説明

ワイパアーム

【課題】 車両への組み付けが容易であると共に、ウォッシャノズルの有無にかかわらず、共通のアームヘッドの使用が可能でアームヘッドの標準化を図ることができるワイパアームを提供する。
【解決手段】 ピボット軸3に固定されるアームヘッド10と、アームヘッド10の支軸13に対して払拭面接離方向へ回動可能に連結されると共にワイパブレード5が先端部に係止されるアーム部材20と、アームヘッド10に装着されアームヘッド10を被覆するヘッドカバー30と、を備えたワイパアーム4において、ヘッドカバー30には、アームヘッド10を着脱可能に収容するヘッド収容部33aと、リヤガラス1aに洗浄液を噴射するためのウォッシャノズル50を収容するノズル収容部33bと、が隣接して一体に形成され、ウォッシャノズル50には、洗浄液を供給するためのホース8が接続されるホース接続部54が一体に形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイパアームに係り、特にウォッシャノズルが一体に配設されたワイパアームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にワイパアームのアーム部材は、先端がワイパブレードに連結され、基端部がピボット軸に固定されたアームヘッドに対してガラス面と接離する方向へ回動可能に連結されている。ところで、ワイパアームの払拭パターンは車種やガラス面の形状・大きさ等によって異なる。このため、アーム部材は、異なる払拭パターンに合わせて長さ等の仕様が異なるものを製造する必要がある。これに対し、アーム部材を回動可能に連結しているアームヘッドは、アーム部材の長さ等が異なっても共通に使用可能である場合が多く、共通部品として標準化が図られている。
一方、従来、ワイパブレード又はワイパアームにウォッシャノズルを配置したワイパアームが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1のワイパアームは、アーム部材にウォッシャノズルが形成されており、このワイパアームにより、走行風による影響を最小限として洗浄液を確実に払拭パターンエリア内に供給することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−203180号公報(第9−10頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アーム部材がアームヘッドに回動可能に連結されることから、特許文献1のワイパアームでは、車両本体からウォッシャノズルへ洗浄液を供給するためのホースは、アーム部材とアームヘッドとのヒンジ部分を介し、アーム部材に沿って配索しなければならない。さらにホースは、見栄えの点から外観上目立たないようアーム部材の裏面側で配索する必要がある。このため、ワイパアームおよびワイパブレードを組付けた後に、ホース配索作業を行うこととなり、ホース配索作業の作業性が良好でないという不都合があった。
【0005】
さらに、特許文献1のワイパアームでは、ホース配索のため、アームヘッドにもホースを取付けるためのクランプ部を形成する必要がある。このクランプ部は、ウォッシャノズルを有しないタイプのワイパアームには必要でないため、ウォッシャノズルを有しないタイプのワイパアームとウォッシャノズルを有するタイプのワイパアームに対して、それぞれ異なる仕様のアーム部材およびアームヘッドを用意しなければならず、アームヘッドの標準化の妨げとなっていた。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、車両への組み付けが容易であると共に、ウォッシャノズルの有無にかかわらず、共通のアームヘッドの使用が可能でアームヘッドの標準化を図ることができるワイパアームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明によれば、ピボット軸に固定されるアームヘッドと、該アームヘッドの支軸に対して払拭面接離方向へ回動可能に連結されると共にワイパブレードが先端部に係止されるアーム部材と、前記アームヘッドに装着され該アームヘッドを被覆するヘッドカバーと、を備えたワイパアームにおいて、前記ヘッドカバーには、前記アームヘッドを着脱可能に収容するヘッド収容部と、払拭面に洗浄液を噴射するためのウォッシャノズルを収容するノズル収容部と、が隣接して一体に形成され、前記ウォッシャノズルには、洗浄液を供給するためのホースが接続されるホース接続部が一体に形成されることにより解決される。
