内部に、2つのプレート7、出力軸部材5の一部及び第1の傘歯歯車6が収容されている。
【0012】
第1節Bの先端には、第2関節の軸S1を介してほぼ筒状の第2節Cが傾動可能に連結されている。さらに、第2節Cの先端には、第3関節の軸S2を介してほぼ筒状の第3節Dが傾動可能に連結されており、この第3節Dの先端は半球形状に形成されている。
出力軸部材5の先端に位置する第1の傘歯歯車6には、第2関節の軸S1上で第2節Cに固定される第2の傘歯歯車8が噛合されている。また、第1の傘歯歯車6には、この第2の傘歯歯車8に対向するように配置される第3の傘歯歯車9が噛合されており、これら第2の傘歯歯車8と第3の傘歯歯車9とは互いに独立して第2関節の軸S1の回りに回転することができるように配置されている。また、第3の傘歯歯車9には、第4の傘歯歯車10が噛合されており、第4の傘歯歯車10には、第5の傘歯歯車11が一体に形成されている。第5の傘歯歯車11には、第3関節の軸S2上で第3節Dの基端部に固定される第6の傘歯歯車12が噛合されている。
【0013】
ここで、第2の傘歯歯車8、第3の傘歯歯車9、第4の傘歯歯車10及び第5の傘歯歯車11は第2節Cの内部に収容されており、第2節Cの内面に取り付けられた軸受け13により、第4の傘歯歯車10及び第5の傘歯歯車11の軸が回転自在に支持されている。
また、第6の傘歯歯車12は第3節Dの内部に収容されている。
【0014】
また、第1節Bは第1保持部材14を介してステータ2に接続されている。この第1保持部材14により、第1節Bは、ステータ2に対して傾動可能に且つその軸回りに回転しないように保持されている。また、第2節Cは第2保持部材15を介して第1節Bに接続されている。この第2保持部材15により、第2節Cは第1節Bに対して傾動可能に且つその軸回りに回転しないように保持されると共に、第2節Cに固定された第2の傘歯歯車8が第1の傘歯歯車6に噛合し、第3の傘歯歯車9が第1の傘歯歯車6及び第4の傘歯歯車10にそれぞれ噛合した状態が維持される。さらに、第3節Dは第3保持部材16を介して第2節Cに対して接続されている。この第3の保持部材16により、第3節Dは第2節Cに対して傾動可能に且つその軸回りに回転しないように保持されると共に、第3節Dに固定されている第6の傘歯歯車12が第5の傘歯歯車11に噛合した状態が維持される。
これらの第1保持部材14、第2保持部材15及び第3保持部材16により、第1節B、第2節C及び第3節Dは多自由度アクチュエータAから外れないように保持されている。
【0015】
なお、図1の関節機構における第1節B、第2節C及び第3節Dをそれぞれ省略して、第1の傘歯歯車6,第2の傘歯歯車8、第3の傘歯歯車9、第4の傘歯歯車10、第5の傘歯歯車11及び第6の傘歯歯車12の位置関係を明瞭にしたものを図2に示す。
また、第2関節の軸S1は、出力軸部材5に対して垂直に配置されると共に、第3関節の軸S2は、第2関節の軸S1に平行であると共に第4の傘歯歯車10及び第5の傘歯歯車11の軸に垂直に配置されている。
また、第3の傘歯歯車9、第4の傘歯歯車10、第5の傘歯歯車11及び第6の傘歯歯車12により、第2関節の駆動を第3関節に伝達するための連動手段が構成されている。
【0016】
次に、図3に示されるように、この関節機構の駆動源として用いられる多自由度アクチュエータAは、超音波振動を利用してロータ4を回転させる超音波アクチュエータから構成されている。基部ブロック1とステータ2との間に円筒状の複合振動子3が挟持されると共に、基部ブロック1とステータ2とが複合振動子3内に通された連結ボルト17を介して互いに連結されることにより、多自由度アクチュエータA全体としてほぼ円柱状の外形を有している。ここで、説明の便宜上、基部ブロック1からステータ2へと向かう円柱状の外形の中心軸をZ軸と規定し、Z軸に対して垂直方向にX軸が、Z軸及びX軸に対して垂直にY軸がそれぞれ延びているものとする。
【0017】
複合振動子3は、それぞれXY平面上に位置し且つ互いに重ね合わされた平板状の第1〜第3の圧電素子部31〜33を有しており、これらの圧電素子部31〜33が絶縁シート34〜37を介してステータ2及び基部ブロック1から、また互いに絶縁された状態で配置されている。
【0018】
ステータ2には、複合振動子3に接する面とは反対側に凹部18が形成されており、この凹部18内に球体状のロータ4が収容されている。凹部18は、ロータ4の直径より小さな内径を有する小径部19と、ロータ4の直径より大きな内径を有する大径部20とからなり、これら小径部19と大径部20との境界部にXY平面上に位置する環状の段差21が形成されている。ロータ4は、凹部18内の段差21に当接することにより回転自在に支持されている。
なお、ロータ4は図示しない予圧手段によりステータ2に対して加圧接触されている。
【0019】
図4に示されるように、複合振動子3の第1の圧電素子部31は、それぞれ円板形状を有する電極板31a、圧電素子板31b、電極板31c、圧電素子板31d及び電極板31eが順次重ね合わされた構造を有している。同様に、第2の圧電素子部32は、それぞれ円板形状を有する電極板32a、圧電素子板32b、電極板32c、圧電素子板32d及び電極板32eが順次重ね合わされた構造を有し、第3の圧電素子部33は、それぞれ円板形状を有する電極板33a、圧電素子板33b、電極板33c、圧電素子板33d及び電極板33eが順次重ね合わされた構造を有している。
【0020】
図5に示されるように、第1の圧電素子部31の一対の圧電素子板31b及び31dは、Y軸方向に2分割された部分が互いに逆極性を有してそれぞれZ軸方向(厚み方向)に膨張と収縮の反対の変形挙動を行うように分極されており、圧電素子板31bと圧電素子板31dは互いに裏返しに配置されている。
第2の圧電素子部32の一対の圧電素子板32b及び32dは、2分割されることなく全体がZ軸方向(厚み方向)に膨張あるいは収縮の変形挙動を行うように分極されており、圧電素子板32bと圧電素子板32dは互いに裏返しに配置されている。
第3の圧電素子部33の一対の圧電素子板33b及び33dは、X軸方向に2分割された部分が互いに逆極性を有してそれぞれZ軸方向(厚み方向)に膨張と収縮の反対の変形挙動を行うように分極されており、圧電素子板33bと圧電素子板33dは互いに裏返しに配置されている。
【0021】
なお、図3に示されるように、第1の圧電素子部31の両面部分に配置されている電極板31a及び電極板31eと、第2の圧電素子部32の両面部分に配置されている電極板32a及び電極板32eと、第3の圧電素子部33の両面部分に配置されている電極板33a及び電極板33eがそれぞれ電気的に接地されている。また、第1の圧電素子部31の一対の圧電素子板31b及び31dの間に配置されている電極板31cから第1の端子31tが、第2の圧電素子部32の一対の圧電素子板32b及び32dの間に配置されている電極板32cから第2の端子32tが、第3の圧電素子部33の一対の圧電素子板33b及び33dの間に配置されている電極板33cから第3の端子33tがそれぞれ引き出されている。
【0022】
ここで、複合振動子3に対して、第1の端子31tからステータ2の固有振動数に近い周波数の交流電圧を印加すると、第1の圧電素子部31の一対の圧電素子板31b及び31dの2分割された部分がZ軸方向に膨張と収縮を交互に繰り返し、ステータ2にY軸方向のたわみ振動を発生する。また、第2の端子32tからステータ2の固有振動数に近い周波数の交流電圧を印加すると、第2の圧電素子部32の一対の圧電素子板32b及び32dがZ軸方向に膨張と収縮を繰り返し、ステータ2にZ軸方向の縦振動を発生する。さらに、第3の端子33tからステータ2の固有振動数に近い周波数の交流電圧を印加すると、第3の圧電素子部33の一対の圧電素子板33b及び33dの2分割された部分がZ軸方向に膨張と収縮を交互に繰り返し、ステータ2にX軸方向のたわみ振動を発生する。
【0023】
