説明

ロータリセンサ

【課題】 寿命の延長が可能なロータリセンサを提供する。
【解決手段】 ロータリセンサ1は、車体Bに対して固定されるハウジング2と、導電材料からなりスタンドSに対して固定されるロータ4と、ハウジング2に保持され車体に対するスタンドSの回転に伴ってロータ4との間の距離を変化させるコイル31と、コイル31のインピーダンスに基いて車体Bに対するスタンドSの向きを検出する検出回路とを備える。ロータリスイッチを用いる場合に比べ、可動接点と固定接点とのように互いに同じ空間に配置するべき部品がハウジング2とロータ4との間に存在しないので、上記のような空間を密封するためのオイルシールが不要となるから、接点の磨耗やオイルシールの磨耗が発生しないことで寿命の延長が可能となる。また、オイルシールが不要となることで部品点数が減少し、製造コストの低減が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば図5に示すように、二輪車において車体BとスタンドSとの連結部に取り付けられてスタンドSの起立状態を検出するロータリセンサ1が提供されているつまり、スタンドSが停車時の起立状態であるときにはエンジンが始動しないようにすることで、スタンドSが起立状態のまま発進することを防ぐのである。
【0003】
図5の例について詳しく説明すると、ロータリセンサ1は、車体部Bに対して連結されたハウジング2と、ハウジング2に対して回転自在に取り付けられるとともにスタンドSに連結されスタンドSが車体Bに対して矢印A1で示すように回転したときにスタンドSに連動してハウジング2に対して回転するロータ(図示せず)とを備える。ハウジング2は、ロータ(図示せず)を覆う有底円筒形状の本体部21と、ハウジング2に対するロータの回転に伴って出力が変化する検出部(図示せず)に電気的に接続された電線Cが引き出される電線引き出し部22と、車体Bから突設された被保持凸部B1を電線引き出し部22との間で挟む挟み部23とを有する。ハウジング2は、電線引き出し部22と挟み部23との間に被保持凸部B1を挟むことで車体Bに対する回転を禁止されている。これにより、スタンドSが車体Bに対して回転したときにはロータがハウジング2に対して回転する。上記の検出部は、スタンドSが起立状態か否かによって出力が切り替わるように構成されている。図5の例では、スタンドSには車体Bの被保持凸部B1と同じ方向へ突出した突起S1が設けられ、車体Bに設けられた被保持凸部B1とスタンドSに設けられた突起S1とは引っ張りコイルばねからなる連結ばねSPを介して連結されており、スタンドSは、連結ばねSPのばね力により、停車時の起立状態か走行時の格納状態かの一方に維持される。
【0004】
検出部としては、例えば、ハウジング2に設けられた固定接点と、ロータに設けられてスタンドSの向き(起立状態か格納状態か)に応じて前記固定接点に対する離接が切り替わる可動接点とからなるロータリスイッチを用いることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−231094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、検出部として上記のようなロータリスイッチを用いる場合、ハウジング2とロータとの間の隙間を閉塞して固定接点と可動接点とが収納された空間を密閉するために、該空間を囲む環形状のオイルシール(図示せず)をハウジング2とロータとの間に介在させる必要があり、このようなオイルシールはロータに対するハウジング2の回転に伴って磨耗する。そして、オイルシールが磨耗すると、密閉性の低下により外部から進入した塵などの異物や、オイルシール自体の磨耗粉が、固定接点と可動接点との間に入り込んで接触不良の原因となる可能性がある。さらに、固定接点と可動接点とにも磨耗が発生する。また、上記のオイルシールが磨耗して上記空間内に水が浸入した場合には短絡が発生する可能性もある。以上により、検出部として上記のようなロータリスイッチを用いる場合には、固定接点と可動接点との接触不良や短絡が発生するまでのロータリセンサ1の寿命が短くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、寿命の延長が可能なロータリセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、二輪車の車体に対するスタンドの向きの検出に用いられるロータリセンサであって、車体に対して固定されるハウジングと、導電材料からなりスタンドに対して固定されるロータと、ハウジングに保持され車体に対するスタンドの回転に伴ってロータとの間の距離を変化させるコイルと、コイルのインピーダンスに基いて車体に対するスタンドの向きを検出する検出回路とを備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、車体に対するスタンドの向きすなわちハウジングに対するロータの向きの検出にコイルを用いていることにより、可動接点と固定接点とのように互いに同じ空間に配置するべき部品がハウジングとロータとの間に存在しない。従って、ロータリスイッチを用いる場合に比べ、上記のような空間を密封するためのオイルシールが不要となるから、接点の磨耗やオイルシールの磨耗が発生しないことで寿命の延長が可能となる。また、オイルシールが不要となることで部品点数が減少し、製造コストの低減が可能となる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ハウジングは車体に対して1本の取付ボルトによって固定されるものであって、ハウジングにおいて車体に向けられる面には、車体に設けられた位置決め穴に挿入されることで、車体に対するハウジングの回転であって取付ボルト周りでの回転を阻止する位置決め凸部が突設されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、位置決め穴への位置決め凸部の挿入により、車体に対するハウジングの回転であって取付ボルト周りでの回転が阻止される。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、コイルと検出回路とがそれぞれ実装されるとともにハウジングに保持されたプリント配線板を備え、プリント配線板の厚さ方向は、車体に対するスタンドの回転軸に交差する方向に向けられていることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、プリント配線板の厚さ方向を、車体に対するスタンドの回転軸に沿った方向に向ける場合に比べ、車体に対するスタンドの回転軸に沿った方向から見たハウジングの寸法形状を小さくすることができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、スタンドと車体とをそれぞれ貫通するピボットボルトによりスタンドが車体に連結されている二輪車に取り付けられるロータリセンサであって、前記ピボットボルトによりロータがスタンドに対して固定されることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、スタンドへのロータの固定に別途のボルトを用いる場合に比べ、部品点数の削減による製造コストの低減が可能となり、また、上記別途のボルト用のねじ穴をスタンドに設ける必要がないことにより加工費の低減が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明は、車体に対するスタンドの向きすなわちハウジングに対するロータの向きの検出にコイルを用いていることにより、可動接点と固定接点とのように互いに同じ空間に配置するべき部品がハウジングとロータとの間に存在しない。従って、ロータリスイッチを用いる場合に比べ、上記のような空間を密封するためのオイルシールが不要となるから、接点の磨耗やオイルシールの磨耗が発生しないことで寿命の延長が可能となる。また、オイルシールが不要となることで部品点数が減少し、製造コストの低減が可能となる。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ハウジングは車体に対して1本の取付ボルトによって固定されるものであって、ハウジングにおいて車体に向けられる面には、車体に設けられた位置決め穴に挿入されることで、車体に対するハウジングの回転であって取付ボルト周りでの回転を阻止する位置決め凸部が突設されていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、位置決め穴への位置決め凸部の挿入により、車体に対するハウジングの回転であって取付ボルト周りでの回転が阻止される。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、コイルと検出回路とがそれぞれ実装されるとともにハウジングに保持されたプリント配線板を備え、プリント配線板の厚さ方向は、車体に対するスタンドの回転軸に交差する方向に向けられていることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、プリント配線板の厚さ方向を、車体に対するスタンドの回転軸に沿った方向に向ける場合に比べ、車体に対するスタンドの回転軸に沿った方向から見たハウジングの寸法形状を小さくすることができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、スタンドを車体に連結するためのピボットボルトによりロータがスタンドに対して固定されるので、スタンドへのロータの固定に別途のボルトを用いる場合に比べ、部品点数の削減による製造コストの低減が可能となり、また、上記別途のボルト用のねじ穴をスタンドに設ける必要がないことにより加工費の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態を示す断面図である。
【図2】同上を示す斜視図である。
【図3】同上を示す分解斜視図である。
【図4】同上の変更例を示す断面図である。
【図5】ロータリセンサの使用形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1〜図3に示すように、本実施形態のロータリセンサ1は、車体(ブラケット)Bに対して固定されるハウジング2と、導電材料からなりスタンドSに対して固定されるロータ4と、ハウジング2に保持され車体Bに対するスタンドSの回転に伴ってロータ4との間の距離を変化させるコイル31と、コイル31のインピーダンスに基いて車体に対するスタンドの向きを検出する検出回路(図示せず)とを備える。図1〜図3の例では、スタンドSは、スタンドSと車体Bとを貫通するピボットボルトPBにより、車体Bに対しピボットボルトPBの中心軸周りに回転可能に連結されている。以下、上下方向は図1を基準とする。すなわち、ピボットボルトPBの中心軸(車体Bに対するスタンドSの回転軸)に平行な方向のうち、ピボットボルトの頭部PB2が向けられた方向を上方と呼ぶ。
【0025】
コイル31は、検出回路とともにプリント配線板30に実装されて検出部3を構成している。
【0026】
ハウジング2は、検出部3が収納される収納凹部20が上面に開口したボディ2aと、ボディ2aに固着されて収納凹部20を密閉するカバー2bとからなる。ボディ2aとカバー2bとはそれぞれ合成樹脂成型品からなる。
【0027】
カバー2bは、扁平な直方体形状であってボディ2aの上端面に当接する本体部23と、本体部23の下面に突設され環形状であって収納凹部20の内周面に当接することによりボディ2aに対してカバー2bを位置決めする位置決め部24とを有する。
【0028】
ボディ2aにおいて、収納凹部20の内周面には、収納凹部20の上下方向に直交する断面での断面形状を上方に向かって小さくする段20aが設けられており、プリント配線板30は厚さ方向を上下方向に向けて段20a上に固着されている。
【0029】
