説明

ワイヤボンディング装置およびこれを用いたワイヤボンディング方法

【課題】超音波を用いたワイヤボンディングを確実に行うことができる、換言すれば超音波熱圧着などによるボンディングワイヤの接続を確実に行うことができ、延いては製品不良の発生を防止して歩留まりの向上を図ることができるワイヤボンディング装置を提供する。
【解決手段】超音波手段による熱圧着により、固体撮像素子チップ5内のアルミニウムで形成されたパッド51に、金線を接続させるワイヤボンディング装置であって、パッド51上の酸化アルミニウム膜の膜厚を計測する計測手3段と、計測手段3で測定した膜厚に関するデータを用いて、ワイヤボンディング時にパッド51に作用する超音波熱圧着条件を補正する制御手段4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置およびこれを用いたワイヤボンディング方法にかかり、超音波手段により熱圧着させてチップ内のパッドに金線を接続させるワイヤボンディング装置に係り、特にチップサイズパッケージ(CSP)タイプの固体撮像素子などに有効なワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップなどから信号線を引き出す方法として知られている、金(Au)線や銅(Cu)線或いはアルミニウム(Al)線などのボンディングワイヤを用いたワイヤボンディング法では、熱圧着方式の超音波振動を併用させた超音波熱圧着方式のワイヤボンディング装置が主流となっている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ところで、現在、CCD(Charge Coupled Device)を含む固体撮像素子が広く普及しているが、このような固体撮像素子を製造する際にも、信号線を外部へ引き出すために、ボンディング装置を用いたワイヤボンディングにより、パッドや電極の間などについて電気的接続を図る必要がある。
【0004】
また、この固体撮像素子などのような半導体チップでは、パッドがアルミニウムで形成されている場合、そのアルミニウムのパッド表面は、通常、酸化されて酸化アルミニウム(Al)(以下、「アルミナ」とよぶ)の膜が形成されていることが多い。
【0005】
このような事情から、ワイヤボンディング装置(例えば、ネイルヘッド型のワイヤボンディング装置)を用いてワイヤボンディングを行う際には、接合すべきパッド側の界面、つまりアルミナの膜を超音波による高周波振動で除去し、さらにこの超音波でパッドを加熱させ、金線(若しくは金ボール)などをパッドに熱圧着させている。
【非特許文献1】「信学技報 Technical Report IEICE ICD 92-128 (1992-12)」(社団法人 電子情報通信学会 発行)第17頁乃至第24頁
【特許文献1】特開平7-202152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波による熱圧着の際に、良好な熱圧着動作を行うためには、酸化膜をちょうど突き破って良好に熱圧着できる程度の熱圧着エネルギーを用いる必要がある。ところで、パッド上のアルミナの膜厚は、微視的に見ると、個々のパッドによってばらつきを生じていることが多い。ところが、このように膜厚にばらつきがあると、超音波による熱圧着の際に、アルミナを突き破ってアルミニウムを溶融してしまい、パッドが薄くなってしまったり、逆にアルミナが十分に突き破られず、アルミニウム表面をアルミナで覆われた状態で熱圧着されるため、電気的コンタクトを取るのが困難な場合がある。このように、超音波による熱圧着の際に、良好な熱圧着動作を行うことができず、電気的な接続が不安定で不確実であるなど、製品不良を招く一因になっているとともに、歩留まり低下の原因となることがある。
【0007】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、超音波を用いたワイヤボンディングを確実に行うことができる、換言すれば超音波熱圧着によるボンディングワイヤの接続を確実に行うことができ、延いては製品不良の発生を防止して歩留まりの向上を図ることができるワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、超音波手段による熱圧着により、半導体チップ内のパッドに、ボンディングワイヤをワイヤボンディングによって接続させるワイヤボンディング装置であって、前記パッド上の酸化膜の膜厚を計測する計測手段と、前記計測手段で測定した膜厚に関するデータを用いて、ワイヤボンディング時に前記パッドに作用する超音波熱圧着条件を補正する制御手段とを備えたものである。
【0009】
