説明

ロータアセンブリ、過給機、及びロータアセンブリの製造方法

【課題】ロータアセンブリ29の製造に要する時間を短くして、ロータアセンブリ29の生産性(製造性)及びロータアセンブリ29の製造の作業性を向上させる
【解決手段】タービンインペラ27は、金属粉末射出成形によって成形された成形体27Fを焼結してなるものであって、タービンホイール55の背面中心部にロータ軸9の左端部と嵌合可能な円形の嵌合穴59が形成され、タービンホイール55とロータ軸9は、成形体27Fにおける嵌合穴に相当する部位59Fにロータ軸9を挿入させた状態で、成形体27Fの焼結時の熱収縮によって接合されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機に用いられるロータアセンブリ等に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用過給機には複数の部品を組み合わせてなる種々のアセンブリが用いられており、アセンブリの1つとしてのロータアセンブリ(ロータユニット)は、ロータ軸と、このロータ軸の端部に同軸上に一体的に設けられたタービンインペラ(インペラの一例)とを備えている(特許文献1参照)。また、タービンインペラは、精密鋳造によって成形された成形体からなるものであって、タービンインペラの背面中心部には、ロータ軸の端部と嵌合可能な円形の嵌合穴が形成されている。そして、ロータアセンブリを製造するには、次のように行う。
【0003】
即ち、精密鋳造によって背面に嵌合穴に相当する部位を有した成形体を成形する。次に、成形体における嵌合穴に相当する部位の内周面に対して機械加工を行うことにより、嵌合穴を所定の寸法及び形状に仕上げて、タービンインペラの作製を終了する。そして、ロータ軸の端部をタービンインペラの嵌合穴に嵌合させて、電子ビーム溶接によってタービンインペラとロータ軸の端部を接合する。以上により、ロータ軸とタービンインペラを具備したロータアセンブリの製造を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−254627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロータアセンブリの回転バランスを十分に確保するには、タービンインペラの嵌合穴(嵌合穴の内周面)の寸法精度及び形状精度を高くする必要がある。一方、タービンインペラの構成材料として使用されるインコネル等の耐熱合金は難加工材であって、機械加工によって嵌合穴を高い寸法精度及び形状精度に仕上げることは非常に厄介である。そのため、機械加工による仕上げに多くの時間を要し、一連のロータアセンブリの製造時間が長くなり、ロータアセンブリの生産性(製造性)及びロータアセンブリの製造の作業性を向上させることが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のロータアセンブリ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴は、過給機に用いられるロータアセンブリ(ロータユニット)において、ロータ軸と、前記ロータ軸の端部に同軸上に一体的に設けられ、金属粉末射出成形によって成形された成形体を焼結してなるものであって、背面中心部に前記ロータ軸の端部と嵌合可能な円形の嵌合穴が形成されたインペラと、を備え、前記成形体における前記嵌合穴に相当する部位に前記ロータ軸の端部を挿入させた状態で、前記成形体の焼結時の熱収縮によって前記インペラと前記ロータ軸が接合するようになっていることを要旨とする。
【0008】
なお、「インペラ」には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービンインペラの他に、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサインペラが含まれる。
【0009】
第1の特徴によると、前記インペラが金属粉末射出成形によって成形された前記成形体を焼結してなるものであるため、換言すれば、精密鋳造に比べて寸法精度及び形状精度に優れた金属粉末射出成形法によって前記インペラが製作されているため、焼結後の前記成形体に機械加工を行うことなく、前記インペラの前記嵌合穴の寸法精度及び形状精度を十分に高めることができる。
【0010】
また、前記成形体における前記嵌合穴に相当する部位に前記ロータ軸の端部を挿入させた状態で、前記成形体の焼結時の熱収縮によって前記インペラと前記ロータ軸が接合するようになっているため、前記インペラの作製終了後に前記インペラと前記ロータ軸との接合を別個に行うのではなく、前記インペラと前記ロータ軸との接合を前記インペラの作製に付随して同時に行うことができる。
