説明

ワイピングクロス用極細不織布の製造方法及びワイピングクロス用極細不織布

【課題】ポリアミドとポリエステルの2成分からなる剥離分割型複合繊維を分割処理してワイピングクロス用極細長繊維不織布の製造方法において、細繊度化と分割率を改善する方法及び拭き取り性に優れたワイピングクロス用極細不織布を提供する。
【解決手段】ポリアミド系重合体とポリエステル系重合体とからなる分割後単糸繊度が0.01〜0.30dtexである剥離分割型複合繊維を分割処理してなるワイピングクロス用極細不織布の製造方法において、少なくとも一方の重合体中に、ポリアルキレングリコール類を0.3〜3.0重量%及びR−SOMで表される有機金属塩を0.5〜3.0重量%含有させ、不織布化後水存在下で分割処理することにより細繊度で高分割率のポリアミドとポリエステルからなるワイピングクロス用極細不織布とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系重合体とポリエステル系重合体とからなる剥離分割型複合繊維を不織布となし、剥離分割型複合繊維を分割処理してなるワイピングクロス用極細不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、極細繊維不織布は生活関連資材、衣料用など多岐の分野にわたって使用され、数多くの種類が提案なされている。
【0003】
極細繊維不織布の用途の一つであるワイピングクロスにおいて、それを構成する繊維の表面積を拡大して、より高度な拭き取り性、すなわち、より高度な拭き取り効率とより微小な汚れや塵の拭き取り性の向上が求められている。この表面積拡大の手段としては、繊維を細くすればするほど、単糸繊度の2分の1乗に反比例して単糸繊度当たりの比表面積は拡大するため、より細繊度の且つ高密度の極細繊維不織布が好ましい。細繊度化の方法としては直接紡糸延伸により細い繊度のものを得る方法や、極細繊維発生可能な繊維を後工程で分割・溶剤処理して極細繊維を発生させる方法などが提案されている。
しかしながら、直接紡糸延伸法では単糸繊度は0.3dtex程度が限界であり、これより細い極細繊維を製造することは技術的に困難である。
【0004】
又他の方法として、複数種の高分子重合体から構成される海島型複合繊維の海成分を溶出除去して島成分を極細化する方法、または2成分交互貼り合わせ剥離分割型複合繊維(以後単に剥離分割型複合繊維と略称する)に機械的外力を与え、極細繊維に分割して不織布を製造する方法等がある。
なかでも剥離分割型複合繊維をスパンボンド法と組み合わせることにより得られる長繊維不織布を、一方の重合体成分を溶出しないで極細繊維化する方法は、エネルギーコストや環境面への配慮の点でも優れた方法である。
【0005】
本発明者らは特開2004−8501号公報でポリアミドとポリエステルの2成分からなる剥離分割型複合長繊維不織布を分割極細化してなる拭き取り性に優れたワイピングクロスを提案している。ポリアミドの吸水性、しなやかさという特性とポリエステルの強度度特性を生かすことが出来て有用なものであるが拭き取り性が十分ではなかった。拭き取り性を高めるためには更に細繊度化、分割率の向上が必要で現状では細繊度化すれば分割率が低下するという問題点があり、更なる分割性を向上する方法が求められていた。
【特許文献1】特開2004−8501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的はポリアミドとポリエステルの2成分からなる極細繊維不織布の細繊度化における分割率を改善する方法及び拭き取り性に優れたワイピングクロス用極細不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリアミド系重合体とポリエステル系重合体とからなる分割後単糸繊度が0.01〜0.30dtexである剥離分割型複合繊維不織布をからなり、少なくとも一方の重合体中に、ポリアルキレングリコール類を0.3〜3.0重量%及びRSOMで表される有機金属塩を0.5〜3.0重量%含有させ、不織布化後水存在下で分割処理することにより高分割率のポリアミドとポリエステルからなるワイピングクロス用極細不織布を得るに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリアミド系重合体とポリエステル系重合体とからなる剥離分割型複合繊維不織布を分割極細化するにあたり、少なくとも繊維成分の一成分にポリアルキレングリコール類と共にRSOMで表される有機金属塩を特定量共存含有させることで、水存在下でポリアルキレングリコールの水膨潤が相乗的に促進され、剥離分割後の単糸繊度を0.01〜0.30dtexという細繊度としても分割性が向上する。これにより細繊度で高分割率の拭き取り性の良いワイピングクロス用極細不織布を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明のワイピングクロス用極細不織布は、剥離分割型複合繊維を不織布となし、その後分割処理して得られるものである。