また、ボディ2aには、車体Bに設けられたねじ穴B2に螺合する取付ボルトBOが挿通されるボルト挿通穴21が上下に貫設されており、ハウジング2は取付ボルトBOによって車体Bに固定される。ボルト挿通穴21の内面は、金属製であってボディ2aにインサート成型された円筒形状の部品で構成されている。これにより、ボディ2a全体が合成樹脂で構成される場合に比べ、取付ボルトBOの締め付けでのボディ2aの破損が発生しにくくなっている。
【0030】
さらに、ボディ2aの下面には、車体Bに設けられた位置決め穴B3に挿入される位置決め凸部22が下方に突設されている。位置決め凸部22は外径が位置決め穴B3の内径に略等しい円柱形状とされている。つまり、位置決め穴B3に位置決め凸部22が挿入されることで、車体Bに対するハウジング2の回転であって取付ボルトBOの中心軸周りの回転が阻止されている。
【0031】
ロータ4は、例えば金属板に打ち抜き加工と絞り加工とが施されてなり、ピボットボルトPBの脚部PB1が挿通されるボルト挿通穴41aが上下に貫設されピボットボルトPBによりスタンドSに対して固定される本体部41を有する。本体部41には、スタンドSの側面に当接する回転止め部42が下方に突設されており、この回転止め部42がスタンドSの側面に当接することで、ロータ4はスタンドSに対する回転であってピボットボルトPB周りの回転を禁止されている。これにより、ロータ4は、スタンドSの車体Bに対する回転に伴って、ハウジング2に対して回転する。
【0032】
さらに、ロータ4は、ボルト挿通穴41aと同心の4分の1円弧形状の被検出部43を有する。被検出部43は本体部41と同様に厚さ方向を上下方向に向けているが、本体部41から上方に突出する連結部44を介して本体部41に連結されていることで、本体部41やハウジング2の上面よりも上方に位置している。
【0033】
ここで、ロータ4の被検出部43は、スタンドSが格納状態と起立状態との一方であるときにコイル31の上側においてコイル31に近接し、スタンドSが格納状態と起立状態との他方であるときにコイル31の上側には位置しないように、寸法形状及び配置が決定されている。つまり、車体Bに対するスタンドSの回転に伴ってロータ4がハウジング2に対して回転したときには、主に被検出部43とコイル31との距離が変化することにより、コイル31のインダクタンスが変化する。また、ロータ4の影響を含むコイル31のインダクタンスはスタンドSが起立状態か格納状態かによって異なるのであり、検出回路は、ハウジング2に対するロータ4の回転に伴うコイル31のインダクタンスの変化に基いて、スタンドSの向き(起立状態か格納状態か)を判定する。
【0034】
上記構成によれば、コイル31とロータ4とは互いに接触させる必要がなく、ロータリスイッチにおける可動接点と固定接点とのように互いに同じ空間に配置するべき部品がハウジング2とロータ4との間に存在しないので、上記のような空間を密封するためのオイルシールが不要となる。従って、ロータリスイッチを用いる場合に比べ、接点の磨耗やオイルシールの磨耗が発生しないことで寿命の延長が可能となり、また、オイルシールが不要となることで部品点数が減少し、製造コストの低減が可能となる。
【0035】
さらに、スタンドSを車体に連結するためのピボットボルトPBによってロータ4がスタンドSに固定されているので、スタンドSへのロータ4の固定に別途のボルトを用いる場合に比べ、部品点数の削減による製造コストの低減が可能となり、また、上記別途のボルト用のねじ穴をスタンドSに設ける必要がないことにより加工費の低減が可能となる。
【0036】
なお、図4に示すように、プリント配線板30の厚さ方向を、車体Bに対するスタンドSの回転軸に交差する方向(図4では左右方向)に向けてもよい。この構成を採用すれば、車体Bに対するスタンドSの回転軸に沿った方向(図4での上下方向)から見たハウジング2の寸法形状を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ロータリセンサ
2 ハウジング
4 ロータ
22 位置決め凸部
30 プリント配線板
31 コイル
B 車体
B3 位置決め穴
BO 取付ボルト
PB ピボットボルト
S スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車の車体に対するスタンドの向きの検出に用いられるロータリセンサであって、
車体に対して固定されるハウジングと、
導電材料からなりスタンドに対して固定されるロータと、
ハウジングに保持され車体に対するスタンドの回転に伴ってロータとの間の距離を変化させるコイルと、
コイルのインピーダンスに基いて車体に対するスタンドの向きを検出する検出回路とを備えることを特徴とするロータリセンサ。
【請求項2】
ハウジングは車体に対して1本の取付ボルトによって固定されるものであって、
ハウジングにおいて車体に向けられる面には、車体に設けられた位置決め穴に挿入されることで、車体に対するハウジングの回転であって取付ボルト周りでの回転を阻止する位置決め凸部が突設されていることを特徴とする請求項1記載のロータリセンサ。
【請求項3】
コイルと検出回路とがそれぞれ実装されるとともにハウジングに保持されたプリント配線板を備え、
プリント配線板の厚さ方向は、車体に対するスタンドの回転軸に交差する方向に向けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のロータリセンサ。
【請求項4】
スタンドと車体とをそれぞれ貫通するピボットボルトによりスタンドが車体に連結されている二輪車に取り付けられるロータリセンサであって、
前記ピボットボルトによりロータがスタンドに対して固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロータリセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−228566(P2010−228566A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77694(P2009−77694)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】