説明

ロータリダンパ

【課題】シャフト外周を介しての一方室と他方室との連通を阻止するとともにパッキンの摩耗と摩擦力を抑制することができるロータリダンパを提供することである。
【解決手段】ケーシング2に設けられて圧力室およびシャフト1の外周の双方に対面する環状凹部11と、当該環状凹部内に収容されてパッキン7との間に背圧室P1を形成するサイドシール9と、上記背圧室を一方室と他方室へ連通する排出通路とを備え、サイドシールは、一方室と他方室のうち高圧側の圧力を受けることで高圧側の室を背圧室へ連通させ、背圧室の圧力によって押圧されて上記環状凹部の周側面および拡径部1bの軸方向端面1cへ密着してケーシングとシャフトとの間をシールしてシャフト外周を介しての上記一方室と上記他方室との連通を遮断し、排出通路は、上記背圧室の圧力を上記一方室と上記他方室のうち低圧側へ逃がして当該背圧室の圧籠りを抑制することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリダンパの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリダンパにあっては、シャフトと、上記シャフトを周方向への回転を許容しつつ軸支する一対のサイドパネルと、これらのサイドパネルで挟持されて内部に圧力室を形成するケースと、上記シャフトに設けられて上記圧力室を一方室と他方室とに区画するベーンとを備えて構成されている。
【0003】
そして、ロータリダンパは、たとえば、シャフトに外部から回転力が加わると、シャフトの回転に伴ってベーンが圧力室内で移動して一方室を縮小し、他方室を拡大するよう動作し、縮小される一方室から拡大される他方室へ移動する油の流れに減衰弁で抵抗を与えることで、シャフトの回転を抑制する減衰力を発揮するようになっている(特許文献1参照)。
【0004】
上記ロータリダンパでは、ベーンで一方室と他方室とを仕切っているが、シャフトのベーン間の側面とケースとの間、ベーンとサイドパネルとの間、さらにはサイドパネルとシャフトとの間を介して一方室と他方室とが連通してしまうと高圧側の室の圧力が低圧側の室へ逃げてしまい、減衰弁を通過する流量が減少して狙い通りの減衰力を発揮できなくなるので、ケースにシャフトのベーン間の側面に摺接するシールを設け、ベーンにケースとサイドパネルに摺接するシールを設けるとともに、ケース側に固定した筒状のベアリングをシャフトに摺接させ、ベーンに設けたシールのシール端をベアリングの端部に摺接させることで、減衰弁が設けられている通路以外では、一方室と他方室との連通を断つようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−122287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなロータリダンパにあっては、シャフト回りをベアリングのみでシールすることは難しく、最終的には、ベアリングよりも外方側に設けられるオイルシールでシャフト回りをシールするようにしており、ベアリングとシャフトとの間の微小隙間を介して一方室と他方室とが連通するので、上記構造では高圧側の室から低圧側の室への圧力漏れを阻止することは難しく、シャフトへ外部トルクの入力に対して減衰力の発生応答に遅れが生じたり、シャフトの回転速度が低いと減衰力不足となったりすることがあり、改善が望まれている。
【0007】
また、油がベアリングとシャフトとの微小隙間を通過することから、シャフトとサイドパネルとの間であってベアリングよりも外方側にロータリダンパの外方への漏れを防止するためのパッキンを設けているが、ベアリングとシャフトとの間を介して当該ベアリングとパッキンとの間の隙間に入り込んで、当該隙間が蓄圧され、パッキンに過剰な圧力が作用することがあり、特に、パッキンがダンパ内圧を受けてシャフトへの緊迫力を高めるような構造である場合、当該パッキンが上記圧力でシャフトへ過剰に押圧されて摩耗してしまうことに加え、パッキンとシャフトの間で生じる摩擦力が大きくなる問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、シャフト外周を介しての一方室と他方室との連通を阻止するとともにパッキンの摩耗を抑制することができ、パッキンとシャフトとの間で生じる摩擦力を低減することができるロータリダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の課題解決手段は、途中に拡径部を備えたシャフトと、上記シャフトを周方向への回転を許容しつつ軸支するとともに内部に圧力室を形成するケーシングと、上記シャフトにおける拡径部の外周に設けられるとともに上記ケーシング内に摺動自在に挿入されて上記圧力室を一方室と他方室とに区画するベーンと、上記ケーシングとシャフトとの間を密封してケーシング外への作動流体の漏れを阻止する環状のパッキンとを備えたロータリダンパにおいて、上記ケーシングに設けられて上記圧力室および上記シャフトの外周の双方に対面する環状凹部と、当該環状凹部内に収容されて上記パッキンとの間に背圧室を形成するサイドシールと、上記背圧室を上記一方室と上記他方室へ連通する排出通路とを備え、サイドシールは、上記一方室と上記他方室のうち高圧側の圧力を受けることで高圧側の室を背圧室へ連通させ、背圧室の圧力によって押圧されて上記環状凹部の周側面および上記拡径部の軸方向端面へ密着してケーシングとシャフトとの間をシールしてシャフト外周を介しての上記一方室と上記他方室との連通を遮断し、排出通路は、上記背圧室の圧力を上記一方室と上記他方室のうち低圧側へ逃がして当該背圧室の圧籠りを抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロータリダンパによれば、シャフト外周を介しての一方室と他方室との連通を阻止するとともにパッキンの摩耗を抑制することができることに加え、パッキンとシャフトとの間で生じる摩擦力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施の形態におけるロータリダンパの縦断面図である。
