ロボットハンド
【課題】平面上に載置された物体を持ち上げるように把持する把持動作を、適切に行うことを可能とするロボットハンドを提供すること。
【解決手段】物体を把持するための屈曲動作を行う指本体を備えるロボットハンドにおいて、指本体の先端部に弾力性を備える薄板状の爪部を取り付けるとともに、この爪部を、指本体の先端部の腹部側に取り付けることで、指本体が屈曲動作を行って物体を把持する際に、爪部により指本体が物体の底面と平面との間に挿入可能とし、把持動作を行うことができるようにした。
【解決手段】物体を把持するための屈曲動作を行う指本体を備えるロボットハンドにおいて、指本体の先端部に弾力性を備える薄板状の爪部を取り付けるとともに、この爪部を、指本体の先端部の腹部側に取り付けることで、指本体が屈曲動作を行って物体を把持する際に、爪部により指本体が物体の底面と平面との間に挿入可能とし、把持動作を行うことができるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の把持を行うロボットハンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体を把持するためのロボットハンドは、通常、人間が日常的に使用する物体を、幅広く把持可能にするように設計されるため、把持対象となる物体としては、ある程度の重量のある物体が選択される。そのような重量のある物体を把持するためには、ロボットハンドの指本体にある程度の剛性を持たせなければならず、一般的には、ロボットハンドの指本体の太さは、人間の指と略同程度の太さに設計される。
【0003】
また、指本体を屈曲させて把持動作を行う場合に、指本体の表面と把持対象の物体との相対角度をできるだけ変化させないようにするために、ロボットハンドの指本体の表面は、略球面状の曲面に形成される場合が多い。
【0004】
このようなロボットハンドの一例として、たとえば特許文献1に記載されたロボットハンドのように、指本体の先端に突出する爪部を設けた、人間の指を模した構成を備えるロボットハンドが挙げられる。このロボットハンドにおいては、指本体の先端に設けられた爪部が、出し入れ自在となるようにバネ部材を介して指本体に取り付けられており、これによって、把持対象となる物体の大きさや形状などに応じて、物体を把持する際に物体表面に接触させる指本体の部位を使い分けることで、様々な把持動作を行うことを可能にしている。
【0005】
また、特許文献2に開示されたロボットハンドは、柔軟な指本体と、硬い爪部とを有するものであり、指本体の柔軟性を向上させるとともに、爪部の支えにより、指本体にある程度の剛性を持たせ、物体を把持する動作を安定させている。
また、近年においては、薄板状の物体を把持するための特別な構造を備えたロボットハンドも開発されており、たとえば、特許文献3においては、薄板状の物体を把持するために特別に設計された、先端に爪部を有する指構造を備えたロボットハンドが開示されている。同じく、特許文献4に開示されたロボットハンドは、たわみを生じる大型の基板を搬送するためのロボットハンドであり、把持する基板がたわむのを避けるために、指本体の表面が湾曲した断面形状に形成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−335035号公報
【特許文献3】特開平10−192346号公報
【特許文献3】特開平9−285987号公報
【特許文献4】特開2003−62786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のようなロボットハンドは、物体を把持する動作を行うことができるが、特定の条件下において、物体を把持する動作が困難な場合がある。たとえば、このようなロボットハンドでは、床などの平面上に載置された、比較的厚みの薄い板状の物体や箱状の物体を把持する動作は比較的難しい。なぜならば、このような物体をロボットハンドに把持させる場合、物体表面に指本体で挟んで直接把持させなければならず、そのような把持動作を実行するための制御は非常に難しいためである。そのため、このような物体を把持する場合は、物体の底面と平面との間に指本体を挿入し、指本体を屈曲させることで、平面から物体を浮かせるように物体を把持するような把持動作を行う必要がある。
【0008】
しかしながら、このような把持動作を行う場合、前述のように、ロボットハンドの指本体がある程度の太さを有しているとともに、その表面が球面状に形成されていると、物体と平面との間に指本体を挿入させることは困難となる。そのため、前述のロボットハンドのように、指本体の先端に爪部を設け、この爪部を平面と物体との間に挿入させることで把持動作を行うことも考えられる。しかしながら、指本体に硬い材質で構成された爪部を設けた場合、把持動作を行う際に硬い爪部が平面に接触し、平面上を引っ掻くことになり、うまく把持動作を行うことができない。そのような事態を回避するために、ゴムやプラスチックなどで形成された、ある程度の弾力性を持たせた爪部を用いたとしても、平面と物体との間に爪部を挿入した状態で物体を持ち上げると、爪部が物体の重量を支えきることができない。また、物体の重量により、爪部が指本体から剥がれるといった事態が生じることもある。
【0009】
また、前述のような平面に載置された物体を把持するために、指本体により挟み込む以外の手法、たとえば吸着などの手法で物体を持ち上げるといった手段も考えられる。しかしながら、ロボットハンドにこのような吸着を行うための機構を組み込むことで、ロボットハンドが大型化するといった欠点が生じるため、ロボットハンドの設計上、好ましくない。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、平面上にある物体を持ち上げるように把持する把持動作を、適切に行うことができるロボットハンドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるロボットハンドは、平面上に載置された物体を把持するためのロボットハンドであって、物体を把持するための屈曲動作を行う指本体と、前記指本体の先端部の腹部側において、指本体の先端部から突出するように取り付けられた弾力性を備える薄板状の爪部と、を備えることを特徴としている。
【0012】
このように構成されたロボットハンドによれば、指本体の先端部に設けられた前記指本体を把持対象の物体の底面に向けて近接させると、前記爪部が平面に接触することで撓み、物体の底面と平面との間に入り込むことができる。そして、この状態で指本体を屈曲させると、爪部が物体の底面と平面との間に徐々に挿入し、爪部が物体の底面を支持した状態で指本体をさらに屈曲させると、爪部が指本体を物体の底面と平面との間に挿入させるような、ガイドの役割を果たす。したがって、指本体がある程度の太さを備え、または指本体を摩擦係数の大きい材質で形成したとしても、物体の底面を支持する位置に指本体が簡単に到達でき、把持動作を適切に行うことが可能になる。
【0013】
なお、前記爪部としては、指本体の外側に屈曲する方向について曲がり難くすると、より好適である。このような爪部の構成としては、薄板状に構成された弾力性を備える爪部において、一方向のみに大きな剛性を備えるような材料を選択し、把持する物体の重量を支えることができるようにしてもよいが、爪部の指本体先端における取り付け位置を選択することで、このような剛性を持たせることもできる。詳細には、このようなロボットハンドにおいて、前述のように、爪部を指本体の外側ではなく、腹部側に取り付けると、爪部に適切な剛性を与えやすくなる。すなわち、指本体の腹部側(屈曲動作を行う際における指本体の内側)に弾力性を備える薄板状の爪部を取り付けると、爪部が平面に接触した状態で指本体を屈曲させた場合、爪部は平面の表面形状に沿って湾曲することが可能となる。
【0014】
一方、指本体の腹部側に爪部を取り付けた場合、爪部は指本体の外側に屈曲する方向については湾曲しづらくなるため、このようにすると、爪部のみで把持対象の物体を把持することも可能となる。
【0015】
なお、このようなロボットハンドとしては、指本体の腹部表面に薄板上の爪部を貼り付け、爪部が、指本体の表面からその厚みの分だけ突出しているような構造であってもよいが、爪部の表面が指本体の腹部表面と同一面を形成するように構成されていてもよい。このようにすると、指本体の先端部の内側(腹部)に凹凸が形成されないため、指先先端で物体を把持するための制御を簡単に構築することができる。
【0016】
なお、前述のような、爪部の表面と指本体の腹部表面とが同一面を形成するような構造としては、指本体の腹部に爪部の幅および厚みと略同一の大きさの溝部を形成し、爪部の一方の端部をこの溝部に嵌め込むことで、指本体表面と爪部の表面とを同一面に形成する構造などが考えられる。このようにすると、爪部の表面と指本体の腹部表面とを同一面に形成するような構造を簡単に形成することができる。
【0017】
また、このようなロボットハンドにおいて、指本体の先端で物体を把持すると、指本体が物体を押す力により、爪部が外側に湾曲する。これによって、湾曲した爪部を介して指本体による把持動作を行うことができる。
【0018】
このとき、前述のように、指本体の先端部分に形成された溝部が爪部の厚さよりも深くなるように設計されていてもよい。このようにすると、爪部が湾曲した際に、爪部が溝部の内部に沈み、指本体先端の表面が爪部表面から突出するため、物体を把持する際に、指本体先端の表面を把持対象の物体に直接接触させることができる。このように構成されたロボットハンドの場合、たとえば、爪部を形成する材質が特に制限されることがなく、指本体の先端を適度な摩擦力(摩擦係数)を備える材質で構成するのみで、物体を適切に把持することが可能となるといった効果が得られる。
【0019】
また、このようなロボットハンドにおいて、指本体の腹部に固定された爪部の一部分における、形状変化を検出する検出部をさらに設けてもよい。このような検出部を設けると、爪部が把持対象の物体に接触する際に生じる爪部の形状変化により、把持対象の物体の形状を認識することができる。また、このようなロボットハンドは、把持動作を行わない場合であっても、指本体の先端に弾力性のある爪部が突出していることで、指本体よりも爪部が外部の物体に対して接触しやすいため、該爪部を物体感知を行う接触センサとして利用することもできる。このような検出部の例としては、例えばひずみゲージなどの比較的小型かつ安価で、応答性がよく、特に複雑な制御を必要としないセンサ類が好適に用いられる。
【0020】
また、このような検出部をロボットハンドに設ける場合、このような検出部を備える爪部を、1つの指本体に対して複数設けるように構成してもよい。このようにすると、把持動作を行った際に生じる各爪部の形状変化から、把持対象の物体の複数箇所における表面形状を認識することができるため、把持対象の物体の表面形状をより正確に把握することが可能となる。
【0021】
また、上記のロボットハンドは、平面上にある物体を持ち上げるように把持する把持動作を適切に行うために、弾力性のある薄板状の爪部を指本体の腹部側に取り付けたロボットハンドを提案しているが、これに代えて、爪部の形状により、把持動作を適切に行うようにしてもよい。すなわち、前述の爪部の形状を、指本体の外側に屈曲する方向についての弾力性を、指本体の内側に屈曲する方向についての弾力性よりも小さくするように構成することで、把持動作を適切に行うことも可能である。具体的には、前記爪部の断面形状を、指本体の外側に屈曲する方向に凸となるように湾曲させたものにすると、前述のように、指本体の外側に屈曲する方向について曲がりにくい構造を比較的簡単に与えることが可能となる。
【0022】
このようなロボットハンドによると、爪部を平面上に載置された物体の底面に対して入り込ませた後、指本体を屈曲させることで爪部のみを該物体の底面に挿入すると、爪部の外側方向についての弾力性が小さいため、爪部の剛性のみで物体を持ち上げるように把持することができる。なお、外側方向についての剛性を備えるように爪部を構成するために、爪部の断面が所定の曲率中心を持つ円弧状に形成されることが好ましい。このようにすると、弾力性のある薄板状の爪部を用いた場合であっても、外側方向についてある程度の剛性を持たせることが可能となる。
【0023】
なお、このような爪部を指本体に対して取りつける取り付け位置としては、指本体の腹部側であっても外側であってもよいが、爪部が指本体の腹部側(内側)に取り付けられた場合、指本体の先端で直接物体を把持することが困難になる。そのため、指本体の先端による通常の把持動作を可能とするためには、このような爪部を指本体の外側に取り付けることが好ましい。この場合、指本体の外側表面に取り付ける必要は必ずしもなく、外側に向けて凸となるように湾曲した爪部の内側曲面が、指本体の腹部表面より窪んだ場所に位置するように爪部を取り付ければよい。
【0024】
なお、前述のように爪部の内側曲面を指本体の腹部表面よりも窪んだ場所に位置させた場合、爪部の指本体の腹部側における端面(内側曲面の両側に位置する端面)を、指本体の腹部表面と同一面を形成するように、または腹部表面から突出するように、指本体に取り付けてもよい。このように爪部を取り付けた場合、通常の物体把持を指本体の先端で行うことが可能になるとともに、爪部を平面に配置された物体の底面に挿入した状態で指本体を屈曲させると、爪部が物体の底面と平面との間に挿入した後、指本体が物体底面と平面との間に挿入するようにガイドされるため、物体の底面を指本体で支持するように把持動作を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明したように、本発明によると、ロボットハンドによって、平面上にある物体を持ち上げるように把持する把持動作を、適切に行わせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明の実施形態1.
