ロボットシステム
【課題】レーザ照射部が移動しながらレーザ光を照射する場合にも、任意形状の加工軌跡に対して適切にレーザ光を照射することが可能なロボットシステムを提供する。
【解決手段】このロボットシステム100は、ロボット1と、ロボット1により移動され、加工対象物に対してレーザ光を照射するレーザスキャナ4と、任意形状の加工軌跡の情報およびレーザスキャナ4の移動情報に基づいて、レーザスキャナ4によりレーザ光を照射する制御を行う焦点演算部27とを備えている。
【解決手段】このロボットシステム100は、ロボット1と、ロボット1により移動され、加工対象物に対してレーザ光を照射するレーザスキャナ4と、任意形状の加工軌跡の情報およびレーザスキャナ4の移動情報に基づいて、レーザスキャナ4によりレーザ光を照射する制御を行う焦点演算部27とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムに関し、特に、レーザ光を照射可能なレーザ照射部を備えたロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を照射可能なレーザ照射部を備えたロボットシステムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、加工対象物に対してレーザ光を照射可能なレーザ照射装置(レーザ照射部)を備えたロボットシステムが開示されている。このロボットシステムは、レーザ照射装置が所定の位置に位置決めされた状態(停止された状態)で任意形状の加工軌跡に対してレーザ光を照射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−43971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のロボットシステムでは、レーザ照射装置(レーザ照射部)を所定の位置に位置決めした状態(停止した状態)で任意形状の加工軌跡に対してレーザ光を照射することが可能である一方、レーザ照射装置(レーザ照射部)が移動しながらレーザ光を照射する場合には、任意形状の加工軌跡に対して適切にレーザ光を照射することができないという問題点があると考えられる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、レーザ照射部が移動しながらレーザ光を照射する場合にも、任意形状の加工軌跡に対して適切にレーザ光を照射することが可能なロボットシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるロボットシステムは、ロボットと、ロボットにより移動され、加工対象物に対してレーザ光を照射するレーザ照射部と、任意形状の加工軌跡の情報およびレーザ照射部の移動情報に基づいて、レーザ照射部によりレーザ光を照射する制御を行う制御部とを備えている。
【0008】
この発明の一の局面によるロボットシステムでは、上記のように、任意形状の加工軌跡の情報およびレーザ照射部の移動情報に基づいて、レーザ照射部によりレーザ光を照射する制御を行う制御部を設けることによって、制御部により、レーザ照射部の移動状態を考慮してレーザ光を照射する制御を行うことができるので、レーザ照射部が移動しながらレーザ光を照射する場合にも、レーザ照射部の移動に応じて任意形状の加工軌跡に対して適切にレーザ光を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態によるロボットシステムの全体構成を示した概略図である。
【図2】本発明の一実施形態によるロボットシステムのロボット制御装置を示したブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態によるロボットシステムのレーザスキャナの構成を示した概略図である。
【図4】本発明の一実施形態によるロボットシステムの任意形状作成ツールを用いて直線の溶接軌跡を描く手順について説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態によるロボットシステムの任意形状作成ツールを用いて円弧の溶接軌跡を描く手順について説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態によるロボットシステムの任意形状作成ツールを用いて楕円の溶接軌跡を描く手順について説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態によるロボットシステムの任意形状作成ツールを用いて任意形状の溶接軌跡が描かれた状態を示した図である。
【図8】本発明の一実施形態によるロボットシステムのレーザ溶接条件ファイル画面を示した図である。
【図9】本発明の一実施形態によるロボットシステムにおいて任意形状の溶接軌跡の基準位置および基準方向を教示する際の動作手順について説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態によるロボットシステムの焦点演算部による溶接時の処理について説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態によるロボットシステムの溶接開始範囲を示した図である。
【図12】本発明の一実施形態によるロボットシステムの溶接開始範囲内に第1基準点が入った状態を示した図である。
【図13】本発明の一実施形態によるロボットシステムの溶接範囲を示した図である。
【図14】本発明の一実施形態によるロボットシステムの溶接範囲内に溶接点が位置する状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態によるロボットシステム100の構成について説明する。
【0012】
本発明の一実施形態によるロボットシステム100は、対象物から離れた位置(たとえば、約500mm離れた位置)でレーザ光を照射してレーザ溶接を行うリモートレーザ溶接のロボットシステムである。また、ロボットシステム100は、図1に示すように、ロボット1と、ロボット1を制御するロボット制御装置2と、ロボット1の動作を教示するためのペンダント(プログラミングペンダント)3とを備えている。また、本実施形態によるロボットシステム100は、ロボット1に取り付けられ、レーザ光を照射するレーザスキャナ4と、レーザスキャナ4にレーザ光を供給するレーザ発振器5とをさらに備えている。なお、ペンダント3は、本発明の「教示装置」の一例であり、レーザスキャナ4は、本発明の「レーザ照射部」の一例である。
【0013】
ロボット1は、複数の関節を有する多関節型ロボットである。また、ロボット1は各関節を駆動するための図示しない複数のサーボモータを備え、各サーボモータにより先端部に取り付けられたレーザスキャナ4を移動可能に構成されている。
【0014】
ロボット制御装置2は、図1に示すように、ロボット指令ケーブル10を介してロボット1に通信可能に接続されている。また、ロボット制御装置2は、ケーブル11を介してペンダント3に通信可能に接続されている。さらに、ロボット制御装置2は、スキャナ指令ケーブル12を介してレーザスキャナ4に通信可能に接続されている。また、ロボット制御装置2は、図2に示すように、ペンダント3との間で信号の送受信を行う通信部21と、動作プログラムやレーザ溶接に関する溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)などを格納するデータ格納部22と、データ格納部22に格納された動作プログラムや溶接情報などを読み出して情報を解釈する命令解釈部23とを含んでいる。
【0015】
また、ロボット制御装置2は、命令解釈部23による解釈に基づいてロボット1の移動軌跡を所定の制御周期ごとに演算するロボット軌跡演算部24と、ロボット軌跡演算部24による演算結果に基づいてロボット1に設けられた各サーボモータを制御するサーボ制御部25とをさらに含んでいる。また、ロボット制御装置2には、サーボ制御部25により各サーボモータに送信される動作指令に基づいてロボット1の現在の先端部の状態(レーザスキャナ4の現在の位置・姿勢)を推定するサーボシミュレート部26と、サーボシミュレート部26により推定されたロボット1の先端部の現在位置に基づいて焦点位置(溶接位置)を演算する焦点演算部27とが設けられている。ここで、サーボ制御部25からの動作指令の送信タイミングとそれに基づくロボット1の動作タイミングとの間には、若干のタイムラグが生じる。このため、サーボシミュレート部26は、そのタイムラグを考慮してレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢を推定する。なお、焦点演算部27により実施される溶接時の処理については後述する。また、焦点演算部27は、本発明の「制御部」の一例である。
【0016】
ペンダント3は、ロボット1の動作プログラムおよびレーザ溶接に関する溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)を作成するために設けられている。また、ペンダント3は、図1に示すように、表示部31と、複数の操作ボタンからなる操作部32とを有している。ユーザは、表示部31の表示を見ながら操作部32を操作して所定の情報を入力することが可能である。また、ユーザは、ペンダント3を操作してロボット制御装置2にロボット1の動作を教示することが可能である。また、本実施形態のペンダント3には、たとえば、コンパクトフラッシュ(登録商標)などからなるメモリカード110を読み取り可能なデバイススロット(カードスロット)33が設けられている。これにより、ペンダント3は、PC(パーソナルコンピュータ)6などの外部装置により作成されたロボット制御に関連する情報をメモリカード110を介して取り込むことが可能である。また、ペンダント3には、USB(Universal Serial Bus)接続可能なUSB端子34が設けられている。また、PC6には、メモリカード110を装着可能なデバイススロット(カードスロット)61aと、USB端子61bとが設けられている。すなわち、PC6で作成した溶接軌跡の情報をUSB端子61bに装着されたUSBメモリ(図示せず)に格納した後、そのUSBメモリをペンダント3のUSB端子34に差し込むことにより、USB端子34を介してロボット制御装置2(データ格納部22)に溶接軌跡の情報が受け付けられる。なお、USBケーブルを用いてPC6とUSB端子34とを直接接続するとともに、PC6で作成した溶接軌跡の情報をUSB端子34を介してペンダント3に送信することによって溶接軌跡の情報をUSB端子34により受け付けるようにしてもよい。また、PC6は、本発明の「加工軌跡作成装置」、「外部装置」および「外部情報端末装置」の一例である。また、デバイススロット33は、本発明の「受付部」および「記録媒体読取部」の一例であり、USB端子34は、本発明の「受付部」の一例である。また、メモリカード110は、本発明の「可搬型記録媒体」の一例である。
【0017】
