説明

ワーク反転装置

【課題】作業員の人力を介在させ、かつ装置の動作工程を集約することによって、装置の構成を簡素化したワーク反転装置を実現する。
【解決手段】ワーク表面の形状に合わせた把持体を有する一対のクランプアーム60と、該クランプアームをワークに対して把持位置又は非把持位置に動作させる回動軸52とからなるワーククランプ装置18と、該ワーククランプ装置を回動軸52の軸線を中心に反転可能に支持する昇降台46と、エアシリンダ26のピストンロッド32に設けられ該ピストンロッドの前進時に回動軸52に係合して回動軸52をワーク把持位置固定するカム42と、該ピストンロッドの前進時にカム42を該昇降台より先行上昇させ、該ピストンロッドの後退時に該昇降台を先行下降させる把持ロック機構98とを備え、ワークの昇降時にクランプアーム60を常に把持位置にロックさせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアで搬送されてくる被組立品(以下「ワーク」という。)を反転させるワーク反転装置に関し、詳しくは、作業員の人力を利用し、かつ装置の動作工程を集約することによって、構成を簡素化可能にしたワーク反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種組立品の組立ラインにおいては、組立工程中にコンベアで搬送されてくるワークを反転させるワーク反転工程を設ける場合がある。該反転工程では、ワークに対して通常複数の動作を行なうが、自動化されたワーク反転装置では、一動作当り1個のアクチュエータで行なうのが一般的であり、そのため、複数のアクチュエータを要し、これらアクチュエータの制御機構が複雑となる。
【0003】
また、装置の安全対策として、安全柵、ライトカーテン等の周辺構成部品が必要となり、設置スペースや投資コスト等が高くなる。
【0004】
特許文献1(特開2008−68984号公報)には、この種の自動化されたワーク反転装置が開示されている。この装置は、ワークを保持するためのワーク保持機構と、ワークをコンベアに対して離隔及び復帰させるための往復動機構と、ワークを回転させるための回転機構とを備え、該往復動機構と該回転機構とを機械的に連動させるためのリンク機構を設けて、アクチュエータの数を低減し、装置の簡素化を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−68984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたワーク反転のための自動化装置は、アクチュエータの数を低減できても、往復動機構と回転機構とを機械的に連動させるリンク機構が複雑かつ高コストとなる問題がある。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、作業員の人力を介在させて半自動化すると共に、装置の動作工程を集約することによって、装置の構成を簡素化したワーク反転装置を実現することを目的とする。
また、人力を介在させても安全性を維持できることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明のワーク反転装置は、
コンベアによって供給されるワークを反転させるワーク反転装置において、
前記コンベアに面して立設された架台と、
該架台から該コンベアの上方に突設されワーク把持面を有する一対のクランプアームと、該一対のクランプアームと連結され軸方向の移動により該一対のクランプアームをワークに対して把持位置又は非把持位置に動作させる操作棒と、
ピストンロッドが前記操作棒に向けて前進又は後退するエアシリンダと、前記クランプアームの上面と下面とを反転可能に支持すると共に、前記架台に昇降可能に支持された昇降台と、を備え、
該ピストンロッドは、前進時に該操作棒に係合して該一対のクランプアームがワークを把持する位置に固定させた後該昇降台を上昇させると共に、後退時に該昇降台を先行下降させ該昇降台が下降した後に該操作棒との係合を解除して該一対のクランクアームの固定を解除するように動作させるものである。
【0009】
本発明では、ワークの反転動作を作業員の人力で行って装置構成を半自動化し、ワークの反転動作及び該反転動作の前後に行なう昇降動作とを1台のアクチュエータ(エアシリンダ)で実現可能にしている。