【0008】
ピボット軸とアームヘッドとを固定するナット等の固定部材が露出していると、固定部材が腐食したり、外観デザイン上の見栄えを損ねたりするが、本発明のワイパアームでは、アームヘッドにヘッドカバーを装着することにより固定部位を被覆することができる。このヘッドカバーに形成されたヘッド収容部がアームヘッドを着脱可能に収容する。
さらに、ヘッド収容部に隣接してノズル収容部が形成されているので、このノズル収容部に払拭面に洗浄液を噴射するためのウォッシャノズルを収容し、ウォッシャノズルのホース接続部に洗浄液を供給するホースを接続することで、ヘッドカバーのウォッシャノズルから洗浄液を払拭面に噴射することができる。
また、ヘッドカバーを通常のもの(ウォッシャ機能の設定が無くアームヘッドを被覆するためだけのヘッドカバー)に交換することにより、ワイパアームにウォッシャ機能を付加しない設定とすることができる。そして、この場合、ワイパブレード、アーム部材およびアームヘッドは共通のものを使用できる。さらに払拭パターンが車種やガラス面の形状や大きさの違いにより異なることに伴い、ワイパブレード長さやアーム部材長さが相違しても、アームヘッドは共通に使用でき標準化を図ることができる。
【0009】
また、ウォッシャノズルを別体に構成することにより、ヘッドカバーの形状が簡単となるので、型構造も簡単で安価なものにできる。
また、ヘッドカバーは着脱可能とするため弾性に富んだ樹脂材料で成形することができる一方、ノズルボディは高精度な寸法が要求されるためヘッドカバーとは異なる樹脂材料で成形することができる。
【0010】
また、前記ウォッシャノズルは、噴射口を有するノズル本体と、該ノズル本体を転動可能に保持する保持口が形成されると共に該保持口と前記ホース接続部とを連通する連通路が形成されたノズルボディとを有し、前記ノズル収容部には、前記ノズルボディに係合して前記ヘッドカバーに対する前記ノズルボディの装着姿勢を保持する係合部が形成されると好適である。
【0011】
このように、ホース接続部と連通路にて連通された保持口に、ノズル本体が転動可能に保持されることにより、ノズル本体を転動させることで、適宜噴射口を調整し、噴射角度および位置を設定できる。これにより、車種やガラス面の形状や大きさにより払拭パターンが異なることに伴いワイパブレード長さやアーム部材長さが相違してもヘッドカバーを共通して使用できる。
【0012】
また、ピボット軸に固定されるアームヘッドと、該アームヘッドの支軸に対して払拭面接離方向へ回動可能に連結されると共にワイパブレードが先端部に係止されるアーム部材と、前記アームヘッドに装着され該アームヘッドを被覆するヘッドカバーと、を備えたワイパアームにおいて、前記ヘッドカバーには、前記アームヘッドを着脱可能に収容するヘッド収容部と、払拭面に洗浄液を噴射するためのノズル部と、が隣接して一体に形成され、前記ノズル部には、洗浄液を供給するためのホースが接続されるホース接続部が一体に形成される構成としてもよい。
【0013】
このように構成しても、ヘッドカバーに形成されたヘッド収容部によってアームヘッドを着脱可能に収容することができる。さらに、ヘッド収容部に隣接して払拭面に洗浄液を噴射するためのノズル部が形成されているので、ノズル部のホース接続部に洗浄液を供給するホースを接続することで、ヘッドカバーのノズル部から洗浄液を払拭面に噴射することができる。
また、ヘッドカバーを通常のものに交換することにより、ワイパアームにウォッシャ機能を付加しない設定とすることができる。そして、この場合、ワイパブレード、アーム部材およびアームヘッドは共通のものを使用できる。さらに払拭パターンが車種やガラス面の形状や大きさの違いにより異なることに伴い、ワイパブレード長さやアーム部材長さが相違しても、アームヘッドは共通に使用でき標準化を図ることができる。
【0014】
また、前記ノズル部は、噴射口が形成されたノズル本体と、該ノズル本体を転動可能に保持する保持口と、該保持口と前記ホース接続部とを連通する連通路とを有する構成とすることができる。