以下に、図を参照しつつ本発明の実施の形態1に係るロボットハンドについて説明する。図1は、本実施形態1にかかるロボットハンド10が平面F上に載置された物体Mを把持する動作を行う前の様子を概略的に示す図である。
【0027】
図1に示すロボットハンド10は、図示しないアーム部の先端に取り付けられており、指本体11,12により物体を把持した状態で該アーム部を上下方向に動かすことで、物体を持ち上げて移動させることができる。なお、図示は省略するが、ロボットハンド10いおよびアーム部は、所定のCPU等を備えるコンピュータからなる制御部により、その動作が制御されているものとする。
【0028】
図1に示すように、ロボットハンド10は、人間でいう甲に相当するベース部10aに対して、2つの指本体11,12が軸部材100を介して取り付けられている。指本体11、12は、この軸部材110を中心に回動し、互いに近接離間するように移動することで、物体をこれらの指本体で挟み込むような把持動作を行うことができる。なお、指本体11,12やアーム部を移動させるためのモータ等の駆動源については、図示を省略するものとする。
【0029】
指本体11および12は、ほぼ同様の構成を備えるものであり、軸部材110に取り付けられた第一の節部11aおよび12aに対して、各々第二の節部11b、12bが軸部材110,120を介して接続されている。これらの第二の節部11b、12bは各々の軸部材を中心に回動し、第一の節部に対する相対的な位置が変化する。このように、第二の節部が第一の節部に対して相対的な位置を変化することで、指本体11,12の屈曲動作が行われる。なお、これらの指本体11,12の屈曲動作を行う方向については、第一の節部と第二の節部のなす角度が小さくなるように互いに近接する方向を内側、第一の節部と第二の節部のなす角度が大きくなるように互いに離間する方向を外側と定義するものとする。
【0030】
第一の節部は、第二の節部に比べてやや長く薄い細板状の部材から構成されており、第二の節部は、先端および腹部(第二の節部の内側表面)がやや丸みを帯びた球面形状に構成されている。また、第二の節部は、物体を把持するために必要な適度な剛性を備えるとともに、物体を把持する際に物体表面と第二の節部先端との間に適度な摩擦力が発生するように、摩擦係数がある程度大きな材質が選択されている。また、必要に応じて、第二の節部の先端にある程度の弾力性を持たせるような材質を選択してもよい。
【0031】
第二の節部11b、12bの先端内側(腹部)においては、各々爪部21、22が取り付けられている。これらの爪部の詳細を説明するために、第二の節部11bに取り付けられた爪部21の概要を図2に示す。なお、指本体11に取り付けられた爪部21と、指本体12に取り付けられた爪部22とはほぼ同様の構成を備えているものであるため、以下においては爪部21の構成についてのみ説明し、爪部22の構成についての説明は省略するものとする。
【0032】
図2に示すように、爪部21は、平面視略矩形状の弾力性を備える薄板状の部材、具体的には、やや柔らかいプラスチックなどの材質から構成された薄板で構成されている。この爪部21の厚さは特に制限されるものではなく、後述するように、平面に載置された物体の底面に挿入可能な、ある程度の薄さを備えていればよい。
【0033】
また、爪部21は、端部が第二の節部11bの腹部(内側)表面に貼り付けられるとともに、他端が第二の節部11b先端から突出するように取り付けられている。なお、第二の節部に対して爪部を貼り付けるための手法としては、接着剤による接着や、ビスなどの固定部材による固定など、必要に応じて適宜選択することができる。
【0034】
このように構成された爪部は、貼り付けられた部分を支点として、指本体を内側および外側に屈曲させる方向について、ある程度の撓みを許容するような弾力性を有する。具体的には、爪部21の先端が平面Fに押し付けられるように接触すると、爪部21は、指本体が内側に屈曲する方向について、平面Fの形状に沿った角度に弾性的に撓む。すなわち、爪部21が平面Fに接触した際に、爪部21が平面Fを傷つけることはない。また、このように爪部21が指本体の内側に取り付けられているため、外部の人間や物体に対して接触する可能性が低く、安全性が保たれているという効果も得られる。一方、指本体を外側に屈曲させる方向については、やや弾力性が小さくなるものの、爪部は外側へ湾曲するような形状変化を行うことも可能である。
【0035】
このように構成されたロボットハンド10によれば、平面F上に載置された物体Mに対して、指本体および爪部を物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入することができる。以下、図3を用いて指本体11に取り付けられた爪部21の動きについて、詳細に説明する。
【0036】
図3(a)に示すように、指本体11が平面Fに対して近接するように下降し、図3(b)に示すように爪部21を平面Fに対して下方に向けて接触させると、前述したように、指本体11の第二の節部11bの先端から突出した爪部21が内側に向けて弾性的に撓み、平面Fの表面に沿った形状に変形する。この状態で、指本体11が内側に向けて屈曲すると、図3(c)に示すように、爪部21が物体Mの底面の奥に入り込む方向に移動し、その結果、物体Mの底面と平面Fの表面との間に爪部21の先端が挿入される。
【0037】
この状態で、さらに指本体11の屈曲動作を継続すると、図3(d)に示すように、爪部21が物体Mと平面Fの表面との間にさらに入り込み、物体Mの底面が爪部21の表面を滑り、指本体11(第二の節部11b)の内側まで爪部21にガイドされるように到達することで、指本体11も物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入することができる。このように、爪部21および指本体11が平面F上に載置された物体Mの底面の下に入り込むことで、物体Mを下方から支持することができる。
【0038】
次に、このようなロボットハンド10が、平面F上に載置された物体Mを把持し、持ち上げる様子を図4を用いて説明する。
【0039】
図4(a)は、指本体11,12の先端から突出した爪部21、22が、指本体の屈曲動作により物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入された状態を示している。この状態から、さらに指本体の第二の節部を第一の節部に近接させる方向(すなわち、内側方向)に屈曲させると、図4(b)に示すように、爪部にガイドされた指本体が物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入され、物体Mが平面Fから持ち上がる。
【0040】
この状態から、さらに指本体の第二の節部を、第一の節部に近接するように内側に向けて屈曲させると、図4(c)に示すように、物体Mが完全に持ち上がる。これによって、指本体による物体Mの把持動作が終了する。このとき、物体Mは爪部のみで支持していても、指本体の先端(第二の節部の先端)で支持していても、またはこれらの両者で支持していてもよい。このように、物体Mを把持した状態でロボットハンド10を上昇させると、物体Mを平面Fから持ち上げることができる。
【0041】
また、前述の例においては、平面上に載置された物体Mに対して、物体Mの底面に爪部を挿入させることで、指本体により物体Mの底面を支持するように把持する例を挙げて説明したが、このようなロボットハンドは、通常の指本体の先端で物体を把持する把持動作を行うこともできる。以下、図5を用いて説明する。
【0042】
図5は、前述のロボットハンド10が指本体(第二の節部)の先端で物体を把持する様子を示す図である。図5に示すように、ロボットハンド10が、指本体の先端で物体M'を把持する場合、爪部が指本体の先端内側に取り付けられているため、爪部21,22が把持対象の物体に接触すると、指本体11,12の屈曲動作に対して外側に向けて弾力的に撓む。この状態から、さらに指本体の第二の節部11b,12bを内側へ屈曲させると、爪部21,22は球面状の第二の節部先端の形状に沿って折れ曲がる。これによって、指本体の先端が爪部を介して物体を挟み込み、物体を把持することができる。このような把持動作を適切に行うためには、爪部の材質として、外側に向けて撓み、指本体の先端形状に沿った形に変形可能な程度の弾性を十分に備えるものを選択することが好ましい。
【0043】
なお、本実施形態においては、爪部が指本体の先端の腹部(内側)表面に貼り付けられるように取り付けられた例を挙げて説明しているが、これに代えて、爪部が指本体の先端の表面と同一面を形成するように設けられていてもよい。そのような実施形態について、図6および図7を用いて以下に詳細に説明する。
【0044】
発明の実施形態2.
