説明

ロードポート装置

【課題】薄板に設けられた開口部と該開口部を閉鎖するドアとを有するロードポート装置において、微小空間内からドア周囲に沿って外部空間に至る気流の量の適正化を測る。
【解決手段】ドアの外周面に関して、下方及び側方の面115b,115cにはドア外方に突き出すカラー部117からなる段差を設けて微小空間から外部空間に直線的に至る気体流路を無くし、ドア上方では開口に向かった開口端面105cから離れるテーパ面115dを配する。また、該テーパ面115dと開口部端面105cとの距離d1を開口部が形成される板材の厚さt1よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等において、ポッドと呼ばれる密閉型の搬送容器の内部に保持されたウエハを半導体処理装置に移載する、或いはウエハを該半導体処理装置より該ポッドに移載する際に用いられる所謂FIMS(Front-Opening Interface Mechanical Standard)システム、即ちロードポート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスは、近年では各種処理装置の内部、ウエハを収容して各処理装置間でのウエハ搬送を可能とするポッド、及び該ポッドより各処理装置への基板の受け渡しを行う微小空間、の3空間のみを高清浄状態に保つことで、プロセスを通じての清浄度の管理を行う手法が一般的となっている。このようなポッドは、ウエハを内部に収容し且つ一側面にウエハ挿脱用の開口を有する本体部と、該開口を閉鎖してポッド内部を密閉空間とする蓋と、から構成される。また、該微小空間は、前述したポッドの開口と対向可能な開口部と、該開口部と向かい合い半導体処理装置側に配置される第二の開口部と、を有する。
【0003】
ロードポート装置は、この開口部が形成された隔壁となる部材即ちサイドベースと称呼される壁と、該開口部を閉鎖するドアと、該ドアの動作を司るドア駆動機構と、ポッドが載置される載置テーブルと、から構成される。載置台は、ポッドの開口と開口部とを向かい合わせるようにポッドを支持可能であり、且つポッドと共に蓋をドアと近接或いは離間させる。ドアは、ポッドの蓋を保持可能であり、ドア駆動機構によって蓋を保持した状態で開口部を開放、閉鎖すると共に、開口部と第二の開口部との間の空間より下方に退避或いは該空間への侵入をさせられる。微小空間内にはロボットが配置され、該ロボットは開口部−ポッド開口を介してポッド内部に対する侵入及び退避が可能であって、第二の開口部も介して該ポッド内部と該半導体処理装置との間でウエハの移載を行う。
【0004】
半導体の製造工程において、半導体素子の歩留まりを考慮した場合に、上述した微小空間への大気の流入は極力抑えなければならない。ところが開口部をドアにより密閉した状態からこれを一気に開放すると、開放の際に周囲の気体を該微小空間の内部まで巻き込んでしまうという問題があった、このため、例えば特許文献1に記載された構成では、予めドアと開口部の周囲壁との間に隙間を設け、ドアによる開口部の開け閉めに伴って生じ得るドア周囲の気流の乱れを抑制している。また、ドアと開口部外周囲壁との接触による塵等の発生も抑制する必要があり、特許文献2に記載されるようにドア外周面と開口部内周壁との間に空気シールを形成し、これにより接触を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−324302号公報
【特許文献2】特開2002−076093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体製造工程においては、生産性の向上等を目的として、用いるウエハの大口径化が進められている。このため、前述したポッド、微小空間、及び処理装置内部の空間各々も大型化され、これに伴ってロードポート装置における開口部の拡大とそれに伴うドアの大型化も要請される。この様なドアの大型化によって、ドアの重量は増加し、更にドア駆動機構もドア重量に対応可能な起動力が必要となる。このようなドア駆動機構としては、例えば公知のサーボモータとボールネジ等からなる構造が知られている。
【0007】
また、ドアに関連する構成のみならず、開口部を形成する所謂サイドプレート等も大型化によって生じる撓み、歪み等を抑える必要上、その厚さ方向の剛性を高めるために板厚を厚くせざるを得なくなる。この場合、その重量が増加することによって、該ロードポート装置の半導体製造装置への組み付けが困難となる。このため、本出願人は板状の部材を組み合わせてロードポート装置全体としての強度と剛性とを得ることとし、その上で薄板によって閉鎖すべき面を閉鎖する様式とすることによる該装置の大形化への対応を推奨している。しかしながら、当該構成の場合、例えば特許文献1或いは2に開示する構成の場合、微小空間内部から外部空間に至る経路が短くなりすぎることから、微小空間内に生成されている所謂ダウンフローから外部空間に至るエア量が多くなりすぎ、微小空間内部と外部空間との間の差圧を適当に維持することが困難となる可能性が生じている。
