説明

ワーク吸着保持方法

【課題】ピストンに接続された吸着手段がワークを吸着保持する際のワークに加わる衝撃力を極力小さくしたワーク吸着保持方法を提供すること。
【解決手段】ピストンヘッド12aの上方の上方空間15aと、ピストンヘッド12aの下方の下方空間15bと、を有するエアーシリンダ10を用いたワーク吸着保持方法であって、上方空間15aの気圧を大気圧とし、下方空間15bの気圧を大気圧より大きくすることにより、ピストン12を上昇させた状態から、下方空間15bの気圧を大気圧とし、上方空間15aの気圧を所定時間、大気圧より大きくすることにより、ピストン12の下降を開始させ、所定時間経過後に上方空間15a及び下方空間15bの気圧を大気圧とした状態でピストン12を下降させて吸着手段13にワークWを吸着保持させるワーク吸着保持方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの吸着保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工の分野においては、ワークを吸着保持して、搬送させるためにエアーシリンダが用いられる。
ここで、エアーシリンダは、シリンダ及びピストンからなり、一定の圧力を持った空気を用いてシリンダを制御することにより、ピストンを昇降移動させる装置である。
【0003】
例えば、ロボットアームのワーク保持部に、ワークの位置決め時の干渉や、作業時の振動で発生するワークの変形を防ぐために採用されたエアーシリンダが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】登録実用新案第3124764号公報
【特許文献2】登録実用新案第3135063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のエアーシリンダを含めた従来のエアーシリンダにおいては、ピストンに接続された吸着手段がワークを吸着保持する際のワークに加わる衝撃力が大きい。
すなわち、吸着手段が移動し、停止しているワークに当接する際、吸着手段からワークに伝わる衝撃が大きくなる傾向にある。
この場合、かかる衝撃により、ワークが傷付いたり、変形したりする虞がある。
なお、この衝撃は、エアーシリンダを垂直方向に用いる場合、ピストンを下降移動させる力に加え、ピストン自体の重量が働くので、より大きくなる。
【0005】
また、複数枚のワークが積層されたスタックから、ワークを吸着保持して搬送する場合において、ワークを2枚同時に吸着保持してしまうダブルブランクが生じるのを抑制するため、スタックの側面に磁石を近接させ、スタックを磁極化し、ワーク同士の間に隙間を形成させる方法が採用されている。
ところが、特許文献1及び特許文献2に記載のエアーシリンダを含めた従来のエアーシリンダを用いると、上述したように吸着手段がワークを保持する際の衝撃が大きいので、ワーク同士間の隙間が閉じられてしまい、結果としてダブルブランクが発生する虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ピストンに接続された吸着手段がワークを吸着保持する際のワークに加わる衝撃力を極力小さくしたワーク吸着保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、ピストンを下降させる際に、上方空間及び下方空間の気圧を大気圧とすることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)シリンダと、該シリンダに内接するピストンヘッド及び該ピストンヘッドからシリンダ外に延出するように接続されたピストンロッドからなるピストンと、ピストンロッドの下端に取り付けられた吸着手段と、シリンダ及びピストンヘッドにより形成されるピストンヘッドの上方の上方空間と、シリンダ及びピストンヘッドにより形成されるピストンヘッドの下方の下方空間と、を有するエアーシリンダを用いたワーク吸着保持方法であって、上方空間の気圧を大気圧とし、下方空間の気圧を大気圧より大きくすることにより、ピストンを上昇させた状態から、下方空間の気圧を大気圧とし、上方空間の気圧を所定時間、大気圧より大きくすることにより、ピストンの下降を開始させ、所定時間経過後に上方空間及び下方空間の気圧を大気圧とした状態でピストンを下降させて吸着手段にワークを当接させ、吸着保持させるワーク吸着保持方法に存する。
【0009】
