ワイヤボンディング方法
【課題】ワイヤボンディング方法において、プラズマクリーニングや溶剤による洗浄を行うことなく、ワイヤ接合の直前に被接合部材の清浄な面を露出させる。
【解決手段】被接合部材42にボンディングワイヤ50を接合する直前に、当該被接合部材42の表面をダミーツール200で擦る。このダミーツール200としては、ダミーツール200の擦りにより被接合部材42の表面に付着している汚れが擦り取られるようなセラミック、樹脂または金属などの材料よりなるものを用いる。
【解決手段】被接合部材42にボンディングワイヤ50を接合する直前に、当該被接合部材42の表面をダミーツール200で擦る。このダミーツール200としては、ダミーツール200の擦りにより被接合部材42の表面に付着している汚れが擦り取られるようなセラミック、樹脂または金属などの材料よりなるものを用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置を用いて被接合部材にワイヤを接合するワイヤボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のワイヤボンディング方法は、一般に、ワイヤボンディング装置に取り付けられたボンディングツールによって被接合部材にワイヤを押し当てた状態で、ボンディングツールによってワイヤを振動させることにより、ワイヤを被接合部材に接合するものである。
【0003】
具体的に、このようなワイヤボンディング方法としては、ワイヤの先端部分に放電によってボールを形成するボールボンディング法や、ウェッジを用いて常温で行うウェッジボンディング法などが挙げられる。
【0004】
ここで、従来では、ワイヤボンディングを行う被接合部材が、接合性の悪い部材である場合、特許文献1などに記載されているように、ボンディングパッドのボンディングワイヤが接続される接続領域に凹部を形成することにより、ボンディングパッドとボンディングワイヤとの密着性を良好にするようにしていた。
【特許文献1】特開2003−243443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワイヤボンディングを行う被接合部材が、たとえば下地金属の拡散や環境からの汚染等により、ボンディング性が阻害されている場合、上記特許文献1のようなボンディングパッドのボンディングワイヤが接続される接続領域に凹部を形成する方法であっても、ボンディングができないという不具合が発生する。
【0006】
また、従来のワイヤボンディング方法においては、ワイヤの振動により、被接合部材の表面に形成されている酸化膜や異物などの汚れを除去することが考えられる。図11は、従来のボンディング方法に基づいて、汚れ除去を行うようにした本発明者の試作方法を示す工程図である。
【0007】
図11に示されるように、ワイヤ50に荷重を加えて被接合部材42にワイヤ50を押し当て(図11(a)参照)、この状態で、図示しないボンディングツールによってワイヤ50を振動させることにより、ワイヤ50を変形させながら、被接合部材42に接合する(図11(b)〜(e)参照)。
【0008】
このとき、被接合部材42の表面上には、図11中に太線で示すような汚れKが付着している。そして、図11に示されるように、ワイヤ50の変形によって被接合部材42上の汚れKが除去され、被接合部材42の清浄な面が現れ、ワイヤ50との接合が開始される。しかし、汚れKとしての酸化膜などが厚いものであったり、硬いものである場合には、ワイヤ50の変形力だけでは、除去できない。
【0009】
そこで、このような汚染状態にある被接合部材を清浄化するには、プラズマクリーニングなどのドライ方式、溶剤等の洗浄液によるウェット方式が考えられるが、これらの方法には、以下のような問題点がある。
【0010】
プラズマクリーニングを、ICチップが搭載される前に行う場合、ICチップの搭載およびその他の部品の搭載のために、はんだ接続を用いると、プラズマクリーニングにより清浄化した被接合部材としてのボンディングランド上に、その下地金属であるCuなどの金属が拡散により表面に析出し、ボンディング性が阻害される。
【0011】
また、ICチップが搭載された後に行う場合、IC素子がプラズマ状態にさらされることになり、素子の特性が変動または、破壊される可能性がある。さらに、溶剤等のウェット方式の場合、洗浄液中に含まれる残留物が被接合部材上に付着し、ボンディング性を阻害する場合がある。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ワイヤボンディング方法において、プラズマクリーニングや溶剤による洗浄を行うことなく、ワイヤ接合の直前に被接合部材の清浄な面を露出させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、被接合部材(20、41、42)にワイヤ(50)を接合する前に、被接合部材(20、41、42)の表面を固体材料よりなるダミーツール(200)で擦ることを特徴とする。
【0014】
それによれば、被接合部材(20、41、42)にワイヤ(50)を接合する前に、被接合部材(20、41、42)の表面をダミーツール(200)で擦ることにより、被接合部材(20、41、42)の表面に付着している汚れが機械的に除去されるため、プラズマクリーニングや溶剤による洗浄を行うことなく、ワイヤ接合の直前に被接合部材(20、41、42)の清浄な面を露出させることができる。
【0015】
ここで、被接合部材(42)が複数個配列されている場合、ダミーツール(200)としては、複数個の被接合部材(42)の配列パターンに対応した形状を有し、複数個の被接合部材(42)に同時に接触して擦るようになっているものを採用できる(後述の図5、図6参照)。
【0016】
それによれば、ダミーツール(200)を複数個の被接合部材(42)に同時に接触させて擦ることができるから、複数個の被接合部材(42)の汚れ除去を一括して行うことができる。
【0017】
また、ダミーツール(200)によって被接合部材(20、41、42)を擦った後、ダミーツール(200)における被接合部材(20、41、42)を擦った部位を、被接合部材(20、41、42)以外の部材(400、500)に擦りつけるようにしてもよい(後述の図7、図8参照)。
【0018】
それによれば、ダミーツール(200)における被接合部材(20、41、42)を擦った部位を、被接合部材(20、41、42)以外の部材(400、500)に擦りつけることにより、ダミーツール(200)に付着した汚れを擦り落とすことができるから、ダミーツール(200)の汚れ除去性能を低下させにくくできる。
【0019】
また、被接合部材(20、41、42)のうちダミーツール(200)によって擦られる部位に対して、吸引もしくは吹き付けとなるような気流を与えながら、ダミーツール(200)によって被接合部材(20、41、42)を擦るようにしてもよい(後述の図9参照)。
【0020】
それによれば、被接合部材(20、41、42)の表面をダミーツール(200)で擦るときに、当該擦りにより除去された汚れが、吸引もしくは吹き飛ばされるため、当該汚れが、再び、清浄化された被接合部材(20、41、42)の表面に付着するのを防止することが可能となり、好ましい。
【0021】
また、ダミーツール(200)としては、基部(201)と基部(201)に対して弾性部材(203)により接続された複数の分割部(202)とを備えるとともに、個々の分割部(202)にて被接合部材(20、41、42)の表面を擦るものであって、さらに、弾性部材(203)の弾性力によって、個々の分割部(202)が被接合部材(20、41、42)の表面の凹凸に応じて弾性的に変位するものを採用してもよい(後述の図10参照)。
【0022】
それによれば、被接合部材(20、41、42)が、反りや凹凸を有する基板などである場合に、ダミーツール(200)は、当該反りや凹凸を吸収しながら被接合部材(20、41、42)の表面との接触を確保できる。
【0023】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置S1の概略断面図である。この電子装置S1において、基板10は、セラミック基板、プリント基板、リードフレーム、ヒートシンクなどであり、この基板10の一面には、被接合部材としてのICチップ20が搭載されている。そして、ICチップ20は、Agペースト、はんだ、導電性接着剤などのダイボンド材30により基板10に接合されている。
【0026】
このICチップ20は、シリコン半導体などにトランジスタ素子などによりIC回路を形成してなる一般的なものである。また、ICチップ20の近傍には、被接合部材としての導体部材41およびパッド42が設けられている。
【0027】
導体部材41は、たとえば基板10とは別体のリードフレームやバスバーなどよりなる。この導体部材41は、銅系金属や鉄系金属などよりなる。また、パッド42は、基板10の一面上に設けられAuメッキやCuメッキなどよりなるパッドである。つまり、ICチップ20の接合相手としての被接合部材41、42は、基板10と別体のものであってもよいし、一体のものでもよい。
【0028】
そして、ICチップ20と導体部材41、および、ICチップ20とパッド42とは、それぞれボンディングワイヤ50により結線されており、このワイヤ50を介して互いに電気的に接続されている。
【0029】
このボンディングワイヤ50は、ボールボンディング法やウェッジボンディング法などの通常のワイヤボンディングにより形成されたものであり、たとえばAuやCuなどよりなる。ここでは、ワイヤ50は、後述するようにボールボンディング法により形成されたものである。