【0008】
本発明は以上の状況に鑑みて為されたものであり、従来とは比較して薄板状の部材を用いて構成した開口部を有した場合であっても、微小空間内と外部空間との差圧を適切に維持しつつ開口部の外周領域から外部空間に至る適当な気流を得ることを可能とするロードポート装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るロードポート装置は、外部空間から隔置した微小空間を構成するサイドプレートと、サイドプレートに設けられて微小空間と外部空間とを連通させる矩形の開口部を閉鎖可能であって開口部の矩形に嵌合可能な所定厚さを有した矩形形状を有するドアと、を有するロードポート装置であって、ドアはドアの外部空間側の面に対して鈍角を構成して交わるテーパ面を上側端面に有すると共に、ドアが開口部を閉鎖した状態において前記開口部の中心を通り前記サイドプレートに垂直な方向から前記ドア及び前記開口部を見た場合に前記開口部の矩形からはみ出すように外方に突き出し且つ微小空間内に配置されるカラー部を、ドアの下側端面及び両横側端面の少なくとも何れかに有し、開口部が形成されたサイドプレートの厚さをtとし、テーパ面とテーパ面に対向する開口部の内周面との距離をdとした場合に、t≦dなる関係を満たす、ことを特徴とする。
【0010】
なお、上述したロードポート装置において、サイドプレートの微小空間側面を含む平面と、ドアの微小空間側面を含む平面との距離をWとした場合に、d≦Wなる関係を満たすことが好ましい。また、サイドプレートにおける開口部を構成する内周面とドアにおける下側端面と横側端面との少なくとも何れかとの距離をdとした場合に、t≦dなる関係を満たすことが好ましい。また、サイドプレートにおける開口部を構成する内周端部とドアにおける下側端面と横側端面との少なくとも何れかとの距離をdとし、カラー部の外部空間側面と前記サイドプレートの微小空間側面との距離をWとした場合に、d≦Wなる関係を満たすことがより好ましい。更に、サイドプレートにおける開口部を構成する内周端部とドアにおける下側端面と横側端面との少なくとも何れかとの距離をdとし、カラー部の外周端面とドアにおける下側端面と横側端面との少なくとも何れかの端面との距離をdとした場合に、d≦dなる関係を満たすことがより好ましい。更に、ドア及び開口部の矩形の四隅は曲面により各々の端面が接続されており、上側端面と横側端面との接続部分では横側端面が連続的に曲がることにより曲面を構成し、前記曲面と前記上側端面の前記テーパ面が接続することがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薄板により構成された開口部であっても、ドア周囲より適当な量のエアの噴出し状態を得ることが可能となり、微小空間と外部空間との間に所望の差圧を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るロードポート装置に関し、ポッド1を載置テーブル上に載置した状態を側面から見た場合の概略構成を示している。
【図2】図1に示すロードポート装置に関し、ポッドの載置位置側から第一の開口部を介してドアを見た状態を示す模式図である。
【図3A】図2に示されるドアとサイドプレートとの間に形成される隙間を図2と同じ方向から見た部分拡大図である。
【図3B】図3Aに示される構成を同図中の線3B−3Bに沿って切断した際の断面において同図中の矢印方向から見た場合の構成を示す図である。
【図4A】図2に示されるドアとサイドプレートとの間に形成される隙間を図2と同じ方向から見た部分拡大図である。
【図4B】図4Aに示される構成を同図中の線4B−4Bに沿って切断した際の断面において同図中の矢印方向から見た場合の構成を示す図である。
【図4C】図4Aに示される構成を同図中の線4C−4Cに沿って切断した際の断面において同図中の矢印方向から見た場合の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態におけるロードポート装置に関し、ポッド1を載置テーブル上に載置した状態を側面から見た場合の概略構成を示している。図2は、図1に示すロードポート装置に関し、ポッドの載置位置側から第一の開口部を介してドアを見た状態を示す模式図である。図3Aは図2に示されるドアとサイドプレートとの間に形成される隙間を図2と同じ方向から見た部分拡大図であり、図3Bは図3Aに示される構成を同図中の線3B−3Bに沿って切断した際の断面において同図中の矢印方向から見た場合の構成を示す図である。また、図4Aは図2に示されるドアとサイドプレートとの間に形成される隙間を図2と同じ方向から見た部分拡大図であり、図4Bは図4Aに示される構成を同図中の線4B−4Bに沿って切断した際の断面において同図中の矢印方向から見た場合の構成を示す図である。また、図4Cは図4Aに示される構成を同図中の線4C−4Cに沿って切断した際の断面において同図中の矢印方向から見た場合の構成を示す図である。