本発明は、(2)シリンダと、該シリンダに内接するピストンヘッド及び該ピストンヘッドに垂下し且つシリンダ外に延出するように接続されたピストンロッドからなるピストンと、ピストンロッドの下端に取り付けられた吸着手段と、シリンダ及びピストンヘッドにより形成されるピストンヘッドの上方の上方空間と、シリンダ及びピストンヘッドにより形成されるピストンヘッドの下方の下方空間と、を有するエアーシリンダ、上方空間に連通するようにシリンダに接続され上方空間にエアーを流出入するための上方エアー流出入管、下方空間に連通するようにシリンダに接続され下方空間にエアーを流出入するための下方エアー流出入管、上方エアー流出入管及び下方エアー流出入管へのエアーの流出入を切り替える切替弁、該切替弁に接続されたエアー流入管及び開放管、及び該エアー流入管に接続されたコンプレッサー、を備えたエアー供給機構を用いたワーク吸着保持方法であって、上方エアー流出入管を切替弁により開放管に接続させ上方空間の気圧を大気圧とし、下方エアー流出入管を切替弁によりエアー流入管に接続させ下方空間の気圧を大気圧より大きくすることにより、ピストンを上昇させた状態から、下方エアー流出入管を切替弁により開放管に接続させ下方空間の気圧を大気圧とし、上方エアー流出入管を切替弁によりエアー流入管に接続させ上方空間の気圧を所定時間、大気圧より大きくすることにより、ピストンの下降を開始させ、所定時間経過後に上方エアー流出入管及び下方エアー流出入管を切替弁により開放管に接続させ上方空間及び下方空間の気圧を大気圧とした状態でピストンを下降させて吸着手段にワークを当接させ、吸着保持させるワーク吸着保持方法に存する。
【0010】
本発明は、(3)ピストンが下降を開始した時から、吸着手段がワークに当接するまでの時間をT1とし、所定時間をtとした場合に、下記式を満たす上記(1)又は(2)に記載のワーク吸着保持方法に存する。
t≦0.8T1
0<t≦0.5(秒)
【0011】
本発明は、(4)所定時間と、ワークを吸着保持した後の吸着手段を上昇させる時間とがタイマーによって制御されている上記(1)又は(2)に記載のワーク吸着保持方法に存する。
【0012】
本発明は、(5)吸着保持手段が、磁石が近接されることによりワーク同士の間に隙間が形成されたスタックの最上位のワークを吸着保持するものであり、ピストンが下降する際の吸着保持手段の下限の位置が、スタックのワーク同士の間に隙間が形成されていない状態の最上位のワークの位置に設定されている上記(1)又は(2)に記載のワーク吸着保持方法に存する。
【0013】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)〜(5)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワーク吸着保持方法においては、下方空間の気圧を大気圧とし、上方空間の気圧を所定時間、大気圧より大きくすることにより、ピストンの下降を開始させる。
そして、所定時間経過後に上方空間及び下方空間の気圧を大気圧とすることにより、慣性と、ピストン自体に働く重力とに基づいて、ピストンが自然下降する。
【0015】
したがって、上記ワーク吸着保持方法によれば、ピストンを自然下降させて、吸着手段にワークを吸着保持させるので、ピストンからワークに加わる衝撃力を極力小さくすることができる。
これにより、ワークが傷付いたり、変形したりすることが抑制される。
【0016】
また、複数枚のワークが積層されたスタックに磁石を近接させ、ワーク同士の間に隙間を形成させてから、ワークを吸着保持して搬送する場合、上記ワーク吸着保持方法においては、吸着保持手段が、ワークを押さえつける力が極力小さくなるので、ワーク同士間の隙間が完全に閉じられず、その結果、ダブルブランクが生じることが抑制される。
【0017】
なお、これに加え、上方エアー流出入管、及び、下方エアー流出入管を設け、これらへのエアーの流出入を切替弁で切り替えられるようにすると、簡便にピストンを自然下降させることができるようになる。
したがって、ピストンからワークに加わる衝撃力を容易に小さくすることができる。
【0018】
上記ワーク吸着保持方法においては、ピストンが下降を開始した時から、吸着手段がワークに当接するまでの時間をT1とし、所定時間(上方空間の気圧を大気圧より大きくする時間)をtとした場合に、上記式を満たすと、確実にピストンからワークに加わる衝撃力を小さくすることができる。
【0019】
上記ワーク吸着保持方法においては、所定時間と、ワークを吸着保持した後の吸着手段を上昇させる時間とがタイマーによって制御されていると、ピストンが上昇するタイミングのばらつきを防止できるという利点がある。
【0020】