【0010】
不織布化の方法は、剥離分割型複合繊維を短繊維化後カード、ニードルパンチ処理して不織布とする方法、剥離分割型複合繊維をスパンボンド不織布となし長繊維不織布とする方法があるが、どちらの方法でも可能であるが、生産性の点から長繊維不織布とする方法が好ましい。
【0011】
本発明における剥離分割型複合繊維は、繊維形成性ポリエステル系重合体と繊維形成性ポリアミド系重合体とから構成され、機械的処理などで各成分に剥離分割できるものであれば特に限定されない。好ましく用いられるポリアミド系重合体としては、例えばナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12等があげられる。一方ポリエステル系重合体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリエチレングテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びこれらを主成分とする共重合ポリエステル等があげられる。中でもナイロン−6/ポリエチレンテレフタレートの組合わせが生産安定性、コスト等の面から好ましい。
【0012】
剥離分割型複合繊維の複合形態としては、ポリエステル系重合体とポリアミド系重合体の接合界面の少なくとも一部分が繊維断面円周に到達しており、機械的処理等により各成分に剥離分割できる形態となっていることが必要である。また、お互いに一方成分が他方成分によって所定数に分割されている形態であることが、剥離分割性の点で望ましい。なかでも、1成分が他成分間に放射状に配置されている断面形状が好ましい。このような複合形態は、例えば特開昭54−38914号公報記載の複合紡糸口金を用いて、ポリエステル系重合体とポリアミド系重合体とを複合紡糸することによって得られる。
【0013】
本発明では、繊維断面円周に占めるポリエステル系重合体の円弧長(B)に対するポリアミド系重合体の円弧長(A)の比率(以下、重合体成分円弧長比(A/B)と称する)を0.1〜2.0の範囲、さらに好ましくは0.2〜1.5の範囲となるよう2成分を配置することが望ましい。
【0014】
重合体成分円弧長比(A/B)が2.0を超えると、開繊性が大幅に低下し、不織布の目付け斑および強度低下が発生する。ポリアミド系重合体は比較的ガラス転移点が低く、固化が遅く、また水分を吸着しやすいことなどによって繊維同士が密着し易くなり、開繊不良が起こるものと推測される。一方、重合体成分円弧長比(A/B)が0.1未満であると、剥離分割処理時、外部応力が2成分の接合界面へ充分に負荷されなくなり剥離分割が困難となる。
【0015】
なお、各重合体成分の円弧長は、複合紡糸口金内での各重合体成分の合流方法、重量比、あるいは口金内合流部での粘度比を変更することで任意に設定できる。特に、溶融押出しされた重合体がスピンブロックに流入する直前の溶融体温度(以下導管ポリマー温度と称する)を各々設定することによって、各々の重合体の溶融粘度を変更し、重合体成分円弧長比(A/B)を設定する方法が簡易であり好ましい。
【0016】
このように成分配置された剥離分割複合繊維の分割数は,2成分を溶融後紡糸口金内で合流させる方法により任意に設定できる。安定して紡糸できる複合繊維の単糸繊度を考慮すると、分割数を4〜48個、より好ましくは8〜24個に設定するのが望ましい。
【0017】
なお、剥離分割型複合繊維の一方成分の全体に対する複合割合を、30〜70重量%の範囲、特に40〜60重量%の範囲とすれば、紡糸工程がより安定となり、安定した断面の剥離分割型複合繊維の適当である。この範囲を外れる場合には、両重合体の粘度バランスの調整が困難となり、紡糸時セクション不良が発生しやすくなり、また、剥離分割効率が低下しやすくなる。
【0018】
このような剥離型複合繊維全体の断面形状は、丸断面形状、多葉断面形状、多角形形状等任意であり、また中空部を有する形態であってもよい。中空部を有する断面形状のものでは2成分の接合界面長さが短くなるので、剥離分割性がより向上する。
【0019】
さらに、本発明においては、上記2成分の重合体の少なくとも一成分に、0.3〜3.0重量%未満、好ましくは0.5〜2.0重量%のポリアルキレングリコール類を含有させると共に有機金属塩を0.5〜3.0重量%未満含有させなければならない。
【0020】
