説明

ロータリジョイント

【課題】 摺動部分へのクーラント液等の侵入を阻止することにより、フローティングシートの作動不良による漏れ不具合の発生を防止することができるロータリジョイントの提供。
【解決手段】 ケーシング1には、フランジ部22を含めて回り止めピン23の外周を覆うカバー51が設けられ、該カバー51はその一方の開口部51aがケーシング1に当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部51bがフローティングシート2におけるロータ軸3側端部外周面との間に微少隙間hを残して閉塞されていて、カバー51内にエアが供給されることにより、微少隙間hからカバー51外にエアを放出させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械に装着してクーラント等の液体を回転軸側に供給するのに適したロータリジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロータリジョイントは、軸心にそれぞれ流路が備えられたフローティングシート(固定軸)とロータ軸(回転軸)との対向端面にはそれぞれシールリングが装着され、前記フローティングシートは回転が阻止された状態に固定されると共にケーシングに形成された摺動支持孔に沿って摺動自在に設けられ、ケーシングからロータ軸方向へ向けて軸方向に突出形成された回り止めピンに対しフローティングシートのロータ軸側端部外周に備えたフランジ部に形成された貫通孔を摺動自在に装着係止させることによりロータ軸の回り止めが行われ、フローティングシート側流路に供給される流体圧力によってフローティングをロータ軸方向に摺動させて両シールリングの環状シール面を互いに密着させることによりシール部が形成されるように構成された構造となっている(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
そして、工作機械の主軸先端に取付けた回転工具等へ切削用のクーラント液を供給するような場合、主軸後端部、あるいは直結主軸モータのロータ軸後端部にロータリジョイントを直結し、夫々の軸心に設けた流路を介してこのロータリジョイントからクーラント液を圧送している。
【特許文献1】特開平9−152077号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、工作機械の主軸先端に取付けた回転工具等へ切削用のクーラント液を供給するために用いられるロータリジョイントにおいては、フローティングシートのスムーズな作動はクーラント液の漏れ低減のために維持されなければならない。
【0005】
ところが、実際の市場で使用された結果、漏れ不具合を生じさせる原因として、シール部から漏れたクーラント液等により、摺動部である回り止めピンの外周面やフローティングシートのフランジ部に形成された貫通孔の内周面にスラッジ等異物が付着堆積することで、フローティングシートの作動が阻害され、これにより漏れに至るケースが多く見られる。
【0006】
本発明は、上述のような従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、摺動部分へのクーラント液等の侵入を阻止することにより、フローティングシートの作動不良による漏れ不具合の発生を防止することができるロータリジョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載のロータリジョイントは、軸心にそれぞれ流路が備えられた固定軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシールリングが装着され、前記固定軸は回転が阻止された状態に固定されると共にケーシングに形成された摺動支持孔に沿って摺動自在に設けられ、前記ケーシングから前記回転軸方向へ向けて軸方向に突出形成された回り止めピンに対し前記固定軸の回転軸側端部外周に備えたフランジ部に形成された貫通孔を摺動自在に装着係止させることにより前記固定軸の回り止めが行われ、前記固定軸側流路に供給される流体圧力によって前記固定軸を回転軸方向に摺動させて前記両シールリングの環状シール面を互いに密着させることによりシール部が形成されるように構成されたロータリジョイントであって、前記ケーシングには前記フランジ部を含めて前記回り止めピンの外周を覆うカバーが設けられていることを特徴とする手段とした。
【0008】
請求項2記載のロータリジョイントは、請求項1記載のロータリジョイントにおいて、前記カバーはその一方の開口部が前記ケーシングに当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部が前記固定軸における前記回転軸側端部外周面との間に微少隙間を残して閉塞され、前記カバー内にエアが供給されることにより前記微少隙間から前記カバー外にエアを放出させるように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0009】