図6は、前述のロボットハンドにおける指本体および爪部の構造を変形した、他の実施形態を示すものである。なお、この実施形態において、ロボットハンドを構成する構成要素のうち、前述の実施形態と同様の構成要素については同一または同様の符号を付して、図示および説明を省略するものとする。
【0045】
図6に示すように、指本体の第二の節部11b'の腹部(内側)表面には、爪部21の幅および厚さと略同一の幅と深さを備えた、平面視略矩形状の溝部115が形成されている。そして、同じく平面視略矩形状の爪部21の一端がこの溝部115の中に嵌め込まれ、嵌めこまれた部分が溝部内において固定されているとともに、固定されていない爪部21の他端が第二の節部11b'の先端から突出している。爪部21は、溝部115に嵌めこまれた部分が溝部115の底面に固定された結果、第二の節部から突出した部分のみが爪部21の弾力性により撓むことができるものとする。なお、爪部21の厚さと、溝部115の深さは略同一に形成されており、溝部115に嵌めこまれた爪部21の表面は、指本題の第二の節部11b'の表面(内側表面)とほぼ同一面を形成している。
【0046】
このように構成されたロボットハンドにおいては、指本体の第二の節部の表面から爪部が突出しておらず、同一面に形成されているため、指本体の先端表面で物体を把持する際に、爪部の形状などを考慮せずに把持動作を行うことが可能になる。
【0047】
なお、本実施形態で説明したロボットハンドにおいても、指本体の先端で物体の把持動作を行うことができる。この場合においても、物体を指本体の先端で物体を把持する際に、前述の実施形態と同様に、爪部が外側に対して折れ曲がり、指本体の先端の形状に沿うように撓むため、爪部を介して指本体の先端で物体を把持することができる。
【0048】
また、このような指本体先端に溝を設けたロボットハンドにおいては、指本体(第二の節部)の表面を直接物体に接触させることができるため、指本体で直接物体の把持を行うこともできる。しかしながら、このように指本体で直接物体の把持を行う場合、爪部が物体に接触し、物体の把持動作に影響を与える場合がある。そのため、爪部の表面だけでなく、指本体の表面を物体に接触させて把持するためには、図7(a)に示すように、指本体の第二の節部11b"に設ける溝部115'の形状を、指本体の先端部分において、爪部21の厚さよりも深く形成するとより好適である。この場合、指本体の溝部の端部のみに爪部を固定することで、指本体の先端で物体を把持する場合に、図7(b)に示すように、爪部21が指本体の第二の節部11b"表面よりも下方に沈むように外側に湾曲する。したがって、このように爪部が外側に撓んだ際に、爪部が把持対象の物体に接触することがなく、第二の節部の先端表面が物体に直接接触した状態で、物体の把持を行うことができる。このようにすると、たとえば、爪部を介して物体を把持する必要がなくなるため、爪部の表面における摩擦係数等を考慮することなく、指本体による把持を行うことが可能となるという効果が得られる。なお、溝部をこのように形成する場合、溝部の深さは、指本体の先端部分付近のみを爪部の厚さよりも深くなるようにしてもよいし、溝部の深さが先端方向に向けて徐々に深くなるように形成してもよい。
【0049】
発明の実施形態3.
次に、本発明における第3の実施形態について説明する。本実施形態においても、前述の実施形態において説明した構成と同一または同様の構成については同一または同様の符号を付して詳細な説明を省略するものとする。
【0050】
本実施形態に係るロボットハンドは、爪部の形状変化を検出する、歪みゲージなどの検出部を設け、この検出部により得られた検出信号に基づいて爪部の形状変化の度合いに基づいて把持対象となる物体の形状を判断することを可能とするものである。
【0051】
詳細には、図8に示すように、爪部21'の、指本体11の第二の節部11b先端から一部が突出するように取り付けられた端部付近において、歪みゲージなどのセンサからなる検出部210が埋め込まれている。この検出部は、爪部の撓みに起因して検出されるセンサ自体の歪みなどを検出し、検出した値に基づく検出信号を、指本体に組み込まれた図示しない配線を介してロボットハンドを制御するための制御部(図示せず)に送信する。制御部は、受信した検出信号によって、爪部21'の形状変化の度合いを判断するとともに、指本体11が屈曲動作を行った度合いと、爪部21'の形状変化の度合いの関係とに基づいて、把持対象となる物体の形状を推定する。そして、推定した形状に基づいて、指本体の屈曲動作に必要な制御を修正し、これによって、より適切な把持動作を行うことが可能になる。
【0052】
また、このような爪部の形状変化を検出する検出部は、必ずしも物体の形状を推定するためだけに用いられるものではない。すなわち、ロボットハンドが物体の把持を行わない場合においては、爪部に物体が接触したことを感知するための接触センサとして利用することも可能である。このように、検出部を用いて把持対象となる物体の形状を判断する場合においては、爪部を1つの指本体に対して複数設けると、より好適である。このような実施形態を図9に示す。図9に示すロボットハンドは、複数の検出部211,212,213を各々備えた複数の爪部21"を、指本体の先端から突出するように貼り付けることで構成されている。そして、物体を把持する際に生じるこれらの爪部の形状変化を、前記検出部211,212,213からの検出信号により判断することによって、把持対象となる物体の表面形状をより詳細に知ることが可能となる。
【0053】
このような把持対象の物体の形状を知るための詳細な制御や演算処理については省略するが、各検出部から送信された信号を解析し、解析された結果から、所定時刻における各爪部の形状を求め、求めた爪部の形状から把持対象の物体形状を推定するなどの手法が好適に用いられる。なお、指本体の先端に複数の爪部を設ける場合は、これらの爪部の形状や材質などを同一のものとしてもよいが、必要に応じて、形状や材質などを異なるものとしてもよい。
【0054】
発明の実施形態4.
次に、本発明の更なる別の形態について説明する。前述した実施形態においては、ロボットハンドにおいて、爪部の取り付ける位置が指本体(第二の節部)先端の腹部(内側)である例を挙げて説明したが、本実施形態はそのような実施形態とは異なり、爪部が、内側に変形する方向と外側に変形する方向とで異なる弾力性を有するように、その形状に工夫を与えた実施形態である。なお、本実施形態において、前述の実施形態において説明した各構成と同一または同様の構成については、同一または類似する符号を付してその説明を省略するものとする。
【0055】
図10は、本実施形態におけるロボットハンド40の全体概略をを示しており、前述の実施形態と同様に、ベース部40aに対して、2つの指本体41,42が軸部材400を介して取り付けられている。指本体41と42とはほぼ同様の構成を備えており、軸部材400に取り付けられた第一の節部41aおよび42aに対して、各々第二の節部41b、42bが軸部材410,420を介して接続されている。これらの第二の節部41b、42bが、各軸部材を中心に回動するように第一の節部に対する相対的な位置が変化することで、ロボットハンド40を構成する各々の指本体は屈曲動作を行うことができる。なお、第一の節部および第二の節部は、前述の実施形態において説明した第一の節部および第二の節部とほぼ同様の構成を備えているため、ここでは詳細な構造については説明を省略するものとする。
【0056】
次に、ロボットハンド40に備えられた爪部51および52について説明する。第二の節部41b、42bの先端外側(背面)においては、各々爪部51、52が取り付けられている。これらの爪部の詳細な形状を説明するために、第二の節部41bに取り付けられた爪部51の概要を図11に示す。なお、指本体41に取り付けられた爪部51と、指本体42に取り付けられた爪部52とはほぼ同様の構成を備えているものであるため、ここでは爪部51についてのみ説明を行い、爪部52の構成についての説明は省略するものとする。
【0057】
図11に示すように、爪部51は、断面形状が略円弧状の湾曲した形状である薄板状の素材であり、この湾曲した部分のうち、凸となる部分を、指本体の外側、すなわち指本体が外側に屈曲する方向を向くように、第二の節部41bの外側に取り付けられている。爪部51は、ある程度の弾力性を備える素材、具体的には、ある程度の弾力性を備える、やや柔らかいプラスチックなどの材質などが好適に用いられる。また、爪部51は、載置された物体の底面に挿入できる程度の一定の薄さを備えているものし、さらに、適度な剛性を得るために、適切な厚さが選択されているものとする。さらに、爪部51は、第二の節部41bの先端から突出するように、その一部を接着剤による接着や、ビスなどの固定部材による固定手段を介して指本体(第二の節部41b)に取り付けられている。
【0058】
このように構成された爪部は、貼り付けられた部分を支点として、指本体を内側に屈曲させる方向についてある程度の撓みを許容するような弾力性を有する反面、外側については一定の剛性を有し、撓み難くなるような構造を備えている。すなわち、図12に示すように、このように構成された爪部は、内側に撓む方向については弾力性が大きく、外側に撓む方向については弾力性が小さくなる。したがって、爪部は内側については撓みやすく、外側に撓む方向に加えられた力に対してはある程度の大きさまでは抵抗できる。
【0059】
そして、弾性的にに撓むことができる爪部は、指本体が屈曲することにより、平面Fに載置された物体Mの底面の下にその先端が挿入される。このように、爪部が物体の底面の下に挿入された状態で指本体をさらに内側に屈曲させると、爪部は外方向への剛性を備えているため、物体の質量により爪部は外側に撓むことがなく、爪部51は物体を支えることができる。このように、爪部で物体を支持する手順を、図13および図14を用いて説明する。
【0060】
図13は、指本体41の第二の節部41bに取り付けられた爪部51が把持対象の物体の底面に挿入するまでの手順を説明する図であり、図13(a)に示すように、ロボットハンド40が物体の載置された平面に向かって下降するとし、爪部51の先端が平面Fに接触する。爪部51の先端が平面Fに接触すると、図13(b)に示すように、爪部51は内側(指本体が内側に屈曲する方向)に向かって平面Fの形状に沿うように弾性的に撓む。このとき、爪部21が平面Fに接触した際に、平面Fが爪部51により傷つけられることはない。
【0061】
この状態で、指本体41が内側に向けて屈曲動作を行うと、図13(c)示すように、物体Mの底面と平面Fの表面との間に爪部51の先端が挿入される。
【0062】
この状態で、さらに指本体41の屈曲動作を継続すると、図13(d)に示すように、爪部51がさらに物体Mと平面Fの表面との間に入り込む。このとき、爪部51は指本体の外側に取り付けられているため、指本体(第二の節部51b)の先端が物体Mに接触して停止し、指本体が物体Mの底面と平面Fの表面との間に入り込むことはないが、爪部51により物体Mを支持することができる。そのため、爪部51により物体を支持した状態で、物体Mを平面Fから持ち上げることができる。なお、図13(d)においては、指本体51の先端を物体Mに接触させ、指本体(第二の節部41b)の先端により物体Mの側面を支持するように把持動作を行うようにしているが、これに代えて、爪部51のみで物体Mを支持するようにしてもよい。