このように、ホース接続部と連通路にて連通された保持口に、ノズル本体が転動可能に保持されることにより、ノズル本体を転動させることで、適宜噴射口を調整し、噴射角度および位置を設定できる。これにより、払拭パターンが車種やガラス面の形状や大きさの違いにより異なることに伴い、ワイパブレード長さやアーム部材長さが相違しても、ヘッドカバーを共通して使用できる。
【0015】
また、前記ヘッドカバーは、前記ヘッド収容部に対して前記ワイパアームの停止位置における払拭進行方向側に前記ノズル部又は前記ノズル収容部が形成されると好適である。このように構成すると、ワイパブレードによる払拭に先立って、ワイパブレードの直前に洗浄液を噴射させることができる。このため、洗浄液着水によるブレード払拭までの間の運転視界(又は後方運転視界)の低下を短時間に抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のワイパアームによれば、アームヘッドを覆うヘッドカバーに、払拭面に洗浄液を噴射するノズルを配置したので、車両への組み付けが容易になると共に、ノズルの有無にかかわらず、共通のアームヘッドの使用が可能でアームヘッドの標準化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1〜図7は本発明の一実施形態に係るものであり、図1はワイパアームの斜視図、図2はワイパアームの断面説明図、図3はワイパアームからヘッドカバーを取り外した分解斜視図、図4はヘッドカバーの側面説明図,断面説明図、図5はヘッドカバーの断面説明図、図6はウォッシャノズルの説明図、図7はワイパ装置の作動説明図である。
図8〜図10は本発明の他の実施形態に係るものであり、図8はヘッドカバーの側面説明図,断面説明図、図9および図10はウォッシャ機能を有しないワイパアームとする場合の説明図である。
【0018】
以下に、本発明を車両に搭載されるリヤワイパ装置のワイパアームに適用した例を示す。なお、本発明のワイパアームは、車両のリヤウインドウに限らず、他の払拭面全般に適用できるものである。
図1はワイパアームの斜視図、図2はワイパアームの断面説明図、図3はアームヘッドからヘッドカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
本例のリヤワイパ装置Wは、車両本体1に組み付けられた駆動源であるリヤワイパモータ6と、リヤワイパモータ6が駆動することにより軸線回りに減速回転するピボット軸3と、このピボット軸3の先端部に固定されてリヤガラス1aに沿って往復払拭運動を行うワイパアーム4と、ワイパアーム4の先端部に連結されてリヤガラス1aを払拭するワイパブレード5を主要構成要素としている。
本例のワイパブレード5は、トーナメント方式の保持構造を有しており、複数のレバー5aの端部に形成された保持爪5bによって、長尺状かつゴム製のブレードラバー5cが保持されている。
【0019】
本例のワイパアーム4は樹脂製であり、ピボット軸3に固定されるアームヘッド10と、アームヘッド10の支軸13に対して払拭面接離方向へ回動可能に連結されると共に先端部にワイパブレード5が揺動可能にヒンジ結合されたアーム部材20と、アーム部材20とアームヘッド10とに係止され払拭姿勢でワイパブレード5がリヤガラス1a面に押し付けられるようにアーム部材20にリヤガラス1a側への押圧力を付与する押圧手段としてのスプリング40と、アームヘッド10に着脱可能に装着されアームヘッド10を被覆するヘッドカバー30を主要構成要素としている。
【0020】
また、本例のワイパアーム4では、ヘッドカバー30に後述するウォッシャノズル50が配設されており、ウォッシャノズル50には車両本体1に組み付けられたウォッシャポンプ装置7からホース8を介して洗浄液が供給されている。そして、本例のリヤワイパ装置Wでは、ワイパアーム4を往復駆動させるときに、この往復駆動に連動してウォッシャノズル50からリヤガラス1aへ洗浄液を噴射することが可能となっている。
また、本例のリヤワイパ装置Wは、アームヘッド10,アーム部材20,ヘッドカバー30およびワイパブレード5のレバー5aを樹脂材料で形成することにより、全体として一体感のあるデザインおよび質感を構成している。
【0021】