請求項3記載のロータリジョイントは、請求項1記載のロータリジョイントにおいて、前記カバーはその一方の開口部が前記ケーシングに当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部が前記固定軸における前記回転軸側端部外周面との間に微少隙間を残して閉塞され、前記微少隙間には外部からの異物の侵入を防ぐ為のシールが設けられていることを特徴とする手段とした。
【0010】
請求項4記載のロータリジョイントは、軸心にそれぞれ流路が備えられた固定軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシールリングが装着され、前記固定軸は回転が阻止された状態に固定されると共にケーシングに形成された摺動支持孔に沿って摺動自在に設けられ、前記ケーシングから前記回転軸方向へ向けて軸方向に突出形成された回り止めピンに対し前記固定軸の回転軸側端部外周に備えたフランジ部に形成された貫通孔を摺動自在に装着係止させることにより前記固定軸の回り止めが行われ、前記固定軸側流路に供給される流体圧力によって前記固定軸を回転軸方向に摺動させて前記両シールリングの環状シール面を互いに密着させることによりシール部が形成されるように構成されたロータリジョイントであって、前記ケーシングには前記フランジ部を含めて前記回り止めピンの外周を覆うカバーが設けられ、該カバーはその一方の開口部が前記ケーシングに当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部が前記固定軸における前記回転軸側端部外周面との間に微少隙間を残して閉塞され、前記カバー内にグリスが充填されていることを特徴とする手段とした。
【0011】
請求項5記載のロータリジョイントは、請求項4に記載のロータリジョイントにおいて、前記グリスとして耐水及び耐薬品性に優れたグリスが用いられていることを特徴とする手段とした。
【0012】
請求項6記載のロータリジョイントは、請求項4又は5に記載のロータリジョイントにおいて、前記ケーシングには前記カバー内に充填物を供給する供給孔が形成され、該供給孔が蓋体により開閉自在に閉塞されていることを特徴とする手段とした。
【0013】
請求項7記載のロータリジョイントは、請求項4又は5に記載のロータリジョイントにおいて、前記供給孔の途中には充填物を前記カバー内に自動的に補給する補給手段が備えられていることを特徴とする手段とした。
【0014】
請求項8記載のロータリジョイントは、軸心にそれぞれ流路が備えられた固定軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシールリングが装着され、前記固定軸は回転が阻止された状態に固定されると共にケーシングに形成された摺動支持孔に沿って摺動自在に設けられ、前記ケーシングから前記回転軸方向へ向けて軸方向に突出形成された回り止めピンに対し前記固定軸の回転軸側端部外周に備えたフランジ部に形成された貫通孔を摺動自在に装着係止させることにより前記固定軸の回り止めが行われ、前記固定軸側流路に供給される流体圧力によって前記固定軸を回転軸方向に摺動させて前記両シールリングの環状シール面を互いに密着させることによりシール部が形成されるように構成されたロータリジョイントであって、前記固定軸を回転軸方向に摺動させることを阻害する要因となる異物の付着を防ぐために前記回り止めピンの外周面に表面処理が施されていることを特徴とする手段とした。
【0015】
請求項9記載のロータリジョイントは、請求項8に記載のロータリジョイントにおいて、前記固定軸を回転軸方向に摺動させることを阻害する要因となる異物の付着を防ぐために、前記貫通孔の内面及び前記フランジ部表面にも表面処理が施されていることを特徴とする手段とした。
【0016】
請求項10記載のロータリジョイントは、請求項1〜9のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記回転軸が工作機械の回転軸に接続されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載のロータリジョイントでは、上述のように、ケーシングにはフランジ部を含めて前記回り止めピンの外周を覆うカバーが設けられている構成としたことで、回り止めピンの外周面に対する切粉やスラッジ等の異物の付着が阻止される。
従って、固定軸の作動不良による漏れ不具合の発生を防止することができるようになるという効果が得られる。
【0018】
請求項2記載のロータリジョイントでは、上述のように、ケーシングにはフランジ部を含めて回り止めピンの外周を覆うカバーが設けられ、該カバーはその一方の開口部がケーシングに当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部が固定軸における回転軸側端部外周面との間に微少隙間を残して閉塞され、カバー内にエアが供給されることにより微少隙間からカバー外にエアを放出させるようにしたことで、カバー内への切粉やスラッジ等の異物の進入が阻止される。
従って、固定軸の作動不良による漏れ不具合の発生を防止することができるようになるという効果が得られる。
【0019】
請求項3記載のロータリジョイントでは、上述のように、カバーはその一方の開口部がケーシングに当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部が固定軸における回転軸側端部外周面との間に微少隙間を残して閉塞され、微少隙間には外部からの異物の侵入を防ぐ為のシールが設けられている構成としたことで、カバー内への切粉やスラッジ等の異物の進入が阻止される。
従って、固定軸の作動不良による漏れ不具合の発生を防止することができるようになるという効果が得られる。
【0020】
請求項4記載のロータリジョイントでは、上述のように、ケーシングにはフランジ部を含めて回り止めピンの外周を覆うカバーが設けられ、該カバーはその一方の開口部がケーシングに当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部が固定軸における回転軸側端部外周面との間に微少隙間を残して閉塞され、カバー内にグリスが充填されている構成とすることにより、カバー内への切粉やスラッジ等の異物の進入が阻止される。
従って、固定軸の作動不良による漏れ不具合の発生を防止することができるようになるという効果が得られる。
【0021】
請求項5記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記グリスとして耐水及び耐薬品性に優れたグリスが用いられることにより、グリスの持ちをよくし、これにより、定期的なグリスの補給回数を減らすことができるようになる。
【0022】
請求項6記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記ケーシングには前記カバー内に充填物を供給する供給孔が形成され、該供給孔が蓋体により開閉自在に閉塞されている構成とすることにより、定期的に蓋体を開けて充填物を補給することができるようになる。
【0023】
請求項7記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記ケーシングには前記カバー内にグリスを供給する供給孔が形成され、供給孔の途中には充填物をカバー内に自動的に補給する補給手段が備えられている構成とすることにより、減少した分の充填物がカバー内に補給されるため、定期的なグリスの補給回数を減らすことができるようになる。
【0024】
請求項8記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記固定軸を回転軸方向に摺動させることを阻害する要因となる異物の付着を防ぐために回り止めピンの外周面に表面処理が施されることで、回り止めピンに対する異物の付着が防止される。
従って、固定軸の作動不良による漏れ不具合の発生を防止することができるようになるという効果が得られる。
【0025】
請求項9記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記固定軸を回転軸方向に摺動させることを阻害する要因となる異物の付着を防ぐために、貫通孔の内面及びフランジ部表面にも表面処理が施されることで、固定軸の作動不良による漏れ不具合の発生を防止する効果を高めることができるようになる。
【0026】
請求項10記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記回転軸が工作機械の回転軸に接続されることにより、固定軸の作動不良による漏れ不具合の発生によって加工部分に悪影響を及ぼすことを防止することができるようになるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を図面により説明する。
【実施例1】
【0028】
この実施例1のロータリジョイントは、請求項1、2、10に記載の発明に対応する。
なお、この実施例1では、ロータリジョイントの回転軸が工作機械の回転軸に接続されていて、加工部分に流体圧力としてクーラント(液体)を供給する場合を例にとって説明する。
【0029】
図1はこの実施例1のロータリジョイントを示す図2のI−I線における断面図、図2は図1のII−II線における断面図である。
この実施例1のロータリジョイントは、ケーシング1と、フローティングシート(固定軸)2と、主軸モータのロータ軸(回転軸)3と、シール部4と、異物侵入阻止手段5と、を主な構成として備えている。
【0030】
さらに詳述すると、上記フローティングシート2とロータ軸3は同軸上において対向配置されていて、その軸心部には、供給部から供給されるクーラント液等を工作機械等に供給するための流路を形成する供給穴(固定軸側流路)2aと供給穴(回転軸側流路)3aがそれぞれ形成されている
【0031】
上記ケーシング1の軸心部には上記フローティングシート2の軸部21を軸方向摺動可能に支持する摺動支持孔11が形成され、この摺動支持孔11はクーラント液等の供給部と連通された状態となっている。
【0032】
上記摺動支持孔11には環状溝2bが形成され、この環状溝2bにはフローティングシート2における軸部21の外周面と摺動支持孔11の内周面との間を摺動シールするOリング12が装着されている。
【0033】
そして、供給部から供給されるクーラント液等の流体圧力を軸部21の端面で受圧することにより、フローティングシート2をロータ軸3方向に押圧摺動させて供給穴2aと供給穴3aとを連通させるようになっている。
【0034】
上記シール部4は、フローティングシート2の端面に固定されたシールリング41とロータ軸3の端面に固定されたシールリング42とで構成され、両シールリング41、42が互いに対面する状態で配置されている。
【0035】
また、フローティングシート2における軸部21のシールリング41側端部外周には、フランジ部22が形成されていて、このフランジ22には、図2に示すように、上下2カ所に貫通孔22aが形成されると共に、外周4カ所に大きな切欠部22bが形成されている。なお、この切欠部22bは、貫通孔22a形成部分以外の全ての部分に形成させてもよい。即ち、フランジ部22は、貫通孔22a形成部分のみに形成されていればよい。
【0036】
上記貫通孔22aは、フローティングシート2の回り止めの役目をなすもので、この貫通孔22aに貫通させた回り止めピン23をケーシング1に形成されたねじ穴14に螺合させることにより、フローティングシート2の回り止めが行われるようになっている。
【0037】
上記ケーシング1には、フランジ部22を含めて回り止めピン23の外周を覆うカバー51が設けられ、該カバー51はその一方の開口部51aがケーシング1に当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部51bがフローティングシート2におけるロータ軸3側端部外周面との間に微少隙間hを残して閉塞されている。
【0038】
そして、上記ケーシング1には、カバー51内にエアを供給する供給孔2cが形成されていて、エアポンプ52から圧力・流量調整手段53を介して圧力及び流量調整されたエアが供給孔2cを経由してカバー51内に供給されることにより、微少隙間hからカバー51外にエアが放出されるようになっている。
即ち、上記カバー51と、供給孔2cと、エアポンプ52と、圧力・流量調整手段53とで、異物侵入阻止手段5が構成されている。
【0039】
次に本発明実施例1の作用・効果を説明する。
【0040】
この実施例1のロータリジョイントでは、上述のように、ケーシング1には、フランジ部22を含めて回り止めピン23の外周を覆うカバー51が設けられ、該カバー51はその一方の開口部51aがケーシング1に当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部51bがフローティングシート2におけるロータ軸3側端部外周面との間に微少隙間hを残して閉塞されていて、カバー51内にエアが供給されることにより、微少隙間hからカバー51外にエアを放出させるようにしたことで、カバー51内への切粉やスラッジ等の異物の進入を阻止することができるため、摺動部である回り止めピン23の外周面やフローティングシート2のフランジ部22に形成された貫通孔22aの内周面にスラッジ等異物が付着堆積することが防止され、これにより、フローティングシート2の作動不良による漏れ不具合の発生を防止することができるようになるという効果が得られる。
【0041】
また、カバー51内に供給するエアの圧力及び流量を調整する圧力・流量調整手段53を備えたことで、運転状況等に応じて微少隙間hから放出されるエアの量を最適に調整することができるようになる。
【0042】
また、ロータ軸3が工作機械の回転軸に接続されることにより、フローティングシート2の作動不良による漏れ不具合の発生によって加工部分に悪影響を及ぼすことを防止することができるようになるという効果が得られる。
【0043】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、この他の実施例については、前記実施例1と同様の構成部分の図示および説明は省略し、もしくは同一の符号を付してその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【実施例2】
【0044】
この実施例2のロータリジョイントは、請求項1、4〜6、10に記載の発明に対応する。
この実施例2のロータリジョイントは、図3の断面図に示すように、上記ケーシング1には、カバー51内にグリスGを供給する供給孔2cが形成されていて、この供給孔2cからカバー51内にグリスGを供給した状態で、供給孔2cの開口部がねじ込み式の蓋体13で開閉自在に閉塞されている点が、上記実施例1とは相違したものである。
【0045】
即ち、この実施例2では、上記カバー51と、供給孔2cと、蓋体13と、グリスGとで、異物侵入阻止手段5が構成されている。なお、この実施例2では、グリスGとして、例えばフッ素系グリス等の耐水及び耐薬品性に優れたグリスが用いられている。
【0046】
従って、この実施例2では、カバー51内に充填されたグリスGにより、カバー51内へのクーラント液等の進入が阻止されるため、摺動部である回り止めピン23の外周面やフローティングシート2のフランジ部22に形成された貫通孔22aの内周面にスラッジ等異物が付着堆積することが防止され、これにより、フローティングシート2の作動不良による漏れ不具合の発生を防止することができるようになるという効果が得られる。
【0047】
また、供給孔2cの開口部がねじ込み式の蓋体13により開閉自在に閉塞されている構成とすることにより、定期的に蓋体13を開けてグリスGを補給することができるようになる。
【0048】
また、グリスGとして耐水及び耐薬品性に優れたフッ素系グリスが用いられることにより、グリスGの持ちをよくし、これにより、定期的なグリスGの補給回数を減らすことができるようになる。
【実施例3】
【0049】
この実施例3のロータリジョイントは、請求項1、4、6、7、10に記載の発明に対応する。
この実施例3のロータリジョイントは、図4の断面図に示すように、カバー51内にグリスを自動的に補給する補給手段として、供給孔2cの途中には圧縮コイルスプリング(供給手段)6でグリスGをカバー51内内に押し込む方向に常時付勢するピストン7が備えられている構成とした点が、上記実施例2とは相違したものである。
【0050】
従って、この実施例3では、上記実施例2と同様の効果が得られる他に、圧縮コイルスプリング6の付勢力で減少した分のグリスGがカバー51内に補給されるため、定期的なグリスGの補給回数を減らすことができるようになるという追加の効果が得られる。
【0051】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0052】
例えば、実施例では、本発明を工作機械におけるクーラントを供給するロータリジョイント部分に適用する例を示したが、その他の全てのロータリジョイント部分に適用することができる。
【0053】
また、実施例2では、供給孔2cの開口部を蓋体13で閉塞したが、閉塞構造は任意である。
【0054】
また、上記実施例以外に、前記フローティングシート2を主軸モータのロータ軸3方向に摺動させることを阻害する要因となる異物の付着を防ぐために回り止めピン23の外周面、貫通孔22aの内面、及びフランジ部22の表面に撥水表面処理や親水性表面処理等の表面処理を施すことにより、固定軸の作動不良による漏れ不具合の発生を防止することができるようになる。
【0055】
また、実施例3では、カバー51内にグリスを自動的に補給する補給手段として、圧縮コイルスプリング6を用いる場合を例示したが、その他に、ガス圧や、ポンプ圧を用い、制御手段で供給を制御するようにしてもよい。
【0056】
また、補給手段とカバー51との間に開閉自在なバルブを設けるようにしてもよい。このバルブとしては、手動開閉バルブの他に、自動開閉可能な電磁バルブ等を用いることができる。
【0057】
また、前記フランジ部22を含めて回り止めピン23の外周を覆うカバー51
のもう一方の開口部51aとフローティングシート2におけるロータ軸3側端部外周面との間に形成された微少隙間h部分に、外部からの異物の侵入を防ぐ為のシールを設けることにより、カバー51内への切粉やスラッジ等の異物の進入を阻止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1のロータリジョイントを示す図2のI−I線における断面図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】実施例2のロータリジョイントを示す断面図である。
【図4】実施例3のロータリジョイントを示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
G グリス(充填物)
h 微少隙間
1 ケーシング
11 摺動支持孔
12 Oリング
13 蓋体
14 ねじ穴
2 フローティングシート(固定軸)
2a 供給穴(固定軸側流路)
2b 環状溝
2c 供給孔
21 軸部
22 フランジ部
22a 貫通孔
22b 切欠部
23 回り止めピン
3 主軸モータのロータ軸(回転軸)
3a 供給穴(回転軸側流路)
4 シール部
41 シールリング
42 シールリング
5 異物侵入阻止手段
51 カバー
51a 開口部
51b 開口部
52 エアポンプ
53 圧力・流量調整手段
6 圧縮コイルスプリング(供給手段)
7 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心にそれぞれ流路が備えられた固定軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシールリングが装着され、前記固定軸は回転が阻止された状態に固定されると共にケーシングに形成された摺動支持孔に沿って摺動自在に設けられ、前記ケーシングから前記回転軸方向へ向けて軸方向に突出形成された回り止めピンに対し前記固定軸の回転軸側端部外周に備えたフランジ部に形成された貫通孔を摺動自在に装着係止させることにより前記固定軸の回り止めが行われ、前記固定軸側流路に供給される流体圧力によって前記固定軸を回転軸方向に摺動させて前記両シールリングの環状シール面を互いに密着させることによりシール部が形成されるように構成されたロータリジョイントであって、
前記ケーシングには前記フランジ部を含めて前記回り止めピンの外周を覆うカバーが設けられていることを特徴とするロータリジョイント
【請求項2】