【0063】
次に、このようなロボットハンド40により、平面F上に載置された物体Mを把持し、持ち上げる様子を図14を用いて説明する。
【0064】
図14(a)は、指本体41,42の先端から突出した爪部51、52が、指本体の屈曲動作により物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入された状態を示している。この状態から、さらに指本体の第二の節部を第一の節部に近接するように内側に向けて屈曲させると、図14(b)に示すように、爪部が物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入され、物体Mが平面Fから持ち上がる。そして、この状態からさらに指本体の第二の節部を第一の節部に近接するように屈曲させると、指本体41および42の先端が物体Mの側面を挟み込む。このように、物体Mを指本体の先端で挟み込んだまま、さらに指本体を屈曲させると、図14(c)に示すように、物体Mの底面が爪部51,52に支えられ、かつ、その側面が指本体41,42に挟み込まれるように把持した状態となり、物体Mが平面Fから上方に向けて完全に持ち上がる。このように、本実施形態にかかるロボットハンドによれば、爪部により物体の底面を支持するとともに、物体の側面を指本体で挟み込むような把持動作を行うことができる。
【0065】
以上、平面上に載置された物体Mに対して、物体Mの底面に爪部を挿入させて支持するとともに、指本体の先端で物体Mの側面を挟み込むように把持するような例を挙げて説明したが、このようなロボットハンドは、通常の指本体のみを用いた把持動作を行うこともできる。すなわち、図15に示すように、本実施形態に係るロボットハンドは、爪部51,52が指本体の第二の節部41b,42bの外側に取り付けられているため、指本体41,42の内側(腹部)で物体M'を支持する際に、爪部が物体M'に接触せず、把持動作に影響を与えることがない。
【0066】
また、本実施形態においては、このような指本体による把持動作、および指本体と爪部により物体を支持する把持動作を行う例を説明しているが、本実施形態においては、爪部のみを用いた把持動作を行うことも可能である。すなわち、爪部が指本体の先端からやや長く突出している場合、爪部のみを用いて物体を把持することも可能である。そして、このように爪部のみを用いて物体を把持する場合、特別な手順により簡単に把持動作を行うことも可能である。以下、図16を用いて詳細に説明する。
【0067】
図16は、やや厚みのある物体M'をロボットハンド40が把持する手順を示すものである。まず、ロボットハンド40が、指本体41,42の第二の節部41b,42bをやや近接させた状態で、物体M'に対して近接するように下降させる。なお、指本体41および42を近接させる度合いとしては、これらの指本体先端の間隔が、把持する対象の物体(物体M)の平面視による幅よりも若干小さくなるようにすると好ましい。なお、指本体を近接させる度合いは、図示しないカメラなどの撮像手段により物体Mの大きさを測定し、その測定した結果に基づいて定めるようにしてもよい。
【0068】
このように指本体の間隔をある程度開けた状態でロボットハンド40を下降させ、図16(a)に示すように、物体M'の上面に爪部51,52を接触させた状態でさらにロボットハンド40を下降させると、爪部51、52はともに物体Mの上面から半力を受けて内側に弾力的に撓み、物体M'の表面に沿った形状に変形する。そして、さらにロボットハンド40を下降させると、図16(b)に示すように、物体M'の表面形状に沿って変形した爪部51,52の先端が物体M'の底面に到達し、その後、爪部51、52の先端が物体M'の底面と平面Fの表面との間付近において、平面Fの形状に沿った形にやや撓んだ状態で停止する。
【0069】
そして、この状態から、指本体をやや内側に屈曲させつつロボットハンド40を上方に移動させると、図16(c)に示すように、物体M'の底面を爪部51,52で支持した状態で物体Mを持ち上げることができる。
【0070】
このようにすると、指本体を屈曲させる動作を最小限に抑え、ほぼロボットハンドの上下運動のみで物体を把持することが可能になる。このような把持動作は、把持対象の物体がある程度の剛性をもち、かつ、その形状が略均一である場合であって、把持対象の物体を移動させる場合に有効に用いることができる。すなわち、このように物体を把持し、移動させると、指本体を屈曲させる必要がなくなるため、比較的早く物体を移動させることが可能となるというメリットが得られる。
【0071】
なお、前述の実施形態は、指本体を物体の底面と平面との間に挿入させない把持動作を行うための例を示しているが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、爪部の形状を変化させることで、把持動作を行う際に、指本体を物体の底面と平面との間に挿入させることも可能である。以下、そのような実施形態を説明する。
【0072】
発明の実施形態5.
図17は、前述の実施形態に係るロボットハンドにおける、指本体および爪部の構造を変形した実施例を示している。なお、この実施形態においては、ロボットハンドにおける他の構成は前述の実施形態と同様の構成であるため、図示および説明を省略するものとする。
【0073】
図17に示すように、爪部51'は、断面形状が略円弧状の湾曲した形状である薄板状の素材であり、この湾曲した部分のうち、凸となる部分を、指本体の外側、すなわち指本体が外側に屈曲する方向を向くように、第二の節部41b'に取り付けられている。このとき、爪部51'は、指本体41(第二の節部41b')における腹部側の端面51aを、指本体の腹部表面と同一面を形成するように、指本体に取り付けられている。このようにすると、前述のように爪部51'が把持対象の物体の底面に挿入された後に、指本体を内側に屈曲させると、指本体の先端が物体の側面に接触することがないため、爪部51'にガイドされるように、指本体も物体の底面と平面との間に挿入することができる。これによって、物体の底面を指本体で支持するような把持動作を行うことができる。
【0074】
なお、上述の実施形態においては、爪部の端面51aが指本体の腹部表面と同一面を形成する例を挙げて説明したが、爪部の端面51aが腹部表面から突出するようにしてもよい。すなわち、爪部を挿入する際に、指本体(第二の節部)の先端が物体の側面に接触することが無いように、爪部の端面を指本体の腹部表面よりも突出するように構成することで、爪部の挿入が停止することなく、指本体を物体の底面と平面との間に挿入させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るロボットハンドが平面上に載置された物体を把持する動作を行う前の様子を概略的に示す図である。
【図2】図1に示すロボットハンドに設けられた爪部および指本体の先端の形状を概略的に示す図である。
【図3】図1に示すロボットハンドにおいて、爪部の取り付けられた指本体が平面上に載置された物体の底面に挿入される過程を示す図である。
【図4】図1に示すロボットハンドにより、平面上に載置された物体を把持する過程を示す図である。
【図5】図1に示すロボットハンドが、指本体の先端で物体を把持する様子を示す図である。
【図6】図1に示すロボットハンドの指本体および爪部の構造を変形させた、第2の実施形態を示す図である。
【図7】図6に示す実施形態において、溝部の形状の変化させた他の例を示す図である。
【図8】本発明にかかるロボットハンドの第3の実施形態であり、爪部の形状変化を検出するための検出部を設けた例を示す図である。
【図9】一つの指本体に対して複数の爪部を設け、これらの爪部に各々検出部を設けた他の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るロボットハンドが平面上に載置された物体を把持する動作を行う前の様子を概略的に示す図である。
【図11】図10に示すロボットハンドに設けられた爪部および指本体の先端の形状を概略的に示す図である。
【図12】図11に示すロボットハンドに設けられた爪部の内側方向および外側方向についての弾力性の違いを説明するための図である。
【図13】図10に示すロボットハンドにおいて、指本体に取り付けられた爪部が平面上に載置された物体の底面に挿入される過程を示す図である。
【図14】図10に示すロボットハンドが、平面上に載置された物体Mを把持する過程を示す図である。
【図15】図10に示すロボットハンドが、指本体の先端で物体M'を把持する様子を示す図である。
【図16】図10に示すロボットハンドが、爪部のみを用いて物体M'を把持する様子を示す図である。
【図17】図10に示すロボットハンドの指本体および爪部の構造を変形させた、第5の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
10,40 ・・・ロボットハンド
10a,40a ・・・ベース部
11,12,41,42 ・・・指本体
11a,12a,41a,42a ・・・第一の節部
11b,11b',12b,41b,41b',42b ・・・第二の節部
21,21',21",22,51,51',52 ・・・爪部
51a ・・・爪部の端面
115,115' ・・・溝部
210,211,212,213 ・・・検出部
M,M' ・・・把持対象の物体
F ・・・平面
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の把持を行うロボットハンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体を把持するためのロボットハンドは、通常、人間が日常的に使用する物体を、幅広く把持可能にするように設計されるため、把持対象となる物体としては、ある程度の重量のある物体が選択される。そのような重量のある物体を把持するためには、ロボットハンドの指本体にある程度の剛性を持たせなければならず、一般的には、ロボットハンドの指本体の太さは、人間の指と略同程度の太さに設計される。
【0003】
また、指本体を屈曲させて把持動作を行う場合に、指本体の表面と把持対象の物体との相対角度をできるだけ変化させないようにするために、ロボットハンドの指本体の表面は、略球面状の曲面に形成される場合が多い。
【0004】
このようなロボットハンドの一例として、たとえば特許文献1に記載されたロボットハンドのように、指本体の先端に突出する爪部を設けた、人間の指を模した構成を備えるロボットハンドが挙げられる。このロボットハンドにおいては、指本体の先端に設けられた爪部が、出し入れ自在となるようにバネ部材を介して指本体に取り付けられており、これによって、把持対象となる物体の大きさや形状などに応じて、物体を把持する際に物体表面に接触させる指本体の部位を使い分けることで、様々な把持動作を行うことを可能にしている。
【0005】
また、特許文献2に開示されたロボットハンドは、柔軟な指本体と、硬い爪部とを有するものであり、指本体の柔軟性を向上させるとともに、爪部の支えにより、指本体にある程度の剛性を持たせ、物体を把持する動作を安定させている。
また、近年においては、薄板状の物体を把持するための特別な構造を備えたロボットハンドも開発されており、たとえば、特許文献3においては、薄板状の物体を把持するために特別に設計された、先端に爪部を有する指構造を備えたロボットハンドが開示されている。同じく、特許文献4に開示されたロボットハンドは、たわみを生じる大型の基板を搬送するためのロボットハンドであり、把持する基板がたわむのを避けるために、指本体の表面が湾曲した断面形状に形成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−335035号公報
【特許文献3】特開平10−192346号公報
【特許文献3】特開平9−285987号公報
【特許文献4】特開2003−62786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のようなロボットハンドは、物体を把持する動作を行うことができるが、特定の条件下において、物体を把持する動作が困難な場合がある。たとえば、このようなロボットハンドでは、床などの平面上に載置された、比較的厚みの薄い板状の物体や箱状の物体を把持する動作は比較的難しい。なぜならば、このような物体をロボットハンドに把持させる場合、物体表面に指本体で挟んで直接把持させなければならず、そのような把持動作を実行するための制御は非常に難しいためである。そのため、このような物体を把持する場合は、物体の底面と平面との間に指本体を挿入し、指本体を屈曲させることで、平面から物体を浮かせるように物体を把持するような把持動作を行う必要がある。
【0008】
しかしながら、このような把持動作を行う場合、前述のように、ロボットハンドの指本体がある程度の太さを有しているとともに、その表面が球面状に形成されていると、物体と平面との間に指本体を挿入させることは困難となる。そのため、前述のロボットハンドのように、指本体の先端に爪部を設け、この爪部を平面と物体との間に挿入させることで把持動作を行うことも考えられる。しかしながら、指本体に硬い材質で構成された爪部を設けた場合、把持動作を行う際に硬い爪部が平面に接触し、平面上を引っ掻くことになり、うまく把持動作を行うことができない。そのような事態を回避するために、ゴムやプラスチックなどで形成された、ある程度の弾力性を持たせた爪部を用いたとしても、平面と物体との間に爪部を挿入した状態で物体を持ち上げると、爪部が物体の重量を支えきることができない。また、物体の重量により、爪部が指本体から剥がれるといった事態が生じることもある。
【0009】
また、前述のような平面に載置された物体を把持するために、指本体により挟み込む以外の手法、たとえば吸着などの手法で物体を持ち上げるといった手段も考えられる。しかしながら、ロボットハンドにこのような吸着を行うための機構を組み込むことで、ロボットハンドが大型化するといった欠点が生じるため、ロボットハンドの設計上、好ましくない。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、平面上にある物体を持ち上げるように把持する把持動作を、適切に行うことができるロボットハンドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるロボットハンドは、平面上に載置された物体を把持するためのロボットハンドであって、物体を把持するための屈曲動作を行う指本体と、前記指本体の先端部の腹部側において、指本体の先端部から突出するように取り付けられた弾力性を備える薄板状の爪部と、を備えることを特徴としている。
【0012】
このように構成されたロボットハンドによれば、指本体の先端部に設けられた前記指本体を把持対象の物体の底面に向けて近接させると、前記爪部が平面に接触することで撓み、物体の底面と平面との間に入り込むことができる。そして、この状態で指本体を屈曲させると、爪部が物体の底面と平面との間に徐々に挿入し、爪部が物体の底面を支持した状態で指本体をさらに屈曲させると、爪部が指本体を物体の底面と平面との間に挿入させるような、ガイドの役割を果たす。したがって、指本体がある程度の太さを備え、または指本体を摩擦係数の大きい材質で形成したとしても、物体の底面を支持する位置に指本体が簡単に到達でき、把持動作を適切に行うことが可能になる。
【0013】
なお、前記爪部としては、指本体の外側に屈曲する方向について曲がり難くすると、より好適である。このような爪部の構成としては、薄板状に構成された弾力性を備える爪部において、一方向のみに大きな剛性を備えるような材料を選択し、把持する物体の重量を支えることができるようにしてもよいが、爪部の指本体先端における取り付け位置を選択することで、このような剛性を持たせることもできる。詳細には、このようなロボットハンドにおいて、前述のように、爪部を指本体の外側ではなく、腹部側に取り付けると、爪部に適切な剛性を与えやすくなる。すなわち、指本体の腹部側(屈曲動作を行う際における指本体の内側)に弾力性を備える薄板状の爪部を取り付けると、爪部が平面に接触した状態で指本体を屈曲させた場合、爪部は平面の表面形状に沿って湾曲することが可能となる。
【0014】
一方、指本体の腹部側に爪部を取り付けた場合、爪部は指本体の外側に屈曲する方向については湾曲しづらくなるため、このようにすると、爪部のみで把持対象の物体を把持することも可能となる。
【0015】
なお、このようなロボットハンドとしては、指本体の腹部表面に薄板上の爪部を貼り付け、爪部が、指本体の表面からその厚みの分だけ突出しているような構造であってもよいが、爪部の表面が指本体の腹部表面と同一面を形成するように構成されていてもよい。このようにすると、指本体の先端部の内側(腹部)に凹凸が形成されないため、指先先端で物体を把持するための制御を簡単に構築することができる。
【0016】
なお、前述のような、爪部の表面と指本体の腹部表面とが同一面を形成するような構造としては、指本体の腹部に爪部の幅および厚みと略同一の大きさの溝部を形成し、爪部の一方の端部をこの溝部に嵌め込むことで、指本体表面と爪部の表面とを同一面に形成する構造などが考えられる。このようにすると、爪部の表面と指本体の腹部表面とを同一面に形成するような構造を簡単に形成することができる。
【0017】
また、このようなロボットハンドにおいて、指本体の先端で物体を把持すると、指本体が物体を押す力により、爪部が外側に湾曲する。これによって、湾曲した爪部を介して指本体による把持動作を行うことができる。
【0018】
このとき、前述のように、指本体の先端部分に形成された溝部が爪部の厚さよりも深くなるように設計されていてもよい。このようにすると、爪部が湾曲した際に、爪部が溝部の内部に沈み、指本体先端の表面が爪部表面から突出するため、物体を把持する際に、指本体先端の表面を把持対象の物体に直接接触させることができる。このように構成されたロボットハンドの場合、たとえば、爪部を形成する材質が特に制限されることがなく、指本体の先端を適度な摩擦力(摩擦係数)を備える材質で構成するのみで、物体を適切に把持することが可能となるといった効果が得られる。
【0019】
また、このようなロボットハンドにおいて、指本体の腹部に固定された爪部の一部分における、形状変化を検出する検出部をさらに設けてもよい。このような検出部を設けると、爪部が把持対象の物体に接触する際に生じる爪部の形状変化により、把持対象の物体の形状を認識することができる。また、このようなロボットハンドは、把持動作を行わない場合であっても、指本体の先端に弾力性のある爪部が突出していることで、指本体よりも爪部が外部の物体に対して接触しやすいため、該爪部を物体感知を行う接触センサとして利用することもできる。このような検出部の例としては、例えばひずみゲージなどの比較的小型かつ安価で、応答性がよく、特に複雑な制御を必要としないセンサ類が好適に用いられる。
【0020】
また、このような検出部をロボットハンドに設ける場合、このような検出部を備える爪部を、1つの指本体に対して複数設けるように構成してもよい。このようにすると、把持動作を行った際に生じる各爪部の形状変化から、把持対象の物体の複数箇所における表面形状を認識することができるため、把持対象の物体の表面形状をより正確に把握することが可能となる。
【0021】
また、上記のロボットハンドは、平面上にある物体を持ち上げるように把持する把持動作を適切に行うために、弾力性のある薄板状の爪部を指本体の腹部側に取り付けたロボットハンドを提案しているが、これに代えて、爪部の形状により、把持動作を適切に行うようにしてもよい。すなわち、前述の爪部の形状を、指本体の外側に屈曲する方向についての弾力性を、指本体の内側に屈曲する方向についての弾力性よりも小さくするように構成することで、把持動作を適切に行うことも可能である。具体的には、前記爪部の断面形状を、指本体の外側に屈曲する方向に凸となるように湾曲させたものにすると、前述のように、指本体の外側に屈曲する方向について曲がりにくい構造を比較的簡単に与えることが可能となる。
【0022】
このようなロボットハンドによると、爪部を平面上に載置された物体の底面に対して入り込ませた後、指本体を屈曲させることで爪部のみを該物体の底面に挿入すると、爪部の外側方向についての弾力性が小さいため、爪部の剛性のみで物体を持ち上げるように把持することができる。なお、外側方向についての剛性を備えるように爪部を構成するために、爪部の断面が所定の曲率中心を持つ円弧状に形成されることが好ましい。このようにすると、弾力性のある薄板状の爪部を用いた場合であっても、外側方向についてある程度の剛性を持たせることが可能となる。
【0023】
なお、このような爪部を指本体に対して取りつける取り付け位置としては、指本体の腹部側であっても外側であってもよいが、爪部が指本体の腹部側(内側)に取り付けられた場合、指本体の先端で直接物体を把持することが困難になる。そのため、指本体の先端による通常の把持動作を可能とするためには、このような爪部を指本体の外側に取り付けることが好ましい。この場合、指本体の外側表面に取り付ける必要は必ずしもなく、外側に向けて凸となるように湾曲した爪部の内側曲面が、指本体の腹部表面より窪んだ場所に位置するように爪部を取り付ければよい。
【0024】
なお、前述のように爪部の内側曲面を指本体の腹部表面よりも窪んだ場所に位置させた場合、爪部の指本体の腹部側における端面(内側曲面の両側に位置する端面)を、指本体の腹部表面と同一面を形成するように、または腹部表面から突出するように、指本体に取り付けてもよい。このように爪部を取り付けた場合、通常の物体把持を指本体の先端で行うことが可能になるとともに、爪部を平面に配置された物体の底面に挿入した状態で指本体を屈曲させると、爪部が物体の底面と平面との間に挿入した後、指本体が物体底面と平面との間に挿入するようにガイドされるため、物体の底面を指本体で支持するように把持動作を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明したように、本発明によると、ロボットハンドによって、平面上にある物体を持ち上げるように把持する把持動作を、適切に行わせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明の実施形態1.