本例のアームヘッド10は、ピボット軸3に取り付けられるピボット軸取付部としての基端部11と、基端部11の幅方向の両側から二股状に先端側(アーム部材20側)へ延出する一対のアーム部材取付脚部12と、両アーム部材取付脚部12を繋ぐように掛け渡された支軸13とを有している。
アームヘッド10は、ピボット軸3の先端部が基端部11に挿入されて締結ナット3aによって締結固定されることによって車両本体1側に取り付けられる。一対のアーム部材取付脚部12は、アームヘッド10の幅方向に所定距離だけ離間して対向するように形成され、支軸13は、ピボット軸3と略直交するように設けられている。
【0022】
一対のアーム部材取付脚部12には、支軸13と基端部11との間であって、支軸13よりも下側(払拭面側)にピン状のスプリング係止部14を有する台座部15が一体に形成されている。
さらに、各アーム部材取付脚部12の外側面には、アーム部材20側の上端部付近に軸支孔12aが設けられている。この支軸孔12aは、ヘッドカバー30の内側面から内側へ突出する一対の同軸状の支軸30aを回動可能に保持するためのものである。この軸支孔12aに支軸30aが軸支されることにより、ヘッドカバー30はアームヘッド10に対して支軸30a回りに開閉動可能となっている。
【0023】
また、各アーム部材取付脚部12の基端部11側の下端には、切欠部12bが形成されている。この切欠部12bにヘッドカバー30の内側面から内側へ突出する係合突起30bが弾性的に係合することにより、ヘッドカバー30はアームヘッド10を覆った状態で装着される。
なお、本例ではヘッドカバー30がアームヘッド10に対して回動可能に取付けられているが、これに限らず、ヘッドカバー30,アームヘッド10に係合部を形成し、これらの係脱によりヘッドカバー30とアームヘッド10を分離可能に着脱させるように構成してもよい。
【0024】
なお、本発明において、ヘッドカバーがアームヘッドに着脱可能であることには、ヘッドカバーを完全にアームヘッドから取り外すものだけでなく、本例のようにアームヘッドに連結された状態で開閉できるものも含まれる。ただし、本例のヘッドカバー30は、切欠部12bから、係合突起30bの係合を外すと共に、軸支孔12aから支軸30aを取り外すことにより、アームヘッド10から容易に取り外すことができる。
【0025】
アームヘッド10の先端部には、支軸13を介して長尺状のアーム部材20が連結されている。アーム部材20は、底面側が開放された断面略コ字形に形成されているアーム部材本体21と、アーム部材本体21から長手方向に延出する突出部22を有している。突出部22はアーム部材本体21よりも幅狭となっており、これらの境界部位には段差部(段差面)23が形成されている。
突出部22には、支軸13を挿通可能な略U字形状の取付凹部22aが形成されている。また、アーム部材20の先端側には、略U字形状のスプリング係止部24が一体に形成されている。
本例のスプリング40は、コイル部41と、コイル部41の両端に形成されたフック状の係止部42,43を有している。
【0026】
アーム部材20は、突出部22を一対のアーム部材取付脚部12間に先端側から挿入し、取付凹部22a内に支軸13が挿入された状態で、アームヘッド10に回動可能に取り付けられている。すなわち、アーム部材20は、アームヘッド10に対して支軸13回りに払拭面接離方向(図2の矢印A方向)へ回動可能に連結されている。また、スプリング40は、アーム部材20のスプリング係止部24とアームヘッド10のスプリング係止部14に、係止部42,43がそれぞれ引掛けられるようにして配設されている。
【0027】
図2は、先端部に連結されたワイパブレード5がリヤガラス1a面と当接した払拭姿勢位置にアーム部材20が保持された状態を示している。この払拭姿勢では、スプリング係止部14、24(即ち、スプリング40の付勢力の作用点)を結ぶ線分が支軸13に対して下方側に位置されるため、スプリング40によって支軸13を介してアーム部材20とアームヘッド10の間に掛かった引張り力により、アーム部材20にはリヤガラス1a面側への押圧力が掛かっている。
【0028】