【0014】
本実施形態に係るロードポート装置の構成について、以下に述べる。ロードポート装置101は、サイドプレート105によって外部空間104と分離される微小空間103を構成し、該サイドプレート105に隣接して配置されるポッド載置部121を有する。サイドプレート105は、第一の開口部111、及びドアシステム114を有する。サイドプレート105等によって構築される微小空間103の上部には不図示のファンが配置され、ロードポート装置101が取付けられて微小空間103を区画する筐体の外部空間に存在する気体を微小空間内部に導入し、微小空間103内部に上方から下方に向かう気体の流である所謂ダウンフローを生成する。当該ファンに対しては、外部空間の清浄度に応じて、当該空間から導入される気体より塵埃等の汚染物質を除去するフィルタが付随している。微小空間103の下部にはダウンフローが流出可能となるような構造が配置されており、該微小空間103内部で発生する粉塵等は当該ダウンフローに運ばれて微小空間103の下部から外部空間に排出される。
【0015】
ドアシステム114は、ドア116と、該ドア116を支持、駆動して第一の開口部111の開閉を行う不図示のドア駆動機構とにより構成される。第一の開口部111はドアシステムにおけるドア116により一見閉鎖状態とされるが、ドア116の外周と第一の開口部111の内周面との間には後述する隙間が形成されることから、当該ドア116は第一の開口部111を略閉鎖可能となっていると述べる。ドア116は、ポッド1の蓋を保持するための吸着パッド107と、ポッド1に対する蓋の取り付け取り外しを行うためのラッチ機構109を有する。ドア116は、矩形平板の形状を有するドア本体115と、ドア本体115における微小空間103側に存在する内側面115eに接合される平板形状のカラー部117とを有する。前述した吸着パッド107等は、このドア本体115におけるカラー部117との接合面と対向する平面(外側面115a、図3B及び図4B参照)側に配置される。なお、ドア116を構成するドア本体115とカラー部117とは、射出成形等により当初から一体物として形成されたものであっても良い。
【0016】
ポッド載置部121は、載置されたポッド1を固定可能であると共に該ポッド1を前述した第一の開口部111(より正確にはこれを閉鎖するドア116)に対して接近及び離間させることが可能である。ポッド載置部121は、ポッド1が所定の間隔まで或いはドア116(ドア本体115の外側面115a)と当接するまでポッド1の接近動作を行い、ポッド1の駆動が停止した状態でドア116は蓋を保持する。ドア116はこの状態でポッド本体2からの蓋の分離を行い、更にドア駆動機構により第一の開口部111に対して下方に移動することによってポッド1の開口部を微小空間103に対して開放させる。なお、本実施例において、ポッド本体2の駆動方向をX軸方向とし、該X軸に直交して該X軸と共にウエハの延在面を規定する方向(紙面に垂直な方向)をY軸方向とし、これら軸からなるXY平面に垂直な方向をZ軸として便宜上規定する。本実施例では鉛直方向がZ軸方向に対応し、本明細書における上方及び下方は鉛直方向における上方及び下方に対応する。しかし、本発明におけるZ軸の延在方向はこの鉛直方向に限定されず、必要に応じて鉛直方向からずらせて設定することも可能である。
【0017】
本発明が対象とするロードポート装置100は、従来のロードポート装置に対してサイドプレートが異なる。より詳細には、従来装置では筐体の構成がある程度以上の厚さを有する一枚の板材よりなる所謂サイドベースと称呼される構造体より構成されたものであるのに対して、当該サイドプレート105は剛性を得るための複数の板材105aと、該板材に取付けられて微小空間103の周囲を囲む壁の一部となり微小空間を規定する薄板105bとから構成される。第一の開口部111はこの薄板105bに対して形成されている。薄板105bは、図3B等に示されるように厚さtを有する。なお、本発明において、薄板として規定される部材の厚さtは、例えば0mm<t≦10mmの範囲として規定する。
【0018】