【図2】一実施の形態におけるロータリダンパの横断面図である。
【図3】一実施の形態におけるロータリダンパの一方のサイドパネルの平面図である。
【図4】一実施の形態におけるロータリダンパの一方のサイドパネルとサイドシールのAA縦断面図である。
【図5】一実施の形態におけるロータリダンパの他方のサイドパネルの平面図である。
【図6】一実施の形態におけるロータリダンパの他方のサイドパネルとサイドシールのBB縦断面図である。
【図7】他の実施の形態におけるロータリダンパのサイドシールの斜視図である。
【図8】他の実施の形態の一変形例におけるロータリダンパのサイドシールの斜視図である。
【図9】他の実施の形態の他の変形例におけるロータリダンパのサイドパネルの平面図である。
【図10】他の実施の形態の他の変形例におけるロータリダンパのシャフトの一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1から図6に示すように、一実施の形態におけるロータリダンパDは、シャフト1と、上記シャフト1を周方向への回転を許容しつつ軸支するとともに内部に圧力室Rを形成するケーシング2と、上記シャフト1に設けられるとともに上記ケーシング2内に摺動自在に挿入されて上記圧力室Rを一方室R1と他方室R2とに区画するベーン6と、上記ケーシング2とシャフト1との間を密封してケーシング2外への作動流体の漏れを阻止する環状のパッキンとしてのUパッキン7,8と、上記ケーシング2に設けられて上記圧力室Rおよび上記シャフト1の外周の双方に対面する環状凹部11,12と、当該環状凹部11,12内に収容されて上記パッキン7,8との間に背圧室P1,P2を形成するサイドシール9,10と、上記背圧室P1,P2内の圧力を上記一方室R1と上記他方室R2のうち低圧側へ排出する排出通路13,14とを備えて構成されている。そして、このロータリダンパDは、シャフト1をケーシング2に対して周方向へ回転させると、このシャフト1の回転を抑制する減衰力を発揮する。
【0013】
以下、このロータリダンパDの各部について詳細に説明する。まず、シャフト1は、先端に設けられて図示しない継手等への連結を可能とするセレーション1aと、途中に設けた他部よりも大径な拡径部1bと、当該拡径部1bの外周であって周方向に180度の位相をもって設けた一対のベーン6,6と、拡径部1bのベーン6,6間の側部から開口して反対側のベーン6,6間へ通じるとともに互いに軸方向へずれて交わらない二つの連通孔15,16とを備えている。なお、上記したところでは、図外の継手等への連結のためにセレーション1aを設けているが、接続方法はこれに限定されない。
【0014】
ケーシング2は、詳細には後述するが、中空部31を備えたケース本体3と、ケース本体3の図1中上下に積層固定されるサイドパネル4,5とを備えて構成され、中空部31で内部に圧力室Rを形成しており、シャフト1は、サイドパネル4,5に回転自在に軸支されて、ベーン6,6は、圧力室R内に挿入されて、圧力室R内を一方室R1と他方室R2とに区画している。
【0015】
ベーン6は、先端に円弧状面を備えており、ケーシング2におけるサイドパネル4に摺接する図1中上端、ケーシング2におけるケース本体3の内面に摺接する先端、およびケーシング2におけるサイドパネル5に摺接する図1中下端にかけて、コ字状のシール17が装着されており、このシール17は、ケーシング2におけるケース本体3、サイドパネル4,5に摺接してベーン6、ケーシング2との間をシールしている。
【0016】
ケース本体3は、圧力室Rを形成する中空部31を備えたシェル30と、シェル30の側部に設けたバルブブロック32と、シェル30の図1中上端に同一円周上に間隔を開けて設けた複数の螺子孔33と、シェル30の図1中下端に同一円周上に間隔を開けて設けた複数の螺子孔34とを備えて構成されている。
【0017】
そして、ケース本体3の図1中上方には、サイドパネル4が積層され、ケース本体3の図1中下方には、サイドパネル5が積層され、シャフト1をこれらケース本体3、サイドパネル4,5に挿通しつつ、これらを一体化すると、シェル30の中空部31が密閉されて二つの扇状の圧力室Rを形成する。これら二つの圧力室Rは、シャフト1に設けたベーン6によって、それぞれ、空間L1と空間L2とに区画され、たとえば、作動油等の流体が封入される。なお、ケース本体3のシェル30とサイドパネル4,5との間には、中空部31の外周を取り巻くOリング41,42が装着されていて、ケース本体3とサイドパネル4,5との間がシールされる。
【0018】
空間L1は、図2では、シャフト1の軸から見てベーン6の左側に区画され、空間L2は、シャフト1の軸から見てベーン6の右側に区画されており、シャフト1が図2中で時計回りに回転する場合、ベーン6によって各空間L1が拡大されるとともに各空間L2が縮小され、反対に、シャフト1が図2中で反時計回りに回転する場合、ベーン6によって各空間L1が縮小されるとともに各空間L2が拡大されるようになっている。
【0019】
そして、シャフト1の回転に伴って容積がともに拡大或いは縮小される空間L1同士をシャフト1の連通孔15によって連通してこれを一方室R1とし、同じく、シャフト1の回転に伴って容積がともに拡大或いは縮小される空間L2同士をシャフト1の連通孔16によって連通してこれを他方室R2としてあり、これら一方室R1と他方室R2は上述したところから理解できるように、ベーン6によって区画される。また、連通孔15の開口位置は、シャフト1が回転しても一方室R1同士が連通孔15によって連通状態に維持されようベーン6の付根に設けてあり、連通孔16の開口位置もまた、シャフト1が回転しても他方室R2同士が連通孔16によって連通状態に維持されるようベーン6の付根に設けてある。
【0020】
戻って、ケース本体3のシェル30からバルブブロック32へかけて一方室R1と他方室R2とを連通する減衰通路35が設けられており、バルブブロック32には、減衰通路35の途中に配置されて一方室R1から他方室R2へ向かう作動油の流れのみを許容しつつ当該流れに抵抗与える減衰弁36と、減衰弁36に並列して減衰通路35に配置され他方室R2から一方室R1へ向かう作動油の流れのみを許容するチェック弁37と、減衰通路35の途中であって減衰弁36に対しては直列に配置されて他方室R2から一方室R1へ向かう作動油の流れのみを許容しつつ当該流れに抵抗与える減衰弁38と、減衰弁38に並列して減衰通路35に配置され一方室R1から他方室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するチェック弁39と、減衰通路35の途中であって減衰弁36と減衰弁38の間に接続されるアキュムレータ40とが設けられている。
【0021】
したがって、シャフト1が時計回りに回転して、ベーン6が他方室R2を圧縮すると、他方室R2から押し出された作動油は、減衰弁38およびチェック弁37を通過し減衰通路35を通じて拡大する一方室R1へ移動することになり、この作動油の流れに減衰弁38が抵抗を与えることで、他方室R2と一方室R1とに差圧を生じせしめて、上記シャフト1の回転を抑制する減衰力を発揮する。
【0022】
他方、シャフト1が反時計回りに回転して、ベーン6が一方室R1を圧縮すると、一方室R1から押し出された作動油は、減衰弁36およびチェック弁39を通過し減衰通路35を通じて拡大する他方室R2へ移動することになり、この作動油の流れに減衰弁36が抵抗を与えることで、一方室R1と他方室R2とに差圧を生じせしめて、上記シャフト1の回転を抑制する減衰力を発揮する。
【0023】
なお、ケース本体3のシェル30の内周であってシャフト1の拡径部1bの外周に摺接する部位には、それぞれ、シェル30の上下端をともにコ字状のシール43が装着されており、このシール43、ベーン6に設けたシール17、Oリング41,42、さらには、サイドパネル4,5の環状凹部11,12内に収容されたサイドシール9,10によって、減衰通路35以外で一方室R1と他方室R2が連通しないようになっている。
【0024】
ロータリダンパDでは、シャフト1の回転による一方室R1の拡大或いは縮小分の容積は、他方室R2の縮小或いは拡大分の容積に等しくなるので、シリンダとピストンとピストンロッドとで構成される直動片ロッド型のダンパのようにシリンダ内容積変化を補償する必要はないが、温度変化による流体の体積変化、この場合、作動油の体積変化を補償する必要があるので、アキュムレータ40を設置して上記作動油の温度変化による体積変化を補償するようにしている。また、アキュムレータ40は、封入される作動油に所定圧の圧力を作用させていて、作動油の見掛け上の剛性を高めて減衰力発生応答性を向上させる。
【0025】
つづいて、サイドパネル4は、この実施の形態の場合、図1から図4に示すように、筒状でシャフト1の図1中上端が挿通されるシャフト保持部4aと、シャフト保持部4aの図1中下端外周に設けたフランジ状のキャップ部4bと、キャップ部4bに上述のケース本体3におけるシェル30の各螺子孔33に符合するように設けた複数のボルト挿通孔4cと、シャフト保持部4aのケース本体側の内周に設けた環状凹部11と、キャップ部4bのケース本体側端であって一方室R1に面する部位から環状凹部11へと通じる一方室通路26と、キャップ部4bのケース本体側端であって他方室R2に面する部位から環状凹部11へと通じる他方室通路27とを備えている。このサイドパネル4は、ケース本体3の図1中上方に積層されて、ボルト挿通孔4cに通したボルト44を螺子孔33に螺着することで、これらが一体化される。なお、ボルト44は、強度上要求される数を用いればよく、ボルト44の数に対応する数のボルト挿通孔4cおよび螺子孔33を設ければよい。
【0026】
また、シャフト保持部4aの内周には、シャフト1の拡径部1bよりも図1中上方側に摺接する筒状のベアリング18が装着され、同じくシャフト保持部4aの内周であってこのベアリング18よりも図1中上方となる反ケース本体側には、シャフト1の外周に摺接するパッキンとしての環状のUパッキン7と、このUパッキン7よりも反ケース本体側に配置される環状のダストシール19とがそれぞれ装着され、さらに、ベアリング18よりも図1中下方となるケース本体側に設けられた環状凹部11内には、環状のサイドシール9と、サイドシール9よりも反ケース本体側に設けた環状のテーパリング20と、テーパリング20をサイドシール9側へ向けて押圧するばね部材としての皿ばね21とが収容されている。
【0027】
そして、環状凹部11は、圧力室Rおよび上記シャフト1の外周の双方に対面しており、内方にはサイドシール9が収容される。サイドシール9は、環状凹部11の周側面11aと拡径部1bの上端面1cとに当接して、上記環状凹部11内に背圧室P1を形成する。背圧室P1は、サイドシール9とパッキンとしてのUパッキン7との間に配置されており、当該背圧室P1の圧力がUパッキン7へも作用するようになっている。
【0028】
また、Uパッキン7は、背圧室P1の圧力の作用によって内周リップ7aがシャフト1の外周に押しつけられることで、シャフト1の外周を密にシールすることができるようになっている。
【0029】
サイドシール9は、内周にテーパリング側端部の内径が大径となるように内周テーパ面9aを備えており、テーパリング20は、上記環状凹部11内であって上記サイドシール9より背圧室P1側へ設けられて外周にサイドシール側端部の外径が小径となるように外周テーパ面20aを備えており、サイドシール9の内周テーパ面9aと上記テーパリング20の外周テーパ面20aとを対面させて摺動自在に当接させている。
【0030】
さらに、テーパリング20の反サイドシール側端と環状凹部11の底面11bとの間には、皿ばね21が介装されており、テーパリング20をサイドシール9側へ押圧している。
【0031】
この皿ばね21の附勢力は、サイドシール9の内周テーパ面9aと上記テーパリング20の外周テーパ面20aとが当接しているので、サイドシール9に、環状凹部11の周側面11aへ押しつける方向と、拡径部1bの上端面1cへ押しつける方向へ作用している。また、一方室R1或いは他方室R2の圧力が背圧室P1より大きくなり皿ばね21の附勢力に抗してサイドシール9が背圧室P1側へ後退すると、サイドシール9と拡径部1bの上端面1cとの間に隙間が生じて、背圧室P1が一方室R1或いは他方室R2へ連通されて、背圧室P1内に一方室R1と他方室R2のうち高圧側の圧力が導かれるようになっている。
【0032】
このように背圧室P1内に一方室R1と他方室R2のうち高圧側の圧力が作用すると、この背圧(背圧室P1内の圧力)は、サイドシール9を環状凹部11の周側面11aへ押しつける方向と、拡径部1bの上端面1cへ押しつける方向へ作用するので、当該背圧に押圧されてサイドシール9の外周は環状凹部11の周側面11aに密着し、サイドシール9の図4中下面となるケース本体側面がシャフト1の拡径部1bの上端面1cに密着して、ケーシング2とシャフト1との間をシールしシャフト1回りでの一方室R1と他方室R2との連通を阻止する。なお、テーパリング20とばね部材としての皿ばね21は、予め、サイドシール9の環状凹部11内での位置決めと予圧を与えるために設けられており、ロータリダンパDの回転速度が遅くともロータリダンパDの動作初期からシャフト1回りをシールして一方室R1と他方室R2の連通を確実に阻止することができるが、これらを省略することも可能であり、その場合は、サイドシール9の内周テーパ面9aを設けなくともよい。また、ばね部材は、皿ばね21に限らず、ウェーブワッシャその他のばねや弾性体を使用することができる。
【0033】
転じて、一方室通路26の一方室R1側の開口は、この実施の形態の場合、サイドパネル4のキャップ部4bに螺子28aで螺子止めされる一方側板状弁体28bを備えた一方側リリーフ弁28で開閉されるようになっている。一方側板状弁体28bには初期撓みを与えてあって開弁圧が設定されている。一方室通路26の環状凹部11側の開口は、サイドシール9にて形成される背圧室P1に連通されており、一方側リリーフ弁28が背圧室P1の圧力が一方室R1の圧力を上回ってこれらの差圧が開弁圧に達すると一方室通路26を開放して背圧室P1の圧力を一方室R1へ逃がすが、一方室R1から背圧室P1へ向かう流れを阻止するようになっていて、上記背圧室P1から上記一方室R1へ向かう流れのみを許容するようになっている。なお、一方側リリーフ弁28は、ベーン6の可動範囲外、つまり、シャフト1の回転に伴ってベーン6が圧力室R内で揺動する範囲外(図3中斜線で示した範囲)に設けてあって、シャフト1が回転しても一方側リリーフ弁28がベーン6と接触せず、シャフト1の回転を阻害しないようになっている。
【0034】
また、他方室通路27の他方室R2側の開口は、この実施の形態の場合、サイドパネル4のキャップ部4bに螺子29aで螺子止めされる他方側板状弁体29bを備えた他方側リリーフ弁29で開閉されるようになっている。他方側板状弁体29bには初期撓みを与えてあって開弁圧が設定されている。他方室通路27の環状凹部11側の開口は、サイドシール9にて形成される背圧室P1に連通されており、他方側リリーフ弁29が背圧室P1の圧力が他方室R2の圧力を上回ってこれらの差圧が開弁圧に達すると他方室通路27を開放して背圧室P1の圧力を他方室R2へ逃がすが、他方室R2から背圧室P1へ向かう流れを阻止するようになっていて、上記背圧室P1から上記他方室R2へ向かう流れのみを許容するようになっている。他方側リリーフ弁29もまた、ベーン6の可動範囲外、つまり、シャフト1の回転に伴ってベーン6が圧力室R内で揺動する範囲外(図3中斜線で示した範囲)に設けてあって、シャフト1が回転しても他方側リリーフ弁29がベーン6と接触せず、シャフト1の回転を阻害しないようになっている。
【0035】
そして、一方側リリーフ弁28は、一方室R1と他方室R2のうち、一方室R1が低圧側であって、高圧側の他方室R2の圧力が導入される背圧室P1の圧力が高くなって、背圧室P1と一方室R1の差圧が開弁圧に達すると背圧室P1の圧力を一方室R1へ逃がして、背圧室P1の圧籠りを抑制する。なお、一方側リリーフ弁28の開弁圧は、ロータリダンパDがUパッキン7へ作用する圧力が過剰とならない程度に設定され、シャフト1の回転速度が低速時に開弁して他方室R2から一方室R1へ圧力が逃げることがないようにすることで、減衰力の発生応答に遅れが生じさせないようにしつつも、背圧室P1の圧籠りも防止できる。他方側リリーフ弁29にあっても同様に、一方室R1と他方室R2のうち、他方室R2が低圧側であって、高圧側の一方室R1の圧力が導入される背圧室P1の圧力が高くなって、背圧室P1と他方室R2の差圧が開弁圧に達すると背圧室P1の圧力を他方室R2へ逃がして、背圧室P1の圧籠りを抑制する。他方側リリーフ弁29の開弁圧にあっても、ロータリダンパDがUパッキン7へ作用する圧力が過剰とならない程度に設定され、シャフト1の回転速度が低速時に開弁して一方室R1から他方室R2へ圧力が逃げることがないようにすることで、減衰力の発生応答に遅れが生じさせないようにしつつも、背圧室P1の圧籠りも防止できる。すなわち、一方室通路26と一方側リリーフ弁28、他方室通路27と他方側リリーフ弁29は、排出通路13を形成しており、この実施の形態の場合には、排出通路13は、上記のようにして、上記背圧室P1の圧力を上記一方室R1と上記他方室R2のうち低圧側へ逃がして当該背圧室P1の圧籠りを抑制している。
【0036】
なお、一方側リリーフ弁28と他方側リリーフ弁29は、開弁圧に達すると開いて背圧室P1の圧力を逃がすが反対の流れを阻止する上記の動作を呈することができれば、上記した構成に限定されるものではないが、一方側リリーフ弁28と他方側リリーフ弁29が螺子28a,29aでサイドパネル4に螺子止めされる板状弁体28b,29bを備えて構成することで、サイドパネル4の肉の内部に弁体を設けるようなリリーフ弁の構造を採る場合に比較して、サイドパネル4を薄肉にして軽量化することができるともに形状の複雑化を避けることができる利点がある。
【0037】
サイドパネル5は、この実施の形態の場合、図1、図2および図5、図6に示すように、有底筒状でシャフト1の図1中下端が挿通されるシャフト保持部5aと、シャフト保持部5aの図1中上端外周に設けたフランジ状のキャップ部5bと、キャップ部5bに上述のケース本体30の各螺子孔34に符合するように設けた複数のボルト挿通孔5cと、シャフト保持部5aのケース本体側の内周に設けた環状凹部12と、キャップ部5bのケース本体側端であって一方室R1に面する部位から環状凹部12へと通じる一方室通路51と、キャップ部5bのケース本体側端であって他方室R2に面する部位から環状凹部12へと通じる他方室通路52とを備えている。このサイドパネル5は、ケース本体3の図1中下方に積層されて、ボルト挿通孔5cに通したボルト45を螺子孔34に螺着することで、これらが一体化される。なお、ボルト45は、強度上要求される数を用いればよく、ボルト45の数に対応する数のボルト挿通孔5cおよび螺子孔34を設ければよい。
【0038】
また、シャフト保持部5aの内周には、シャフト1の拡径部1bよりも図1中下方側に摺接する筒状のベアリング53が装着され、同じくシャフト保持部5aの内周であってこのベアリング53よりも図1中下方となる反ケース本体側には、シャフト1の外周に摺接するパッキンとしての環状のUパッキン8がそれぞれ装着され、さらに、ベアリング53よりも図1中上方となるケース本体側に設けられた環状凹部12内には、環状のサイドシール10と、サイドシール10よりも反ケース本体側に設けた環状のテーパリング55と、テーパリング55をサイドシール10側へ向けて押圧するばね部材としての皿ばね56とが収容されている。
【0039】
そして、環状凹部12は、圧力室Rおよび上記シャフト1の外周の双方に対面しており、内方には上述のようにサイドシール10が収容される。サイドシール10は、環状凹部12の周側面12aと拡径部1bの下端面1dとに当接して、上記環状凹部12内に背圧室P2を形成する。背圧室P2は、サイドシール10とパッキンとしてのUパッキン8との間に配置されており、当該背圧室P2の圧力がUパッキン8へも作用するようになっている。
【0040】
サイドシール10は、内周にテーパリング側端部の内径が大径となるように内周テーパ面10aを備えており、テーパリング55は、上記環状凹部12内であって上記サイドシール10より背圧室P2側へ設けられて外周にサイドシール側端部の外径が小径となるように外周テーパ面55aを備えており、サイドシール10の内周テーパ面10aと上記テーパリング55の外周テーパ面55aとを対面させて摺動自在に当接させている。テーパリング55の反サイドシール側端と環状凹部12の底面12bとの間には、皿ばね56が介装されており、テーパリング55をサイドシール10側へ押圧している。