図3〜図5に基づいて本例のヘッドカバー30について説明する。なお、図5は、図4(B)のB−B線断面に相当するヘッドカバー30の断面図である。本例のヘッドカバー30は、アームヘッド10の上部側を覆う上壁部31と、上壁部31から延出しアームヘッド10の側部(先端側の側部を除く)を覆う側壁部32a,32bと、上壁部31と連続し側壁部32bとの間に所定の空間を形成する側壁部32cと、上壁部31,側壁部32aおよび側壁部32cと連続しアームヘッド10の基端部11の後側面を覆う側壁部32dとを備えている。上壁部31には、先端側(アーム部材20側)が突出部22に対応して開口した略U形状の切欠部31aが形成されている。
【0029】
このような構成により、本例のヘッドカバー30には、上壁部31,側壁部32a,32b,32dに囲まれたヘッド収容部(ヘッド収容領域)33aが形成されている。このヘッド収容部33aにアームヘッド10が着脱可能に収容されている。すなわち、上述の支軸30aおよび係合突起30bは、側壁部32a,32bの内面側から突出するように形成されており、これらの係合によってアームヘッド10がヘッド収容部33aに収容された状態となる。
なお、本例のヘッドカバー30は、先端側に形成された支軸30a回りに回動可能に形成されているが、これに限らず、後端側に支軸を設けてアーム部材20の起立方向に開動作できるように構成してもよい。
【0030】
また、本例のヘッドカバー30には、上壁部31,側壁部32b,32c,32dに囲まれたノズル収容部(ノズル収容領域)33bがヘッド収容部33aに隣接して形成されている。このノズル収容部33bには、リヤガラス1aに洗浄液を噴射するためのウォッシャノズル50が収容されている。側壁部32b,32cの互いに対向する面には、それぞれウォッシャノズル50を取付けるための係合部34,35が形成されている。本例の係合部34,35は、それぞれノズル収容部33b内に突出するように複数形成されている。この係合部34,35は、ウォッシャノズル50と弾性的に係合し、ヘッドカバー30に対する装着姿勢を保持する。
【0031】
ノズル収容部33bにウォッシャノズル50を挿入していくと、ウォッシャノズル50と係合部34が当接し、側壁部32b,32cが互いに離れる方向に弾性的に拡がる。そして、ウォッシャノズル50がノズル収容部33bの上壁面33cに当接すると、側壁部32b,32cはもとの形状に戻る。このとき、係合部34がウォッシャノズル50の下部と係合し、ウォッシャノズル50は上下方向に移動しないように保持される。また、このとき係合部35がウォッシャノズル50の前後端部と当接し、ウォッシャノズル50は前後方向に移動しないように保持される。このように本例では、ウォッシャノズル50が弾性的に係止されることにより、ノズル収容部33b内でウォッシャノズル50がガタつかず、ウォッシャノズル50を確実に適切な噴射姿勢に維持することができる。
【0032】
なお、本例では、側壁部32bの後端部と側壁部32dの内周面との間には隙間が形成されているが、これに限らず、側壁部32bをさらに側壁部32d側へ延出して側壁部32dと連続させてもよい。
【0033】
図6に示すように、本例のウォッシャノズル50は、噴射口51aを有するノズル本体(ジェット)51と、ノズル本体51を保持する樹脂製のノズルボディ52とを備える。
ノズル本体51は、所定寸法の金属剛球に貫通孔を形成して噴射口51aを形成したものである。
ノズルボディ52は、ボディ本体53と、ボディ本体53から突出形成されたホース接続部54とを有する。ボディ本体53には、洗浄液を外部に噴射する噴射開口53aと、噴射開口53aに連続して形成された略球形の凹部である保持口53bと、保持口53bとホース接続部54の流入口54aを連通する連通路53cが形成されている。
【0034】
噴射開口53aは、保持口53b側から外部へ向けて拡開するように形成されている。保持口53bは、ノズル本体51を嵌合保持するためのものであり、ノズル本体51を噴射開口53a側から圧入することにより、保持口53b内に配設することができる。ノズル本体51は、保持口53b内で転動可能であり、噴射方向を調整することが可能となっている。