レーザスキャナ4は、レーザ発振器5により出力されたレーザ光を対象物に向けて照射する機能を有している。レーザ発振器5により出力されたレーザ光は、ファイバ13を介してレーザスキャナ4に供給される。また、図3に示すように、レーザスキャナ4の内部には、レンズなどからなる光学系41と、ミラー42aおよび42bを含むガルバノミラー42と、ミラー42aおよび42bのそれぞれを駆動するモータ43aおよび43bとが設けられている。レーザ発振器5からレーザスキャナ4に供給されたレーザ光は、光学系41により集光された後、ガルバノミラー42により方向が変化されて対象物に向けて照射される。レーザスキャナ4は、焦点演算部27による演算結果に基づいて、ミラー42aおよび42bを駆動することによって所定の位置にレーザ光を照射するように構成されている。具体的には、本実施形態のレーザスキャナ4は、対象物から500mm離れた状態で200mm四方の範囲内にレーザ光を照射することが可能である。このように、レーザ焦点距離などのレーザスキャナ4の仕様は予め分かっているので、後述する溶接軌跡の作成の際にはレーザスキャナ4から対象物までの距離がレーザ焦点距離となっていることが前提となっている。またロボット1の動作の教示やレーザ溶接の際にはレーザスキャナ4から対象物までの距離をレーザ焦点距離に保つようにする。なお図3では省略しているが、レーザスキャナ4は光学系41の調整機構も備えており動的にレーザ焦点距離を変更することができる。これによりレーザスキャナ4と対象物との距離を変えながらレーザ溶接を行うことも可能となっている。
【0018】
次に、図4〜図7を参照して、任意形状の溶接軌跡の情報を、PC6を用いて作成する手順について説明する。
【0019】
PC6に予めインストールされたソフトウェア(アプリケーションプログラム)である任意形状作成ツールを起動することによって、PC6の表示部61(図1参照)には、図4〜図7に示すように、任意形状作成ツール画面62が表示される。ユーザは、任意形状作成ツール画面62の線種項目62aから所望の線種を選択することが可能である。具体的には、任意形状作成ツール画面62は、グラフィカルユーザインターフェースによって直線、円弧および楕円の中から所望の線種を選択可能に構成されており、ユーザは、直線、円弧および楕円の異なる線種を任意に組み合わせて任意形状の溶接軌跡を作成可能である。
【0020】
たとえば、直線を描く場合には、図4に示すように、線種項目62aから直線を選択した後、作成領域62b内においてポインタ62cで開始点および終了点を指定して直線を描く。開始点および終了点は、識別可能なように互いに異なる色で表示される。また、作成した直線がポインタ62cにより選択されている場合には、任意形状作成ツール画面62には、開始点および終了点の座標が表示される。これにより、ユーザは開始点および終了点の位置を数値で確認することが可能である。また、ユーザは、座標を数値で直接入力することによって開始点および終了点を指定することも可能である。また、ポインタ62cの現在位置の座標も作成領域62bの下側に表示される。なお、作成領域62bは、左下の頂点を原点とするXY平面において、座標値で500四方の範囲である。図4の例では、ポインタ62cが作成領域62bの中央に位置しているのでポインタの現在位置の座標が(250、250)と表示されている。
【0021】
また、円弧を描く場合には、図5に示すように、線種項目62aから円弧を選択した後、作成領域62b内においてポインタ62cで中心点およびサイズを指定して円を描く。また、円弧が選択されている場合には、任意形状作成ツール画面62には、指定された中心点の座標、軌跡の開始角度、開始点からの回転角度および半径の値が表示される。ユーザは、開始角度および回転角度を入力することによって円弧の開始点および終了点を任意に設定することが可能である。また、中心点の座標および半径を数値で直接入力することも可能である。なお、開始角度は図5の作成領域62bのX軸を基準とし、反時計回りの方向を正としている。
【0022】
また、楕円を描く場合には、図6に示すように、線種項目62aから楕円を選択した後、作成領域62b内においてポインタ62cで中心点およびサイズを指定して楕円を描く。また、楕円が選択されている場合には、任意形状作成ツール画面62には、指定された中心点の座標、軌跡の開始角度、開始点からの回転角度、X軸径およびY軸径の値が表示される。ユーザは、円弧の場合と同様に、開始角度および回転角度を入力することによって楕円の開始点および終了点を任意に設定することが可能である。また、中心点の座標、X軸径およびY軸径を数値で直接入力することも可能である。なお、開始角度は図6の作成領域62bのX軸を基準とし、反時計回りの方向を正としている。
【0023】
ユーザは、上記のように描いた直線、円弧および楕円を作成領域62b内において任意に組み合わせることにより、図7に示すように、任意形状の溶接軌跡を描くことが可能である。そして、任意形状作成ツールにより作成された任意形状の溶接軌跡の情報をファイルとしてPC6のデバイススロット61aに装着されたメモリカード110、PC6内またはPC6のUSB端子61bに装着されたUSBメモリ(図示せず)に保存する。このようにして、PC6を用いて任意形状の溶接軌跡の情報を作成する。
【0024】
次に、図1および図4〜図9を参照して、溶接を行う前の準備手順について説明する。
【0025】
まず、PC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の情報をロボット制御装置2にロードする。具体的には、溶接軌跡の情報が記憶されたメモリカード110をペンダント3のデバイススロット33に挿入してデータ格納部22にロードする。または、PC6内またはUSBメモリに保存された溶接軌跡の情報を、USBケーブルやUSBメモリを用いてUSB端子34を介してデータ格納部22にロードしてもよい。
【0026】
また、ペンダント3を用いてロボット1を移動させながらロボット制御装置2にロボット1の動作を教示する。また、ペンダント3を用いて溶接を行う区間(溶接区間)を設定する。溶接区間は、後述するレーザ溶接条件ファイル画面311でのサイズの指定と、同じく後述する第1基準点B1、第2基準点B2の教示を行うことで設定される。
【0027】
また、レーザ溶接に関する溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)を設定する。具体的には、PC6により作成した任意形状の溶接軌跡に基づいてレーザ溶接を行う場合には、図8に示すように、ペンダント3の表示部31(図1参照)に表示されるレーザ溶接条件ファイル画面311上で補間種類として「任意形状」を選択する。なお「補間種類」とは、ロボット1に教示した複数の位置(教示点)の間を移動する際にロボット先端部の動作軌跡をどのようにするかを指定するものである。図示しないが、「任意形状」の他には「直線」や「円弧」といった補間種類が指定可能である。本実施形態のような複雑な溶接軌跡を用いない場合には補間種類として「直線」が指定されることが多い。
【0028】
また、レーザ溶接条件ファイル画面311上でレーザ出力の値および溶接速度を設定する。また、本実施形態では、PC6により作成された任意形状の溶接軌跡の情報(ファイル)をデータ格納部22に複数ロード、保存しておくことが可能であり、所望の溶接軌跡をファイル番号(図8のファイルNo.)を指定することにより選択する。また、座標で500四方の作成領域62b(図4〜図7参照)を対象物のワーク領域200(図9参照)に反映した場合の一辺の長さを指定する。たとえば、座標で500をワーク領域200で50mmに設定する場合には、サイズ50mmとして指定する。このように指定すると、500四方の作成領域62bに描かれた溶接軌跡が50mm四方内の領域に自動的にスケーリングされる。
【0029】
また、ペンダント3を用いてロボット1を移動させながらPC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の基準位置および基準方向をロボット制御装置2に教示する。具体的には、図9に示すように、ロボット1を移動させてレーザスキャナ4から教示用のレーザ光を照射し、ユーザがワーク上のレーザ光の位置を確認しながら所望の位置にて基準位置としての第1基準点B1をロボット制御装置2に教示する。これにより、ロボット1の設置部に固定されたロボット座標系{R}から見た第1基準点B1の位置RB1が教示される。基準位置としての第1基準点B1は、作成領域62b(図4〜図7参照)をワーク領域200に反映した場合に、作成領域62bにおける原点(作成領域62bの左下の頂点)が位置する点である。また、ロボット1を移動させてレーザスキャナ4から教示用のレーザ光を照射して第1基準点B1の場合と同様にユーザがワーク上のレーザ光の位置を確認しながら第2基準点B2をロボット制御装置2に教示する。これにより、ロボット座標系{R}から見た第2基準点B2の位置RB2が教示される。また、任意形状の溶接軌跡の基準方向として、第1基準点B1から第2基準点B2に向かう方向が教示される。基準方向としての第1基準点B1から第2基準点B2に向かう方向は、作成領域62b(図4〜図7参照)をワーク領域200に反映した場合の作成領域62bにおけるX方向である。このようにして、作成領域62bのXY平面とロボット座標系{R}との位置関係を設定することでワーク領域200において、PC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の位置決めが行われる。
【0030】
次に、図8〜図14を参照して、本実施形態のロボットシステム100がレーザ溶接を行う際に実施される焦点演算部27による溶接時の処理について説明する。
【0031】
図10のステップS1において、焦点演算部27は、レーザスキャナ4に固定されたレーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1(図9参照)の位置LB1を取得する。具体的には、焦点演算部27は、サーボシミュレート部26が推定するロボット座標系{R}から見たレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTと、教示されたロボット座標系{R}から見た第1基準点B1の位置RB1とに基づいて、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1を取得する。
【0032】
次に、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1を求める式を以下の式(1)に示す。
【0033】
LB1(XB1、YB1)=(RLT)−1・RB1・・・・・(1)
上記式(1)において、LB1は、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置、XB1は、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1のX座標、YB1は、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1のY座標、RLTは、サーボシミュレート部26が推定するロボット座標系{R}から見たレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢、RB1は、ロボット座標系{R}から見た第1基準点B1の位置をそれぞれ表す。また、(RLT)−1はRLTの逆変換を意味し、レーザスキャナ座標系{L}から見たロボット座標系{R}原点の現在の位置・姿勢を表す。
【0034】
そして、焦点演算部27は、ステップS2において、第1基準点B1の位置LB1が溶接開始範囲A1(図11および図12参照)に入っているか否かを判断する。溶接開始範囲A1は、図11に示すように、ユーザがレーザスキャナ座標系{L}の原点を中心とする円または楕円のX軸径d1およびY軸径d2の値を設定することによって決定される。ユーザは、X軸径d1およびY軸径d2を自在に設定可能である。ただし径の設定を大きくしすぎるとレーザスキャナ4から大きく離れた場所にまでレーザが照射されてしまうため、各径の設定可能値を最大200mmとしている。本実施形態では、たとえば、X軸径d1およびY軸径d2が180mmに設定されている。溶接開始範囲A1は、ロボット1によりレーザスキャナ4が移動されるのに伴って移動される。
