説明

ワイヤハーネス

【課題】導電路の外装部材として可撓性を有する外装部材を単に備えるだけでなく、外装部材を所望の形状に保持することが可能であり、また、プロテクタを不要にすることも可能なワイヤハーネスを提供することである。
【解決手段】電線18を覆うためのコルゲートチューブ16を備える。コルゲートチューブ16を曲げて形成される屈曲部20の曲げ形状を保持しこれにより経路を保持する部材として、伸び縮みせず可撓性を有しかつコルゲートチューブ16の曲げ形状に成型された平板状の経路保持部材25、26を用い、経路保持部材25、26を屈曲部20にあてがった状態で少なくとも経路保持部材25、26を覆うようにテープ17が巻きつけられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一又は複数の電線を保護するための外装部材を備え経路保持の機能を有するワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、三本の高圧電線と、この三本の高圧電線を一本ずつ収容して保護するための三本の金属保護パイプとを備えて構成されている。高圧電線は、車両の前側に搭載されるモータと、車両の中間又は後側に搭載されるインバータとを接続するものとして備えられている。
【0003】
ワイヤハーネスは、車体フレームの外側となる車体床下を通って配索されるようになっている。このため、金属保護パイプは石跳ねや水跳ねから高圧電線を保護することができるように形成されている。金属保護パイプは、石跳ねや水跳ねから高圧電線を保護し且つ高圧電線の撓みを防止する剛性を有するとともに、金属製であることから電磁シールド機能も有している。
【0004】
ワイヤハーネスは、真っ直ぐな状態の金属保護パイプに高圧電線を挿通し、これを三本分行った後に、車体床下におけるワイヤハーネスの配索経路に沿って金属保護パイプに曲げを施すことにより製造されている。ワイヤハーネスは、ハーネスメーカーの工場で上記の如く製造された後に、自動車メーカーの組み立て工場へと搬送されて車両の所定位置に組み付けられ、これにより配索が完了するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−224156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来技術にあっては、ワイヤハーネスの搬送の際に、金属保護パイプ同士が接触したり変形したりしてしまわないようにするため、金属保護パイプ毎、及びワイヤハーネス毎に十分なスペースを確保する必要があるという問題点を有している。また、金属保護パイプを三次元的に曲げ加工していることから、立体的なスペースを確保する必要もあるという問題点を有している。
【0007】
上記問題点を解消するためとして、可撓性を有する外装部材(例えば管体)を金属保護パイプの代替部材とすることが考えられる。しかしながら上記外装部材を単に代替部材とするだけでは、次のような幾つかの問題点を解消することは困難である。
【0008】
すなわち、可撓性を有するだけの外装部材であると、ワイヤハーネスの組み付け・配索時及び配索後において、所望の形状を保持することが困難であるという問題点を有している。また、可撓性を有するだけの外装部材であると、この外装部材を車両の所定位置に組み付けるために例えばプロテクタが必要になるが、このプロテクタは配索経路に合わせて樹脂成形される部材であることから、車両毎に専用設計・専用部材になってしまうという問題点、さらには汎用性が低くコスト高になってしまうという問題点を有している。
【0009】
プロテクタに関しては、開発段階で何度も試作金型を起こす場合があることから、設計費用、金型費用、設計時間等が掛かってしまうという問題点を有している。また、プロテクタに関しては、外装部材への組み付け部分が大型化することから、地面に近づき不具合が生じてしまうという問題点を有している。
【0010】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、可撓性を有する外装部材を所望の形状に保持することが可能であるとともに、プロテクタを不要にすることも可能なワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のワイヤハーネスは、一又は複数の導電路を覆うための外装部材を備え、外装部材を曲げて形成される屈曲部の曲げ形状を保持しこれにより経路を保持する部材として、伸び縮みせず可撓性を有しかつ外装部材の曲げ形状に成型された平板状の経路保持部材を少なくとも一つ用い、経路保持部材を屈曲部にあてがった状態で少なくとも経路保持部材を覆うようにテープが巻きつけられていることを特徴とする。
【0012】