上記ワーク吸着保持方法においては、吸着保持手段が、磁石が近接されることによりワーク同士の間に隙間が形成されたスタックの最上位のワークを吸着保持するものであり、ピストンが下降する際の吸着保持手段の下限の位置が、スタックのワーク同士の間に隙間が形成されていない状態の最上位のワークの位置に設定されていると、吸着保持手段が、確実にワークを吸着保持すると共に、ワークを押さえつける力が極力小さくなるので、ワーク同士間の隙間が完全に閉じられず、その結果、ダブルブランクが生じることがより抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
図1は、本実施形態に係るワーク吸着保持方法が用いられるワーク吸着保持装置を概略的に示す側面図である。
図1に示すように、上記ワーク吸着保持装置100は、円柱状のシリンダ11と、該シリンダ11に内接するピストンヘッド12a及び該ピストンヘッド12aからシリンダ11外に延出するように接続されたピストンロッド12bからなるピストン12と、ピストンロッド12aの下端に取り付けられた吸着手段13と、シリンダ11及びピストンヘッド12aにより形成されるピストンヘッド12aの上方の上方空間15aと、シリンダ11及びピストンヘッド12aにより形成されるピストンヘッド12aの下方の下方空間15bと、からなるエアーシリンダ10を備える。
【0023】
上記エアーシリンダ10において、上方空間15a及び下方空間15bには空気が充填されている。
また、シリンダ11には図示しない圧力調整手段が取り付けられており、該圧力調整手段により、上方空間15aと下方空間15bとの圧力が変動されるようになっている。
すなわち、上記エアーシリンダ10は、上方空間15aと下方空間15bとに圧力差を与えることにより、ピストン12が昇降移動するようになっている。
【0024】
ピストン12の下端に取り付けられた吸着手段13は、伸縮可能なドーム状の弾性体であり、図示しない吸引手段により内部が減圧されるようになっている。
すなわち、吸着手段13は、所定量伸縮し、内部が減圧されることにより、ワークWを吸着保持するようになっている。
【0025】
上記ワーク吸着保持装置100は、エアーシリンダ10の下方に配置されたスタックSと、該スタックSを昇降移動させるリフター20と、スタックSの側面に近接された磁石21と、を更に備える。
ここで、スタックSとは、複数枚のワークWが積層された状態のものを意味する。
【0026】
上記ワーク吸着保持装置100においては、スタックSの側面に近接された磁石21により、それぞれのワークWに磁極が発生し、ワークW同士が反発し合うようになる。
そうすると、ワークW同士の間に隙間が形成され、スタックの最上位のワークWが吸着保持される際に、ワークWを2枚同時に吸着保持してしまうダブルブランクが生じるのが抑制される。
【0027】
次に、ワーク吸着保持方法について説明する。
図2は、本実施形態に係るワーク吸着保持方法における吸着手段13の高さ方向の位置と、時間との関係を示すグラフである。
上記ワーク吸着保持方法においては、まず、上方空間15aの気圧を大気圧(1atm)とし、下方空間15bの気圧を大気圧より大きくして、ピストン12を上死点に位置に配置する。
このとき、下方空間15bの気圧は、具体的には、1.5〜5MPaとすることが好ましく、2〜3MPaとすることがより好ましい。
【0028】
次いで、下方空間15bの気圧を大気圧とし、上方空間15aの気圧を所定時間t、大気圧より大きくすることにより、ピストン12の下降を開始させる。
このとき、上方空間15aの気圧は、具体的には、1.5〜5MPaとすることが好ましく、2〜3MPaとすることがより好ましい。
【0029】
次いで、所定時間t経過後に上方空間15a及び下方空間15bの気圧を大気圧にする。
すなわち、上方空間15aの気圧を大気圧に戻す。
そうすると、上方空間15a及び下方空間15bの気圧が同じ大気圧になるので、ピストン12は、慣性及びピストン12自体の重力によって自然に下降することになる。
【0030】
ピストン12の下端に接続された吸着手段13がワークWの位置に到達すると、吸着手段13とワークWとが当接される。なお、この当接される時間をT1とする。
このとき、ピストン12は、積極的に下降せずに、慣性及びピストン12自体の重力によって自然下降するので、ピストン12からワークWに加わる衝撃力が小さくなる。
これにより、上記ワーク吸着保持方法においては、ワークWが傷付いたり、変形したりすることが抑制される。
【0031】