【0030】
次に、本実施形態の電子装置S1におけるボンディングワイヤ50の形成方法すなわちワイヤボンディング方法について、図2を参照して述べる。図2は、本実施形態に係るワイヤボンディング方法を示す工程図であり、ワイヤ50を被接合部材であるICチップ20およびパッド42に接合する場合を示している。
【0031】
本実施形態では、ICチップ20を1次ボンディング側、パッド42を2次ボンディング側として、これら両接合部材20、42がボールボンディング法によりワイヤボンドされている。なお、ICチップ20と導体部材41との接合方法も図2と同様であり、この場合、通常、ICチップ20を1次ボンディング側、導体部材41を2次ボンディング側として、ボールボンディング法によりワイヤボンドする。
【0032】
なお、本実施形態におけるワイヤボンディング装置は、一般的なボールボンディングを行うことのできるボールボンディング装置であり、超音波により振動する図示しない振動子に対して図2に示されるボンディングツール100を取り付けたものである。
【0033】
このボンディングツール100は、その内孔にワイヤ50を挿入して当該ワイヤ50を保持するとともに、先端部にワイヤ50を繰り出す一般的なものとして構成されたものであり、いわゆるキャピラリと呼ばれるものである。
【0034】
本ワイヤボンディング方法は、まず、図2(a)に示されるクリーニング工程を行った後、図2(b)、(c)、(d)に示されるワイヤ接合工程を行う。先に、図2(b)〜(d)を参照して、ワイヤ接合工程を説明する。
【0035】
まず、ボンディングツール100の内部に挿入されたワイヤ50において、ボンディングツール100の先端部から導出された部分の先端に、放電加工によって球形状をなすボール(プレボール)51を形成する。そして、図2(b)に示されるように、このプレボール51を、2次ボンディング側であるパッド42に押し当て接合する。
【0036】
その後、プレボール51とワイヤ50とを切り離し、再び、ワイヤ50の先端に、放電加工によって球形状をなすボール(イニシャルボール)52を形成する。そして、図2(c)に示されるように、このイニシャルボール52を、1次ボンディング側であるICチップ20に押し当てて、超音波振動を加えながら接合する。
【0037】
こうして、1次ボンディングを行った後、図2(d)に示されるように、ワイヤ50を、ボンディングツール100の先端部から繰り出してパッド42まで引き回す。次に、パッド42まで引き回されたワイヤ50を、ボンディングツール100の先端部にてパッド42上のプレボール51に押しつけて、超音波振動を加えながら接合し、2次ボンディングを行う。
【0038】
その後は、ボンディングツール100をパッド42の上方へ移動させ、パッド42からワイヤ50を切り離す。こうして、本ワイヤボンディング方法におけるワイヤ接合工程の1サイクルが完了する。
【0039】
なお、このワイヤ50を切り離したとき、ボンディングツール100の先端部からは、ワイヤ50が突出して残るが、この部分に再び上記同様に放電加工を行い、上記プレボール51を形成する。それにより、ワイヤ接合工程の次のサイクルに移る。ここで、プレボール51は、2次ボンディングにおけるワイヤ50の接合性を向上させるために設けられるものである。
【0040】
このように、本ワイヤボンディング方法は、ボンディングツール100によって被接合部材20、41、42にワイヤ50を押し当てた状態で、ボンディングツール100によってワイヤ50を振動させることにより、ワイヤ50を被接合部材20、41、42に接合するようにしたものである。
【0041】
そして、本実施形態では、このような一連のサイクルのボールボンディングのサイクルを有するワイヤボンディングにおいて、図2(b)〜(d)に示されるワイヤ接合を行う前に、図2(a)に示されるように、被接合部材であるICチップ20や導体部材41およびパッド42の表面を清浄化するクリーニング工程を実行するものである。
【0042】
このクリーニング工程は、被接合部材20、41、42にワイヤ50を接合する直前に、被接合部材20、41、42の表面をダミーツール200で擦ることにより、これら被接合部材の表面に付着している汚れを除去するものである。図2(a)では、パッド42の表面をクリーニングする場合を示しているが、ICチップ20および導体部材41の表面をクリーニングする場合も、同様である。
【0043】
クリーニング工程を行う時期は、上記ワイヤ接合工程におけるプレボール51の形成の直前に行う。具体的に、パッド42をクリーニングするにあたって、パッド42が複数個ある場合には、複数個のパッド42のすべてについてクリーニングを行った後、上記図2(b)〜(d)に示されるワイヤ接合を行う。または、個々のパッド42毎に、クリーニング工程を行った後に上記図2(b)〜(d)に示されるワイヤ接合を行う、というサイクルをくり返してもよい。
【0044】
また、ICチップ20や導体部材41をクリーニングする場合も、上記図2(b)〜(d)に示されるワイヤ接合を行う前に、ICチップ20の表面、具体的にはICチップ20上のアルミなどの電極をクリーニングしたり、導体部材41の表面をクリーニングする。なお、当該クリーニングは、ICチップ20、導体部材41およびパッド42のすべてについて行ってもよいが、これらすべてではなく、特に汚れが顕著になる部位のみに行ってもよい。
【0045】
クリーニング工程で用いるダミーツール200としては、固体であればよいが、当該ダミーツール200の擦りにより被接合部材20、41、42の表面に付着している汚れが擦り取られるような材料よりなるものであればよい。つまり、ダミーツール200は、セラミック、樹脂、金属などから適宜選択できる。
【0046】
具体的に、ダミーツール200の材質は、被接合部材20、41、42を過度に削り過ぎないようにする場合には、ボンディングツール100と同様のセラミック素材を用いればよいし、より削り過ぎないようにするには、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂材料を用いればよい。逆に、被接合部材表面の汚れが硬くて厚い酸化膜などである場合には、ステンレスなどの酸化、腐食しにくい金属材料を用いてもよい。
【0047】
また、本実施形態のダミーツール200、キャピラリ形状をなす上記ボンディングツール100において、実質的に内孔の無い形状に相当するものである。また、ここでは、図2(a)に示されるように、ダミーツール200の先端面は、平坦面であり、この先端面にて被接合部材であるICチップ20や導体部材41、パッド42の表面を擦るようになっている。
【0048】
なお、ダミーツール200の先端面すなわち上記擦りを行う面のサイズは、相手側の被接合部材20、41、42の大きさに応じて適宜設定されるが、図2(a)では、1個のパッド42に対応した大きさとなっている。また、ダミーツール200の先端面の形状は、円形でも角形でもよく、さらには、被接合部材20、41、42の平面形状と同一の形状などであってもよい。
【0049】
そして、このダミーツール200は、ダミーツール駆動装置300に取り付けられ、この駆動装置300によって、上記被接合部材20、41、42の表面を擦るように駆動されるものである。この駆動装置300は、ボンディングツール100を駆動する上記ワイヤボンディング装置またはこれと同様の機能を有する装置である。
【0050】
つまり、駆動装置300は、上記ボンディングツール100に対するのと同様に、ダミーツール200を所望の位置に移動させる機能、および、被接合部材20、41、42に対して荷重を加えながらダミーツール200を振動させる機能を有するものであればよい。ここでは、ダミーツール200の擦る方向は、図2(a)に矢印に示されるように、直線的な往復運動である。
【0051】
そして、本実施形態においては、上記図2(a)に示されるように、駆動装置300によってダミーツール200の先端面をパッド42の表面に押し当て、荷重を加えながらダミーツール200を振動させる。これにより、パッド42表面の酸化膜や異物などの汚れが、擦り取られ、清浄な面が現れる。このときの荷重や振動の大きさについては、被接合部材20、41、42に損傷を与えないようなレベルとする。
【0052】
このクリーニング工程は、上述したように、パッド42が複数個ある場合には、各パッド42についてそれぞれ行う。また、必要に応じて、ICチップ20の表面や導体部材41の表面についても行う。
【0053】
このクリーニング工程からワイヤ接合工程への移行は、ダミーツール200が位置する場所からボンディングツール100が位置する場所へと、ワークを搬送してもよいし、ワークは固定しておき、ダミーツール100およびボンディングツール200をワークの方へ移動させるようにしてもよい。
【0054】
なお、駆動装置300が、ボンディングツール100が取り付けられるワイヤボンディング装置とは異なる装置であれば、問題ないが、ボンディングツール100と同一のワイヤボンディング装置である場合には、次のようにする。
【0055】
すなわち、クリーニング工程では、ダミーツール200を当該ワイヤボンディング装置に取り付けてクリーニング工程を行い、その後、ダミーツール200を取り外し、ボンディングツール100を当該ワイヤボンディング装置に取り付けて、ワイヤ接合工程を行うようにする。
【0056】
そして、本ワイヤボンディング方法では、このクリーニング工程を行った後、図2(b)〜(d)に示されるワイヤ接合工程を行う。それにより、ICチップ20と導体部材41との間、および、ICチップ20とパッド42との間が、ボンディングワイヤ50により接続され、本電子装置S1ができあがる。