請求項1記載のロータリジョイントにおいて、前記カバーはその一方の開口部が前記ケーシングに当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部が前記固定軸における前記回転軸側端部外周面との間に微少隙間を残して閉塞され、
前記カバー内にエアが供給されることにより前記微少隙間から前記カバー外にエアを放出させるように構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項3】
請求項1記載のロータリジョイントにおいて、前記カバーはその一方の開口部が前記ケーシングに当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部が前記固定軸における前記回転軸側端部外周面との間に微少隙間を残して閉塞され、
前記微少隙間には外部からの異物の侵入を防ぐ為のシールが設けられていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項4】
軸心にそれぞれ流路が備えられた固定軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシールリングが装着され、前記固定軸は回転が阻止された状態に固定されると共にケーシングに形成された摺動支持孔に沿って摺動自在に設けられ、前記ケーシングから前記回転軸方向へ向けて軸方向に突出形成された回り止めピンに対し前記固定軸の回転軸側端部外周に備えたフランジ部に形成された貫通孔を摺動自在に装着係止させることにより前記固定軸の回り止めが行われ、前記固定軸側流路に供給される流体圧力によって前記固定軸を回転軸方向に摺動させて前記両シールリングの環状シール面を互いに密着させることによりシール部が形成されるように構成されたロータリジョイントであって、
前記ケーシングには前記フランジ部を含めて前記回り止めピンの外周を覆うカバーが設けられ、
該カバーはその一方の開口部が前記ケーシングに当接固定された状態で閉塞される一方、もう一方の開口部が前記固定軸における前記回転軸側端部外周面との間に微少隙間を残して閉塞され、
前記カバー内に充填物が充填されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項5】
請求項4に記載のロータリジョイントにおいて、前記充填物としてグリスが用いられていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のロータリジョイントにおいて、前記ケーシングには前記カバー内に充填物を供給する供給孔が形成され、
該供給孔が蓋体により開閉自在に閉塞されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項7】
請求項4又は5に記載のロータリジョイントにおいて、前記ケーシングには前記カバー内に充填物を供給する供給孔が形成され、
前記供給孔の途中には充填物を前記カバー内に自動的に補給する補給手段が備えられていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項8】
軸心にそれぞれ流路が備えられた固定軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシールリングが装着され、前記固定軸は回転が阻止された状態に固定されると共にケーシングに形成された摺動支持孔に沿って摺動自在に設けられ、前記ケーシングから前記回転軸方向へ向けて軸方向に突出形成された回り止めピンに対し前記固定軸の回転軸側端部外周に備えたフランジ部に形成された貫通孔を摺動自在に装着係止させることにより前記固定軸の回り止めが行われ、前記固定軸側流路に供給される流体圧力によって前記固定軸を回転軸方向に摺動させて前記両シールリングの環状シール面を互いに密着させることによりシール部が形成されるように構成されたロータリジョイントであって、
前記固定軸を回転軸方向に摺動させることを阻害する要因となる異物の付着を防ぐために前記回り止めピンの外周面に表面処理が施されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項9】
請求項8に記載のロータリジョイントにおいて、前記固定軸を回転軸方向に摺動させることを阻害する要因となる異物の付着を防ぐために、前記貫通孔の内面及び前記フランジ部表面にも表面処理が施されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記回転軸が工作機械の回転軸に接続されていることを特徴とするロータリジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−218294(P2007−218294A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37124(P2006−37124)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000179328)リックス株式会社 (33)
【Fターム(参考)】