そこで、複合振動子3を駆動することにより、第1の圧電素子部31によるY軸方向のたわみ振動、第2の圧電素子部32によるZ軸方向の縦振動、及び第3の圧電素子部33によるX軸方向のたわみ振動のうち2つまたは3つ全てを組み合わせた複合振動を発生させて、ステータ2の段差21に楕円振動を形成することにより、ロータ4を3次元方向に自由に回転駆動することができるように構成されている。
【0024】
次に、この実施の形態に係るロボットの関節機構の動作について説明する。多自由度アクチュエータAの複合振動子3を駆動することによりロータ4を回転させ、このロータ4を第1関節として出力軸部材5をステータ2に対して傾動させると、このとき第2関節及び第3関節は駆動されることはなく、したがって、出力軸部材5の傾動に伴って第1節B、第2節C及び第3節Dが互いの相対姿勢を保持したままステータ2に対して傾動される。
【0025】
また、多自由度アクチュエータAの複合振動子3を駆動することによりロータ4を回転させ、出力軸部材5をそれ自身の軸回りに回転させると、出力軸部材5のその軸回りの回転に伴って第1の傘歯歯車6が回転される。この第1の傘歯歯車6の回転に伴って第2の傘歯歯車8が第2関節の軸S1の回りに回転され、これにより、第2の傘歯歯車8に固定されている第2節Cが第2関節を介して第1節Bに対し傾動される。
また、第1の傘歯歯車6の回転に伴って第3の傘歯歯車9も回転され、この第3の傘歯歯車9の回転に伴って第4の傘歯歯車10及び第5の傘歯歯車11が回転され、さらに、第5の傘歯歯車11の回転に伴って第6の傘歯歯車12が第3関節の軸S2の回りに回転され、これにより、第6の傘歯歯車12に固定されている第3節Dが第3関節を介して第2節Cに対し傾動される。
【0026】
このように、ロータ4を回転させて出力軸部材5をその軸回りに回転させることで、第2関節及び第3関節をそれぞれ駆動させて第2節Cを第1節Bに対して傾動させると共に、それに連動して第3節Dを第2節Cに対して傾動させることができる。
また、第2の傘歯歯車8と第6の傘歯歯車12とは同一方向に回転するように構成されているため、第2節Cが第1節Bに対して曲げられるときに、第3節Dも第2節Cに対して同じ方向に曲げられ、また、第2節Cが第1節Bに対して直線状に伸ばされるときに、第3節Dも第2節Cに対して直線状に伸ばされることとなる。したがって、第1関節としてのロータ4をロボットハンドの指の付け根の関節として用いれば、第2節C及び第3節Dが同じ方向に傾動され、これにより人間の指に類似した動作を行うロボットハンドの指を実現することができる。
【0027】
なお、多自由度アクチュエータAのロータ4を回転させて、出力軸部材5のステータ2に対する傾動と出力軸部材5のその軸回りの回転とを同時に行えば、第1節Bをステータ2に対して傾動させながら、第2節Cを第1節Bに対して、また、第3節Dを第2節Cに対してそれぞれ傾動させることができる。
【0028】
以上のように、多自由度アクチュエータAのロータ4を回転させて、出力軸部材5をステータ2に対し傾動させることで、ロータ4を第1関節として第1節B、第2節C及び第3節Dを互いの相対姿勢を保持したままステータ2に対して傾動させることができると共に、出力軸部材5をその軸回りに回転させることで、第2関節及び第3関節を駆動させて第1節Bに対して第2節Cを、第2節Cに対して第3節Dそれぞれ傾動させることができる。
【0029】
これにより、1つの多自由度アクチュエータAを駆動源として複数の関節をそれぞれ駆動させてこの関節機構全体を曲げ伸ばしすることができる。
したがって、従来のように複数の関節にそれぞれ対応する複数の駆動用モータを設ける必要がなくなり、単純な構成を有する関節機構を実現することができる。
また、駆動源として1つの多自由度アクチュエータAのみを有するので、電力供給用の電源、制御用の制御回路、及び制御時に用いられる位置センサ等の制御用センサをそれぞれ1つ設けるだけで複数の関節をそれぞれ駆動制御することができ、これにより構成をさらに簡素化することができる。
【0030】