払拭パターンは、車種やガラス面の形状や大きさ等の違いによって異なり、これに合わせてワイパブレードやアーム部材の長さが設定される。本例のヘッドカバー30は、ノズル本体51を転動させることによって、噴射角度および噴射位置を設定することができ、これら異なる仕様のワイパアームに共通に使用することができる。また、これにより、払拭パターンによらず、ヘッドカバー30の形状を設定することができるので、デザイン上の設計の自由度が向上する。
【0035】
ホース接続部54には、車両本体1のウォッシャポンプ装置7から配索された洗浄液供給用のホース8の端部が接続される。ホース8は、ピボット軸3を車体外部へ突出させるための開口孔1bから車両外部へ引き出され、ノズル収容部33bに配設されたウォッシャノズル50のホース接続部54に連結される(図1参照)。
【0036】
このように、本例のワイパアーム4では、ヘッドカバー30にウォッシャノズル50を配置する構成であるので、車両本体1から引き出したホース8の端部をそのままホース接続部54に接続可能である。これにより、アームヘッド10やアーム部材20にホース配索用の固定部を設ける必要がない。したがって、ウォッシャノズル50を設けないワイパアームと本例のワイパアーム4に対して、アームヘッド10やアーム部材20を共通部品として使用することができ、部品の標準化を図ることが可能となる。特に、車種,ガラス面の形状・大きさ等の違いにより払拭パターンが異なることによって、ワイパブレード5の長さやアーム部材20の長さが相違しても、アームヘッド10は共通に使用することができる。
【0037】
また、本例では、別体のウォッシャノズル50をヘッドカバー30に装着する構成なので、ヘッドカバー30を形成するための型構造が簡単で安価なものにすることができる。
また、別体であることにより、ヘッドカバー30はアームヘッド10に着脱可能とするため弾性に富んだ樹脂材料で成形することができ、一方、ノズルボディ52は高精度な寸法が要求されるためヘッドカバー30とは異なる樹脂材料で成形することができる。
【0038】
また、本例のワイパアーム4は、ピボット軸3にヘッドカバー30を取付けたアームヘッド10およびアーム部材20を組み付け、開口孔1bから引き出したホース8の端部をウォッシャノズル50のホース接続部54に接続することによって、車両本体1に組み付けることができる。このように、本例のワイパアーム4は、組み付け性が極めて良好である。
さらに、本例のワイパアーム4には、アーム部材20やワイパブレード5は従来のものを使用することができるうえ、従来のウォッシャノズル付きワイパアームと比べて、部品点数を増やすことなく簡単な構成でウォッシャ機能を付加することができる。
【0039】
また、ヘッドカバー30がアームヘッド10に装着されると、図1に示すように、払拭姿勢でアーム部材20とヘッドカバー30とが面一に連続するように構成されている。また、上述のようにアーム部材20,ヘッドカバー30およびワイパブレード5のレバー5aを樹脂材料で形成することにより、全体を同じ質感とすることができると共に、統一されたデザインとすることができる。
【0040】
次に、図7に基づいて本例のリヤワイパ装置Wの動作について説明する。
図7は、ワイパアーム4が停止位置Pにある状態を示している。リヤワイパ装置Wが作動を開始すると、リヤワイパモータ6が駆動され、ピボット軸3が回動する。これにより、ピボット軸3に連結されたワイパアーム4が往復払拭動作を行う。この往復払拭動作により、ワイパアーム4は、停止位置Pから反転位置Q間の扇形の払拭領域Cを往復払拭する。
【0041】
また、不図示のリヤウォッシャスイッチをオンすると、ウォッシャポンプ装置7が作動し、ホース8を介して洗浄液がウォッシャノズル50へ圧送される。これにより、ウォッシャノズル50から洗浄液が矢印Dの方向へ噴射される。また、不図示のリヤウォッシャスイッチのオン操作に連動してワイパアーム4を払拭動作させる場合には、ウォッシャノズル50から洗浄液が噴射されると同時に、もしくは噴射後にワイパアーム4が自動的に(ワイパスイッチを操作することなく)払拭動作するよう設定されている。
本例のワイパアーム4では、ノズル収容部33bがヘッド収容部33aに対して、ワイパアーム4の停止位置における払拭進行方向側に形成されている。すなわち、ウォッシャノズル50は、ヘッドカバー30の反転位置Q側に配置されている。