第一の開口部111の形状及び大きさは、ドア116が該第一の開口部111を略閉鎖する位置にある際に、ドア116(ドア本体115)の外部空間104側に位置する面(以下外側面115aと称する。)が嵌まり込むように設定される。更に、ドア116は、後述するドア本体の下側端面115b及び両横側端面115cから内側面115aに沿ってドア本体115の外方に突き出すカラー部117を有する。即ち、ドア116が第一の開口部111を閉鎖した状態において、該開口部111の中心を通り且つサイドプレート105に垂直な方向からドア115及び第一の開口部111を見た場合に、カラー部117は該第一の開口部111の矩形からはみ出すように外方に突き出している。また、本発明において、サイドプレート105における開口部を構成する内周面とは、図3B或いは後述する図4Bや4Cにおいて薄板105bの端面105cとして示される面であって、実際には平面或いは曲面より構成される。また、当該内周面と対象物との距離として定義される距離は、該内周面と対象物とを至近となる位置同士で結んだ場合の距離に当たることとする。
【0019】
本実施形態において、ドア本体115の外側面115aと繋がるドア本体115の下側の下側端面115b及び両側面である横側端面115cは、これらの連結部分を含めて、ドア115本体の外側面115aに対して垂直に繋がる態様とされている。これに対して、図4Bに示されるように、ドア115本体の上側の上側端面115dは、微小空間103側に位置する面(以下内側面115eと称する。)から外側面115aに至るにつれてドア116の内側面117aと平行なドア本体115の切断面を小さくするテーパ面とされている。より詳細には、内側面115eと該テーパ面とが鋭角を為し、外側面115aと該テーパ面とが鈍角を為すように該テーパ面が内側面115e及び外側面115aと交錯している。なお、本形態では、カラー部117はドア本体115のテーパ面とは連続的ではなくドア本体内側面115eとに垂直な端面を有する構成として示している。しかし、該テーパ面の効果を考慮した場合、該カラー部117の上端面117cも、該テーパ面と連続する構造とすることが好ましい。この場合、内側面115eと同様に、ドア116の動作軌跡とポッド1の動作軌跡とを含む平面でのドア116の断面において、ドア116のカラー部117の微小空間103側に存在する面(ドア本体の内側面117a)がテーパ面と鋭角を為すように交錯することが好ましい。また、本発明において、鈍角とは公知のように90度よりも大きな角度を示し、鋭角とは90よりも小さな角度を示す。
【0020】
なお、該上側端面115dは本実施形態では面積変化が単調な平面としているが、これを曲面とする或いは複数の平面を合成してなる面としても良い。即ち、該テーパ面と内側面117aとの内側交線と、該テーパ面と外側面115aとの外側交線とが、平行且つZ軸に関して内側交線が上方に位置するように配置されていれば良い。なお、図4Cに示すように、本実施形態では横側端面115cと上側端面115dの連結部分については、所謂連結のコーナ部分については外側面115aと垂直に連結される態様とし、この垂直面が上側端面115dのテーパ面に繋がる態様としている。
【0021】
本実施形態では、カラー部117は、ドア115の下側端面115b、横側端面115c、これらの連結部分、及び横側端面115cと上側端面115dとの連結部分であるコーナ部において長さdだけ突き出している。この長さdは第一の開口部111を規定する薄板105bの内周端からドア本体115までの距離dよりも大きく設定されて、d≦dの関係を満たしている。従って、ドア116の側面及び下面については、このカラー部117の存在によって、微小空間103から外部空間104に直線的に繋がる経路は存在しなくなる。以上の構成により、従来とは異なる微小空間103から外部空間104に至る経路の長さが薄板の厚さtと大きく減少した構成であっても、これら空間間での気体の流れが過剰に生成することを防止し、これら空間間での適度の微差圧の維持が可能となる。
【0022】
単純に微小空間103から外部空間104に至る経路を狭くする、即ちドア116の外周面と第一の開口部111の内周端との距離を小さくするだけでも同様の効果が得られる。しかし、距離が小さくなった場合には、ドア116の動作における停止制度の影響が大きくなって規定の距離を精度良く再現することが困難となること、或いは場合によっては接触等が生じる恐れがあること、等が懸念される。しかし、当該構成とすることによって微小な隙間を精度良く保持することが無くとも、適当な微差圧の生成が可能となる。なお、上述した関係は下側端面及び横側端面の両者で満たされることが好ましいが、例えば薄板105bの厚さtが大きく、内周端面105cとドア側の対向面とによって規定される気体流路長さあある程度大きい場合には、何れか一方が当該条件を満たすこととしても良い。当該関係を満足することによりこの領域を通過する気体の量を適宜抑制することが可能となる。
【0023】
以上に述べたカラー部117を付加することにより過剰の気体の流れを抑制することが可能となるが、当該構成の場合、微小空間103から外部空間104にいたる気体流路が複雑になることから、従来構成で勘案されたドア開閉時の気流の乱れが生じる可能性が残る。本発明では、ドア本体115(或いはドア116)の上側端面115d(115d及び117c)に上述したテーパ面を付与することによってドア116の開閉時において気体の流れが該テーパ面を主に生じる形態とすることにより、この乱流発生の可能性を抑制することが可能となっている。以上の構成により、微小空間103から外部空間104にいたる適切な気体の流れの確保が可能となると共に、前述したファンによるダウンフローの量の微調整を行わなくとも、ドア116開閉時での気体の巻き込み抑制することも可能となる。
【0024】
ここで、このテーパ面である上側端面115dと第一の開口部111の内周部である薄板105bの内周端である端面105cとの距離がある程度以上に小さい場合には、この適切な気体流れの確保が困難となる可能性がある。種々検討したところ、第一の開口部111の内周面の厚さ、即ち薄板105bの厚さtと、ドア本体115の上側端面115dとの薄板105bの内周端である端面105cとの距離dとについて、t≦dとすることにより、適当な気体流れの確保ができることが確認されている。なお、この距離d4はテーパ面上の適当な位置と薄板105b上の適当な位置との間の最短距離に対応する。しかし、ドア116の停止精度等により当該距離の特定が困難な場合には、例えば薄板105bの微小空間103の側の面をドア116の方向に延長して該延長面がドア本体115の上側端面115dと交わる点と、当該延長面における薄板105bの端部の点との距離d1に置き換え、当該条件をt≦dとして規定しても良い。
【0025】
従来構成においては、この微小空間103から外部空間104に至る気体の噴出しを利用して、ポッド1の蓋表面の清浄化を図るという効果も得られていた。本形態では、前述したテーパ面をドア本体115の上側端面115dに付与することによって、蓋の上方から下方に向う流れを有した清浄気体を蓋表面に対して噴き付ける事が可能となる。従って、ドア116によって蓋を保持する直前において、蓋表面の清浄化を図り、且つ蓋と共に蓋に付着した塵を微小空間103内部に持ち込む可能性を低減するという効果も同時に得られる。本実施形態では、第一の開口部111を略閉鎖する位置にドア116が存在する場合における、ドア116の内側面117aの延在面と薄板105bの微小空間103側面との距離Wとした場合、上述したd或いはdとの関係において、d≦W、或いはd≦Wが成立することが好ましい。当該条件を満たすことにより、適度な流量を有した気流を蓋等に噴き付ける事が可能となる。また、ドア本体115の上側端面115dをテーパ面とすることにより、このWの値がある程度大きくなっても、ドア116の開閉に伴う気流の乱れを抑制することが可能となる。
【0026】
また、第一の開口部111を規定する薄板105bの内周端である端面105cからドア本体115の下側端面115b、及び両横側端面115cまでの距離dは、薄板105bの端部厚さtとの関係においてt≦dなる条件を満たすことが好ましい。当該条件を満足さない場合には、ドア本体115の下方及び両側方から外部空間に噴出す気流の量が小さくなりすぎて、安定した気流生成が成り立たなくなり、結果としてドア115の周囲に隙間を生成する意味が無くなる。また、同様の理由より、下側端面115b及び両横側端面115cから突き出すカラー部117の外部空間104側の面117bと薄板105bの微小空間103側面との距離Wと前述した距離dとは、d≦Wの条件も満たすことが好ましい。以上の条件を満たすことにより、ドア116の下方及び両側方から外部空間104へ気流が噴出す状態を安定的に維持することが可能となる。なお、以上に述べた関係は下側端面115b及び両横側端面115cの何れに関しても満たされることが好ましいが、上述したように例えば薄板105の厚さによっては少なくとも何れかの端面において当該関係が満たされることによっても、本発明における圧程度の効果を得ることが可能である。
【0027】
ドア本体115(或いはドア116)及び第一の開口部111は、ポッドの載置位置からこれらを見た場合の形状が、単なる矩形ではなく四隅に配置される曲線部を介して各々の辺が繋がる形状とされている。本実施形態では、ドア本体115の横側端面115cから上側端面115dへ、各々の面が平面状態で交錯するのではなく、横側端面115cが前述した曲線部に沿った曲面を構成し、該曲面の端部において上側端面115dのテーパ部に繋がることとしている。これにより、この繋がり部分ではテーパ部が徐々に平坦面に至る形状が形成される。当該形態を配することによって、このテーパ部(115d)に沿って外部空間104にいたる気流と両横側端面115cに沿って外部空間104にいたる気流と、の間に不連続となる領域を生成することが無くなり、外部空間側104側のドア116の正面での乱流生成を抑制し、ポッド1の蓋の前での塵等の滞留の可能性を低減することが可能となる。
