説明

ワイヤボンディングの接合状態確認方法

【課題】検査精度を向上させて信頼性の高い検査を行うことができるワイヤボンディングの接合状態確認方法を提供すること。
【解決手段】ワイヤボンディング工程を行う前に、空打ちボンディングワイヤ5の両端を半導体素子2の外部のリード部3で接合させる空打ち工程と、空打ち工程によってボンディングワイヤ4のツールとボンディングワイヤ4の位置を合わせる位置調整工程と、空打ち工程により形成した空打ちボンディングワイヤ5を引き剥がすようにして接合強度を測定する接合強度検査工程を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の端子を接続するワイヤボンディングの接合状態確認方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディングを実施した接合部の外見状態、つまり寸法や寸法の比から接合状態を検査している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−130234号公報(第2−9頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来にあっては、外見状態から接合状態を精度よく検査することは難しいものであり要求される検査に対して充分なものではなかった。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、検査精度を向上させて信頼性の高い検査を行うことができるワイヤボンディングの接合状態確認方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、半導体素子の端子と外部の端子を電気的に接続するワイヤボンディングにおいて、ワイヤボンディングを行う前に、ボンディングワイヤの両端を前記半導体素子の外部に接合させる空打ち工程と、前記空打ち工程によってワイヤボンディングの接合冶具と前記ボンディングワイヤの位置を合わせる位置調整工程と、前記空打ち工程により形成したボンディングワイヤを引き剥がすようにして接合強度を測定する接合強度検査工程と、を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、検査精度を向上させて信頼性の高い検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のワイヤボンディングの接合状態確認方法を実現する実施の形態を、請求項1,2,3に係る発明に対応する実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のワイヤボンディングの接合状態確認方法を実施するワイヤボンディング工程の説明図である。
実施例1では、図1に示すように回路基板1に半導体素子2を実装する。なお、回路基板1はリードフレームであってもよい。
この回路基板1には、半導体素子2がダイボンディング工程等により固定されている。また、回路基板1には、半導体素子2との電気的接続を行う端子を設けたリード部3を設ける。
そして、半導体素子2の上面に設けられる外部接続のための端子部分21と、リード部3の端子31とをワイヤボンディングする構成である。
【0009】
作用を説明する。
[空打ち工程]
図2は実施例1のワイヤボンディングの接合状態確認方法を実施する空打ち工程の説明図である。
実施例1では、半導体素子2の端子部分21と、リード部3の端子31とのワイヤボンディングを行う前に、空打ちを行う。
【0010】
ワイヤボンディングを実施すると、ボンディングワイヤ4は、ツール6(接合冶具)の中心、つまりツール6のV溝に対し位置ずれを起こす(図2(a)参照)。
この位置ずれを修正するために、回路基板1のリード部3の製品の品質上影響の無い位置にワイヤボンディングの空打ちを行う。これにより調整を行って、ボンディングワイヤ4をツール6の中心に位置させ、空打ち工程を終了する(図2(b)参照)。
【0011】
実施例1では、この空打ち工程により設けた、空打ちボンディングワイヤ5により接合強度検査を行う。
図3は実施例1のワイヤボンディングの接合状態確認方法を実施する空打ち工程で空打ちしたボンディングワイヤの説明図である。
リード部3の製品の品質上影響の無い位置の空打ちボンディングワイヤ5は、以下のように空打ちによって形成する。
【0012】
図3に示すように空打ちボンディングワイヤ5のリード部3との一方の接合部を第1接合部52とする。そして、リード部3との他方の接合部を第2接合部53とする。
そして、空打ちボンディングワイヤ5は、第1接合部52と第2接合部53の間に頂点を持つループ形状となるようにする。
さらに、このループ形状は、第1接合部52、第2接合部53の両方の接合部強度に重点を置いた場合のループ形状は、接合間寸法、つまり第1接合部52と第2接合部53との距離の1/2程度にループ頂上51を設けるようにする。
【0013】
また、第1接合部52の接合強度に重点を置く場合は、接合間寸法の1/2から第1接合部52の側にループ頂上51を設ける。
また、第2接合部53の接合強度に重点を置く場合は、接合間寸法の1/2から第2接合部53の側にループ頂上51を設ける。
まお、ループ頂上51の接合位置からの高さは、接合強度計測冶具が入る高さにする。
【0014】
[接合強度検査]
実施例1では、ワイヤボンディング工程前で空打ち工程後に、接合強度の検査を行う。接合強度の検査は、接合強度計測冶具のフックを空打ちボンディングワイヤ5に引っ掛けるようにし、上方に引き上げることにより接合強度を計測する。
接合強度の計測は、引張り荷重を計測しつつ、実際に空打ちボンディングワイヤ5を引き剥がして強度を計測する。
【0015】