これによって、全自動化装置と比べて、装置構成の簡素化かつ低コスト化を可能にしたものである。
また、ワークの反転動作で、挟まれ防止を配慮して、一対のクランプアームを作業員が両手で行なうようにし、作業員の怪我を防止している。
【0010】
さらに、エアシリンダのピストンロッドの動きで昇降台の昇降中はクランクアームをワークの把持位置でロックするようにしているので、ワークがワーククランプから外れて落下する虞がない。
【0011】
本発明において、前記ピストンロッドと一体の長孔形成部材と、該長孔形成部材に形成された第1の長孔に摺動可能に挿入された軸体と、該軸体に一体形成され前記操作棒に係合して前記一対のクランクアームがワークを把持する位置に該操作棒を固定するカムと、前記昇降台に一体形成され第2の長孔を有すると共に該第2の長孔に該軸体が摺動可能に挿入された昇降座と、を更に備え、該ピストンロッドが、前進時に該カムを該昇降座より先行上昇させ、後退時に該昇降台を該カムより先行下降させるように動作されるようにするとよい。
【0012】
これによって、ピストンロッドの前進時、前記カムが昇降座より先行上昇するので、クランプアームのワーク把持位置での操作棒の固定が先行する。また、ピストンロッドの後退時、今度は昇降座の下降が先行して、ピストンロッドが下降する前にクランプアームによるワークの把持が解除されることはない。
前記構成によって、簡単かつ低コストな構成で昇降中のワークの落下を防止できる。
【0013】
前記構成に加えて、前記軸体が該第1の長孔の前記操作棒側先端位置に位置するように該軸体にバネ力を付勢するバネ部材と、を更に備えるようにするとよい。
これによって、該バネ部材のバネ力が操作棒側に働くので、エアシリンダのエア圧が低下した時でも、クランクアームをワークの把持位置に固定し続けることができる。
【0014】
本発明において、エアシリンダに圧縮空気を給排する圧縮空気給排機構を制御して該エアシリンダの作動を制御する操作桿を昇降台に設けるようにするとよい。これによって、作業員が該操作桿を操作してエアシリンダの作動を制御できる。そのため、エアシリンダの作動を自動化するのに要する複雑な制御機構を不要とすると共に、作業員の手元操作によりエアシリンダの微妙な制御を可能とする。
【0015】
また、本発明において、昇降台の最下降位置を規定するストッパを架台に設けるようにするとよい。これによって、装置に異常が起きた場合でも、ワーククランプ装置がコンベアに衝突することがなくなり、コンベアやワーク又はワーククランプ装置の破損を確実に防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のワーク反転装置によれば、コンベアによって供給されるワークを反転させるワーク反転装置において、コンベアに面して立設された架台と、該架台から該コンベアの上方に突設されワーク把持面を有する一対のクランプアームと、該一対のクランプアームと連結され軸方向の移動により該一対のクランプアームをワークに対して把持位置又は非把持位置に動作させる操作棒と、ピストンロッドが操作棒に向けて前進又は後退するエアシリンダと、前記クランプアームの上面と下面とを反転可能に支持すると共に、前記架台に昇降可能に支持された昇降台と、を備え、該ピストンロッドは、前進時に該操作棒に係合して該一対のクランプアームがワークを把持する位置に固定させた後該昇降台を上昇させると共に、後退時に該昇降台を先行下降させ該昇降台が下降した後に該操作棒との係合を解除して該一対のクランクアームの固定を解除するように動作されることにより、1個のアクチュエータ(エアシリンダ)でワークの反転動作を行なうことができ、装置構成を簡素化かつ低コストとすることができると共に、エアシリンダのピストンロッドの動作により、コンベアの上方で昇降中のワークが落下するのを確実に防止して、ワークや装置の破損を防止できる。また、ワーククランプ装置の反転を作業員が両手で行なうようにして作業員の安全を確保している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るワーク反転装置の全体正面図である。
【図2】前記ワーク反転装置の側面図である。
【図3】図2中のA矢視図である。
【図4】前記ワーク反転装置の背面図である。
【図5】図4中のB部拡大図である。
【図6】前記ワーク反転装置の平面図である。
【図7】図6中のC−C線に沿う断面図である。
【図8】前記ワーク反転装置のワーククランプ部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この考案の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0019】
車両のトランスミッション装置を組み立てる組立ラインに設けられたワーク反転装置に本発明を適用した一実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。図1は、該ワーク反転装置10の全体正面図である。図1により、ワーク反転装置10の作動手順の概略を説明する。図1において、組み立て途中のトランスミッション装置(以下「ワーク」という。)12を搬送するコンベア14に面してワーク反転装置10が立設されている。
【0020】
ワーク反転装置10は、架台16にワーククランプ装置18やワーククランプ装置18を昇降させる昇降装置28が設けられている。ワーク12は、コンベア14上に一定間隔で固定されたパレット22に載置された状態で搬送される(図2及び図6参照)。
ワーク12がコンベア14で矢印a方向に搬送され、ワーク反転装置10の前面に到達し、該ワーク反転装置前面の所定位置にパレット22を位置決めした時点でコンベア14が一旦停止する。このとき、ワーククランプ装置18は、ワーク12がワーク反転装置10の前面に進入できるように、コンベア14の上方位置に退避されている。
【0021】
次に、作業員が操作桿24を操作し、エアシリンダ26等からなる昇降装置28を作動させて、ワーククランプ装置18を下降させる。ワーククランプ装置18をワーク12の横方向で同一高さに下降させた後、ワーククランプ装置18によりワーク12の両側を把持する。
次に、操作桿24を操作してエアシリンダ26を作動させ、ワーククランプ装置18を上昇させる。このとき後述する把持ロック機構98により、ワーククランプ装置18はワーク12を把持した状態でロックされている。
【0022】
次に、ワーククランプ装置18の上昇を停止させ、作業員がワーククランプ装置18を手で反転させる。ワーク12が反転した位置で後述するストッパにより停止する。次に、操作桿24を操作してワーククランプ装置18を下降させ、ワーク12をパレット22上に戻す。その後、ワーククランプ装置18がワーク12の把持を解除する。
【0023】
次に、図2〜図8により、ワーク反転装置10の詳細構成を説明する。図2に示すように、架台16の下部にコンベア14を支持するコンベア台30及びエアシリンダ26が固設されている。エアシリンダ26のピストンロッド32には、長孔形成部材34が連結され、該長孔形成部材34に第1の長孔36が穿設されている。第1の長孔36は、長径が
ピストンロッド32の伸縮方向に配置されている。第1の長孔36に円筒状のピン40が挿入されている。
【0024】
図5に示すように、ピン40は、金属ワッシャ38を介して軸の末端でスナップリング39により長孔形成部材34から外れないように固定されている。ピン40は第1の長孔36内を摺動可能である。ピン40には、先端が先細となるように傾斜面42aを有する円筒形状のカム42が一体に形成されている。
【0025】
図6において、架台16の一部を構成する支柱44に案内レール48が固設され、昇降台46が該案内レール48に案内されて昇降可能に支持されている。昇降台46には、操作桿24が取り付けられ、作業員が操作桿24を上下に操作し、エアシリンダ26に圧縮空気を給排する空気給排機構50を制御することで、エアシリンダ26の稼動を制御できる。昇降台46には回動軸52が水平方向に配置されている。回動軸52は内側軸受48に支持され、回動軸52及び内側軸受48は、外側軸受54によって回動可能に支持されている。内側軸受48にはブラケット56が一体に固設されている。
【0026】
回動軸52の一端には回動板58が一体に連結されている。回動板58には軸62を介してL字形を有する一対のクランプアーム60a及び60bの一端が接続されている。該クランプアーム60a,60bは、ブラケット56に設けられた軸64に、該軸64を中心として回動可能に支持されている。