このような特徴を有する本発明によれば、外装部材を曲げて形成される屈曲部に経路保持部材をあてがい、該屈曲部にテープを巻きつけることにより、曲げた外装部材の復元力を抑制し外装部材が曲げ形状に保持される。
【0013】
また、請求項2に記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、経路保持部材の幅は外装部材の幅よりも短いことを特徴とする。
【0014】
このような特徴を有する本発明によれば、テープの外装部材に対する密着性が向上するので、テープを巻きつけた後における経路保持部材と外装部材との位置ずれを生じにくくさせる。このため、屈曲部の曲げ形状が確実に保持される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された本発明によれば、導電路を覆うための外装部材を所望の形状に保持することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、プロテクタを不要にして汎用性を高めることができるという効果を奏する。
【0016】
また、予め曲げ加工が施された経路保持部材及び外装部材を固定するためのテープといった標準的な部品(代替可能部品)を樹脂成型プロテクタの代替部品として用いるため車両専用部品および金型を用いることがない。したがって、ワイヤハーネスの製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
請求項2に記載された本発明によれば、テープを外装部材に対する密着性が向上するので、テープを巻きつけた後における経路保持部材と外装部材との位置ずれを生じにくくさせる。このため、テープが外装部材にしっかりフィット(固着)するので確実に外装部材を所望の形状に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ハイブリッド自動車に本発明のワイヤハーネスを配索した場合の一例を示した模式図である。
【図2】ワイヤハーネスを屈曲させる前の状態から屈曲させた後の状態を示した外観斜視図である。
【図3】ワイヤハーネスを屈曲させた後に屈曲部に経路保持部材があてがわれた状態の一例を示した外観斜視図である。
【図4】(a)は経路保持部材に成形される前の平板状部材を示した外観斜視図であり、(b)は成形された経路保持部材の一例を示した外観斜視図であり、(c)は成形された経路保持部材の変形例を示した外観斜視図である。
【図5】ワイヤハーネスの屈曲部にテープが巻きつけられた状態の一例を示した外観斜視図である。
【図6】(a)はコルゲートチューブを屈曲させる前のワイヤハーネスの縦断面図であり、(b)はコルゲートチューブを屈曲させた後に経路保持部材があてがわれた屈曲部にテープが巻きつけられた状態におけるワイヤハーネスの縦断面図である。
【図7】ワイヤハーネスを屈曲させた後に屈曲部に経路保持部材があてがわれた状態の変形例を示した外観斜視図である。
【図8】ワイヤハーネスの屈曲部にテープが巻きつけられた状態の変形例を示した外観斜視図である。
【図9】(a)は屈曲部にテープが巻きつけられたワイヤハーネスの幅方向断面図であり、(b)は屈曲部にテープが巻きつけられた変形例に係るワイヤハーネスの幅方向断面図である。
【図10】(a)は経路保持部材の他の変形例を示した外観斜視図であり、(b)はコルゲートチューブを屈曲させた後に経路保持部材を外側曲率形状部の谷部に嵌め込んだ状態においてテープが巻きつけられたときのワイヤハーネスの縦断面図であり、(c)はコルゲートチューブを屈曲させた後に経路保持部材を外側曲率形状部の谷部及び内側曲率形状部の谷部に嵌め込んだ状態においてテープが巻きつけられたときのワイヤハーネスの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図6を参照して、本発明に係るワイヤハーネスの構造の一実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
ここで、図1は、ハイブリッド自動車に本発明のワイヤハーネスを配索した場合の一例を示した模式図である。図2は、ワイヤハーネスを屈曲させる前の状態から屈曲させた後の状態を示した外観斜視図である。図3は、ワイヤハーネスを屈曲させた後に屈曲部に経路保持部材があてがわれた状態の一例を示した外観斜視図である。図4(a)は経路保持部材に成形される前の平板状部材を示した外観斜視図であり、(b)は成形された経路保持部材の一例を示した外観斜視図であり、(c)は成形された経路保持部材の変形例を示した外観斜視図である。図5は、ワイヤハーネスの屈曲部にテープが巻きつけられた状態の一例を示した外観斜視図である。図6(a)はコルゲートチューブを屈曲させる前のワイヤハーネスの縦断面図であり、(b)はコルゲートチューブを屈曲させた後に経路保持部材があてがわれた屈曲部にテープが巻きつけられた状態におけるワイヤハーネスの縦断面図である。