【0057】
以上のように、本実施形態では、被接合部材20、41、42にワイヤ50を接合する直前に、当該被接合部材20、41、42の表面をダミーツール200で擦るとともに、当該ダミーツール200として、当該ダミーツール200の擦りにより被接合部材20、41、42の表面に付着している汚れが擦り取られるような材料よりなるものを用いるクリーニング工程を行うようにしている。
【0058】
このクリーニング工程によって、被接合部材20、41、42の表面に付着している汚れが機械的に除去されるため、プラズマクリーニングや溶剤による洗浄を行うことなく、ワイヤ接合の直前に被接合部材20、41、42の清浄な面を露出させることができる。その結果、当該清浄な面にワイヤ50が接合され、接合信頼性の高いボンディングが可能となる。
【0059】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、ダミーツール200の先端面は平坦面であったが、上記したような擦りによる被接合部材20、41、42表面の清浄化がなされるならば、平坦面に限定されない。つまり、ダミーツール200の先端形状は、被接合部材や除去対象物に合わせて適宜変更してもよい。
【0060】
図3は、本発明の第2実施形態に係るダミーツール200、すなわち、先端部を平坦面以外の構成としたダミーツール200の概略断面形状を示す図である。図3(a)に示されるように、ダミーツール200の先端部を凹凸形状としてもよいし、図3(b)に示されるように、当該先端部を刷毛状の形状としてもよい。
【0061】
(第3実施形態)
上記各実施形態では、ダミーツール200によって被接合部材20、41、42を擦る方向は、直線的な往復運動であったが、上記したような擦りによる被接合部材20、41、42表面の清浄化がなされるならば、この往復運動に限定されない。
【0062】
図4は、本発明の第3実施形態に係るダミーツール200の概略断面形状を示す図である。たとえば、図4に示されるように、ダミーツール200の上記擦る方向は、ダミーツール200をその軸周りに回転させる方向であってもよい。そして、この場合のダミーツール200としては、その先端部が平坦面(図4(a)参照)、凹凸形状(図4(b)参照)、刷毛状(図4(c)参照)であってもよい。
【0063】
(第4実施形態)
上記図1に示される電子装置S1において、たとえばICチップ20とパッド42とのワイヤボンディング数が少ない場合は、上記各実施形態のように、1個のパッド42毎にクリーニングを行う方法で対応可能であるが、ワイヤボンディング数が多い場合は、1個ずつ行う方法では非常に時間がかかる。本発明の第4実施形態では、これを回避する方法を紹介するものである。
【0064】
図5は、本発明の第4実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。基板10上においてICチップ20の周りに、被接合部材としてのパッド42が複数個配列されて設けられている。ここでは、矩形板状のICチップ20の各辺において、当該各辺の外側にパッド42が直線状に配列しており、複数個のパッド42全体として矩形枠状の配列となっている。
【0065】
そして、本実施形態のダミーツール200は、複数個のパッド42に同時に接触できるように複数個のパッド42の配列パターンに対応した形状を有している。ここでは、ダミーツール200は、矩形枠状のパッド配列に対応した矩形枠状となっている。
【0066】
また、ダミーツール200の中空部には、ICチップ20が入り込むようになっており、クリーニング工程において、ダミーツール200とICチップ20との干渉が防止されるように構成されている。このようなダミーツール200は、上記同様に、セラミック、樹脂、金属などから選択された材料により構成される。
【0067】
それにより、本実施形態のクリーニング工程では、ダミーツール200を複数個のパッド42に同時に接触させて擦ることが可能となっている。そのため、複数個のパッド42の汚れ除去を一括して行うことができる。本実施形態では、1個のICチップ20に接続されるすべてのパッド42のクリーニングを一度に行える。このことは、結果的に、工程時間を短縮できるなど、作業の効率化に有利な効果を生む。
【0068】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。本実施形態も、上記第4実施形態と同様に、配列された複数個の被接合部材を同時に擦るダミーツール200を提供するものである。
【0069】
図6に示されるように、本実施形態においても、基板10上において矩形板状のICチップ20の周りに、被接合部材としてのパッド42が複数個配列され、複数個のパッド42全体として矩形枠状の配列となっている。
【0070】
そして、本実施形態のダミーツール200は、矩形枠状のパッド配列の1辺における直線状に配列された複数個のパッド42に対応した直線形状を有している。そして、ダミーツール200は、当該直線部分にて、直線状に配列されたパッド42のすべてに接触するようになっている。このダミーツール200も、上記同様に、セラミック、樹脂、金属などから選択された材料により構成される。
【0071】
このようなダミーツール200を用いた本実施形態のクリーニング工程では、ダミーツール200を、ICチップ20の1辺に沿って配列された複数個のパッド42に対して、同時に接触させて擦ることが可能となっている。そのため、当該複数個のパッド42の汚れ除去を一括して行うことができる。
【0072】
また、ICチップ20の1辺に沿った複数個のパッド42に対してクリーニングを行った後、これに直交する他辺に沿った複数個のパッド42に対してクリーニングを行う場合には、ダミーツール200を略90°回転させてから、クリーニングを行えばよい。こうして、本実施形態のクリーニング工程によっても、複数個のパッド42の汚れ除去を一括して行え、工程時間の短縮化など、作業の効率化に有利な効果を生む。
【0073】
ところで、上記第4実施形態に示したダミーツール200(上記図5参照)は、ICチップ20が1つの場合には有効であるが、ICチップ20が複数個、同一の基板10上に搭載されるような構成の場合には、それぞれのICチップ20のサイズに応じてダミーツール200を取り替えながらクリーニングを行う必要があり、非効率的である。その点、本実施形態では、1つのダミーツール200で済むという面で上記第4実施形態に比べて効率的である。
【0074】
なお、上記図5および上記図6では、複数個の配列された被接合部材として複数個のパッド42の例を示したが、これ以外にも、ICチップ20や導体部材41が複数個配列されたものである場合には、これらの配列パターンに対応したダミーツールを適用すればよいことはもちろんである。
【0075】
(第6実施形態)
上記各実施形態のいずれの場合についても、汚れ除去を行うにしたがって、ダミーツール200の先端には、被接合部材20、41、42から除去された汚れや削り取られた被接合部材20、41、42(たとえばAuめっき、Agめっきなど)が付着する。
【0076】
この付着物は、ダミーツール200による汚れ除去性能の低下を招いたり、逆に汚れの被接合部材20、41、42への転写を招くことになる。そこで、本実施形態では、一定量の汚れ除去を行った後に、ダミーツール200に付着した汚れを除去することで、上記問題を解消するものである。
【0077】
図7は、このダミーツール200の汚れ除去工程を示す工程図である。ダミーツール200に付着した汚れKを除去する装置は、モータなどで回転する回転軸401と、この回転軸401に取り付けられ回転軸401によって回転するベルト400と、ベルト400に付着した汚れKを掻き取る掻き取り部材402とを備えるベルト式のものである。
【0078】
この場合、ダミーツール200によって被接合部材20、41、42を擦った後、上記駆動装置300(上記図1参照)によって、ダミーツール200を、被接合部材以外の部材としてのベルト400まで移動させる。そして、ダミーツール200における被接合部材20、41、42を擦った部位、すなわちダミーツール200の先端部を、ベルト400に接触させ擦りつける。
【0079】
それにより、本実施形態では、ダミーツール200に付着した汚れKが、ベルト400によって擦り落とされる。そして、ベルト400に付着した汚れKは、掻き取り部材402によってベルト400から掻き取られる。そして、汚れKが除去されたダミーツール200により、再びクリーニング工程を行う。
【0080】
図8は、本実施形態のダミーツール200の汚れ除去工程のもう一つの例を示す工程図である。上記図7の例では、ダミーツール200に付着した汚れKを除去する装置は、ベルト式のものであったが、本例では、モータなどで回転する回転軸501と、この回転軸501に取り付けられ回転軸501によって回転する円板500と、円板500に付着した汚れKを掻き取る掻き取り部材502とを備える円板式のものである。
【0081】
この場合も、ダミーツール200によって被接合部材20、41、42を擦った後、ダミーツール200の先端部を、被接合部材以外の部材としての円板500に擦りつけることにより、汚れKをダミーツール200から擦り落とす。円板500に付着した汚れKは、掻き取り部材502によって円板500から掻き取られる。そして、汚れKが除去されたダミーツール200により、再びクリーニング工程を行う。
【0082】