各クランプアーム60a、60bには、ワーク12の両側表面形状に合わせた把持面を有する把持体66a及び66bが装着されている。回動軸52が矢印b方向に往復動すると、軸62が62’の位置との間を移動する。そして、クランプアーム60a、60bが矢印c方向に揺動して、ワーク12の把持位置又は把持解除位置60’に位置する。
【0027】
次に、ワーク12の反転機構を説明する。図3において、ブラケット56に割り出し円板59が一体に固設されている。割り出し円板59は円板とリングとが一体となって構成され、断面がコ字形を有する。そして、該リング部に周方向2箇所に180°間隔でロックピン挿入用孔59aが穿設されている。昇降台46にはロックピン固定用ブロック61が固設され、ロックピン固定用ブロック61にはロックピン挿入用孔61aが穿設されている。そして、ロックピン挿入用孔59a及び61aにロックピン63が挿入されて、ワーククランプ装置18の回動がロックされている。
【0028】
図6及び図7に示すように、ブラケット56にはストッパブロック68が固設されている。一方、昇降台46には、ストッパブロック68の移動軌跡に面して位置決め調整用ブロック72が固設され、該位置決め調整用ブロック72にはストッパボルト70が螺合している。ストッパボルト70は、反転後のワーク12の姿勢を位置決めする位置に設けられている。
【0029】
コンベア14の上方でクランプアーム60a、60bでワーク12を把持した状態で、ワーク12を反転させる場合には、まず、作業員が手動でロックピン63をロックピン挿入用孔59a及び61aから引き抜く。次に、作業員が手動でクランプアーム60a、60bを反転させると、反転した位置でストッパブロック68がストッパボルト70に当って停止する。ストッパブロック68をストッパボルト70に当てた状態でロックピン63をロックピン挿入用孔59a及び61aに挿入し、ワーククランプ装置18の回動をロック状態とする。
なお、ストッパボルト70の位置は、位置決め調整用ブロック72に対するストッパボルト70の位置を調整することにより、調整可能である。
【0030】
図2に示すように、架台16に穿設されたネジ穴76にストッパボルト74が螺合している。昇降台46の下端部がストッパボルト74に当ることにより、昇降台46の最下端位置を規制できる。ストッパボルト74の高さは、ネジ穴76への螺入位置で調整できる。
【0031】
図2及び図4に示すように、回動軸52の他端上方には、支持ブロック77が突設されている。支持ブロック77の両側には一対のリンクプレート78,78が軸80を中心に矢印d方向に回動可能に軸支されている。この一対のリンクプレート78の内側面にカムフォロア82が突設されている。回動軸52の端部には、2個のフランジ84,84が一体形成されており、該フランジ84間にカムフォロア82が挿入されている。リンクプレート78、78の下端には、このリンクプレート78間に架設された軸86にローラフォロア88が回動可能に装着されている。
【0032】
リンクプレート78,78の上端には、外側に丸棒90が突設され、該丸棒90と前述のピン40との間には、コイルバネ92が架設され、該コイルバネ92の弾性力がピン40を操作棒52側に付勢している。
また、昇降台46の端部には、中空円筒部94が一体形成され、該中空円筒部94には、ピストンロッド32の伸縮方向に長径を有する第2の長孔96が穿設されている。中空円筒部94は長孔形成部材34とカム42との間に配置され、第2の長孔96にピン40が遊嵌されている。
【0033】
かかる構成において、コンベア14上にパレット22が所定間隔で固定され、パレット22上にワーク12が位置決め固定されて搬送される。ワーク12が固定されたパレット22がワーク反転装置10の前面に到達すると、パレット22が図示省略の位置決め装置で位置決めされた状態で停止する。このとき、ワーククランプ装置18はパレット22の搬入をじゃましないようにコンベア14の上方に位置している。
【0034】
次に、操作桿24を操作し、空気給排機構50を介してエアシリンダ26に圧縮空気を給排することで、エアシリンダ26を作動させる。該空気給排機構50により、操作桿24を下方へ向けると、ピストンロッド32も下降し、操作桿24を上方へ向けると、ピストンロッド32も上昇するように作動する。操作桿24を操作し、ワーククランプ装置18を下降させ、一対のクランプアーム60をワーク12の側方に位置させる。このとき、クランプアーム60は、非把持位置60’に位置している。
