説明

ワイヤーハーネス用保護材、ワイヤーハーネス用保護材の製造方法及びワイヤーハーネス

【課題】電線に対する取り付け作業性を向上させること。
【解決手段】複数の縦線材と複数の横線材とが網目状に交差して形成され、折り曲げ変形されて凸形状に形成された折り曲げ部12を有するワイヤーハーネス用保護材10が、電線1の延在方向に折り曲げ部12を沿わせた姿勢で電線1の周囲を覆う筒状に曲げられて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電線を保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスにおける電線の保護材として、樹脂シートを用いることがある。また、軽量化を目的として、ネット状に形成された保護材が用いられることもある。例えば、特許文献1のワイヤーハーネス用のネット状保護材は、樹脂線材からなる縦線と横線とが編まずに交点で重ねられ、この交点が加圧熱融着されることによりネット状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−148335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のネット状保護材によると、曲げ難く電線に対する取り付け作業性が悪い。
【0005】
そこで、本発明は、電線に対する取り付け作業性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、電線の周囲を覆う形態で前記電線を保護するワイヤーハーネス用保護材であって、複数の縦線材と複数の横線材とが網目状に交差して形成され、折り曲げ変形されて凸形状又は凹形状に形成された折り曲げ部を有する。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネス用保護材であって、前記折り曲げ部は、並列状に複数形成されている。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤーハーネス用保護材であって、前記折り曲げ部は、連続して並列状に複数形成されている。
【0009】
第4の態様は、電線と、第1〜第3のいずれか一態様に係るワイヤーハーネス用保護材が、前記電線の中心軸方向に前記折り曲げ部を沿わせた姿勢で前記電線の周囲を覆う筒状に曲げられて形成された保護部とを備える。
【0010】
第5の態様は、第4の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記保護部は、長方形状に形成された前記ワイヤーハーネス用保護材が、前記電線に対して一方の端部側の部分を既に前記電線に巻きつけられた部分に対して前記電線の径方向に重ねる形状で巻きつけられて形成されている。
【0011】
第6の態様は、第4の態様に係るワイヤーハーネスであって、前記保護部は、細長帯状に形成された前記ワイヤーハーネス用保護材が、前記電線に対して螺旋状に巻きつけられて形成されている。
【0012】
第7の態様は、電線の周囲を覆う形態で前記電線を保護するワイヤーハーネス用保護材の製造方法であって、(a)熱可塑性樹脂線材である複数の縦線材と複数の横線材とが網目状に交差して形成されているネット状シート体を加熱する工程と、(b)前記工程(a)で加熱されて塑性変形可能な状態の前記ネット状シート体を折り曲げて凸形状又は凹形状の折り曲げ部を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係るワイヤーハーネス用保護材によると、複数の縦線材と複数の横線材とが網目状に交差して構成され、折り曲げ変形されて凸形状又は凹形状に形成された折り曲げ部を有するため、曲げ易く、電線に対する取り付け作業性を向上させることができる。
【0014】
第2の態様に係るワイヤーハーネス用保護材によると、折り曲げ部は、並列状に複数形成されているため、よりスムーズに曲げることができ、電線に対する取り付け作業性をより向上させることができる。
【0015】
第3の態様に係るワイヤーハーネス用保護材によると、折り曲げ部は、連続して並列状に複数形成されているため、電線の周囲を覆う形態において、周辺部材との接触による磨耗における到達距離を連続的に確保することができ、保護性能の向上に寄与する。
【0016】
第4の態様に係るワイヤーハーネスによると、ワイヤーハーネス用保護材が、電線の中心軸方向に折り曲げ部を沿わせた姿勢で電線の周囲を覆う筒状に曲げられているため、折り曲げ部を起点として曲げられると共に折り曲げ部が周方向に伸縮変形することにより外周部と内周部との経路差による曲がり難さが抑制される。このため、電線に対して容易にワイヤーハーネス用保護材を取り付けてワイヤーハーネスを構成することができる。
【0017】
第5の態様に係るワイヤーハーネスによると、保護部は、長方形状に形成されたワイヤーハーネス用保護材が、電線に対して一方の端部側の部分を他方の端部側の部分に対して電線の径方向に重ねる形状で巻きつけられて形成されているため、折り曲げ部が電線の延在方向に沿って延在し、電線を直線状に保持することができる。
【0018】
第6の態様に係るワイヤーハーネスによると、保護部は、ワイヤーハーネス用保護材が細長帯状に形成されて電線に対して螺旋状に巻きつけられているため、電線の延在方向に隣り合うワイヤーハーネス用保護材が相対変位することにより、保護された電線を曲げ易くなっている。
【0019】
第7の態様に係るワイヤーハーネス用保護材の製造方法によると、熱可塑性樹脂線材である複数の縦線材と複数の横線材とが網目状に交差して形成されているネット状シート体を加熱すると共に、加熱されて塑性変形可能な状態のネット状シート体折り曲げて凸形状又は凹形状の折り曲げ部分を形成するため、ネット状シート体が折り曲げ部分を有する形状に塑性変形される。これにより、電線に対する取り付け作業性の高いワイヤーハーネス用保護材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ネット状シート体を示す斜視図である。
【図2】筒状に曲げられたワイヤーハーネス用保護材を示す斜視図である。
【図3】ワイヤーハーネス用保護材を示す斜視図である。
【図4】変形例に係るワイヤーハーネス用保護材を示す斜視図である。
【図5】他の変形例に係るワイヤーハーネス用保護材を示す図である。
【図6】ワイヤーハーネス用保護材の巻きつけ態様を示す図である。
【図7】折り曲げ部及び平坦部の変形態様を示す図である。
【図8】変形例に係るワイヤーハーネス用保護材の巻きつけ態様を示す図である。
【図9】折り曲げ部の変形態様を示す図である。
【図10】ワイヤーハーネス用保護材の製造工程を示す図である。
【図11】ワイヤーハーネス用保護材の製造工程を示す図である。
【図12】ワイヤーハーネス用保護材の製造工程を示す図である。
【図13】ワイヤーハーネス用保護材の製造工程を示す図である。
【図14】ワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【図15】変形例に係るワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【図16】他の変形例に係るワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態に係るワイヤーハーネス用保護材、その製造方法及びワイヤーハーネス用保護材を用いたワイヤーハーネスについて説明する。
【0022】
<ワイヤーハーネス用保護材>
まず、ワイヤーハーネス用保護材10について説明する(図2、図3参照)。このワイヤーハーネス用保護材10は、電線1の周囲を覆った筒状の形態で該電線1を保護する部材である。
【0023】
説明の便宜上、保護対象の電線1について説明しておく。電線1は、例えば自動車等の車両に搭載されるワイヤーハーネスに組み込まれる電線であり、複数の電線が束ねられた電線束又は一本の電線のいずれでもよい。この電線1は、配索経路によっては周辺部材との接触する部分があり、車両の振動等により磨耗が生じる恐れもある。ワイヤーハーネス用保護材10は、このような電線1の部分を保護するための部材である。
【0024】
ワイヤーハーネス用保護材10は、熱可塑性樹脂線材である複数の縦線材4と複数の横線材6とが網目状に交差して形成されているネット状シート体により構成されている(図1参照)。
【0025】
ここでは、ネット状シート体により構成されるワイヤーハーネス用保護材10は、ポリプロピレン(PP)により形成されている。もっとも、ワイヤーハーネス用保護材10の材質はポリプロピレンに限られず、他にも、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)等を採用することができる。
【0026】
ネット状シート体は、例えば、次のようにして製造される。すなわち、柱状体の外周部に螺旋状に複数の断面視略円形の溝が形成された縦線用金型の外周側に、筒状体の内周部に螺旋状に複数の断面視略円形の溝が形成された横線用金型が相対回転可能に外嵌めされ、縦線用金型と横線用金型とが相対回転されながら各溝部を通じて溶融樹脂が押し出されることにより、内周側の複数の縦線材4と外周側の複数の横線材6とが交差して重ねられた交点で接着された筒状体が形成される。そして、筒状体は、形状維持のために水中等で冷却され、周方向一部をカット刃により切り開くことによりネット状シート体として形成される。このネット状シート体は、連続する帯状に形成され、ワイヤーハーネス用保護材10の大きさに応じて切断されて用いられる。
