説明

ロールカバー

【課題】 フッ素ポリマーが有する柔軟性、離型性、表面クリーニング性等を維持しつつ、静電気によるオフセット現象の発生を防止するロールカバーを提供することにある。
【解決手段】 本発明のロールカバー30は、丸棒状のロール本体20を被覆し、熱可塑性フッ素ポリマーにより形成される管状のロールカバー30であって、熱可塑性フッ素ポリマーが重量比0.5〜5%のカーボンナノチューブを含有することを特徴とする。これにより、熱可塑性フッ素ポリマーが重量比0.5〜5%のカーボンナノチューブを含有するので、本発明のロールカバー30は必要な導電性を確保、換言すると、静電気の帯電性が低く、良好な除電性を確保し静電気によるオフセット現象の発生を防止することができ、更に、通常のフッ素ポリマーが有する柔軟性、離型性、表面クリーニング性等を良好に維持することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等で、例えば、熱定着ロールや加圧ロール等として使用されるロールに用いられるロールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等には、トナーの加熱定着を行う熱ロール型定着装置が設けられており、当該定着装置には、例えば、熱定着ロールや該熱定着ロールに押圧される加圧ロール等(以下、「ロール」という)が配設されている。このようなロールは、丸棒状のロール本体とその外周面を被覆する管状のロールカバーで略構成され、該ロールカバーはロール本体の外周面に接着されている。
【0003】
該ロールカバーの外周面はトナーあるいは用紙等の記録媒体との非粘着性が求められるので、当該ロールカバーの材料としては、耐熱性、非粘着性等の特性を有するフッ素ポリマーが適しており、フッ素ポリマーからなる管体がロールカバーとして利用されている。しかし、通常のフッ素ポリマーは導電性が低いので、通常のフッ素ポリマーからなるロールカバーを複写機やプリンタ等に用いると、後続の画像を汚すような静電気によるオフセット現象が生じ易くなる。そこで、フッ素ポリマーに導電性フィラーを含有させた導電性を有するフッ素ポリマー(以下、「導電性フッ素ポリマー」という)を用いることがあり、例えば、特許文献1には、導電性フッ素ポリマーにより形成された円筒形状部材(ロール)が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−208033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性フッ素ポリマーを得る方法として、例えばカーボンブラックのような導電性フィラーをフッ素ポリマーに含有させる方法があるが、上述したロールカバーに適した導電性を得るためには、多量のカーボンブラックを含有させる必要がある。しかし、多量のカーボンブラックを含有させたフッ素ポリマーをロールカバーに用いると、ロールカバーは硬くなり、また、ロールカバーの表面がカーボンブラックで覆われるので、通常のフッ素ポリマーが有する離型性や表面クリーニング性が損なわれてしまい、ロールカバーとして適さなくなる。さらに近年、プリンタやコピー機のカラー化や高速化が進み、定着ロールと加圧ロールとのニップ幅を広げる必要性が高まり、ロールの柔軟性が求められるようになってきているが、ロールカバーが硬いとロールの十分な柔軟性が確保できなくなり、十分なニップ幅を得ることが困難になる。
【0006】
また、上記特許文献1に記載された円筒形状部材は、支持体上に設けられた導電性弾性層と、この導電性弾性層上に設けられた表層とからなり、該表層は導電性樹脂で予め成形されたスリーブ部材(ロールカバー)であることを特徴とする。これにより、比較的容易に製造でき、且つ低硬度と高寸法精度であり、体積抵抗値の調整も比較的容易にできる円筒形状部材を提供することが可能となっている。この特許文献1に記載の円筒形状部材では、導電性弾性層と表層(スリーブ部材)とで導電性を確保(なお、表層の体積抵抗値が導電性弾性層の体積抵抗値より大きい)しているが、スリーブ部材で導電性を確保しようとすれば多量のカーボンブラックを含有させる必要があり、スリーブ部材は更に硬化し、またスリーブ部材の表面がカーボンブラックで覆われてしまう。このため、円筒形状部材の柔軟性が確保できず、また、表層の離型性や表面クリーニング性も損なわれてしまう。
【0007】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、フッ素ポリマーが有する柔軟性、離型性、表面クリーニング性等を維持しつつ、静電気によるオフセット現象の発生を効果的に防止するロールカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本発明のロールカバーは、丸棒状又は円筒状のロール本体を被覆し、熱可塑性フッ素ポリマーにより形成される管状のロールカバーであって、前記熱可塑性フッ素ポリマーが重量比0.5〜5%のカーボンナノチューブを含有することを特徴としている。