【0041】
さらに、一方室通路51の一方室R1側の開口は、この実施の形態の場合、サイドパネル5のキャップ部5bに螺子57aで螺子止めされる一方側板状弁体57bを備えた一方側リリーフ弁57で開閉されるようになっている。他方室通路52の他方室R2側の開口は、この実施の形態の場合、サイドパネル5のキャップ部5bに螺子58aで螺子止めされる他方側板状弁体58bを備えた他方側リリーフ弁58で開閉されるようになっている。
【0042】
そして、一方側リリーフ弁57は、背圧室P2の圧力が一方室R1の圧力を上回ってこれらの差圧が開弁圧に達すると一方室通路51を開放して背圧室P2の圧力を一方室R1へ逃がすが、一方室R1から背圧室P2へ向かう流れを阻止するようになっていて、上記背圧室P2から上記一方室R1へ向かう流れのみを許容するようになっている。また、他方側リリーフ弁58は、背圧室P2の圧力が他方室R2の圧力を上回ってこれらの差圧が開弁圧に達すると他方室通路52を開放して背圧室P2の圧力を他方室R2へ逃がすが、他方室R2から背圧室P2へ向かう流れを阻止するようになっていて、上記背圧室P2から上記他方室R2へ向かう流れのみを許容するようになっている。
【0043】
したがって、このサイドパネル5の環状凹部12、サイドシール10、一方室通路51、他方室通路52、一方側リリーフ弁57および他方側リリーフ弁58は、それぞれ、上記したサイドパネル4の環状凹部11、サイドシール9、一方室通路26、他方室通路27、一方側リリーフ弁28および他方側リリーフ弁29と同様の構成を備えており、それぞれ、同様の作用、作動を呈するようになっている。
【0044】
そのため、背圧室P2内へ一方室R1と他方室R2のうち高圧側の圧力が導かれて、背圧室P2内の圧力でサイドシール10を環状凹部12の周側面12aと拡径部1bの下端面1dへ押しつけて、ケーシング2とシャフト1との間をシールしシャフト1回りでの一方室R1と他方室R2との連通を阻止することができる。また、一方側リリーフ弁57は、一方室R1と他方室R2のうち、一方室R1が低圧側であって、高圧側の他方室R2の圧力が導入される背圧室P2の圧力が高くなって、背圧室P2と一方室R1の差圧が開弁圧に達すると背圧室P1の圧力を一方室R1へ逃がして、背圧室P2の圧籠りを抑制し、他方側リリーフ弁58にあっても同様に、一方室R1と他方室R2のうち、他方室R2が低圧側であって、高圧側の一方室R1の圧力が導入される背圧室P2の圧力が高くなって、背圧室P2と他方室R2の差圧が開弁圧に達すると背圧室P2の圧力を他方室R2へ逃がして、背圧室P2の圧籠りを抑制する。
【0045】
すなわち、一方室通路51と一方側リリーフ弁57、他方室通路52と他方側リリーフ弁58は、排出通路14を形成しており、この実施の形態の場合には、排出通路14は、上記のようにして、上記背圧室P2の圧力を上記一方室R1と上記他方室R2のうち低圧側へ逃がして当該背圧室P2の圧籠りを抑制している。
【0046】
以上のようにこのロータリダンパDにあっては、環状凹部11,12内に収容したサイドシール9,10で背圧室P1,P2を形成して、シャフト1がロータリダンパDの駆動の際、つまり、シャフト1がケーシング2に対して回転する際に、一方室R1と他方室R2のうち圧縮される高圧側の圧力を背圧室P1,P2内に導入して、当該背圧室P1,P2内に導入される圧力でサイドシール9,10をサイドパネル4,5とシャフト1とに押しつけてケーシング2とシャフト1との間を密にシールすることができ、シャフト1回りでの一方室R1と他方室R2との連通を阻止することができる。
【0047】
また、背圧室P1,P2内に導入された圧力が高くなると一方側リリーフ弁28,57或いは他方側リリーフ弁29,58が開弁して一方室通路26,51或いは他方室通路27,52を介して一方室R1と他方室R2のうち低圧側へ圧力を逃がすので、背圧室P1,P2内が過剰な高圧に維持されてしまう圧籠りを解消することができる。つまり、排出通路13,14は、背圧室P1,P2内の圧力がUパッキン7,8に過剰な圧力を作用させる高圧となると、当該背圧室P1,P2内の圧力を一方室R1と他方室R2のうち低圧側へ圧力を逃がす。
【0048】
これによって、サイドシール9,10でシャフト1の外周を介しての一方室R1と他方室R2との連通を阻止しつつも、排出通路13,14で過剰な圧力を一方室R1と他方室R2のうち低圧側へ圧力を逃がすことで、Uパッキン7,8へ過剰な圧力を作用したまま、この状態が解消されずに継続してしまうことを防止することができ、Uパッキン7,8が過剰な圧力でシャフト1の外周へ強く締め付けられてシャフト1の回転時にUパッキン7,8が強くこすられて著しく摩耗してしまうことを防止することができる。したがって、本発明のロータリダンパDは、シャフト1の外周を介しての一方室R1と他方室R2との連通を阻止しつつも、パッキンとしてのUパッキン7,8の摩耗を抑制することができる。また、パッキンとしてのUパッキン7,8の摩耗を抑制できるので、Uパッキン7,8の寿命が伸びる。また、これに加えて、Uパッキン7,8が過剰な圧力でシャフト1の外周へ強く締め付けられることが防止されるので、Uパッキン7,8とシャフト1との間で生じる摩擦力を低減することができる。