【0027】
ワイヤーハーネス用保護材10は、ネット状シート体が折り曲げ変形されて凸形状又は凹形状に形成された折り曲げ部12を有している(図3参照)。この折り曲げ部12は、筒状に曲げられた形態のワイヤーハーネス用保護材10の周方向において少なくとも一箇所に形成されている(図2、図6参照)。すなわち、折り曲げ部12は、ワイヤーハーネス用保護材10が筒状に曲げられた状態において中心軸方向に延在するように設けられている。なお、ここで言う中心軸方向に延在するとは、中心軸に平行な場合に限らず、中心軸に対して周方向一方に傾斜しつつ中心軸方向に延びている場合も含むものとする。すなわち、後述するワイヤーハーネス120において、細長帯状のワイヤーハーネス用保護材10を電線1に対して螺旋状に巻きつける際に、ワイヤーハーネス用保護材10の延在方向が周方向に対して傾斜することにより折り曲げ部12が中心軸に対して傾斜するため、螺旋巻きによって傾斜する範囲で中心軸に対して傾斜していてもよい。
【0028】
このワイヤーハーネス用保護材10は、全体として平面視長方形をなし、折り曲げ部12及び平坦部14が交互に形成されている。より具体的には、折り曲げ部12及び平坦部14は、並列状に複数(ここでは等間隔に)形成されている(図3参照)。ここでは、折り曲げ部12及び平坦部14は、長方形状の一端辺及び他端辺に沿って延在し、一端辺と他端辺とを結ぶ方向に交互に並列状に形成されている。
【0029】
折り曲げ部12は、延在方向に直交する断面視において、三角波状の凸形状に形成されている。この折り曲げ部12はワイヤーハーネス用保護材10が曲げられた形態において内外方向に高さを有し、周辺部材との接触により磨耗が生じる場合、折り曲げ部12の先端部と基端部との間で該内外方向に到達距離が確保されることによって保護性能の向上にも寄与する。すなわち、一般的に、ワイヤーハーネス用保護材10の磨耗は、周辺部材の面がワイヤーハーネス用保護材10の外周部に接触した状態で振動等により擦れることにより生じるため、折り曲げ部12が形成されている位置においては、折り曲げ部12の高さ寸法分の到達距離が確保され、磨耗に対する耐久性をもって電線1を保護することができる。
【0030】
また、平坦部14は、隣合う折り曲げ部12の端部(基端部)同士を略直線状に結ぶ部分である(図3参照)。そして、ワイヤーハーネス用保護材10が曲げられると、平坦部14は曲げ形態の周方向に沿って湾曲する。
【0031】
折り曲げ部12の間隔すなわち筒状に曲げられた形態のワイヤーハーネス用保護材10の周方向における数は、保護対象の電線1の径、ネット状シート体の厚さ寸法及び材質等による曲げ難さ、材料の量(材料費)及び到達距離確保による保護性能等を考慮して決定するとよい。曲げ変形の容易さ及び保護性能を向上させる観点から言うと、より多くの折り曲げ部12が形成されることが好ましいが、材料の使用量とのバランスを考慮して決定されることが好ましい。また、折り曲げ部12の高さ寸法についても、同様に決定するとよい。
【0032】
例えば、ワイヤーハーネス用保護材10は、保護する電線1の直径が5mm(32mm)である場合、折り曲げ部12の頂点同士の間隔を2.6mm(4.4mm)、折り曲げ部12の高さ寸法を1.2mm(2.8mm)に設定することができる。
【0033】
そして、このワイヤーハーネス用保護材10を筒状に曲げると、曲げ形態の内周部より外周部の方が延在経路が長くなるため、内周部に周方向の圧縮力が加わると共に外周部に周方向の引張力が作用する。ここで、折り曲げ部12はワイヤーハーネス用保護材10が曲げられる際に内周側部分が周方向に短縮される(すなわち隣合う平坦部14同士が近接する)ため、折り曲げ部12において内周部と外周部との経路差による曲げ難さを抑制すると共に、該折り曲げ部12を起点としてその両側方の平坦部14を電線1の外周部に沿って曲げ易くなる(図7参照)。つまり、ワイヤーハーネス用保護材10は、複数形成されている各折り曲げ部12が起点となると共に曲げ難さを抑制することにより、電線1に装着する際の曲げ変形をスムーズにすることができる。
【0034】
もっとも、ワイヤーハーネス用保護材10は、上記構成に限られるものではない。すなわち、折り曲げ部12は、筒状に曲げられた形態におけるワイヤーハーネス用保護材10の周方向において複数形成される場合に限られず、1つだけでもよい。
【0035】
また、図4、図8に示すようなワイヤーハーネス用保護材110の構成を採用することもできる。ワイヤーハーネス用保護材110は、上記平坦部14が省略されて、折り曲げ部12が、連続して並列状に複数形成されている。すなわち、ワイヤーハーネス用保護材110は、折り曲げ部12の延在方向に直交する断面視において、三角波が連続した形状である。
【0036】
そして、このワイヤーハーネス用保護材110を筒状に曲げると、折り曲げ部12の内周側部分が周方向に短縮される(すなわち隣合う折り曲げ部12の基端部同士が近接する)と共に、外周側部分が周方向に拡大される(すなわち隣合う折り曲げ部の先端部同士が周方向に離間する)。これにより、ワイヤーハーネス用保護材110は、各折り曲げ部12が起点となって曲げられると共に曲げ難さを抑制することにより、電線1に装着する際の曲げ変形をスムーズにすることができる。
【0037】
また、ワイヤーハーネス用保護材10が、全体として平面視長方形をなし、一端辺及び他端辺に沿って延在する折り曲げ部12及び平坦部14が、一端辺と他端辺とを結ぶ方向に交互に並列して設けられている形状について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、ネット状シート体の一端辺及び他端辺に対して傾斜して形成された折り曲げ部212及び平坦部214を有するワイヤーハーネス用保護材210の構成を採用することもできる(図5参照)。このようなワイヤーハーネス用保護材210は、後述するワイヤーハーネス120aに用いられるとよい(図16参照)。
【0038】
また、折り曲げ部12は、断面視三角波状の凸形状に限られず、断面視矩形波状又は正弦波状の凸形状でもよい。また、折り曲げ部12は、外周側に向けて凸となる凸形状に限られず、内周側に向けて凸となる凹形状でもよい。この場合、平坦部14が外周部に位置する。
【0039】
<製造方法>
次に、上記ワイヤーハーネス用保護材10の製造方法について説明する(図10〜図13参照)。
【0040】
本製造方法では、上述した熱可塑性樹脂で形成されたネット状シート体を加熱する工程(a)と、工程(a)で加熱されて塑性変形可能な状態のネット状シート体を折り曲げて凸形状又は凹形状の折り曲げ部を(ここでは複数)形成する工程(b)とを経てワイヤーハーネス用保護材10を製造する。なお、工程(a)が先に行われてもよいし、工程(a)と工程(b)とが並行して行われてもよい。
【0041】
ここでは、工程(a)と工程(b)とを並行して行う例について説明する。すなわち、平面状に広がるネット状シート体を、間隔をあけた2箇所で筒状形態の中心軸方向全体に亘って挟持する(図11参照)。次に、挟持した2箇所を近接させて挟持した間の部分を弛ませて曲げる。この曲げられた部分を、さらに前記近接させる方向に挟み込んで折り曲げ変形させると共に、この部分を加熱してネット状シート体を塑性変形させる(図12参照)。その後、挟持力を解除することにより、折り曲げ部12が形成される(図13参照)。続いて、上記同様の手順で等間隔に複数の折り曲げ部12を形成するとよい。以上の工程により、ワイヤーハーネス用保護材10が製造される。
【0042】
この作業は、例えば、以下の装置によって行うこともできる。すなわち、加熱板付きのチャック機構50を加熱板を対向させる姿勢で間隔をあけて一対設け、一方のチャック機構50を他方のチャック機構50に対して相対接離移動可能に配置し、このチャック機構50に向けてネット状シート体を送る送りローラ60を有する構成である。そして、送りローラ60によりネット状シート体を送り(図10参照)、一対のチャック機構50によりネット状シート体を挟み、この状態で一対のチャック機構50を相対近接移動させて(図11参照)、その間でネット状シート体を曲げると共に対向する加熱板により挟み込んで折り曲げた状態で塑性変形させる(図12参照)。
【0043】
また、ワイヤーハーネス用保護材10は、折り曲げ部12及び平坦部14形成用の三角波状の面と平坦面とを交互に有する一対の金型により、ネット状シート体を厚さ方向両側から挟んでプレス成形することにより製造することもできる。この場合、一対の金型自体を加熱してプレス成形してもよいし、ネット状シート体をヒーター等により予め加熱してからプレス成形してもよい。そして、ネット状シート体が、折り曲げ部12が形成された形態に塑性変形することにより、ワイヤーハーネス用保護材10が製造される。なお、上述したワイヤーハーネス用保護材210も、上記金型から折り曲げ部212及び平坦部214形成用の面の延在方向を変更することにより形成することができる。
【0044】
また、金型による成形は、外周面に折り曲げ部12及び平坦部14形成用の面を有するローラー状の一対の金型により、ネット状シート体を間に挟んで送る機構によっても実現することができる。
【0045】
