ローパスフィルタ
【課題】低損失で急峻な減衰特性を有する小型のローパスフィルタを提供する。
【解決手段】ローパスフィルタは、第1のフィルタ1と第2のフィルタ2と第3のフィルタ3とを有する。第1のフィルタ1は、2端子対SAW共振子11からなる。第2のフィルタ2は、1端子対SAW共振子21と位相線路22とからなる。第3のフィルタ3は、1端子対SAW共振子31と位相線路32とからなる。
【解決手段】ローパスフィルタは、第1のフィルタ1と第2のフィルタ2と第3のフィルタ3とを有する。第1のフィルタ1は、2端子対SAW共振子11からなる。第2のフィルタ2は、1端子対SAW共振子21と位相線路22とからなる。第3のフィルタ3は、1端子対SAW共振子31と位相線路32とからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローパスフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機の高機能化が進み、音声通信及びデータ通信の機能に加えて、FM放送やTV放送を受信するチューナの搭載が進みつつある。TV放送受信用チューナ付き携帯電話機では、携帯電話機の送信信号がTV放送の受信信号に影響を与えないようにすることが重要である。その理由は、音声通信及びデータ通信用のアンテナから送信された電力の大きな送信信号がTV放送の受信回路に回りこみ、混信を生じる可能性があるからである。このような混信を防ぐため、VHF/UHF帯の信号を通過させ、音声通信及びデータ通信用の送信帯域の信号を抑圧するローパスフィルタが、チューナ側の回路に搭載される。
【0003】
このようなローパスフィルタ特性を実現するものとして、積層LCローパスフィルタが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。積層LCフィルタは、薄いセラミック層上に導体パターンを形成し、これらを複数積層することにより、インダクタンスやコンデンサを形成し、所定の接続を行ったフィルタである。図28に積層LCローパスフィルタの一般的な等価回路図を示し、図29に積層LCローパスフィルタの通過特性の1例を示す。図28において、INは信号入力端子、OUTは信号出力端子、L10,L11はインダクタンス、C10〜C14はコンデンサである。図29では、インダクタンスL10,L11のQを30とした。インダクタ(コイル)は、その主特性であるインダクタンス成分を得ようとすると同時に抵抗成分ができる。通常、この抵抗成分は少ないほうが優れたインダクタと評価される。インダクタ成分と、この抵抗成分との比をQ特性として表現している。この値が高い方が高効率のインダクタといえる。周波数をf、インダクタ値をL、実効抵抗値をRとすると、Q=2πfL/Rである。図29に示すように、積層LCローパスフィルタでは、VHF/UHFの周波数帯(90MHzから770MHz)が通過帯域となり、800MHz帯CDMAの送信周波数帯(898MHzから925MHz)が減衰域となっている。
【0004】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【特許文献1】特開平07−336176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の積層LCローパスフィルタでは、減衰極が1.3GHzとなっているため、減衰域(898MHzから925MHz)の減衰量が9dB程度と不十分であるという問題点があった。また、従来の積層LCローパスフィルタでは、段数を増やすことで、減衰極をより通過帯域近傍に近づけ、より大きな減衰量を得ることが可能であるが、段数を増やすと、インダクタンスに含まれる直列抵抗の影響により、通過帯域の損失も増大し、必要な通過帯域挿入損失を得ることが難しくなるという問題点があった。さらに、従来の積層LCローパスフィルタでは、素子数が増加すると、フィルタの外形が大きくなるという問題点があった。携帯電話機に搭載するフィルタは小型であることが望ましく、大きなフィルタは携帯電話機には不向きである。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、低損失で急峻な減衰特性を有する小型のローパスフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のローパスフィルタは、第1のフィルタと、この第1のフィルタに並列に接続された第2のフィルタとを有し、前記第1のフィルタは、第1の端子が信号入力端子に接続され、第2の端子が信号出力端子に接続され、第3の端子と第4の端子が接地された2端子対SAW共振子からなり、前記第2のフィルタは、第1の端子が前記2端子対SAW共振子の第1の端子に接続され、第2の端子が前記2端子対SAW共振子の第2の端子に接続された第1の1端子対SAW共振子と、この第1の1端子対SAW共振子に並列に接続された第1の位相線路又は第1のインダクタンス素子とからなるものである。
また、本発明のローパスフィルタの1構成例は、さらに、前記信号入力端子と前記第1、第2のフィルタの第1の端子との間に挿入された第3のフィルタを有し、この第3のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第1、第2のフィルタの第1の端子に接続された第2の1端子対SAW共振子と、この第2の1端子対SAW共振子に並列に接続された第2の位相線路又は第2のインダクタンス素子とからなるものである。
また、本発明のローパスフィルタの1構成例は、さらに、前記信号入力端子と接地との間に挿入された第4のフィルタを有し、この第4のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子と接続され、第2の端子が接地された第3の1端子対SAW共振子からなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1のフィルタと、第1のフィルタに並列に接続された第2のフィルタとを設け、第1のフィルタを2端子対SAW共振子から構成し、第2のフィルタを第1の1端子対SAW共振子と第1の位相線路又は第1のインダクタンス素子とから構成することにより、減衰極を遮断周波数近傍にすることが可能となり、減衰域の減衰量を改善することができる。また、本発明では、SAW共振子を用いるため、フィルタを小型化できる。さらに、本発明では、積層LCフィルタのように所望の減衰量を得るために段数を増やす必要がないので、通過帯域の挿入損失が増大することがなく、外形が大型化することもない。その結果、本発明では、低損失で急峻な減衰特性を有する小型のローパスフィルタを実現することができる。
【0009】
また、本発明では、信号入力端子と第1、第2のフィルタの第1の端子との間に第3のフィルタを挿入することにより、減衰域の減衰量を更に増大させることができる。
【0010】
また、本発明では、信号入力端子と接地との間に第4のフィルタを挿入することにより、減衰域の減衰量を更に増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態となるローパスフィルタの等価回路図である。図1のローパスフィルタは、第1のフィルタ1と、第2のフィルタ2と、第3のフィルタ3とから構成されている。図1において、INは信号入力端子、OUTは信号出力端子である。
【0012】
図2に、第1のフィルタ1の平面図を示す。第1のフィルタ1は、2端子対SAW(Surface Acoustic Wave )共振子11からなる。2端子対SAW共振子11は、圧電基板上に送信用IDT(interdigital transducer :すだれ状電極)110と受信用IDT111とを形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器112,113を配置したものである。周知のように、IDTは、金属からなる櫛状の対向する2つの電極部を有し、各電極部は、対向する電極部に向かって交互に突出した複数の電極指を有している。
【0013】
図1、図2において、12は2端子対SAW共振子11の第1の端子(フィルタ1の入力端子)、14は2端子対SAW共振子11の第2の端子(フィルタ1の出力端子)、13は2端子対SAW共振子11の第3の端子、15は2端子対SAW共振子11の第4の端子である。第3の端子13と第4の端子15は接地されている。
【0014】
第1のフィルタ1は、2つの反射器112,113間に生じる定在波の周波数とIDT110,111の共振周波数とが一致するときに、入力端子12と出力端子14間に信号が伝送される狭帯域通過フィルタとして動作する。第1のフィルタ1の通過特性の1例を図3に示す。
【0015】
図4に、第3のフィルタ3の平面図を示す。第3のフィルタ3は、1端子対SAW共振子31と、1端子対SAW共振子31に並列に接続された位相線路(ストリップライン)32とからなる。1端子対SAW共振子31は、圧電基板上に1つのIDT310を形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器311,312を配置したものである。位相線路32は、誘電体内に信号導体を設けたものである。図1、図4において、33は1端子対SAW共振子31の第1の端子(IDT310の入力端子)、34は1端子対SAW共振子31の第2の端子(IDT310の出力端子)、35は位相線路32の入力端子、36は位相線路32の出力端子である。
【0016】
第3のフィルタ3の通過特性の1例を図5に示す。第3のフィルタ3は、2つの減衰極を有する帯域通過フィルタの特性を示す。ただし、図5では、約0.9GHzの低周波側の減衰極のみ記載し、1GHz超の位置にある高周波側の減衰極については省略している。第1のフィルタ1と第3のフィルタ3とを直列に接続し、第1のフィルタ1の通過域(0.9〜1GHz)を第3のフィルタ3の2つの減衰極の間に設定すると、図6に示すように第1のフィルタ1の通過域の両側の約0.9GHzと1GHzの位置に第3のフィルタ3の減衰極が生じ、通過域近傍の減衰量が改善されていることが分かる。
【0017】
フィルタ1,3を直列に接続したフィルタ(以下、直列フィルタ1,3と呼ぶ)と似た構成が、特開昭56−47116号公報に開示されている。特開昭56−47116号公報に開示されたフィルタでは、弾性表面波素子としてトランスバーサルフィルタが使用され、圧電共振子としてセラミック共振子が使用されている。これに対して、本実施の形態の直列フィルタ1,3では、トランスバーサルフィルタの代わりに2端子対SAW共振子11を使用し、また圧電共振子の代わりに1端子対SAW共振子31を使用しており、これらを同一の圧電基板上に形成している点が特開昭56−47116号公報のフィルタと異なる。
【0018】
次に、本実施の形態では、直列フィルタ1,3において、第1のフィルタ1に並列に第2のフィルタ2を接続することにより、非常に急峻な減衰特性を有するローパスフィルタを実現している。第2のフィルタ2は、第3のフィルタ3と同様に、1端子対SAW共振子21と、1端子対SAW共振子21に並列に接続された位相線路22とからなる。図1において、23は1端子対SAW共振子21の第1の端子(IDTの入力端子)、24は1端子対SAW共振子21の第2の端子(IDTの出力端子)、25は位相線路22の入力端子、26は位相線路22の出力端子である。
【0019】
図7に、図1のローパスフィルタの通過特性の1例を示す。図1の構成によれば、DC(直流)から770MHzまで低損失な通過域と828MHz付近に50dB以上の減衰域が形成されていることが分かる。本実施の形態のローパスフィルタの動作は、以下のように説明できる。
【0020】
まず、第1のフィルタ1について考察する。第1のフィルタ1においては音響的結合が含まれているため、LCフィルタの解析に用いられている影像パラメータ法による解析を直接行うことは困難である。まず影像パラメータ法による解析に帰着するため、以下の変換を行う。一般に、対称2端子対回路は、偶モード励振したときのインピーダンスをZeven、奇モード励振したときのインピーダンスをZoddとすると、図8に示すような対称格子型回路に変形できる。
【0021】
偶モード励振とは、2端子対回路の両端に大きさと位相が同じ電圧を印加することであり、奇モード励振とは、2端子対回路の両端に大きさが同じで位相が反転した電圧を印加することである。偶モードインピーダンスZeven、奇モードインピーダンスZoddは、それぞれの励振モードにおける電圧と流入する電流の比である。また、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddの値は、回路シミュレータにより容易に計算することができる。図8に示した対称格子型回路は、図9のようなT型回路に容易に変形することができる。
【0022】
図9のT型回路について、影像インピーダンスをZ0、伝搬定数をθとすると、次式が成立する。
【0023】
【数1】
【0024】
影像パラメータ理論によれば、θが虚数のときに通過域、実数のときに減衰域になるから、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddが異符号のときに通過域、同符号のときに減衰域となる。偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddの符号を調べるには、インピーダンスのリアクタンス部の符号を調べればよい。第1のフィルタ1について、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddのリアクタンス特性を図10、図11に示す。図11は、図10における0.9〜1GHzの帯域を拡大した図である。
【0025】
図10、図11によれば、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddとが異符号の周波数帯域がフィルタ特性の通過域となり、同符号の周波数帯域が減衰域となっている。上記の説明は、動作原理を説明するために回路が対称回路であるとの仮定をおいている。実際の回路では、IDT110及び111の対数等を異ならせる場合があり、対称性が損なわれる場合があるが、その場合でも原理的には上記説明の延長上にあり、フィルタ特性を直接計算し所望の特性となるよう設計すればよい。
【0026】
第1のフィルタ1に第2のフィルタ2の位相線路22のみを接続した場合のリアクタンス特性を図12、図13に示す。図13は、図12における0.9〜1GHzの帯域を拡大した図である。第1のフィルタ1に並列に位相線路22を接続したことにより、奇モードインピーダンスZoddの符号がほぼ反転し、偶モードインピーダンスZevenと異符合になっていることが分かる。このときの通過特性は、図14のようになり、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddが同符号となっている一部の帯域(0.94GHz付近)を除いて通過域が形成されている。
【0027】
さらに並列に1端子対SAW共振子21を接続した場合、すなわち第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続した場合のリアクタンス特性を図15、図16に示す。図16は、図15における0.7〜1GHzの帯域を拡大した図である。第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続すると、1端子対SAW共振子21と位相線路22で決まるピークが現れ、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddが同符号の周波数帯域、すなわち減衰域が拡大されることが分かる。
【0028】
第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続した場合の通過特性を図17に示す。本実施の形態では、第1のフィルタ1に並列に位相線路22を接続することにより、狭帯域通過フィルタからローパスフィルタに変換することができ、さらに第1のフィルタ1に1端子対SAW共振子21を並列に接続することより、急峻な肩特性と広い減衰域を有するローパスフィルタを実現することができる。
【0029】
さらに、フィルタ1,2を並列に接続した構成に図5の特性を有する第3のフィルタ3を直列に接続すると、さらに減衰量が改善され、先に示した図7のような特性を得ることができる。なお、減衰域の高域側の端部周波数は、第1のフィルタ1によりほぼ決定され、減衰域の低域側の端部周波数は、位相線路22と1端子対SAW共振子21により決定される。また、第3のフィルタ3の減衰極周波数を適切に設定することにより、減衰域の周波数特性を設定することができる。
【0030】
以下、本実施の形態のローパスフィルタの設計法について説明する。まず、以下の(a)〜(d)のような前提条件を定める。
(a)ラダー型のフィルタは、入出力端子間に挿入される素子である直列腕と、入出力端子と接地との間に挿入される素子である並列腕のインピーダンス関係によりフィルタ特性が決まる。
(b)本実施の形態では、ローパスフィルタを直列腕及び並列腕に分解することができないため、ラダー型フィルタとは言えない。よって、ラダー型フィルタの動作説明で使用される影像インピーダンスによる方法を直接適用することはできない。
(c)このため、本実施の形態では、偶モードインピーダンスと奇モードインピーダンスの概念を導入する。
(d)偶モードインピーダンスと奇モードインピーダンスの虚部の符号によりフィルタ特性が定まる。すなわち、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|とが異符号のとき通過域となり、Im|Zeven|とIm|Zodd|とが同符号のとき減衰域となり、Im|Zeven|とIm|Zodd|とが同じ値のときに減衰極が生じる。
【0031】
以下、 第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタについて考える。第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタの偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|を図18に示す。また、図18の場合におけるフィルタの通過特性を図19に示す。偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|は、主に第1のフィルタ1の素子の値により定まり、奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|は、主に第2のフィルタ2の素子の値により定まる。
【0032】
図18では、奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が零となる周波数P1より低い帯域、及び偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|が零となる周波数P2より高い帯域で、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が異符号となっているため、これらの帯域が通過域となる。
【0033】
一方、周波数P1とP2の間では、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同符号となっているため、周波数P1とP2の間の帯域が減衰域となる。特に、図18に示す破線の帯域Bでは、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる周波数が複数生じ、減衰極が形成される。
【0034】
所望の通過域と減衰域を得るためには、周波数P1が目的の遮断周波数(通過域の高域側の端部周波数)となるよう調整し、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同じ値となる帯域Bが所望の減衰域と一致するよう調整すればよい。そのためには、まず第1のフィルタ1のIDT110,111の共振波長λ1を調整して、周波数P2が減衰域の高域側の端部周波数付近となるよう設定する。次に、第2のフィルタ2のIDTの共振波長λ2を調整して、図18の帯域Bが目的の減衰域の周波数範囲と一致するよう調整する。このとき、λ2<λ1の関係を満たすようにする。
【0035】
第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタにおいてλ2>λ1とした場合のリアクタンス特性を図20に示し、このときの通過特性を図21に示す。図20に示すように、λ2>λ1とした場合、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|とが連続的に同一の値となる帯域Bがなくなり、周波数P1とP2の間でIm|Zeven|とIm|Zodd|が一致するのは2点のみとなる。このため、減衰極が分離し、図19の場合に比べて減衰域の減衰量が劣化する(図21)。
【0036】
第2のフィルタ2のIDTの共振波長λ2を変化させると、通過域の高域側の端部周波数を決めるP1が変化するため、位相線路22の長さを調整して、P1が前述のように目的の遮断周波数になるよう設定する。この操作により、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる帯域Bが変化するため、波長λ2を調整する。このような位相線路22の長さの調整と第2のフィルタ2のIDTの共振波長λ2の調整とを、所望の特性を満たすまで繰り返す。
【0037】
第1のフィルタ1及び第2のフィルタ2のIDTの電極指の交差幅と電極指の対数は、通過域のインピーダンスと帯域Bの傾きに影響を与える。第1のフィルタ1のIDT110,111の電極指の交差幅及び電極指の対数で決まるIm|Zeven|の傾きと第2のフィルタ2のIDTの電極指の交差幅及び電極指の対数で決まるIm|Zodd|の傾きとが一致するように調整すると共に、通過域が所望の特性インピーダンス(通常50Ω)となるよう適切に設定する。以上の調整は、手動で行うことも可能であるが、適切な誤差関数を定めて、コンピュータにより最適な組み合わせを探索するようにすると良い。
【0038】
なお、以上の設計方法の説明では、第1のフィルタ1のIDT110の共振波長とIDT111の共振波長を同一の値としたが、異なる値に設定しても良い。この場合のリアクタンス特性を図22に示す。IDT110とIDT111の共振波長を異なる値にすると、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる帯域Bが拡大し、より広帯域な減衰域を実現することができる。
【0039】
また、第1のフィルタ1のIDT110とIDT111間の距離を調整すると、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる帯域を更に拡大することができ、減衰域を更に拡大することができる。この場合のリアクタンス特性を図23に示す。この調整は、IDT110とIDT111間の距離を通常0.5λとするところを0.7λから0.9λ付近にすると良い。
【0040】
第3のフィルタ3は、図5のような通過特性を有している。そこで、第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタと、第3のフィルタ3とにおいて、通過域と減衰域が互いに一致するようにして、これらを従属接続すれば、より減衰量が増大し好ましい。
【0041】
図24は、本実施の形態のローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。図24において、210は第2のフィルタ2の1端子対SAW共振子21を構成するIDT、211,212はIDT210の両側に配置された反射器である。本実施の形態では、位相線路22,32を除く図24の構成を、圧電基板である39°回転Y板LiTaO3 上に形成した。
【0042】
フィルタ1〜3の各共振子の電極材料をAlCu(0.5%)とし、この電極材料の膜厚を390nmとした。第1のフィルタ1の2端子対SAW共振子11の共振波長λを4.18μm、IDT110,111の電極指の交差幅をそれぞれ26λ、IDT110,111の電極指の対数をそれぞれ53対、反射器112,113の本数をそれぞれ100本とした。また、IDT110と111との距離を、互いに最も近接した電極指同士の中心線間距離が0.8λになるように設定した。
【0043】
第2のフィルタ2の1端子対SAW共振子21の共振波長λを4.01μm、IDT210の電極指の交差幅を30λ、IDT210の電極指の対数を100対、反射器211,212の本数をそれぞれ100本とした。また、第3のフィルタ3の1端子対SAW共振子31の共振波長λを3.97μm、IDT310の電極指の交差幅を32λ、IDT310の電極指の対数を95対、反射器311,312の本数をそれぞれ100本とした。
【0044】
位相線路22,32は、比誘電率7.6のLTCC(低温焼成セラミックス)パッケージ内にストリップラインとして形成し、特性インピーダンスを50Ωとした。また、位相線路22の線路長を8.9mm、位相線路32の線路長を8.8mmとした。そして、位相線路22はワイヤー線を用いて1端子対SAW共振子21と並列に接続され、同様に位相線路32はワイヤー線を用いて1端子対SAW共振子31と並列に接続される。
【0045】
図24に示したローパスフィルタの通過特性が前記の図7であり、DCから770MHzまで挿入損失1.5dB以下、828〜925MHzにおいて50dBの減衰量を確保することができた。以上のように、本実施の形態によれば、従来の積層LCフィルタに比べて、非常に急峻な減衰特性を得ることができる。本実施の形態では、SAW共振子を用いるため、フィルタを小型化できる。さらに、本実施の形態では、積層LCフィルタのように所望の減衰量を得るために段数を増やす必要がないので、通過帯域の挿入損失が増大することがなく、外形が大型化することもない。その結果、本実施の形態では、低損失で急峻な減衰特性を有する小型のローパスフィルタを実現することができる。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図25は、本発明の第2の実施の形態となるローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図であり、図1、図24と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、図24と異なる別のチップレイアウトを示すものである。
【0047】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図26は、本発明の第3の実施の形態となるローパスフィルタの等価回路図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、第1、第2の実施の形態のローパスフィルタに対して、さらに信号入力端子INと接地との間に第4のフィルタ4を挿入したものである。第4のフィルタ4は、1端子対SAW共振子41からなる。1端子対SAW共振子41は、圧電基板上に1つのIDT410を形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器411,412を配置したものである。
【0048】
図27は、本実施の形態のローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図であり、図1、図24、図26と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態によれば、第4のフィルタ4を追加することにより、第1、第2の実施の形態に比べて減衰域の減衰量を更に増大させることができる。
【0049】
なお、第1〜第3の実施の形態において、使用する圧電基板やカット角は、種々変更可能である。特に電気機械結合係数は、フィルタの急峻性に寄与する。電極材料も、AlCuに限らず種々の合金、多層膜、高配向膜を用いてよく、表面にSiO2 等の保護膜を形成してもよい。位相線路22,32のパッケージは、LTCCに限定されず、アルミナや樹脂を用いてもよい。また、位相線路22,32の代わりに、インダクタンス素子を用いてもよい。インダクタンス素子を用いる場合は、外付けのコイルでもよいし、ワイヤー線からなるインダクタンス素子をチップ内で配線してもよい。
【0050】
また、第1〜第3の実施の形態のローパスフィルタは、他の構成のフィルタと組み合わせてもよく、分波器用のフィルタの一部または全部を構成してもよい。また、第1のフィルタ1の2端子対SAW共振子11は、対称構成でなくてもよく、IDT110と111の間で共振波長λや電極指の対数などを変えてもよい。また、IDT110と111間の距離も要求特性に応じて変更してよい。また、第1のフィルタ1と第2のフィルタ2の組み合わせを複数段直列に接続するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えばTV放送受信用チューナ付き携帯電話機のチューナ回路に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態となるローパスフィルタの等価回路図である。
【図2】本発明の実施の形態における第1のフィルタの平面図である。
【図3】本発明の実施の形態における第1のフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における第3のフィルタの平面図である。
【図5】本発明の実施の形態における第3のフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図6】第1のフィルタと第3のフィルタとを直列に接続したフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図7】図1のローパスフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図8】対称2端子対回路を変形した対称格子型回路の等価回路図である。
【図9】図8の対称格子型回路を変形したT型回路の等価回路図である。
【図10】本発明の実施の形態における第1のフィルタについて偶モードインピーダンスと奇モードインピーダンスのリアクタンス特性の1例を示す図である。
【図11】図10を拡大した図である。
【図12】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタの位相線路を接続した場合のリアクタンス特性の1例を示す図である。
【図13】図12を拡大した図である。
【図14】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタの位相線路のみを接続した場合の通過特性の1例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の1例を示す図である。
【図16】図15を拡大した図である。
【図17】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合の通過特性の1例を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合の通過特性の他の例を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合の通過特性の他の例を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図24】図1のローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図である。
【図25】本発明の第2の実施の形態となるローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図である。
【図26】本発明の第3の実施の形態となるローパスフィルタの等価回路図である。
【図27】図26のローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図である。
【図28】従来の積層LCローパスフィルタの等価回路図である。
【図29】図28の積層LCローパスフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1…第1のフィルタ、2…第2のフィルタ、3…第3のフィルタ、4…第4のフィルタ、11…2端子対SAW共振子、21、31、41…1端子対SAW共振子、22、32…位相線路、110、111、210、310、410…IDT、112、113、211、212、311、312、411、412…反射器、22、32…位相線路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローパスフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機の高機能化が進み、音声通信及びデータ通信の機能に加えて、FM放送やTV放送を受信するチューナの搭載が進みつつある。TV放送受信用チューナ付き携帯電話機では、携帯電話機の送信信号がTV放送の受信信号に影響を与えないようにすることが重要である。その理由は、音声通信及びデータ通信用のアンテナから送信された電力の大きな送信信号がTV放送の受信回路に回りこみ、混信を生じる可能性があるからである。このような混信を防ぐため、VHF/UHF帯の信号を通過させ、音声通信及びデータ通信用の送信帯域の信号を抑圧するローパスフィルタが、チューナ側の回路に搭載される。
【0003】
このようなローパスフィルタ特性を実現するものとして、積層LCローパスフィルタが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。積層LCフィルタは、薄いセラミック層上に導体パターンを形成し、これらを複数積層することにより、インダクタンスやコンデンサを形成し、所定の接続を行ったフィルタである。図28に積層LCローパスフィルタの一般的な等価回路図を示し、図29に積層LCローパスフィルタの通過特性の1例を示す。図28において、INは信号入力端子、OUTは信号出力端子、L10,L11はインダクタンス、C10〜C14はコンデンサである。図29では、インダクタンスL10,L11のQを30とした。インダクタ(コイル)は、その主特性であるインダクタンス成分を得ようとすると同時に抵抗成分ができる。通常、この抵抗成分は少ないほうが優れたインダクタと評価される。インダクタ成分と、この抵抗成分との比をQ特性として表現している。この値が高い方が高効率のインダクタといえる。周波数をf、インダクタ値をL、実効抵抗値をRとすると、Q=2πfL/Rである。図29に示すように、積層LCローパスフィルタでは、VHF/UHFの周波数帯(90MHzから770MHz)が通過帯域となり、800MHz帯CDMAの送信周波数帯(898MHzから925MHz)が減衰域となっている。
【0004】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【特許文献1】特開平07−336176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の積層LCローパスフィルタでは、減衰極が1.3GHzとなっているため、減衰域(898MHzから925MHz)の減衰量が9dB程度と不十分であるという問題点があった。また、従来の積層LCローパスフィルタでは、段数を増やすことで、減衰極をより通過帯域近傍に近づけ、より大きな減衰量を得ることが可能であるが、段数を増やすと、インダクタンスに含まれる直列抵抗の影響により、通過帯域の損失も増大し、必要な通過帯域挿入損失を得ることが難しくなるという問題点があった。さらに、従来の積層LCローパスフィルタでは、素子数が増加すると、フィルタの外形が大きくなるという問題点があった。携帯電話機に搭載するフィルタは小型であることが望ましく、大きなフィルタは携帯電話機には不向きである。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、低損失で急峻な減衰特性を有する小型のローパスフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のローパスフィルタは、第1のフィルタと、この第1のフィルタに並列に接続された第2のフィルタとを有し、前記第1のフィルタは、第1の端子が信号入力端子に接続され、第2の端子が信号出力端子に接続され、第3の端子と第4の端子が接地された2端子対SAW共振子からなり、前記第2のフィルタは、第1の端子が前記2端子対SAW共振子の第1の端子に接続され、第2の端子が前記2端子対SAW共振子の第2の端子に接続された第1の1端子対SAW共振子と、この第1の1端子対SAW共振子に並列に接続された第1の位相線路又は第1のインダクタンス素子とからなるものである。
また、本発明のローパスフィルタの1構成例は、さらに、前記信号入力端子と前記第1、第2のフィルタの第1の端子との間に挿入された第3のフィルタを有し、この第3のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第1、第2のフィルタの第1の端子に接続された第2の1端子対SAW共振子と、この第2の1端子対SAW共振子に並列に接続された第2の位相線路又は第2のインダクタンス素子とからなるものである。
また、本発明のローパスフィルタの1構成例は、さらに、前記信号入力端子と接地との間に挿入された第4のフィルタを有し、この第4のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子と接続され、第2の端子が接地された第3の1端子対SAW共振子からなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1のフィルタと、第1のフィルタに並列に接続された第2のフィルタとを設け、第1のフィルタを2端子対SAW共振子から構成し、第2のフィルタを第1の1端子対SAW共振子と第1の位相線路又は第1のインダクタンス素子とから構成することにより、減衰極を遮断周波数近傍にすることが可能となり、減衰域の減衰量を改善することができる。また、本発明では、SAW共振子を用いるため、フィルタを小型化できる。さらに、本発明では、積層LCフィルタのように所望の減衰量を得るために段数を増やす必要がないので、通過帯域の挿入損失が増大することがなく、外形が大型化することもない。その結果、本発明では、低損失で急峻な減衰特性を有する小型のローパスフィルタを実現することができる。
【0009】
また、本発明では、信号入力端子と第1、第2のフィルタの第1の端子との間に第3のフィルタを挿入することにより、減衰域の減衰量を更に増大させることができる。
【0010】
また、本発明では、信号入力端子と接地との間に第4のフィルタを挿入することにより、減衰域の減衰量を更に増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態となるローパスフィルタの等価回路図である。図1のローパスフィルタは、第1のフィルタ1と、第2のフィルタ2と、第3のフィルタ3とから構成されている。図1において、INは信号入力端子、OUTは信号出力端子である。
【0012】
図2に、第1のフィルタ1の平面図を示す。第1のフィルタ1は、2端子対SAW(Surface Acoustic Wave )共振子11からなる。2端子対SAW共振子11は、圧電基板上に送信用IDT(interdigital transducer :すだれ状電極)110と受信用IDT111とを形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器112,113を配置したものである。周知のように、IDTは、金属からなる櫛状の対向する2つの電極部を有し、各電極部は、対向する電極部に向かって交互に突出した複数の電極指を有している。
【0013】
図1、図2において、12は2端子対SAW共振子11の第1の端子(フィルタ1の入力端子)、14は2端子対SAW共振子11の第2の端子(フィルタ1の出力端子)、13は2端子対SAW共振子11の第3の端子、15は2端子対SAW共振子11の第4の端子である。第3の端子13と第4の端子15は接地されている。
【0014】
第1のフィルタ1は、2つの反射器112,113間に生じる定在波の周波数とIDT110,111の共振周波数とが一致するときに、入力端子12と出力端子14間に信号が伝送される狭帯域通過フィルタとして動作する。第1のフィルタ1の通過特性の1例を図3に示す。
【0015】
図4に、第3のフィルタ3の平面図を示す。第3のフィルタ3は、1端子対SAW共振子31と、1端子対SAW共振子31に並列に接続された位相線路(ストリップライン)32とからなる。1端子対SAW共振子31は、圧電基板上に1つのIDT310を形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器311,312を配置したものである。位相線路32は、誘電体内に信号導体を設けたものである。図1、図4において、33は1端子対SAW共振子31の第1の端子(IDT310の入力端子)、34は1端子対SAW共振子31の第2の端子(IDT310の出力端子)、35は位相線路32の入力端子、36は位相線路32の出力端子である。
【0016】
第3のフィルタ3の通過特性の1例を図5に示す。第3のフィルタ3は、2つの減衰極を有する帯域通過フィルタの特性を示す。ただし、図5では、約0.9GHzの低周波側の減衰極のみ記載し、1GHz超の位置にある高周波側の減衰極については省略している。第1のフィルタ1と第3のフィルタ3とを直列に接続し、第1のフィルタ1の通過域(0.9〜1GHz)を第3のフィルタ3の2つの減衰極の間に設定すると、図6に示すように第1のフィルタ1の通過域の両側の約0.9GHzと1GHzの位置に第3のフィルタ3の減衰極が生じ、通過域近傍の減衰量が改善されていることが分かる。
【0017】
フィルタ1,3を直列に接続したフィルタ(以下、直列フィルタ1,3と呼ぶ)と似た構成が、特開昭56−47116号公報に開示されている。特開昭56−47116号公報に開示されたフィルタでは、弾性表面波素子としてトランスバーサルフィルタが使用され、圧電共振子としてセラミック共振子が使用されている。これに対して、本実施の形態の直列フィルタ1,3では、トランスバーサルフィルタの代わりに2端子対SAW共振子11を使用し、また圧電共振子の代わりに1端子対SAW共振子31を使用しており、これらを同一の圧電基板上に形成している点が特開昭56−47116号公報のフィルタと異なる。
【0018】