この空打ちボンディングワイヤ5は、ツール6に対して位置ずれを起こした状態でボンディング(接合動作)しているため、接合強度は、ずれを調整後にワイヤボンディング工程の実際のものより弱くなる。しかし、実際に行われる測定の空打ちボンディングワイヤ5の接合強度から、ワイヤボンディング工程の実際の接合強度が精度よく推定される。
【0016】
例えば、予め位置ずれにより強度低下のデータを準備しておくなどである。
また、この計測は、ワイヤボンディング工程前に実際に行われることより信頼性の高い計測となる。
また、図3に示すように、第1接合部52や第2接合部53に測定の重点を置く場合に対応して、空打ちボンディングワイヤ5のループ頂上51の位置を変化させているため、計測したい接合部の接合強度を確実に計測する。
また、ループ頂上51の形状は、空打ちのため計測冶具のフックに合わせた形状にできるため、計測が容易で安定したものになる。
【0017】
[ワイヤボンディング工程]
空打ち工程及び接合強度検査後のワイヤボンディング工程では、半導体素子2の端子部分21と、リード部3の端子31とのワイヤボンディングを行う。
その際には、前工程の空打ち工程により、ツール6に対してボンディングワイヤが位置ずれを起こしていない状態となる。また、前工程の接合強度検査により良好なボンディング条件であることが確認されている。
よって、良好にワイヤボンディングが行われる。
【0018】
次に、効果を説明する。
実施例1のワイヤボンディングの接合状態確認方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0019】
(1)半導体素子2の端子部分21とリード部3の端子31を電気的に接続するワイヤボンディング工程において、ワイヤボンディング工程を行う前に、空打ちボンディングワイヤ5の両端を半導体素子2の外部のリード部3で接合させる空打ち工程と、空打ち工程によってボンディングワイヤ4のツール6とボンディングワイヤ4の位置を合わせる位置調整工程と、空打ち工程により形成した空打ちボンディングワイヤ5を引き剥がすようにして接合強度を測定する接合強度検査工程を行うため、検査精度を向上させて信頼性の高い検査を行うことができる。
【0020】
(2)上記(1)において、空打ち工程により形成する空打ちボンディングワイヤ5は、接合強度を測定する際に冶具が係合するループ頂上51を有するループ形状にしたため、接合強度の計測が容易で確実に行われるようにして、検査精度を向上させて信頼性の高い検査を行うことができる。
【0021】
(3)上記(2)において、空打ち工程により形成する空打ちボンディングワイヤ5のループ頂上51は、空打ち工程の空打ちボンディングワイヤ5の両端の第1接合部52及び第2接合部53のうち、接合強度検査工程で重視される側に近い位置に設けられるようにしたため、接合強度検査工程で重視する側の接合強度が確実に計測されるようにして、検査精度を向上させて信頼性の高い検査を行うことができる。
【0022】
以上、本発明のワイヤボンディングの接合状態確認方法を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0023】
実施例1の半導体素子及び回路基板は、例えばICパッケージを構成するものでもよい。
リード部3は、他の半導体素子であってもよい。その場合は、さらに別の影響のない回路基板上等に空打ちを行うようにすればよい。
空打ちボンディングワイヤ5は、1箇所に設けてもでも複数個所に設けてもよく、検査の要求に応じて決めればよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1のワイヤボンディングの接合状態確認方法を実施するワイヤボンディング工程の説明図である。
【図2】実施例1のワイヤボンディングの接合状態確認方法を実施する空打ち工程の説明図である。
【図3】実施例1のワイヤボンディングの接合状態確認方法を実施する空打ち工程で空打ちしたボンディングワイヤの説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 回路基板
2 半導体素子
21 端子部分
3 リード部
31 端子
4 ボンディングワイヤ
5 空打ちボンディングワイヤ
51 ループ頂上
52 第1接合部
53 第2接合部
6 ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子の端子と外部の端子を電気的に接続するワイヤボンディングにおいて、
ワイヤボンディングを行う前に、
ボンディングワイヤの両端を前記半導体素子の外部に接合させる空打ち工程と、
前記空打ち工程によってワイヤボンディングの接合冶具と前記ボンディングワイヤの位置を合わせる位置調整工程と、
前記空打ち工程により形成したボンディングワイヤを引き剥がすようにして接合強度を測定する接合強度検査工程と、
を行うことを特徴とするワイヤボンディングの接合状態確認方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤボンディングの接合状態確認方法において、
前記空打ち工程により形成するボンディングワイヤは、接合強度を測定する際に冶具が係合する頂点部分を有するループ形状にした、
ことを特徴とするワイヤボンディングの接合状態確認方法。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤボンディングの接合状態確認方法において、
前記空打ち工程により形成するボンディングワイヤのループ形状の頂点部分は、前記空打ち工程のボンディングワイヤの両端の接合部分のうち、前記接合強度検査工程で重視される側に近い位置に設けられるようにした、
ことを特徴とするワイヤボンディングの接合状態確認方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate