説明

ワークの位置決め搬送装置

【課題】種々の成形加工品を共通のランナーをつけたままで取出し、このランナーを次の加工時に、位置決めをするための保持手段として活用する、ワークの位置決め搬送装置を提供する。
【解決手段】位置決め用コンベア2に固定された拘束治具3を設け、拘束治具3にランナー4を介してワークWを保持する構成とする。
拘束治具3は、ランナー4の基端部4Fを拘束する案内保持部10と、上方への抜けを防止する上蓋11と、ランナー4を案内保持部10の内面に押圧する押圧手段12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の成形加工品を共通のランナーをつけたままで取出し、このランナーを次の加工時に、位置決めをするための保持手段として活用し、正確に加工部にもたらして、加工できるようにした、ワークの位置決め搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工物であるワークを加工する際、パレットに保持固定するための共通部材をワークに取付けて、その共通部材を介してワークをパレットに取付けて、ワークを搬送、加工を施すようにしていた。また、最近では、このようなパレットをなくしても、ワークの搬送加工ができるようにワーク成形時に形成されるランナーを共通部材として用いて、搬送、位置決め、加工を行うことが提案されている。
【0003】
なお、加工後のワークは、上述のランナーを、例えば特許文献1に示すようなワーク取出し装置によって、製品としてのワークとランナーとを分離して、製品として回収するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−18915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワークによっては、共通部材を設けるには無理があり、デザイン上、支障があり、取付け時、邪魔になるということもある。
また、ランナーを共通部材として搬送、位置決め、加工を行うと、廃棄材処理に負担を要し、ランナーの変形により搬送や位置決めが困難となることがある。
本発明は、以上のような背景から提案されたものであって、種々の成形加工品を共通のランナーをつけたままで取出し、このランナーを次の加工時に、位置決めをするための保持手段として活用し、正確に加工部にもたらして、加工できるようにした、ワークの位置決め搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、搬送手段(2)と、搬送手段(2)に固定され、ワーク(W)を保持する拘束治具(3)とを備え、拘束治具(3)は、ワーク(W)形成時に生ずるワーク(W)と一体のランナー(4)を介してワーク(W)を保持する案内保持部(10)と、ランナー(4)を案内保持部(10)の内側に押込む押圧手段(12)とを備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、ワーク(W)を保持するのにワーク(W)形成時に生ずるランナー(4)を活用することができ、確実に安定して保持することができるようになり、高速搬送することも可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、搬送手段(2)傍らに、加工前のワーク(W)を載置して搬送手段(2)上の拘束治具(3)へ送り込むための搬送コンベア(8)を備え、搬送コンベア(8)から拘束治具(3)にワーク(W)を案内移載するための案内手段(16)を設けたことを特徴とする。
【0009】
これにより、加工前のワーク(W)を案内手段(16)を介して、搬送手段(2)上の拘束治具(3)へ容易に送り込むことができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、案内手段(16)は、搬送コンベア(8)上のワーク(W)を、搬送手段(2)における拘束治具(3)の案内保持部(10)に、ワーク(W)を支持するランナー(4)を介して案内するガイド路(17)を備えたことを特徴とする。
【0011】
これにより、加工前のワーク(W)を搬送コンベア(8)から搬送手段(2)上の拘束治具(3)へ、確実にずれなく送り込むことができる。
【0012】
請求項4記載の発明は、ガイド路(17)は、断面漏斗形状の通路として、拡開した開口幅寸法の一端側を、ワーク(W)を支持するランナー(4)の受け入れ側とし、一端側に比較して小さな開口幅寸法の他端側を、拘束治具(3)における案内保持部(10)への送り出し側として設定配置したことを特徴とする。
【0013】
これにより、ワーク(W)を支持するランナー(4)を、ガイド路(17)における、拡開した開口幅寸法の一端側の範囲内であれば、ガイド路(17)を伝って、他端側を介し、拘束治具(3)における案内保持部(10)へ送り込むことができる。
【0014】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、本発明にかかるワークの位置決め搬送装置1の一実施形態を模式的に示す。
この位置決め搬送装置1は、搬送手段2に固定された拘束治具3を設け、拘束治具3に加工すべき被加工物であるワークWを、ランナー4を介して保持する構成としている。
【0016】
搬送手段2は位置決め用コンベア2であり、駆動モータ5により、ベルト6、駆動ギヤ7を介して、例えば所定のタイミングで間欠的に動力が伝達されて、一つのワークWを支持する拘束治具3の分毎に移動し、拘束治具3に搭載されたワークWを加工部まで運ぶようにしている。
【0017】
また、かかる位置決め用コンベア2の傍らには位置決め用コンベア2と同期的に作動する搬送コンベア8が併設されている。
搬送コンベア8は、ワークWの成形加工機(図示省略)から取出されたワークWを搬送し、位置決め用コンベア2側に後述する手段により送り出す一方、位置決め用コンベア2における加工部で加工されたワークWを戻し手段(後述)により受け入れて、製品としてのワークWとランナー4とを分離して、製品として回収するワーク取出し装置に搬送するようにしている。
【0018】
ここでワークWについて説明する。ワークWは、例えばエンジンに組み込まれる部品の一つで、射出成形装置によって成形された、周知のエンジニアリングプラスチックによって構成している。この場合、ワークWが射出成形装置における金型(図示省略)から取出される際、射出ノズル(図示省略)から金型内のキャビティ(図示省略)に至る、通路に成形材料が残留することで、ランナー4としてワークWに繋がった状態で取出される。
【0019】
次に位置決め用コンベア2上の拘束治具3について説明する。
拘束治具3は、位置決め用コンベア2を構成するベルト部材9に、ワークWを支持するランナー4に対応して、2つを一組として、順次、固設している(図3、図4参照)。
この場合、拘束治具3はランナー4の基端部(後述)を案内拘束する案内保持部10と、案内保持部10上部の開口面を部分的に遮蔽して、案内保持部10に拘束したランナー4の基端部の上方への抜けを防止する上蓋11とを備えている。
また、拘束治具3には、案内保持部10において保持するランナー4の基端部を、案内保持部10の内面に押圧する押圧手段12を備えている。
【0020】
案内保持部10は、拘束治具3に、長手軸方向にランナー4の基端部全体を収容できるように溝状に形成されている。また、かかる案内保持部10の側部側には、案内保持部10内に向けて押圧手段12を操作可能に搭載する押圧手段格納部13を設けている。
【0021】
押圧手段12は、押圧手段格納部13に配置された板ばね部材12aと、板ばね部材12aにより案内保持部10内のランナー4の基端部を押圧する押圧球12bとにより構成している。押圧球12bは、案内保持部10の側部において押圧手段格納部13と連通する連通孔14を介して案内保持部10内に臨入するようにしている。
【0022】
ここで、ワークWを支持するランナー4について説明する。
ランナー4は、図2で示しているようにワークWと共に成形加工時に伴って形成されるもので、ワークW本体と同素材の成形樹脂から構成されている。
ランナー4は、ワークW本体を挟んで、互いに反対方向に突出すると共に、それぞれ鉤状に屈曲するL字状の脚部4L、4Lと、これら脚部4L、4L末端側に結合した基端部4F、4Fとで構成している。
基端部4F、4Fにおいて、一方の基端部4Fには、押圧手段12における押圧球12bが板ばね部材12aにより、連通孔14を介して案内保持部10内に没入当接して、案内保持部10内から基端部4Fが脱落しないように保持する、切欠当接部4Cを形成している。
【0023】
搬送コンベア8には、成形加工機(図示省略)から取出された直後のワークWを、位置決め用コンベア2側に送り出す位置で位置決めする一方、位置決め用コンベア2における加工部で加工されたワークWを戻して、このワークWを先のワーク取出し装置まで搬送するための位置決め搬送部材15を固設している。
【0024】
そして、位置決め用コンベア2と搬送コンベア8との間には、搬送コンベア8から位置決め用コンベア2上の拘束治具3に、加工前のワークWを案内移載するための案内手段16を設けている。この場合案内手段16は、位置決め用コンベア2の上面、左端側の位置、すなわちベルト部材9上を、ベルト部材9左端側に循環してきた、一組の拘束治具3、3の位置に配置している。
案内手段16は、ワークWを支持するランナー4を、拘束治具3における案内保持部10に案内する、一対のガイド路17、17を備えている。ガイド路17は、断面漏斗形状の通路として、拡開した開口幅寸法の一端側を、ワークWを支持するランナー4の受け入れ側とし、拡開した開口幅寸法の一端側に比較して小さい、拘束治具3における案内保持部10に対応した開口幅寸法の他端側を、拘束治具3における案内保持部10への送り出し側として、設定配置している。
【0025】
さらに、この位置決め搬送装置1には、搬送コンベア8から位置決め用コンベア2上の拘束治具3へ、加工前のワークWを案内手段16を介して送り込むための、適宜な構成の押込み装置Aが配設されている。
また、位置決め搬送装置1には、さらに、加工後のワークWを、搬送コンベア8側に戻す、適宜な構成の戻し装置Bが配設されている。
【0026】
本発明にかかる位置決め搬送装置1は、以上のように構成されるものであり、次にその作用を説明する。
成形加工機(図示省略)において成形加工が施され、成形加工機からは、金型に設定された通り、ワークWは、ワークW本体を挟んで、互いに反対方向に突出する脚部4L、4Lと、これら脚部4L、4L末端側に結合した基端部4F、4Fを有するランナー4と共に取出される。これにより、ワークWは、搬送コンベア8上に、ランナー4を支持脚として、順次乗せられ、位置決め用コンベア2側に送り出す位置まで搬送される。
この際、位置決め用コンベア2は、駆動モータ5により、ベルト6、駆動ギヤ7を介してベルト部材9を駆動し、ベルト部材9上に、ワークWを支持するランナー4に対応して、2つを一組として固定した拘束治具3を、順次、所定のタイミングで、間欠的に一組の拘束治具3分、移動させている。
【0027】
搬送コンベア8上にワークWを載せた状態で、位置決め搬送部材15が位置決め用コンベア2側に送り出す位置に達すると、位置決め用コンベア2は、同タイミングで一組の拘束治具3が、その送り出し位置に配設した、案内手段16を構成する一対のガイド路17、17の位置に達する。これにより、ワークWを支持するランナー4の基端部4F、4Fが、それぞれガイド路17、17の拡開した開口幅寸法の一端側の位置にもたらされ、一方、一端側に比較して縮小した開口幅寸法の他端側の位置に、それぞれ、位置決め用コンベア2側の拘束治具3における案内保持部10がもたらされる。
この場合、ワークWを支持するランナー4は、ガイド路17における、拡開した開口幅寸法の一端側の範囲内であれば、ガイド路17を伝って、他端側を介し、拘束治具3における案内保持部10へ送り込むことができるので、ワークWを支持するランナー4の位置合わせは容易である。
【0028】
ここで、押込み装置Aが作動され(図5参照)、これにより、搬送コンベア8上のワークWが、案内手段16の一対のガイド路17、17を介して位置決め用コンベア2側に送り出される。
これにより、ワークWを支持するランナー4の基端部4F、4Fが、それぞれ拘束治具3における案内保持部10に押圧手段12の押圧球12bを押し退ける状態で、押圧球12bによる押圧力を乗り越えて嵌入していく。
基端部4F、4Fのうち、一方の基端部4Fには、切欠当接部4Cが形成されているので、基端部4Fが案内保持部10内に完全に収容されたときに、押圧手段12の押圧球12bが板ばね部材12aにより、没入当接し、さらに、上蓋11によって案内保持部10内から基端部4Fが脱落しないように保持することができる。
【0029】
以上のようにして、位置決め用コンベア2側に移載されたワークWは、駆動モータ5により、ベルト6、駆動ギヤ7を介してベルト部材9を駆動し、同様のタイミングで、順次、一組の拘束治具3の間隔で間欠的に移動させ、加工部の位置まで搬送することができる(図6参照)。
なお、搬送コンベア8側も同様のタイミングで駆動され、後続するワークWを、案内手段16のガイド路17、17を介して、次の一組の拘束治具3における案内保持部10に移載することができる。
【0030】
このような一組の拘束治具3間隔で、間欠的に位置決め用コンベア2および搬送コンベア8を駆動していくことで、順次、ワークWを移載、搬送することができ、加工部の位置に達したところで、加工部における工機を作動させ、ワークWを拘束治具3における案内保持部10に保持した状態で加工を施すことができる(図7参照)。さらに、次のタイミングでは、加工後のワークWを一組の拘束治具3分、搬送すると共に、後続するワークWを、加工部の位置にもたらして加工を施すことができる。