【0011】
本発明の第2の特徴は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する過給機において、第1の特徴からなるロータアセンブリを備えたことを要旨とする。
【0012】
第2の特徴によると、第1の特徴による作用と同様の作用を奏する。
【0013】
本発明の第3の特徴は、第1の特徴からなるインペラを製造するための製造方法において、前記インペラの最終形状を反転する形状(相補する形状)と相似形の成形面を有した射出成形用金型を用い、前記射出成形用金型の前記成形面によって区画されるキャビティに金属粉末とバインダとの混合物を射出することにより、前記最終形状と相似形であってかつ背面中心部に前記嵌合穴に相当する部位を有した前記成形体を成形する射出工程と、前記射出工程の終了後に、前記成形体に含まれる前記バインダを脱脂する脱脂工程と、前記脱脂工程の終了後に、前記ロータ軸の端部を前記成形体における前記嵌合穴に相当する部位に挿入させた状態で、前記成形体を焼成して焼結させることにより、前記成形体を前記最終形状まで熱収縮させて、前記成形体からなる前記インペラを作製すると共に、前記成形体の熱収縮によって前記インペラと前記ロータ軸を接合する焼結工程と、を備えたことを要旨とする。
【0014】
第3の特徴によると、前記インペラが前記射出工程、前記脱脂工程、及び前記焼結工程を経ることによって作製されるため、換言すれば、精密鋳造に比べて寸法精度及び形状精度に優れた金属粉末射出成形法によって前記インペラが製作されているため、焼結後の前記成形体に機械加工を行うことなく、前記インペラの前記嵌合穴の寸法精度及び形状精度を十分に高めることができる。
【0015】
また、前記ロータ軸の端部を前記成形体における前記嵌合穴に相当する部位に挿入させた状態で、前記成形体を焼成して焼結させることにより、前記インペラを作製する他に、前記成形体の熱収縮によって前記インペラと前記ロータ軸を接合するため、前記インペラの作製終了後に前記インペラと前記ロータ軸との接合処理を別個に行うのではなく、前記インペラと前記ロータ軸との接合処理を前記インペラの作製に付随して同時に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、機械加工による仕上げを行うことなく、前記インペラの前記嵌合穴の寸法精度及び形状精度を十分に高めることができると共に、前記インペラと前記ロータ軸との接合処理を前記インペラの作製に付随して同時に行うことができるため、前記ロータアセンブリの製造に要する時間を短くして、前記ロータアセンブリの生産性(製造性)及び前記ロータアセンブリの製造の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図2における矢視部Iの拡大図である。
【図2】第1実施形態に係る車両用過給機の断面図である。
【図3】第1実施形態に係るタービンインペラの断面図である。
【図4】図4(a)は、図3における矢視部IVAの拡大図、図4(b)は、図4(a)におけるIVB-IVB線に沿った断面図である。
【図5】第1実施形態の変形例に係るタービンインペラの断面図である。
【図6】第2実施形態に係るインペラの製造方法における射出工程を説明する図である。
【図7】第2実施形態に係るインペラの製造方法における脱脂工程を説明する図である。
【図8】第2実施形態に係るインペラの製造方法における焼結工程を説明する図である。
【図9】第2実施形態の変形例に係るインペラの製造方法における射出工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る車両用過給機ついて図1から図4を参照して説明する。なお、図面中、「L」は、左方向を指し、「R」は、右方向を指してある。
【0019】
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る車両用過給機1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、車両用過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0020】