このように、本実施形態によれば、ダミーツール200は、常時清浄化された状態でクリーニング工程に供されることになるため、ダミーツール200の汚れ除去性能の低下を防止するという効果が発揮される。また、本実施形態は、上記した各実施形態と組み合わせて実行することが可能である。
【0083】
(第7実施形態)
図9は、本発明の第7実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。図9では、被接合部材としてパッド42を示してあるが、被接合部材はICチップ20でも、導体部材42でもよい。本実施形態は、上記した各実施形態と組み合わせて実行することが可能である。
【0084】
本実施形態のクリーニング工程では、被接合部材20、41、42のうちダミーツール200によって擦られる部位に対して、吸引もしくは吹き付けとなるような気流を与えながら、ダミーツール200によって被接合部材20、41、42を擦る。
【0085】
ここで、当該気流の発生は、ダミーツール200に取り付けられダミーツール200と一体に移動するノズル600により行われる。吸引の気流は、たとえば、図示しない減圧ポンプなどをノズル600に接続し、ノズル600に空気を吸い込ませることにより形成される。また、吹き付けの気流は、たとえばノズル600から工場エアを吹き出すことにより形成される。
【0086】
本実施形態によれば、上記各実施形態と組み合わせることで上記各実施形態の効果を奏するとともに、被接合部材20、41、42の表面をダミーツール200で擦ることにより除去された汚れが、被接合部材20、41、42の周辺に飛び散り、再び被接合部材20、41、42の表面に付着するのを防止することが可能となる。
【0087】
(第8実施形態)
ところで、セラミック基板やプリント基板などの基板上に搭載された被接合部材、たとえば上記図1に示される電子装置S1におけるICチップ20やパッド42の場合、基板10の反りや凹凸に応じて、ICチップ20やパッド42の表面において部分的に高低差が生じてしまう。
【0088】
そのため、これら高低差の生じた被接合部材の表面をダミーツール200で擦る際に、ダミーツール200と被接合部材との接触が不十分になる可能性がある。特に、上記図5や図6に示したように、複数個のパッド42に同時に接触するダミーツール200の場合には、当該高低差による接触が不十分になりやすいと考えられる。本実施形態は、この問題を回避する方法を提供する。
【0089】
図10は、本発明の第8実施形態に係るダミーツール200の概略構成を示す図である。このダミーツール200は、基部201と基部201に対して弾性部材203により接続された複数の分割部202とを備える。
【0090】
ここで、基部201および分割部202は、上記同様に、セラミック、樹脂、金属などから選択された材料により構成される。また、弾性部材203は、コイルバネなどであり、基部201および分割部202を接続するとともに、基部201から分割部202に向かう方向(図10中の上下方向)に沿って弾性的に伸縮するものである。
【0091】
そして、このダミーツール200では、個々の分割部202にて被接合部材20、41、42の表面を擦るようになっており、このとき、弾性部材203の弾性力は被接合部材20、41、42の表面と垂直な方向に沿って作用する。つまり、個々の分割部202は、被接合部材20、41、42の表面の凹凸に応じて当該被接合部材の表面と垂直な方向に沿って独立して弾性的に変位しつつ、被接合部材の表面に対して摺動できるようになっている。
【0092】
本実施形態によれば、個々の分割部202が被接合部材20、41、42の表面の凹凸に応じて弾性的に変位するため、被接合部材20、41、42が、反りや凹凸を有する基板などである場合に、ダミーツール200は、当該反りや凹凸を吸収しながら被接合部材20、41、42の表面との接触を確保できる。
【0093】
また、本実施形態のダミーツール200は、複数個の分割部202が1つのICチップ20やパッド42に対して接触するものであってもよいし、上記図5や図6のような複数個のパッド42の場合に、1つの分割部202が1つのパッド42に接触するものであってもよい。
【0094】
また、弾性部材203による変位のストロークについて一例を述べると、一般に基板は、50mm四方程度のサイズで、最大100μm程度の反りを有する。この時、本実施形態のダミーツール200において最大500μm程度の上記ストロークを持たせ、200μmから400μm程度のストロークにて使用することで、基板の反りを適切に吸収し、基板上の被接合部材とダミーツール200との接触を確保できる。
【0095】
(他の実施形態)
以上のように、上記実施形態に示したワイヤボンディング方法では、ワイヤ接合の前にダミーツール200を被接合部材上にて摺動させることによって被接合部材表面を清浄化するものである。そのため、当該クリーニングのための特別な装置、たとえば、従来のようなプラズマクリーニング装置やウェット洗浄装置などが不要となる。
【0096】
なお、上記実施形態では、ICチップ20を1次ボンディング側、導体部材41およびパッド42を2次ボンディング側として、ボールボンディング法によりワイヤボンドするものとしたが、導体部材41およびパッド42を1次ボンディング側、ICチップ20を2次ボンディング側としてワイヤボンドしてもよい。この場合にも、上記クリーニング工程を適用してよい。
【0097】
また、被接合部材としては、上記したICチップ20や導体部材41、パッド42に限定されるものではなく、上記したワイヤボンディング法によりワイヤ50が接続できるものであるならば、それ以外のものでもよい。
【0098】
また、特に、被接合部材において汚れがない場合であっても、装置による動作ルーチンの簡略化を図るためなどの目的から、上記クリーニング工程の動作を行ってもよい。また、ワイヤボンディング方法としては、上記したボールボンディング以外の方法、たとえばウェッジボンディングなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【図2】第1実施形態に係るワイヤボンディング方法を示す工程図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るダミーツールの概略断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るダミーツールの概略断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係るダミーツールの汚れ除去工程を示す工程図である。
【図8】第6実施形態のダミーツールの汚れ除去工程のもう一つの例を示す工程図である。
【図9】本発明の第7実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。
【図10】本発明の第8実施形態に係るダミーツールの概略構成を示す図である。
【図11】本発明者の試作方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0100】
20…被接合部材としてのICチップ、41…被接合部材としての導体部材、42…被接合部材としてのパッド、50…ボンディングワイヤ、100…ボンディングツール、200…ダミーツール、201…基部、202…分割部、203…弾性部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置を用いて被接合部材にワイヤを接合するワイヤボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のワイヤボンディング方法は、一般に、ワイヤボンディング装置に取り付けられたボンディングツールによって被接合部材にワイヤを押し当てた状態で、ボンディングツールによってワイヤを振動させることにより、ワイヤを被接合部材に接合するものである。
【0003】
具体的に、このようなワイヤボンディング方法としては、ワイヤの先端部分に放電によってボールを形成するボールボンディング法や、ウェッジを用いて常温で行うウェッジボンディング法などが挙げられる。
【0004】
ここで、従来では、ワイヤボンディングを行う被接合部材が、接合性の悪い部材である場合、特許文献1などに記載されているように、ボンディングパッドのボンディングワイヤが接続される接続領域に凹部を形成することにより、ボンディングパッドとボンディングワイヤとの密着性を良好にするようにしていた。
【特許文献1】特開2003−243443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワイヤボンディングを行う被接合部材が、たとえば下地金属の拡散や環境からの汚染等により、ボンディング性が阻害されている場合、上記特許文献1のようなボンディングパッドのボンディングワイヤが接続される接続領域に凹部を形成する方法であっても、ボンディングができないという不具合が発生する。
【0006】
また、従来のワイヤボンディング方法においては、ワイヤの振動により、被接合部材の表面に形成されている酸化膜や異物などの汚れを除去することが考えられる。図11は、従来のボンディング方法に基づいて、汚れ除去を行うようにした本発明者の試作方法を示す工程図である。
【0007】
図11に示されるように、ワイヤ50に荷重を加えて被接合部材42にワイヤ50を押し当て(図11(a)参照)、この状態で、図示しないボンディングツールによってワイヤ50を振動させることにより、ワイヤ50を変形させながら、被接合部材42に接合する(図11(b)〜(e)参照)。
【0008】