【0009】
これにより、前記熱可塑性フッ素ポリマーが重量比0.5〜5%のカーボンナノチューブを含有するので、本発明のロールカバーは必要な導電性を確保、換言すると、静電気の帯電性が低く、良好な除電性を確保し静電気によるオフセット現象の発生を防止することができ、更に、通常のフッ素ポリマーが有する柔軟性、離型性、表面クリーニング性等を良好に維持することが可能である。
【0010】
また、本発明のロールカバーは、前記熱可塑性フッ素ポリマーがカーボンナノチューブを含有するテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)であることを特徴としている。これにより、更に、非粘着性、耐熱性に優れたロールカバーを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るロールカバーの一の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
はじめに、本発明の一の実施形態について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るロールカバー30を用いたロール100の一部を示す斜視図である。
【0013】
図1にその概略を示すロール100は、例えば、複写機やプリンタ等の記録装置の熱定着ロールや該熱定着ロールに押圧される加圧ロール等に利用されるロールであって、ロール本体20にロールカバー30を被覆させたものである。
【0014】
芯金10は、例えば、金属等の材料からなる中空又は中実の丸棒等であって、好適にはアルミニウムにより形成されるが、ロール100を支える芯部となるものであればどのようなものであってもよい。
【0015】
ロール本体20は芯金10の外周面に接着して形成された円筒状の弾性体であって、好適にはシリコン樹脂で形成されている。しかし、ロール本体20は弾性体に限定されず、金属等により形成されていてもよい。なお、図1に示す形態では、ロール本体20と芯金10とがそれぞれ構成されているが、芯金10をロール本体20として利用するロールであってもよい。
【0016】
本発明に係るロールカバー30は、図1に示すように、ロール本体20(芯金10をロール本体20として利用するロールの場合には芯金10がロール本体20となる)の周りに形成された管体であって、ロール本体20の外周面と接着されている。これにより、芯金10、ロール本体20、ロールカバー30は結合され、ロール100を形成する。
【0017】
ロール100は、前述したように、例えば、記録装置の熱定着ロールや該熱定着ロールに押圧される加圧ロールとして利用され、ロール100(ロールカバー30)は用紙、シート等の記録媒体と接触する。すなわち、ロールカバー30の外周面が記録媒体と接触した状態で、記録装置の熱定着処理が高温の下で行われる。このため、従来から、ロールカバー30の好適な材料として、耐熱性、非粘着性等の特性を有する各種のフッ素樹脂(以下、「フッ素ポリマー」という)が用いられてきた。一方、通常のフッ素ポリマーは導電性が低いので、通常のフッ素ポリマーからなるロールカバーを記録装置に用いると、上述した静電気によるオフセット現象の問題が生じていたので、導電性を有するロールカバーが求められていた。
【0018】
導電性フッ素ポリマーとして、カーボンブラックのような導電性フィラーをフッ素ポリマーに含有させたものがあるが、ロールカバー30として好ましい導電性を得るためには多量のカーボンブラックを含有させる必要があった。多量のカーボンブラックを含有させたフッ素ポリマーをロールカバー30に用いると、ロールカバー30は硬化してロール100の柔軟性が損なわれ、また、ロールカバー30の表面がカーボンブラックで覆われてしまうのでロールカバー30として重要な離型性や表面クリーニング性も損なわれてしまっていた。
【0019】
このような状況のもと、本発明の発明者は、熱可塑性フッ素ポリマーにカーボンナノチューブを0.5〜5%混合させた材料からなるロールカバー30が、通常のフッ素ポリマーが有する柔軟性と離型性を維持して、更に静電気の帯電性が低く、除電性にも優れていることを見出して本発明をなし得たものである。
【0020】
本発明に使用可能な熱可塑性フッ素ポリマーとして、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を挙げることができる。この中で、耐久性の観点からテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)が好ましく、更に、非粘着性、耐熱性の観点を加味するとテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が最も好ましい。