上記構成によれば、超音波を用いたワイヤボンディングを確実に行うことができる、換言すれば超音波熱圧着によるボンディングワイヤの接続を確実に行うことができ、延いては製品不良の発生を防止して歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明では、前記ワイヤボンディング装置において、前記計測手段には、光学的に測定する分光エリプソメータ、超音波を利用して測定する超音波解析装置、X線を利用して測定する蛍光X線測定装置またはX線反射測定装置のいずれかを用いたものである。
【0011】
また、本発明では、前記ワイヤボンディング装置において、前記パッドは、アルミニウム又は銅で形成されているものである。
【0012】
また、本発明では、前記ワイヤボンディング装置において、前記ボンディングワイヤは、金線である。
【0013】
また、本発明では、前記ワイヤボンディング装置において、前記半導体チップは、CCDを含む固体撮像素子である。
【0014】
また、本発明では、前記ワイヤボンディング装置において、前記固体撮像素子は、CSPタイプの固体撮像素子チップである。
【0015】
また、本発明のワイヤボンディング方法では、熱圧着により、半導体チップ内のパッドに、ボンディングワイヤを接続するワイヤボンディング方法であって、前記パッド上の酸化膜の膜厚を計測する計測工程と、前記計測工程で測定した前記酸化膜の膜厚に応じて、ワイヤボンディング時における熱圧着条件を制御する制御工程とを具備している。
【0016】
また、本発明では、上記ワイヤボンディング方法において、前記計測工程が、分光エリプソメータを用いて前記酸化膜の膜厚を光学的に測定する工程を含む。
【0017】
また、本発明では、上記ワイヤボンディング方法において、前記計測工程が、超音波を用いて前記酸化膜の膜厚を光学的に測定する工程を含む。
【0018】
また、本発明では、上記ワイヤボンディング方法において、前記計測工程が、X線を利用して測定する蛍光X線測定装置を用いて前記酸化膜の膜厚を光学的に測定する工程を含む。
【0019】
また、本発明では、上記ワイヤボンディング方法において、前記計測工程が、X線反射測定装置を用いて前記酸化膜の膜厚を測定する工程を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、超音波を用いたワイヤボンディングを確実に行うことができる、換言すれば超音波熱圧着によるボンディングワイヤの接続を確実に行うことができ、延いては製品不良の発生を防止して歩留まりの向上を図ることができるワイヤボンディング装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るワイヤボンディング装置を示すものであり、このワイヤボンディング装置は、装置本体(以下、「ワイヤボンダ」とよぶ)1と、超音波熱圧着装置2と、計測手段3と、制御部4とを備えている。なお、本実施の形態の場合、例えば図2に示すように、このワイヤボンディング装置によりパッド51と電極52とを金線Wで接続させるチップには、固体撮像素子(CCD)を構成するCSPタイプの固体撮像素子チップ5を用いている。また、このワイヤボンディング装置を用いたワイヤボンディング作業は、ウエハからダイシングして個々の固体撮像素子チップ5を切り出した後、リードフレームLなどに搭載した後のパターン配線を行う際に、行うようになっている(ウエハの状態で行ってもよい)。
【0022】
このワイヤボンダ1は、入力が制御部4の出力に接続されており、その動作が制御部4で制御されている。本実施の形態の場合、このワイヤボンダ1は、ネイルヘッド型のワイヤボンディダを用いており、スプールから供給され、エアテンション、クランパ(いずれも図示せず)を介して、キャピラリー11の孔から引き出されてくる金線Wの先端を、電気トーチ12(図3参照)によるアーク放電などで加熱溶融させ、ボール状(金ボール)Bに形成するようになっている。
【0023】
超音波熱圧着装置2は、超音波による高周波振動(本実施の形態では、100KHz)により固体撮像素子チップ5のアルミニウムで形成したパッド51(以下、「アルミパッド」とよぶ)及び電極52を加熱し、金線Wとの熱圧着を行うようになっている。また、この超音波熱圧着装置2により熱圧着を行う場合、熱圧着すべきアルミパッド51(但し、電極52もアルミニウムや銅などで形成されていて酸化膜が形成されている場合には、これも対象となる)のアルミナ(Al)の膜厚に応じて、次の各条件(超音波熱圧着条件)、つまり、超音波出力、圧着荷重、温度、圧着時間を制御部4で最適な条件に補正又は調整して制御するようになっている。そのため、超音波熱圧着装置2は、入力が制御部4の出力に接続されている。
【0024】
計測手段3は、本実施の形態の場合、分光エリプソメータ30を用いている。この分光エリプソメータは、固体撮像素子チップTのアルミパッド上のアルミナ膜を所定のモニターパターン内で検出し、入射/反射の際の偏光状態を利用してそのアルミナの膜厚を光学的に計測するものであり、計測した膜厚に関するデータは、制御部4に出力させるようになっている。このため、この分光エリプソメータの出力が、制御部4の入力に接続されている。