このとき、被接合部材42の表面上には、図11中に太線で示すような汚れKが付着している。そして、図11に示されるように、ワイヤ50の変形によって被接合部材42上の汚れKが除去され、被接合部材42の清浄な面が現れ、ワイヤ50との接合が開始される。しかし、汚れKとしての酸化膜などが厚いものであったり、硬いものである場合には、ワイヤ50の変形力だけでは、除去できない。
【0009】
そこで、このような汚染状態にある被接合部材を清浄化するには、プラズマクリーニングなどのドライ方式、溶剤等の洗浄液によるウェット方式が考えられるが、これらの方法には、以下のような問題点がある。
【0010】
プラズマクリーニングを、ICチップが搭載される前に行う場合、ICチップの搭載およびその他の部品の搭載のために、はんだ接続を用いると、プラズマクリーニングにより清浄化した被接合部材としてのボンディングランド上に、その下地金属であるCuなどの金属が拡散により表面に析出し、ボンディング性が阻害される。
【0011】
また、ICチップが搭載された後に行う場合、IC素子がプラズマ状態にさらされることになり、素子の特性が変動または、破壊される可能性がある。さらに、溶剤等のウェット方式の場合、洗浄液中に含まれる残留物が被接合部材上に付着し、ボンディング性を阻害する場合がある。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ワイヤボンディング方法において、プラズマクリーニングや溶剤による洗浄を行うことなく、ワイヤ接合の直前に被接合部材の清浄な面を露出させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、被接合部材(20、41、42)にワイヤ(50)を接合する前に、被接合部材(20、41、42)の表面を固体材料よりなるダミーツール(200)で擦ることを特徴とする。
【0014】
それによれば、被接合部材(20、41、42)にワイヤ(50)を接合する前に、被接合部材(20、41、42)の表面をダミーツール(200)で擦ることにより、被接合部材(20、41、42)の表面に付着している汚れが機械的に除去されるため、プラズマクリーニングや溶剤による洗浄を行うことなく、ワイヤ接合の直前に被接合部材(20、41、42)の清浄な面を露出させることができる。
【0015】
ここで、被接合部材(42)が複数個配列されている場合、ダミーツール(200)としては、複数個の被接合部材(42)の配列パターンに対応した形状を有し、複数個の被接合部材(42)に同時に接触して擦るようになっているものを採用できる(後述の図5、図6参照)。
【0016】
それによれば、ダミーツール(200)を複数個の被接合部材(42)に同時に接触させて擦ることができるから、複数個の被接合部材(42)の汚れ除去を一括して行うことができる。
【0017】
また、ダミーツール(200)によって被接合部材(20、41、42)を擦った後、ダミーツール(200)における被接合部材(20、41、42)を擦った部位を、被接合部材(20、41、42)以外の部材(400、500)に擦りつけるようにしてもよい(後述の図7、図8参照)。
【0018】
それによれば、ダミーツール(200)における被接合部材(20、41、42)を擦った部位を、被接合部材(20、41、42)以外の部材(400、500)に擦りつけることにより、ダミーツール(200)に付着した汚れを擦り落とすことができるから、ダミーツール(200)の汚れ除去性能を低下させにくくできる。
【0019】
また、被接合部材(20、41、42)のうちダミーツール(200)によって擦られる部位に対して、吸引もしくは吹き付けとなるような気流を与えながら、ダミーツール(200)によって被接合部材(20、41、42)を擦るようにしてもよい(後述の図9参照)。
【0020】
それによれば、被接合部材(20、41、42)の表面をダミーツール(200)で擦るときに、当該擦りにより除去された汚れが、吸引もしくは吹き飛ばされるため、当該汚れが、再び、清浄化された被接合部材(20、41、42)の表面に付着するのを防止することが可能となり、好ましい。
【0021】
また、ダミーツール(200)としては、基部(201)と基部(201)に対して弾性部材(203)により接続された複数の分割部(202)とを備えるとともに、個々の分割部(202)にて被接合部材(20、41、42)の表面を擦るものであって、さらに、弾性部材(203)の弾性力によって、個々の分割部(202)が被接合部材(20、41、42)の表面の凹凸に応じて弾性的に変位するものを採用してもよい(後述の図10参照)。
【0022】
それによれば、被接合部材(20、41、42)が、反りや凹凸を有する基板などである場合に、ダミーツール(200)は、当該反りや凹凸を吸収しながら被接合部材(20、41、42)の表面との接触を確保できる。
【0023】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置S1の概略断面図である。この電子装置S1において、基板10は、セラミック基板、プリント基板、リードフレーム、ヒートシンクなどであり、この基板10の一面には、被接合部材としてのICチップ20が搭載されている。そして、ICチップ20は、Agペースト、はんだ、導電性接着剤などのダイボンド材30により基板10に接合されている。
【0026】
このICチップ20は、シリコン半導体などにトランジスタ素子などによりIC回路を形成してなる一般的なものである。また、ICチップ20の近傍には、被接合部材としての導体部材41およびパッド42が設けられている。
【0027】
導体部材41は、たとえば基板10とは別体のリードフレームやバスバーなどよりなる。この導体部材41は、銅系金属や鉄系金属などよりなる。また、パッド42は、基板10の一面上に設けられAuメッキやCuメッキなどよりなるパッドである。つまり、ICチップ20の接合相手としての被接合部材41、42は、基板10と別体のものであってもよいし、一体のものでもよい。
【0028】
そして、ICチップ20と導体部材41、および、ICチップ20とパッド42とは、それぞれボンディングワイヤ50により結線されており、このワイヤ50を介して互いに電気的に接続されている。
【0029】
このボンディングワイヤ50は、ボールボンディング法やウェッジボンディング法などの通常のワイヤボンディングにより形成されたものであり、たとえばAuやCuなどよりなる。ここでは、ワイヤ50は、後述するようにボールボンディング法により形成されたものである。
【0030】
次に、本実施形態の電子装置S1におけるボンディングワイヤ50の形成方法すなわちワイヤボンディング方法について、図2を参照して述べる。図2は、本実施形態に係るワイヤボンディング方法を示す工程図であり、ワイヤ50を被接合部材であるICチップ20およびパッド42に接合する場合を示している。
【0031】
本実施形態では、ICチップ20を1次ボンディング側、パッド42を2次ボンディング側として、これら両接合部材20、42がボールボンディング法によりワイヤボンドされている。なお、ICチップ20と導体部材41との接合方法も図2と同様であり、この場合、通常、ICチップ20を1次ボンディング側、導体部材41を2次ボンディング側として、ボールボンディング法によりワイヤボンドする。
【0032】
なお、本実施形態におけるワイヤボンディング装置は、一般的なボールボンディングを行うことのできるボールボンディング装置であり、超音波により振動する図示しない振動子に対して図2に示されるボンディングツール100を取り付けたものである。
【0033】
このボンディングツール100は、その内孔にワイヤ50を挿入して当該ワイヤ50を保持するとともに、先端部にワイヤ50を繰り出す一般的なものとして構成されたものであり、いわゆるキャピラリと呼ばれるものである。
【0034】
本ワイヤボンディング方法は、まず、図2(a)に示されるクリーニング工程を行った後、図2(b)、(c)、(d)に示されるワイヤ接合工程を行う。先に、図2(b)〜(d)を参照して、ワイヤ接合工程を説明する。
【0035】
まず、ボンディングツール100の内部に挿入されたワイヤ50において、ボンディングツール100の先端部から導出された部分の先端に、放電加工によって球形状をなすボール(プレボール)51を形成する。そして、図2(b)に示されるように、このプレボール51を、2次ボンディング側であるパッド42に押し当て接合する。
【0036】
その後、プレボール51とワイヤ50とを切り離し、再び、ワイヤ50の先端に、放電加工によって球形状をなすボール(イニシャルボール)52を形成する。そして、図2(c)に示されるように、このイニシャルボール52を、1次ボンディング側であるICチップ20に押し当てて、超音波振動を加えながら接合する。
【0037】
こうして、1次ボンディングを行った後、図2(d)に示されるように、ワイヤ50を、ボンディングツール100の先端部から繰り出してパッド42まで引き回す。次に、パッド42まで引き回されたワイヤ50を、ボンディングツール100の先端部にてパッド42上のプレボール51に押しつけて、超音波振動を加えながら接合し、2次ボンディングを行う。
【0038】
その後は、ボンディングツール100をパッド42の上方へ移動させ、パッド42からワイヤ50を切り離す。こうして、本ワイヤボンディング方法におけるワイヤ接合工程の1サイクルが完了する。
【0039】
なお、このワイヤ50を切り離したとき、ボンディングツール100の先端部からは、ワイヤ50が突出して残るが、この部分に再び上記同様に放電加工を行い、上記プレボール51を形成する。それにより、ワイヤ接合工程の次のサイクルに移る。ここで、プレボール51は、2次ボンディングにおけるワイヤ50の接合性を向上させるために設けられるものである。
【0040】
このように、本ワイヤボンディング方法は、ボンディングツール100によって被接合部材20、41、42にワイヤ50を押し当てた状態で、ボンディングツール100によってワイヤ50を振動させることにより、ワイヤ50を被接合部材20、41、42に接合するようにしたものである。
【0041】
そして、本実施形態では、このような一連のサイクルのボールボンディングのサイクルを有するワイヤボンディングにおいて、図2(b)〜(d)に示されるワイヤ接合を行う前に、図2(a)に示されるように、被接合部材であるICチップ20や導体部材41およびパッド42の表面を清浄化するクリーニング工程を実行するものである。
【0042】
このクリーニング工程は、被接合部材20、41、42にワイヤ50を接合する直前に、被接合部材20、41、42の表面をダミーツール200で擦ることにより、これら被接合部材の表面に付着している汚れを除去するものである。図2(a)では、パッド42の表面をクリーニングする場合を示しているが、ICチップ20および導体部材41の表面をクリーニングする場合も、同様である。
【0043】
クリーニング工程を行う時期は、上記ワイヤ接合工程におけるプレボール51の形成の直前に行う。具体的に、パッド42をクリーニングするにあたって、パッド42が複数個ある場合には、複数個のパッド42のすべてについてクリーニングを行った後、上記図2(b)〜(d)に示されるワイヤ接合を行う。または、個々のパッド42毎に、クリーニング工程を行った後に上記図2(b)〜(d)に示されるワイヤ接合を行う、というサイクルをくり返してもよい。
【0044】
また、ICチップ20や導体部材41をクリーニングする場合も、上記図2(b)〜(d)に示されるワイヤ接合を行う前に、ICチップ20の表面、具体的にはICチップ20上のアルミなどの電極をクリーニングしたり、導体部材41の表面をクリーニングする。なお、当該クリーニングは、ICチップ20、導体部材41およびパッド42のすべてについて行ってもよいが、これらすべてではなく、特に汚れが顕著になる部位のみに行ってもよい。
【0045】
クリーニング工程で用いるダミーツール200としては、固体であればよいが、当該ダミーツール200の擦りにより被接合部材20、41、42の表面に付着している汚れが擦り取られるような材料よりなるものであればよい。つまり、ダミーツール200は、セラミック、樹脂、金属などから適宜選択できる。
【0046】
具体的に、ダミーツール200の材質は、被接合部材20、41、42を過度に削り過ぎないようにする場合には、ボンディングツール100と同様のセラミック素材を用いればよいし、より削り過ぎないようにするには、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂材料を用いればよい。逆に、被接合部材表面の汚れが硬くて厚い酸化膜などである場合には、ステンレスなどの酸化、腐食しにくい金属材料を用いてもよい。
【0047】
また、本実施形態のダミーツール200、キャピラリ形状をなす上記ボンディングツール100において、実質的に内孔の無い形状に相当するものである。また、ここでは、図2(a)に示されるように、ダミーツール200の先端面は、平坦面であり、この先端面にて被接合部材であるICチップ20や導体部材41、パッド42の表面を擦るようになっている。
【0048】
なお、ダミーツール200の先端面すなわち上記擦りを行う面のサイズは、相手側の被接合部材20、41、42の大きさに応じて適宜設定されるが、図2(a)では、1個のパッド42に対応した大きさとなっている。また、ダミーツール200の先端面の形状は、円形でも角形でもよく、さらには、被接合部材20、41、42の平面形状と同一の形状などであってもよい。
【0049】
そして、このダミーツール200は、ダミーツール駆動装置300に取り付けられ、この駆動装置300によって、上記被接合部材20、41、42の表面を擦るように駆動されるものである。この駆動装置300は、ボンディングツール100を駆動する上記ワイヤボンディング装置またはこれと同様の機能を有する装置である。
【0050】
つまり、駆動装置300は、上記ボンディングツール100に対するのと同様に、ダミーツール200を所望の位置に移動させる機能、および、被接合部材20、41、42に対して荷重を加えながらダミーツール200を振動させる機能を有するものであればよい。ここでは、ダミーツール200の擦る方向は、図2(a)に矢印に示されるように、直線的な往復運動である。
【0051】
そして、本実施形態においては、上記図2(a)に示されるように、駆動装置300によってダミーツール200の先端面をパッド42の表面に押し当て、荷重を加えながらダミーツール200を振動させる。これにより、パッド42表面の酸化膜や異物などの汚れが、擦り取られ、清浄な面が現れる。このときの荷重や振動の大きさについては、被接合部材20、41、42に損傷を与えないようなレベルとする。
【0052】
このクリーニング工程は、上述したように、パッド42が複数個ある場合には、各パッド42についてそれぞれ行う。また、必要に応じて、ICチップ20の表面や導体部材41の表面についても行う。
【0053】
このクリーニング工程からワイヤ接合工程への移行は、ダミーツール200が位置する場所からボンディングツール100が位置する場所へと、ワークを搬送してもよいし、ワークは固定しておき、ダミーツール100およびボンディングツール200をワークの方へ移動させるようにしてもよい。
【0054】
なお、駆動装置300が、ボンディングツール100が取り付けられるワイヤボンディング装置とは異なる装置であれば、問題ないが、ボンディングツール100と同一のワイヤボンディング装置である場合には、次のようにする。
【0055】
すなわち、クリーニング工程では、ダミーツール200を当該ワイヤボンディング装置に取り付けてクリーニング工程を行い、その後、ダミーツール200を取り外し、ボンディングツール100を当該ワイヤボンディング装置に取り付けて、ワイヤ接合工程を行うようにする。
【0056】
そして、本ワイヤボンディング方法では、このクリーニング工程を行った後、図2(b)〜(d)に示されるワイヤ接合工程を行う。それにより、ICチップ20と導体部材41との間、および、ICチップ20とパッド42との間が、ボンディングワイヤ50により接続され、本電子装置S1ができあがる。
【0057】
以上のように、本実施形態では、被接合部材20、41、42にワイヤ50を接合する直前に、当該被接合部材20、41、42の表面をダミーツール200で擦るとともに、当該ダミーツール200として、当該ダミーツール200の擦りにより被接合部材20、41、42の表面に付着している汚れが擦り取られるような材料よりなるものを用いるクリーニング工程を行うようにしている。
【0058】
このクリーニング工程によって、被接合部材20、41、42の表面に付着している汚れが機械的に除去されるため、プラズマクリーニングや溶剤による洗浄を行うことなく、ワイヤ接合の直前に被接合部材20、41、42の清浄な面を露出させることができる。その結果、当該清浄な面にワイヤ50が接合され、接合信頼性の高いボンディングが可能となる。
【0059】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、ダミーツール200の先端面は平坦面であったが、上記したような擦りによる被接合部材20、41、42表面の清浄化がなされるならば、平坦面に限定されない。つまり、ダミーツール200の先端形状は、被接合部材や除去対象物に合わせて適宜変更してもよい。
【0060】
図3は、本発明の第2実施形態に係るダミーツール200、すなわち、先端部を平坦面以外の構成としたダミーツール200の概略断面形状を示す図である。図3(a)に示されるように、ダミーツール200の先端部を凹凸形状としてもよいし、図3(b)に示されるように、当該先端部を刷毛状の形状としてもよい。
【0061】
(第3実施形態)
上記各実施形態では、ダミーツール200によって被接合部材20、41、42を擦る方向は、直線的な往復運動であったが、上記したような擦りによる被接合部材20、41、42表面の清浄化がなされるならば、この往復運動に限定されない。
【0062】
図4は、本発明の第3実施形態に係るダミーツール200の概略断面形状を示す図である。たとえば、図4に示されるように、ダミーツール200の上記擦る方向は、ダミーツール200をその軸周りに回転させる方向であってもよい。そして、この場合のダミーツール200としては、その先端部が平坦面(図4(a)参照)、凹凸形状(図4(b)参照)、刷毛状(図4(c)参照)であってもよい。
【0063】
(第4実施形態)
上記図1に示される電子装置S1において、たとえばICチップ20とパッド42とのワイヤボンディング数が少ない場合は、上記各実施形態のように、1個のパッド42毎にクリーニングを行う方法で対応可能であるが、ワイヤボンディング数が多い場合は、1個ずつ行う方法では非常に時間がかかる。本発明の第4実施形態では、これを回避する方法を紹介するものである。
【0064】
図5は、本発明の第4実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。基板10上においてICチップ20の周りに、被接合部材としてのパッド42が複数個配列されて設けられている。ここでは、矩形板状のICチップ20の各辺において、当該各辺の外側にパッド42が直線状に配列しており、複数個のパッド42全体として矩形枠状の配列となっている。
【0065】
そして、本実施形態のダミーツール200は、複数個のパッド42に同時に接触できるように複数個のパッド42の配列パターンに対応した形状を有している。ここでは、ダミーツール200は、矩形枠状のパッド配列に対応した矩形枠状となっている。
【0066】
また、ダミーツール200の中空部には、ICチップ20が入り込むようになっており、クリーニング工程において、ダミーツール200とICチップ20との干渉が防止されるように構成されている。このようなダミーツール200は、上記同様に、セラミック、樹脂、金属などから選択された材料により構成される。
【0067】
それにより、本実施形態のクリーニング工程では、ダミーツール200を複数個のパッド42に同時に接触させて擦ることが可能となっている。そのため、複数個のパッド42の汚れ除去を一括して行うことができる。本実施形態では、1個のICチップ20に接続されるすべてのパッド42のクリーニングを一度に行える。このことは、結果的に、工程時間を短縮できるなど、作業の効率化に有利な効果を生む。
【0068】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。本実施形態も、上記第4実施形態と同様に、配列された複数個の被接合部材を同時に擦るダミーツール200を提供するものである。
【0069】
図6に示されるように、本実施形態においても、基板10上において矩形板状のICチップ20の周りに、被接合部材としてのパッド42が複数個配列され、複数個のパッド42全体として矩形枠状の配列となっている。
【0070】
そして、本実施形態のダミーツール200は、矩形枠状のパッド配列の1辺における直線状に配列された複数個のパッド42に対応した直線形状を有している。そして、ダミーツール200は、当該直線部分にて、直線状に配列されたパッド42のすべてに接触するようになっている。このダミーツール200も、上記同様に、セラミック、樹脂、金属などから選択された材料により構成される。
【0071】
このようなダミーツール200を用いた本実施形態のクリーニング工程では、ダミーツール200を、ICチップ20の1辺に沿って配列された複数個のパッド42に対して、同時に接触させて擦ることが可能となっている。そのため、当該複数個のパッド42の汚れ除去を一括して行うことができる。
【0072】
また、ICチップ20の1辺に沿った複数個のパッド42に対してクリーニングを行った後、これに直交する他辺に沿った複数個のパッド42に対してクリーニングを行う場合には、ダミーツール200を略90°回転させてから、クリーニングを行えばよい。こうして、本実施形態のクリーニング工程によっても、複数個のパッド42の汚れ除去を一括して行え、工程時間の短縮化など、作業の効率化に有利な効果を生む。
【0073】
ところで、上記第4実施形態に示したダミーツール200(上記図5参照)は、ICチップ20が1つの場合には有効であるが、ICチップ20が複数個、同一の基板10上に搭載されるような構成の場合には、それぞれのICチップ20のサイズに応じてダミーツール200を取り替えながらクリーニングを行う必要があり、非効率的である。その点、本実施形態では、1つのダミーツール200で済むという面で上記第4実施形態に比べて効率的である。
【0074】
なお、上記図5および上記図6では、複数個の配列された被接合部材として複数個のパッド42の例を示したが、これ以外にも、ICチップ20や導体部材41が複数個配列されたものである場合には、これらの配列パターンに対応したダミーツールを適用すればよいことはもちろんである。
【0075】
(第6実施形態)
上記各実施形態のいずれの場合についても、汚れ除去を行うにしたがって、ダミーツール200の先端には、被接合部材20、41、42から除去された汚れや削り取られた被接合部材20、41、42(たとえばAuめっき、Agめっきなど)が付着する。
【0076】
この付着物は、ダミーツール200による汚れ除去性能の低下を招いたり、逆に汚れの被接合部材20、41、42への転写を招くことになる。そこで、本実施形態では、一定量の汚れ除去を行った後に、ダミーツール200に付着した汚れを除去することで、上記問題を解消するものである。
【0077】
図7は、このダミーツール200の汚れ除去工程を示す工程図である。ダミーツール200に付着した汚れKを除去する装置は、モータなどで回転する回転軸401と、この回転軸401に取り付けられ回転軸401によって回転するベルト400と、ベルト400に付着した汚れKを掻き取る掻き取り部材402とを備えるベルト式のものである。
【0078】
この場合、ダミーツール200によって被接合部材20、41、42を擦った後、上記駆動装置300(上記図1参照)によって、ダミーツール200を、被接合部材以外の部材としてのベルト400まで移動させる。そして、ダミーツール200における被接合部材20、41、42を擦った部位、すなわちダミーツール200の先端部を、ベルト400に接触させ擦りつける。
【0079】
それにより、本実施形態では、ダミーツール200に付着した汚れKが、ベルト400によって擦り落とされる。そして、ベルト400に付着した汚れKは、掻き取り部材402によってベルト400から掻き取られる。そして、汚れKが除去されたダミーツール200により、再びクリーニング工程を行う。
【0080】
図8は、本実施形態のダミーツール200の汚れ除去工程のもう一つの例を示す工程図である。上記図7の例では、ダミーツール200に付着した汚れKを除去する装置は、ベルト式のものであったが、本例では、モータなどで回転する回転軸501と、この回転軸501に取り付けられ回転軸501によって回転する円板500と、円板500に付着した汚れKを掻き取る掻き取り部材502とを備える円板式のものである。
【0081】
この場合も、ダミーツール200によって被接合部材20、41、42を擦った後、ダミーツール200の先端部を、被接合部材以外の部材としての円板500に擦りつけることにより、汚れKをダミーツール200から擦り落とす。円板500に付着した汚れKは、掻き取り部材502によって円板500から掻き取られる。そして、汚れKが除去されたダミーツール200により、再びクリーニング工程を行う。
【0082】
このように、本実施形態によれば、ダミーツール200は、常時清浄化された状態でクリーニング工程に供されることになるため、ダミーツール200の汚れ除去性能の低下を防止するという効果が発揮される。また、本実施形態は、上記した各実施形態と組み合わせて実行することが可能である。
【0083】
(第7実施形態)
図9は、本発明の第7実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。図9では、被接合部材としてパッド42を示してあるが、被接合部材はICチップ20でも、導体部材42でもよい。本実施形態は、上記した各実施形態と組み合わせて実行することが可能である。
【0084】
本実施形態のクリーニング工程では、被接合部材20、41、42のうちダミーツール200によって擦られる部位に対して、吸引もしくは吹き付けとなるような気流を与えながら、ダミーツール200によって被接合部材20、41、42を擦る。
【0085】
ここで、当該気流の発生は、ダミーツール200に取り付けられダミーツール200と一体に移動するノズル600により行われる。吸引の気流は、たとえば、図示しない減圧ポンプなどをノズル600に接続し、ノズル600に空気を吸い込ませることにより形成される。また、吹き付けの気流は、たとえばノズル600から工場エアを吹き出すことにより形成される。
【0086】
本実施形態によれば、上記各実施形態と組み合わせることで上記各実施形態の効果を奏するとともに、被接合部材20、41、42の表面をダミーツール200で擦ることにより除去された汚れが、被接合部材20、41、42の周辺に飛び散り、再び被接合部材20、41、42の表面に付着するのを防止することが可能となる。
【0087】
(第8実施形態)
ところで、セラミック基板やプリント基板などの基板上に搭載された被接合部材、たとえば上記図1に示される電子装置S1におけるICチップ20やパッド42の場合、基板10の反りや凹凸に応じて、ICチップ20やパッド42の表面において部分的に高低差が生じてしまう。
【0088】
そのため、これら高低差の生じた被接合部材の表面をダミーツール200で擦る際に、ダミーツール200と被接合部材との接触が不十分になる可能性がある。特に、上記図5や図6に示したように、複数個のパッド42に同時に接触するダミーツール200の場合には、当該高低差による接触が不十分になりやすいと考えられる。本実施形態は、この問題を回避する方法を提供する。
【0089】
図10は、本発明の第8実施形態に係るダミーツール200の概略構成を示す図である。このダミーツール200は、基部201と基部201に対して弾性部材203により接続された複数の分割部202とを備える。
【0090】
ここで、基部201および分割部202は、上記同様に、セラミック、樹脂、金属などから選択された材料により構成される。また、弾性部材203は、コイルバネなどであり、基部201および分割部202を接続するとともに、基部201から分割部202に向かう方向(図10中の上下方向)に沿って弾性的に伸縮するものである。
【0091】