【0021】
また、本発明に使用可能なカーボンナノチューブとしては、特に合成法に制限はなく、気相成長法、アーク放電法、レーザー蒸発法等で合成された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)又は多層カーボンナノチューブ(MWCNT)が挙げられる。なお、カーボンナノチューブの直径(繊維径)にも特に制限はなく、繊維径1.5〜200nmのものを使用することができる。また、カーボンナノチューブの長さ(繊維長)にも特に制限はないが、アスペクト比が5以上のカーボンナノチューブが、本発明の特徴を得るのに好適である。
【0022】
このようなカーボンナノチューブを上述した熱可塑性フッ素ポリマーに混合する比率(混合比率)は重量比0.5〜5%が好ましい。混合比率が0.5%以下の場合は静電気の帯電性や除電性が通常の無添加のフッ素ポリマーと同じであり、混合比率が5%以上の場合は混合された熱可塑性フッ素ポリマーは硬くなりロールの柔軟性に問題が生じる。
【0023】
また、カーボンナノチューブを熱可塑性フッ素ポリマーに混合する方法にも特に制限はない。熱可塑性フッ素ポリマーの粉やペレットとカーボンナノチューブとを混ぜた後に、単軸押出機や2軸押出機で混練する方法や、インテンシブミキサー、バンバリミキサー内で両者を混練する方法等を用いることができる。また、カーボンナノチューブを熱可塑性フッ素ポリマーに混合する際に、分散剤を用いることもできる。例えば、カーボンナノチューブをフッ素系の界面活性剤で処理することにより、フッ素ポリマーへの混合分散性を高めることができる。更に、本発明の特徴を阻害しない範囲で、他の添加剤やフィラーを併用混合してもさしつかえない。
【0024】
このように熱可塑性フッ素ポリマーにカーボンナノチューブを混合させて得られた材料を管状に成形してロールカバー30を得る際は、通常の押出成形法を用いるが、それ以外の方法であっても良い。
【0025】
ロールカバー30の直径は、ロール本体20の大きさによって任意に調整することができる。また、ロールカバー30の厚さは、ロール100の使用方法によって任意に選ぶことができるが、一般的には10〜300μmが好ましく、更に20〜150μmがより好ましい。
【0026】
なお、ロールカバー30は、熱によって径方向や軸方向に収縮しないタイプであっても収縮するタイプであっても良い。また、ロール本体20との接着性を向上させるためにロールカバーの内面処理を行っても良いし行わなくても良い。
【0027】
このロールカバー30を用いたロール100に特に制限はなく、種々の分野で利用が可能であるが、記録装置の加熱、加圧定着部で使用されているロールや紙送り部のロールなどへの利用が最も適している。
【実施例】
【0028】
次に、本発明の実施例と比較例について説明する。はじめに、以下に記す実施例1〜7、比較例1〜3の材料を作成した。
【0029】
[実施例1]カーボンナノチューブ(径100nm)0.5%含有混合材料
5グラムのカーボンナノチューブ(VGCF−S(登録商標)、チューブ径100nm、昭和電工(株)製)と995グラムの顆粒状フッ素ポリマー(テフロン(登録商標)PFA 9738J、三井デュポンフロロケミカル(株)製)とをステンレス容器内で十分に混合させ、2軸押出機(KZW20−25G、テクノベル(株)製)でストランド状に溶融混練押出ししたものを水槽で冷却し、ペレタイザーで直径1.5mm、長さ2mmのペレットを作成した。なお、2軸押出機はシリンダー温度を350℃、ダイ温度を350℃、スクリュー回転数を70rpmに設定した。
【0030】
[実施例2]カーボンナノチューブ(径100nm)1%含有混合材料
実施例1と同じカーボンナノチューブ10グラムと、実施例1と同じ顆粒状フッ素ポリマー990グラムとを用いて、実施例1と同じ方法及び条件で、直径1.5mm、長さ2mmのペレットを作成した。
【0031】
[実施例3]カーボンナノチューブ(径100nm)1.5%含有混合材料
実施例1と同じカーボンナノチューブ15グラムと、実施例1と同じ顆粒状フッ素ポリマー985グラムとを用いて、実施例1と同じ方法及び条件で、直径1.5mm、長さ2mmのペレットを作成した。
【0032】
[実施例4]カーボンナノチューブ(径100nm)2%含有混合材料
実施例1と同じカーボンナノチューブ20グラムと、実施例1と同じ顆粒状フッ素ポリマー980グラムとを用いて、実施例1と同じ方法及び条件で、直径1.5mm、長さ2mmのペレットを作成した。
【0033】
[実施例5]カーボンナノチューブ(径100nm)3%含有混合材料
実施例1と同じカーボンナノチューブ30グラムと、実施例1と同じ顆粒状フッ素ポリマー970グラムとを用いて、実施例1と同じ方法及び条件で、直径1.5mm、長さ2mmのペレットを作成した。
【0034】