また、この関節機構では、出力軸部材5のその軸回りの回転を利用することで、第2関節及び第3関節をそれぞれ駆動させて第2節C及び第3節Dを傾動させることができるため、第2関節を駆動するためのモータ、及び第3関節を駆動するためのモータを第1節B〜第3節Dの中などに設ける必要はなく、これにより、第1節B〜第3節Dをそれぞれ軽量に構成することができ、制御性が向上する。また、モータに接続される電源供給用の配線及び駆動制御用の配線等を第1節B〜第3節D内に取り回す必要もないため、これら第1節B〜第3節D内の構造をそれぞれ簡素化することができる。
【0031】
また、第1保持部材14により第1節Bがその軸回りに回転しないようにステータ2に対して保持され、第2保持部材15により第2節Cがその軸回りに回転しないように第1節Bに対して保持されているため、出力軸部材5のその軸回りの回転により第1の傘歯歯車6が回転するときに、第2節Cに固定されている第2の傘歯歯車8が第1の傘歯歯車6と共にこの第1の傘歯歯車6の軸の回りに回転することが防止される。したがって、第1の傘歯歯車6の回転により第2の傘歯歯車8が第2関節の軸S1の回りに回転され、これにより第2関節を駆動させて第2節Cを第1節Bに対して傾動させることができる。
【0032】
さらに、第3保持部材16により第3節Dがその軸回りに回転しないように第2節Cに対して保持されているため、出力軸部材5のその軸回りの回転により第1の傘歯歯車6、第3の傘歯歯車9及び第4の傘歯歯車10を介して第5の傘歯歯車11が回転するときに、第3節Dに固定されている第6の傘歯歯車12が第5の傘歯歯車11と共にこの第5の傘歯歯車11の軸の回りに回転することが防止される。したがって、第5の傘歯歯車11の回転により第6の傘歯歯車12が第3関節の軸S2の回りに回転され、これにより第3関節を駆動させて第3節Dを第2節Cに対して傾動させることができる。
【0033】
なお、上述の実施の形態において、互いに噛合している傘歯歯車の歯数の比をそれぞれ選択することにより、第2関節及び第3関節の駆動時に、出力軸部材5の回転速度に対する第2節Cの傾動速度及び第3節Dの傾動速度を所望の値に設定することができる。
【0034】
なお、上述の実施の形態の関節機構は3つの関節を有していたが、この関節機構から第3節D、第6の傘歯歯車12、第3の傘歯歯車9、第4の傘歯歯車10及び第5の傘歯歯車11を省略して、2つの関節のみを有する関節機構を構成してもよい。
【0035】
また、この2関節の関節機構に対し、n≧3として、第2節Cの先端に第3〜第n関節を介して第3〜第n節を順次連結すると共に、第3の傘歯歯車9、第4の傘歯歯車10、第5の傘歯歯車11及び第6の傘歯歯車12からなる連動手段を(n−2)個用いることにより、出力軸部材5のその軸回りの回転による第2関節の駆動を第3〜第n関節にも順次伝達することができる。
【0036】
また、上述の実施の形態において、第3の傘歯歯車9、第4の傘歯歯車10、第5の傘歯歯車11及び第6の傘歯歯車12からなる連動手段を用いる代わりに、図6に示されるように、第3の傘歯歯車9と、この第3の傘歯歯車9の外面に固定される第1プーリー41と、第3関節の軸S2上で第3節Dに固定される第2プーリー42と、これら第1プーリー41及び第2プーリー42とにかけ回されるベルト43とからなる連動手段を用いることもできる。すなわち、第1の傘歯歯車6の回転に伴って、第2の傘歯歯車8が回転すると共に第3の傘歯歯車9及び第1のプーリー41が回転し、この第1のプーリー41の回転によりベルト43を介して第2のプーリー42が第2の傘歯歯車8と同一方向に回転され、これにより、第2関節の駆動を第3関節に伝達することができる。
【0037】
なお、第1のプーリー41と第2のプーリー42の大きさ及び形状を選択することで、第2関節及び第3関節の駆動時に、出力軸部材5に対する第2節Cの傾動速度と第3節Dの傾動速度を所望の値に設定することができる。
また、例えば、第1のプーリー41及び第2のプーリー42のうち少なくとも一方を真円ではなく、回転角度によってその半径が変化する楕円等の形状にすれば、これらのプーリーの回転位置に応じて、第2節Cに対する第3節Dの傾動速度を変化させることができる。