そして、このダミーツール200では、個々の分割部202にて被接合部材20、41、42の表面を擦るようになっており、このとき、弾性部材203の弾性力は被接合部材20、41、42の表面と垂直な方向に沿って作用する。つまり、個々の分割部202は、被接合部材20、41、42の表面の凹凸に応じて当該被接合部材の表面と垂直な方向に沿って独立して弾性的に変位しつつ、被接合部材の表面に対して摺動できるようになっている。
【0092】
本実施形態によれば、個々の分割部202が被接合部材20、41、42の表面の凹凸に応じて弾性的に変位するため、被接合部材20、41、42が、反りや凹凸を有する基板などである場合に、ダミーツール200は、当該反りや凹凸を吸収しながら被接合部材20、41、42の表面との接触を確保できる。
【0093】
また、本実施形態のダミーツール200は、複数個の分割部202が1つのICチップ20やパッド42に対して接触するものであってもよいし、上記図5や図6のような複数個のパッド42の場合に、1つの分割部202が1つのパッド42に接触するものであってもよい。
【0094】
また、弾性部材203による変位のストロークについて一例を述べると、一般に基板は、50mm四方程度のサイズで、最大100μm程度の反りを有する。この時、本実施形態のダミーツール200において最大500μm程度の上記ストロークを持たせ、200μmから400μm程度のストロークにて使用することで、基板の反りを適切に吸収し、基板上の被接合部材とダミーツール200との接触を確保できる。
【0095】
(他の実施形態)
以上のように、上記実施形態に示したワイヤボンディング方法では、ワイヤ接合の前にダミーツール200を被接合部材上にて摺動させることによって被接合部材表面を清浄化するものである。そのため、当該クリーニングのための特別な装置、たとえば、従来のようなプラズマクリーニング装置やウェット洗浄装置などが不要となる。
【0096】
なお、上記実施形態では、ICチップ20を1次ボンディング側、導体部材41およびパッド42を2次ボンディング側として、ボールボンディング法によりワイヤボンドするものとしたが、導体部材41およびパッド42を1次ボンディング側、ICチップ20を2次ボンディング側としてワイヤボンドしてもよい。この場合にも、上記クリーニング工程を適用してよい。
【0097】
また、被接合部材としては、上記したICチップ20や導体部材41、パッド42に限定されるものではなく、上記したワイヤボンディング法によりワイヤ50が接続できるものであるならば、それ以外のものでもよい。
【0098】
また、特に、被接合部材において汚れがない場合であっても、装置による動作ルーチンの簡略化を図るためなどの目的から、上記クリーニング工程の動作を行ってもよい。また、ワイヤボンディング方法としては、上記したボールボンディング以外の方法、たとえばウェッジボンディングなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【図2】第1実施形態に係るワイヤボンディング方法を示す工程図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るダミーツールの概略断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るダミーツールの概略断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係るダミーツールの汚れ除去工程を示す工程図である。
【図8】第6実施形態のダミーツールの汚れ除去工程のもう一つの例を示す工程図である。
【図9】本発明の第7実施形態に係るクリーニング工程を示す工程図である。
【図10】本発明の第8実施形態に係るダミーツールの概略構成を示す図である。
【図11】本発明者の試作方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0100】
20…被接合部材としてのICチップ、41…被接合部材としての導体部材、42…被接合部材としてのパッド、50…ボンディングワイヤ、100…ボンディングツール、200…ダミーツール、201…基部、202…分割部、203…弾性部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤボンディング用のボンディングツール(100)によって被接合部材(20、41、42)にワイヤ(50)を押し当てた状態で、前記ボンディングツール(100)によって前記ワイヤ(50)を振動させることにより、前記ワイヤ(50)を前記被接合部材(20、41、42)に接合するようにしたワイヤボンディング方法において、
前記被接合部材(20、41、42)に前記ワイヤ(50)を接合する前に、前記被接合部材(20、41、42)の表面を固体材料よりなるダミーツール(200)で擦ることを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項2】
前記被接合部材(42)は複数個配列されており、
前記ダミーツール(200)は、前記複数個の被接合部材(42)の配列パターンに対応した形状を有し、前記複数個の被接合部材(42)に同時に接触して擦るようになっているものであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項3】
前記ダミーツール(200)によって前記被接合部材(20、41、42)を擦った後、前記ダミーツール(200)における前記被接合部材(20、41、42)を擦った部位を、前記被接合部材(20、41、42)以外の部材(400、500)に擦りつけることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項4】
前記被接合部材(20、41、42)のうち前記ダミーツール(200)によって擦られる部位に対して、吸引もしくは吹き付けとなるような気流を与えながら、前記ダミーツール(200)によって前記被接合部材(20、41、42)を擦ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のワイヤボンディング方法。
【請求項5】
前記ダミーツール(200)は、基部(201)と前記基部(201)に対して弾性部材(203)により接続された複数の分割部(202)とを備えるとともに、
個々の前記分割部(202)にて前記被接合部材(20、41、42)の表面を擦るものであって、さらに、前記弾性部材(203)の弾性力によって、個々の前記分割部(202)は、前記被接合部材(20、41、42)の表面の凹凸に応じて弾性的に変位するものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のワイヤボンディング方法。
【請求項1】
ワイヤボンディング用のボンディングツール(100)によって被接合部材(20、41、42)にワイヤ(50)を押し当てた状態で、前記ボンディングツール(100)によって前記ワイヤ(50)を振動させることにより、前記ワイヤ(50)を前記被接合部材(20、41、42)に接合するようにしたワイヤボンディング方法において、
前記被接合部材(20、41、42)に前記ワイヤ(50)を接合する前に、前記被接合部材(20、41、42)の表面を固体材料よりなるダミーツール(200)で擦ることを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項2】
前記被接合部材(42)は複数個配列されており、
前記ダミーツール(200)は、前記複数個の被接合部材(42)の配列パターンに対応した形状を有し、前記複数個の被接合部材(42)に同時に接触して擦るようになっているものであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項3】
前記ダミーツール(200)によって前記被接合部材(20、41、42)を擦った後、前記ダミーツール(200)における前記被接合部材(20、41、42)を擦った部位を、前記被接合部材(20、41、42)以外の部材(400、500)に擦りつけることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項4】
前記被接合部材(20、41、42)のうち前記ダミーツール(200)によって擦られる部位に対して、吸引もしくは吹き付けとなるような気流を与えながら、前記ダミーツール(200)によって前記被接合部材(20、41、42)を擦ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のワイヤボンディング方法。
【請求項5】
前記ダミーツール(200)は、基部(201)と前記基部(201)に対して弾性部材(203)により接続された複数の分割部(202)とを備えるとともに、
個々の前記分割部(202)にて前記被接合部材(20、41、42)の表面を擦るものであって、さらに、前記弾性部材(203)の弾性力によって、個々の前記分割部(202)は、前記被接合部材(20、41、42)の表面の凹凸に応じて弾性的に変位するものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のワイヤボンディング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−26790(P2009−26790A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185391(P2007−185391)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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