したがって、ワイパブレード5によるリヤガラス1aの払拭に先立って、ワイパブレード5の進行方向の直前にウォッシャノズル50から洗浄液を噴射することができる。これにより、洗浄液の着水からワイパブレード5による払拭までの間の運転視界(本例では後方運転視界)の低下をごく短時間に抑えることができる。
【0042】
本例のワイパアーム4は、以下のように改変してもよい。なお、上記実施形態と実質的に同一の構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
上記実施形態では、ヘッドカバー30に形成されたノズル収容部33bに別体のウォッシャノズル50が配設されていたが、これに限らず、図8に示すような構成であってもよい。すなわち、図8の例のヘッドカバー30には、上記実施形態と同様のヘッド収容部33aが形成されているが、ヘッド収容部33aに隣接して側壁部32bと側壁部32cの間にリヤガラス1aに洗浄液を噴射するためのノズル部60が一体形成された構成となっている。
【0043】
本例のノズル部60は、ノズル本体51と、ノズル本体51を保持するノズル部本体62とから形成されている。ノズル部本体62には、上記実施形態と同様な噴射開口63aと、保持口63bと、連通路63cと、ホース接続部64が形成されている。本例では、ホース接続部64は、下方へ突出するように形成され、車両外部へ引き出されたホース8の端部が接続されている。
本例では、連通路63cは、保持口63bから噴射開口63aの反対側へ向かって形成され、途中で下方へ屈曲し、ホース接続部64の流入口64aに連通している。
【0044】
このように、本例では、ノズル部60をヘッドカバー30に一体成形したので、ノズル部60自体がガタついたり、脱落してしまったりすることがないので好適である。また、一体成形することにより、部品点数を低減することができる。
【0045】
また、ウォッシャ機能をワイパアームに設定しない場合にも、ヘッドカバー30を用いることができる。この場合、図9(A)に示すように、蓋体70を噴射開口53aおよび保持口53bに圧入して、噴射開口53aを塞ぐようにするとよい。また、図9(B)に示すように、噴射開口63aおよび保持口63bの形状に合致した蓋体70を噴射開口63aおよび保持口63bに圧入して、噴射開口63aを塞ぐようにするとよい。このようにすると、外観上、ウォッシャノズル50およびノズル部60の外観面が面一となり、ウォッシャ機能を有しないことが容易に判別できる。
【0046】
また、ウォッシャ機能をワイパアームに設定しない場合にはヘッドカバー30を用いることなく、図10に示すようなウォッシャ機能の設定が無くアームヘッドを被覆するためだけのヘッドカバー80を用いることもできる。ヘッドカバー80は、ヘッドカバー30と同様に、内面に支軸30a,係合突起30bが突出形成されている。これらをアームヘッド10の軸支孔12a,切欠部12bに係合させることによって、ヘッドカバー80をアームヘッド10に開閉可能に装着することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、ウォッシャノズル50,ノズル部60にそれぞれホース接続部54,64が一体に形成されていたが、これに限らず、別体のホース接続部を連結する構成としてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、ワイパアーム4を樹脂製としたが、ポリエチレンテレフタレート樹脂中にガラス繊維を均質に混和した熱可塑性樹脂にて形成することが、強度、剛性、低吸湿性、成形性、耐候性等の面において優れており好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係るワイパアームの斜視図である。
【図2】ワイパアームの断面説明図である。
【図3】ワイパアームからヘッドカバーを取り外した分解斜視図である。
【図4】ヘッドカバーの側面説明図,断面説明図である。
【図5】ヘッドカバーの断面説明図である。
【図6】ウォッシャノズルの説明図である。