なお、プーリーとベルトの代わりに、スプロケットとチェーンを用いてもよい。
【0038】
なお、この連動手段として、n≧3として、第2関節の駆動を第3〜第n関節に順次伝達することができる各種のリンク機構を用いることも可能である。
【0039】
また、上述の実施の形態において、連動手段を用いる代わりに、図7に示されるように、出力軸部材5、第1の傘歯歯車6及び第2の傘歯歯車8を第1軸手段51として、この第1軸手段51と同様の構成を有する第2軸手段52を用意し、第1軸手段51の出力軸部材5の第1の傘歯歯車6よりも先端に、ユニバーサルジョイント53を介して第2軸手段52の出力軸部材5を連結し、第2軸手段52の第2の傘歯歯車8を第3関節の軸S2上で第3節Dに固定するように構成することもできる。ユニバーサルジョイント53は、第1軸手段51の出力軸部材5と第2軸手段52の出力軸部材5を、互いに傾動可能でありながら、軸回りの回転運動を伝達するように連結するものである。
【0040】
このように構成すれば、第1軸手段51の出力軸部材5をその軸回りに回転させると、ユニバーサルジョイント53を介して第2軸手段52の出力軸部材5もそれ自身の軸回りに回転され、これにより第2軸手段52の第1の傘歯歯車6を介して第2軸手段52の第2の傘歯歯車8が、第1軸手段51の第2の傘歯歯車8と同一方向に回転されることとなる。したがって、ロータ4を回転させて第1軸手段51の出力軸部材5をその軸回りに回転させることで、第2関節及び第3関節が連動して駆動され、第2節Cを第1節Bに対して、第3節Dを第2節Cに対してそれぞれ傾動させることができる。
【0041】
同様にして、n≧3として、第1軸手段51の第1の傘歯歯車6よりも先端に、第2〜第(n−1)軸手段の出力軸部材5を(n−2)個のユニバーサルジョイントを用いて順次連結すると共に、第n関節の軸上で第n節に第(n−1)軸手段の第2傘歯歯車8を固定すれば、ロータ4を回転させて第1軸手段51の出力軸部材5をその軸回りに回転させることにより、第3〜第n関節をそれぞれ駆動することができる。
【0042】
なお、上述の実施の形態では、第2節Cが第1節Bに対して傾動される方向と、第3節Dが第2節Cに対して傾動される方向とが同じであったが、これに限定されるものではなく、第2節Cが第1節Bに対して傾動される方向と、第3節Dが第2節Cに対して傾動される方向とは反対方向になるように構成することもできる。
また、n≧3として第n節が第(n−1)節に対して傾動される方向は、第(n−1)節が第(n−2)節に対して傾動される方向と同一方向、または反対方向になるように構成することができる。
【0043】
なお、この関節機構は、ロボットハンドの指だけでなく、ロボットの脚のように、複数の関節を有する各種の部分にも適用することができる。
【0044】
なお、上記の実施の形態の多自由度アクチュエータAにおいて、ステ―タ2とロータ4との接触は段差21であったが、この構成に限らない。楕円運動が伝達できれば平面で接触するようにしても曲面で接触しても良いし、環状でなくてもよい。
また、上記の実施の形態において、Z軸方向の縦振動、Y軸方向またはX軸方向のたわみ振動の代わりに、互いに直交しない複数の振動を組み合わせた複合振動を発生させてロータ4を回転させることもできる。
また、上記の実施の形態では、X軸方向のたわみ振動、Y軸方向のたわみ振動、Z軸方向の縦振動をそれぞれ別の圧電素子部で発生させ、振動を合成させて複合振動を発生させていたが、一つの圧電素子部を複数に分極し、各分極電極に印加する電圧を個別にコントロールしても良い。すなわち位相、振幅などの異なる交流電圧を合成した電圧を各分極電極に印加して単一の圧電素子部で複合振動を発生させても良い。
また、ステータ2とロータ4との接触部分に楕円運動を発生させていたが、各軸方向の振幅を制御することで円運動を発生させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の実施の形態に係るロボットの関節機構を示す一部破断斜視図である。