ポリアルキレングリコール類を少なくとも1成分の重合体へ配合することにより、特にスパンボンド長繊維工程における紡糸工程での細化時および繊維補集時に発生する多大な静電気を大幅に抑制し、均一な開繊状態で繊維をウェブ状に捕集することができる。しかしながら静電気を抑制する効果はポリアルキレングリコール類の添加のみでは十分でなく、本発明ではR−SOMで表される有機金属塩を共に添加することにより著しく静電気が抑制される事を見出した。R−SOMで表される有機金属塩は制電効果を有することが知られており、これを添加することにより不織布の帯電性が防止できることは予想の範囲内であるが、ポリアルキレングリコール類とR−SOMで表される有機金属塩を共存させることにより、制電性と共に分割性が大幅に向上することは予想を超えた効果である。ポリアルキレングリコール類を使用することによりポリアミドとポリエステル成分の界面剥離がある程度向上するが、更にR−SOMで表される有機金属塩を共存させることにより相乗効果的に界面剥離が易化し、分割性の向上が発現する。特に水存在化で機械的応力をかけると良好な分割性を示す。その理由としては明らかではないが、極性の大きいR−SOMで表される有機金属塩による繊維重合体ポリマーと水との親和性が向上するだけでなく、ポリマー中でのポリアルキレングリコール類の分散性が向上し、ポリエステル/ナイロン界面に存在する界面剥離を易化するポリアルキレングリコール類の粒子の存在確率が増えて分割性が大きく向上するものと考えている。
【0021】
ポリアルキレングリコール類の添加量が0.3重量%未満では、静電気抑制効果は得られず、また成分剥離効果が減失し、2成分の剥離分割が困難となる。ポリアルキレングリコール類の添加量が3.0重量%を超える場合、または有機金属塩の添加量が3.0重量%を超えると被添加重合体の粘度低下を来たし、紡糸が困難となり、重合体のフィブリル化による不織布の物性劣化などの問題が発生する。
【0022】
本発明で使用するポリアルキレングリコール類としては、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロックまたはランダム共重合体などを挙げる事ができる。これらはアルキル基、アリール基、アシル基などで末端が封鎖されていても良く、また各種グリコール成分もしくはアミン成分並びに酸成分を反応させたブロックポリエーテルエステルまたはブロックポリエーテルアミドであっても良い。なかでも末端をアルキル基で封鎖したものは、耐光性が良好となるのでより好ましい。
【0023】
ポリアルキレングリコール類の平均分子量としては2000〜600000のものが使用可能である。4000〜100000、なかでも5000〜50000の平均分子量のものが容易に入手でき、紡糸安定性も良いので好ましい。
【0024】
有機金属塩としては、R−SOMで示されるスルホン酸金属塩が好ましく用いられる。ここで、Rは炭素数が8〜15のアルキル基、Mはアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属であり、その中でもNaが好ましい。ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ヘキサデシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸などが挙げられ、他にジステアリルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステルのアルカリ金属塩なども好ましく用いられる。該有機金属塩は1種でも、2種以上併用してもよい。その配合量は0.5〜3重量%の範囲が好ましい。
【0025】
ポリアルキレングリーコール類、および有機金属塩の各繊維形成重合体への添加は、成分形成重合体の重合工程で添加する方法、複合繊維を溶融紡糸する際に該繊維形成重合体とポリアルキレングリコール類および有機金属塩とを混合した後に溶融混練する方法、別々に溶融した該繊維形成重合体とポリアルキレングリコール類および有機金属塩とを溶融紡糸する前に混練する方法等任意の方法を採用することができる。なかでも、ポリアルキレングリコール類および有機金属塩の耐熱性の点、溶融紡糸の作業が容易であること等の点から、該成分形成重合体チップとポリアルキレングリコール類とを混合後溶融紡糸する方法が望ましい。
【0026】
次に、紡糸口金より吐出された剥離分割型複合繊維は、エジェクターやエアサッカーなど高速牽引流体により1500〜8000m/分、より好ましくは2000〜6000m/分、の速度で索引・細化され、開繊しながら多孔補集面上に補集され、ウェブ状のシートとして巻き取られることにより不織布化される。その際、コロナ放電や接触帯電等の処理を行うと、開繊性はより向上する。
【0027】
このようにして得られた複合繊維の不織布は、必要に応じて複数枚を積層、又は単独で、必要に応じて熱接着され、一旦巻き取られた後に、又は、連続してニードルパンチ処理等の交絡処理を施し、剥離分割処理に供される。
【0028】
剥離分割方法は、成分の剥離分割が確実に遂行できる方法であれば任意であり、特に限定されず、また複数の方法を組合わせても良い。例えば機械的な剥離分割処理方法としては、ローラー間で加圧する方法、超音波処理方法、衝撃を与える方法、揉み処理をする方法を例示することができる。
【0029】