【0021】
本実施の形態においては、ハイブリッド自動車(電気自動車であってもよい)に本発明のワイヤハーネスを適用する例を挙げて説明するものとする。
【0022】
図1において、ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施の形態において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載されている(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよい)。
【0023】
モータユニット3とインバータユニット4は、公知の高圧ワイヤハーネス8により接続されている。また、バッテリー5とインバータユニット4は、本発明のワイヤハーネス9により接続されている。ワイヤハーネス9は、高圧用のものとして構成されている。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車体床下11に沿って配索されている。
【0024】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続されている。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13がコネクタ接続されている。ワイヤハーネス9の後端13側は、自動車室内側となる床上に配索されている。この床上には、ワイヤハーネス9の前端14側も配索されている。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4にコネクタ接続されている。
【0025】
モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0026】
以下に、ワイヤハーネス9の構造の一例について図2〜図5、図9を参照して詳細に説明する。
【0027】
ワイヤハーネス9は、電線18と、電線18を被覆する電磁シールド部材19と、電磁シールド部材19を覆うための外装部材として機能するコルゲートチューブ16を備えて構成されている。
【0028】
電線18は、導体及び絶縁体を含む導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有するように形成されている。導体は、銅や銅合金やアルミニウムやアルミニウム合金により製造されている。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。電線18の端末には、コネクタ(図示せず)が設けられている。
【0029】
電磁シールド部材19は、電線18を介して伝送される電気信号が外部からの電磁波による影響を受けないようにするためのものであり、導電性の金属箔を含むシールド部材、或いは金属箔単体などにて筒状に形成されている。電磁シールド部材19は、二本の高圧電線18の全長とほぼ同じ長さに形成されている。
【0030】
尚、電磁シールド部材19は、本実施例において金属箔を含んでいるが、これに限定されるものではない。すなわち、電磁波対策をすることが可能であれば、例えば極細の素線を多数有する編組を用いてもよいものとする。編組は、導電性を有して筒状に形成されるものとする。
【0031】
コルゲートチューブ16は、上述したように曲げ可能な可撓性を有する外装部材(管体)であって、外周面に山部と谷部(凸部と凹部)が電線18の長手方向に沿って連続して形成された樹脂製又は金属製のチューブ(蛇腹管)等が挙げられる。また、本実施の形態では、コルゲートチューブ16は、断面円形状で樹脂製のものが用いられるが、断面円形状に限らず、断面楕円形状や、断面四角形状などの形状のものであってもよい。
【0032】
電線18を被覆する電磁シールド部材19を挿通した状態において、図2の矢印の方向にコルゲートチューブ16に曲げが施されると、屈曲部20が形成される。図1の例では、符号20A、20B、20Cの位置に屈曲部20が形成される。
【0033】
ここで、屈曲部20における符号21は、曲げRが大きい側となる外側曲率形成部分を示している。また、符号22は、曲げRが小さい側となる内側曲率形成部分を示している。
【0034】
経路保持部材25は、図3に示すように屈曲部20の外側曲率形成部分21の曲げ形状を保持し(維持し)、これによってワイヤハーネス9の経路保持をするための部材であって、伸び縮みせず可撓性を有する平板状部材23(図4(a)参照)を長手方向断面が略U字状(図4(b)の上図参照)となるように撓ませることによって形成される。長手方向断面については略U字状に限定されるものではなく、外側曲率形成部分21の曲げ形状に対応する形状であればよい。
撓ませ方については、平板状部材23の長手方向両端に所定の圧力をかけて撓ませる。この経路保持部材25は外側曲率形成部分21に添え木としてあてがわれる。
【0035】
なお、平板状部材23は、材料が伸び縮みせず可撓性を有する金属である場合には押出し金型(図示せず)を用いた押出し成形によって均一の厚みをもつように形成される。
また、平板状部材23の材料は伸び縮みせず可撓性を有する樹脂であってもよい。この場合には、射出成型によって均一の厚みをもつように形成される。
【0036】
経路保持部材26は、屈曲部20の内側曲率形成部分22の曲げ形状を保持し、これによってワイヤハーネス9の経路保持をするための部材であって、可撓性を有する平板状部材23を長手方向断面が略U字状(図4(b)の下図参照)となるように撓ませることによって形成される。この経路保持部材26は内側曲率形成部分22に添え木としてあてがわれる。撓ませ方については、上記と同様なので説明を省略する。
【0037】
なお、本実施の形態では、2つの経路保持部材25および26をそれぞれ外側曲率形成部分21および内側曲率形成部分22にあてがった構成としているが、経路保持部材25および26のいずれか一方のみを曲率変形部分にあてがうような構成であっても後述する効果を得ることができる。
【0038】
コルゲートチューブ16に曲げを施した後に外側曲率形成部分21および内側曲率形成部分22にそれぞれあてがわれた経路保持部材25および26を覆うようにコルゲートチューブ16の長手方向に沿ってテープ17が巻きつけられる(図5参照)。なお、テープ17の片面には接着剤が施されている。テープ17を屈曲部20全体に巻きつけることにより、経路保持部材25および26がそれぞれ外側曲率形成部分21および内側曲率形成部分22の表面に固定されるため、コルゲートチューブ16の曲げ形状を保持することができる。
【0039】
なお、経路保持部材25および26は、テープ17をコルゲートチューブ16に接着させるため、経路保持部材25および26の幅d1がコルゲートチューブ16の直径d2よりも短くなるように形成する必要がある(図9(a)参照)。である。
【0040】
また、テープ17を屈曲部20へ巻きつける方法として、例えば、コルゲートチューブ16の周方向に一周巻きつけるごとに前回巻きつけたテープ17の一部を重ねて巻きつけていく、いわゆるハーフラッピング(重ね巻き)を行っている(図6(b)の拡大図参照)。
【0041】
以下に、屈曲部20の曲げ形状を保持する原理について図6を参照して説明する。
【0042】
コルゲートチューブ16に曲げを施す前の状態(図6(a)参照)においては、コルゲートチューブ16に何も力が加わっていないので、上側の山部33とこれに隣接する山部33との間隔(ピッチA1)と、下側の山部31とこれに隣接する山部31との間隔(ピッチA1)は等しい。
【0043】
コルゲートチューブ16に曲げを施すと、コルゲートチューブ16の外側曲率形成部分21における山部33とこれに隣接する山部33との間隔(ピッチA2)はピッチA1よりも大きくなる。一方、コルゲートチューブ16の内側曲率形成部分22における山部31とこれに隣接する山部31との間隔(ピッチA3)はピッチA1よりも小さくなる。
【0044】
ここで、例えば、コルゲートチューブ16に人の手で曲げを施した後に手を放すと、コルゲートチューブ16には曲げを施す前の状態に戻ろうとする力が働き、コルゲートチューブ16は図5(a)に示した元の状態に戻ってしまう。すなわち、ワイヤハーネス9が直線形状に戻ってしまい、曲げ形状が保持されない。
【0045】
そこで、本発明では、経路保持部材25および26をそれぞれ外側曲率形成部分21および内側曲率形成部分22にあてがった状態で上記したようにコルゲートチューブ16の長手方向に沿ってテープ17を巻きつけると、コルゲートチューブ16の外側曲率形成部分21における山部33とこれに隣接する山部33との間隔(ピッチA2)が保持される。一方、コルゲートチューブ16の内側曲率形成部分22における山部31とこれに隣接する山部31との間隔(ピッチA3)も保持される。
【0046】
上記したように、外側曲率形成部分21における幅A2は幅A1に戻ることはなく、また、内側曲率形成部分22における幅A3も幅A1に戻ることはない。
このため、外側曲率形成部分21において互いに隣接配置された山部33、33の間隔と内側曲率形成部分22において互いに隣接配置された山部31、31の間隔を一定に保持することができる。したがって、コルゲートチューブ16の屈曲部20の屈曲状態の保持(経路保持)を行うことができる。
【0047】
以下に、ワイヤハーネス9の構造の変形例について図7〜図9を参照して説明する。なお、上記した一例と同一の構成部材については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
なお、図7〜図9においてワイヤハーネス9、コルゲートチューブ16、屈曲部20、外側曲率形成部分21、内側曲率形成部分22については上記した一例と同様の構成である。
【0049】
ここで、図7は、ワイヤハーネスを屈曲させた後に屈曲部に経路保持部材があてがわれた状態の変形例を示した外観斜視図である。図8は、ワイヤハーネスの屈曲部にテープが巻きつけられた状態の変形例を示した外観斜視図である。図9(a)は屈曲部にテープが巻きつけられた上記一例に係るワイヤハーネスの幅方向断面図であり、(b)は屈曲部にテープが巻きつけられた変形例に係るワイヤハーネスの幅方向断面図である。
【0050】
図7において、経路保持部材35は、屈曲部20の曲げ形状を保持し、これによってワイヤハーネス9の経路保持をするための部材であって、可撓性を有する平板状部材23を長手方向断面および幅方向断面が略U字状(図4(c)の上図参照)となるように撓ませることによって形成される。この経路保持部材35は外側曲率形成部分21に添え木としてあてがわれる。
【0051】
図7において、経路保持部材36は、屈曲部20の曲げ形状を保持し、これによってワイヤハーネス9の経路保持をするための部材であって、伸び縮みせず可撓性を有する平板状部材23を長手方向断面および幅方向断面が略U字状(図4(c)の下図参照)となるように撓ませることによって内側曲率形成部分22に添える木としてあてがわれる。なお、平板状部材23の材料については上記と同様であるので説明は省略する。
【0052】
また、本変形例では、2つの経路保持部材35および36をそれぞれ外側曲率形成部分21および内側曲率形成部分22にあてがった構成としているが、経路保持部材35および36のいずれか一方のみを曲率変形部分にあてがうような構成であっても後述する効果を得ることができる。
【0053】
コルゲートチューブ16に曲げを施した後に外側曲率形成部分21および内側曲率形成部分22にそれぞれあてがわれた経路保持部材35および36を覆うようにコルゲートチューブ16の長手方向に沿ってテープ17が巻きつけられる(図8参照)。
【0054】
なお、経路保持部材35および36は、テープ17をコルゲートチューブ16に接着させるため、経路保持部材35および36の幅d3がコルゲートチューブ16の直径d4よりも短くなるように形成する必要がある(図9(b)参照)。である。
【0055】
本変形例については、経路保持部材35、36が上記した一例に比べてさらに幅方向断面についても略U字状になるように成形このため、コルゲートチューブ16の屈曲部20の表面への密着性が向上するため屈曲状態の保持(経路保持)を確実に行うことができる。
【0056】
以下に、ワイヤハーネス9の構造の他の変形例について図10を参照して説明する。なお、上記した一例と同一の構成部材については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。経路保持部材45の形状が異なる以外は上記した一例と同様である。
【0057】
ここで、図10(a)は経路保持部材の他の変形例を示した外観斜視図であり、(b)はコルゲートチューブを屈曲させた後に経路保持部材を外側曲率形状部の谷部に嵌め込んだ状態においてテープが巻きつけられたときのワイヤハーネスの縦断面図であり、(c)はコルゲートチューブを屈曲させた後に経路保持部材を外側曲率形状部の谷部及び内側曲率形状部の谷部に嵌め込んだ状態においてテープが巻きつけられたときのワイヤハーネスの縦断面図である。
【0058】
図10(a)において、左側に示した経路保持部材45は外側曲率形状部21に固定するためのもので、右側に示した経路保持部材55は内側曲率形状部22に固定するためのものである。経路保持部材45,55の形状は略コの字状であり、経路保持部材45は基部46と腕部47a、47bで構成され、経路保持部材55は基部56と腕部57a、57bで構成されている。
なお、経路保持部材45の長さは、経路保持部材45を撓ませたときに腕部47a,47bの外側曲率形状部21の谷部34への嵌め込みが可能な長さである。経路保持部材55の長さは、経路保持部材55を撓ませたときに腕部57a,57bの内側曲率形状部22の谷部32への嵌め込みが可能な長さである。
また、経路保持部材45,55の材料は可撓性を有する金属または樹脂である。材料が金属である場合には押出し金型(図示せず)を用いた押出し成形によって均一の厚みをもつように形成され、材料が樹脂である場合には射出成型によって均一の厚みをもつように形成される。
【0059】
以下に、経路保持部材45を外側曲率形状部21の谷部34に嵌合させる場合について説明する。
図10(b)に示すように、コルゲートチューブ16を屈曲させた状態を保持したまま、経路保持部材45を撓ませて基部46を外側曲率形成部分21にあてがい、最後に腕部47a,47bをコルゲートチューブ16の外側曲率形成部分21の谷部34に嵌合させる。腕部47a,47bは谷部34に引っ掛かり経路保持部材45が外側曲率形成部分21に固定される。この後、経路保持部材45を外側曲率形成部分21に固定させた状態において経路保持部材45を覆うようにコルゲートチューブ16の屈曲部20にテープ17を巻きつける。テープ17の屈曲部20への巻きつけは、上記した一例の場合と同様に、ハーフラッピング(重ね巻き)により行う(図10(b)の拡大図参照)
【0060】
なお、図10(b)の例では、経路保持部材45の腕部47a,47bをコルゲートチューブ16の外側曲率形成部分21の谷部34に嵌合させているが、経路保持部材45を用いる代わりに経路保持部材55を用いて、その腕部57a,57bをコルゲートチューブ16の内側曲率形成部分22の谷部32に嵌合させるようにしてもよい。
【0061】
次に、経路保持部材45および55をそれぞれ外側曲率形状部21の谷部34および内側曲率形状部22の谷部32に嵌合させる場合について説明する。
図10(c)に示すように、コルゲートチューブ16を屈曲させた状態を保持したまま、経路保持部材45,55を撓ませて基部46および基部56をそれぞれ外側曲率形成部分21および内側曲率形成部分22にあてがい、最後に腕部47a,47bを外側曲率形成部分21の谷部34に嵌合させるとともに腕部57a,57bを内側曲率形成部分22の谷部32に嵌合させる。腕部47a,47bは谷部34に引っ掛かり経路保持部材45が外側曲率形成部分21に固定され、腕部57a,57bは谷部32に引っ掛かり経路保持部材55が内側曲率形成部分22に固定される。
【0062】
この後、経路保持部材45および55をそれぞれ外側曲率形成部分21および内側曲率形成部分22に固定させた状態において経路保持部材45,55を覆うようにコルゲートチューブ16の屈曲部20にテープ17を巻きつける。テープ17の屈曲部20への巻きつけは、上記同様にハーフラッピング(重ね巻き)により行う(図10(c)の拡大図参照)。
【0063】
本変形例によれば、簡易な構造である略コの字状の経路保持部材45および55をコルゲートチューブ16の谷部34,32に嵌合させた状態でテープ17を巻きつけて曲げ形状を保持しているので曲げ形状の保持を簡単な作業で行うことができる。
【0064】
以上に説明したように、本発明によれば、導電路の外装部材として可撓性を有するコルゲートチューブを単に備えるだけでなく、コルゲートチューブを所望の形状に保持することが可能であり、また、プロテクタを不要にすることも可能な、低コスト、かつ、汎用性のあるワイヤハーネスを提供することができる。
【0065】
尚、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1…ハイブリッド自動車
2…エンジン
3…モータユニット
4…インバータユニット
5…バッテリー
6…エンジンルーム
7…自動車後部
8…高圧ワイヤハーネス
9…ワイヤハーネス
10…中間部
11…車体床下
12…ジャンクションブロック
13…後端
14…前端
16…コルゲートチューブ(外装部材)
17…テープ
18…電線(導電路)
19…電磁シールド部材
20…屈曲部
21…外側曲率形成部分
22…内側曲率形成部分
23…平板状部材
25…経路保持部材(外側)
26…経路保持部材(内側)
35…経路保持部材(外側)
36…経路保持部材(内側)
45…経路保持部材(外側)
55…経路保持部材(内側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数の導電路を覆うための外装部材を備え、
前記外装部材を曲げて形成される屈曲部の曲げ形状を保持しこれにより経路を保持する部材として、伸び縮みせず可撓性を有しかつ前記外装部材の曲げ形状に成型された平板状の経路保持部材を少なくとも一つ用い、
前記経路保持部材を前記屈曲部にあてがった状態で少なくとも前記経路保持部材を覆うようにテープが巻きつけられている
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記経路保持部材の幅は前記外装部材の幅よりも短い
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−27169(P2013−27169A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160138(P2011−160138)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】