【図2】図1における関節機構の一部を省略したものを示す部分斜視図である。
【図3】実施の形態における多自由度アクチュエータを示す断面図である。
【図4】実施の形態で用いられた複合振動子の構成を示す部分断面図である。
【図5】実施の形態で用いられた複合振動子の3対の圧電素子板の分極方向を示す斜視図である。
【図6】実施の形態の変形例に係るロボットの関節機構を示す部分斜視図である。
【図7】実施の形態の別の変形例に係るロボットの関節機構を示す部分側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 基部ブロック、2 ステータ、3 複合振動子、4 ロータ、5 出力軸部材、6 第1の傘歯歯車、7 プレート、8 第2の傘歯歯車、9 第3の傘歯歯車、10 第4の傘歯歯車、11 第5の傘歯歯車、12 第6の傘歯歯車、13 軸受け、14 第1保持部材、15 第2保持部材、16 第3保持部材、18 凹部、21 角部、31 第1の圧電素子部、32 第2の圧電素子部、33 第3の圧電素子部、41 第1のプーリー、42 第2のプーリー、43 ベルト、51 第1軸手段、52 第2軸手段、53 ユニバーサルジョイント、A 多自由度アクチュエータ、B 第1節、C 第2節、D 第3節、S1 第2関節の軸、S2 第3関節の軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ及びこのステータに接触配置され且つ第1関節として用いられる略球体状のロータを有すると共に、前記ステータを振動させることにより前記ロータを複数の軸回りに回転させる多自由度アクチュエータと、
前記多自由度アクチュエータのロータの表面に突出形成された出力軸部材の軸方向に形成された第1節と、
前記第1節の先端に第2関節を介して傾動可能に連結された第2節と、
前記出力軸部材のその軸回りの回転運動により前記第2関節を駆動させて前記第1節に対し前記第2節を傾動させる変換手段と、
前記出力軸部材のその軸回りの回転運動に伴って前記第2関節が前記出力軸部材と共に回転しないように前記第2関節を保持する保持手段と
を備え、前記多自由度アクチュエータのロータを回転させて、前記出力軸部材を前記ステータに対して傾動させることにより前記第2関節を駆動することなく前記第1節及び前記第2節を互いの相対姿勢を保持したまま前記ステータに対して傾動させ、前記出力軸部材をその軸回りに回転させることにより前記変換手段を介して前記第2関節を駆動させて前記第1節に対し前記第2節を傾動させることを特徴とするロボットの関節機構。
【請求項2】
前記変換手段は、前記出力軸部材の先端に固定された第1の傘歯歯車と、前記第2関節の軸上で前記第2節に固定され且つ前記第1の傘歯歯車に噛合する第2の傘歯歯車とを有する請求項1に記載のロボットの関節機構。
【請求項3】
前記保持手段は、前記ステータに対して前記第1節を傾動可能に且つその軸回りに回転しないように保持する第1保持部材と、前記第1節に対して前記第2節を傾動可能に且つその軸回りに回転しないように保持する第2保持部材とを含む請求項1または2に記載のロボットの関節機構。
【請求項4】
n≧3として前記第2節の先端に第3〜第n関節を介して第3〜第n節が順次連結され、前記第2関節の駆動を前記第3〜第n関節に順次伝達する連動手段を備えた請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットの関節機構。
【請求項5】
前記多自由度アクチュエータは、互いに積層された複数の圧電素子板からなる複合振動子を有し、前記複合振動子により前記ステータを振動させて前記ステータと前記ロータの接触部分に楕円または円運動を発生させることにより前記ロータが複数の軸回りに回転される請求項1〜4のいずれか一項に記載のロボットの関節機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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