【0031】
さらに、一組の拘束治具3間隔で、間欠的に位置決め用コンベア2および搬送コンベア8を駆動していくことで、加工後のワークWが位置決め用コンベア2の排出位置である右端側に達すると、搬送コンベア8は、位置決め搬送部材15が排出位置に達する。
ここで、戻し装置Bを作動することで、加工後のワークWは、拘束治具3における案内保持部10から離脱して、搬送コンベア8上に戻すことができ(図8参照)、製品としてのワークWとランナー4とを分離して回収するワーク取出し装置に搬送することができる。
【0032】
以上のように、本発明によれば、種々の成形加工品を共通のランナーをつけたままで取出し、このランナーを次の加工時に、位置決めをするための保持手段として活用することができるので、正確に加工部にもたらして、加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかるワークの位置決め搬送装置の一例を示す、模式的な要部構成説明図である。
【図2】図1に示す位置決め搬送装置における位置決め用コンベア上の拘束治具に保持されるワーク、およびワークの一例を示す外観図である。
【図3】図2に示す位置決め用コンベア上の拘束治具におけるワークの保持構造を示した、要部断面説明図である。
【図4】図3に示す、位置決め用コンベア上の拘束治具におけるワークの保持構造を示した、平面説明図である。
【図5】本発明にかかるワークの位置決め搬送装置において、搬送コンベア側から位置決め用コンベア側にワークを移載する際の工程説明図である。
【図6】本発明にかかるワークの位置決め搬送装置において、移載されたワークを、位置決め用コンベアより搬送する際の工程説明図である。
【図7】本発明にかかるワークの位置決め搬送装置において、移載されたワークを、加工部において、加工を施す際の工程説明図である。
【図8】本発明にかかるワークの位置決め搬送装置において、加工が施されたワークを、搬送コンベア側へ戻す際の工程説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 位置決め搬送装置
2 位置決め用コンベア
3 拘束治具
4 ランナー
4L 脚部
4F 基端部
4C 切欠当接部
5 駆動モータ
6 ベルト
7 駆動ギヤ
8 搬送コンベア
9 ベルト部材
10 案内保持部
11 上蓋
12 押圧手段
12a 板ばね部材
12b 押圧球
13 押圧手段格納部
14 連通孔
15 位置決め搬送部材
16 案内手段
17 ガイド路
W ワーク
A 押込み装置
B 戻し装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段(2)と、
搬送手段(2)に固定され、ワーク(W)を保持する拘束治具(3)と、
を備え、
前記拘束治具(3)は、前記ワーク(W)形成時に生ずるワーク(W)と一体のランナー(4)を介して前記ワーク(W)を保持する案内保持部(10)と、
前記ランナー(4)を前記案内保持部(10)の内側に押込む押圧手段(12)と、
を備えたことを特徴とするワークの位置決め搬送装置。
【請求項2】
前記搬送手段(2)傍らに、加工前のワーク(W)を載置して前記搬送手段(2)上の拘束治具(3)へ送り込むための搬送コンベア(8)を備え、
前記搬送コンベア(8)から前記拘束治具(3)にワーク(W)を案内移載するための案内手段(16)を設けたことを特徴とする請求項1に記載のワークの位置決め搬送装置。
【請求項3】
前記案内手段(16)は、前記搬送コンベア(8)上の前記ワーク(W)を、前記搬送手段(2)における前記拘束治具(3)の案内保持部(10)に、前記ワーク(W)を支持するランナー(4)を介して案内するガイド路(17)を備えたことを特徴とする請求項2に記載のワークの位置決め搬送装置。
【請求項4】
前記ガイド路(17)は、断面漏斗形状の通路として、拡開した開口幅寸法の一端側を、ワーク(W)を支持するランナー(4)の受け入れ側とし、前記一端側に比較して小さな開口幅寸法の他端側を、前記拘束治具(3)における案内保持部(10)への送り出し側として設定配置したことを特徴とする請求項3に記載のワークの位置決め搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−126683(P2009−126683A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306098(P2007−306098)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】