[実施例6]カーボンナノチューブ(径20nm)1%含有混合材料
0.9グラムのカーボンナノチューブ(CNT20、チューブ径20nm、(株)カーボン・ナノテク・リサーチ・インスティチュート製)と89.1グラムのペレット状フッ素ポリマー(テフロン(登録商標)PFA 451HPJ、三井デュポンフロロケミカル(株)製)をラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)の60ccミキサーにいれ、350℃、20rpmで20分間混合し、取り出した後、熱プレスで板状に加工し、粉砕機で約2mm角のペレットを作成した。以上の操作を10回繰り返し900グラムの混合材料を得た。
【0035】
[実施例7]カーボンナノチューブ(径150nm)5%含有混合材料
50グラムのカーボンナノチューブ(VGCF(登録商標)、チューブ径150nm、昭和電工(株)製)とカーボンナノチューブあたり5%(2.5グラム)のパーフロロブタンスルホン酸カリウムをメタノール中で混合した後、110℃で乾燥させた。続いて、947.5グラムの顆粒状フッ素ポリマー(テフロン(登録商標)PFA 9738J、三井デュポンフロロケミカル(株)製)とステンレス容器内で十分に混合させ、2軸押出機(KZW20−25G、テクノベル(株)製)でストランド状に溶融混練押出ししたものを水槽で冷却し、ペレタイザーで直径1.5mm、長さ2mmのペレットを作成した。なお、2軸押出機はシリンダー温度を370℃、ダイ温度を370℃、スクリュー回転数を50rpmに設定した。
【0036】
[比較例1]カーボンナノチューブを含まない熱可塑性フッ素ポリマー
ナチュラルのフッ素ポリマー(テフロン(登録商標)PFA 451HPJ、三井デュポンフロロケミカル(株)製)をそのままロールカバー30の材料とした。
【0037】
[比較例2]カーボンブラック8.5%含有混合材料
85グラムのカーボンブラック(アセチレンブラック、電気化学工業(株)製)と915グラムの粉状フッ素ポリマー(テフロン(登録商標)PFA 350J、三井デュポンフロロケミカル(株)製)とをステンレス容器内で十分に混合させ、2軸押出機(KZW20−25G、テクノベル(株)製)でストランド状に溶融混練押出したものを水槽で冷却し、ペレタイザーで直径1.5mm、長さ2mmのペレットに加工した。なお、2軸押出機はシリンダー温度を365℃、ダイ温度を365℃、スクリュー回転数を80rpmに設定した。
【0038】
[比較例3]カーボンナノチューブ(径150nm)7%含有混合材料
70グラムのカーボンナノチューブ(VGCF(登録商標)、チューブ径150nm、昭和電工(株)製)と930グラムの粉状フッ素ポリマー(テフロン(登録商標)PFA 345J、三井デュポンフロロケミカル(株)製)とをステンレス容器内で十分に混合させ、2軸押出機(KZW20−25G、テクノベル(株)製)でストランド状に溶融混練押出したものを水槽で冷却し、ペレタイザーで直径1.5mm、長さ2mmのペレットに加工した。なお、2軸押出機はシリンダー温度を370℃、ダイ温度を370℃、スクリュー回転数を50rpmに設定した。
【0039】
[ロールカバーの製作]
実施例1〜7、比較例1〜3で得られた材料を、シリンダー径30mmの単軸押出機を用いて、直径30mm、厚さ50μmのロールカバー(管体)に成形した。それぞれのロールカバー(以下、「試料管体」という)に関して、以下の評価試験1〜4を行った。
【0040】
[評価試験]
1.静電気帯電特性の評価(評価1)
長さ550mmの各試料管体の中央部に15kV、30kVの各電圧を1秒間隔で10回印加し、15秒後と120秒後に各試料管体の印加部に帯電している各電圧を測定した。なお、各試料管体への電圧印加は試験機(Electrostatic Discharge Tester Model ESD−300、三基電子工業(株)製)を使用し、帯電している電圧の測定は測定器(静電電位測定器 STATIRON−DZ3、シシド静電気(株)製)を使用した。
【0041】
2.静電気帯電特性の評価(評価2)
各試料管体を40×40mmの試験片に切断し、JIS L1094半減期測定法(但し、印加電圧は+10kVではなく、−10kVとした)に従って、初期帯電圧と半減するまでの時間を測定した。なお、120秒たっても帯電圧が半減しない試料管体は120秒後の帯電圧を測定した。
【0042】
3.柔軟性の評価(評価3)
各試料管体を径方向に幅5mm、長さ20mmの短冊状に切断し、熱分析器TMAを使用して、チャック間距離15mm、230℃で歪み5%の引張割線弾性率を求め柔軟性の指標とした。
【0043】
4.離型性の評価(評価4)
各試料管体を走査型電子顕微鏡で拡大し、表面状態を観察することによって離型性の評価を行った。
【0044】
[試験結果]
