説明

ワイヤハーネス用の外装材

【課題】曲げ、捩れ時に潰れを発生しないようにして耐久性を高めた蛇腹管部を備えたワイヤハーネス用の外装材を提供する。
【解決手段】環状の山部と谷部とを長さ方向に交互に設けた蛇腹管部を有するワイヤハーネス用の外装材であって、前記山部の周壁は、軸直角方向の断面形状で、外径方向に放射状に折り返し屈曲部を複数設けた星形状とする一方、前記谷部は断面円環形状とし、該谷部の外径と前記山部の屈曲部の内端の折り返し点を結ぶ仮想内径とは同等とし、かつ、該谷部の軸線方向の長さを前記山部の軸線方向の長さよりも短くしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤハーネス用の外装材に関し、詳しくは、蛇腹管部を有するコルゲートチューブやグロメットからなる外装材において、蛇腹管部を曲げ及び捩れに対して潰れにくい形状とするものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のサイドドアやバックドアに配索されるワイヤハーネスをドア側から車体側へと架け渡す領域にはグロメットが外装され、該グロメットにはドアの開閉に応じて伸縮および曲げ捩れる蛇腹管部を設けている。即ち、図5に示すように、ドアDと車体Bの両方のパネルに設けた貫通穴DH、BHに内嵌する両側の固定部101と102の間に蛇腹管部103を設けたグロメット100が用いられている。
【0003】
蛇腹管部103は環状の山部と谷部とを長さ方向に交互に設けた形状であるため、谷部が伸縮することで伸縮時に断面円形の外形が潰れることはなく、伸縮が繰り返されても疲労の蓄積は少ない。
これに対して、曲げ捩れ時には断面円形の外形が変形して円が潰れた状態になり、局部的に応力集中が発生する。この曲げ捩れがドアの開閉に応じて生じるため、ゴムまたはエラストマーの弾性体からなる蛇腹管部は次第に疲労して破れ等の損傷が生じる恐れがある。この問題はグロメットの蛇腹管部のみならず、樹脂成形品のコルゲートチューブにおいても発生する。
【0004】
前記問題に対して、図6に示すように、特開2007−60781号公報(特許文献1)で蛇腹管部120Aと120Bとの間に山部と谷部とを設けていない直管状の屈曲規制部122を設けたハーネス保護管が提供されている。該ハーネス保護管では屈曲規制部122により、曲げ力が働いても曲げを最小に止め、急激な曲げの発生による損傷が起こらないようにしている。
【0005】
しかしながら、ワイヤハーネスを急激に曲げる必要がある場合には、前記特許文献1のハーネス保護管を採用できない。かつ、屈曲規制部122は直管形状であるため、曲げ捩れ時に曲げ負荷、捩れ負荷を受け、屈曲規制部122に破れ等の損傷が発生しやすい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−60781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、蛇腹管部において、曲げや捩れが繰り返し負荷されても、断面形状を大きく縮小する潰れが発生するのを低減または防止して、蛇腹管部に破れ等の損傷が生じないようにして、耐久性のある蛇腹管部を備えたワイヤハーネス用の外装材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、環状の山部と谷部とを長さ方向に交互に設けた蛇腹管部を有するワイヤハーネス用の外装材であって、
前記山部の周壁は、軸直角方向の断面形状で、外径方向に放射状に折り返し屈曲部を複数設けた星形状とする一方、
前記谷部は断面円環形状とし、該谷部の外径と前記山部の屈曲部の内端の折り返し点を結ぶ仮想内径とは同等とし、かつ、該谷部の軸線方向の長さを前記山部の軸線方向の長さよりも短くしていることを特徴とするワイヤハーネス用の外装材を提供している。
【0009】
前記星形状とする山部の折り返し屈曲部の個数は8個以上が好ましく、蛇腹管部が大径であれば屈曲部の個数を増加している。
また、谷部の内径D1と山部の屈曲部の外端を結ぶ仮想外径D2とは、D1:D2=1:1.2〜1:2.0程度とすることが好ましい。
また、前記山部の軸線方向の長さL1と谷部の軸線方向の長さL2とは、L1≧L2とすることが好ましい。
【0010】
前記のように、山部を断面星形状とすると、屈曲時および捩れ時は谷部が変形してワイヤハーネスの挙動に追従して曲がったり、捩れたりする、その際、山部では周方向に隣接する屈曲部の間隔が開いたり、閉じたりして曲げ、捩れに対応でき、山部の内部空間の容積を大きく減少する潰れを発生させないように変形する。よって、曲げ、捩れ時に蛇腹管部の一部に無理な応力が局部的に負荷されることはなく、破れ等の損傷が発生するのを低減、防止でき、耐久性を高めることができる。
【0011】
前記蛇腹管部を備えた本発明のワイヤハーネス用の外装材は、車体パネルやドアパネル等のパネルの貫通穴に取り付けられる固定部から前記蛇腹管部が突出したゴムまたはエラストマーからなるグロメット、あるいは樹脂成型品からなるコルゲートチューブとして好適である。
【0012】
前記グロメットの場合、サイドドアまたはバックドアに配索されるドアハーネスの車体側への引き出し部分に外装され、前記蛇腹管部はドアと車体との間に架け渡され、ドアの開閉に応じて前記蛇腹管部は捩れながら収縮すると共に捩れを戻しながら伸縮されるものに好適に用いられる。
この種のグロメットでは、蛇腹管部はドアの開き作動に応じて捩れるが、ドアの閉じ動作時に確実に捩れを戻すことができる。かつ、ドアの開閉動作に伴わずに蛇腹管部に捩れが生じることも低減、防止できる。
【0013】
また、前記コルゲートチューブの場合、スライドドア内部に配索されるワイヤハーネスに外装され、スライドドアの開閉に応じて屈曲および伸長されるものに好適に用いられる。
なお、屈曲および伸縮作動が無いワイヤハーネスに外装するグロメットやコルゲートチューブの蛇腹管部の形状としても、前記本発明の形状は好適に適用できる。
【発明の効果】
【0014】
前記のように、本発明のワイヤハーネス用の外装材において、その蛇腹管部の山部を断面星形状とし、曲げ、捩れ時に、山部の間の谷部が曲げ、捩れて追従するだけで、山部は放射状に突出した屈曲部の間隔が拡大、縮小して追従し、潰れは発生しない。よって、潰れることによる過度の応力集中が発生せず、かつ、潰れた状態から戻らずに疲労が蓄積し、破れ等の損傷が発生するのを防止でき、耐久性を高めることで、ワイヤハーネスの外装材としての信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態のグロメットを取り付けたワイヤハーネスをバックドアに配索した状態を示す斜視図である。
【図2】前記グロメットにワイヤハーネスを通した状態を示す斜視図である。
【図3】グロメットの蛇腹管部を示し、(A)は正面図、(B)は蛇腹管部の山部の断面図、(C)蛇腹管部の斜視図である。
【図4】グロメットに曲げ捩れが生じた時の蛇腹管部を示し、(A)は正面図、(B)は山部の断面図である。
【図5】(A)(B)はドアと車体とに架け渡すワイヤハーネスに外装したグロメットを示す従来例の図面である。
【図6】従来例の蛇腹管を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に実施形態のグロメットからなるワイヤハーネス用の外装材を示す。
【0017】
グロメット1は図1に示すように自動車のバックパネル2とバックドア3との間に架け渡すワイヤハーネス(ドアハーネス)4に外装するものである。
グロメット1はゴムまたはエラストマーにより成形している。該グロメット1はバックドア3の貫通穴に装着する固定部5と車体側のバックパネル2の貫通穴に装着する固定部6と、これらの固定部5と6の間に配置する蛇腹管部10を連続して備えたものである。 前記両端の固定部5と6は、バックパネル2とバックドア3に夫々設けた貫通穴の内周縁に嵌合する係止溝5a、6aを備えると共に、ワイヤハーネス4と固定するためのテープ巻き舌片5b、6bを備えている。
【0018】
図3(A)〜(C)に示すように、蛇腹管部10は環状の山部11と谷部12とを長さ方向に交互に設けている。
前記山部11と谷部12の中心は同一の中心軸線O上に位置させている。谷部12の外形は従来と同様に断面円形(真円)としている。
【0019】
山部11は図3(B)(C)に示すように、断面略星形状としている。即ち、山部11の周壁は、軸直角方向の断面形状で、外径方向に放射状に折り返し屈曲部20を複数設けた星形状としている。本実施形態では、屈曲部20を8個設けている。
該屈曲部20の個数は8個に限定されず、前記のように、8個以上が好ましい。
【0020】