次に、本実施の形態では、直列フィルタ1,3において、第1のフィルタ1に並列に第2のフィルタ2を接続することにより、非常に急峻な減衰特性を有するローパスフィルタを実現している。第2のフィルタ2は、第3のフィルタ3と同様に、1端子対SAW共振子21と、1端子対SAW共振子21に並列に接続された位相線路22とからなる。図1において、23は1端子対SAW共振子21の第1の端子(IDTの入力端子)、24は1端子対SAW共振子21の第2の端子(IDTの出力端子)、25は位相線路22の入力端子、26は位相線路22の出力端子である。
【0019】
図7に、図1のローパスフィルタの通過特性の1例を示す。図1の構成によれば、DC(直流)から770MHzまで低損失な通過域と828MHz付近に50dB以上の減衰域が形成されていることが分かる。本実施の形態のローパスフィルタの動作は、以下のように説明できる。
【0020】
まず、第1のフィルタ1について考察する。第1のフィルタ1においては音響的結合が含まれているため、LCフィルタの解析に用いられている影像パラメータ法による解析を直接行うことは困難である。まず影像パラメータ法による解析に帰着するため、以下の変換を行う。一般に、対称2端子対回路は、偶モード励振したときのインピーダンスをZeven、奇モード励振したときのインピーダンスをZoddとすると、図8に示すような対称格子型回路に変形できる。
【0021】
偶モード励振とは、2端子対回路の両端に大きさと位相が同じ電圧を印加することであり、奇モード励振とは、2端子対回路の両端に大きさが同じで位相が反転した電圧を印加することである。偶モードインピーダンスZeven、奇モードインピーダンスZoddは、それぞれの励振モードにおける電圧と流入する電流の比である。また、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddの値は、回路シミュレータにより容易に計算することができる。図8に示した対称格子型回路は、図9のようなT型回路に容易に変形することができる。
【0022】
図9のT型回路について、影像インピーダンスをZ0、伝搬定数をθとすると、次式が成立する。
【0023】
【数1】
【0024】
影像パラメータ理論によれば、θが虚数のときに通過域、実数のときに減衰域になるから、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddが異符号のときに通過域、同符号のときに減衰域となる。偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddの符号を調べるには、インピーダンスのリアクタンス部の符号を調べればよい。第1のフィルタ1について、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddのリアクタンス特性を図10、図11に示す。図11は、図10における0.9〜1GHzの帯域を拡大した図である。
【0025】
図10、図11によれば、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddとが異符号の周波数帯域がフィルタ特性の通過域となり、同符号の周波数帯域が減衰域となっている。上記の説明は、動作原理を説明するために回路が対称回路であるとの仮定をおいている。実際の回路では、IDT110及び111の対数等を異ならせる場合があり、対称性が損なわれる場合があるが、その場合でも原理的には上記説明の延長上にあり、フィルタ特性を直接計算し所望の特性となるよう設計すればよい。
【0026】
第1のフィルタ1に第2のフィルタ2の位相線路22のみを接続した場合のリアクタンス特性を図12、図13に示す。図13は、図12における0.9〜1GHzの帯域を拡大した図である。第1のフィルタ1に並列に位相線路22を接続したことにより、奇モードインピーダンスZoddの符号がほぼ反転し、偶モードインピーダンスZevenと異符合になっていることが分かる。このときの通過特性は、図14のようになり、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddが同符号となっている一部の帯域(0.94GHz付近)を除いて通過域が形成されている。
【0027】
さらに並列に1端子対SAW共振子21を接続した場合、すなわち第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続した場合のリアクタンス特性を図15、図16に示す。図16は、図15における0.7〜1GHzの帯域を拡大した図である。第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続すると、1端子対SAW共振子21と位相線路22で決まるピークが現れ、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddが同符号の周波数帯域、すなわち減衰域が拡大されることが分かる。
【0028】
第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続した場合の通過特性を図17に示す。本実施の形態では、第1のフィルタ1に並列に位相線路22を接続することにより、狭帯域通過フィルタからローパスフィルタに変換することができ、さらに第1のフィルタ1に1端子対SAW共振子21を並列に接続することより、急峻な肩特性と広い減衰域を有するローパスフィルタを実現することができる。
【0029】
さらに、フィルタ1,2を並列に接続した構成に図5の特性を有する第3のフィルタ3を直列に接続すると、さらに減衰量が改善され、先に示した図7のような特性を得ることができる。なお、減衰域の高域側の端部周波数は、第1のフィルタ1によりほぼ決定され、減衰域の低域側の端部周波数は、位相線路22と1端子対SAW共振子21により決定される。また、第3のフィルタ3の減衰極周波数を適切に設定することにより、減衰域の周波数特性を設定することができる。
【0030】
以下、本実施の形態のローパスフィルタの設計法について説明する。まず、以下の(a)〜(d)のような前提条件を定める。
(a)ラダー型のフィルタは、入出力端子間に挿入される素子である直列腕と、入出力端子と接地との間に挿入される素子である並列腕のインピーダンス関係によりフィルタ特性が決まる。
(b)本実施の形態では、ローパスフィルタを直列腕及び並列腕に分解することができないため、ラダー型フィルタとは言えない。よって、ラダー型フィルタの動作説明で使用される影像インピーダンスによる方法を直接適用することはできない。
(c)このため、本実施の形態では、偶モードインピーダンスと奇モードインピーダンスの概念を導入する。
(d)偶モードインピーダンスと奇モードインピーダンスの虚部の符号によりフィルタ特性が定まる。すなわち、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|とが異符号のとき通過域となり、Im|Zeven|とIm|Zodd|とが同符号のとき減衰域となり、Im|Zeven|とIm|Zodd|とが同じ値のときに減衰極が生じる。
【0031】
以下、 第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタについて考える。第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタの偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|を図18に示す。また、図18の場合におけるフィルタの通過特性を図19に示す。偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|は、主に第1のフィルタ1の素子の値により定まり、奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|は、主に第2のフィルタ2の素子の値により定まる。
【0032】
図18では、奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が零となる周波数P1より低い帯域、及び偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|が零となる周波数P2より高い帯域で、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が異符号となっているため、これらの帯域が通過域となる。
【0033】
一方、周波数P1とP2の間では、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同符号となっているため、周波数P1とP2の間の帯域が減衰域となる。特に、図18に示す破線の帯域Bでは、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる周波数が複数生じ、減衰極が形成される。