その後、吸着手段13は下死点(後述する下限の位置L)まで下降し、ワークWを確実に吸着保持する。なお、かかる吸着保持の詳細については後述する。
【0032】
そして、再び、上方空間15aの気圧を大気圧とし、下方空間15bの気圧を大気圧より大きくすることにより、ピストン12を上昇させる。
なお、吸着手段13が上昇を開始する時間をT2とする。
これにより、ワークWが持ち上げられる。
なお、持ち上げられたワークWは、図示しないスタックの最上位のワークWよりも上方に配置された磁性コンベアに吸着させ搬送されたり、エアーシリンダ10ごと移動させることにより、搬送される。
【0033】
ここで、上記ワーク吸着保持方法において、ピストン12が下降を開始した時から、吸着手段13がワークWに当接するまでの時間T1と、上記所定時間tとが、下記式を満たすことが好ましい。
この場合、確実にピストン12からワークWに加わる衝撃力を小さくすることができる。
t≦0.8T1
0<t≦0.5(秒)
【0034】
また、上記所定時間において、上方空間15aの気圧を、1.5〜5MPaとする場合、tは0.1〜0.6秒とすることが好ましく、0.3〜0.5秒とすることがより好ましい。
この場合、確実にピストン12を下降させることができ、且つピストン12からワークWに加わる衝撃力がより小さくなる。
【0035】
上記ワーク吸着保持方法においては、所定時間tと、ワークを吸着保持した後の吸着手段13を上昇させる時間T2とがタイマーによって制御されている。
すなわち、一方のタイマーにより、図2に示すAの期間を経過後、上方空間15aが大気圧よりも加圧された状態から大気圧とされ、他方のタイマーにより、図2に示すBの期間を経過後、下方空間15bが大気圧から大気圧よりも加圧された状態とされる。
このように、2つのタイマーにより制御されているので、ピストンが上昇するタイミングのばらつきを防止できるという利点がある。
【0036】
図3の(A)は、本実施形態に係るワーク吸着保持方法において吸着保持手段がワークの吸着保持を開始した状態を模式的に示す側面図であり、(B)は、本実施形態に係るワーク吸着保持方法において吸着保持手段がワークを完全に吸着保持した状態を模式的に示す側面図である。
【0037】
図3の(A)に示すように、上記ワーク吸着保持方法においては、ピストン12が下降し、吸着手段13がワークWに当接すると、吸着手段13の内部の吸引が開始されると共に、ワークWを完全に吸着保持するためにピストン12が更に下降する。
このとき、ピストン12が下降する際の吸着保持手段13の下限の位置L(下死点)は、図3の(B)に示すように、スタックSのワークW同士の間に隙間が形成されていない状態の最上位のワークWの位置に設定されている。
【0038】
このため、上記ワーク吸着保持方法においては、吸着保持手段13が、確実にワークWを吸着保持すると共に、ワークWを押さえつける力が極力小さくなるので、ワークW同士間の隙間が完全に閉じられず、その結果、ダブルブランクが生じることが一層抑制される。
【0039】
そして、スタックSの最上位のワークWがエアーシリンダ10の吸着保持手段13により吸着保持され、搬送される操作が繰り返される。
なお、ワークWの搬送が繰り返されると、スタックSのワークWの量が減るので、スタックSの最上位のワークの位置が低くなる。
この場合、吸着保持手段13がワークWを吸着保持可能となるように、リフター20がスタックSを一定ピッチずつ上昇させるようになっている。
【0040】
次に、上述したワーク吸着保持装置を有するエアー供給機構200について説明する。
図4は、本実施形態に係るワーク吸着保持方法が用いられるエアー供給機構を示す概略図である。
図4に示すように、上記エアー供給機構200は、上述したワーク吸着保持装置100と、上方空間15aに連通するようにシリンダ11に接続され上方空間15aにエアーを流出入するための上方エアー流出入管31aと、下方空間15bに連通するようにシリンダ11に接続され下方空間15bにエアーを流出入するための下方エアー流出入管31bと、上方エアー流出入管31a及び下方エアー流出入管31bへのエアーの流出入を切り替える切替弁30と、該切替弁30に接続されたエアー開放管32及びエアー流入管33と、該エアー流入管33に接続されたコンプレッサー35と、該エアー開放管32に接続されたサイレンサー34と、を備える。
なお、上記コンプレッサー35は、空気を流入する機能を発揮し、サイレンサー34は、空気を流出する際の消音機能を発揮する。
【0041】
上方エアー流出入管31aには、エアーの流出をコントロールするための第1スピードコントローラ32aが取り付けられている。かかる第1スピードコントローラ32aにより、ピストン12の上限付近位置でのクッション効果が得られる。