【0028】
本発明では、以上の構成を配することによって、第一の開口部111が薄板によって形成される構造からなるロードポート装置において、ドア116の開閉時の微小空間103内或いはポッド1内部への外部気体の巻き込みを抑制することが可能となる。なお、本実施形態では、本発明において最も好適な効果が得られる態様として前述した全ての条件を満たす構造を開示している。しかし、本発明は当該形態に限定されず、必要に応じて先の条件を適宜満たす態様として場合であっても、当該態様に応じた効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上述べたように、本発明は半導体処理装置に対して好適に用いるロードポート装置に関している。しかしながら、本発明の利用可能性は当該処理装置むけのみに限定されず、例えば液晶ディスプレイのパネルを扱う処理装置等、半導体に準じた各種処理が行われる種々の処理装置に用いられる所謂ロードポート装置に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1:ポッド、 2:ポッド本体、 100:ロードポート装置、 103:微小空間、 104:外部空間、 105:サイドプレート、 107:吸着パッド、 111:第一の開口部、 114:ドアシステム、 115:ドア本体、 116:ドア、 117:カラー部、 121:ポッド載置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間から隔置した微小空間を構成するサイドプレートと、
前記サイドプレートに設けられて前記微小空間と前記外部空間とを連通させる矩形の開口部を閉鎖可能であって前記開口部の矩形に嵌合可能な所定厚さを有した矩形形状を有するドアと、を有するロードポート装置であって、
前記ドアは前記ドアの外部空間側の面に対して鈍角を構成して交わるテーパ面を上側端面に有すると共に、
前記ドアが前記開口部を閉鎖した状態において前記開口部の中心を通り前記サイドプレートに垂直な方向から前記ドア及び前記開口部を見た場合に、前記開口部の矩形からはみ出すように外方に突き出し且つ前記微小空間内に配置されるカラー部を、前記ドアの下側端面及び両横側端面に有し、
前記開口部が形成されたサイドプレートの厚さをtとし、前記テーパ面と前記テーパ面に対向する前記開口部の内周面との距離をdとした場合に、t≦dなる関係を満たす、
ことを特徴とするロードポート装置。
【請求項2】
前記サイドプレートの微小空間側面を含む平面と、前記ドアの微小空間側面を含む平面との距離をWとした場合に、d≦Wなる関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のロードポート装置。
【請求項3】
前記サイドプレートにおける前記開口部を構成する内周面と前記ドアにおける前記下側端面と前記横側端面との少なくとも何れかとの距離をdとした場合に、t≦dなる関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載のロードポート装置。
【請求項4】
前記サイドプレートにおける前記開口部を構成する内周端部と前記ドアにおける前記下側端面と前記横側端面との少なくとも何れかとの距離をdとし、前記カラー部の外部空間側面と前記サイドプレートの微小空間側面との距離をWとした場合に、d≦Wなる関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のロードポート装置。
【請求項5】
前記サイドプレートにおける前記開口部を構成する内周端部と前記ドアにおける前記下側端面と前記横側端面との少なくとも何れかとの距離をdとし、前記カラー部の外周端面と前記ドアにおける前記下側端面と前記横側端面との少なくとも何れかの端面との距離をdとした場合に、d≦dなる関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のロードポート装置。
【請求項6】
前記ドア及び前記開口部の矩形の四隅は曲面により各々の端面が接続されており、前記上側端面と前記横側端面との接続部分では前記横側端面が連続的に曲がることにより前記曲面を構成し、前記曲面と前記上側端面の前記テーパ面とが接続することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のロードポート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2013−16662(P2013−16662A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148735(P2011−148735)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】