【0034】
所望の通過域と減衰域を得るためには、周波数P1が目的の遮断周波数(通過域の高域側の端部周波数)となるよう調整し、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同じ値となる帯域Bが所望の減衰域と一致するよう調整すればよい。そのためには、まず第1のフィルタ1のIDT110,111の共振波長λ1を調整して、周波数P2が減衰域の高域側の端部周波数付近となるよう設定する。次に、第2のフィルタ2のIDTの共振波長λ2を調整して、図18の帯域Bが目的の減衰域の周波数範囲と一致するよう調整する。このとき、λ2<λ1の関係を満たすようにする。
【0035】
第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタにおいてλ2>λ1とした場合のリアクタンス特性を図20に示し、このときの通過特性を図21に示す。図20に示すように、λ2>λ1とした場合、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|とが連続的に同一の値となる帯域Bがなくなり、周波数P1とP2の間でIm|Zeven|とIm|Zodd|が一致するのは2点のみとなる。このため、減衰極が分離し、図19の場合に比べて減衰域の減衰量が劣化する(図21)。
【0036】
第2のフィルタ2のIDTの共振波長λ2を変化させると、通過域の高域側の端部周波数を決めるP1が変化するため、位相線路22の長さを調整して、P1が前述のように目的の遮断周波数になるよう設定する。この操作により、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる帯域Bが変化するため、波長λ2を調整する。このような位相線路22の長さの調整と第2のフィルタ2のIDTの共振波長λ2の調整とを、所望の特性を満たすまで繰り返す。
【0037】
第1のフィルタ1及び第2のフィルタ2のIDTの電極指の交差幅と電極指の対数は、通過域のインピーダンスと帯域Bの傾きに影響を与える。第1のフィルタ1のIDT110,111の電極指の交差幅及び電極指の対数で決まるIm|Zeven|の傾きと第2のフィルタ2のIDTの電極指の交差幅及び電極指の対数で決まるIm|Zodd|の傾きとが一致するように調整すると共に、通過域が所望の特性インピーダンス(通常50Ω)となるよう適切に設定する。以上の調整は、手動で行うことも可能であるが、適切な誤差関数を定めて、コンピュータにより最適な組み合わせを探索するようにすると良い。
【0038】
なお、以上の設計方法の説明では、第1のフィルタ1のIDT110の共振波長とIDT111の共振波長を同一の値としたが、異なる値に設定しても良い。この場合のリアクタンス特性を図22に示す。IDT110とIDT111の共振波長を異なる値にすると、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる帯域Bが拡大し、より広帯域な減衰域を実現することができる。
【0039】
また、第1のフィルタ1のIDT110とIDT111間の距離を調整すると、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|が同一の値となる帯域を更に拡大することができ、減衰域を更に拡大することができる。この場合のリアクタンス特性を図23に示す。この調整は、IDT110とIDT111間の距離を通常0.5λとするところを0.7λから0.9λ付近にすると良い。
【0040】
第3のフィルタ3は、図5のような通過特性を有している。そこで、第1のフィルタ1に第2のフィルタ2を並列に接続したフィルタと、第3のフィルタ3とにおいて、通過域と減衰域が互いに一致するようにして、これらを従属接続すれば、より減衰量が増大し好ましい。
【0041】
図24は、本実施の形態のローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。図24において、210は第2のフィルタ2の1端子対SAW共振子21を構成するIDT、211,212はIDT210の両側に配置された反射器である。本実施の形態では、位相線路22,32を除く図24の構成を、圧電基板である39°回転Y板LiTaO3 上に形成した。
【0042】
フィルタ1〜3の各共振子の電極材料をAlCu(0.5%)とし、この電極材料の膜厚を390nmとした。第1のフィルタ1の2端子対SAW共振子11の共振波長λを4.18μm、IDT110,111の電極指の交差幅をそれぞれ26λ、IDT110,111の電極指の対数をそれぞれ53対、反射器112,113の本数をそれぞれ100本とした。また、IDT110と111との距離を、互いに最も近接した電極指同士の中心線間距離が0.8λになるように設定した。
【0043】
第2のフィルタ2の1端子対SAW共振子21の共振波長λを4.01μm、IDT210の電極指の交差幅を30λ、IDT210の電極指の対数を100対、反射器211,212の本数をそれぞれ100本とした。また、第3のフィルタ3の1端子対SAW共振子31の共振波長λを3.97μm、IDT310の電極指の交差幅を32λ、IDT310の電極指の対数を95対、反射器311,312の本数をそれぞれ100本とした。
【0044】
位相線路22,32は、比誘電率7.6のLTCC(低温焼成セラミックス)パッケージ内にストリップラインとして形成し、特性インピーダンスを50Ωとした。また、位相線路22の線路長を8.9mm、位相線路32の線路長を8.8mmとした。そして、位相線路22はワイヤー線を用いて1端子対SAW共振子21と並列に接続され、同様に位相線路32はワイヤー線を用いて1端子対SAW共振子31と並列に接続される。
【0045】
図24に示したローパスフィルタの通過特性が前記の図7であり、DCから770MHzまで挿入損失1.5dB以下、828〜925MHzにおいて50dBの減衰量を確保することができた。以上のように、本実施の形態によれば、従来の積層LCフィルタに比べて、非常に急峻な減衰特性を得ることができる。本実施の形態では、SAW共振子を用いるため、フィルタを小型化できる。さらに、本実施の形態では、積層LCフィルタのように所望の減衰量を得るために段数を増やす必要がないので、通過帯域の挿入損失が増大することがなく、外形が大型化することもない。その結果、本実施の形態では、低損失で急峻な減衰特性を有する小型のローパスフィルタを実現することができる。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図25は、本発明の第2の実施の形態となるローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図であり、図1、図24と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、図24と異なる別のチップレイアウトを示すものである。
【0047】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図26は、本発明の第3の実施の形態となるローパスフィルタの等価回路図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、第1、第2の実施の形態のローパスフィルタに対して、さらに信号入力端子INと接地との間に第4のフィルタ4を挿入したものである。第4のフィルタ4は、1端子対SAW共振子41からなる。1端子対SAW共振子41は、圧電基板上に1つのIDT410を形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器411,412を配置したものである。
【0048】
図27は、本実施の形態のローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図であり、図1、図24、図26と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態によれば、第4のフィルタ4を追加することにより、第1、第2の実施の形態に比べて減衰域の減衰量を更に増大させることができる。
【0049】
なお、第1〜第3の実施の形態において、使用する圧電基板やカット角は、種々変更可能である。特に電気機械結合係数は、フィルタの急峻性に寄与する。電極材料も、AlCuに限らず種々の合金、多層膜、高配向膜を用いてよく、表面にSiO2 等の保護膜を形成してもよい。位相線路22,32のパッケージは、LTCCに限定されず、アルミナや樹脂を用いてもよい。また、位相線路22,32の代わりに、インダクタンス素子を用いてもよい。インダクタンス素子を用いる場合は、外付けのコイルでもよいし、ワイヤー線からなるインダクタンス素子をチップ内で配線してもよい。