ここで、工程(a)においてネット状シート体を加熱する温度は、ネット状シート体が塑性変形可能な程度に軟らかくなる温度(融点付近の温度)である。ここでは、ネット状シート体の材料としてポリプロピレン(PP)を採用しており、融点が125℃であるため、それと同じかそれより高い温度(例えば180℃)に加熱板又はヒーターの温度を設定して、加熱時間を調節することにより、ネット状シート体を125℃付近まで加熱する。
【0046】
また、上述したワイヤーハーネス用保護材110は、工程(b)において、ネット状シート体を折り曲げ変形させて連続して並列状に折り曲げ部12を形成することにより製造される。このワイヤーハーネス用保護材110は、連続した折り曲げ部12形成用の連続した三角波状の面を有する金型(図示省略)を用いて製造することができる。
【0047】
<ワイヤーハーネス>
次に、上述したワイヤーハーネス用保護材10を用いたワイヤーハーネス20について説明する(図14参照)。このワイヤーハーネス20は、電線1と、保護部22とを備えている。
【0048】
保護部22は、ワイヤーハーネス用保護材10が電線1の中心軸方向に折り曲げ部12を沿わせる姿勢で電線1の周囲を覆う筒状に曲げられて形成されている。より具体的には、保護部22は、長方形状に形成されたワイヤーハーネス用保護材10が、電線1に対して一方の端部側の部分を既に電線1に巻きつけられた部分に対して電線1の径方向に重ねる形状で巻きつけられて形成されている(図6、図14参照)。保護部22において既に電線1に巻きつけられた部分に対して重なる部分は、折り曲げ部12同士が重なる形態、平坦部14同士が重なる形態又は折り曲げ部12及び平坦部14同士が重なる形態のいずれかの形態となるように、ワイヤーハーネス用保護材10が巻きつけられているとよい。そして、電線1に巻きつけられたワイヤーハーネス用保護材10を外周側からテープ30を巻きつける等して筒状に曲げられた形状を維持することにより、保護部22が電線1周りに形成されている(図6参照)。
【0049】
また、ワイヤーハーネス用保護材210が上記と同様にして電線1に巻きつけられてもよい(図示省略)。この場合にも、保護部22において、ワイヤーハーネス用保護材210が既に電線1に巻きつけられた部分に対して重なる部分は、折り曲げ部212及び平坦部214同士が電線1の径方向に重なる形態となるように巻きつけられている。
【0050】
また、ワイヤーハーネス用保護材110が上記と同様にして電線1に巻きつけられて形成された保護部22aを有するワイヤーハーネス20aを構成することもできる(図8参照)。なお、この場合、保護部22aにおいて、既に電線1に巻きつけられた部分に対して重なる部分は、折り曲げ部12同士が電線1の径方向に重なる形態となるように、ワイヤーハーネス用保護材110が巻きつけられているとよい。
【0051】
他にも、図15に示すように、保護部122を採用してワイヤーハーネス120を構成することもできる。保護部122は、細長帯状に形成されたワイヤーハーネス用保護材10が、電線1に対して螺旋状に巻きつけられて形成されている。より具体的には、保護部122は、細長帯状のワイヤーハーネス用保護材10を、1周巻くごとに幅方向一方側の縁部を既に電線1に巻きつけられている部分に対して電線1の径方向に重ねる形状で巻きつけられて形成されているとよい。また、ワイヤーハーネス用保護材10は、既に電線1に巻きつけられた部分に対して、折り曲げ部12及び平坦部14同士が重なる形態で巻きつけられるとよい。本保護部122を形成するワイヤーハーネス用保護材10が、一端部及び他端部に対して折り曲げ部12及び平坦部14が平行な直線状に延在する形状であるため、保護部22において、各折り曲げ部12は、電線1の中心軸方向に対して周方向一方に傾斜して延在している。
【0052】
また、細長帯状に形成されたワイヤーハーネス用保護材210を電線1に対して螺旋状に巻きつける場合、折り曲げ部212及び平坦部214が電線1の中心軸方向に対して略平行に延在する形態の保護部122aを構成することができる(図16参照)。なお、この場合も、細長帯状のワイヤーハーネス用保護材210は、幅方向一方側の縁部において、折り曲げ部212及び平坦部214同士を電線1の径方向に重ねる形態でまきつけられて形成されているとよい。
【0053】
また、細長帯状のワイヤーハーネス用保護材110を用いて、電線1の周囲を覆う保護部を有するワイヤーハーネスを構成することもできる(図示省略)。この保護部は、細長帯状のワイヤーハーネス用保護材110が上記保護部122と同様にして電線1に巻きつけられて形成される。なお、この場合、保護部において、既に電線1に巻きつけられた部分に対して重なる部分は、ワイヤーハーネス用保護材110の幅方向一方側の縁部において、折り曲げ部12同士が電線1の径方向に重なる形態となるように、ワイヤーハーネス用保護材110が巻きつけられているとよい。
【0054】