【0025】
この分光エリプソメータ30は、一般に、表面、薄膜の反射の際の偏光状態の変化を観測してその光学常数、膜厚などを求める装置であり、原理的には、偏光子で直線偏光を試料面に入射させ、そこで反射した楕円偏光を波長板で直線偏光にかえ、検光子で消光させて楕円の偏光形状を求めるものである。本発明の分光エリプソメータ30には、各種公知のものが適用可能であり、例えば本実施の形態では、図4に示すように、白色光源31と、偏光子32と、検光子33と、波長板34と、分光器35などを備えたものを用いており、白色光源31から出射される白色光を、偏光子32及び波長板34によってある特定の偏光状態にさせた後、測定対象であるアルミパッド51に入射させるようになっている。すると、その入射光は、偏光状態が変化し、その後、ここでの反射光が検光子33を透過して分光器35に入射する。ここで、偏光子32と検光子33との角度を調整すると、個々のアルミパッド51のアルミナの固有膜厚および屈折率に応じた特定の波長で部分消光をおこさせることができ、その消光した波長の色に対する補色を帯びる。そこで、分光器35を用いることで、色と膜厚の対応を一意に決定しておけば、アルミナの膜厚を高精度で決定することができる。
【0026】
制御部4は、ワイヤボンダ1、超音波熱圧着装置2、計測手段3である分光エリプソメータ30の動作を制御するほか、分光エリプソメータ30で測定したアルミナの膜厚に関するデータを用いて、ワイヤボンディングの際にアルミパッド51に作用する超音波熱圧着条件を適宜補正するものである。
【0027】
次に、本実施の形態のワイヤボンディング装置を用いたワイヤボンディング方法について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
本実施の形態のワイヤボンディング方法は、リードフレームLに搭載された各固体撮像素子チップ5について各種配線を行う工程で行うものであるが、初めに、図3(A)に示すように、ワイヤボンディングを行うアルミパッド51ごとに、計測手段3である分光エリプソメータを用いて個別にアルミナの膜厚を計測しておく(工程S1)。ここで、この分光エリプソメータによる膜厚測定方法については、前述したように、所定のモニターパターン内でアルミパッド51を検出し、入射/反射の際の偏光状態を利用して光学的にアルミナの膜厚を計測する。また、このアルミパッド51の接続先である電極52についても、例えばアルミニウム(銅など形成されている場合もよい)で形成されているために表面がアルミナの膜で覆われているような場合には、そのアルミナの膜厚も同様に計測する。
【0028】
このようにして、ワイヤボンディングを行うアルミパッド51での膜厚が計測されたならば、その膜厚に関するデータが計測手段3である分光エリプソメータから制御部4に出力される(工程S2)。
一方、分光エリプソメータから膜厚に関するデータを入力した制御部4では、所定の演算を行い、W/B条件(ワイヤボンディング条件)、特に超音波熱圧着条件、つまり、超音波出力、圧着荷重、温度、圧着時間について、予め設定されている基準となる標準値から適宜補正を行い、それぞれ最適な値を具体的に決定する(工程S3)。
【0029】
このようにして、具体的に超音波熱圧着条件が決定されたならば、制御部4の制御によって、超音波出力、圧着荷重、温度、圧着時間を最適な状態に制御しながら、ワイヤボンダ1及び超音波熱圧着装置2を作動して各パッドに対して、順次ワイヤボンディングを行う(工程S4)。
即ち、このワイヤボンディング作業では、初めに、図3(B)に示すように、キャピラリー11の孔から引き出されてくる金線Wの先端を、電気トーチ12によるアーク放電などで加熱溶融させ、同図(C)に示すボール状(金ボール)Bに形成する。次に、制御部4の制御により、測定したアルミパッド51のアルミナの膜厚に対応する最適な超音波熱圧着条件、つまり、最適な値に設定した超音波出力、圧着荷重、温度、圧着時間で超音波熱圧着装置2を作動させ、アルミナを高周波振動で除去するとともにアルミパッド51を加熱溶融させ、同図(D)に示すように、キャピラリー11の先に形成してある金ボールBをアルミパッド51に熱圧着させることにより、金線Wをアルミパッド51に電気的に接続する(つまり、ボールボンディングを行う)。その後、キャピラリー11を上方に引き上げ、リードフレーム側の電極52に移動する。この場合、金ボールBを用いるときには、金線Wの引き出し形状として略円弧状のやや大きなループを形成させるために、一旦電極52側とは反対方向にリバース動作させるようにしてもよい。
【0030】
次に、制御部4が、電極52に対しても同様に超音波熱圧着装置2を作動させ、酸化膜が形成されている場合には、その膜厚測定されたデータに基づき最適な超音波熱圧着条件で動作させる。これにより、電極52の酸化膜も高周波振動で除去するとともに電極52を加熱溶融させ、金線Wを電極52に熱圧着させ電極52に接続する(つまり、ウエッジボンディングを行う)。このため、各アルミパッド51や電極52に酸化膜が多様な厚さで形成されていたとしても、その酸化膜を個々のアルミパッド51や電極52ごとに超音波熱圧着装置2で除去させて電気的な接続を確実に、安定した状態で行う。
【0031】
次に、図6に示す固体撮像素子チップ5のアルミパッド51にボンディングワイヤとしての金線Wを接続するときに、ワイヤボンディング前のアルミパッド51に形成されていたアルミナの膜厚と、ワイヤボンディングによりアルミパッドに金線Wを接続したときのアルミパッド51部分のW/B合金化率(つまり、金の拡散特性)とについて、両者の相関性を調べる実験を行ってみた。実験結果を図7に示す。なお、図7中の破線で示すグラフは従来のワイヤボンディング装置でのワイヤボンディング(一定条件)、実線は本実施の形態のワイヤボンディング装置を用いてワイヤボンディング(膜厚測定されたデータに基づき最適な超音波熱圧着条件)を行った場合を示す。
なお、ここで、図6中、符号53はシリコン基板、54はフィールド酸化膜、55はパッド(ドープトアモルファスシリコン層)、56はアルミニウム膜(ボンディングパッド)57は層間絶縁膜、58はパッシベーション膜を示す。また、パッド部分のW/B合金化率とは、パッドを形成するアルミニウム(Al)の開口面積(パッシベーション膜の開口でAlが露出している所)を100として、ワイヤボンディングのボンディングワイヤとして使用している金(金ボール)とアルミが合金になっている面積の比率をいうものとする。実際には金ボールが溶融して合金になっている跡を撮像し、画像処理ソフトを用いて面積比を計測するという方法がとられる。図7でアルミナ膜厚が薄いときは68%で一定となっている。これはアルミニウムに圧着された金ボールが100%反応して正常に合金化されていることを示している。
【0032】
その結果、アルミパッド51に形成されていたアルミナの膜厚と(金とアルミニウム)合金化率との間には、図7に示すように、一定の相関性があることが判明し、アルミナの膜厚が特定値tを越えると、急激に合金化率が低下する、つまりアルミニウム中での金の拡散性が低下するとの知見が得られた。これにより、酸化膜の厚さが一定値を越えると、熱圧着によるアルミパッド51への金線Wの接続がうまく行えないことがわかる。
【0033】
一方、本実施の形態に係るワイヤボンディング装置を用いてワイヤボンディングを行う場合、アルミナの膜厚に対応した最適な値に設定した超音波熱圧着条件、つまり超音波出力、圧着荷重、温度、圧着時間で超音波熱圧着装置2を作動させ、アルミナを高周波振動で除去するとともにアルミパッド51を加熱溶融させるように構成した。このため、たとえアルミナの膜厚が一定値tを越えていた場合であっても、高い合金化率で熱圧着することができ、信頼度の高いワイヤボンディングが実現可能となることが判明した。
【0034】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、図8を参照しながら説明する。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
本実施の形態では、実施の形態1と異なり、計測手段3に超音波を利用した超音波解析装置6を用いている。
超音波解析装置6は、各種公知のものが適用可能であり、例えば本実施の形態では、信号発生装置61と、超音波送信器62と、超音波受信器63と、信号分離装置64と、データ処理装置65などを備えたものを用いている。
【0035】
このうち、信号発生装置61は、超音波の音源になる電気信号を発生させるものである。一方、超音波送信器62は、信号発生装置61から入力される信号に基づいて超音波を発生させるものである。超音波受信器63は、超音波を受信するためのものである。この超音波受信器63は、受信した超音波を信号分離装置64へと出力する構成となっている。信号分離装置64は、超音波受信器63によって受信された超音波を、その由来ごとに分離するためのものである。データ処理装置65は、信号分離装置64によって分離された信号について、空間的統計処理、ここでは開口合成(Aperture Synthesis)を行うことで、測定対象物であるアルミパッド51の3次元形状、特にアルミナ部分の膜厚を求めるものである。なお、このデータ処理装置65は、具体的には、DSP(Digital Signal Processor)、マイクロプロセッサ、メモリなどによって構成されている。
【0036】
本実施の形態では、計測手段3として、上述のような構成の超音波解析装置6を用いて超音波で膜厚を測定するようになっているが、この超音波解析装置6で計測したアルミパッド51のアルミナ部分の膜厚データは、図1に示す制御部4に出力され、その後、第1の実施の形態と同様の動作を行う。従って、アルミパッド51や電極52の界面などにアルミナなどの酸化膜が形成されていても、酸化膜の膜厚に対応した最適な値に設定した超音波熱圧着条件、つまり超音波出力、圧着荷重、温度、圧着時間で超音波熱圧着装置2を作動させ、アルミナを高周波振動で除去するとともにアルミパッド51を加熱溶融させることができる。このため、たとえアルミナなどの酸化膜の膜厚が一定値t(図7参照)を越えていた場合でも、高い合金化率で熱圧着することができ、信頼度の高いワイヤボンディングを実現することが可能となる。
【0037】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について、図9を参照しながら説明する。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
本実施の形態では、実施の形態1,2と異なり、計測手段3にX線を利用した蛍光X線測定装置7(或いはX線反射測定装置)を用いている。
【0038】
蛍光X線測定装置7は、各種の公知の手段及び方法が適用可能であり、例えば本実施の形態では、図9に示すように、励起(蛍光)X線源71と、集光ミラー72と、蛍光X線検出器73と、演算器74とを備えたものを用いている。
ここで、本実施の形態の演算器74では、所定の数式などを利用した蛍光X線測定方法により、膜厚を測定するようになっており、以下これについて説明する。
蛍光X線を膜厚測定に利用する場合、通常、物理的な測定対象は試料中の原子数(または原子分子数)であることから、本実施の形態の蛍光X線測定方法では、測定対象であるアルミパッド51のアルミナの薄膜が励起X線で照射されている励起領域内で一様であるものと仮定し、かつ、膜中の原子数(または原子分子数)密度を仮定して、検出した蛍光X線量から所定の演算式を用いることにより、アルミナの膜厚に換算するように構成している。
【0039】
例えば、この蛍光X線測定方法では、蛍光X線検出器73により検出される蛍光X線量は、以下のような数式から算出することができる。
B=C∫∫∫(a(x、y)・G1(x、y、z))・D(x、y、z)・
(e(x、y)・G2(x、y、z))dx・dy・dz
但し、ここで、積分範囲:測定領域全面×厚さ
B;検出される蛍光X線量、
D(x、y、z);位置(x、y、z)での膜中の測定対象元素の体積原子
数密度、
(a(x、y)・G1(x、y、z));位置(x、y、z)での励起X線
の照射密度、
(e(x、y)・G2(x、y、z));位置(x、y、z)で出射された
蛍光X線に対する検出効率
【0040】
また、ここで、関数G1(x、y、z)は、励起X線が位置(x、y、z)まで進入する時の透過率を示す。したがって、G1(x、y、0)=1である。同様に、関数G2(x、y、z)は、位置(x、y、z)で出射された蛍光X線が試料表面に達するまでの透過率を示す。したがって、G2(x、y、0)=1である。
また、Cは励起X線のエネルギーであって、測定対象元素の種類、検出対象の蛍光X線エネルギー、測定時間、式中の単位系等で決まる定数を表す。
さらに、x及びyは試料表面に沿って設定した互いに直交するデカルト座標での2軸上の座標の値を示し、zはアルミナ表面からの深さを示す。
なお、積分範囲における「厚さ」は、対象としている薄膜パターンの厚さを示す。積分中でa(x、y)とe(x、y)の両方が正値の部分のみが、蛍光X線量Bに寄与する。その寄与領域が測定領域である。
【0041】
次に、膜厚T(x、y)の算出方法について説明する。
例えば、基板表面に沿って2次元的にアルミパッド51のパターンが繰り返される場合、以下の式を得ることができる。ここで、S1は単位構造の面積を示す。
【0042】
∫∫∫G1(x、y、z)・D(x、y、z)・G2(x、y、z)
dx・dy・dz (積分範囲:単位構造内)
=S1・B/(C・(∫∫a(x、y)・e(x、y)dx・dy))
(積分範囲:測定領域全面)
ここで、アルミパッド51の表面に沿った繰り返し構造が一方向にしか存在しない場合、繰り返し構造のないx,y軸上での繰り返し幅を任意の適当な幅として定義する。そうすると、上式中のS1及び積分範囲の「単位構造内」の定義を変更することなく上記の基本式を利用できる。
上式中の因子、(∫∫a(x、y)・e(x、y)dx・dy)は、光学素子の特性、配置等で決まるので、何らかの基準測定により較正した値を定数として使用することができる。
【0043】
次に、上式の左辺の積分を書き換えて、膜厚を算出する式を導く。まず、以後の計算を簡単に行うことができるようにするため、試料内部でのX線の減衰が無視できる程度に少ないと仮定し、G1(x、y、z)=G2(x、y、z)=1とする。その結果、以下のように書き換えることができる。
【0044】
LHS=∫∫∫D(x、y、z)dx・dy・dz (積分範囲:単位構造内)
ここで、測定対象の薄膜試料を上から見た時に、xy面内で測定対象元素を含む領域とそれ以外の領域が明確に分かれ、それぞれの領域での原子数密度D(x、y、z)がD、及び0となっている場合を考える。以後、単位構造内での測定対象元素を含む範囲を単位測定対象範囲とよび、そのxy面内での面積を単位測定対象面積S2とする。また、単位測定対象範囲でのアルミナの膜厚をT(x、y)とする。
【0045】
LHS=∫∫∫D(x、y、z)dx・dy・dz (積分範囲:単位構造内)
= ∫∫∫Ddx・dy・dz (積分範囲:単位測定対象範囲×厚み)
= D・∫∫T(x、y)dx・dy (積分範囲:単位測定対象範囲)
= D・T・∫∫dx・dy (積分範囲:単位測定対象範囲)
= D・T・S2
したがって、以下に示すアルミナの膜厚を算出するための(1)式を得ることができる。
【0046】
D・T・S2=S1・B/(C・(∫∫a(x、y)・e(x、y)
dx・dy)) (積分範囲:測定領域全面)
i.e.
T = (S1/S2)・B/(C・D・
(∫∫a(x、y)・e(x、y)dx・dy))
(積分範囲:測定領域全面)
・・・(1)
従って、(1)式より、蛍光X線量B、励起X線のエネルギーC、原子数密度D、パターン面積比(S1/S2)をもとに、アルミナの膜厚Tが求められることが分かる。但し、(∫∫a(x、y)・e(x、y)dx・dy)は、光学素子の特性、配置等で決まる因数である。
【0047】
本実施の形態では、計測手段3として、上述のような構成の蛍光X線測定装置7を用いて超音波でアルミナの膜厚を測定するようになっているが、この蛍光X線測定装置7で計測したアルミパッド51のアルミナ部分の膜厚データは実施の形態1,2と同様に、図1に示す制御部4に出力され、その後、実施の形態1,2と同様の動作を行う。従って、アルミパッド51や電極52の界面などにアルミナなどの酸化膜が形成されていても、酸化膜の膜厚に対応した最適な値に設定した超音波熱圧着条件、つまり超音波出力、圧着荷重、温度、圧着時間で超音波熱圧着装置2を作動させ、アルミナを高周波振動で除去するとともにアルミパッド51を加熱溶融させることができる。このため、たとえアルミナなどの酸化膜の膜厚が一定値t(図7参照)を越えていた場合でも、高い合金化率で熱圧着することができ、信頼度の高いワイヤボンディングを実現することが可能となる。
【0048】
また、本発明の測定手段には、測定すべきパッド上の酸化膜への入射量が所定のレベル以上あるものとして、白色光、超音波、X線などの音または光を測定媒体として用いてあるが、これらの手段によって酸化膜の膜厚測定が難しい場合には、特にこの3種のものに限定せず、これ以外の各種公知の適宜の手段を適用させることも、勿論可能である。
【0049】
なお、本発明は前記実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のワイヤボンディング装置は、超音波を用いたワイヤボンディングを確実に行うことができる、換言すれば超音波熱圧着によるボンディングワイヤの接続を確実に行うことができる効果を有し、製品不良の発生を防止して歩留まりの向上を図ることができるワイヤボンディングを伴う半導体チップ、例えば、CCDなどの固体撮像素子の製造装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るワイヤボンディング装置を示す要部説明図
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るワイヤボンディング装置で接続するアルミパッドを設けた固体撮像素子チップを示すものであり、(A)は平面図、(B)は正面図
【図3】(A)から(D)は本発明の第1の実施の形態に係るワイヤボンディング装置によるワイヤボンディングの作業工程を示す説明図
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るワイヤボンディング装置の計測手段を構成する分光エリプソメータの原理を示す説明図
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るワイヤボンディング装置の動作を示すフローチャート
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るワイヤボンディング装置により接続された固体撮像素子チップのアルミパッドを示す拡大断面図
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るワイヤボンディング装置と従来のワイヤボンディング装置により固体撮像素子チップにワイヤボンディングを行ったときのアルミナの膜厚と合金化率とについての相関性の比較を示すグラフ