車両用過給機1は、ベアリングハウジング3を備えており、このベアリングハウジング3内には、ラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられてあって、複数のベアリング5,7には、左右方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、ロータ軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0021】
ベアリングハウジング3の右側には、コンプレッサハウジング11が設けられており、ロータ軸9の右端部は、コンプレッサハウジング11内に位置してあって、ロータ軸9の右端部には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサインペラ13が一体的に設けられている。そして、コンプレッサインペラ13の具体的な構成要素について説明すると、ロータ軸9の右端部には、コンプレッサホイール15が同軸上に一体的に設けられており、コンプレッサホイール15は、コンプレッサインペラ13の軸心(換言すれば、コンプレッサホイール15の軸心又はロータ軸9の軸心)C周りに回転可能である。また、コンプレッサホイール15の外周面は、コンプレッサインペラ13(コンプレッサホイール15)の軸方向から径方向外側に向かって延びている。更に、コンプレッサホイール15の外周面には、複数枚のコンプレッサブレード17が周方向に間隔を置いて一体形成されており、各コンプレッサブレード17の外縁は、コンプレッサハウジング11のシュラウド(内壁面)に沿うように延びている。
【0022】
コンプレッサハウジング11におけるコンプレッサインペラ13の入口側(空気の流れ方向から見てコンプレッサインペラ13の上流側)には、空気を取入れる空気取入口19が形成されており、この空気取入口19は、接続管(図示省略)を介してエアクリーナー(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング11の間におけるコンプレッサインペラ13の出口側(空気の流れ方向から見てコンプレッサインペラ13の下流側)には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路21が形成されており、このディフューザ流路21は、空気取入口19に連通してある。更に、コンプレッサハウジング11の内部には、コンプレッサスクロール流路23がコンプレッサインペラ13を囲むように形成されており、このコンプレッサスクロール流路23は、ディフューザ流路21に連通してある。そして、コンプレッサハウジング11の適宜位置には、圧縮された空気を排出する空気排出口(図示省略)が形成されており、この空気排出口は、コンプレッサスクロール流路23に連通してあって、エンジンの給気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0023】
ベアリングハウジング3の左側には、タービンハウジング25が設けられており、ロータ軸9の左端部は、タービンハウジング25内に位置してあって、ロータ軸9の左端部には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービンインペラ27が同軸上に一体的に設けられている。ここで、ロータ軸9とタービンインペラ27とからロータアセンブリ(ロータユニット)29が構成される。なお、ロータアセンブリ29の具体的な構成要素については、後述する。
【0024】
タービンハウジング25内には、可変ノズルユニット31がタービンインペラ27を囲むように設けられている。そして、可変ノズルユニット31の具体的な構成要素について説明すると、タービンハウジング25内におけるタービンインペラ27の径方向外側には、ノズルリング33が取付リング35を介して設けられており、このノズルリング33には、シュラウドリング37が複数(1つのみ図示)の連結ピン39を介して一体的かつ左右に離隔して設けられている。また、ノズルリング33とシュラウドリング37の間には、複数枚の可変ノズル41が周方向に間隔を置いて設けられており、各可変ノズル41は、タービンインペラ27の軸心Cに平行な軸心周りに回動可能(揺動可能)であって、複数枚の可変ノズル41のノズル軸43は、特許文献1に示すように、同期機構45によって連動連結してある。
【0025】
なお、ベアリングハウジング3の左側下部には、伝動軸47が回動可能に設けられており、この伝動軸47の右端部は、複数枚の可変ノズル41を同期して回動させるシリンダ等のアクチュエータ(図示省略)に接続レバー49を介して接続(連動連結)してあって、伝動軸47の左端部は、同期機構45に接続してある。
【0026】