以下に、図を参照しつつ本発明の実施の形態1に係るロボットハンドについて説明する。図1は、本実施形態1にかかるロボットハンド10が平面F上に載置された物体Mを把持する動作を行う前の様子を概略的に示す図である。
【0027】
図1に示すロボットハンド10は、図示しないアーム部の先端に取り付けられており、指本体11,12により物体を把持した状態で該アーム部を上下方向に動かすことで、物体を持ち上げて移動させることができる。なお、図示は省略するが、ロボットハンド10いおよびアーム部は、所定のCPU等を備えるコンピュータからなる制御部により、その動作が制御されているものとする。
【0028】
図1に示すように、ロボットハンド10は、人間でいう甲に相当するベース部10aに対して、2つの指本体11,12が軸部材100を介して取り付けられている。指本体11、12は、この軸部材110を中心に回動し、互いに近接離間するように移動することで、物体をこれらの指本体で挟み込むような把持動作を行うことができる。なお、指本体11,12やアーム部を移動させるためのモータ等の駆動源については、図示を省略するものとする。
【0029】
指本体11および12は、ほぼ同様の構成を備えるものであり、軸部材110に取り付けられた第一の節部11aおよび12aに対して、各々第二の節部11b、12bが軸部材110,120を介して接続されている。これらの第二の節部11b、12bは各々の軸部材を中心に回動し、第一の節部に対する相対的な位置が変化する。このように、第二の節部が第一の節部に対して相対的な位置を変化することで、指本体11,12の屈曲動作が行われる。なお、これらの指本体11,12の屈曲動作を行う方向については、第一の節部と第二の節部のなす角度が小さくなるように互いに近接する方向を内側、第一の節部と第二の節部のなす角度が大きくなるように互いに離間する方向を外側と定義するものとする。
【0030】
第一の節部は、第二の節部に比べてやや長く薄い細板状の部材から構成されており、第二の節部は、先端および腹部(第二の節部の内側表面)がやや丸みを帯びた球面形状に構成されている。また、第二の節部は、物体を把持するために必要な適度な剛性を備えるとともに、物体を把持する際に物体表面と第二の節部先端との間に適度な摩擦力が発生するように、摩擦係数がある程度大きな材質が選択されている。また、必要に応じて、第二の節部の先端にある程度の弾力性を持たせるような材質を選択してもよい。
【0031】
第二の節部11b、12bの先端内側(腹部)においては、各々爪部21、22が取り付けられている。これらの爪部の詳細を説明するために、第二の節部11bに取り付けられた爪部21の概要を図2に示す。なお、指本体11に取り付けられた爪部21と、指本体12に取り付けられた爪部22とはほぼ同様の構成を備えているものであるため、以下においては爪部21の構成についてのみ説明し、爪部22の構成についての説明は省略するものとする。
【0032】
図2に示すように、爪部21は、平面視略矩形状の弾力性を備える薄板状の部材、具体的には、やや柔らかいプラスチックなどの材質から構成された薄板で構成されている。この爪部21の厚さは特に制限されるものではなく、後述するように、平面に載置された物体の底面に挿入可能な、ある程度の薄さを備えていればよい。
【0033】
また、爪部21は、端部が第二の節部11bの腹部(内側)表面に貼り付けられるとともに、他端が第二の節部11b先端から突出するように取り付けられている。なお、第二の節部に対して爪部を貼り付けるための手法としては、接着剤による接着や、ビスなどの固定部材による固定など、必要に応じて適宜選択することができる。
【0034】
このように構成された爪部は、貼り付けられた部分を支点として、指本体を内側および外側に屈曲させる方向について、ある程度の撓みを許容するような弾力性を有する。具体的には、爪部21の先端が平面Fに押し付けられるように接触すると、爪部21は、指本体が内側に屈曲する方向について、平面Fの形状に沿った角度に弾性的に撓む。すなわち、爪部21が平面Fに接触した際に、爪部21が平面Fを傷つけることはない。また、このように爪部21が指本体の内側に取り付けられているため、外部の人間や物体に対して接触する可能性が低く、安全性が保たれているという効果も得られる。一方、指本体を外側に屈曲させる方向については、やや弾力性が小さくなるものの、爪部は外側へ湾曲するような形状変化を行うことも可能である。
【0035】
このように構成されたロボットハンド10によれば、平面F上に載置された物体Mに対して、指本体および爪部を物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入することができる。以下、図3を用いて指本体11に取り付けられた爪部21の動きについて、詳細に説明する。
【0036】
図3(a)に示すように、指本体11が平面Fに対して近接するように下降し、図3(b)に示すように爪部21を平面Fに対して下方に向けて接触させると、前述したように、指本体11の第二の節部11bの先端から突出した爪部21が内側に向けて弾性的に撓み、平面Fの表面に沿った形状に変形する。この状態で、指本体11が内側に向けて屈曲すると、図3(c)に示すように、爪部21が物体Mの底面の奥に入り込む方向に移動し、その結果、物体Mの底面と平面Fの表面との間に爪部21の先端が挿入される。
【0037】
この状態で、さらに指本体11の屈曲動作を継続すると、図3(d)に示すように、爪部21が物体Mと平面Fの表面との間にさらに入り込み、物体Mの底面が爪部21の表面を滑り、指本体11(第二の節部11b)の内側まで爪部21にガイドされるように到達することで、指本体11も物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入することができる。このように、爪部21および指本体11が平面F上に載置された物体Mの底面の下に入り込むことで、物体Mを下方から支持することができる。
【0038】
次に、このようなロボットハンド10が、平面F上に載置された物体Mを把持し、持ち上げる様子を図4を用いて説明する。
【0039】
図4(a)は、指本体11,12の先端から突出した爪部21、22が、指本体の屈曲動作により物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入された状態を示している。この状態から、さらに指本体の第二の節部を第一の節部に近接させる方向(すなわち、内側方向)に屈曲させると、図4(b)に示すように、爪部にガイドされた指本体が物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入され、物体Mが平面Fから持ち上がる。
【0040】
この状態から、さらに指本体の第二の節部を、第一の節部に近接するように内側に向けて屈曲させると、図4(c)に示すように、物体Mが完全に持ち上がる。これによって、指本体による物体Mの把持動作が終了する。このとき、物体Mは爪部のみで支持していても、指本体の先端(第二の節部の先端)で支持していても、またはこれらの両者で支持していてもよい。このように、物体Mを把持した状態でロボットハンド10を上昇させると、物体Mを平面Fから持ち上げることができる。
【0041】
また、前述の例においては、平面上に載置された物体Mに対して、物体Mの底面に爪部を挿入させることで、指本体により物体Mの底面を支持するように把持する例を挙げて説明したが、このようなロボットハンドは、通常の指本体の先端で物体を把持する把持動作を行うこともできる。以下、図5を用いて説明する。
【0042】
図5は、前述のロボットハンド10が指本体(第二の節部)の先端で物体を把持する様子を示す図である。図5に示すように、ロボットハンド10が、指本体の先端で物体M'を把持する場合、爪部が指本体の先端内側に取り付けられているため、爪部21,22が把持対象の物体に接触すると、指本体11,12の屈曲動作に対して外側に向けて弾力的に撓む。この状態から、さらに指本体の第二の節部11b,12bを内側へ屈曲させると、爪部21,22は球面状の第二の節部先端の形状に沿って折れ曲がる。これによって、指本体の先端が爪部を介して物体を挟み込み、物体を把持することができる。このような把持動作を適切に行うためには、爪部の材質として、外側に向けて撓み、指本体の先端形状に沿った形に変形可能な程度の弾性を十分に備えるものを選択することが好ましい。
【0043】
なお、本実施形態においては、爪部が指本体の先端の腹部(内側)表面に貼り付けられるように取り付けられた例を挙げて説明しているが、これに代えて、爪部が指本体の先端の表面と同一面を形成するように設けられていてもよい。そのような実施形態について、図6および図7を用いて以下に詳細に説明する。
【0044】
発明の実施形態2.
図6は、前述のロボットハンドにおける指本体および爪部の構造を変形した、他の実施形態を示すものである。なお、この実施形態において、ロボットハンドを構成する構成要素のうち、前述の実施形態と同様の構成要素については同一または同様の符号を付して、図示および説明を省略するものとする。
【0045】
図6に示すように、指本体の第二の節部11b'の腹部(内側)表面には、爪部21の幅および厚さと略同一の幅と深さを備えた、平面視略矩形状の溝部115が形成されている。そして、同じく平面視略矩形状の爪部21の一端がこの溝部115の中に嵌め込まれ、嵌めこまれた部分が溝部内において固定されているとともに、固定されていない爪部21の他端が第二の節部11b'の先端から突出している。爪部21は、溝部115に嵌めこまれた部分が溝部115の底面に固定された結果、第二の節部から突出した部分のみが爪部21の弾力性により撓むことができるものとする。なお、爪部21の厚さと、溝部115の深さは略同一に形成されており、溝部115に嵌めこまれた爪部21の表面は、指本題の第二の節部11b'の表面(内側表面)とほぼ同一面を形成している。
【0046】
このように構成されたロボットハンドにおいては、指本体の第二の節部の表面から爪部が突出しておらず、同一面に形成されているため、指本体の先端表面で物体を把持する際に、爪部の形状などを考慮せずに把持動作を行うことが可能になる。
【0047】
なお、本実施形態で説明したロボットハンドにおいても、指本体の先端で物体の把持動作を行うことができる。この場合においても、物体を指本体の先端で物体を把持する際に、前述の実施形態と同様に、爪部が外側に対して折れ曲がり、指本体の先端の形状に沿うように撓むため、爪部を介して指本体の先端で物体を把持することができる。
【0048】
また、このような指本体先端に溝を設けたロボットハンドにおいては、指本体(第二の節部)の表面を直接物体に接触させることができるため、指本体で直接物体の把持を行うこともできる。しかしながら、このように指本体で直接物体の把持を行う場合、爪部が物体に接触し、物体の把持動作に影響を与える場合がある。そのため、爪部の表面だけでなく、指本体の表面を物体に接触させて把持するためには、図7(a)に示すように、指本体の第二の節部11b"に設ける溝部115'の形状を、指本体の先端部分において、爪部21の厚さよりも深く形成するとより好適である。この場合、指本体の溝部の端部のみに爪部を固定することで、指本体の先端で物体を把持する場合に、図7(b)に示すように、爪部21が指本体の第二の節部11b"表面よりも下方に沈むように外側に湾曲する。したがって、このように爪部が外側に撓んだ際に、爪部が把持対象の物体に接触することがなく、第二の節部の先端表面が物体に直接接触した状態で、物体の把持を行うことができる。このようにすると、たとえば、爪部を介して物体を把持する必要がなくなるため、爪部の表面における摩擦係数等を考慮することなく、指本体による把持を行うことが可能となるという効果が得られる。なお、溝部をこのように形成する場合、溝部の深さは、指本体の先端部分付近のみを爪部の厚さよりも深くなるようにしてもよいし、溝部の深さが先端方向に向けて徐々に深くなるように形成してもよい。
【0049】
発明の実施形態3.