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るワイヤボンディング装置の構成を示すブロック図
【図9】本発明の第3の実施の形態に係るワイヤボンディング装置の計測手段を構成する蛍光X線測定装置の原理を示す説明図
【符号の説明】
【0052】
1 ワイヤボンダ
11 キャピラリー
12 電気トーチ
2 超音波熱圧着装置
3 計測手段
4 制御部(制御手段)
5 固体撮像素子チップ
51 アルミパッド
52 電極
6 超音波解析装置(計測手段)
7 蛍光X線測定装置
L リードフレーム
W 金線(ボンディングワイヤ)
B 金ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱圧着により、半導体チップ内のパッドに、ボンディングワイヤを接続させるワイヤボンディング装置であって、
前記パッド上の酸化膜の膜厚を計測する計測手段と、
前記計測手段で測定した膜厚に関するデータを用いて、ワイヤボンディング時に前記パッドに作用する熱圧着条件を補正する制御手段と、
を備えたワイヤボンディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記計測手段は、分光エリプソメータを含むワイヤボンディング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記計測手段は、前記酸化膜の膜厚を、超音波を利用して測定する超音波解析装置を含むワイヤボンディング装置。
【請求項4】
請求項1に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記計測手段は、前記酸化膜の膜厚を、X線を利用して測定する蛍光X線測定装置を含むワイヤボンディング装置。
【請求項5】
請求項1に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記計測手段は、X線反射測定装置を含むワイヤボンディング装置。
【請求項6】
請求項1に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記パッドは、アルミニウムで形成されているワイヤボンディング装置。
【請求項7】
請求項1に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記パッドは、銅で形成されているワイヤボンディング装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のワイヤボンディング装置であって、
前記ボンディングワイヤは、金線であるワイヤボンディング装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のワイヤボンディング装置であって、
前記半導体チップは、CCDを含む固体撮像素子であるワイヤボンディング装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載のワイヤボンディング装置であって、
前記固体撮像素子は、CSPタイプの固体撮像素子チップであるワイヤボンディング装置。
【請求項11】
熱圧着により、半導体チップ内のパッドに、ボンディングワイヤを接続するワイヤボンディング方法であって、
前記パッド上の酸化膜の膜厚を計測する計測工程と、
前記計測工程で測定した前記酸化膜の膜厚に応じて、ワイヤボンディング時における熱圧着条件を制御する制御工程と、
を備えたワイヤボンディング方法。
【請求項12】
請求項11に記載のワイヤボンディング方法であって、
前記計測工程は、分光エリプソメータを用いて前記酸化膜の膜厚を光学的に測定する工程を含むワイヤボンディング方法。
【請求項13】
請求項11に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記計測工程は、超音波を用いて前記酸化膜の膜厚を光学的に測定する工程を含むワイヤボンディング方法。
【請求項14】
請求項11に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記計測工程は、X線を利用して測定する蛍光X線測定装置を用いて前記酸化膜の膜厚を光学的に測定する工程を含むワイヤボンディング方法。
【請求項15】
請求項11に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記計測工程は、X線反射測定装置を用いて前記酸化膜の膜厚を測定する工程を含むワイヤボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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