タービンハウジング25の適宜位置には、排気ガスを取入れるガス取入口(図示省略)が形成されており、このガス取入口は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング25の内部には、タービンスクロール流路51がタービンインペラ27を囲むように形成されており、このタービンスクロール流路51は、ガス取入口に連通してあって、排気ガスを取入可能である。更に、タービンハウジング25におけるタービンインペラ27の出口側(排気ガスの流れ方向から見てタービンインペラ27の下流側)には、排気ガスを排出するガス排出口53が形成されており、このガス排出口53は、タービンスクロール流路51に連通してあって、接続管(図示省略)を介して排気ガス浄化装置(図示省略)に接続可能である。
【0027】
続いて、第1実施形態の要部であるロータアセンブリ29の具体的な構成について説明する。
【0028】
図3に示すように、ロータアセンブリ29は、前述のように、左右方向へ延びたロータ軸9と、このロータ軸9の左端部に同軸上に一体的に設けられたタービンインペラ27とを備えている。そして、タービンインペラ27は、金属粉末射出成形によって成形された成形体27F(図7及び図8(a)参照)を焼結してなるものであって、後述の射出工程、脱脂工程、焼結工程を経ることによって製造されるものである。また、タービンインペラ27は、ロータ軸9の左端部に一体的に設けられたタービンホイール55を備えており、このタービンホイール55は、タービンインペラ27の軸心(換言すれば、タービンホイール55の軸心又はロータ軸9の軸心)C周りに回転可能である。また、タービンホイール55の外周面は、タービンインペラ27(タービンホイール55)の軸方向から径方向外側に向かって延びている。更に、タービンホイール55の外周面には、複数枚のタービンブレード57が周方向に間隔を置いて一体形成されており、各タービンブレード57の外縁は、シュラウドリング37のシュラウド(内壁面)に沿うように延びている。
【0029】
タービンホイール55の背面中心部には、ロータ軸9の左端部と嵌合可能な円形の嵌合穴59が形成されている。そして、タービンホイール55とロータ軸9は、成形体27Fにおける嵌合穴に相当する部位59Fにロータ軸9を挿入させた状態で、成形体27Fの焼結時の熱収縮によって接合されるようになっている。
【0030】
ロータ軸9の左端部の周縁には、径方向外側に突出したアウターフランジ61(アウター突出部の一例)が形成されており、タービンホイール55の嵌合穴59の周縁には、径方向内側に突出したインナーフランジ63(インナー突出部の一例)が形成されてあって、タービンホイール55のインナーフランジ63は、成形体27Fの焼結時の熱収縮によってロータ軸9のアウターフランジ61に係止するようになっている。また、ロータ軸9の左端部の外周面には、ロータ軸9の軸方向へ延びた溝65がアウターフランジ61を横断するように形成されており、タービンホイール55の嵌合穴59の内周面には、成形体27Fの焼結時の熱収縮によって溝65に係合する突起67が形成されている。
【0031】
続いて、第1実施形態に係る車両用過給機1の作用及び効果について説明する。
【0032】
ガス取入口からタービンスクロール流路51に取入れた排気ガスをタービンインペラ27の入口側から出口側(排気ガスの流れ方向から見てタービンインペラ27の上流側から下流側)へ流通させることにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ13をタービンインペラ27と一体的に回転させることができる。これにより、空気取入口19から取入れた空気を圧縮して、ディフューザ流路21及びコンプレッサスクロール流路23を経由して空気排出口から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給することができる。
【0033】
ここで、排気ガスの流量が少ない場合(換言すれば、エンジン回転数が低速域にある場合)には、アクチュエータによって複数枚の可変ノズル41を絞る方向へ同期して回動させることにより、タービンインペラ27側へ供給される排気ガスの流速を高くして、タービンインペラ27の仕事量を十分に確保する。一方、排気ガスの流量が多い場合(換言すれば、エンジン回転数が低速域にある場合)には、アクチュエータによって複数枚の可変ノズル41を開く方向へ同期して回動させることにより、可変ノズル41のスロート面積を大きくして、タービンインペラ27側へ多くの排気ガスを供給する。これにより、排気ガスの流量の多少に関係なく、タービンインペラ27によって回転力を十分かつ安定的に発生させることができる(車両用過給機1による通常の作用)。
【0034】
前述の車両用過給機1による通常の作用を奏する他に、タービンホイール55が金属粉末射出成形によって成形された成形体27Fを焼結してなるものであるため、換言すれば、精密鋳造に比べて寸法精度及び形状精度に優れた金属粉末射出成形法によってタービンインペラ27が製作されているため、焼結後の成形体27Fに機械加工を行うことなく、タービンホイール55の嵌合穴59の寸法精度及び形状精度を十分に高めることができる。
【0035】
また、成形体27Fにおける嵌合穴に相当する部位59Fにロータ軸9の左端部を挿入させた状態で、成形体27Fの焼結時の熱収縮によってタービンホイール55とロータ軸9が接合するようになっているため、タービンインペラ27の作製終了後にタービンホイール55とロータ軸9との接合処理を別個に行うのではなく、タービンホイール55とロータ軸9との接合処理をタービンインペラ27の作製に付随して同時に行うことができる。更に、タービンホイール55のインナーフランジ63が成形体27Fの焼結時の熱収縮によってロータ軸9のアウターフランジ61に係止すると共に、タービンホイール55の突起67が成形体27Fの焼結時の熱収縮によって溝65に係合するため、ロータ軸9に対するタービンホイール55の抜け止め・回り止め処理もタービンインペラ27の作製に付随して同時に行うことができる(車両用過給機1(ロータアセンブリ29)による特有の作用)。
【0036】
従って、第1実施形態によれば、機械加工による仕上げを行うことなく、タービンインペラ27の嵌合穴59の寸法精度及び形状精度を十分に高めることができると共に、タービンホイール55とロータ軸9との接合処理、及びロータ軸9に対するタービンホイール55の抜け止め・回り止め処理をタービンインペラ27の作製に付随して同時に行うことができるため、ロータアセンブリ29の製造に要する時間を短くして、ロータアセンブリ29の生産性(製造性)及びロータアセンブリ29の製造の作業性を向上させることができる。
【0037】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例に係るロータユニットについて図5を参照して説明する。なお、図面中、「L」は、左方向を指し、「R」は、右方向を指してある。
【0038】
図5に示すように、第1実施形態の変形例に係るロータアセンブリ29Aにあっては、第1実施形態に係るロータアセンブリ29と異なり、タービンホイール55の先端面の中心部に軸方向(タービンインペラ27の軸方向)へ延びた円形の中抜き穴69が形成されている。
【0039】
なお、タービンホイール55の先端面の中心部に中抜き穴69が形成されている点を除き、第1実施形態の変形例に係るロータアセンブリ29Aは、第1実施形態に係るロータアセンブリ29と略同じ構成を有している。
【0040】
第1実施形態の変形例によると、前述の第1実施形態の作用を奏する他に、タービンホイール55の先端面の中心部に軸方向へ延びた円形の中抜き穴69が形成されているため、換言すれば、焼結前の成形体(図示省略、第1実施形態に係る成形体27F参照)は先端面の中心部に中抜き穴に相当する部位を有しているため、焼結前の成形体におけるタービンホイールに相当する部位の薄肉化を実現することができる。
【0041】
従って、第1実施形態の変形例によれば、前述の第1実施形態の効果に加えて、焼結前の成形体におけるタービンホイールに相当する部位の薄肉化を実現することができるため、成形体の焼結の際に、成形体におけるタービンホールに相当する部位に巣等の欠陥が発生することを抑えて、タービンインペラ27を安定的に製造することができる。
【0042】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る射出成形用金型、及び第2実施形態に係るインペラの製造方法等について図6から図8を参照して説明する。なお、図面中、「L」は、左方向を指し、「R」は、右方向を指してある。
【0043】
図6に示すように、第2実施形態に係る射出成形用金型71は、第2実施形態に係るロータアセンブリの製造方法の実施に用いられるものであって、第2実施形態に係る射出成形用金型71の具体的な構成は、次のようになる。
【0044】
即ち、射出成形機における固定フレーム73の左側には、射出成形用一体型75が着脱可能に設けられており、この射出成形用一体型75は、左側に、タービンインペラ27の背面(タービンホイール55の背面)の最終形状を反転する形状(相補する形状)と相似形の副成形面77を有している。また、射出成形機における左右方向へ移動可能な可動フレーム79の右側には、ガイドブロック81が着脱可能に設けられており、このガイドブロック81の右側には、円錐台状の窪み83が形成されている。そして、ガイドブロック81の窪み83には、複数(タービンブレード57の枚数と同数)の射出成形用分割型85が径方向へ拡縮移動可能に設けられており、複数の射出成形用分割型85は、射出成形用一体型75に対向してあって、内側に、タービンインペラ27の背面を除くタービンインペラ27の大部分の最終形状を反転する形状と相似形の主成形面87を有している。ここで、複数の射出成形用分割型85は、射出成形用一体型75と非接触状態にある場合に、可動フレーム79を左右方向へ移動させると、射出成形用一体型75に対して接近離隔する方向へ一体的に移動するようになっており、射出成形用一体型75と接触状態にある場合に、可動フレーム79を左右方向へ移動させると、径方向へ拡縮移動するようになっている。
【0045】
射出成形用金型71の型締め時に、射出成形用一体型75の副成形面77と複数の射出成形用分割型85の主成形面87によってキャビティ89が区画されるようになっている。また、射出成形用一体型75の副成形面77には、複数のゲート91が形成されており、射出成形用一体型75の内部には、複数のゲート91に連通したランナー93が形成されてあって、ランナー93は、射出成形機における射出ノズル95にスプール97を介して接続可能である。
【0046】
続いて、第2実施形態に係るロータアセンブリの製造方法の具体的な構成について説明する。
【0047】
第2実施形態に係るロータアセンブリの製造方法は、第1実施形態に係るロータアセンブリ29を製造するための方法であって、射出工程、脱脂工程、焼結工程を備えている。そして、各工程の具体的な内容は、次のようになる。
【0048】
(i)射出工程
図6に示すように、油圧シリンダ等のアクチュエータ(図示省略)の駆動により可動フレーム79を右方向へ移動させることにより、複数の射出成形用分割型85を一体的に右方向へ移動させて、射出成形用一体型75に接触させる。続いて、アクチュエータの駆動により可動フレーム79を複数の射出成形用分割型85に対して右方向へ移動させることにより、複数の射出成形用分割型85を径方向内側へ収縮移動させて、射出成形用金型71の型締めを行う。
【0049】
射出成形用金型71の型締めの完了後に、射出ノズル95からスプール97、ランナー93、ゲート91を経由してキャビティ89に耐熱金属粉末(金属粉末の一例)と溶融状態のバインダとの混合物Mを射出して、キャビティ89内にバインダを硬化させる。これにより、タービンインペラ27の最終形状と相似形であってかつ背面中心部に嵌合穴に相当する部位59Fを有した成形体27F(図7参照)を成形することができる。なお、バインダとしては、ポリスチレン,ポリメチルメタアクリレート等の複数種の樹脂とパラフィンワックス等のワックスとからなるものを使用する。
【0050】
キャビティ89内にバインダを硬化させた後に、アクチュエータの駆動により可動フレーム79を複数の射出成形用分割型85に対して左方向へ移動させることにより、複数の射出成形用分割型85を径方向外側へ拡張移動させる。続いて、アクチュエータの駆動により可動フレーム79を左方向へ移動させることにより、複数の射出成形用分割型85を一体的に左方向へ移動させて、射出成形用金型71の型開きを行う。そして、適宜の離型処理を行うことにより、成形体27Fを射出成形用金型71から取り外す。
【0051】
(ii)脱脂工程(除去工程)
射出工程の終了後に、図7に示すように、脱脂炉用治具(図示省略)を用いて、成形体27Fを脱脂炉99の所定位置にセットする。そして、脱脂炉99内を窒素ガス雰囲気中に保ちつつ、脱脂炉99のヒータ(図示省略)によって成形体27Fを所定の脱脂温度まで加熱する。これにより、成形体27Fに含まれるバインダを脱脂(除去)することができる。
【0052】
なお、バインダを脱脂する手法は、前述の加熱脱脂に限るものでなく、溶出脱脂、溶剤脱脂等の別の手法を採用しても構わない。
【0053】
(iii)焼結工程
脱脂工程の終了後に、図8(a)に示すように、焼結炉用治具(図示省略)を用いて、成形体27Fを焼結炉101の所定位置にセットすると共に、ロータ軸9の端部(左端部)を成形体27Fにおける嵌合穴に相当する部位59Fに挿入する。なお、ロータ軸9のアウターフランジ61の外径(換言すれば、ロータ軸9の端面の面積)は、成形体27Fにおける嵌合穴に相当する部位59Fの内径、及び成形体27Fにおけるインナーフランジに相当する部位63Fの内径(換言すれば、成形体27Fにおける嵌合穴に相当する部位59Fの横断面積、及び成形体27Fにおけるインナーフランジに相当する部位63Fの内側の横断面積)よりも小さいものである。
【0054】
そして、焼結炉101内を真空雰囲気中に保ちつつ、ロータ軸9の端部を成形体27Fにおける嵌合穴に相当する部位59Fに挿入させた状態で、焼結炉101のヒータ(図示省略)によって成形体27Fを所定の焼結温度まで加熱して、成形体27Fを焼成して焼結させる。これにより、図8(b)に示すように、成形体27Fを高密度化して最終形状まで熱収縮させて、成形体27Fからなるタービンインペラ27を作製することができる共に、成形体27Fの熱収縮によって、タービンホイール55のインナーフランジ63をロータ軸9のアウターフランジ61に係止させかつタービンホイール55の突起67をロータ軸9の溝65に係合させた状態で、タービンホイール55とロータ軸9を接合することができる。なお、タービンホイール55のインナーフランジ63の内径(換言すれば、タービンホイール55のインナーフランジ63の内側の横断面積)は、ロータ軸9のアウターフランジ61の外径(換言すれば、ロータ軸9の端面の面積)よりも小さく、タービンホイール55の嵌合穴59の内径(換言すれば、タービンホイール55の嵌合穴59の横断面積)は、ロータ軸9のアウターフランジ61の外径(換言すれば、ロータ軸9の端面の面積)と同じになっている。
【0055】
以上により、ロータ軸9とタービンインペラ27とを備えてなるロータアセンブリ29を製造することができる。
【0056】
続いて、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0057】
タービンインペラ27が射出工程、脱脂工程、及び焼結工程を経ることによって作製されるため、換言すれば、精密鋳造に比べて寸法精度及び形状精度に優れた金属粉末射出成形法によってタービンインペラ27が製作されているため、焼結後の成形体27Fに機械加工を行うことなく、タービンインペラ27の嵌合穴59の寸法精度及び形状精度を十分に高めることができる。
【0058】
また、ロータ軸9の端部を成形体27Fにおける嵌合穴に相当する部位59Fに挿入させた状態で、成形体27Fを焼成して焼結させることにより、タービンインペラ27を作製する他に、成形体27Fの熱収縮によって、タービンホイール55のインナーフランジ63をロータ軸9のアウターフランジ61に係止させかつタービンホイール55の突起67をロータ軸9の溝65に係合させた状態で、タービンホイール55とロータ軸9を接合するため、タービンインペラ27とロータ軸9との接合処理、及びロータ軸9に対するタービンホイール55の抜け止め・回り止め処理をタービンインペラ27の作製に付随して同時に行うことができる。
【0059】
従って、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0060】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の変形例に係るロータアセンブリの製造方法について図9を参照して説明する。なお、図面中、「L」は、左方向を指し、「R」は、右方向を指してある。
【0061】
図9に示すように、第2実施形態の変形例に係るロータアセンブリの製造方法は、第1実施形態の変形例に係るロータアセンブリ29Aを製造するための方法である。そして、第2実施形態の変形例に係るにおける射出工程においては、ロータアセンブリ29Aにおけるタービンホイール55の中抜き穴69の最終形状を反転する形状と相似形の外形面を有した中子103を用い、中子103を射出成形用金型71のキャビティ89の中心部に位置するようセットした状態で、キャビティ89に耐熱金属粉末と溶融状態のバインダとの混合物Mを射出して、キャビティ89内にバインダを硬化させる。これにより、先端面の中心部に中抜き穴に相当する部位を有した成形体(図示省略、第1実施形態に係る成形体27F参照)を成形する。
【0062】
なお、中子103を用いる点を除き、第2実施形態の変形例に係るロータアセンブリの製造方法は、第2実施形態に係るロータアセンブリの製造方法と略同じ構成を有している。
【0063】
第2実施形態の変形例によると、前述の第1実施形態の作用を奏する他に、射出工程において、先端面の中心部に中抜き穴に相当する部位を有した成形体Fを成形しているため、焼結前の成形体におけるタービンホイールに相当する部位の薄肉化を実現することができる。
【0064】
従って、第2実施形態の変形例によれば、第1実施形態の変形例と同様の効果を奏することができる。