本発明においては、上記剥離分割型複合繊維の分割極細繊維化処理に先立って、該長繊維不織布に予め水を付与し水存在下で分割処理することが肝要である。ここで、付与する水には該剥離分割型繊維の少なくとも一方成分を膨潤させる薬品が混合されていてもよく、また付与方法は、水中への浸漬処理する等、従来公知の方法を採用すればよい。但し、緻密化などを目的としている場合は、分割処理に引き続いて収縮熱処理を施すのが好ましいので、繊維の分割が遂行する前に熱がかかる分割処理方法は避けた方が好ましい。高圧水流による分割処理方法は、交絡と同時に分割処理を行うことができる為好ましく用いられる。また、薄目付のものが必要な場合には、ワイピングの用途によっては得られた高目付けのものをスライスすることにより効率的に生産することもできる。
【0030】
剥離分割処理後の単糸繊度は、ワイピングクロスとしての高い拭き取り性を付与するためには0.01〜0.30dtexの範囲が適当である。0.01dtex未満のものは、剥離分割が困難となったり、剥離分割後の繊維があまりにも細いため繊維間で膠着が生じたりする傾向が出てくる。また0.30dtexを超えると拭き取り性が低下し又繊維が太すぎるため均一で微細な不織布が得られ難くなる。
【0031】
このような剥離分割後の細い繊度は、剥離分割型複合繊維の単糸繊度と成分分割数とから決定される。剥離分割型複合繊維の分割前単糸繊度は1〜10dtexとするのが好ましい。剥離分割型複合繊維の分割前単糸繊度が1dtex未満であると紡糸時に糸切れが発生し易くなる。剥離分割型複合繊維の分割前単糸繊度が10dtexより大きくなると、剥離分割後の繊度をより細くするのが難しくなる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。
なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
(1)剥離分割率
不織布の断面を電子顕微鏡にて200倍で撮影し、50本の繊維の断面積を測定し、全体の面積と未分割(完全に剥離分割していない、例えば、2個や3個程度に剥離分割したものも含む)の繊維の断面積の差を全体の面積で除して求めた。
(2)剥離分割後の単糸繊度
口金より紡出され、空気流により高速牽引された直後の複合繊維をサンプリングし、繊度測定器(SERCH CO.LTD、型式DC−21)を用いて試長2.5cm、荷重0.3gにて測定し、10本の平均単糸繊度から複合繊維繊度を求め、下記式により算出して求めた。
剥離分割後の単糸繊度=複合繊維の平均単糸繊度/分割数/(剥離分割率/100)
(3)制電性
不織布をガラス板と擦り合わせた後、不織布表面静電気量を、静電電位測定器(シシド静電気株式会社製 STATIRON DZ3)にて測定した。
(4)拭き取り性
着色液(Suminol Fast Blue 4GL:0.2%、水:20.0%、エチレングリコール(重合度300):79.8%)を、30cm×20cmの大きさアクリル板上に、スクリーンプリント用ステージで均一に塗布した後、該アクリル板上に、200gの荷重がのった8cm×6cmの試料を2000mm/分で滑らせ、アクリル板上に残った着色液の割合を、写真に撮影した後測定し、その結果を以下のように示した。
○:アクリル板上の残液が、塗布量の20%未満
×:アクリル板上の残液が、塗布量の20%以上
【0033】
[実施例1]
120℃で乾燥したナイロン−6(m−クレゾール中の極限粘度1.2)に対して、分子量20000のポリエチレングリコール(日本油脂(株)社製)を2.0重量%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量%ブレンドした混合体を、エクストルーダーに供給し溶融した。別途160℃で乾燥したポリエチレンテレフタレート(o−クロロフェノール中の極限粘度0.64)を、前述とは別個のエクストルーダーにて溶融した。
【0034】
引き続き、上記ポリエチレングリコール/有機金属塩/ナイロン−6混合体溶融流は導管ポリマー温度245℃で、ポリエチレンテレフタレート溶融流は300℃で、275℃に保温されたスピンブロックへ導入し、特開昭54−38914号公報記載の合流部を有し、幅100cm×20cmの範囲に3200個の丸断面吐出孔を格子状配列で有する矩形の紡糸口金を用いて両重合体溶融流を流量比で50/50となる様合流させ複合し1g/分・孔の量で吐出し、120cm幅のスリット形状を有するエアサッカーで空気圧力230kPa(吐出量と複合繊維繊度から換算した紡速で約2700m/分)にて高速牽引した。
【0035】
牽引された複合繊維の分割前繊度は3.7dtexとし、空気流とともに補集ネット上に、図1に示すような16分割の多層貼合せ型断面をもつ剥離分割型複合繊維からなるウェブとしてネットコンベアー上に幅1mで開繊、補集した。引き続き、得られたウェブを連続で上下100℃のエンボスカレンダーにて軽く熱接着を行い、次いで速度50m/分で移動しているメッシュ状のスクリーンの上に供給し、水をスクリーン上部から、幅方向に亘って20mm間隔で水供給ノズルのついたノズルより付与した後に高圧(7.5MPa)の水流によって、分割処理を行った。その際、高圧水流の噴出口の孔径は0.1mm、孔数は601個、孔ピッチは1mm、噴射孔群列は6列とし、該ウェッブの表裏に一回ずつ処理を施した。この後、マングルロールにて水分を絞り、98℃の雰囲気に保たれた乾燥・熱処理装置で処理して、目付80g/mの不織布を得た。得られたワイピングクロスの評価結果を表1に示す。
【0036】
[実施例2]
120℃で乾燥したナイロン−6(m−クレゾール中の極限粘度1.2)に対して、分子量25000のポリトリメチレングリコールを0.7重量%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.5重量%ブレンドした混合体を、エクストルーダーに供給し溶融した。別途160℃で乾燥したポリエチレンテレフタレート(o−クロロフェノール中の極限粘度0.62)を、前述とは別個のエクストルーダーにて溶融した。
以下、実施例1と同様な条件、方法で吐出、高速牽引、捕集、熱接着、交絡処理および剥離分割処理を行い目付80g/mの極細繊維不織布を得た。本例で得られた評価結果を表1に示す。
【0037】
[実施例3]
実施例1で分割前繊度2.5dtex、分割数を48とした以外は同様にして行った。得られた評価結果を表1に示す。0.05dtexという細繊度でも分割率は良好で拭き取り性も良好であった。
【0038】
[比較例1〜4]
ポリエチレングリコール、および有機金属塩の添加量を変更した以外は、実施例1と同様の方法でワイピングクロス用極細繊維不織布を得た。本例で得られた評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示す通り、本発明の範囲内の実施例1、2により得られたワイピングクロスは良好な制電性、拭き取り性を示したのに対し、ポリエチレングリコールおよび有機金属塩の添加量が本発明の範囲を外れる比較例1〜4においては、比較例1は制電性や拭き取り性は優れるものの、紡糸工程における単糸切れが多く安定的に生産不可であり、比較例2〜4においては分割性が十分でなく、拭き取り性が不良となった。特に有機金属塩の添加量の少ない比較例2では静電気発生量が多く埃を拭き取る際十分に除去不可であった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の極細繊維不織布はポリアミド系重合体とポリエステル系重合体とからなり、良好な制電性、拭き取り性を有するので家庭用〜電気、電子用等のワイピングクロス用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の剥離分割型複合繊維の繊維断面を示した模式図。
【符号の説明】
【0043】
1 :ポリアミド系重合体成分
2 :ポリエステル重合体成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系重合体とポリエステル系重合体の2成分で構成され、分割後の単糸繊度が0.01〜0.30dtexである剥離分割型複合繊維からなる不織布を分割極細化処理してなるワイピングクロス用極細不織布の製造方法において、少なくとも一方の重合体中に、ポリアルキレングリコール類を0.3〜3.0重量%及びR−SOMで示される有機金属塩を0.5〜3.0重量%含有する剥離分割型複合繊維とし、不織布となした後に水存在下で分割処理することを特徴とするワイピングクロス用極細不織布の製造方法。
(ここで、Rは炭素数8〜15のアルキル基、Mはアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属である。)
【請求項2】
ポリアミド系重合体とポリエステル系重合体の2成分で構成され、分割後の単糸繊度が0.01〜0.30dtexである剥離分割型複合繊維からなる不織布を分割極細化処理してなるワイピングクロス用極細不織布であって、剥離分割型複合繊維の少なくとも一方の重合体中に、ポリアルキレングリコール類を0.3〜3.0重量%及びR−SOMで示される有機金属塩を0.5〜3.0重量%含有することを特徴とするワイピングクロス用極細不織布。
(ここで、Rは炭素数8〜15のアルキル基、Mはアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属である。)

【図1】
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【公開番号】特開2008−200424(P2008−200424A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42708(P2007−42708)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(303000545)帝人コードレ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】