【0050】
また、第1〜第3の実施の形態のローパスフィルタは、他の構成のフィルタと組み合わせてもよく、分波器用のフィルタの一部または全部を構成してもよい。また、第1のフィルタ1の2端子対SAW共振子11は、対称構成でなくてもよく、IDT110と111の間で共振波長λや電極指の対数などを変えてもよい。また、IDT110と111間の距離も要求特性に応じて変更してよい。また、第1のフィルタ1と第2のフィルタ2の組み合わせを複数段直列に接続するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えばTV放送受信用チューナ付き携帯電話機のチューナ回路に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態となるローパスフィルタの等価回路図である。
【図2】本発明の実施の形態における第1のフィルタの平面図である。
【図3】本発明の実施の形態における第1のフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における第3のフィルタの平面図である。
【図5】本発明の実施の形態における第3のフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図6】第1のフィルタと第3のフィルタとを直列に接続したフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図7】図1のローパスフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図8】対称2端子対回路を変形した対称格子型回路の等価回路図である。
【図9】図8の対称格子型回路を変形したT型回路の等価回路図である。
【図10】本発明の実施の形態における第1のフィルタについて偶モードインピーダンスと奇モードインピーダンスのリアクタンス特性の1例を示す図である。
【図11】図10を拡大した図である。
【図12】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタの位相線路を接続した場合のリアクタンス特性の1例を示す図である。
【図13】図12を拡大した図である。
【図14】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタの位相線路のみを接続した場合の通過特性の1例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の1例を示す図である。
【図16】図15を拡大した図である。
【図17】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合の通過特性の1例を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合の通過特性の他の例を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合の通過特性の他の例を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態において第1のフィルタに第2のフィルタを並列に接続した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図24】図1のローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図である。
【図25】本発明の第2の実施の形態となるローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図である。
【図26】本発明の第3の実施の形態となるローパスフィルタの等価回路図である。
【図27】図26のローパスフィルタのチップレイアウトを示す平面図である。
【図28】従来の積層LCローパスフィルタの等価回路図である。
【図29】図28の積層LCローパスフィルタの通過特性の1例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1…第1のフィルタ、2…第2のフィルタ、3…第3のフィルタ、4…第4のフィルタ、11…2端子対SAW共振子、21、31、41…1端子対SAW共振子、22、32…位相線路、110、111、210、310、410…IDT、112、113、211、212、311、312、411、412…反射器、22、32…位相線路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフィルタと、この第1のフィルタに並列に接続された第2のフィルタとを有し、
前記第1のフィルタは、第1の端子が信号入力端子に接続され、第2の端子が信号出力端子に接続され、第3の端子と第4の端子が接地された2端子対SAW共振子からなり、
前記第2のフィルタは、第1の端子が前記2端子対SAW共振子の第1の端子に接続され、第2の端子が前記2端子対SAW共振子の第2の端子に接続された第1の1端子対SAW共振子と、この第1の1端子対SAW共振子に並列に接続された第1の位相線路又は第1のインダクタンス素子とからなることを特徴とするローパスフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載のローパスフィルタにおいて、
さらに、前記信号入力端子と前記第1、第2のフィルタの第1の端子との間に挿入された第3のフィルタを有し、
この第3のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第1、第2のフィルタの第1の端子に接続された第2の1端子対SAW共振子と、この第2の1端子対SAW共振子に並列に接続された第2の位相線路又は第2のインダクタンス素子とからなることを特徴とするローパスフィルタ。
【請求項3】
請求項2記載のローパスフィルタにおいて、
さらに、前記信号入力端子と接地との間に挿入された第4のフィルタを有し、
この第4のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子と接続され、第2の端子が接地された第3の1端子対SAW共振子からなることを特徴とするローパスフィルタ。
【請求項1】
第1のフィルタと、この第1のフィルタに並列に接続された第2のフィルタとを有し、
前記第1のフィルタは、第1の端子が信号入力端子に接続され、第2の端子が信号出力端子に接続され、第3の端子と第4の端子が接地された2端子対SAW共振子からなり、
前記第2のフィルタは、第1の端子が前記2端子対SAW共振子の第1の端子に接続され、第2の端子が前記2端子対SAW共振子の第2の端子に接続された第1の1端子対SAW共振子と、この第1の1端子対SAW共振子に並列に接続された第1の位相線路又は第1のインダクタンス素子とからなることを特徴とするローパスフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載のローパスフィルタにおいて、
さらに、前記信号入力端子と前記第1、第2のフィルタの第1の端子との間に挿入された第3のフィルタを有し、
この第3のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第1、第2のフィルタの第1の端子に接続された第2の1端子対SAW共振子と、この第2の1端子対SAW共振子に並列に接続された第2の位相線路又は第2のインダクタンス素子とからなることを特徴とするローパスフィルタ。
【請求項3】
請求項2記載のローパスフィルタにおいて、
さらに、前記信号入力端子と接地との間に挿入された第4のフィルタを有し、
この第4のフィルタは、第1の端子が前記信号入力端子と接続され、第2の端子が接地された第3の1端子対SAW共振子からなることを特徴とするローパスフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2006−238101(P2006−238101A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50362(P2005−50362)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】
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