説明

ロードノイズ試験路及び試験方法

【課題】新設した試験路においてロードノイズの音圧レベルを増加させ、ロードノイズを評価し易くすることが可能なロードノイズ試験路及び試験方法を提供する。
【解決手段】車両10のロードノイズの試験に使用されるロードノイズ試験路1である。このロードノイズ試験路1は、車両10が走行する、舗装材6を敷設した舗装層3の表面3aに、1m2 当たり少なくとも20個の小穴7を分散配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に発生する比較的周波数の低い騒音であるロードノイズの試験に用いられるロードノイズ試験路及び試験方法に関し、さらに詳しくは、新設した試験路においてロードノイズを評価し易くするようにしたロードノイズ試験路及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロードノイズは、自動車が荒れた路面を走行した時に車室内に発生する比較的周波数の低い騒音である。乗用車のロードノイズは、周波数が100Hz〜500Hzの帯域の騒音が問題にされることが多い。この比較的周波数の低い騒音は、荒れた路面の凹凸がタイヤを加振し、その振動が懸架系を介して車体に伝達され、車体各部が振動して発生する固体伝搬音が主体である。そのため、車両のサスペンションや車体各部の振動特性や車室内の音響特性など、車両側の影響要因も数多くあるが、タイヤの振動特性もロードノイズに影響する大きな原因の一つになっている。
【0003】
従来、タイヤの振動特性に起因するロードノイズを評価する試験では、通常、試験タイヤを車両に装着し、舗装した試験路面を実車走行させた時の音圧レベルを車室内で測定することが行われている(例えば、特許文献1参照)。舗装した試験路には、アスファルト舗装路やコンクリート舗装路などが採用されるが、このような試験路を新設した際に、上述した試験ではロードノイズの音圧レベルが低くなり、ロードノイズを評価し難いという問題があった。
【特許文献1】特開2005−7959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新設した試験路においてロードノイズの音圧レベルを増加させ、ロードノイズを評価し易くすることが可能なロードノイズ試験路及び試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明のロードノイズ試験路は、車両のロードノイズの試験に使用されるロードノイズ試験路であって、前記車両が走行する、舗装材を敷設した舗装層の表面に、1m2 当たり少なくとも20個の小穴を分散配置したことを特徴とする。
【0006】
本発明のロードノイズ試験方法は、車両を上記ロードノイズ試験路上を走行させた時の車室内の音圧レベルを測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述した本発明によれば、小穴を分散配置することにより車両が走行する舗装層表面を荒れた面に形成し、その舗装層表面により転動するタイヤを加振し易くすることができる。そのため、舗装層表面からタイヤへの加振入力が増加し、その振動が懸架系を介して車体に伝達されるので、新設した試験路において車室内のロードノイズの音圧レベルを増加させ、ロードノイズを評価し易くすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明のロードノイズ試験路の一実施形態を示す。この試験路1は、車両のロードノイズの試験に使用されるロードノイズ試験路であって、路盤2上に車両が走行する舗装層3を設けた構成になっている。
【0010】
舗装層3は、砕石からなる骨材4をアルファストからなるバインダー5で固めた舗装材6を敷設した構成になっている。車両10(図3参照)が走行する舗装層3の表面3aには、1m2 当たり少なくとも20個の小穴7が分散配置され、平滑な表面3aを小穴7により荒れた面に形成することにより、車両10のタイヤ10aを加振し易くしている。
【0011】
これにより、車両10が走行する舗装層3の表面3aからタイヤ10aに入力される加振入力が増大し、その振動が懸架系を介して車両10の車体10Xに伝達されるので、新設した試験路において車両10の車室内におけるロードノイズの音圧レベルを増加させ、ロードノイズを評価し易くすることができる。
【0012】
1m2 当たりの小穴7の数が20個より少ないと、舗装層3の表面3aからタイヤ10aに入力される加振入力を効果的に増大することが難しくなる。1m2 当たりの小穴7の数の上限値としては、小穴7をあけるスペースを確保するために400個以下にするのよい。好ましくは、120〜200個/m2 程度にするのがよい。
【0013】
各小穴7の大きさとしては、舗装層表面3a上における小穴7の開口7aの径HDが10mm〜30mmの範囲になるようにするのがよい。なお、ここで言う径HDとは、開口7aの形状が円形の場合には直径である。開口7aの形状が円形以外(非円形)の場合は、図2に示すように外接円8の直径である。
【0014】
小穴7の開口7aの径HDが10mmより小さいと、小穴7が小さすぎて、舗装層3の表面3aからタイヤ10aに入力される加振入力を効果的に増大させることが難しくなる。小穴7の開口7aの径HDが30mmより大きいと、通常走行と異なる異常振動が発生し易くなる。。
【0015】
各小穴7の深さdとしては、少なくとも3mmにするのがタイヤ10aを効果的に加振する上でよい。各小穴7の深さdの上限値は、加振効果の点から特に限定されるものではないが、後述する骨材4を除去することにより小穴7を形成する場合には、骨材4の最大寸法である。
【0016】
小穴7は、好ましくは、隣接する小穴7の中心間距離Lが30mm〜200mmの範囲になるようにして分散配置するのがよい。中心間距離Lが30mmより小さくても、200mmを超えても、タイヤ10aに入力される加振入力を効果的に増大させることが難しくなる。
【0017】