次に、本発明における第3の実施形態について説明する。本実施形態においても、前述の実施形態において説明した構成と同一または同様の構成については同一または同様の符号を付して詳細な説明を省略するものとする。
【0050】
本実施形態に係るロボットハンドは、爪部の形状変化を検出する、歪みゲージなどの検出部を設け、この検出部により得られた検出信号に基づいて爪部の形状変化の度合いに基づいて把持対象となる物体の形状を判断することを可能とするものである。
【0051】
詳細には、図8に示すように、爪部21'の、指本体11の第二の節部11b先端から一部が突出するように取り付けられた端部付近において、歪みゲージなどのセンサからなる検出部210が埋め込まれている。この検出部は、爪部の撓みに起因して検出されるセンサ自体の歪みなどを検出し、検出した値に基づく検出信号を、指本体に組み込まれた図示しない配線を介してロボットハンドを制御するための制御部(図示せず)に送信する。制御部は、受信した検出信号によって、爪部21'の形状変化の度合いを判断するとともに、指本体11が屈曲動作を行った度合いと、爪部21'の形状変化の度合いの関係とに基づいて、把持対象となる物体の形状を推定する。そして、推定した形状に基づいて、指本体の屈曲動作に必要な制御を修正し、これによって、より適切な把持動作を行うことが可能になる。
【0052】
また、このような爪部の形状変化を検出する検出部は、必ずしも物体の形状を推定するためだけに用いられるものではない。すなわち、ロボットハンドが物体の把持を行わない場合においては、爪部に物体が接触したことを感知するための接触センサとして利用することも可能である。このように、検出部を用いて把持対象となる物体の形状を判断する場合においては、爪部を1つの指本体に対して複数設けると、より好適である。このような実施形態を図9に示す。図9に示すロボットハンドは、複数の検出部211,212,213を各々備えた複数の爪部21"を、指本体の先端から突出するように貼り付けることで構成されている。そして、物体を把持する際に生じるこれらの爪部の形状変化を、前記検出部211,212,213からの検出信号により判断することによって、把持対象となる物体の表面形状をより詳細に知ることが可能となる。
【0053】
このような把持対象の物体の形状を知るための詳細な制御や演算処理については省略するが、各検出部から送信された信号を解析し、解析された結果から、所定時刻における各爪部の形状を求め、求めた爪部の形状から把持対象の物体形状を推定するなどの手法が好適に用いられる。なお、指本体の先端に複数の爪部を設ける場合は、これらの爪部の形状や材質などを同一のものとしてもよいが、必要に応じて、形状や材質などを異なるものとしてもよい。
【0054】
発明の実施形態4.
次に、本発明の更なる別の形態について説明する。前述した実施形態においては、ロボットハンドにおいて、爪部の取り付ける位置が指本体(第二の節部)先端の腹部(内側)である例を挙げて説明したが、本実施形態はそのような実施形態とは異なり、爪部が、内側に変形する方向と外側に変形する方向とで異なる弾力性を有するように、その形状に工夫を与えた実施形態である。なお、本実施形態において、前述の実施形態において説明した各構成と同一または同様の構成については、同一または類似する符号を付してその説明を省略するものとする。
【0055】
図10は、本実施形態におけるロボットハンド40の全体概略をを示しており、前述の実施形態と同様に、ベース部40aに対して、2つの指本体41,42が軸部材400を介して取り付けられている。指本体41と42とはほぼ同様の構成を備えており、軸部材400に取り付けられた第一の節部41aおよび42aに対して、各々第二の節部41b、42bが軸部材410,420を介して接続されている。これらの第二の節部41b、42bが、各軸部材を中心に回動するように第一の節部に対する相対的な位置が変化することで、ロボットハンド40を構成する各々の指本体は屈曲動作を行うことができる。なお、第一の節部および第二の節部は、前述の実施形態において説明した第一の節部および第二の節部とほぼ同様の構成を備えているため、ここでは詳細な構造については説明を省略するものとする。
【0056】
次に、ロボットハンド40に備えられた爪部51および52について説明する。第二の節部41b、42bの先端外側(背面)においては、各々爪部51、52が取り付けられている。これらの爪部の詳細な形状を説明するために、第二の節部41bに取り付けられた爪部51の概要を図11に示す。なお、指本体41に取り付けられた爪部51と、指本体42に取り付けられた爪部52とはほぼ同様の構成を備えているものであるため、ここでは爪部51についてのみ説明を行い、爪部52の構成についての説明は省略するものとする。
【0057】
図11に示すように、爪部51は、断面形状が略円弧状の湾曲した形状である薄板状の素材であり、この湾曲した部分のうち、凸となる部分を、指本体の外側、すなわち指本体が外側に屈曲する方向を向くように、第二の節部41bの外側に取り付けられている。爪部51は、ある程度の弾力性を備える素材、具体的には、ある程度の弾力性を備える、やや柔らかいプラスチックなどの材質などが好適に用いられる。また、爪部51は、載置された物体の底面に挿入できる程度の一定の薄さを備えているものし、さらに、適度な剛性を得るために、適切な厚さが選択されているものとする。さらに、爪部51は、第二の節部41bの先端から突出するように、その一部を接着剤による接着や、ビスなどの固定部材による固定手段を介して指本体(第二の節部41b)に取り付けられている。
【0058】
このように構成された爪部は、貼り付けられた部分を支点として、指本体を内側に屈曲させる方向についてある程度の撓みを許容するような弾力性を有する反面、外側については一定の剛性を有し、撓み難くなるような構造を備えている。すなわち、図12に示すように、このように構成された爪部は、内側に撓む方向については弾力性が大きく、外側に撓む方向については弾力性が小さくなる。したがって、爪部は内側については撓みやすく、外側に撓む方向に加えられた力に対してはある程度の大きさまでは抵抗できる。
【0059】
そして、弾性的にに撓むことができる爪部は、指本体が屈曲することにより、平面Fに載置された物体Mの底面の下にその先端が挿入される。このように、爪部が物体の底面の下に挿入された状態で指本体をさらに内側に屈曲させると、爪部は外方向への剛性を備えているため、物体の質量により爪部は外側に撓むことがなく、爪部51は物体を支えることができる。このように、爪部で物体を支持する手順を、図13および図14を用いて説明する。
【0060】
図13は、指本体41の第二の節部41bに取り付けられた爪部51が把持対象の物体の底面に挿入するまでの手順を説明する図であり、図13(a)に示すように、ロボットハンド40が物体の載置された平面に向かって下降するとし、爪部51の先端が平面Fに接触する。爪部51の先端が平面Fに接触すると、図13(b)に示すように、爪部51は内側(指本体が内側に屈曲する方向)に向かって平面Fの形状に沿うように弾性的に撓む。このとき、爪部21が平面Fに接触した際に、平面Fが爪部51により傷つけられることはない。
【0061】
この状態で、指本体41が内側に向けて屈曲動作を行うと、図13(c)示すように、物体Mの底面と平面Fの表面との間に爪部51の先端が挿入される。
【0062】
この状態で、さらに指本体41の屈曲動作を継続すると、図13(d)に示すように、爪部51がさらに物体Mと平面Fの表面との間に入り込む。このとき、爪部51は指本体の外側に取り付けられているため、指本体(第二の節部51b)の先端が物体Mに接触して停止し、指本体が物体Mの底面と平面Fの表面との間に入り込むことはないが、爪部51により物体Mを支持することができる。そのため、爪部51により物体を支持した状態で、物体Mを平面Fから持ち上げることができる。なお、図13(d)においては、指本体51の先端を物体Mに接触させ、指本体(第二の節部41b)の先端により物体Mの側面を支持するように把持動作を行うようにしているが、これに代えて、爪部51のみで物体Mを支持するようにしてもよい。
【0063】
次に、このようなロボットハンド40により、平面F上に載置された物体Mを把持し、持ち上げる様子を図14を用いて説明する。
【0064】
図14(a)は、指本体41,42の先端から突出した爪部51、52が、指本体の屈曲動作により物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入された状態を示している。この状態から、さらに指本体の第二の節部を第一の節部に近接するように内側に向けて屈曲させると、図14(b)に示すように、爪部が物体Mの底面と平面Fの表面との間に挿入され、物体Mが平面Fから持ち上がる。そして、この状態からさらに指本体の第二の節部を第一の節部に近接するように屈曲させると、指本体41および42の先端が物体Mの側面を挟み込む。このように、物体Mを指本体の先端で挟み込んだまま、さらに指本体を屈曲させると、図14(c)に示すように、物体Mの底面が爪部51,52に支えられ、かつ、その側面が指本体41,42に挟み込まれるように把持した状態となり、物体Mが平面Fから上方に向けて完全に持ち上がる。このように、本実施形態にかかるロボットハンドによれば、爪部により物体の底面を支持するとともに、物体の側面を指本体で挟み込むような把持動作を行うことができる。
【0065】
以上、平面上に載置された物体Mに対して、物体Mの底面に爪部を挿入させて支持するとともに、指本体の先端で物体Mの側面を挟み込むように把持するような例を挙げて説明したが、このようなロボットハンドは、通常の指本体のみを用いた把持動作を行うこともできる。すなわち、図15に示すように、本実施形態に係るロボットハンドは、爪部51,52が指本体の第二の節部41b,42bの外側に取り付けられているため、指本体41,42の内側(腹部)で物体M'を支持する際に、爪部が物体M'に接触せず、把持動作に影響を与えることがない。
【0066】
また、本実施形態においては、このような指本体による把持動作、および指本体と爪部により物体を支持する把持動作を行う例を説明しているが、本実施形態においては、爪部のみを用いた把持動作を行うことも可能である。すなわち、爪部が指本体の先端からやや長く突出している場合、爪部のみを用いて物体を把持することも可能である。そして、このように爪部のみを用いて物体を把持する場合、特別な手順により簡単に把持動作を行うことも可能である。以下、図16を用いて詳細に説明する。
【0067】
図16は、やや厚みのある物体M'をロボットハンド40が把持する手順を示すものである。まず、ロボットハンド40が、指本体41,42の第二の節部41b,42bをやや近接させた状態で、物体M'に対して近接するように下降させる。なお、指本体41および42を近接させる度合いとしては、これらの指本体先端の間隔が、把持する対象の物体(物体M)の平面視による幅よりも若干小さくなるようにすると好ましい。なお、指本体を近接させる度合いは、図示しないカメラなどの撮像手段により物体Mの大きさを測定し、その測定した結果に基づいて定めるようにしてもよい。
【0068】