また、山部11の屈曲部20の折り返し内端P1を結ぶ仮想内径は前記谷部12の内径D1と同等としている。山部の屈曲部20の外端P2を結ぶ仮想外径D2とは、D1:D2=1:1.2〜1:2の範囲としている。
また、山部11の軸線方向の長さL1と谷部12の軸線方向の長さL2とは、L1≧L2としている。
【0021】
前記形状としたグロメット1にワイヤハーネス4を挿通して、前記バックパネル2とバックドア3との間にグロメット1を架け渡し、グロメット1の両端の固定部5、6をバックパネル2とバックドア3の貫通穴に挿入係止して固定する。
【0022】
バックドア3を上端のヒンジを支点として下部を持ち上げて上向きに開放すると、グロメット1はバックドア3の回転に連動して回転し、かつ、固定部5、6の取付位置が左右方向にずれているため、蛇腹管部10の山部11と谷部12とが互いに滑り回転して捩れる。
【0023】
其の際、図4(A)に示すように、蛇腹管部10の谷部12の外周側が伸びるとともに内周側が縮んで曲げ、捩れに追従する。図4(B)に示すように、前記谷部12が伸びる側と対応する山部11の外周側は隣接する屈曲部20の間隔が開くとともに、内周側が隣接する屈曲部20の間隔が狭くなるように変形する。即ち、屈曲部20の間隔が変わるだけで、容積を大きく縮小するように変形せず、所謂、山部11が潰れる状態で曲げ、捩れに追従しない。
【0024】
バックドア3の閉鎖時には、蛇腹管部10は捩れた状態から捩れが戻る方向に回転する。その際、蛇腹管部10の山部11は図3(B)に示す原状に戻り、屈曲部20は等間隔に戻る。また、谷部11も曲げ、捩れ状態から内外周が平行状態に戻る。
【0025】
蛇腹管部10で捩れが戻らない場合には、グロメット1の両端の固定部5、6に応力がかかり、バックパネル2、バックドア3との密着状態が保持できなくなり、防水機能が低下する。また、捩れた状態が継続すると、疲労により蛇腹管部10に亀裂や破れが生じやすくなる。これに対して、前記のように蛇腹管部10で捩れが確実に戻るようにすると、グロメット1の防水機能を高めることができる。
【0026】
前記実施形態は蛇腹管部を備えたグロメットであるが、樹脂成形品であるコルゲートチューブからなるワイヤハーネス用の外装品においても、山部の形状を略星形状としてもよい。特に、該コルゲートチューブを屈曲および伸縮が繰り返されるワイヤハーネスの外装材として用いる場合に適している。
【符号の説明】
【0027】
1 グロメット
2 バックパネル
3 バックドア
4 ワイヤハーネス
5、6 固定部
10 蛇腹管部
11 山部
12 谷部
20 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の山部と谷部とを長さ方向に交互に設けた蛇腹管部を有するワイヤハーネス用の外装材であって、
前記山部の周壁は、軸直角方向の断面形状で、外径方向に放射状に折り返し屈曲部を複数設けた星形状とする一方、
前記谷部は断面円環形状とし、該谷部の外径と前記山部の屈曲部の内端の折り返し点を結ぶ仮想内径とは同等とし、かつ、該谷部の軸線方向の長さを前記山部の軸線方向の長さよりも短くしていることを特徴とするワイヤハーネス用の外装材。
【請求項2】
前記星形状とする山部の折り返し屈曲部の個数は8個以上、前記谷部の内径D1と山部の屈曲部の外端を結ぶ仮想外径D2とは、D1:D2=1:1.2〜1:2、前記山部の軸線方向の長さL1と谷部の軸線方向の長さL2とは、L1≧L2としている請求項1に記載のワイヤハーネス用の外装材。
【請求項3】
自動車のサイドドアまたはバックドアに配索されるワイヤハーネスの車体側への引き出し部分に外装され、前記蛇腹管部はドアと車体との間に架け渡されるグロメットからなる請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用の外装材。
【請求項4】
コルゲートチューブからなる請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用の外装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−239512(P2011−239512A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106942(P2010−106942)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】