【0035】
次に、作業員が手でリンクプレート78を矢印d方向に移動させ、回動軸52を矢印e方向に移動させた状態(図2に図示する位置)で静止させる。回動軸52がこの位置に来ることで、一対のクランプアーム60、60がワーク12を把持する位置に移動し、把持体66がワーク12の両側面に当接する。このとき、ピン40はコイルバネ92の弾性力で第1の長孔36の上端に押接されている。また、中空円筒部94の上下方向位置は、昇降台46がストッパボルト74に接した位置で決められる。
【0036】
次に、操作桿24を操作して、ピストンロッド32を伸長させる。ピストンロッド32が伸長すると、まず、ピン40が、中空円筒部94に対して図3に示すΔLだけ先行上昇する。これによって、ピン40と一体のカム42が42’の位置に上昇する。カム42が42’の位置に来たことで、ローラフォロア88を図2に図示の位置に固定する。これで把持体66がワーク12を把持した位置に固定される。
【0037】
次に、ピストンロッド32をさらに上昇させると、長孔形成部材34が中空円筒部94の底部に当り、中空円筒部94を押し上げるので、その後、中空円筒部94、昇降台46及びピン40は相対移動せず、一体となって上昇し、ワーククランプ装置18も上昇する。
ワーク12が所定高さまで上昇したら、操作桿24を操作して上昇を停止する。この間に作業員が反転装置のロックピン63を外す。次に、作業員がクランプアーム60をもってワーク12を反転させる。ワーク12を反転させると、ストッパブロック68がストッパボルト70に当り、ストッパブロック68がストッパボルト70に当たった位置で停止する。ここで作業員がロックピン63をロックピン挿入用孔59a及び61aに挿入してロックする。
【0038】
次に、操作桿24を下げてピストンロッド32を下降させ、ワーククランプ装置18を下降する。ピストンロッド32の下降当初は、中空円筒部94及びカム42が一体となって下降する。従って、カム42は図2中42’の位置にあり、クランプアーム60はワーク12を把持した状態にある。
昇降台46がストッパボルト74に当ると、中空円筒部94はそこで停止するので、その後、ピン40及びカム42のみが下降する。そのため、カム42は42’の位置から下がり、クランクアーム60の把持位置での固定が解除される。
【0039】
このように、長孔形成部材34、コイルバネ92及び中空円筒部94等によって、ワーククランプ装置18の昇降中に常にクランプアーム60を把持位置にロック可能な把持ロック機構98を構成している。
【0040】
本実施形態によれば、ワーク12を反転させる動作を作業員の人力で行なうようにしたので、1台のアクチュエータ(エアシリンダ26)しか必要とせず、装置構成を簡素化かつ低コストとすることができる。また、ストッパブロック68とストッパボルト70とを設けたことにより、反転後のワーク12の位置決めを正確に行なうことができる。
また、ワーク12の反転は、一対のクランプアーム60、60を作業員が両手で行なうようにしているので、作業員が指を挟まれる等の事故を防止できる。
【0041】
さらに、前記把持ロック機構98を具えたことにより、ワーク12を昇降している途中でワーク12をワーククランプ装置18で確実に把持でき、ワーク12を落下させる虞がない。また、把持ロック機構98により、簡単かつ低コストな構成で昇降中のワーク12の落下を防止できる。
【0042】
また、作業員が操作桿24を操作してエアシリンダ26の作動を制御しているので、エアシリンダ26の作動を自動化するのに要する複雑な制御機構を不要とすると共に、作業員の手元操作によりエアシリンダ26の微妙な制御を可能とする。
また、昇降台46の最下降位置を規定するストッパボルト74を設けているので、装置に異常が起きた場合でも、ワーククランプ装置18がコンベア14に衝突することがなくなり、コンベア14やワーク12又はワーククランプ装置18の破損を確実に防止できる。
【0043】
また、把持ロック機構98にコイルバネ92を設け、コイルバネ92の弾性力を操作棒52側に作用させたことにより、エアシリンダ26のエア圧が低下した場合であっても、カム42を42’の位置に保持できる。そのため、クランクアーム60によるワークの把持状態を固定し続けることができる。
