説明

ロール

【課題】 従来のロールは芯を鉄製としていたため、重く、交換・運搬等に多くの労力を要し、作業効率が悪くコスト高にもなっていた。
【解決手段】 本発明のロールは、カーボン製の筒状の芯の外側に外周層が形成され、外周層の表面を印刷用又はコーティング用の版面若しくはガイド用又は搬送用のガイド面としたものである。この場合、芯の内側又は/及び芯の外側と外周層の間に補強層を形成することもできる。また、外周層の版面又はガイド面を保護層で被覆することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷やフィルム・基板等への印刷インクの印刷、塗料塗布等に用いられる筒状の印刷用ロール、コーティングロールといったシリンダーロールや、フィルム・基板等のガイドや搬送等に用いるガイドロール、搬送ロール等の各種ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のロールは、芯材に金属製の円筒材が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のロールには各種サイズがあるが、いずれのサイズであっても芯が金属製であるため重く、サイズの大きなものは一本で数100kgもあった。そのため、印刷機のシリンダーロールの交換時やセット時のシリンダーロールの持ち上げ、運搬などの作業に多大な労力を要し重労働であった。このため作業効率が悪く、またロール落下時の危険性も大きいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、軽量で交換、運搬等の取り扱いが容易で作業性が良く、落下時の危険性も少ないロールを提供するものである。
【0005】
本件出願のロールは請求項1記載のように、カーボン製の筒状の芯の外側に外周層が形成され、外周層の表面を印刷用又はコーティング用の版面若しくはガイド用又は搬送用のガイド面としたものである。この場合、請求項2記載のように、芯の内側又は/及び芯の外側と外周層の間に補強層を形成することもできる。また、請求項3記載のように、外周層の版面又はガイド面を保護層で被覆することもできる。
【発明の効果】
【0006】
本件出願の請求項1記載のロールは、筒状の芯がカーボン製であるため金属製に比して軽量であり、交換時や運搬時の取り扱いが格段に容易且つ安全となり、労力も軽減でき、作業効率が向上し、コスト減にも資する。
【0007】
本件出願の請求項2記載のロールは、芯の内側又は/及び芯の外側と外周層の間に補強層を形成したので、上記効果に加えて、ロールに撓みや変形が生じにくくなり、ロールの強度が向上するという効果もある。そのため歪の無い印刷や塗料塗布が可能となり、印刷精度が向上する。また、基板やフィルムの搬送やガイドもスムースに行うことができる。
【0008】
本件出願の請求項3記載のロールは、外周層の版面又はガイド面を保護層で被覆したので、上記各効果に加えて、版面やガイド面の耐摩耗性が向上し、ロールを長期に亘って使用できるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施形態1)
本発明のロールの実施形態の一例を図1〜図4に基づいて説明する。図1に示すロール1はグラビア印刷に用いられる印刷用ロール、フィルムや基板等への塗料の塗布(コーティング)に用いられるコーティングロールといったシリンダーロールであって、芯2の外周にそれを補強する補強層3を設け、補強層3の外周に外周層4を設け、外周層4の表面に印刷用又はコーティング用の版面5を形成し、版面5の表面にそれを保護する保護層6を設けたものである。
【0010】
図1の芯2は、カーボン製であって、筒状に形成されている。この芯2は、カーボン繊維を編んで又は織って作られたカーボンシートを筒状に巻いて(ロールして)接着剤等で固めたものや、カーボン繊維をそのまま筒状に巻いて固めたもの等とすることができる。芯2には既存のカーボンパイプを使用することもできる。芯2の長さ及び芯材の厚さは形成するロール1のサイズに応じて任意とすることができ、例えば長さ数cm〜数十m、厚さ数μm〜数十mm程度とすることができる。
【0011】
図1の補強層3は芯2を補強するものであり、内径が前記芯2の外径より少し大きく形成されたステンレス製の円筒状パイプである。図1ではその内側に円筒状の芯2を圧入して固定させてある。芯2と補強層3は接着剤で接着固定することもできる。補強層3はステンレスを芯2の外側面に溶射して形成することもできる。その場合、溶射の方式は、フレーム溶射、プラズマ溶射、アーク溶射等、任意の方式とすることができる。また、アーク溶射で形成した層の外側にフレーム溶射で更に層を形成する等、二以上の溶射方式を組み合わせることも可能である。補強層3はロール1に撓みや変形(歪)等が生じない強度、靭性等であれば任意の材質、厚さ等とすることができる。材質としては例えばステンレス製に限らずアルミとか他の金属製、硬質樹脂製、他の任意の材質製とすることができる。補強層3はロール1に撓みや変形(歪)等が生じない厚さ、硬度、靭性等であれば任意とすることができるが、例えば数mm〜数十mmとすることができる。
【0012】
図1の外周層4は前記補強層3の外側に形成されている。外周層4は例えば前記補強層3の外側に銅をめっきしたり銅を溶射したりして形成されている。銅を溶射して外周層4を形成する場合、溶射の方式は、フレーム溶射、プラズマ溶射、アーク溶射等、任意の方式とすることができる。また、アーク溶射で形成した層の外側にフレーム溶射で更に層を形成する等、二以上の溶射方式を組み合わせることも可能である。外周層4の表面には印刷用又はコーティング用の版面が形成されている。版面5は銅層表面を化学エッチング(腐食法)や電子彫刻法によって彫刻された印刷用の文字、絵、図形等の印刷面(印刷用の版)とか、銅層表面を粗面化させて塗料塗布用の微細な凹凸やインクや塗料が溜まる凹溝、凹部等の塗布面(塗布用の版)とすることができる。また、場合によっては銅層表面を加工することなく、そのまま版面とすることもできる。外周層4は銅製に限らず、金属製、セラミック製、硬質樹脂製といった他の材質製とすることもできる。外周層4の厚さも用途や版面5の凹凸の深さ等に応じて任意とすることができ、例えば数μm〜数十mmとすることができる。
【0013】
図1の保護層6は外周層4の版面5を保護して耐摩耗性を向上させるための層であり、外周層4の外側に形成されている。この保護層6は外周層4の版面5の上に硬質クロムをめっきして形成されている。保護層6の厚さも任意とすることができる。保護層6は前記外周層4をセラミックとか他の耐摩耗性に優れた材質製とした場合は省略することもできる。
【0014】
(使用例)
本発明のロール1は回転軸を貫通した軸付きタイプとすることも、軸方向両端に軸受だけを取付けて軸を取り付けない軸無しタイプとすることもできる。軸付きタイプの一例として図2に示すものはロール1の芯2の軸方向両端内側に軸受11が内装固定され、その軸受11内に回転軸12を装入し、回転軸12を外側から固定具13で締付けて軸受11に固定し、その回転軸12を印刷機にセットして回転させることによりロール1が回転するようにしてある。
【0015】
図3(a、b)のロール1は軸無しタイプであり、芯2の軸方向両端内側に支持金具23が内装固定され、支持金具23の中心部に先細りの軸挿通孔21が開口され、その側方にキー溝22が形成されており、その軸挿通孔21に回転軸25を差し込み、回転軸25の外側に突設しているキー突起24をキー溝22に嵌入することにより回転軸25を支持金具23の軸挿通孔21に固定し、その回転軸25を印刷機にセットして回転させることによりロール1が回転するようにしてある。
【0016】
図4のロール1も軸無しタイプであり、芯2の軸方向両端内側に支持金具32が内装固定され、支持金具32の中心部に軸挿通孔31が開口され、その外方に先細りの嵌合凹陥部33が形成されており、その軸挿通孔31に回転軸34を差し込み、回転軸34の外側から嵌合凹陥部33内に嵌入具35を嵌入して回転軸34と支持金具32を固定し、その回転軸34を印刷機にセットして回転させることによりロール1が回転するようにしてある。
【0017】
(実施形態2)
本発明のロールは、前記実施形態1記載のようなシリンダーロールには限られず、フィルム・基板等のガイドや搬送等に用いるガイドロールや搬送ロールとすることもできる。その場合、ロール1は、芯2の外周にそれを補強する補強層3を設け、補強層3の外周に外周層4を設け、外周層4の表面をガイド用又は搬送用のガイド面5を形成し、ガイド面5の表面にそれを保護する保護層6を設けたものとすることができる(図1参照。)。このロール1のガイド面5は、外周層4の表面をフラットにしたり粗面化したりして形成されており、フィルム・基板等をガイド・搬送可能としてある。本実施形態のロール1の外周層4は、前記実施形態1のような銅製には限られず、フィルム・基板等をガイド・搬送可能であれば任意の材質製とすることができる。
【0018】
(その他の実施形態)
本発明のロール1の補強層3は、前記実施形態1記載のように芯2の外側に形成する場合に限られず、図1に破線で示すように芯2の内側にのみ形成することも内側と外側の双方に形成することもでき、芯2の内側と外側のいずれにも補強層3を設けないようにすることもできる。また、芯2の外側に補強層3を形成せずに直接外周層4を形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のロールはグラビア印刷に使用できるのは勿論のこと、フィルム、電気回路基板、液晶基板、ガラス基板といった各種素材への印刷、レジストやコーティング材の塗布、フィルム・基板等のガイドや搬送等に広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のロールの実施形態の一例を示す正面説明図。
【図2】本発明のロールの使用例の一例を示す断面説明図。
【図3】(a)は、本発明のロールの使用例の他の一例を示す断面説明図。(b)は、回転軸の挿入の様子を示す斜視説明図。
【図4】本発明のロールの使用例のその他の一例を示す断面説明図。
【符号の説明】
【0021】
1 ロール
2 芯
3 補強層
4 外周層
5 版面
6 保護層
11 軸受
12 回転軸
13 固定具
21 軸挿通孔
22 キー溝
23 支持金具
24 キー突起
25 回転軸
31 軸挿通孔
32 支持金具
33 嵌合凹陥部
34 回転軸
35 嵌入具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン製の筒状の芯の外側に外周層が形成され、外周層の表面が印刷用又はコーティング用の版面若しくはガイド用又は搬送用のガイド面であることを特徴とするロール。
【請求項2】
請求項1記載のロールにおいて、芯の内側又は/及び芯の外側と外周層の間に補強層が形成されたことを特徴とするロール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のロールにおいて、外周層の版面又はガイド面が保護層で被覆されたことを特徴とするロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−105804(P2008−105804A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290080(P2006−290080)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(391052622)株式会社都ローラー工業 (19)
【Fターム(参考)】