上記実施形態に係るワイヤーハーネス用保護材10によると、複数の縦線材4と複数の横線材6とが網目状に交差して構成され、折り曲げ変形されて三角波状の凸形状に形成された折り曲げ部を有するため、曲げ易く、電線1に対する取り付け作業性を向上させることができる。また、折り曲げ部12が、並列状に複数形成された構成によると、よりスムーズに曲げることができ、電線1に対する取り付け作業性をより向上させることができる。
【0055】
また、折り曲げ部12が、連続して並列状に複数形成されているワイヤーハーネス用保護材110によると、電線1の周囲を覆う形態において、周辺部材との接触による磨耗における到達距離を連続的に確保することができ、保護性能の向上に寄与する。
【0056】
また、ワイヤーハーネス用保護材10を用いたワイヤーハーネス20によると、ワイヤーハーネス用保護材10が、電線1の延在方向に折り曲げ部12が延在する姿勢で電線1の周囲を覆う筒状に曲げられているため、折り曲げ部12を起点として曲げられると共に折り曲げ部12が周方向に伸縮変形することにより外周部と内周部との経路差による曲がり難さが抑制される。このため、電線1に対して容易にワイヤーハーネス用保護材10を取り付けてワイヤーハーネス20を構成することができる。
【0057】
また、長方形状に形成されたワイヤーハーネス用保護材10が電線1に対して一方の端部側の部分を他方の端部側の部分に対して電線1の径方向に重ねる形状で巻きつけられることにより保護部22が形成されているワイヤーハーネス20によると、折り曲げ部12が電線1の延在方向に沿って延在し、電線1を直線状に保持することができる。
【0058】
また、ワイヤーハーネス用保護材が細長帯状に形成されて電線1に対して螺旋状に巻きつけられることにより保護部122が形成されているワイヤーハーネス120によると、電線1の延在方向に隣り合うワイヤーハーネス用保護材10が相対変位することにより、保護された電線1を曲げ易くなっている。
【符号の説明】
【0059】
1 電線
4 縦線材
6 横線材
10、110、210 ワイヤーハーネス用保護材
12、212 折り曲げ部
14、214 平坦部
20、20a、120、120a ワイヤーハーネス
22、22a、122、122a 保護部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の周囲を覆う形態で前記電線を保護するワイヤーハーネス用保護材であって、
複数の縦線材と複数の横線材とが網目状に交差して形成され、折り曲げ変形されて凸形状又は凹形状に形成された折り曲げ部を有する、ワイヤーハーネス用保護材。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーハーネス用保護材であって、
前記折り曲げ部は、並列状に複数形成されている、ワイヤーハーネス用保護材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネス用保護材であって、
前記折り曲げ部は、連続して並列状に複数形成されている、ワイヤーハーネス用保護材。
【請求項4】
電線と、
請求項1〜請求項3に記載のワイヤーハーネス用保護材が、前記電線の中心軸方向に前記折り曲げ部を沿わせた姿勢で前記電線の周囲を覆う筒状に曲げられて形成された保護部と、
を備える、ワイヤーハーネス。
【請求項5】
請求項4に記載のワイヤーハーネスであって、
前記保護部は、長方形状に形成された前記ワイヤーハーネス用保護材が、前記電線に対して一方の端部側の部分を既に前記電線に巻きつけられた部分に対して前記電線の径方向に重ねる形状で巻きつけられて形成されている、ワイヤーハーネス。
【請求項6】
請求項4に記載のワイヤーハーネスであって、
前記保護部は、細長帯状に形成された前記ワイヤーハーネス用保護材が、前記電線に対して螺旋状に巻きつけられて形成されている、ワイヤーハーネス。
【請求項7】
電線の周囲を覆う形態で前記電線を保護するワイヤーハーネス用保護材の製造方法であって、
(a)熱可塑性樹脂線材である複数の縦線材と複数の横線材とが網目状に交差して形成されているネット状シート体を加熱する工程と、
(b)前記工程(a)で加熱されて塑性変形可能な状態の前記ネット状シート体を折り曲げて凸形状又は凹形状の折り曲げ部を形成する工程と、
を備える、ワイヤーハーネス用保護材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−228107(P2012−228107A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94949(P2011−94949)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】