上述したロードノイズ試験路1は、路盤2上に舗装層3を敷設した後、平滑な表面3aに露出する骨材4をタガネや電動ハンマーなどにより除去して小穴7を形成することにより施工することができる。あるいは、路盤2上に舗装層3を敷設した後、平滑な表面3aに露出するバインダー5の部分をタガネや電動ハンマーにより除去して小穴7を形成するようにしてもよい。また、これら両者を組み合わせてもよい。あるいは、路盤2上に舗装層3を敷設し、まだ熱い状態の舗装層3の表面3a上に小穴7を形成する突起を備えた型板を敷設し、舗装層3の冷却後、型板を除去して表面3aに小穴7を形成するようにしてもよい。
【0018】
本発明のロードノイズ試験方法は、上述したロードノイズ試験路1で行う試験であり、図3に示すように、車両10をロードノイズ試験路1上を走行させ、その時に車室内に生じる騒音の音圧レベルを測定するものであり、その測定結果からロードノイズを評価する。音圧レベルの測定には騒音計測器を車室内に設置して行うことができる。車両10はロードノイズ試験路1上を直進走行させる。車両10の速度は、一定の速度がよく、時速40〜100km/hの範囲で車両10が実際に使用される状況に応じて適宜選択することができる。
【0019】
本発明において、砕石からなる骨材4の大きさとしては、実際の車道に使用されるものと同じ大きさであればよく(例えば、13mmの格子を通過するが8mmの格子は通過しない砕石)、特に限定されるものではないが、ロードノイズ試験路1の小穴7を骨材4を除去することにより形成する場合には、粒度範囲が10mm〜30mmのものを使用するのが、上述した範囲の径HDを有する小穴7を容易に形成することができるのでよい。
【0020】
舗装層3は、上記実施形態では、砕石からなる骨材4をアルファストからなるバインダー5で固めた舗装材6を敷設して構成したが、バインダー5にアルファストに代えてコンクリートを使用してもよく、またそれらを併用してもよく、アルファスト及びコンクリートの少なくとも一方からなるバインダー5で骨材4を固めた舗装材を敷設するようにすればよい。
【0021】
本発明のロードノイズ試験路は、タイヤの振動特性に起因するロードノイズを評価する試験に好適に使用することができるが、それに限定されず、車両のサスペンションや車体各部の振動特性や車室内の音響特性などに起因するロードノイズを評価する試験にも好適に使用することができる。
【0022】
本発明は、特に乗用車において、周波数が略100〜250Hzの帯域の騒音(ロードノイズ)を増幅し、強調させるのに好ましく用いることができる。
【実施例1】
【0023】
路盤上に砕石からなる骨材をアルファストからなるバインダーで固めた舗装材を敷設して舗装層を形成し、その表面に骨材を除去することにより小穴を設けた図1に示す構成の本発明のロードノイズ試験路と、小穴がない他は本発明のロードノイズ試験路と同じ構成の従来のロードノイズ試験路を施工した。
【0024】
本発明のロードノイズ試験路において、小穴の数は1m2 当たり120〜200個であり、舗装層表面上の小穴の開口の径は略10〜30mmの範囲である。また、小穴の深さdは約10〜30mmの範囲にあり、隣接する小穴の中心間距離Lは略30〜200mmの範囲である。
【0025】
排気量3000ccの乗用車(後輪駆動車)を試験車両として使用し、該試験車両の運転席右窓位置に騒音計測器のマイクロホンを取り付け、各試験路上を時速50km/hで直進走行したときの音圧レベルを測定した。その分析結果(1/3オクターブ分析)を図4のグラフに示す。実線が本発明のロードノイズ試験路、破線が従来のロードノイズ試験路である。
【0026】
図4のグラフから、本発明のロードノイズ試験路は、略100〜250Hzの音圧レベルを増加できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のロードノイズ試験路の拡大部分断面図である。
【図2】開口形状が非円形の小穴の一例を示す拡大平面図である。
【図3】本発明のロードノイズ試験方法を示す説明図である。
【図4】実施例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
1 ロードノイズ試験路
3 舗装層
3a 表面
4 骨材
5 バインダー
6 舗装材
7 小穴
7a 開口
10 車両
HD 径
L 中心間距離
d 深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のロードノイズの試験に使用されるロードノイズ試験路であって、前記車両が走行する、舗装材を敷設した舗装層の表面に、1m2 当たり少なくとも20個の小穴を分散配置したロードノイズ試験路。
【請求項2】
前記小穴を舗装層表面に1m2 当たり20〜400個分散配置した請求項1に記載のロードノイズ試験路。
【請求項3】
舗装層表面上における前記小穴の径が10mm〜30mmである請求項1または2に記載のロードノイズ試験路。
【請求項4】
前記小穴の深さが少なくとも3mmである請求項1,2または3に記載のロードノイズ試験路。
【請求項5】
隣接する小穴の中心間距離が30mm〜200mmである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のロードノイズ試験路。
【請求項6】
前記舗装層が、砕石からなる骨材をアルファスト及びコンクリートの少なくとも一方からなるバインダーで固めた舗装材を敷設してなる請求項1乃至5のいずれか1項に記載のロードノイズ試験路。
【請求項7】
前記小穴が骨材の除去により形成される請求項6に記載のロードノイズ試験路。
【請求項8】
前記小穴がバインダーの除去により形成される請求項6または7に記載のロードノイズ試験路。
【請求項9】
車両を請求項1乃至8のいずれか1項に記載のロードノイズ試験路上を走行させた時の車室内の音圧レベルを測定するロードノイズ試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−84944(P2009−84944A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258544(P2007−258544)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】