【0035】
次に、第1基準点B1の位置LB1が溶接開始範囲A1内か否かを判断するための式を以下の式(2−5)に示す。なお、式(2−1)〜(2−4)は、式(2−5)の算出手順を説明するためのものである。
【0036】
まず、図11に示す溶接開始範囲A1内に位置するX座標およびY座標は、以下の式(2−1)および式(2−2)で定義される。
X≦d1/2×cos(α)・・・・・(2−1)
Y≦d2/2×sin(α)・・・・・(2−2)
これらを変換して以下の式(2−3)および式(2−4)を得る。
4X2/d12≦cos2(α)・・・・・(2−3)
4Y2/d22≦sin2(α)・・・・・(2−4)
そして、上記式(2−3)および式(2−4)から、第1基準点B1の位置LB1が溶接開始範囲A1内に位置する場合に満足すべき式(2−5)を得る。
4(XB12/d12+YB12/d22)≦1・・・・・(2−5)
上記式(2−5)において、XB1は、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1のX座標、YB1は、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1のY座標、d1は、溶接開始範囲A1のX軸径、d2は、溶接開始範囲A1のY軸径をそれぞれ表す。
【0037】
焦点演算部27は、第1基準点B1の位置LB1が溶接開始範囲A1に入るまでこの判断を繰り返す。図12に示すように、第1基準点B1の位置LB1が溶接開始範囲A1に入ると、焦点演算部27は、ステップS3において、溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)に基づいて、溶接区間における制御周期回数Nを取得する。具体的には、焦点演算部27は、溶接の軌跡情報D、溶接速度Vおよびロボット1の制御周期Δtに基づいて、制御周期回数Nを算出する。溶接の軌跡情報Dは、ペンダント3を用いて設定された溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)に基づくものであり、軌跡の大きさ(長さ)や方向などの情報を含む溶接軌跡の形態に関する情報である。溶接速度Vは、図8に示すレーザ溶接条件ファイル画面311で設定された溶接速度である。また、この段階で変数k(後述)に0を代入して初期化しておく。
【0038】
次に、溶接区間における制御周期回数Nを取得する式を以下の式(3)に示す。
【0039】
N=D/(V・Δt)・・・・・(3)
上記式(3)において、Nは、溶接区間における制御周期回数(0以上の整数)、Dは、溶接の軌跡情報(この場合は溶接軌跡の長さ)、Vは、溶接速度、Δtは、制御周期をそれぞれ表す。なお、式(3)の右辺が割り切れない場合は小数点以下を切り捨てた値をNとする。
【0040】
その後、焦点演算部27は、ステップS4において、ロボット座標系{R}から見た第1基準点B1の位置RB1および基準方向(第1基準点B1から第2基準点B2に向かう方向)に基づいて、ロボット座標系{R}から見た溶接開始点RWsを取得する。そして、ステップS5において、焦点演算部27は、溶接区間でのk回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見た溶接点の位置RWkを取得する。ここで、kは整数(ただし、0≦k≦N)ある。
【0041】
次に、k回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見た溶接点の位置RWkを取得する式を以下の式(4)に示す。
【0042】
RWk=RWs+D(k/N)・・・・・(4)
上記式(4)において、RWkは、k回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見た溶接点の位置、RWsは、ロボット座標系{R}から見た溶接開始点、Dは、溶接の軌跡情報(この場合は溶接軌跡の長さ)、Nは、溶接区間における制御周期回数をそれぞれ表す。
【0043】
また、焦点演算部27は、ステップS6において、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkを取得する。具体的には、焦点演算部27は、サーボシミュレート部26が推定するロボット座標系{R}から見たレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLT、および、k回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見た溶接点の位置RWkに基づいて、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkを算出する。
【0044】
次に、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkを取得する式を以下の式(5)に示す。
【0045】
LWk(Xk、Yk)=(RLT)−1・RWk・・・・・(5)
上記式(5)において、LWkは、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置、Xkは、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点のX座標、Ykは、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点のY座標、RLTは、サーボシミュレート部26が推定するロボット座標系{R}から見たレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢、RWkは、k回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見た溶接点の位置、kは、整数(ただし、0≦k≦N)をそれぞれ表す。また、(RLT)−1はRLTの逆変換を意味し、レーザスキャナ座標系{L}から見たロボット座標系{R}原点の現在の位置・姿勢を表す。
【0046】
そして、焦点演算部27は、ステップS7において、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2(図13および図14参照)に入っているか否かを判断する。溶接範囲A2は、図13に示すように、ユーザがレーザスキャナ座標系{L}の原点を中心とする円または楕円のX軸径d3およびY軸径d4の値を設定することによって決定される。ユーザは、X軸径d3およびY軸径d4を自在に設定可能である。ただし溶接開始範囲A1のX軸径d1およびY軸径d2と同様、径の設定を大きくしすぎるとレーザスキャナ4から大きく離れた場所にまでレーザが照射されてしまうため、各径の設定可能値を最大200mm以内としている。本実施形態では、たとえば、X軸径d3およびY軸径d4が200mmに設定されている。溶接範囲A2は、ロボット1によりレーザスキャナ4が移動されるのに伴って移動される。
【0047】
次に、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2内か否かを判断するための式を以下の式(6)に示す。なお、式(6)は、上記式(2−5)と同様の手順により算出する。
【0048】
4(Xk2/d32+Yk2/d42)≦1・・・・・(6)
上記式(6)において、Xkは、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点のX座標、Ykは、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点のY座標、d3は、溶接範囲A2のX軸径、d4は、溶接範囲A2のY軸径をそれぞれ表す。
【0049】
焦点演算部27は、図13および図14に示すように、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2に入っていると、ステップS8において、k回目の制御周期における溶接点Wkにレーザ光を照射する制御を行う。一方、焦点演算部27は、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2に入っていなければ、レーザ光を照射することなくステップS9に進む。これにより、レーザスキャナ4から誤った位置にレーザ光が照射されてしまうのを抑制することが可能である。なお、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2に入らず、所望の溶接軌跡に適切に溶接を行うことができない場合は、ロボット1により移動されるレーザスキャナ4の移動軌跡(移動経路)と溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)との関係が適切でないため、これらを設定し直すことにより適切な溶接を行うことが可能である。
【0050】
焦点演算部27は、ステップS9において、k=Nであるか否かを判断し、k=Nであれば、そのまま溶接時の処理を終了する。また、k=Nでなければ(k<Nの場合には)、焦点演算部27は、ステップS10において、kをインクリメントして、k=NとなるまでステップS5〜S10の処理を繰り返す。このように、本実施形態のロボットシステム100では、レーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTにおいてレーザ光を照射するか否かをロボット1の制御周期ごとに判断するので、レーザ光の照射を開始する際のレーザスキャナ4の位置・姿勢およびレーザ光の照射を終了する際のレーザスキャナ4の位置・姿勢を予め設定する場合とは異なり、レーザスキャナ4の移動速度が溶接速度Vに依存しない。また、本実施形態では、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2内に位置するようにレーザスキャナ4の位置をロボット1の動作によって調整するだけでよく、レーザスキャナ4の移動軌跡と溶接軌跡とを合わせる必要がない。また、本実施形態によるロボットシステム100では、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2内に位置するか否かを判断することによって、レーザスキャナ4が移動しているか否かに拘わらず、任意形状の溶接軌跡に対応することが可能である。
【0051】
本実施形態では、上記のように、任意形状の溶接軌跡の情報およびレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTに基づいて、レーザスキャナ4によりレーザ光を照射する制御を行う焦点演算部27を設けることによって、焦点演算部27により、レーザスキャナ4の移動状態を考慮してレーザ光を照射する制御を行うことができるので、レーザスキャナ4が移動しながらレーザ光を照射する場合にも、レーザスキャナ4の移動に応じて任意形状の溶接軌跡に対して適切にレーザ光を照射することができる。その結果、任意形状の溶接軌跡に対応した溶接を行うことができる。
【0052】
本実施形態では、上記のように、PC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の情報およびレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTに基づいて、レーザ光を照射する制御を行うように焦点演算部27を構成する。このように構成すれば、外部装置であるPC6を用いて容易に任意形状の溶接軌跡の情報を作成することができるとともに、その任意形状の溶接軌跡に対応した溶接を行うことができる。
【0053】
本実施形態では、上記のように、PC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の情報をメモリカード110を介して受け付けるデバイススロット33をペンダント3に設け、デバイススロット33により受け付けられた任意形状の溶接軌跡の情報およびレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTに基づいて、レーザ光を照射する制御を行うように焦点演算部27を構成する。このように構成すれば、デバイススロット33により、PC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の情報をメモリカード110を介して容易に受け付けることができるので、容易に、外部装置であるPC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡に対応した溶接を行うことができる。
【0054】
本実施形態では、上記のように、任意形状の溶接軌跡の情報とペンダント3により教示された第1基準点B1および基準方向(第1基準点B1から第2基準点B2に向かう方向)とに基づいて、任意形状の溶接軌跡に対応する溶接点Wkを取得し、取得した溶接点Wkにレーザ光を照射する制御を行うように焦点演算部27を構成する。このように構成すれば、外部装置であるPC6で作成された任意形状の溶接軌跡を、第1基準点B1および基準方向を用いて対象物のワーク領域200に容易に反映することができるので、外部装置であるPC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡に対応した溶接を容易に行うことができる。
【0055】
本実施形態では、上記のように、直線、円弧および楕円の異なる線種が任意に組み合わされた任意形状に対応するように構成する。このように構成すれば、直線、円弧および楕円の3つの線種を任意に組み合わせて任意形状の溶接軌跡を作成することができるので、溶接軌跡に対して自由度の高いロボットシステム100を提供することができる。
【0056】
本実施形態では、上記のように、レーザスキャナ4が移動しているか否かに拘わらず、任意形状の溶接軌跡に対応する溶接点Wkがレーザスキャナ4によりレーザ光を照射可能な溶接範囲A2内に位置するか否かを判断し、溶接点Wkが溶接範囲A2内に位置する場合にレーザ光を照射する制御を行うように焦点演算部27を構成する。このように構成すれば、溶接点Wkが溶接範囲A2内に位置していない場合には、レーザ光が照射されないので、レーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTから照射することができない溶接点Wkであるにも拘わらずレーザ光を照射して誤った位置にレーザ光が照射されてしまうのを抑制することができる。
【0057】
本実施形態では、上記のように、任意形状の溶接軌跡の基準位置としての第1基準点B1がレーザスキャナ4の溶接開始範囲A1内に位置するか否かを判断し、第1基準点B1が溶接開始範囲A1内に入った場合に、溶接点Wkがレーザスキャナ4の溶接範囲A2内に位置するか否かを判断する制御を開始するように焦点演算部27を構成する。このように構成すれば、第1基準点B1がレーザスキャナ4の溶接開始範囲A1内に入るほどレーザスキャナ4が任意形状の溶接軌跡に近づいた場合に、焦点演算部27により、溶接点Wkがレーザスキャナ4の溶接範囲A2内に位置するか否かを判断する制御が開始されるので、レーザスキャナ4が任意形状の溶接軌跡から遠く離れた位置に位置しているにも拘わらず、溶接点Wkが溶接範囲A2内か否かを判断する無駄な制御動作が行われるのを抑制して焦点演算部27の負荷を軽減することができる。
【0058】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0059】
たとえば、上記実施形態では、本発明のロボットシステムの一例として、レーザ光を照射してリモートレーザ溶接を行うロボットシステムを示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、レーザ光により対象物を切断するなど、溶接以外の加工を行うロボットシステムであってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、メモリカードを読み込み可能なデバイススロット(受付部)およびUSB端子(受付部)を、本発明の教示装置としてのペンダントに設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、受付部を、教示装置以外の、たとえばロボット制御装置に設けてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、本発明の受付部の一例として、メモリカードを読み込み可能なデバイススロットおよびUSB端子を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、メモリカードやUSBメモリ以外の可搬型記録媒体を読み込み可能な受付部であってもよいし、LAN接続(有線、無線を含む)など、USB接続以外の接続に対応した受付部であってもよい。また、PC(外部情報端末)およびペンダント(教示装置)やロボット制御装置がインターネットに接続可能な場合には、インターネットを介して任意形状の加工軌跡の情報をPC(外部情報端末)からペンダント(教示装置)やロボット制御装置に送信してもよい。この場合には、ペンダント(教示装置)やロボット制御装置のインターネット接続部が受付部として機能する。
【0062】
また、上記実施形態では、直線、円弧および楕円の3つの異なる線種が組み合わされた任意形状に対応可能に構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、正弦曲線や余弦曲線など、直線、円弧および楕円以外の線種が組み合わされた任意形状に対応可能なように構成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、本発明の外部装置の一例として、PCを示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、携帯電話端末や携帯情報端末(PDA)など、PC以外の外部装置(外部情報端末)であってもよい。さらに、上記実施形態では、外部装置とペンダント(教示装置)とを別体とする例を示したが、本発明はこれに限らず、両者を一体化してもよい。すなわち、外部装置であるPCなどにペンダント(教示装置)の機能を統合してロボット制御装置と接続してもよいし、ペンダント上で任意形状の溶接軌跡を作成できるように構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部としての焦点演算部の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 ロボット
3 ペンダント(教示装置)
4 レーザスキャナ(レーザ照射部)
6 PC(加工軌跡作成装置、外部装置、外部情報端末装置)
27 焦点演算部(制御部)
33 デバイススロット(受付部、記録媒体読取部)
34 USB端子(受付部)
100 ロボットシステム
110 メモリカード(可搬型記録媒体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムに関し、特に、レーザ光を照射可能なレーザ照射部を備えたロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を照射可能なレーザ照射部を備えたロボットシステムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、加工対象物に対してレーザ光を照射可能なレーザ照射装置(レーザ照射部)を備えたロボットシステムが開示されている。このロボットシステムは、レーザ照射装置が所定の位置に位置決めされた状態(停止された状態)で任意形状の加工軌跡に対してレーザ光を照射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−43971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のロボットシステムでは、レーザ照射装置(レーザ照射部)を所定の位置に位置決めした状態(停止した状態)で任意形状の加工軌跡に対してレーザ光を照射することが可能である一方、レーザ照射装置(レーザ照射部)が移動しながらレーザ光を照射する場合には、任意形状の加工軌跡に対して適切にレーザ光を照射することができないという問題点があると考えられる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、レーザ照射部が移動しながらレーザ光を照射する場合にも、任意形状の加工軌跡に対して適切にレーザ光を照射することが可能なロボットシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるロボットシステムは、ロボットと、ロボットにより移動され、加工対象物に対してレーザ光を照射するレーザ照射部と、任意形状の加工軌跡の情報およびレーザ照射部の移動情報に基づいて、レーザ照射部によりレーザ光を照射する制御を行う制御部とを備えている。
【0008】
この発明の一の局面によるロボットシステムでは、上記のように、任意形状の加工軌跡の情報およびレーザ照射部の移動情報に基づいて、レーザ照射部によりレーザ光を照射する制御を行う制御部を設けることによって、制御部により、レーザ照射部の移動状態を考慮してレーザ光を照射する制御を行うことができるので、レーザ照射部が移動しながらレーザ光を照射する場合にも、レーザ照射部の移動に応じて任意形状の加工軌跡に対して適切にレーザ光を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態によるロボットシステムの全体構成を示した概略図である。
【図2】本発明の一実施形態によるロボットシステムのロボット制御装置を示したブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態によるロボットシステムのレーザスキャナの構成を示した概略図である。
【図4】本発明の一実施形態によるロボットシステムの任意形状作成ツールを用いて直線の溶接軌跡を描く手順について説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態によるロボットシステムの任意形状作成ツールを用いて円弧の溶接軌跡を描く手順について説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態によるロボットシステムの任意形状作成ツールを用いて楕円の溶接軌跡を描く手順について説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態によるロボットシステムの任意形状作成ツールを用いて任意形状の溶接軌跡が描かれた状態を示した図である。
【図8】本発明の一実施形態によるロボットシステムのレーザ溶接条件ファイル画面を示した図である。
【図9】本発明の一実施形態によるロボットシステムにおいて任意形状の溶接軌跡の基準位置および基準方向を教示する際の動作手順について説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態によるロボットシステムの焦点演算部による溶接時の処理について説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態によるロボットシステムの溶接開始範囲を示した図である。
【図12】本発明の一実施形態によるロボットシステムの溶接開始範囲内に第1基準点が入った状態を示した図である。
【図13】本発明の一実施形態によるロボットシステムの溶接範囲を示した図である。
【図14】本発明の一実施形態によるロボットシステムの溶接範囲内に溶接点が位置する状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態によるロボットシステム100の構成について説明する。
【0012】
本発明の一実施形態によるロボットシステム100は、対象物から離れた位置(たとえば、約500mm離れた位置)でレーザ光を照射してレーザ溶接を行うリモートレーザ溶接のロボットシステムである。また、ロボットシステム100は、図1に示すように、ロボット1と、ロボット1を制御するロボット制御装置2と、ロボット1の動作を教示するためのペンダント(プログラミングペンダント)3とを備えている。また、本実施形態によるロボットシステム100は、ロボット1に取り付けられ、レーザ光を照射するレーザスキャナ4と、レーザスキャナ4にレーザ光を供給するレーザ発振器5とをさらに備えている。なお、ペンダント3は、本発明の「教示装置」の一例であり、レーザスキャナ4は、本発明の「レーザ照射部」の一例である。
【0013】
ロボット1は、複数の関節を有する多関節型ロボットである。また、ロボット1は各関節を駆動するための図示しない複数のサーボモータを備え、各サーボモータにより先端部に取り付けられたレーザスキャナ4を移動可能に構成されている。
【0014】
ロボット制御装置2は、図1に示すように、ロボット指令ケーブル10を介してロボット1に通信可能に接続されている。また、ロボット制御装置2は、ケーブル11を介してペンダント3に通信可能に接続されている。さらに、ロボット制御装置2は、スキャナ指令ケーブル12を介してレーザスキャナ4に通信可能に接続されている。また、ロボット制御装置2は、図2に示すように、ペンダント3との間で信号の送受信を行う通信部21と、動作プログラムやレーザ溶接に関する溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)などを格納するデータ格納部22と、データ格納部22に格納された動作プログラムや溶接情報などを読み出して情報を解釈する命令解釈部23とを含んでいる。
【0015】
また、ロボット制御装置2は、命令解釈部23による解釈に基づいてロボット1の移動軌跡を所定の制御周期ごとに演算するロボット軌跡演算部24と、ロボット軌跡演算部24による演算結果に基づいてロボット1に設けられた各サーボモータを制御するサーボ制御部25とをさらに含んでいる。また、ロボット制御装置2には、サーボ制御部25により各サーボモータに送信される動作指令に基づいてロボット1の現在の先端部の状態(レーザスキャナ4の現在の位置・姿勢)を推定するサーボシミュレート部26と、サーボシミュレート部26により推定されたロボット1の先端部の現在位置に基づいて焦点位置(溶接位置)を演算する焦点演算部27とが設けられている。ここで、サーボ制御部25からの動作指令の送信タイミングとそれに基づくロボット1の動作タイミングとの間には、若干のタイムラグが生じる。このため、サーボシミュレート部26は、そのタイムラグを考慮してレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢を推定する。なお、焦点演算部27により実施される溶接時の処理については後述する。また、焦点演算部27は、本発明の「制御部」の一例である。
【0016】
ペンダント3は、ロボット1の動作プログラムおよびレーザ溶接に関する溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)を作成するために設けられている。また、ペンダント3は、図1に示すように、表示部31と、複数の操作ボタンからなる操作部32とを有している。ユーザは、表示部31の表示を見ながら操作部32を操作して所定の情報を入力することが可能である。また、ユーザは、ペンダント3を操作してロボット制御装置2にロボット1の動作を教示することが可能である。また、本実施形態のペンダント3には、たとえば、コンパクトフラッシュ(登録商標)などからなるメモリカード110を読み取り可能なデバイススロット(カードスロット)33が設けられている。これにより、ペンダント3は、PC(パーソナルコンピュータ)6などの外部装置により作成されたロボット制御に関連する情報をメモリカード110を介して取り込むことが可能である。また、ペンダント3には、USB(Universal Serial Bus)接続可能なUSB端子34が設けられている。また、PC6には、メモリカード110を装着可能なデバイススロット(カードスロット)61aと、USB端子61bとが設けられている。すなわち、PC6で作成した溶接軌跡の情報をUSB端子61bに装着されたUSBメモリ(図示せず)に格納した後、そのUSBメモリをペンダント3のUSB端子34に差し込むことにより、USB端子34を介してロボット制御装置2(データ格納部22)に溶接軌跡の情報が受け付けられる。なお、USBケーブルを用いてPC6とUSB端子34とを直接接続するとともに、PC6で作成した溶接軌跡の情報をUSB端子34を介してペンダント3に送信することによって溶接軌跡の情報をUSB端子34により受け付けるようにしてもよい。また、PC6は、本発明の「加工軌跡作成装置」、「外部装置」および「外部情報端末装置」の一例である。また、デバイススロット33は、本発明の「受付部」および「記録媒体読取部」の一例であり、USB端子34は、本発明の「受付部」の一例である。また、メモリカード110は、本発明の「可搬型記録媒体」の一例である。
【0017】
レーザスキャナ4は、レーザ発振器5により出力されたレーザ光を対象物に向けて照射する機能を有している。レーザ発振器5により出力されたレーザ光は、ファイバ13を介してレーザスキャナ4に供給される。また、図3に示すように、レーザスキャナ4の内部には、レンズなどからなる光学系41と、ミラー42aおよび42bを含むガルバノミラー42と、ミラー42aおよび42bのそれぞれを駆動するモータ43aおよび43bとが設けられている。レーザ発振器5からレーザスキャナ4に供給されたレーザ光は、光学系41により集光された後、ガルバノミラー42により方向が変化されて対象物に向けて照射される。レーザスキャナ4は、焦点演算部27による演算結果に基づいて、ミラー42aおよび42bを駆動することによって所定の位置にレーザ光を照射するように構成されている。具体的には、本実施形態のレーザスキャナ4は、対象物から500mm離れた状態で200mm四方の範囲内にレーザ光を照射することが可能である。このように、レーザ焦点距離などのレーザスキャナ4の仕様は予め分かっているので、後述する溶接軌跡の作成の際にはレーザスキャナ4から対象物までの距離がレーザ焦点距離となっていることが前提となっている。またロボット1の動作の教示やレーザ溶接の際にはレーザスキャナ4から対象物までの距離をレーザ焦点距離に保つようにする。なお図3では省略しているが、レーザスキャナ4は光学系41の調整機構も備えており動的にレーザ焦点距離を変更することができる。これによりレーザスキャナ4と対象物との距離を変えながらレーザ溶接を行うことも可能となっている。
【0018】
次に、図4〜図7を参照して、任意形状の溶接軌跡の情報を、PC6を用いて作成する手順について説明する。
【0019】
PC6に予めインストールされたソフトウェア(アプリケーションプログラム)である任意形状作成ツールを起動することによって、PC6の表示部61(図1参照)には、図4〜図7に示すように、任意形状作成ツール画面62が表示される。ユーザは、任意形状作成ツール画面62の線種項目62aから所望の線種を選択することが可能である。具体的には、任意形状作成ツール画面62は、グラフィカルユーザインターフェースによって直線、円弧および楕円の中から所望の線種を選択可能に構成されており、ユーザは、直線、円弧および楕円の異なる線種を任意に組み合わせて任意形状の溶接軌跡を作成可能である。
【0020】
たとえば、直線を描く場合には、図4に示すように、線種項目62aから直線を選択した後、作成領域62b内においてポインタ62cで開始点および終了点を指定して直線を描く。開始点および終了点は、識別可能なように互いに異なる色で表示される。また、作成した直線がポインタ62cにより選択されている場合には、任意形状作成ツール画面62には、開始点および終了点の座標が表示される。これにより、ユーザは開始点および終了点の位置を数値で確認することが可能である。また、ユーザは、座標を数値で直接入力することによって開始点および終了点を指定することも可能である。また、ポインタ62cの現在位置の座標も作成領域62bの下側に表示される。なお、作成領域62bは、左下の頂点を原点とするXY平面において、座標値で500四方の範囲である。図4の例では、ポインタ62cが作成領域62bの中央に位置しているのでポインタの現在位置の座標が(250、250)と表示されている。
【0021】
また、円弧を描く場合には、図5に示すように、線種項目62aから円弧を選択した後、作成領域62b内においてポインタ62cで中心点およびサイズを指定して円を描く。また、円弧が選択されている場合には、任意形状作成ツール画面62には、指定された中心点の座標、軌跡の開始角度、開始点からの回転角度および半径の値が表示される。ユーザは、開始角度および回転角度を入力することによって円弧の開始点および終了点を任意に設定することが可能である。また、中心点の座標および半径を数値で直接入力することも可能である。なお、開始角度は図5の作成領域62bのX軸を基準とし、反時計回りの方向を正としている。
【0022】
また、楕円を描く場合には、図6に示すように、線種項目62aから楕円を選択した後、作成領域62b内においてポインタ62cで中心点およびサイズを指定して楕円を描く。また、楕円が選択されている場合には、任意形状作成ツール画面62には、指定された中心点の座標、軌跡の開始角度、開始点からの回転角度、X軸径およびY軸径の値が表示される。ユーザは、円弧の場合と同様に、開始角度および回転角度を入力することによって楕円の開始点および終了点を任意に設定することが可能である。また、中心点の座標、X軸径およびY軸径を数値で直接入力することも可能である。なお、開始角度は図6の作成領域62bのX軸を基準とし、反時計回りの方向を正としている。
【0023】
ユーザは、上記のように描いた直線、円弧および楕円を作成領域62b内において任意に組み合わせることにより、図7に示すように、任意形状の溶接軌跡を描くことが可能である。そして、任意形状作成ツールにより作成された任意形状の溶接軌跡の情報をファイルとしてPC6のデバイススロット61aに装着されたメモリカード110、PC6内またはPC6のUSB端子61bに装着されたUSBメモリ(図示せず)に保存する。このようにして、PC6を用いて任意形状の溶接軌跡の情報を作成する。
【0024】
次に、図1および図4〜図9を参照して、溶接を行う前の準備手順について説明する。
【0025】
まず、PC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の情報をロボット制御装置2にロードする。具体的には、溶接軌跡の情報が記憶されたメモリカード110をペンダント3のデバイススロット33に挿入してデータ格納部22にロードする。または、PC6内またはUSBメモリに保存された溶接軌跡の情報を、USBケーブルやUSBメモリを用いてUSB端子34を介してデータ格納部22にロードしてもよい。
【0026】
また、ペンダント3を用いてロボット1を移動させながらロボット制御装置2にロボット1の動作を教示する。また、ペンダント3を用いて溶接を行う区間(溶接区間)を設定する。溶接区間は、後述するレーザ溶接条件ファイル画面311でのサイズの指定と、同じく後述する第1基準点B1、第2基準点B2の教示を行うことで設定される。
【0027】
また、レーザ溶接に関する溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)を設定する。具体的には、PC6により作成した任意形状の溶接軌跡に基づいてレーザ溶接を行う場合には、図8に示すように、ペンダント3の表示部31(図1参照)に表示されるレーザ溶接条件ファイル画面311上で補間種類として「任意形状」を選択する。なお「補間種類」とは、ロボット1に教示した複数の位置(教示点)の間を移動する際にロボット先端部の動作軌跡をどのようにするかを指定するものである。図示しないが、「任意形状」の他には「直線」や「円弧」といった補間種類が指定可能である。本実施形態のような複雑な溶接軌跡を用いない場合には補間種類として「直線」が指定されることが多い。
【0028】
また、レーザ溶接条件ファイル画面311上でレーザ出力の値および溶接速度を設定する。また、本実施形態では、PC6により作成された任意形状の溶接軌跡の情報(ファイル)をデータ格納部22に複数ロード、保存しておくことが可能であり、所望の溶接軌跡をファイル番号(図8のファイルNo.)を指定することにより選択する。また、座標で500四方の作成領域62b(図4〜図7参照)を対象物のワーク領域200(図9参照)に反映した場合の一辺の長さを指定する。たとえば、座標で500をワーク領域200で50mmに設定する場合には、サイズ50mmとして指定する。このように指定すると、500四方の作成領域62bに描かれた溶接軌跡が50mm四方内の領域に自動的にスケーリングされる。
【0029】
また、ペンダント3を用いてロボット1を移動させながらPC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の基準位置および基準方向をロボット制御装置2に教示する。具体的には、図9に示すように、ロボット1を移動させてレーザスキャナ4から教示用のレーザ光を照射し、ユーザがワーク上のレーザ光の位置を確認しながら所望の位置にて基準位置としての第1基準点B1をロボット制御装置2に教示する。これにより、ロボット1の設置部に固定されたロボット座標系{R}から見た第1基準点B1の位置RB1が教示される。基準位置としての第1基準点B1は、作成領域62b(図4〜図7参照)をワーク領域200に反映した場合に、作成領域62bにおける原点(作成領域62bの左下の頂点)が位置する点である。また、ロボット1を移動させてレーザスキャナ4から教示用のレーザ光を照射して第1基準点B1の場合と同様にユーザがワーク上のレーザ光の位置を確認しながら第2基準点B2をロボット制御装置2に教示する。これにより、ロボット座標系{R}から見た第2基準点B2の位置RB2が教示される。また、任意形状の溶接軌跡の基準方向として、第1基準点B1から第2基準点B2に向かう方向が教示される。基準方向としての第1基準点B1から第2基準点B2に向かう方向は、作成領域62b(図4〜図7参照)をワーク領域200に反映した場合の作成領域62bにおけるX方向である。このようにして、作成領域62bのXY平面とロボット座標系{R}との位置関係を設定することでワーク領域200において、PC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の位置決めが行われる。
【0030】
次に、図8〜図14を参照して、本実施形態のロボットシステム100がレーザ溶接を行う際に実施される焦点演算部27による溶接時の処理について説明する。
【0031】
図10のステップS1において、焦点演算部27は、レーザスキャナ4に固定されたレーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1(図9参照)の位置LB1を取得する。具体的には、焦点演算部27は、サーボシミュレート部26が推定するロボット座標系{R}から見たレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTと、教示されたロボット座標系{R}から見た第1基準点B1の位置RB1とに基づいて、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1を取得する。
【0032】
次に、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1を求める式を以下の式(1)に示す。
【0033】
LB1(XB1、YB1)=(RLT)−1・RB1・・・・・(1)
上記式(1)において、LB1は、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置、XB1は、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1のX座標、YB1は、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1のY座標、RLTは、サーボシミュレート部26が推定するロボット座標系{R}から見たレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢、RB1は、ロボット座標系{R}から見た第1基準点B1の位置をそれぞれ表す。また、(RLT)−1はRLTの逆変換を意味し、レーザスキャナ座標系{L}から見たロボット座標系{R}原点の現在の位置・姿勢を表す。
【0034】
そして、焦点演算部27は、ステップS2において、第1基準点B1の位置LB1が溶接開始範囲A1(図11および図12参照)に入っているか否かを判断する。溶接開始範囲A1は、図11に示すように、ユーザがレーザスキャナ座標系{L}の原点を中心とする円または楕円のX軸径d1およびY軸径d2の値を設定することによって決定される。ユーザは、X軸径d1およびY軸径d2を自在に設定可能である。ただし径の設定を大きくしすぎるとレーザスキャナ4から大きく離れた場所にまでレーザが照射されてしまうため、各径の設定可能値を最大200mmとしている。本実施形態では、たとえば、X軸径d1およびY軸径d2が180mmに設定されている。溶接開始範囲A1は、ロボット1によりレーザスキャナ4が移動されるのに伴って移動される。
【0035】
次に、第1基準点B1の位置LB1が溶接開始範囲A1内か否かを判断するための式を以下の式(2−5)に示す。なお、式(2−1)〜(2−4)は、式(2−5)の算出手順を説明するためのものである。
【0036】
まず、図11に示す溶接開始範囲A1内に位置するX座標およびY座標は、以下の式(2−1)および式(2−2)で定義される。
X≦d1/2×cos(α)・・・・・(2−1)
Y≦d2/2×sin(α)・・・・・(2−2)
これらを変換して以下の式(2−3)および式(2−4)を得る。
4X2/d12≦cos2(α)・・・・・(2−3)
4Y2/d22≦sin2(α)・・・・・(2−4)
そして、上記式(2−3)および式(2−4)から、第1基準点B1の位置LB1が溶接開始範囲A1内に位置する場合に満足すべき式(2−5)を得る。
4(XB12/d12+YB12/d22)≦1・・・・・(2−5)
上記式(2−5)において、XB1は、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1のX座標、YB1は、レーザスキャナ座標系{L}から見た第1基準点B1の位置LB1のY座標、d1は、溶接開始範囲A1のX軸径、d2は、溶接開始範囲A1のY軸径をそれぞれ表す。
【0037】
焦点演算部27は、第1基準点B1の位置LB1が溶接開始範囲A1に入るまでこの判断を繰り返す。図12に示すように、第1基準点B1の位置LB1が溶接開始範囲A1に入ると、焦点演算部27は、ステップS3において、溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)に基づいて、溶接区間における制御周期回数Nを取得する。具体的には、焦点演算部27は、溶接の軌跡情報D、溶接速度Vおよびロボット1の制御周期Δtに基づいて、制御周期回数Nを算出する。溶接の軌跡情報Dは、ペンダント3を用いて設定された溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)に基づくものであり、軌跡の大きさ(長さ)や方向などの情報を含む溶接軌跡の形態に関する情報である。溶接速度Vは、図8に示すレーザ溶接条件ファイル画面311で設定された溶接速度である。また、この段階で変数k(後述)に0を代入して初期化しておく。
【0038】
次に、溶接区間における制御周期回数Nを取得する式を以下の式(3)に示す。
【0039】
N=D/(V・Δt)・・・・・(3)
上記式(3)において、Nは、溶接区間における制御周期回数(0以上の整数)、Dは、溶接の軌跡情報(この場合は溶接軌跡の長さ)、Vは、溶接速度、Δtは、制御周期をそれぞれ表す。なお、式(3)の右辺が割り切れない場合は小数点以下を切り捨てた値をNとする。
【0040】
その後、焦点演算部27は、ステップS4において、ロボット座標系{R}から見た第1基準点B1の位置RB1および基準方向(第1基準点B1から第2基準点B2に向かう方向)に基づいて、ロボット座標系{R}から見た溶接開始点RWsを取得する。そして、ステップS5において、焦点演算部27は、溶接区間でのk回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見た溶接点の位置RWkを取得する。ここで、kは整数(ただし、0≦k≦N)ある。
【0041】
次に、k回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見た溶接点の位置RWkを取得する式を以下の式(4)に示す。
【0042】
RWk=RWs+D(k/N)・・・・・(4)
上記式(4)において、RWkは、k回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見た溶接点の位置、RWsは、ロボット座標系{R}から見た溶接開始点、Dは、溶接の軌跡情報(この場合は溶接軌跡の長さ)、Nは、溶接区間における制御周期回数をそれぞれ表す。
【0043】
また、焦点演算部27は、ステップS6において、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkを取得する。具体的には、焦点演算部27は、サーボシミュレート部26が推定するロボット座標系{R}から見たレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLT、および、k回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見た溶接点の位置RWkに基づいて、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkを算出する。
【0044】
次に、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkを取得する式を以下の式(5)に示す。
【0045】
LWk(Xk、Yk)=(RLT)−1・RWk・・・・・(5)
上記式(5)において、LWkは、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置、Xkは、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点のX座標、Ykは、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点のY座標、RLTは、サーボシミュレート部26が推定するロボット座標系{R}から見たレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢、RWkは、k回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見た溶接点の位置、kは、整数(ただし、0≦k≦N)をそれぞれ表す。また、(RLT)−1はRLTの逆変換を意味し、レーザスキャナ座標系{L}から見たロボット座標系{R}原点の現在の位置・姿勢を表す。
【0046】
そして、焦点演算部27は、ステップS7において、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2(図13および図14参照)に入っているか否かを判断する。溶接範囲A2は、図13に示すように、ユーザがレーザスキャナ座標系{L}の原点を中心とする円または楕円のX軸径d3およびY軸径d4の値を設定することによって決定される。ユーザは、X軸径d3およびY軸径d4を自在に設定可能である。ただし溶接開始範囲A1のX軸径d1およびY軸径d2と同様、径の設定を大きくしすぎるとレーザスキャナ4から大きく離れた場所にまでレーザが照射されてしまうため、各径の設定可能値を最大200mm以内としている。本実施形態では、たとえば、X軸径d3およびY軸径d4が200mmに設定されている。溶接範囲A2は、ロボット1によりレーザスキャナ4が移動されるのに伴って移動される。
【0047】
次に、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2内か否かを判断するための式を以下の式(6)に示す。なお、式(6)は、上記式(2−5)と同様の手順により算出する。
【0048】
4(Xk2/d32+Yk2/d42)≦1・・・・・(6)
上記式(6)において、Xkは、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点のX座標、Ykは、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点のY座標、d3は、溶接範囲A2のX軸径、d4は、溶接範囲A2のY軸径をそれぞれ表す。
【0049】
焦点演算部27は、図13および図14に示すように、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2に入っていると、ステップS8において、k回目の制御周期における溶接点Wkにレーザ光を照射する制御を行う。一方、焦点演算部27は、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2に入っていなければ、レーザ光を照射することなくステップS9に進む。これにより、レーザスキャナ4から誤った位置にレーザ光が照射されてしまうのを抑制することが可能である。なお、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2に入らず、所望の溶接軌跡に適切に溶接を行うことができない場合は、ロボット1により移動されるレーザスキャナ4の移動軌跡(移動経路)と溶接情報(溶接速度や溶接軌跡に関する情報)との関係が適切でないため、これらを設定し直すことにより適切な溶接を行うことが可能である。
【0050】
焦点演算部27は、ステップS9において、k=Nであるか否かを判断し、k=Nであれば、そのまま溶接時の処理を終了する。また、k=Nでなければ(k<Nの場合には)、焦点演算部27は、ステップS10において、kをインクリメントして、k=NとなるまでステップS5〜S10の処理を繰り返す。このように、本実施形態のロボットシステム100では、レーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTにおいてレーザ光を照射するか否かをロボット1の制御周期ごとに判断するので、レーザ光の照射を開始する際のレーザスキャナ4の位置・姿勢およびレーザ光の照射を終了する際のレーザスキャナ4の位置・姿勢を予め設定する場合とは異なり、レーザスキャナ4の移動速度が溶接速度Vに依存しない。また、本実施形態では、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2内に位置するようにレーザスキャナ4の位置をロボット1の動作によって調整するだけでよく、レーザスキャナ4の移動軌跡と溶接軌跡とを合わせる必要がない。また、本実施形態によるロボットシステム100では、k回目の制御周期におけるレーザスキャナ座標系{L}から見た溶接点の位置LWkが溶接範囲A2内に位置するか否かを判断することによって、レーザスキャナ4が移動しているか否かに拘わらず、任意形状の溶接軌跡に対応することが可能である。
【0051】
本実施形態では、上記のように、任意形状の溶接軌跡の情報およびレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTに基づいて、レーザスキャナ4によりレーザ光を照射する制御を行う焦点演算部27を設けることによって、焦点演算部27により、レーザスキャナ4の移動状態を考慮してレーザ光を照射する制御を行うことができるので、レーザスキャナ4が移動しながらレーザ光を照射する場合にも、レーザスキャナ4の移動に応じて任意形状の溶接軌跡に対して適切にレーザ光を照射することができる。その結果、任意形状の溶接軌跡に対応した溶接を行うことができる。
【0052】
本実施形態では、上記のように、PC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の情報およびレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTに基づいて、レーザ光を照射する制御を行うように焦点演算部27を構成する。このように構成すれば、外部装置であるPC6を用いて容易に任意形状の溶接軌跡の情報を作成することができるとともに、その任意形状の溶接軌跡に対応した溶接を行うことができる。
【0053】
本実施形態では、上記のように、PC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の情報をメモリカード110を介して受け付けるデバイススロット33をペンダント3に設け、デバイススロット33により受け付けられた任意形状の溶接軌跡の情報およびレーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTに基づいて、レーザ光を照射する制御を行うように焦点演算部27を構成する。このように構成すれば、デバイススロット33により、PC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡の情報をメモリカード110を介して容易に受け付けることができるので、容易に、外部装置であるPC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡に対応した溶接を行うことができる。
【0054】
本実施形態では、上記のように、任意形状の溶接軌跡の情報とペンダント3により教示された第1基準点B1および基準方向(第1基準点B1から第2基準点B2に向かう方向)とに基づいて、任意形状の溶接軌跡に対応する溶接点Wkを取得し、取得した溶接点Wkにレーザ光を照射する制御を行うように焦点演算部27を構成する。このように構成すれば、外部装置であるPC6で作成された任意形状の溶接軌跡を、第1基準点B1および基準方向を用いて対象物のワーク領域200に容易に反映することができるので、外部装置であるPC6を用いて作成された任意形状の溶接軌跡に対応した溶接を容易に行うことができる。
【0055】
本実施形態では、上記のように、直線、円弧および楕円の異なる線種が任意に組み合わされた任意形状に対応するように構成する。このように構成すれば、直線、円弧および楕円の3つの線種を任意に組み合わせて任意形状の溶接軌跡を作成することができるので、溶接軌跡に対して自由度の高いロボットシステム100を提供することができる。
【0056】
本実施形態では、上記のように、レーザスキャナ4が移動しているか否かに拘わらず、任意形状の溶接軌跡に対応する溶接点Wkがレーザスキャナ4によりレーザ光を照射可能な溶接範囲A2内に位置するか否かを判断し、溶接点Wkが溶接範囲A2内に位置する場合にレーザ光を照射する制御を行うように焦点演算部27を構成する。このように構成すれば、溶接点Wkが溶接範囲A2内に位置していない場合には、レーザ光が照射されないので、レーザスキャナ4の現在の位置・姿勢RLTから照射することができない溶接点Wkであるにも拘わらずレーザ光を照射して誤った位置にレーザ光が照射されてしまうのを抑制することができる。
【0057】
本実施形態では、上記のように、任意形状の溶接軌跡の基準位置としての第1基準点B1がレーザスキャナ4の溶接開始範囲A1内に位置するか否かを判断し、第1基準点B1が溶接開始範囲A1内に入った場合に、溶接点Wkがレーザスキャナ4の溶接範囲A2内に位置するか否かを判断する制御を開始するように焦点演算部27を構成する。このように構成すれば、第1基準点B1がレーザスキャナ4の溶接開始範囲A1内に入るほどレーザスキャナ4が任意形状の溶接軌跡に近づいた場合に、焦点演算部27により、溶接点Wkがレーザスキャナ4の溶接範囲A2内に位置するか否かを判断する制御が開始されるので、レーザスキャナ4が任意形状の溶接軌跡から遠く離れた位置に位置しているにも拘わらず、溶接点Wkが溶接範囲A2内か否かを判断する無駄な制御動作が行われるのを抑制して焦点演算部27の負荷を軽減することができる。
【0058】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0059】
たとえば、上記実施形態では、本発明のロボットシステムの一例として、レーザ光を照射してリモートレーザ溶接を行うロボットシステムを示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、レーザ光により対象物を切断するなど、溶接以外の加工を行うロボットシステムであってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、メモリカードを読み込み可能なデバイススロット(受付部)およびUSB端子(受付部)を、本発明の教示装置としてのペンダントに設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、受付部を、教示装置以外の、たとえばロボット制御装置に設けてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、本発明の受付部の一例として、メモリカードを読み込み可能なデバイススロットおよびUSB端子を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、メモリカードやUSBメモリ以外の可搬型記録媒体を読み込み可能な受付部であってもよいし、LAN接続(有線、無線を含む)など、USB接続以外の接続に対応した受付部であってもよい。また、PC(外部情報端末)およびペンダント(教示装置)やロボット制御装置がインターネットに接続可能な場合には、インターネットを介して任意形状の加工軌跡の情報をPC(外部情報端末)からペンダント(教示装置)やロボット制御装置に送信してもよい。この場合には、ペンダント(教示装置)やロボット制御装置のインターネット接続部が受付部として機能する。
【0062】
また、上記実施形態では、直線、円弧および楕円の3つの異なる線種が組み合わされた任意形状に対応可能に構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、正弦曲線や余弦曲線など、直線、円弧および楕円以外の線種が組み合わされた任意形状に対応可能なように構成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、本発明の外部装置の一例として、PCを示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、携帯電話端末や携帯情報端末(PDA)など、PC以外の外部装置(外部情報端末)であってもよい。さらに、上記実施形態では、外部装置とペンダント(教示装置)とを別体とする例を示したが、本発明はこれに限らず、両者を一体化してもよい。すなわち、外部装置であるPCなどにペンダント(教示装置)の機能を統合してロボット制御装置と接続してもよいし、ペンダント上で任意形状の溶接軌跡を作成できるように構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部としての焦点演算部の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 ロボット
3 ペンダント(教示装置)
4 レーザスキャナ(レーザ照射部)
6 PC(加工軌跡作成装置、外部装置、外部情報端末装置)
27 焦点演算部(制御部)
33 デバイススロット(受付部、記録媒体読取部)
34 USB端子(受付部)
100 ロボットシステム
110 メモリカード(可搬型記録媒体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、
前記ロボットにより移動され、加工対象物に対してレーザ光を照射するレーザ照射部と、
任意形状の加工軌跡の情報および前記レーザ照射部の移動情報に基づいて、前記レーザ照射部により前記レーザ光を照射する制御を行う制御部とを備える、ロボットシステム。
【請求項2】
前記制御部は、加工軌跡作成装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の情報および前記レーザ照射部の移動情報に基づいて、前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記ロボットの動作を教示するための教示装置をさらに備え、
前記制御部は、前記加工軌跡作成装置としての前記教示装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の情報および前記レーザ照射部の移動情報に基づいて、前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記ロボットの動作を教示するための教示装置をさらに備え、
前記制御部は、前記教示装置とは異なる前記加工軌跡作成装置としての外部装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の情報および前記レーザ照射部の移動情報に基づいて、前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記外部装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の情報を受け付ける受付部をさらに備え、
前記制御部は、前記受付部により受け付けられた前記任意形状の加工軌跡の情報および前記レーザ照射部の移動情報に基づいて、前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記受付部は、前記外部装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の情報を可搬型記録媒体を介して受け付け可能な記録媒体読取部である、請求項5に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記外部装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の基準位置および基準方向が前記教示装置により教示されており、
前記制御部は、前記任意形状の加工軌跡の情報と前記教示装置により教示された前記基準位置および前記基準方向とに基づいて、前記任意形状の加工軌跡に対応する加工位置の情報を取得し、取得した前記加工位置に前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項4〜6のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記外部装置は、外部情報端末装置である、請求項4〜7のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記任意形状は、異なる線種の組み合わせからなる形状である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記制御部は、前記レーザ照射部が移動しているか否かに拘わらず、前記任意形状の加工軌跡に対応する加工位置が前記レーザ照射部により前記レーザ光を照射可能な加工範囲内に位置するか否かを判断し、前記加工位置が前記加工範囲内に位置する場合に前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項11】
前記制御部は、前記レーザ照射部が移動している際に、前記任意形状の加工軌跡の基準位置が前記レーザ照射部の所定範囲内に位置するか否かを判断し、前記基準位置が前記所定範囲内に入った場合に、前記加工位置が前記加工範囲内に位置するか否かを判断する制御を開始するように構成されている、請求項10に記載のロボットシステム。
【請求項1】
ロボットと、
前記ロボットにより移動され、加工対象物に対してレーザ光を照射するレーザ照射部と、
任意形状の加工軌跡の情報および前記レーザ照射部の移動情報に基づいて、前記レーザ照射部により前記レーザ光を照射する制御を行う制御部とを備える、ロボットシステム。
【請求項2】
前記制御部は、加工軌跡作成装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の情報および前記レーザ照射部の移動情報に基づいて、前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記ロボットの動作を教示するための教示装置をさらに備え、
前記制御部は、前記加工軌跡作成装置としての前記教示装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の情報および前記レーザ照射部の移動情報に基づいて、前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記ロボットの動作を教示するための教示装置をさらに備え、
前記制御部は、前記教示装置とは異なる前記加工軌跡作成装置としての外部装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の情報および前記レーザ照射部の移動情報に基づいて、前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記外部装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の情報を受け付ける受付部をさらに備え、
前記制御部は、前記受付部により受け付けられた前記任意形状の加工軌跡の情報および前記レーザ照射部の移動情報に基づいて、前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記受付部は、前記外部装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の情報を可搬型記録媒体を介して受け付け可能な記録媒体読取部である、請求項5に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記外部装置を用いて作成された前記任意形状の加工軌跡の基準位置および基準方向が前記教示装置により教示されており、
前記制御部は、前記任意形状の加工軌跡の情報と前記教示装置により教示された前記基準位置および前記基準方向とに基づいて、前記任意形状の加工軌跡に対応する加工位置の情報を取得し、取得した前記加工位置に前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項4〜6のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記外部装置は、外部情報端末装置である、請求項4〜7のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記任意形状は、異なる線種の組み合わせからなる形状である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記制御部は、前記レーザ照射部が移動しているか否かに拘わらず、前記任意形状の加工軌跡に対応する加工位置が前記レーザ照射部により前記レーザ光を照射可能な加工範囲内に位置するか否かを判断し、前記加工位置が前記加工範囲内に位置する場合に前記レーザ光を照射する制御を行うように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項11】
前記制御部は、前記レーザ照射部が移動している際に、前記任意形状の加工軌跡の基準位置が前記レーザ照射部の所定範囲内に位置するか否かを判断し、前記基準位置が前記所定範囲内に入った場合に、前記加工位置が前記加工範囲内に位置するか否かを判断する制御を開始するように構成されている、請求項10に記載のロボットシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−218029(P2012−218029A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86135(P2011−86135)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]