【図7】ワイパ装置の作動説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るヘッドカバーの側面説明図,断面説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るウォッシャ機能を有しないワイパアームとする場合の説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係るウォッシャ機能を有しないワイパアームとする場合の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1‥車両本体、1a‥リヤガラス、1b‥開口孔、3‥ピボット軸、
3a‥締結ナット、4‥ワイパアーム、5‥ワイパブレード、6‥リヤワイパモータ、
7‥ウォッシャポンプ装置、8‥ホース、10‥アームヘッド、11‥基端部、
12‥アーム部材取付脚部、12a‥軸支孔、12b‥切欠部、13‥支軸、
20‥アーム部材、21‥アーム部材本体、22‥突出部、30‥ヘッドカバー、
30a‥支軸、30b‥係合突起、31‥上壁部、31a‥切欠部、
32a,32b,32c,32d‥側壁部、33a‥ヘッド収容部、
33b‥ノズル収容部、34,35‥係合部、40‥スプリング、
50‥ウォッシャノズル、51‥ノズル本体、51a‥噴射口、52‥ノズルボディ、
53‥ボディ本体、53a‥噴射開口、53b‥保持口、53c‥連通路、
54‥ホース接続部、54a‥流入口、60‥ノズル部、62‥ノズル部本体、
63a‥噴射開口、63b‥保持口、63c‥連通路、64‥ホース接続部、
64a‥流入口、70‥蓋体、80‥ヘッドカバー、C‥払拭領域、P‥停止位置、
Q‥反転位置、W‥リヤワイパ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピボット軸に固定されるアームヘッドと、
該アームヘッドの支軸に対して払拭面接離方向へ回動可能に連結されると共にワイパブレードが先端部に係止されるアーム部材と、
前記アームヘッドに装着され該アームヘッドを被覆するヘッドカバーと、を備えたワイパアームにおいて、
前記ヘッドカバーには、前記アームヘッドを着脱可能に収容するヘッド収容部と、払拭面に洗浄液を噴射するためのウォッシャノズルを収容するノズル収容部と、が隣接して一体に形成され、
前記ウォッシャノズルには、洗浄液を供給するためのホースが接続されるホース接続部が一体に形成されたことを特徴とするワイパアーム。
【請求項2】
前記ウォッシャノズルは、噴射口を有するノズル本体と、該ノズル本体を転動可能に保持する保持口が形成されると共に該保持口と前記ホース接続部とを連通する連通路が形成されたノズルボディとを有し、
前記ノズル収容部には、前記ノズルボディに係合して前記ヘッドカバーに対する前記ノズルボディの装着姿勢を保持する係合部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のワイパアーム。
【請求項3】
ピボット軸に固定されるアームヘッドと、
該アームヘッドの支軸に対して払拭面接離方向へ回動可能に連結されると共にワイパブレードが先端部に係止されるアーム部材と、
前記アームヘッドに装着され該アームヘッドを被覆するヘッドカバーと、を備えたワイパアームにおいて、
前記ヘッドカバーには、前記アームヘッドを着脱可能に収容するヘッド収容部と、払拭面に洗浄液を噴射するためのノズル部と、が隣接して一体に形成され、
前記ノズル部には、洗浄液を供給するためのホースが接続されるホース接続部が一体に形成されたことを特徴とするワイパアーム。
【請求項4】
前記ノズル部は、噴射口が形成されたノズル本体と、該ノズル本体を転動可能に保持する保持口と、該保持口と前記ホース接続部とを連通する連通路とを有することを特徴とする請求項3に記載のワイパアーム。
【請求項5】
前記ヘッドカバーは、前記ヘッド収容部に対して前記ワイパアームの停止位置における払拭進行方向側に前記ノズル部又は前記ノズル収容部が形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のワイパアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−298278(P2006−298278A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125693(P2005−125693)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】