評価試験1〜3の評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、実施例1〜7は、いずれも比較例1(カーボンナノチューブを含まない熱可塑性フッ素ポリマー)に比べ初期帯電圧が低く、120秒後の帯電圧も低く、除電しやすいことを示しており、静電気によるオフセット現象に対して有効である。また、実施例1〜7はいずれも比較例2(カーボンブラック8.5%含有混合材料)、比較例3(カーボンナノチューブ(径150nm)7%含有混合材料)に比べ230℃での弾性率が低く、プリンタやコピー機等の定着部温度付近での柔軟性が高いことを示している。
【0047】
次に、実施例5(カーボンナノチューブ(径100nm)3%含有混合材料)と比較例2(カーボンブラック8.5%含有混合材料)の電子顕微鏡写真を参照して試料管体の表面状態について説明する。表1に示す評価1、2の結果より、実施例5及び比較例2の試料管体はほぼ同じ静電気帯電特性を有することが判る。このように、ほぼ同じ静電気帯電特性の結果を示す実施例5の試料管体と比較例2の試料管体との電子顕微鏡写真をそれぞれ図2、図3に示す。
【0048】
図3に示す比較例2の試料管体の表面は、カーボンブラックで覆われ、フッ素ポリマーの離型性が損なわれているだけでなく、その凸凹部に汚れが取り込まれることでよりいっそう印刷品質の低下を招く虞がある。これに対し、図2に示す実施例5の試料管体の表面は、ほとんどがフッ素ポリマーで占められており、フッ素ポリマーの離型性が維持されている。更に、表面が平滑なため汚れの付着がほとんどないので、フッ素ポリマーが本来有する表面クリーニング性も良好に維持されている。
【0049】
以上、本発明の実施形態と実施例について説明したが、本発明に係るロールカバー30は、丸棒状又は円筒状のロール本体20を被覆し、熱可塑性フッ素ポリマーにより形成される管状のロールカバー30であって、熱可塑性フッ素ポリマーが重量比0.5〜5%のカーボンナノチューブを含有することを特徴としている。これにより、熱可塑性フッ素ポリマーが重量比0.5〜5%のカーボンナノチューブを含有するので、本発明に係るロールカバー30は必要な導電性を確保し静電気によるオフセット現象の発生を防止することができ、更に、通常のフッ素ポリマーが有する柔軟性、離型性、表面クリーニング性等を良好に維持することが可能である。
【0050】
また、本発明に係るロールカバー30は、前記熱可塑性フッ素ポリマーがカーボンナノチューブを含有するテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体 (PFA)であることを特徴としている。これにより、更に、非粘着性、耐熱性に優れたロールカバー30を提供することが可能となる。
【0051】
なお、本発明の範囲は上述した実施形態や実施例に限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に反しない限り、他の様々な実施形態に適用可能である。例えば、本発明に係るロールカバー30は、導電性及び静電気特性等の優れた電気的特性を有するので、このような電気的特性が求められる、例えば、電子電気機器等に広く利用される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係るロールカバーは、コピー機やプリンター等の加熱、加圧定着部で使用される他、種々の分野で使用されるロールに適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るロールカバー30を含んだロール100の一部を示す斜視図である。
【図2】実施例5の電子顕微鏡写真を示す。
【図3】比較例2の電子顕微鏡写真を示す。
【符号の説明】
【0054】
10 芯金、20 ロール本体、30 ロールカバー、100 ロール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸棒状又は円筒状のロール本体を被覆し、熱可塑性フッ素ポリマーにより形成される管状のロールカバーであって、
前記熱可塑性フッ素ポリマーが重量比0.5〜5%のカーボンナノチューブを含有することを特徴とするロールカバー。
【請求項2】
前記熱可塑性フッ素ポリマーがテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)であることを特徴とする請求項1に記載のロールカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−126595(P2006−126595A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316126(P2004−316126)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000145530)株式会社潤工社 (71)
【Fターム(参考)】