【0044】
なお、コイルバネ92を設けなくても、把持ロック機構98のロック機能を維持できる。コイルバネ92を設けない場合は、ピン40が第1の長孔36の上端に押接されない。そのため、図4で示すように、ピストンロッド32の伸長開始時に、中空円筒部94の底部とカム42の底部との高さの差ΔL’だけカム42が中空円筒部94より先行上昇することになる。これによって、ワーク12の昇降時にクランプアーム60を常に把持位置にロックさせることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、簡単かつ低コストで、作業員の安全を考慮した半自動式のワーク反転装置を実現できる。
【符号の説明】
【0046】
10 ワーク反転装置
12 ワーク
14 コンベア
16 架台
18 ワーククランプ装置
24 操作桿
26 エアシリンダ
28 昇降装置
32 ピストンロッド
34 長孔形成部材
36 第1の長孔
40 ピン(軸体)
42,42’ カム(固定体)
46 昇降台
50 圧縮空気給排機構
52 回動軸(操作棒)
59 割り出し円板
59a、61a ロックピン挿入用孔
60,60’ クランプアーム
61 ロックピン固定用ブロック
63 ロックピン
66 把持体
74 ストッパボルト
92 コイルバネ
94 昇降座
96 第2の長孔
98 把持ロック機構98

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアによって供給されるワークを反転させるワーク反転装置において、
前記コンベアに面して立設された架台と、
該架台から該コンベアの上方に突設されワーク把持面を有する一対のクランプアームと、該一対のクランプアームと連結され軸方向の移動により該一対のクランプアームをワークに対して把持位置又は非把持位置に動作させる操作棒と、
ピストンロッドが前記操作棒に向けて前進又は後退するエアシリンダと、前記クランプアームの上面と下面とを反転可能に支持すると共に、前記架台に昇降可能に支持された昇降台と、を備え、
該ピストンロッドは、前進時に該操作棒に係合して該一対のクランプアームがワークを把持する位置に固定させた後該昇降台を上昇させると共に、後退時に該昇降台を先行下降させ該昇降台が下降した後に該操作棒との係合を解除して該一対のクランクアームの固定を解除するように動作されることを特徴とするワーククランプ装置。
【請求項2】
前記ピストンロッドと一体の長孔形成部材と、該長孔形成部材に形成された第1の長孔に摺動可能に挿入された軸体と、該軸体に一体形成され前記操作棒に係合して前記一対のクランクアームがワークを把持する位置に該操作棒を固定するカムと、前記昇降台に一体形成され第2の長孔を有すると共に該第2の長孔に該軸体が摺動可能に挿入された昇降座と、を更に備え、該ピストンロッドが、前進時に該カムを該昇降座より先行上昇させ、後退時に該昇降台を該カムより先行下降させるように動作されることを特徴とする請求項1に記載のワーククランプ装置。
【請求項3】
該軸体が該第1の長孔の前記操作棒側先端位置に位置するように該軸体にバネ力を付勢するバネ部材と、を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載のワーククランプ装置。
【請求項4】
前記エアシリンダに圧縮空気を給排する圧縮空気給排機構を制御して該エアシリンダの作動を制御する操作桿を前記昇降台に設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のワーククランプ装置。
【請求項5】
前記架台に前記昇降台の最下降位置を規定するストッパを設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のワーククランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−247910(P2010−247910A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96272(P2009−96272)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】