このように指本体の間隔をある程度開けた状態でロボットハンド40を下降させ、図16(a)に示すように、物体M'の上面に爪部51,52を接触させた状態でさらにロボットハンド40を下降させると、爪部51、52はともに物体Mの上面から半力を受けて内側に弾力的に撓み、物体M'の表面に沿った形状に変形する。そして、さらにロボットハンド40を下降させると、図16(b)に示すように、物体M'の表面形状に沿って変形した爪部51,52の先端が物体M'の底面に到達し、その後、爪部51、52の先端が物体M'の底面と平面Fの表面との間付近において、平面Fの形状に沿った形にやや撓んだ状態で停止する。
【0069】
そして、この状態から、指本体をやや内側に屈曲させつつロボットハンド40を上方に移動させると、図16(c)に示すように、物体M'の底面を爪部51,52で支持した状態で物体Mを持ち上げることができる。
【0070】
このようにすると、指本体を屈曲させる動作を最小限に抑え、ほぼロボットハンドの上下運動のみで物体を把持することが可能になる。このような把持動作は、把持対象の物体がある程度の剛性をもち、かつ、その形状が略均一である場合であって、把持対象の物体を移動させる場合に有効に用いることができる。すなわち、このように物体を把持し、移動させると、指本体を屈曲させる必要がなくなるため、比較的早く物体を移動させることが可能となるというメリットが得られる。
【0071】
なお、前述の実施形態は、指本体を物体の底面と平面との間に挿入させない把持動作を行うための例を示しているが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、爪部の形状を変化させることで、把持動作を行う際に、指本体を物体の底面と平面との間に挿入させることも可能である。以下、そのような実施形態を説明する。
【0072】
発明の実施形態5.
図17は、前述の実施形態に係るロボットハンドにおける、指本体および爪部の構造を変形した実施例を示している。なお、この実施形態においては、ロボットハンドにおける他の構成は前述の実施形態と同様の構成であるため、図示および説明を省略するものとする。
【0073】
図17に示すように、爪部51'は、断面形状が略円弧状の湾曲した形状である薄板状の素材であり、この湾曲した部分のうち、凸となる部分を、指本体の外側、すなわち指本体が外側に屈曲する方向を向くように、第二の節部41b'に取り付けられている。このとき、爪部51'は、指本体41(第二の節部41b')における腹部側の端面51aを、指本体の腹部表面と同一面を形成するように、指本体に取り付けられている。このようにすると、前述のように爪部51'が把持対象の物体の底面に挿入された後に、指本体を内側に屈曲させると、指本体の先端が物体の側面に接触することがないため、爪部51'にガイドされるように、指本体も物体の底面と平面との間に挿入することができる。これによって、物体の底面を指本体で支持するような把持動作を行うことができる。
【0074】
なお、上述の実施形態においては、爪部の端面51aが指本体の腹部表面と同一面を形成する例を挙げて説明したが、爪部の端面51aが腹部表面から突出するようにしてもよい。すなわち、爪部を挿入する際に、指本体(第二の節部)の先端が物体の側面に接触することが無いように、爪部の端面を指本体の腹部表面よりも突出するように構成することで、爪部の挿入が停止することなく、指本体を物体の底面と平面との間に挿入させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るロボットハンドが平面上に載置された物体を把持する動作を行う前の様子を概略的に示す図である。
【図2】図1に示すロボットハンドに設けられた爪部および指本体の先端の形状を概略的に示す図である。
【図3】図1に示すロボットハンドにおいて、爪部の取り付けられた指本体が平面上に載置された物体の底面に挿入される過程を示す図である。
【図4】図1に示すロボットハンドにより、平面上に載置された物体を把持する過程を示す図である。
【図5】図1に示すロボットハンドが、指本体の先端で物体を把持する様子を示す図である。
【図6】図1に示すロボットハンドの指本体および爪部の構造を変形させた、第2の実施形態を示す図である。
【図7】図6に示す実施形態において、溝部の形状の変化させた他の例を示す図である。
【図8】本発明にかかるロボットハンドの第3の実施形態であり、爪部の形状変化を検出するための検出部を設けた例を示す図である。
【図9】一つの指本体に対して複数の爪部を設け、これらの爪部に各々検出部を設けた他の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るロボットハンドが平面上に載置された物体を把持する動作を行う前の様子を概略的に示す図である。
【図11】図10に示すロボットハンドに設けられた爪部および指本体の先端の形状を概略的に示す図である。
【図12】図11に示すロボットハンドに設けられた爪部の内側方向および外側方向についての弾力性の違いを説明するための図である。
【図13】図10に示すロボットハンドにおいて、指本体に取り付けられた爪部が平面上に載置された物体の底面に挿入される過程を示す図である。
【図14】図10に示すロボットハンドが、平面上に載置された物体Mを把持する過程を示す図である。
【図15】図10に示すロボットハンドが、指本体の先端で物体M'を把持する様子を示す図である。
【図16】図10に示すロボットハンドが、爪部のみを用いて物体M'を把持する様子を示す図である。
【図17】図10に示すロボットハンドの指本体および爪部の構造を変形させた、第5の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
10,40 ・・・ロボットハンド
10a,40a ・・・ベース部
11,12,41,42 ・・・指本体
11a,12a,41a,42a ・・・第一の節部
11b,11b',12b,41b,41b',42b ・・・第二の節部
21,21',21",22,51,51',52 ・・・爪部
51a ・・・爪部の端面
115,115' ・・・溝部
210,211,212,213 ・・・検出部
M,M' ・・・把持対象の物体
F ・・・平面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上に載置された物体を把持するためのロボットハンドであって、
物体を把持するための屈曲動作を行う指本体と、
前記指本体の先端部の腹部側において、指本体の先端部から突出するように取り付けられた弾力性を備える薄板状の爪部と、を備えることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記爪部の表面が、前記指本体の腹部表面と同一面を形成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記指本体の腹部に溝部が形成されており、前記爪部が、該溝部に嵌め込まれるように指本体に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
指本体の先端部分における前記溝部の深さが、爪部の厚さよりも深く形成されていることを特徴とする請求項3に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記爪部の、指本体の腹部に固定された一部分における形状変化を検出する検出部をさらに備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記爪部が、1つの指本体に対して複数設けられていることを特徴とする請求項5に記載のロボットハンド。
【請求項7】
平面上に載置された物体を把持するためのロボットハンドであって、
物体を把持するための屈曲動作を行う指本体と、前記指本体の先端部から突出するように取り付けられた弾力性を備える薄板状の爪部と、を備え、
前記爪部の形状が、指本体の外側に屈曲する方向についての弾力性を、指本体の内側に屈曲する方向についての弾力性よりも小さくするように構成されていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項8】
前記爪部が、指本体の外側に屈曲する方向に凸となるように、湾曲した断面形状を有していることを特徴とする請求項7に記載のロボットハンド。
【請求項9】
前記爪部が、前記指本体における腹部側の端面を、指本体の腹部表面と同一面を形成するように、または腹部表面から突出するように指本体に取り付けられていることを特徴とする請求項7または8に記載のロボットハンド。
【請求項1】
平面上に載置された物体を把持するためのロボットハンドであって、
物体を把持するための屈曲動作を行う指本体と、
前記指本体の先端部の腹部側において、指本体の先端部から突出するように取り付けられた弾力性を備える薄板状の爪部と、を備えることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記爪部の表面が、前記指本体の腹部表面と同一面を形成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記指本体の腹部に溝部が形成されており、前記爪部が、該溝部に嵌め込まれるように指本体に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
指本体の先端部分における前記溝部の深さが、爪部の厚さよりも深く形成されていることを特徴とする請求項3に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記爪部の、指本体の腹部に固定された一部分における形状変化を検出する検出部をさらに備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記爪部が、1つの指本体に対して複数設けられていることを特徴とする請求項5に記載のロボットハンド。
【請求項7】
平面上に載置された物体を把持するためのロボットハンドであって、
物体を把持するための屈曲動作を行う指本体と、前記指本体の先端部から突出するように取り付けられた弾力性を備える薄板状の爪部と、を備え、
前記爪部の形状が、指本体の外側に屈曲する方向についての弾力性を、指本体の内側に屈曲する方向についての弾力性よりも小さくするように構成されていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項8】
前記爪部が、指本体の外側に屈曲する方向に凸となるように、湾曲した断面形状を有していることを特徴とする請求項7に記載のロボットハンド。
【請求項9】
前記爪部が、前記指本体における腹部側の端面を、指本体の腹部表面と同一面を形成するように、または腹部表面から突出するように指本体に取り付けられていることを特徴とする請求項7または8に記載のロボットハンド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−36328(P2010−36328A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204842(P2008−204842)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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