【0065】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、ロータ軸9とタービンインペラ27とからなるロータアセンブリに適用した技術的思想をロータ軸9とコンプレッサインペラ13とからなるロータアセンブリに適用する等、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0066】
1 車両用過給機
3 ベアリングハウジング
9 ロータ軸
11 コンプレッサハウジング
13 コンプレッサインペラ
15 コンプレッサホイール
17 コンプレッサブレード
25 タービンハウジング
27 タービンインペラ
27F 成形体
29 ロータアセンブリ
29A ロータアセンブリ
31 可変ノズルユニット
41 可変ノズル
55 タービンホイール
57 タービンブレード
59 嵌合穴
59F 嵌合穴に相当する部位
61 アウターフランジ
63 インナーフランジ
65 溝
67 突起
69 穴
71 射出成形用金型
75 射出成形用一体型
77 副成形面
81 ガイドブロック
83 窪み
85 射出成形用分割型
87 主成形面
89 キャビティ
99 脱脂炉
101 焼結炉
103 中子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機に用いられるロータアセンブリにおいて、
ロータ軸と、
前記ロータ軸の端部に同軸上に一体的に設けられ、金属粉末射出成形によって成形された成形体を焼結してなるものであって、背面中心部に前記ロータ軸の端部と嵌合可能な円形の嵌合穴が形成されたインペラと、を備え、
前記成形体における前記嵌合穴に相当する部位に前記ロータ軸の端部を挿入させた状態で、前記成形体の焼結時の熱収縮によって前記インペラと前記ロータ軸が接合するようになっていることを特徴とするロータアセンブリ。
【請求項2】
前記ロータ軸の端部の外周面に、軸方向へ延びた溝が形成され、
前記インペラの前記嵌合穴の内周面に、前記成形体の焼結時の熱収縮によって前記溝に係合する突起が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータアセンブリ。
【請求項3】
前記ロータ軸の端部の周縁に、径方向外側に突出したアウター突出部が形成され、前記インペラの前記嵌合穴の周縁に、径方向内側に突出しかつ前記成形体の焼結時の熱収縮によって前記ロータ軸の前記アウター突出部に係止するインナー突出部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のロータアセンブリ。
【請求項4】
前記インペラの先端面に軸方向へ延びた円形の中抜き穴が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載のロータアセンブリ。
【請求項5】
エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する過給機において、
請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載のロータアセンブリを備えたことを特徴とする過給機。
【請求項6】
請求項1に記載のロータアセンブリを製造するための製造方法において、
前記インペラの最終形状を反転する形状と相似形の成形面を有した射出成形用金型を用い、前記射出成形用金型の前記成形面によって区画されるキャビティに金属粉末とバインダとの混合物を射出することにより、前記最終形状と相似形であってかつ背面中心部に前記嵌合穴に相当する部位を有した前記成形体を成形する射出工程と、
前記射出工程の終了後に、前記成形体に含まれる前記バインダを脱脂する脱脂工程と、
前記脱脂工程の終了後に、前記ロータ軸の端部を前記成形体における前記嵌合穴に相当する部位に挿入させた状態で、前記成形体を焼成して焼結させることにより、前記成形体を前記最終形状まで熱収縮させて、前記成形体からなる前記インペラを作製すると共に、前記成形体の熱収縮によって前記インペラと前記ロータ軸を接合する焼結工程と、を備えたことを特徴とするロータアセンブリの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−275880(P2010−275880A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126816(P2009−126816)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】