説明

ワイヤハーネス

【課題】外装材を省略しても、電線の曲げ方向を規定できるワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス10は、複数本の電線20と、各電線20を一括して被覆する樹脂シースからなる外被部30と、外被部30と一体に成形され、かつ外被部30の外周面から突出するとともに、外被部30の長さ方向に沿った板状の屈曲規制部31とを備えている。これにより、ワイヤハーネス10は、屈曲規制部31の突出方向に屈曲されるのが規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のボディとドアとの間には、ドアの変位動作に追従可能なワイヤハーネスが配索される。このワイヤハーネスは、使用時における垂れ下がりを防止するべく、通常、ドアの変位方向に沿った平面上に配索される。
【0003】
特許文献1に記載のワイヤハーネスでは、電線の曲げ方向を規制する手段として外装材が用いられ、外装材の内部に電線が挿入される。外装材は、複数の筒状体と、隣接する筒状体同士を連結する連結軸とからなり、連結軸を介して、各筒状体が鎖状に連なる形態とされている。各筒状体は、連結軸周りに回動可能とされる。このため、外装材は、各筒状体の回動方向に沿った平面方向にのみ変位可能とされ、平面方向と直交する方向への変位動作が規制される。
【0004】
この種のワイヤハーネスでは、外装材が必要になるため、その分、コストが上昇するという事情がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−187142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、外装材を省略しても、電線の曲げ方向を規制できるワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、所定方向に屈曲可能なワイヤハーネスであって、複数本の電線と、前記各電線を一括して被覆する樹脂シースからなる外被部と、前記外被部の外周面から外方へ一体に突出し、かつ前記外被部の長さ方向に延びる板状の屈曲規制部とを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記屈曲規制部が、前記外被部の径方向両側に対をなして配置されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記屈曲規制部が、前記外被部の径方向両側に複数対配置されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記屈曲規制部の突出方向先端部には、前記外被部より曲げに対する耐性の高い芯材が、前記外被部の長さ方向に装着されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
各電線が樹脂シースからなる外被部に一括して被覆され、外被部の外周面には長さ方向に延びる板状の屈曲規制部が一体に突出して形成されているため、各電線が屈曲規制部の突出方向に屈曲されるのが規制される。したがって、外装材のような大掛かりな装置を用いなくても、電線の曲げ方向を規制することができる。
【0012】
<請求項2の発明>
屈曲規制部が外被部の径方向両側に対をなして配置されているため、各電線が屈曲規制部の位置する径方向両側に屈曲されるのが確実に規制される。
【0013】
<請求項3の発明>
屈曲規制部が外被部の径方向両側に複数対配置されているため、各電線が屈曲規制部の位置する径方向両側に屈曲されるのがいっそう確実に規制される。
【0014】
<請求項4の発明>
屈曲規制部の突出方向先端部には外被部より曲げに対する耐性の高い芯材が外被部の長さ方向に装着されているため、各電線が屈曲規制部の突出方向に屈曲されるのがよりいっそう確実に規制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係るワイヤハーネスの断面図である。
【図2】屈曲されたワイヤハーネスの斜視図である。
【図3】ワイヤハーネスの両端部の側面図である。
【図4】実施形態2に係るワイヤハーネスの断面図である。
【図5】実施形態3に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図3によって説明する。実施形態1に係るワイヤハーネス10は、所定方向(図1に示すX方向)に屈曲可能とされ、複数本の電線20と、各電線20を一括して被覆する外被部30とを備える。
【0017】
電線20は、銅やアルミニウム等の導電金属製の素線21と、素線21の周りを包囲する絶縁樹脂製の被覆部22とからなる。本実施形態の場合、電線20は、複数本がまとめられた電線束23として構成される。電線束23はこれ単独では実質的に全方位に屈曲可能とされる。
【0018】
外被部30は、電線束23の外周上に所定厚みで押出成形される断面ほぼ円形の樹脂シースとして構成される。外被部30の材料としては、塩化ビニルやポリウレタンが好適に用いられる。
外被部30の外周面には、屈曲規制部31が一体に突出して形成されている。屈曲規制部31は、外被部30の長さ方向に沿って延びる板状の形態をなしている。本実施形態の屈曲規制部31は、外被部30の全長に亘る長さを有している。
【0019】
具体的には屈曲規制部31は、外被部30の径方向両側において、外被部30の中心を通る径方向の軸線Cに沿った一対の第1規制片32と、第1規制片32を挟んだ厚み方向両側に所定間隔をあけた一対ずつの第2規制片33とで構成されている。第1、第2規制片32、33は、互いにほぼ同じ長さ寸法を有し、ほぼ平行に並列して配置されている。第1規制片32の突出寸法は、第2規制片33の突出寸法より大きくされている。なお、外被部30及び屈曲規制部31は、径方向の軸線Cを境として左右対称(屈曲規制部31の厚み方向に対称)な形態とされている。
【0020】
実施形態1に係るワイヤハーネス10の構造は上述の通りであり、続いて、その作用効果を説明する。
ワイヤハーネス10は、例えば、図示しない自動車のボディとドアとの間に配索される。ドアの開閉動作がなされると、それに追従してワイヤハーネス10が屈曲させられる。このとき、ワイヤハーネス10の屈曲動作は、屈曲規制部31が外被部30の径方向両側に配置されていることに起因し、ドアの変位方向に沿って平面方向(図1に示すX方向)のみ許容され、平面方向と直交する方向(図1に示すY方向)へは規制される。したがって、図2に示すように、ワイヤハーネス10は、ドアの変位動作に追従して屈曲規制部31の厚み方向に湾曲させられる。なお、図3に示すように、電線束23の両端部が外被部30に被覆されない自由端部29とされる場合、その自由端部29は屈曲規制部31に拘束されずに自在に屈曲可能とされる。
【0021】
このように実施形態1によれば、各電線20(電線束23)が樹脂シースからなる外被部30に一括して被覆され、外被部30の外周面には長さ方向に延びる板状の屈曲規制部31が一体に突成されているため、各電線20が屈曲規制部31の突出方向に屈曲されるのが規制される。したがって、従来における外装材のような大掛かりな装置を用いずに済み、コスト高となるのが抑えられる。
【0022】
また、屈曲規制部31が外被部30の径方向両側に対をなして配置されているため、各電線20が屈曲規制部31の位置する径方向両側(図1に示すY方向)に屈曲されるのが確実に規制される。しかも、屈曲規制部31が複数対配置されているため、各電線20のY方向への屈曲動作がいっそう確実に規制される。
【0023】
<実施形態2>
本発明の実施形態2に係るワイヤハーネス10Aを図4によって説明する。実施形態2では、屈曲規制部31Aの形態が実施形態1とは異なる。
【0024】
この屈曲規制部31Aは、外被部30Aの長さ方向に延びる板状をなし、外被部30Aの径方向両端から互いに逆向きに突出する一対の規制片39を有している。規制片39は、外被部30Aの中心を通る軸線C1に沿って配置されている。規制片39の突出方向先端部(径方向両端部)には、長さ方向に延びる断面ほぼ円形の装着部38が膨出して形成されている。装着部38の内部には、長さ方向に細長い線状の芯材60が押出成形によって埋設されている。芯材60は、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂製、又はステンレス等の金属製であって、外被部30Aより曲げに対する耐性の強い材料で形成されている。
【0025】
実施形態2によれば、芯材60によって屈曲規制部31Aがその突出方向に屈曲されるのがよりいっそう確実に規制される。このため、外被部30Aの径方向両側に複数対の規制片を設けなくて済み、全体の構成がより簡素化される。
【0026】
<実施形態3>
図5は、本発明の実施形態3に係るワイヤハーネス10Bを示す。実施形態3では、実施形態2の屈曲規制部31Aとほぼ同様の屈曲規制部31Bが備えられる。しかし、屈曲規制部31Bの使用態様及び一部の形状が実施形態2の屈曲規制部31Aとは異なる。
【0027】
屈曲規制部31Bは、外被部30Bの外周面から一体に突出するほぼ矩形板状の第1、第2屈曲規制部35、36からなる。第1、第2屈曲規制部35、36は、例えば、長さ方向に連続する屈曲規制部31Bの中間部を切除することによって互いに分断され、所定間隔をあけて配置されている。外被部30Bの外周面には、第1、第2屈曲規制部35、36の間、及び第1、第2屈曲規制部35、36の長さ方向両端外方に、屈曲規制部31Bが連結されない非連結部34が形成されている。また、第1屈曲規制部35には、厚み方向に貫通する複数の円形の貫通孔37が形成されている。
【0028】
上記の場合、屈曲規制部31Bの領域では電線20の曲げ方向が規制される一方、非連結部34の領域では電線20の曲げ方向が規制されずに実質的に自在となる。したがって実施形態3によれば、ワイヤハーネス10の配索状況に応じて、電線20の曲げ方向を所望の範囲で規定することができる。また、第1屈曲規制部35の貫通孔37にボルトを挿通させ、そのボルトを図示しない取付対象にねじ込むことにより、第1屈曲規制部35ひいてはワイヤハーネス10Bを取付対象に固定することができる。
【0029】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)屈曲規制部が外被部の径方向両側のうちの片側のみに配置されるものであってもよい。この場合、屈曲規制部が四つ以上又は一つだけ突出する形態であってもよい。
(2)屈曲規制部が、径方向に対して交差する向きに突出する形態であってもよい。
(3)実施形態1における屈曲規制部の突出方向先端部にも、実施形態2における芯材が装着されていてもよい。
(4)芯材が、グランド線又は電源線からなるものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
10、10A、10B…ワイヤハーネス
20…電線
30、30A、30B…外被部
31、31A、31B…屈曲規制部
60…芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に屈曲可能なワイヤハーネスであって、
複数本の電線と、
前記各電線を一括して被覆する樹脂シースからなる外被部と、
前記外被部の外周面から外方へ一体に突出し、かつ前記外被部の長さ方向に延びる板状の屈曲規制部とを備えていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記屈曲規制部が、前記外被部の径方向両側に対をなして配置されている請求項1記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記屈曲規制部が、前記外被部の径方向両側に複数対配置されている請求項2記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記屈曲規制部の突出方向先端部には、前記外被部より曲げに対する耐性の高い芯材が、前記外被部の長さ方向に装着されている請求項1ないし3のいずれか1項記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−129141(P2012−129141A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281451(P2010−281451)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】