【0049】
なお、上記したところでは、排出通路13,14をそれぞれ一方室通路26,51、他方室通路27,52、一方側リリーフ弁28,57および他方側リリーフ弁29,58とで構成しているが、これらを設ける代わりに、図7に示すように、サイドシール9(10)の外周である環状凹部当接面9b(10b)に軸方向に沿って溝9c(10c)を設け、これらの溝9c(10c)で排出通路を形成して、サイドシール9(10)の外周が環状凹部11(12)の周側面11a(12a)に当接すると当該溝9c(10c)がオリフィスとして機能するようにしておくようにしてもよい。なお、溝9c,10cは、一方室R1と他方室R2のいずれにも背圧室P1,P2を連通させるため少なくとも2つ設ける必要があるが、シャフト1の回転によってサイドシール9,10も回転しても一方室R1と他方室R2のいずれにも背圧室P1,P2を連通させることができるように設置位置と設置数を空間L1,L2の数に応じて幾何的に最適となるように設定するとよい。
【0050】
このようにすることで、一方室R1と他方室R2のうち高圧側の圧力で環状凹部11,12内中をサイドシール9,10が後退して背圧室P1,P2内に高圧を導入する作動を呈するのは、上記した一実施の形態のロータリダンパDのサイドシール9,10の作動と同様である。したがって、この他の実施の形態におけるロータリダンパD1にあっても、一方室R1と他方室R2のうち圧縮される高圧側の圧力を背圧室P1,P2内に導入して、当該背圧室P1,P2内に導入される圧力でサイドシール9,10をサイドパネル4,5とシャフト1とに押しつけてケーシング2とシャフト1との間を密にシールすることができる。なお、溝9c,10cは、サイドシール9,10の外周が環状凹部11,12の周側面11a,12aに密着しても背圧室P1,P2を一方室R1と他方室R2のうち低圧側へ連通させる状態となるが、これら溝9c,10cはオリフィスとして機能するので、背圧室P1,P2の圧力の低下は、一方室R1と他方室R2のうち低圧側の圧力に一次遅れとなり、シャフト1の回転方向が交互に切換り、一方室R1と他方室R2の圧力に差が生じる場合、常に、高圧側の圧力が背圧室P1,P2に導入されるので、シール性が損なわれない。
【0051】
そして、ロータリダンパD1が作動を停止すると、背圧室P1,P2の圧力は上記溝9c,10cを介して一方室R1或いは他方室R2へ逃げるので、背圧室P1,P2内が過剰な高圧に維持されてしまう圧籠りを解消することができる。つまり、溝9c,10cは、排出通路として機能しており、ロータリダンパD1の動作中に、背圧室P1,P2内の圧力がUパッキン7,8に過剰な圧力を作用させる高圧となっても、動作が停止されると、当該背圧室P1,P2内の圧力を一方室R1と他方室R2へ逃がすので、Uパッキン7,8へ過剰な圧力を作用したまま、この状態が解消されずに継続してしまうことを防止することができ、Uパッキン7,8が過剰な圧力でシャフト1の外周へ強く締め付けられてシャフト1の回転時にUパッキン7,8が強くこすられて著しく摩耗してしまうことを防止することができる。したがって、本発明のロータリダンパD1にあっても、シャフト1の外周を介しての一方室R1と他方室R2との連通を阻止しつつも、パッキンとしてのUパッキン7,8の摩耗を抑制することができる。
【0052】
上記した溝は、サイドシール9,10の環状凹部当接面9b,10bである外周以外にも設けることができ、たとえば、図8に示すように、サイドシール9(10)のシャフト1の拡径部へ当接する面である拡径部当接面9d(10d)に溝9e(10e)を設けるようにしてもよいし、環状凹部当接面9b(10b)と拡径部当接面9d(10d)の両方に設けてもよい。また、サイドシール9,10に設けるのではなく、図9に示すように、環状凹部11(12)の周側面11a(12a)に溝11c(12c)を設けてもよいし、図10に示すように、シャフト1の拡径部1bのサイドシール当接面である上端面1c(下端面1d)に溝1e(1f)を設けてもよい。なお、溝9e,10eも溝9c,10cと同様に、一方室R1と他方室R2のいずれにも背圧室P1,P2を連通させるため少なくとも2つ設ける必要があり、シャフト1の回転によってサイドシール9,10も回転しても一方室R1と他方室R2のいずれにも背圧室P1,P2を連通させることができるように設置位置と設置数を空間L1,L2の数に応じて幾何的に最適となるように設定するとよい。環状凹部11,12の周側面11a,12aに溝11c,12cを設ける場合には、ベーン6の可動範囲外でそれぞれ一方室R1に連通される溝と他方室R2に連通される溝を設けるとよい。また、シャフト1の拡径部1bのサイドシール当接面である上端面1c(下端面1d)に溝1e(1f)を設ける場合には、図10に示すように、ベーン6の付け根の両側にそれぞれ溝1e,1eを設けることで、シャフト1が回転してもこれら溝1e(1f),1e(1f)を介して背圧室P1(P2)を一方室R1と他方室R2に確実に連通させることができる。
【0053】
また、上記したところでは、ケース本体3にバルブブロック32を設けて、減衰弁36,38をバルブブロック32に設けているが、減衰通路、チェック弁、減衰弁をベーン6に設け、アキュムレータをシャフト1内に設ける等して、バルブブロックを廃止することも可能であり、シャフト1の回転方向にて減衰特性(シャフト1の回転速度に対する減衰力の特性)を違える必要がない場合には、一つの減衰弁で減衰力を発揮するようにしてもよい。
【0054】
さらに、上記したところでは、ベーン6を二つ設けているが、設置数は、単数であっても三つ以上であってもよく、ロータリダンパD,D1の仕様に適当な数だけ設置すればよい。また、本実施の形態では、ケース本体3は、単一の部品で形成されているが、複数の部品で構成されてもよい。
【0055】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、種々の用途のロータリダンパに利用でき、たとえば、車両のサスペンション等に使用されるロータリダンパに利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 シャフト
1b 拡径部
1c 拡径部の上端面
1d 拡径部の下端面
1e,1f,9c,9e,10c,10e,11c,12c 溝
2 ケーシング
3 ケース本体
4,5 サイドパネル
6 ベーン
7,8 パッキンとしてのUパッキン
9,10 サイドシール
9a,10a 内周テーパ面
9b,10b 環状凹部当接面
9d,10d 拡径部当接面
11,12 環状凹部
11a,12a 周側面
13,14 排出通路
20,55 テーパリング
20a,55a 外周テーパ面
21,56 ばね部材としての皿ばね
28,57 一方側リリーフ弁
29,58 他方側リリーフ弁
28b,57b 一方側板状弁体
29b,58b 他方側板状弁体
D ロータリダンパ
P1,P2 背圧室
R 圧力室
R1 一方室
R2 他方室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
途中に拡径部を備えたシャフトと、上記シャフトを周方向への回転を許容しつつ軸支するとともに内部に圧力室を形成するケーシングと、上記シャフトにおける拡径部の外周に設けられるとともに上記ケーシング内に摺動自在に挿入されて上記圧力室を一方室と他方室とに区画するベーンと、上記ケーシングとシャフトとの間を密封してケーシング外への作動流体の漏れを阻止する環状のパッキンとを備えたロータリダンパにおいて、上記ケーシングに設けられて上記圧力室および上記シャフトの外周の双方に対面する環状凹部と、当該環状凹部内に収容されて上記パッキンとの間に背圧室を形成するサイドシールと、上記背圧室内の圧力を上記一方室と上記他方室のうち低圧側へ排出する排出通路とを備え、サイドシールは、上記一方室と上記他方室のうち高圧側の圧力を受けることで高圧側の室を背圧室へ連通させ、背圧室の圧力によって押圧されて上記環状凹部の周側面および上記拡径部の軸方向端面へ密着してケーシングとシャフトとの間をシールしてシャフト外周を介しての上記一方室と上記他方室との連通を遮断し、排出通路は、上記背圧室の圧力を上記一方室と上記他方室のうち低圧側へ逃がして当該背圧室の圧籠りを抑制することを特徴とするロータリダンパ。
【請求項2】
上記環状凹部内であって上記サイドシールより背圧室側へ設けられて外周にサイドシール側端部の外径が小径となるように外周テーパ面を備えたテーパリングと、上記環状凹部内に収容されてテーパリングをサイドシール側へ向けて押圧するばね部材とを備え、上記サイドシールの内周にテーパリング側端部の内径が大径となるように内周テーパ面を設け、当該サイドシールの内周テーパ面と上記テーパリングの外周テーパ面とを当接させ、上記テーパリングを介して上記背圧室の圧力を上記サイドシールに伝えて当該サイドシールを上記環状凹部の周側面および上記拡径部の軸方向端面へ向けて押圧することを特徴とする請求項1に記載のロータリダンパ。
【請求項3】
上記排出通路は、上記背圧室と上記一方室とを連通する一方室通路と、上記背圧室と上記他方室とを連通する他方室通路と、上記一方室通路に設けられて上記背圧室から上記一方室へ向かう流れのみを許容する一方側リリーフ弁と、上記他方室通路に設けられて上記背圧室から上記他方室へ向かう流れのみを許容する他方側リリーフ弁とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のロータリダンパ。
【請求項4】
上記一方側リリーフ弁は、上記ケーシングに固定されて上記一方室通路の上記一方室側の出口端を開閉する一方側板状弁体を備え、上記他方側リリーフ弁は、上記ケーシングに固定されて上記他方室通路の上記他方室側の出口端を開閉する他方側板状弁体を備え、一方側板状弁体および他方側板状弁体を上記ベーンの可動範囲外へ設けたことを特徴とする請求項3に記載のロータリダンパ。
【請求項5】
上記排出通路は、上記サイドシールの環状凹部当接面と拡径部当接面の一方または両方に形成されるオリフィスとして機能する溝でなることを特徴とする請求項1または2に記載のロータリダンパ。
【請求項6】
上記排出通路は、上記環状凹部の周側面と拡径部のサイドシール当接面の一方または両方に形成されるオリフィスとして機能する溝でなることを特徴とする請求項1または2に記載のロータリダンパ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate