説明

ワーク検知装置及びワーク検知方法並びにワーク検知装置を備えた工作機械

【課題】 異物除去が容易なワーク検知装置を提供する。
【解決手段】 ワークWに対向して配置された装置本体101にエア噴出孔104を設けるとともに、このエア噴出孔104を、前記装置本体と前記ワークとの相対移動により前記装置本体に当接した前記ワークよって閉塞されるように前記装置本体に配置し、ワークWと装置本体101との相対移動にともなう前記エア噴出孔104内のエアの圧力の変化に基づき装置本体へのワークの当接を検知するワーク検知装置において、装置本体101の外周面に凹溝101cを形成し、この凹溝に、エア噴出孔104を連通させ、前記凹溝を外周側から閉塞するシール部材108を前記装置本体の外周面に着脱自在に取り付け、閉塞状態の凹溝内に圧縮エアを供給することでエア噴出孔104からエアを噴出させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークとの相対移動によってワークの検知を行うワーク検知装置及びワーク検知方法並びに前記ワーク検知装置を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の検知装置の中には、例えば、エア噴出孔を形成した検査器の端面をワークに当接させ、前記ワークによって前記エア噴出孔を閉塞させる前後のエアの圧力変化によって、前記ワークが所定位置に正常に位置決めされたか否かを検査するものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】実開平6−24849号公報
【特許文献2】特開2003−19642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、検知の対象となるワークの表面には、切削屑等の異物が付着していることがあり、これら異物がエア噴出孔の内部に侵入して詰まると、ワークの位置検査等を正常に行えなくなるという問題がある。そのため、前記異物がエア噴出孔の内部に詰まっている場合には当該異物をエア噴出孔から除去する必要がある。
【0004】
しかし、上記の特許文献に記載したような従来の検知装置は、エア噴出孔に詰まった異物を容易に取り出せる構造にはなっておらず、異物の除去は作業者にとって多大な負担となるばかりでなく、生産性を低下させる原因にもなっている。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、異物除去が容易なワーク検知装置及びワーク検知方法並びに前記のワーク検知装置を備えた工作機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の第一の目的を達成するために本発明は、ワークに対向して配置された装置本体にエア噴出孔を設けるとともに、このエア噴出孔を、前記装置本体と前記ワークとの相対移動により前記装置本体に当接した前記ワークよって閉塞されるように前記装置本体に配置し、前記ワークと前記装置本体との相対移動にともなう前記エア噴出孔内のエアの圧力の変化に基づき、前記装置本体へのワークの当接を検知するワーク検知装置において、前記装置本体の外周面に凹溝を形成し、この凹溝に、前記エア噴出孔を連通させ、前記凹溝を外周側から閉塞するシール部材を前記装置本体の外周面に着脱自在に取り付け、閉塞状態の前記凹溝内に圧縮エアを供給することによって前記エア噴出孔からエアを噴出させる構成としてある。
【0007】
ここで、この明細書において「装置本体とワークとの相対移動」とは、ワークが固定されていて装置本体が移動する場合、装置本体が固定されていてワークが移動する場合のほか装置本体及びワークの双方が移動する場合を含む概念である。
本発明は上記のように構成されているので、装置本体と前記ワークとの相対移動により装置本体にワークを当接させることで、エア噴出孔がワークによって閉塞され、これにともなうエア圧の上昇によって、ワークと装置本体との当接を検知することができる。例えば、ワークと装置本体との間に隙間が生じていると、装置本体とワークとが当接する場合よりエア圧の上昇量が小さくなるので、この結果から、ワークと装置本体とが当接していないと判断することができる。ワークの当接検知結果は、ワークの有無や位置決めが正常になされているかなど、ワークの諸状態を判断するのに利用することができる。装置本体と前記ワークとが相対移動しない状態で、エア圧が予め定められた値より大きくなることによってエア噴出孔への切削屑等の異物の詰まりを検知することができる。
【0008】
ただし、本発明では、エア噴出孔に切削屑等の異物が侵入しても、この異物は、装置本体の外周面に形成した凹溝を利用することで容易に除去することができる。前記凹溝は、装置本体の外側に取り付けられたシール部材を取り外すことで容易に除去作業を開始することができるので、装置全体をワーク加工機械から取り外す必要もなく、作業が短時間で終了して生産性に与える影響も小さい。
【0009】
本発明は、前記装置本体に、前記ワークの凹凸部分と係合するゲージ部材を設け、前記エア噴出孔を、前記ゲージ部材が前記凹凸部分と係合したときに前記ワークによって閉塞されるように配置した構成としてもよい。
このように構成すれば、ワークの検知だけでなく、ワークに形成された凹凸形状が、予め設定された凹凸形状に一致しているかどうかも検査することができる。例えば、ワークの加工終了後に装置本体と前記ワークとが相対的に移動した場合において、前記ワークの凹凸形状が異常であると、前記ゲージ部材と前記凹凸部分とが係合せず、エア噴出孔がワークによって閉塞されないため、ワークと装置本体との当接が検知されず、この結果に基づいて、ワークの凹凸形状の良否を判断することができる。このように、本発明によれば、ワークの連続加工等を行う場合に、専用の検査工程を追加することなく、ワークの凹凸形状の検査を行うことが可能になる。
【0010】
本発明は、種々のワークの加工に適応することが可能である。例えば、前記凹凸がワークに対する加工によって形成される予め設定された孔径及び深さを有する孔である場合には、前記ゲージ部材として前記孔の軸線と同一の軸線上に配置され、前記孔径と同一の外径を有する軸体を使用し、この軸体の先端を前記孔の深さに応じた長さだけ前記装置本体から突出させるとよい。
この構成によれば、前記孔を形成する工具の一部に欠損があって、孔径が正常で孔深さの一部に異常がある場合に、前記ゲージ部材が孔の端部に当接し、前記装置本体とワークとが当接しないことによって、加工の異常を検査することが可能になる。
なお、前記ゲージ部材は、前記装置本体に対して位置調整自在又は交換自在とするのがよい。
このようにすることで、孔径や孔深さ等の凹凸形状が異なるものに切り替わっても、前記ゲージ部材の位置を調整したり交換したりすることで迅速に対応することが可能になる。
【0011】
さらに、本発明のワーク検知装置は、ワークに塑性加工を施す加工機械や組立機のように、ワークの加工又は組立(以下、本明細書では、加工や組立を総称して「加工」と記載する)をするあらゆる種類の機器に適用が可能である。例えば、前記機器が、ワークを把持するチャックを備えた主軸と、この主軸に対して相対的に移動が可能な移動体とを有する機器である場合は、前記移動体に前記装置本体を装着し、前記ワークと装置本体との相対移動によって前記ワークの装置本体への当接を検知するようにすればよい。
【0012】
本発明の方法は、ワークに対向して配置された装置本体に、前記装置本体と前記ワークとの相対移動により前記装置本体に当接した前記ワークよって閉塞されるようにエア噴出孔を設け、前記装置本体と前記ワークとの相対移動による前記エア噴出孔内のエアの圧力の変化に基づき、前記装置本体への前記ワークの当接を検知するワーク検知方法において、外周面に凹溝を形成し、この凹溝にエア噴出孔を連通させるとともに前記前記凹溝を外周側からシール部材で閉塞した前記装置本体を準備し、閉塞状態の前記凹溝内に圧縮エアを供給することによって前記エア噴出孔からエアを噴出させる方法である。
また、前記ワークの凹凸部分と係合するゲージ部材を前記装置本体に設け、前記エア噴出孔を、前記ゲージ部材が前記凹凸部分と係合したときに前記ワークによって閉塞されるように配置してもよい。
この方法によれば、ワークの検知とワークの凹凸検査とを同時に行うことができるので、例えば、ワークの連続加工を行う場合に、専用の検査工程を追加することなく、ワークの加工状態の検査を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、切削屑等の異物がエア噴出孔に詰まっても、容易に異物を除去することができる。また、ゲージ部材を併せて設けることで、ワークに形成された凹凸形状が正常か否かを判断することができる他、例えば、工具の折損や一部欠損等によって生じた加工異常の発生を、加工機や組立機等の機器からワークを取り外すことなく、早期に発見することができる。このように、ワーク検知と凹凸検査とを同時に行うことできるようにすることで、例えばワークの連続加工を行う場合において、検査のための工程を追加する必要がなくなり、ワークの加工効率を低下させたり、加工コストを上昇させたりすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
[ワーク検知装置の第一の実施形態]
本発明のワーク検知装置は、ワークの有無やワークの位置決め状態など、ワークの諸状態を判断するのに利用することができるが、以下の説明では、主としてワークの位置決め状態を検査するものとして説明する。
図1は、ワーク検知装置をワーク位置検査システムに適用した本発明の第一の実施形態にかかり、(a)はこの実施形態のワーク検知装置を備えたワーク位置検査システムの全体構成を説明する図、(b)は、(a)のワーク検知装置の断面図、(c)は(a)のワーク検知装置の正面図、(d)は、凹溝の深さとエア噴出孔の孔径との関係の一例を説明する部分拡大図である。
【0015】
ワーク位置検査システム1は、ワークWを当接させてワークWの位置決めを行うと同時に、位置決めが正常に行われているかどうかを検査するためのワーク検知装置10と、一定圧力の圧縮エアを発生させてワーク検知装置10に供給するエアポンプ等のエア供給源11と、このエア供給源11からワーク検知装置10に供給されるエアの圧力を検出して圧力信号を出力する圧力計12と、ワーク検知装置10をワークWに対して相対的に進退移動させる駆動部13と、エア供給源11からワーク検知装置10へのエアの供給及び停止の制御と駆動部13の駆動及び停止の制御とを行うとともに、圧力計12からの前記圧力信号に基づいて、ワーク検知装置10がワークWを正常に検知したかどうかを判断する判断部14とを有している。
【0016】
ワーク検知装置10は、(b)及び(c)に示すように、例えば工作機械の刃物台やテールストッカ,背面主軸台その他の移動体に装着されるこの実施形態における装置本体としての本体101と、この本体101の一端(図の右端)に形成され、駆動部13によるワーク検知装置10とワークWとの相対移動によってワークWの端面Waと面接触状態で当接する端面102と、本体101の一端側の内部に形成され、端面102で各々開口する複数(本実施形態では三つ)のエア噴出孔104と、本体101の内部に形成されエア噴出孔104に連通するとともに、エア供給源11から供給されたエアをエア噴出孔104に送るエア流通孔105とを有している。また、符号110は、本体101の外周面の一部を切り欠いて形成された平坦面で、例えば固定用のボルトを平坦面110に押し付けることで、後述するような工作機械の刃物台等に本体101を装着することができる。
【0017】
エア噴出孔104は、ワークWの端面Waと面接触する領域内で開口するように形成される。この実施形態では、(c)に示すように、三箇所でエア噴出孔104が開口するように形成しているが、エア噴出孔104が開口する箇所は二箇所であっても良いし、四箇所以上であってもよい。なお、エア噴出孔104の開口は一箇所であってもよいが、切削屑等の異物がエア噴出孔104の一つに詰まってもワーク位置検査を正常に行えるようにするために、二箇所以上とするのがよく、三箇所以上とするのがより好ましい。また、この実施形態では、エア噴出孔104の三つの開口は、軸線Cを中心とする同一の円周を均等分割する位置に設けられているが、必ずしも開口箇所は同一の円周上であったり均等間隔であったりする必要はない。
また、エア噴出孔104は、例えば、NC旋盤等の主軸チャックに把持させた本体101を所定の回転角度位置に位置決めして固定し、この状態で本体101の端面102と外周側の凹溝101cとからドリルで穿孔加工を施すことで、容易に凹溝101cに連通させることができる。これにより複数のエア噴出孔104を容易に形成することができる。
【0018】
本体101の一端部分は、他の部分より外径の小さい小径部101dとして形成されている。この小径部101dの外周面には、その全周にわたって凹溝101cが形成されている。この凹溝101cは、本体101の一端側から筒状のシール部材108を小径部101dに外嵌することで外周側から閉塞される。
シール部材108を本体101に固定する手段としては、公知の種々のものを用いることができる。例えば、(b)に示すように、ボルト111でシール部材108を本体101に固定するようにしてもよい。また、図3に示すように、シール部材108の他端内周面を螺旋孔108aとして形成し、この螺旋孔108aに螺合する螺旋部101eを本体101の外周面に形成して、両者が螺合することで、シール部材108を本体101に取り付けるようにしてもよい。
【0019】
複数のエア噴出孔104の他端及びエア流通孔105の一端は、この凹溝101cの底部に連通している。エア流通孔105の他端は、本体101の他側に開口し、この開口に螺着されたコネクタ109及びコネクタ109に接続された図示しない配管を介して、エア供給源11に接続される。エア供給源11からエア流通孔105を経て供給されたエアは、凹溝101cから複数のエア噴出孔104のそれぞれに分配され、端面102の開口のそれぞれから同じ圧力で噴き出される。エア噴出孔104に侵入し、その内部で詰まった切削屑等の異物は、シール部材108を本体101から取り外して、例えばエア噴出孔104の開口側から又は凹溝101c側から針金等を挿入することで、凹溝101c側又はエア噴出孔104の開口側から外に押し出すことができる。
【0020】
なお、凹溝101cの溝深さH(図1(d)参照)は、エア噴出孔104の孔径Dよりも小さくするのが好ましい。凹溝101cの溝深さHを孔径Dより小さくすることで、エア噴出孔104の孔径Dとほぼ等しい外寸を有する異物が、凹溝101cを通ってエア流通孔105に侵入することを防止でき、かつ、シール部材108を取り外すことで、凹溝101cとエア噴出孔104との境界部分で詰まっている前記異物を容易に除去することができる。
【0021】
前記エア噴出孔104は、ワーク検知装置10とワークWとの相対移動によるワークWの端面Waと本体101の端面102との当接によって、ワークWの端面Waにより開口が密閉される。該ワークWによるエア噴出孔104の閉塞によって、エア供給源11からワーク検知装置10に供給されるエアの圧力が上昇する。判断部14は、圧力計12が検出した圧力が予め設定された基準値を越えているか否かを判断する。そして、前記基準値を越えていると判断した場合は、ワークWの端面Waと本体101の端面102とが当接し、ワークWの位置決めが正常に行われていると判断する。また、基準値を越えない場合は、ワークWの端面Waと本体101の端面102とが当接せず、エア噴出孔104が閉塞されずに開放しているため、ワークWの位置決めに異常が発生したと判断して、以後の動作を禁止するとともに、アラーム等で異常の発生を報知する。なお、本体101と前記ワークWとが相対移動しない状態で、エア供給源11からワーク検知装置10に供給されるエア圧が予め設定された値より大きくなることによって、エア噴出孔104から侵入した切削屑等の異物の詰まりを検知することができる。ただし、前記切削屑等の異物は、前記のようにシール部材108を本体101から取り外すことによって容易に除去することができる。
【0022】
[ワーク検知装置の第二の実施形態]
図2は、本発明のワーク検知装置の第二の実施形態にかかり、(a)はこの実施形態のワーク検知装置の断面図、(b)はワーク検知装置の正面図である。なお、図2において、図1のワーク検知装置と同一部位,同一部材には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
この実施形態では、ワークWの端面Waの中央に、予め設定された孔径及び深さの孔(凹凸)Wbが加工によって形成されているものとする。そして、この実施形態のワーク検知装置10′は、孔Wbが予め設定された寸法とおりに加工されているかどうかを検査する。
【0023】
ワーク検知装置10′の本体101には、その中心に貫通孔101aが形成され、この貫通孔101aを挿通して、ワークWの孔Wbと同一の軸線C上にゲージ部材としての軸体103が配置されている。この軸体103は、ワークWの孔Wbの内径と同一寸法の外径を有し、孔Wbの有効深さと等しい長さ分だけその先端を端面102から突出させて本体101に固定されている。軸体103の途中部位には、外周面の一部を切り欠いてなる平坦面103aが形成されていて、本体101の外周面から貫通孔101aまで貫通して形成された螺旋孔101bにボルト106を螺入し、このボルト106の先端を平坦面103aに押し付けることで、軸体103が本体101に対して固定される。なお、この第二の実施形態においては、本体101に固定されたゲージ部材である軸体103を含めて、本発明の「装置本体」が構成される。
【0024】
また、この実施形態では、螺旋孔101bに挿通する貫通孔をシール部材108に形成し、螺旋孔101bからボルト106bの先端を貫通孔に突出させてシール部材108の回り止め及び抜け止めとしている。
さらに、図示するように、軸体103の他端側に目盛り103bを形成することで、端面102からの軸体103の突出長さを微調整することが容易になる。
【0025】
図4は、第二の実施形態のワーク検知装置10′を、NC旋盤等の工作機械に取り付けた一例を示すものである。なお、特に図示はしないが、第一の実施形態のワーク検知装置10についても、第二の実施形態のワーク検知装置10′と同様にNC旋盤等の工作機械に取り付けることができる。
この工作機械は、Z軸方向に進退移動自在な主軸21と、X軸方向及びY軸方向(図3の紙面に垂直な方向)に移動自在な刃物台22とを有している。刃物台22は、工具Tを保持する工具ポスト23をY軸方向に複数有していて、刃物台22のY軸方向の移動によって、工具ポスト23に装着された複数の工具Tの中から所定の工具Tを割り出す櫛歯形の刃物台である。ワーク検知装置10′は、複数の工具ポスト23のうちの一つに、ボルト24等によって装着される。
【0026】
この場合、ワーク検知装置10′をワークWに対して進退移動させる駆動部13は、主軸21をZ軸方向に進退移動させる駆動部であり、ワーク加工が正常か否かを判定する判断部14は、工作機械の制御装置に設けてもよい。また、エア供給源11(図1参照)や圧力計12は、工作機械の外部に設けてもよいが内部に設けてもよい。
なお、ワーク検知装置10′を工作機械に設ける場合は、図4に示すような刃物台22に限らず、テールストックや背面主軸等の既存の他の移動体に設けてもよいし、ワーク検知装置10′を装着するための専用の移動体を設けてもよい。
【0027】
次に、図5を参照しながら、第二の実施形態のワーク検知装置10′の作用について説明する。
(a)に示すように、ワークWの端面Waに孔Wbが正常に形成されている場合は、主軸21のZ軸方向への移動によって、端面102から突出する軸体103の先端が孔Wbに挿入されてワークWの端面Waと端面102とが当接し、エア噴出孔104の開口が端面Waによって密閉されて、エア供給源11からワーク検知装置10に供給されるエアの圧力が上昇する。判断部14は、圧力計12が検出した圧力が予め設定された基準値を越えると、孔Wbが正常に形成され、ワークWの位置決めが正常に行われてワークWの端面Waと本体101の端面102とが当接したと判断する。
【0028】
(b)及び(c)に示すように、工具の折損等により孔Wbが全く形成されない場合や工具装着ミスにより規定より小さい孔径の孔Wbが形成された場合若しくは工具の一部欠損により孔Wbが規定の深さまで加工されていない場合は、軸体103の先端が端面Waに突き当たること又は端面102が端面Waに当接するより早く孔Wbの底部に軸体103の先端が突き当たり、端面Waと端面102との間に隙間が生じ、エア噴出孔104が閉塞されない。そのため、エア噴出孔104の開口から噴出されたエアが前記の隙間から漏出して、ワークWの端面Waと本体101の端面102との当接による圧力上昇が発生せず、ワークWの端面Waと本体101の端面102との当接が検知されないから、判断部14はワークWの加工に異常が発生したと判断する。
この実施形態では、上記したように、ワークWとワーク検知装置10′との当接をエア圧の上昇に基づき検知することによって、孔Wbの加工異常を検出することができる。
【0029】
[加工工程の説明]
図6は、第二の実施形態のワーク検知装置10′を用いて、ワークの位置決めと加工検査とを同時に行う加工工程の一例を示す図である。
この例では、図4に示す工作機械の主軸21のチャックに長尺のワークWを把持させ、主軸21の後方に配置された図示しない棒材送り装置でワークWを製品一つ分(製品寸法+突っ切り幅)ずつ送りながら、製品の連続加工を行うようにするものとする。また、ワーク検知装置10′は、刃物台22の工具ポスト23に装着されているものとする。
【0030】
(a)に示すように、突っ切りバイトTaでワークWの先端を突っ切り、加工の終了した製品Pを切り離す。
次に、刃物台22(図4参照)のY軸方向の工具割り出し動作により、ドリルTbを加工位置に割り出し、(b)に示すように、このドリルTbでワークWの端面Waに予め設定された径及び深さの孔Wbを形成する。
孔Wbの加工終了後は、刃物台22(図4参照)のY軸方向の工具割り出し動作によりワーク検知装置10′をワークWに対峙する位置に割り出し、(c)に示すように、所定位置に位置決めする。そして、(d)に示すように、ワークWをワーク検知装置10′の端面102に当接するまで送る。ワーク検知装置10′の端面102にワークWの端面Waが当接することでワークWの先端の位置決めが行われ、これと同時に、ワークWの位置検査と孔Wbの加工の検査が行われる。検査の結果、位置決めと加工が正常に行われたと判断されれば、(a)に戻り、(b)〜(d)の動作を繰り返す。
【0031】
[ワーク検知装置の第三の実施形態]
上記の第二の実施形態では、凹凸形状の一例として孔Wbを挙げて説明したが、本発明は、孔以外の他の凹凸形状にも適用が可能である。
図7は、本発明のワーク検知装置の第三の実施形態にかかり、(a)及び(c)はその構成及び作用を説明する先端部分の断面図、(b)はワーク検知装置の正面図である。
なお、図7において先の実施形態のワーク検知装置と同一部位、同一部材には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
この実施形態においてワークW′の加工は、エンドミル等の工具をY軸方向に移動させながら端面Wa′の一部をY軸方向に切削することで、段付き状の切欠き部Wb′が形成されるものとする。また、この実施形態のワーク検知装置10″は、第一の実施形態のワーク検知装置10と同様に、本体101,貫通孔101a,螺旋孔101b,溝101c,小径部101d,エア噴出口104,エア流通孔105,ボルト106等を有している。
【0032】
ワーク検知装置10″は、第二の実施形態の軸体103の代わりに、ブロック状のゲージ部材120を本体101の一端に一体的に取り付けている。なお、この第三の実施形態では、本体101に一体的に取り付けられたゲージ部材120を含めて、本発明の「装置本体」が構成される。
ゲージ部材120は、図7(a)に示すように、ワークW′の端面Wa′及び切欠き部Wb′と合致する形状に形成された段付き状の当接面121aを一端に有するゲージ部121と、このゲージ部121の他側に突出形成され、本体101の貫通孔101aに挿入される軸部122とから構成されている。軸部122の外周面には平坦面122aが形成されていて、本体101の螺旋孔101bに螺入されたボルト106によって、ゲージ部材120が所定の回転角度位置で本体101に固定される。
【0033】
ゲージ部121の内部には、本体101のエア噴出孔104の各々に連通する複数のエア噴出孔121bが形成されている。そして、各エア噴出孔121bのそれぞれが、ワークW′に当接する当接面121aで開口している。なお、図7(b)に示すように、この実施形態では、エア噴出孔121bは、ワークW′の端面Waの形状に合わせて形成された段付き状の当接面121aの上段部分の一箇所と、下段部分の三箇所で開口している。
このようにすることで、例えば図7(c)に示すように、エンドミル等の工具の一部が欠損していて、端面Wa′と切欠き部Wb′との間に加工残りが生じているような場合に、前記加工残りによって当接面121aがワークW′の端面Wa′に当接できず、そのためエア噴出孔121bから噴出されたエアがゲージ部材120とワークWとの間の隙間から漏出するため、当接面121aとワークW′の端面Wa′との当接が検出できないことによって、加工に異常が生じたと判断することができる。
なお、第二及び第三の実施形態のように、本体101からゲージ部材である軸体103やゲージ部材120を突出させても、第一の実施形態と同様に、一つ又は複数のエア噴出孔104を軸体103やゲージ部材120の外側に形成することは容易であり、軸体103やゲージ部材120を有し、複数のエア噴出孔104を備えたワーク検知装置を容易に製造することができる。
【0034】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態により何ら限定されるものではない。
例えば、第二及び第三の実施形態では、主軸のチャックに把持されたワークを加工して孔や切欠きを形成し、これら孔や切欠きを検査するものとして説明したが、これらの実施形態は、孔や切欠きが予め形成されたワークを使用する場合にも適用が可能で、主軸のチャックに供給されるワークの中に、孔や切欠きが形成されていない不良ワークが誤って混入していても、この不良ワークを検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ワークに塑性加工を施す工作機械や組立機のように、ワークを加工するあらゆる種類の機器に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ワーク検知装置をワーク位置の検査に適用した本発明の第一の実施形態にかかり、(a)はこの実施形態のワーク検知装置を備えたワーク位置検査システムの全体構成を説明する図、(b)は、ワーク検知装置の断面図、(c)はワーク検知装置の正面図、(d)は、凹溝の深さとエア噴出孔の孔径との関係を説明する部分拡大図である。
【図2】本発明のワーク検知装置の第二の実施形態にかかり、(a)はこの実施形態のワーク検知装置の断面図、(b)はワーク検知装置の正面図である。
【図3】シール部材を本体に螺着した他の例を示すワーク検知装置の先端部分の拡大断面図である。
【図4】第二の実施形態のワーク検知装置を、NC旋盤等の工作機械に取り付けた一例を示すものである。
【図5】第二の実施形態のワーク検知装置の作用を説明する図である。
【図6】第二の実施形態のワーク検知装置を用いて、ワークの位置決めと加工検査とを同時に行う加工工程の一例を示す図である。
【図7】本発明のワーク検知装置の第三の実施形態にかかり、(a)及び(c)はその構成及び作用を説明する先端部分の断面図、(b)はワーク検知装置の正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1:ワーク位置検査システム
10,10′,10″:ワーク検知装置
101:本体(装置本体)
101a:貫通孔
101b:螺旋孔
101c:凹溝
101d:小径部
102:端面
103:軸体
103a:平坦面
103b:目盛り
104:エア噴出孔
105:エア流通孔
106:ボルト
108:シール部材
109:コネクタ
110:平坦面
111:ボルト
11:エア供給源
12:圧力計
13:駆動部
14:判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対向して配置された装置本体にエア噴出孔を設けるとともに、このエア噴出孔を、前記装置本体と前記ワークとの相対移動により前記装置本体に当接した前記ワークよって閉塞されるように前記装置本体に配置し、前記ワークと前記装置本体との相対移動にともなう前記エア噴出孔内のエアの圧力の変化に基づき、前記装置本体へのワークの当接を検知するワーク検知装置において、
前記装置本体の外周面に凹溝を形成し、
この凹溝に、前記エア噴出孔を連通させ、
前記凹溝を外周側から閉塞するシール部材を前記装置本体の外周面に着脱自在に取り付け、
閉塞状態の前記凹溝内に圧縮エアを供給することによって前記エア噴出孔からエアを噴出させること、
を特徴とするワーク検知装置。
【請求項2】
前記装置本体に、前記ワークの凹凸部分と係合するゲージ部材を設け、前記エア噴出孔を、前記ゲージ部材が前記凹凸部分と係合したときに前記ワークによって閉塞されるように配置したことを特徴とする請求項1に記載のワーク検知装置。
【請求項3】
前記ゲージ部材を、前記装置本体に対して位置調整自在又は交換自在に設けたことを特徴とする請求項2に記載のワーク検知装置。
【請求項4】
ワークを把持するチャックを備えた主軸と、この主軸に対して相対的に移動が可能な移動体とを有する機器の前記移動体に前記装置本体を装着し、前記ワークと前記装置本体との相対移動によって前記ワークの前記装置本体への当接を検知することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のワーク検知装置。
【請求項5】
ワーク(W)に対向して配置された装置本体に、前記装置本体と前記ワークとの相対移動により前記装置本体に当接した前記ワークよって閉塞されるようにエア噴出孔を設け、前記装置本体と前記ワークとの相対移動による前記エア噴出孔内のエアの圧力の変化に基づき、前記装置本体への前記ワークの当接を検知するワーク検知方法において、
外周面に凹溝を形成し、この凹溝にエア噴出孔を連通させるとともに前記前記凹溝を外周側からシール部材で閉塞した前記装置本体を準備し、
閉塞状態の前記凹溝内に圧縮エアを供給することによって前記エア噴出孔からエアを噴出させること、
を特徴とするワーク検知方法。
【請求項6】
前記ワークの凹凸部分と係合するゲージ部材を前記装置本体に設け、前記エア噴出孔を、前記ゲージ部材が前記凹凸部分と係合したときに前記ワークによって閉塞されるように配置したことを特徴とする請求項5に記載のワーク検知方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のワーク検知装置を備えたことを特徴とする工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−233796(P2009−233796A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83644(P2008−83644)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(507207203)シチズンマシナリー株式会社 (22)
【Fターム(参考)】