一方、下方エアー流出入管31bには、エアーの流入の速度を調整するための第2スピードコントローラ32b、及び、エアーの流出の速度を調整するための第3スピードコントローラ32cが取り付けられている。第2スピードコントローラ32b及び第3スピードコントローラ32cにより、ピストンが急激に昇降移動することが抑制される。
【0042】
ここで、第1スピードコントローラ32a、第2スピードコントローラ32b及び第3スピードコントローラ32cは、同じ装置であり、公知のものが用いられる。
なお、上記エアー供給機構200において、上方エアー流出入管31aのエアーの流出は、第1スピードコントローラ32aで調整しているのに対し、下方エアー流出入管31bのエアーの流入と流出とは、それぞれ第2スピードコントローラ32bと第3スピードコントローラ32cとにわけて調整している。
【0043】
上記エアー供給機構200においては、まず、上方エアー流出入管31aを切替弁30により開放管32に接続させ、上方空間15aの気圧を大気圧とすると共に、下方エアー流出入管31bを切替弁30によりエアー流入管33に接続させ、下方空間15bの気圧を大気圧より大きくする。
これにより、ピストン12が上昇される。
【0044】
次いで、下方エアー流出入管31bを切替弁30により開放管32に接続させ、下方空間15bの気圧を大気圧とすると共に、上方エアー流出入管31aを切替弁30によりエアー流入管33に接続させ上方空間15aの気圧を所定時間、大気圧より大きくする。
これにより、ピストン12の下降を開始させる。
【0045】
そして、所定時間経過後に上方エアー流出入管31a及び下方エアー流出入管31bを切替弁30により開放管32に接続させ上方空間15a及び下方空間15bの気圧を大気圧とした状態でピストン12を下降させる。
こうして、吸着手段13にワークWが吸着保持される。
【0046】
このように、上記エアー供給機構200においては、上方エアー流出入管31a、及び、下方エアー流出入管31bを設け、これらへのエアーの流出入を切替弁30により切り替えられるようにしているので、簡便にピストン12を自然下降させることができるようになる。
したがって、ピストン12からワークWに加わる衝撃力を容易に小さくすることができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0048】
例えば、本実施形態に係るワーク吸着保持方法においては、所定時間と、ワークを吸着保持した後の吸着手段13を上昇させる時間とがタイマーによって制御されているが、タイマー以外の方法で制御してもよい。
【0049】
なお、上述したエアー供給機構における第1スピードコントローラ32a、第2スピードコントローラ32b、第3スピードコントローラ32c及びサイレンサー34は、必ずしも必須の構成要素ではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本実施形態に係るワーク吸着保持方法が用いられるワーク吸着保持装置を概略的に示す側面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るワーク吸着保持方法における吸着手段13の高さ方向の位置と、時間との関係を示すグラフである。
【図3】図3の(A)は、本実施形態に係るワーク吸着保持方法において吸着保持手段がワークの吸着保持を開始した状態を模式的に示す側面図であり、(B)は、本実施形態に係るワーク吸着保持方法において吸着保持手段がワークを完全に吸着保持した状態を模式的に示す側面図である。
【図4】図4は、本実施形態に係るワーク吸着保持方法が用いられるエアー供給機構を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
10・・・エアーシリンダ
11・・・シリンダ
12・・・ピストン
12a・・・ピストンヘッド
12b・・・ピストンロッド
13・・・吸着手段
15a・・・上方空間
15b・・・下方空間
20・・・リフター
21・・・磁石
30・・・切替弁
31a・・・上方エアー流出入管
31b・・・下方エアー流出入管
32・・・開放管
32a・・・第1スピードコントローラ
32b・・・第2スピードコントローラ
32c・・・第3スピードコントローラ
33・・・エアー流入管
34・・・サイレンサー
35・・・コンプレッサー
100・・・ワーク吸着保持装置
200・・・エアー供給機構
L・・・位置
S・・・スタック
W・・・ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
該シリンダに内接するピストンヘッド及び該ピストンヘッドから前記シリンダ外に延出するように接続されたピストンロッドからなるピストンと、
前記ピストンロッドの下端に取り付けられた吸着手段と、
前記シリンダ及び前記ピストンヘッドにより形成される前記ピストンヘッドの上方の上方空間と、
前記シリンダ及び前記ピストンヘッドにより形成される前記ピストンヘッドの下方の下方空間と、
を有するエアーシリンダを用いたワーク吸着保持方法であって、
前記上方空間の気圧を大気圧とし、前記下方空間の気圧を大気圧より大きくすることにより、前記ピストンを上昇させた状態から、
前記下方空間の気圧を大気圧とし、前記上方空間の気圧を所定時間、大気圧より大きくすることにより、前記ピストンの下降を開始させ、前記所定時間経過後に前記上方空間及び前記下方空間の気圧を大気圧とした状態で前記ピストンを下降させて前記吸着手段にワークを当接させ、吸着保持させることを特徴とするワーク吸着保持方法。
【請求項2】
シリンダと、該シリンダに内接するピストンヘッド及び該ピストンヘッドに垂下し且つ前記シリンダ外に延出するように接続されたピストンロッドからなるピストンと、前記ピストンロッドの下端に取り付けられた吸着手段と、前記シリンダ及び前記ピストンヘッドにより形成される前記ピストンヘッドの上方の上方空間と、前記シリンダ及び前記ピストンヘッドにより形成される前記ピストンヘッドの下方の下方空間と、を有するエアーシリンダ、
前記上方空間に連通するように前記シリンダに接続され前記上方空間にエアーを流出入するための上方エアー流出入管、
前記下方空間に連通するように前記シリンダに接続され前記下方空間にエアーを流出入するための下方エアー流出入管、
前記上方エアー流出入管及び前記下方エアー流出入管へのエアーの流出入を切り替える切替弁、
該切替弁に接続されたエアー流入管及び開放管、及び
該エアー流入管に接続されたコンプレッサー、
を備えたエアー供給機構を用いたワーク吸着保持方法であって、
前記上方エアー流出入管を前記切替弁により前記開放管に接続させ前記上方空間の気圧を大気圧とし、前記下方エアー流出入管を前記切替弁により前記エアー流入管に接続させ前記下方空間の気圧を大気圧より大きくすることにより、前記ピストンを上昇させた状態から、
前記下方エアー流出入管を前記切替弁により前記開放管に接続させ前記下方空間の気圧を大気圧とし、前記上方エアー流出入管を前記切替弁により前記エアー流入管に接続させ前記上方空間の気圧を所定時間、大気圧より大きくすることにより、前記ピストンの下降を開始させ、前記所定時間経過後に前記上方エアー流出入管及び前記下方エアー流出入管を前記切替弁により開放管に接続させ前記上方空間及び前記下方空間の気圧を大気圧とした状態で前記ピストンを下降させて前記吸着手段にワークを当接させ、吸着保持させることを特徴とするワーク吸着保持方法。
【請求項3】
前記ピストンが下降を開始した時から、前記吸着手段が前記ワークに当接するまでの時間をT1とし、前記所定時間をtとした場合に、下記式を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク吸着保持方法。
t≦0.8T1
0<t≦0.5(秒)
【請求項4】
前記所定時間と、ワークを吸着保持した後の前記吸着手段を上昇させる時間とがタイマーによって制御されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク吸着保持方法。
【請求項5】
前記吸着保持手段が、磁石が近接されることによりワーク同士の間に隙間が形成されたスタックの最上位のワークを吸着保持するものであり、
前記ピストンが下降する際の前記吸着保持手段の下限の位置が、前記スタックのワーク同士の間に隙間が形成されていない状態の最上位のワークの位置に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク吸着保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−142948(P2009−142948A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323951(P2007−323951)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000238946)株式会社エイチアンドエフ (57)
【Fターム(参考)】